(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】避難用シュート
(51)【国際特許分類】
B64D 25/14 20060101AFI20240220BHJP
A62B 1/20 20060101ALI20240220BHJP
B61K 13/04 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B64D25/14
A62B1/20 C
B61K13/04
(21)【出願番号】P 2020159991
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227168
【氏名又は名称】株式会社ハイビックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】後藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】広川 登朗
(72)【発明者】
【氏名】粟井 正寿
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-135857(JP,A)
【文献】特開2017-86394(JP,A)
【文献】実開昭50-47198(JP,U)
【文献】実開昭49-145393(JP,U)
【文献】実開平3-60964(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0093055(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0284188(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103623513(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0276459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/00- 5/00
A62B 35/00-99/00
B61D 23/02
B61K 13/04
B63C 9/28
B64D 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納状態から膨張した使用状態になり、車両の内部から前記車両の外部に避難者を滑降させるための避難用シュートであって、
前記使用状態のときに、水平方向に対して傾斜して配置されるとともに前記避難者を滑降させるための滑降部と、
前記使用状態のときに、前記車両の外部に配置される前記滑降部の上側部分から前記車両の内部に向かって延びるように設けられる上屈曲部と、
前記使用状態のときに、前記滑降部および前記上屈曲部のそれぞれのシュート幅方向外側部分から上側に延びるように設けられる側壁部と、
前記格納状態から前記使用状態に変化させるときに、前記側壁部の内部にガスを供給することで前記側壁部を膨らませるガス供給部と、
を備え、
前記ガス供給部は、
複数のガスボンベと、
前記複数のガスボンベのそれぞれに取り付けられ、前記ガスボンベから前記側壁部の内部へのガスの供給を開始させる起動装置と、
を備え、
前記ガス供給部は、前記側壁部および前記上屈曲部の少なくともいずれかの部分であって、前記使用状態のときに前記車両の内部に配置される部分に取り付けられる、
避難用シュート。
【請求項2】
請求項1に記載の避難用シュートであって、
前記側壁部は、
前記使用状態のときに、前記滑降部のシュート幅方向外側部分から上側に延びるように設けられる滑降側壁部と、
前記使用状態のときに、前記上屈曲部のシュート幅方向外側部分から上側に延びるように設けられる上側壁部と、
を備え、
前記ガス供給部は、前記使用状態のときの前記上側壁部のシュート幅方向外側部分に取り付けられる、
避難用シュート。
【請求項3】
請求項2に記載の避難用シュートであって、
前記格納状態のときの前記上側壁部は、前記上屈曲部と対向するように、前記上屈曲部に対して折り畳まれた状態であり、
前記格納状態のときの前記滑降部は、前記使用状態のときに前記滑降部の下側部分となる部分から上側部分となる部分に向かって巻かれたロール状である、
避難用シュート。
【請求項4】
請求項3に記載の避難用シュートであって、
前記使用状態のときに前記滑降部の上面となる面である滑降面の一部を滑降面特定部とし、
前記使用状態のときに前記滑降部の下面となる面である反滑降面のうち、前記使用状態のときに前記滑降部の厚さ方向に前記滑降面特定部と対向する部分を反滑降面特定部としたとき、
前記格納状態のとき、前記滑降面特定部は、前記反滑降面特定部よりもロールの内側に配置される、
避難用シュート。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の避難用シュートであって、
前記格納状態のときの前記上側壁部は、前記使用状態のときに前記上屈曲部の上面となる面と対向するように、前記上屈曲部に対して折り畳まれた状態である、
避難用シュート。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の避難用シュートであって、
前記格納状態のときの前記ガス供給部は、前記上側壁部と前記滑降部との間に配置される、
避難用シュート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の避難用シュートであって、
前記使用状態のとき、シュート幅方向における前記ガスボンベの長さは、前記側壁部のシュート幅方向における設計厚さよりも小さい、
避難用シュート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の避難用シュートであって、
前記ガスボンベの数は、前記格納状態から前記使用状態に変化させるのに必要な前記ガスボンベの数よりも多い、
避難用シュート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の避難用シュートであって、
前記使用状態のときに前記滑降部から前記上屈曲部に向かう側を後側としたとき、
前記起動装置は、後側に操作されることで、前記ガス供給部にガスの供給を開始させるように構成される、
避難用シュート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両から避難者を避難させるための避難用シュートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、従来の避難用シュートが記載されている。同文献に記載の技術では、避難用シュートが畳まれた状態(同文献の
図10参照)で各インフレータが作動すると、エアチューブが膨らみ、避難用シュートが展開される(同文献の
図1、段落0034参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の技術(同文献の
図1参照)では、避難用シュートが使用状態のときに、各インフレータは、車両の外部に配置されると考えられる。そのため、避難用シュートを格納状態から使用状態に変える作業に手間および時間がかかる(具体例は後述)。
【0005】
そこで、本発明は、格納状態から使用状態に変える作業の手間および時間を抑制することができる、避難用シュートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
避難用シュートは、格納状態から膨張した使用状態になり、車両の内部から前記車両の外部に避難者を滑降させるためのものである。避難用シュートは、滑降部と、上屈曲部と、側壁部と、ガス供給部と、を備える。前記滑降部は、前記使用状態のときに、水平方向に対して傾斜して配置されるとともに前記避難者を滑降させるためのものである。前記上屈曲部は、前記使用状態のときに、前記車両の外部に配置される前記滑降部の上側部分から前記車両の内部に向かって延びるように設けられる。前記側壁部は、前記使用状態のときに、前記滑降部および前記上屈曲部のそれぞれのシュート幅方向外側部分から上側に延びるように設けられる。前記ガス供給部は、前記格納状態から前記使用状態に変化させるときに、前記側壁部の内部にガスを供給することで前記側壁部を膨らませる。前記ガス供給部は、複数のガスボンベと、起動装置と、を備える。前記起動装置は、前記複数のガスボンベのそれぞれに取り付けられ、前記ガスボンベから前記側壁部の内部へのガスの供給を開始させる。前記ガス供給部は、前記側壁部および前記上屈曲部の少なくともいずれかの部分であって、前記使用状態のときに前記車両の内部に配置される部分に取り付けられる。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、避難用シュートを格納状態から使用状態に変える作業の手間および時間を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】使用状態の避難用シュート1の斜視図である。
【
図2】
図1に示す避難用シュート1をシュート幅方向Yから見た図である。
【
図3】
図2に示す上側壁部27などをシュート幅方向Yから見た図である。
【
図4】
図3に示すガス供給部30を上下方向Zから見た断面図である。
【
図5】伸展状態の避難用シュート1を上側Z1から見た図である。
【
図6】
図5に示す側壁部20などが折り畳まれた状態の避難用シュート1を上側Z1から見た図である。
【
図7】
図6に示す滑降部11などがロール状に巻かれた状態の避難用シュート1をほぼ上側Z1から見た図である。
【
図8】
図1に示す避難用シュート1をシュート幅方向Yから見た図であり、第1タイプの格納状態の避難用シュート1を示す図である。
【
図9】
図8に示す避難用シュート1が第1タイプの格納状態から使用状態に展開されている途中の状態をシュート幅方向Yから見た図である。
【
図10】第2タイプの格納状態の避難用シュート1を示す
図8相当図である。
【
図11】
図7相当図であり、避難用シュート1を伸展状態から第3タイプの格納状態に変える途中の状態を示す図である。
【
図12】第3タイプの格納状態の避難用シュート1を示す
図8相当図である。
【
図13】
図12に示す避難用シュート1が第3タイプの格納状態から使用状態に展開されている途中の状態をシュート幅方向Yから見た
図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図13を参照して、避難用シュート1について説明する。
【0010】
避難用シュート1(脱出シュート、シュータ)は、
図2に示すように、車両Cの内部から車両Cの外部に避難者を滑降させるためのものである。避難用シュート1は、非常時に避難者が車両Cから避難(脱出)する際に用いられる。避難用シュート1が用いられる車両Cは、例えば鉄道車両である。車両Cが鉄道車両の場合、避難用シュート1は、車両Cの側面の扉(例えば乗降扉)に設けられてもよく、車両Cの前後端の扉(例えば貫通扉、例えば運転室の扉など)に設けられてもよい。
【0011】
この避難用シュート1は(後述するシュート本体10は)、使用状態(
図1参照)と、伸展状態(
図5参照)と、格納状態(
図8参照)と、になることが可能である。
図1に示すように、使用状態の避難用シュート1は、膨らんだ状態であり、滑り台のような形状(所定形状)である。使用状態の避難用シュート1は、格納状態(
図8参照)から膨張した状態である。使用状態の避難用シュート1は、避難者が避難用シュート1を用いて避難できるように(具体的にはシュート本体10が折れ曲がらないように)適切な大きさの剛性を有する。
図5に示すように、伸展状態の避難用シュート1は、しぼんだ状態であり、平面状または略平面状に広げられた状態である。
図8に示すように、格納状態の避難用シュート1は、しぼんだ状態であり、畳まれた状態である。伸展状態および格納状態については後述する。まず、
図1に示すように、避難用シュート1が使用状態である場合について説明する。避難用シュート1は、シュート本体10と、ガス供給部30と、排気部50と、を備える。
【0012】
シュート本体10は、避難用シュート1の本体部分である。シュート本体10は、滑降部11と、脚部12と、上屈曲部17と、側壁部20と、を備える。
【0013】
滑降部11は、
図2に示すように、車両Cの内部から車両Cの外部(前側X1)に避難者を滑降させるための部分である。滑降部11は、避難者を下側Z2から支持しながら、滑降部11の上を避難者が滑り降りることが可能となるように構成される。滑降部11は、水平方向に対して傾斜して配置される。滑降部11は、略板状である(脚部本体部13、脚部支持部15、上屈曲部17、滑降側壁部21、および上側壁部27も同様)。滑降部11は、車両Cの外部に配置される(脚部12も同様)。滑降部11は、滑降面11aと、反滑降面11bと、を備える。滑降面11aは、滑降部11の上面(上側Z1の面)である。なお、滑降面11aに、図示しないシートなどが敷かれてもよい。反滑降面11bは、滑降部11の下面(下側Z2の面、底面)である。
【0014】
(方向の定義)
上屈曲部17に直交する方向(さらに詳しくは後述する上屈曲部上面17aに直交する方向)を上下方向Zとする。上屈曲部17が水平面に置かれた場合は、上下方向Zは、鉛直方向である。上下方向Zにおいて、避難用シュート1が使用状態かつ上屈曲部17が水平面に置かれたと仮定した場合の上屈曲部17の下面(上屈曲部下面17b)から上面(上屈曲部上面17a)に向かう側を上側Z1とする。上下方向Zにおける上側Z1とは逆側を、下側Z2とする。なお、上屈曲部17は、水平面に置かれなくてもよく、略水平面に置かれてもよい。上下方向Zに直交する方向であって、上屈曲部17の滑降部11とは反対側の端部から、上屈曲部17の滑降部11側の端部に向かう側を、前後方向Xの前側X1とする。前後方向Xにおける前側X1とは逆側を、後側X2とする。滑降部11が車両Cの外部に配置され、上屈曲部17が車両Cの内部(例えば床)に置かれた場合、前後方向Xは、車両Cに対して避難者が出入りする方向であり、前側X1は、避難者が車両Cの内部から車両Cの外部に出る側である。上下方向Zおよび前後方向Xのそれぞれに直交する方向をシュート幅方向Yとする。
【0015】
脚部12は、避難用シュート1から避難者を容易に降ろすための部分である。脚部12は、滑降部11の下側Z2部分に座っている避難者を、容易に立ち上がらせるための部分である。脚部12は、滑降部11の下側Z2部分(前側X1部分)から下側Z2に延びるように設けられる。脚部12の上下方向Zの寸法は、滑降部11の下側Z2部分に座った避難者が、滑降部11から降りやすくなるような寸法に設定される。脚部12は、脚部本体部13と、脚部支持部15と、を備える。
【0016】
脚部本体部13は、滑降部11の下側Z2部分から下側Z2に延びるように設けられる。脚部本体部13は、シュート幅方向Yおよび上下方向Zのそれぞれに延びるように配置される。脚部本体部13は、脚部前面13aと、脚部後面13bと、を備える。脚部前面13aは、脚部本体部13の前側X1の面である。脚部後面13bは、脚部本体部13の後側X2の面である。
【0017】
脚部支持部15は、地面Gに対する脚部12の安定性を向上させるための部分である。脚部支持部15は、滑降部11から受ける力であって、脚部12を後側X2に倒そうとする向きの力に対抗する部分である。脚部支持部15は、脚部本体部13から後側X2(裏側)に突出する。
図1に示すように、脚部支持部15は、脚部本体部13のシュート幅方向外側Y2(例えばシュート幅方向外側Y2の両側)部分から後側X2に延びる。左右の脚部支持部15・15のそれぞれは、前後方向Xおよび上下方向Zのそれぞれに延びるように配置される。脚部支持部15は、脚部支持部外側面15aと、脚部支持部内側面15b(
図6参照)と、を備える。脚部支持部外側面15aは、脚部支持部15のシュート幅方向外側Y2の面である。脚部支持部内側面15b(
図6参照)は、脚部支持部15のシュート幅方向内側Y1の面である。
【0018】
上屈曲部17(踊り場)は、滑降部11の上側Z1部分から後側X2に延びるように設けられる。上屈曲部17は、滑降部11に対して屈曲する。
図2に示すように、上屈曲部17は、車両Cの内部に配置され、車両Cに置かれ、例えば車両Cの床に置かれる。上屈曲部17は、水平方向または略水平方向に延びるように配置される。上屈曲部17と滑降部11とは、連続して設けられる。上屈曲部17と滑降部11とが連続して設けられることにより、避難者が、上屈曲部17から滑降部11に容易に移動することができる。その結果、避難者が、車両Cの内部から外部にスムーズに避難することができる。上屈曲部17は、上屈曲部上面17aと、上屈曲部下面17bと、を備える。上屈曲部上面17aは、上屈曲部17の上面(上側Z1の面)である。上屈曲部下面17bは、上屈曲部17の下面(下側Z2の面)である。
【0019】
側壁部20は、
図1に示すように、滑降部11または上屈曲部17から、シュート幅方向外側Y2への避難者の移動を制限する。側壁部20は、避難者が手を置くことが可能な手摺の機能を有してもよい。側壁部20は、滑降側壁部21と、上側壁部27と、を備える。
【0020】
滑降側壁部21は、滑降部11のシュート幅方向外側Y2部分(例えばシュート幅方向外側Y2端部)から上側Z1に延びるように設けられる。滑降部11に対して滑降側壁部21が延びる方向が、上下方向Zに対して傾斜する場合も、上記「上側Z1に延びるように設けられる」に含まれる(上屈曲部17に対して上側壁部27が延びる方向についても同様)。
図2に示すように、滑降側壁部21は、車両Cの外部に配置される。
図1に示すように、滑降側壁部21は、滑降部11のシュート幅方向外側Y2の両側(左右)に設けられる。左右の滑降側壁部21・21のそれぞれは、滑降側壁部外側面21aと、滑降側壁部内側面21bと、を備える。滑降側壁部外側面21aは、滑降側壁部21のシュート幅方向外側Y2の面である。滑降側壁部内側面21bは、滑降側壁部21のシュート幅方向内側Y1の面である。
【0021】
上側壁部27は、上屈曲部17のシュート幅方向外側Y2部分から上側Z1に延びるように設けられる。上側壁部27は、上屈曲部17のシュート幅方向外側Y2の両側(左右)に設けられる。上屈曲部17からの上側壁部27の上側Z1への突出量(上側壁部27の突出高さ)は、滑降部11からの滑降側壁部21の上側Z1への突出量に対して、大きくてもよく(
図2参照)、同じまたは略同じでもよい。ガス供給部30が上側壁部27に取り付けられる場合は、上側壁部27の突出高さを高くすることで、上側壁部27にガス供給部30を容易に配置することができる。
図2に示すように、上側壁部27は、車両Cの内部に配置される。
図1に示すように、左右の上側壁部27・27のそれぞれは、上側壁部外側面27aと、上側壁部内側面27bと、を備える。上側壁部外側面27aは、上側壁部27のシュート幅方向外側Y2の面である。上側壁部内側面27bは、上側壁部27のシュート幅方向内側Y1の面である。
【0022】
(シュート本体10の構成、変形例)
少なくとも、側壁部20(滑降側壁部21および上側壁部27のそれぞれ)は、ガスが供給されることで膨らむことが可能(ガスによる膨張が可能)である。滑降部11は、ガスによる膨張が可能でもよく、可能でなくてもよい(脚部12および上屈曲部17も同様)。例えば、滑降部11は、ガスによる膨張が可能でないシートなどでもよい(上屈曲部17も同様)。シュート本体10のうちガスによる膨張が可能な部分は、互いに連通されていてもよく、連通されていなくてもよい。例えば、滑降側壁部21と上側壁部27とは、互いに連通してもよく、連通しなくてもよい。滑降側壁部21と上側壁部27とが互いに連通しない場合は、滑降側壁部21と上側壁部27とに別々にガスが供給される。例えば、脚部12は、側壁部20と内部で連通していなくてもよく、側壁部20とは別に(独立して)ガスによる膨張が可能でもよい。なお、脚部12は設けられなくてもよい。以下では、滑降部11、脚部12、上屈曲部17、および側壁部20が、互いに連通し、ガスによる膨張が可能である場合について説明する。
【0023】
ガス供給部30(ガス急速供給装置)は、避難用シュート1を(シュート本体10を)格納状態から使用状態に変化させるためのものである。ガス供給部30は、シュート本体10の内部にガスを供給することでシュート本体10を膨らませる。さらに詳しくは、上記のように少なくとも側壁部20はガスによる膨張が可能であるところ、ガス供給部30は、少なくとも、側壁部20の内部にガスを供給することで側壁部20を膨らませる。
図2に示すように、ガス供給部30は、側壁部20(例えば上側壁部27)および上屈曲部17の少なくともいずれかの部分であって、車両Cの内部に配置される部分に取り付けられる。この配置により、ガス供給部30を操作する操作者が、車両Cのより内側の位置で操作でき、容易に操作できる。ガス供給部30は、上側壁部27のシュート幅方向外側Y2部分に取り付けられる。この配置により、上側壁部27の上面(上側Z1の面)にガス供給部30が取り付けられる場合に比べ、避難者が上側壁部27を手で容易につかむことができる。
図3に示すように、ガス供給部30は、ガスボンベ31と、ガスボンベ取付部材33と、起動装置35と、連動機構37と、を備える。
【0024】
ガスボンベ31は、シュート本体10の内部に供給されるガスが充填された容器である。ガスボンベ31に充填されたガスは、空気でもよい。ガスボンベ31に充填されたガスの大部分は、二酸化炭素でもよく、窒素でもよい。
【0025】
このガスボンベ31は、複数設けられる。ガスボンベ31が複数設けられることにより、ガスボンベ31が1つのみ設けられる場合に比べ、各ガスボンベ31の容量を小さくすることができ、各ガスボンベ31の寸法を小さくすることができる。その結果、格納状態の避難用シュート1(
図8参照)を小さく畳むことができる(避難用シュート1の収納性が向上する)。また、各ガスボンベ31の容量を小さくできるので、ガスボンベ31の内部からシュート本体10の内部にガスを送入するのに必要な時間を短くすることができる(短時間でシュート本体10が膨らむ)。具体的には例えば、各ガスボンベ31の容量は、200cc以下が好ましく、100cc以下がさらに好ましい。一方、ガスボンベ31の容量が小さすぎると、ガスボンベ31の数が多くなり、起動装置35の数が多くなり、連動機構37が複雑になるおそれがある。そこで例えば、ガスボンベ31の容量は、50cc以上であることが好ましい。
【0026】
このガスボンベ31の数(設置数)は、ガスボンベ31の必要数よりも多いことが好ましい。上記「ガスボンベ31の必要数」は、シュート本体10を格納状態から使用状態に変化させるのに必要なガスボンベ31の数である。さらに詳しくは、「ガスボンベ31の必要数」は、シュート本体10の内部にガスが無い状態から、シュート本体10の内圧を最低使用圧(例えば避難者を適切に支持できるような内圧)に変化させるのに必要な、ガスボンベ31の数である。ガスボンベ31の設置数が必要数よりも多いことにより、ガスボンベ31と起動装置35とで構成される組のうち、1組が作動不良を起こしても、シュート本体10を使用状態にすることができる。シュート幅方向Y片側(例えば左側)の側壁部20に設けられるガスボンベ31の数は、
図3に示す例では4であり、2でもよく、3でもよく、5以上でもよい。シュート幅方向Yの一方側(例えば左側)の側壁部20に設けられるガスボンベ31の数は、他方側(例えば右側)の側壁部20に設けられるガスボンベ31の数と、同じでもよく、相違してもよい。また、
図1に示すシュート幅方向Y両側(左右)の側壁部20・20が互いに連通している場合は、シュート幅方向Yの片側のみの側壁部20に、ガスボンベ31が設けられてもよい。
【0027】
これらの複数のガスボンベ31は、側壁部20のシュート幅方向外側Y2の面に沿う方向に、並ぶように(列を形成するように)配置される。
図3に示す例では、複数のガスボンベ31は、上下方向Zに並ぶように配置される。同図に示す例では、上下方向Zに隣り合うガスボンベ31は、前後方向Xにずれるように配置される。なお、複数のガスボンベ31は、例えば前後方向Xに並ぶように配置されてもよく、例えば上下方向Zおよび前後方向Xに傾斜する方向に並ぶように配置されてもよい。
【0028】
このガスボンベ31(1本のガスボンベ31)の形状は、長手方向を有する形状であり、例えば略円柱状である。ガスボンベ31は、側壁部20のシュート幅方向外側Y2の面に沿う方向に延びるように配置される。
図3に示す例では、ガスボンベ31は、前後方向Xに延びるように配置される。例えば、ガスボンベ31は、上下方向Zに延びるように配置されてもよく、前後方向Xおよび上下方向Zに傾斜する方向に延びるように配置されてもよい。
【0029】
このガスボンベ31のシュート幅方向Yにおける長さ(例えば直径)は、次のように設定される。ここで、
図1に示す側壁部20の外部の障害物(例えば壁など)がシュート幅方向Yに側壁部20を押していない状態、かつシュート本体10が使用状態のときの、側壁部20のシュート幅方向Yにおける厚さを、側壁部20の「設計厚さ」とする。このとき、ガスボンベ31のシュート幅方向Yにおける長さは、側壁部20の設計厚さよりも小さいことが好ましい。この場合、障害物がガスボンベ31に接触しても、ガスボンベ31が側壁部20にシュート幅方向内側Y1に入り込む(食い込む)。よって、左右の側壁部20の間隔が狭くなることが抑制され、上屈曲部17または滑降部11がシュート幅方向内側Y1に狭くなることが抑制される。また、ガスボンベ31のシュート幅方向Yにおける長さが小さい(具体的には側壁部20の設計厚さよりも小さい)ので、格納状態の避難用シュート1(
図8参照)を小さく畳むことができる(避難用シュート1の収納性が向上する)。具体的には例えば、ガスボンベ31のシュート幅方向Yにおける長さは、側壁部20の設計厚さの、1/2以下であることが好ましい。
【0030】
このガスボンベ31は、
図3に示す起動装置35に着脱可能であり、交換可能である。さらに詳しくは、シュート本体10を膨らませるためにガスボンベ31が使用された後、使用済みのガスボンベ31が起動装置35から取り外される。その後、未使用のガスボンベ31を起動装置35に取り付けることが可能である。
【0031】
このガスボンベ31は、ガスボンベ取付部材33により側壁部20に取り付けられる。シュート本体10が使用状態のときに、ガスボンベ31が側壁部20に取り付けられている場合は、ガスボンベ31が側壁部20に取り付けられていない場合に比べ、
図2に示す避難用シュート1の質量を増やすことができる。よって、避難用シュート1が車両Cに対して移動しにくく(安定性がよく)、例えば強風時などでも避難用シュート1が車両Cに対して移動しにくくなる。
【0032】
ガスボンベ取付部材33は、
図3に示すように、側壁部20にガスボンベ31を取り付けるための部材である。ガスボンベ取付部材33は、側壁部20にガスボンベ31を着脱可能に取り付ける。ガスボンベ取付部材33は、側壁部20に取り付けられる。ガスボンベ取付部材33は、例えばベルト状などであり、例えばガスボンベ31の外周面の周囲に巻かれる。
【0033】
起動装置35(開放装置)は、ガスボンベ31からシュート本体10の内部(少なくとも側壁部20の内部)へのガスの供給を開始させる。起動装置35は、複数のガスボンベ31のそれぞれに取り付けられる。すなわち、1つのガスボンベ31に1つの起動装置35が取り付けられる。例えば、起動装置35は、ガスボンベ31よりも後側X2に配置される。
図4に示すように、起動装置35は、本体部35aと、ガス通路35bと、ガスボンベ接続部35cと、針状部35dと、逆止弁35eと、操作部35f(
図3参照)と、を備える。
【0034】
本体部35aは、起動装置35の本体部分である。本体部35aは、側壁部20に取り付けられ、側壁部20に固定される。本体部35aは、どのような形状でもよく、
図4に示す例では略直方体状である。
【0035】
ガス通路35bは、ガスが通ることが可能な通路である。ガス通路35bは、本体部35aの内部に設けられる。ガス通路35bは、ガスボンベ接続部35cと側壁部20の内部とが連通するように設けられる。
【0036】
ガスボンベ接続部35cは、ガスボンベ31が接続される部分である。ガスボンベ接続部35cは、ガスボンベ31を着脱可能であり、例えば人力でガスボンベ31を着脱可能に構成される。ガスボンベ接続部35cは、ガスボンベ31の長手方向(例えば前後方向X)にガスボンベ31を着脱可能である。具体的には例えば、ガスボンベ接続部35cは、ねじによりガスボンベ31を着脱可能である。ガスボンベ接続部35cは、本体部35aに設けられた孔であり、例えば本体部35aの前側X1部分に設けられる。
【0037】
針状部35dは、ガスボンベ31の先端部(例えば後側X2端部)に孔をあけることで、ガスボンベ31からシュート本体10の内部へのガスの供給を開始させる。針状部35dは、本体部35aの内部に配置され、ガス通路35bの内部に配置される。針状部35dの長手方向は、ガスボンベ31の長手方向(例えば前後方向X)と一致または略一致する。針状部35dは、本体部35aに対して、ガスボンベ31の長手方向に移動(さらに詳しくは往復移動)可能である。
【0038】
逆止弁35eは、ガスボンベ接続部35cからシュート本体10の内部に向かうガスの流れを許容し、シュート本体10の内部からガスボンベ接続部35cに向かうガスの流れを止める弁である。逆止弁35eにより、ガスボンベ31がガスボンベ接続部35cから取り外されても、シュート本体10の内部から外部に起動装置35を通ってガスが流出することがない。逆止弁35eは、ガス通路35bに設けられる。なお、ガス通路35bを開閉する弁であって逆止弁35eとは異なる弁(方向制御弁など)が、ガス通路35bに設けられてもよい。例えば手動によりガス通路35bを開閉する弁(ハンドバルブ)がガス通路35bに設けられてもよい。例えばボールバルブなどの弁が、ガス通路35bに設けられてもよい。
【0039】
操作部35fは、
図3に示すガスボンベ31からシュート本体10の内部へのガスの供給を開始するための操作(ガス供給開始操作)が行われる部分である。操作部35fは、本体部35aに取り付けられる。操作部35fは、本体部35aのうちガスボンベ31が取り付けられている面(前側X1の面)とは異なる面(例えば後側X2の面、下側Z2の面など)に取り付けられる。操作部35fは、本体部35aに対して移動可能であり、例えば本体部35aに回転可能でもよく、例えば本体部35aに平行移動可能(スライド可能)でもよい。例えば、操作部35fが後側X2に操作されることで、ガス供給開始操作が行われる。操作部35fは、
図3に示す例では略L字状である。なお、
図3に4つ示した起動装置35のうち、同図における上の2つの起動装置35の操作部35fは操作されていない状態の例、同図における下の2つの起動装置35の操作部35fは操作された状態の例である。
【0040】
連動機構37は、複数の起動装置35によるガスの供給の開始(さらに詳しくはガス供給開始操作)を連動させる。連動機構37は、複数の起動装置35の操作部35fの操作を連動させる(すなわち複数の操作部35fを同時に操作する)。1つの連動機構37は、複数の起動装置35(さらに詳しくは操作部35f)に取り付けられる。1つの連動機構37が連動させる起動装置35の数は、複数(2以上)であり、
図3に示す例では2であり、3以上でもよい。避難用シュート1が備えるすべての起動装置35を、1つの連動機構37が連動させる必要はない。連動機構37は、複数設けられてもよい。シュート幅方向Y片側(例えば左側)のすべての起動装置35を1つの連動機構37が連動させてもよい。
図3に示す例では、シュート幅方向Y片側(例えば左側)の側壁部20に起動装置35が4つ設けられるところ、2つの連動機構37・37のそれぞれが、起動装置35を2つずつ連動させる。連動機構37は、例えば後側X2に操作されることで、ガス供給部30にガスの供給を開始させる。連動機構37は、例えば、線状部37aと、持ち手部37bと、を備える。
【0041】
線状部37aは、複数の起動装置35それぞれの操作部35fに取り付けられる。複数(
図3に示す例では2つ)の操作部35fに取り付けられた複数(
図3に示す例では2つ)の線状部37aは、互いに連結される。線状部37aは、線状の部材であり、紐でもよく、ワイヤでもよい。
【0042】
持ち手部37bは、手動での連動機構37の操作を容易にする。持ち手部37bは、線状部37aに接続される。持ち手部37bが操作される(例えば後側X2に引っ張られる(詳細は後述))ことで、線状部37aを介して複数の操作部35fが同時に操作される。なお、連動機構37の構成は様々に変形可能である。例えば、線状部37aの一部または全部に変えて、棒状や板状などのリンク部材などが設けられてもよい。
【0043】
排気部50は、
図1に示すシュート本体10の内部から外部にガスを排出するための部分である。排気部50は、シュート本体10のどの部位に設けられてもよく、
図1に示す例では脚部12に設けられ、さらに詳しくは脚部12のシュート幅方向外側Y2の面に設けられる。排気部50は、具体的には例えば、シュート本体10に設けられた孔と、この孔を塞ぐ蓋と、を備えるものである。
【0044】
(使用状態から格納状態への変化)
避難用シュート1は、次のように使用状態から格納状態に変えられる。シュート本体10の内部のガスが、排気部50を介して、シュート本体10の外部に抜かれる。そして、
図5に示すように、避難用シュート1が、平面状に広げられた状態である伸展状態にされる。ここでは、避難用シュート1が伸展状態のときに、上屈曲部上面17aが鉛直上向きを向く場合(「上側Z1」が鉛直上向きである場合)について説明する。伸展状態の避難用シュート1が畳まれることで、避難用シュート1が格納状態とされる(
図8などを参照)。避難用シュート1の格納状態には、例えば、第1タイプ(
図8参照)、第2タイプ(
図10参照)、および第3タイプ(
図12参照)がある。避難用シュート1を、あるタイプの格納状態にするための畳み方の手順は様々に存在するところ、以下では、畳み方の手順の一例を説明する。
【0045】
(第1タイプ:ガスボンベ31内側、滑降面11a内側)
避難用シュート1が、伸展状態(
図5参照)から第1タイプの格納状態(
図8参照)に変えられる手順の一例は、次の通りである。
【0046】
(脚部支持部15および側壁部20の折り畳み)
図5に示す脚部支持部15が、脚部本体部13と対向するように、脚部本体部13に対して折り畳まれる。例えば、
図6に示すように、脚部支持部内側面15bが脚部後面13bと対向するように、脚部支持部15が、脚部本体部13に対して折り畳まれる(この折り畳みの向きは逆でもよい)。また、
図5に示す滑降側壁部21が、滑降部11と対向するように、滑降部11に対して折り畳まれる。例えば、滑降側壁部内側面21bが滑降面11aと対向するように、滑降側壁部21が、滑降部11に対して折り畳まれる(
図6参照)(この折り畳みの向きは逆でもよい)。また、
図5に示す上側壁部27が、上屈曲部17と対向するように、上屈曲部17に対して折り畳まれる。ここでは、上側壁部内側面27bが上屈曲部上面17aと対向するように、上側壁部27が、上屈曲部17に対して折り畳まれる(
図6参照)。
【0047】
(ロール体Rの平行移動方向)
図7に示すように、シュート本体10の脚部12側の部分から、シュート本体10の上屈曲部17側の部分に向かって、シュート本体10がロール状に巻かれる(ロール状に巻かれた部分を、ロール体Rとする)。すなわち、シュート本体10のうち、
図1に示す使用状態のときに下側Z2に配置される部分から、使用状態のときに上側Z1に配置される部分に向かって、
図7に示すようにシュート本体10がロール状に巻かれる。さらに詳しくは、
図1に示す使用状態のときに脚部12の下側Z2部分となる部分から、脚部12の上側Z1部分となる部分に向かって、
図7に示すように脚部12がロール状に巻かれる。また、
図1に示す使用状態のときに滑降部11の下側Z2部分となる部分から、滑降部11の上側Z1部分となる部分に向かって、
図7に示すように滑降部11がロール状に巻かれる。このとき、滑降部11がロール状に巻かれるのと同時に、滑降側壁部21もロール状に巻かれる。具体的には、
図1に示す使用状態のときに滑降側壁部21の下側Z2部分となる部分から、滑降側壁部21の上側Z1部分となる部分に向かって、
図7に示すように滑降側壁部21がロール状に巻かれる。
【0048】
(ロール体Rの回転方向)
図5に示す脚部前面13a、滑降面11a、および上屈曲部上面17aを、シュート本体10の「表面」とする。
図2に示す脚部後面13b、反滑降面11b、および上屈曲部下面17bを、シュート本体10の「裏面」とする。
図7に示すようにシュート本体10がロール状に巻かれたとき、シュート本体10の表面(滑降面11aなど)は、シュート本体10の裏面(反滑降面11bなど)よりもロールの内側に配置される。上記「ロールの内側」は、ロール体Rの中心側(巻き始め側)であり、例えばロール体Rが円柱状であると仮定すれば径方向内側(内周側)である。具体的には例えば、
図2に示すように、滑降面11aの一部(特定の部分)を滑降面特定部11a1とする。反滑降面11bの一部を反滑降面特定部11b1とする。反滑降面特定部11b1は、シュート本体10が使用状態のときに滑降部11の厚さ方向に滑降面特定部11a1と対向する部分である。ロール状に巻かれたシュート本体10(
図7参照)では、滑降面特定部11a1は、反滑降面特定部11b1よりもロールの内側に配置される(脚部12および上屈曲部17も同様)。
【0049】
(ガス供給部30の位置)
図7に示すロール体Rが、ガス供給部30を覆うまで巻かれる(
図7の矢印T1を参照)。その結果、
図8に示すように、ガス供給部30は、上側壁部27と滑降部11との間に配置される(挟まれる)。よって、ガス供給部30が誤操作されることが抑制される。例えば、避難用シュート1が収納場所から取り出されるときや、避難用シュート1の設置の段取り時に、ガス供給部30が誤操作されることが抑制される。
【0050】
(第2タイプ:ガスボンベ31外側、滑降面11a内側)
避難用シュート1が、伸展状態(
図5参照)から第2タイプの格納状態(
図9参照)に変えられる手順について、上記の第1タイプ(
図8参照)の格納状態に変えられる場合との相違点を説明する。
【0051】
(ロール体Rの折り返し)
図7に示すように、シュート本体10が、ガス供給部30の近傍まで、上記と同様にロール状に巻かれる。そして、ロール体Rが、ガス供給部30の近傍まで巻かれたロール体Rの回転方向とは反対側に折り返される(
図7の矢印T2を参照)。このとき、ロール体Rが、上屈曲部下面17b(
図2参照)と対向するように折り返される。このとき、シュート本体10のうち折り返された部分を、
図10に示すように、折り返し部Fとする。
【0052】
(ガス供給部30の位置)
このようにシュート本体10がロール状に巻かれるとともに折り返し部Fで折り返される結果、ガス供給部30は、ロール体Rよりもロールの外側に配置される(露出する)。「ロールの外側」は、上記「ロールの内側」のとは反対側であり、例えばロール状が円柱状であると仮定すれば径方向外側(外周側)である。
【0053】
(第3タイプ:ガスボンベ31外側、滑降面11a外側)
避難用シュート1が、伸展状態(
図5参照)から第3タイプの格納状態(
図12参照)に変えられる手順について、上記の第1タイプ(
図8参照)との相違点を説明する。
図6に示すように、脚部支持部15および側壁部20が折り畳まれた状態とされた後、
図11に示すように、第1タイプの格納状態とは逆向きにロール体Rが巻かれる。さらに詳しくは、
図7に示すように、第1タイプの格納状態では、シュート本体10の表面(滑降面11aなど)が、シュート本体10の裏面(反滑降面11bなど)よりもロールの内側に配置されるように、シュート本体10がロール状に巻かれた。一方、
図11に示すように、第3タイプの格納状態では、シュート本体10の裏面(反滑降面11bなど)が、シュート本体10の表面(滑降面11a)などよりもロールの内側に配置されるように、シュート本体10がロール状に巻かれる。
【0054】
(ガス供給部30の位置)
このようにシュート本体10がロール状に巻かれる結果、
図12に示すように、ガス供給部30は、ロール体Rよりもロールの外側に配置される(露出する)。なお、
図11に示すロール体Rがガス供給部30の近傍まで巻かれ、上記「(ロール体Rの折り返し)」と同様の折り返しが行われてもよい。この場合、第1タイプの格納状態(
図8参照)と同様に、ガス供給部30は、上側壁部27と滑降部11との間に配置される。
【0055】
(格納状態から使用状態への展開)
避難用シュート1は、次のように格納状態から使用状態に変えられる(展開される)。
図3に示す連動機構37が操作されることで、ガス供給部30からシュート本体10の内部へのガスの供給が開始される。すると、
図9に示すように、シュート本体10が膨らみ、展開される。そして、
図2に示すように、避難用シュート1が使用状態になる。格納状態から使用状態への展開の手順の具体例は、次の通りである。
【0056】
(展開前の準備)
図8に示すように、避難用シュート1が第1タイプの格納状態で格納された場合の、避難用シュート1の展開の手順の一例は、次の通りである。格納状態の避難用シュート1が、車両C(
図2参照)の床面に置かれる。このとき、上屈曲部下面17bが下(鉛直下向き)を向くように、避難用シュート1が置かれる。上記のように、避難用シュート1が畳まれたとき(展開状態から格納状態に変えられたとき)に、
図6に示す上側壁部内側面27bが上屈曲部上面17aと対向するように、上側壁部27が、上屈曲部17に対して折り畳まれた。よって、
図8に示すガス供給部30よりも上側Z1のロール体Rが、ガス供給部30よりも前側X1に移動させられると、ガス供給部30が露出される。
【0057】
(連動機構37およびガス供給部30の作動)
図3に示す連動機構37が操作されることで、操作部35fに対してガス供給開始操作が行われる。さらに詳しくは、操作者が、持ち手部37bを、例えば後側X2に移動させる(操作する、例えば引っ張る)。すると、持ち手部37bにつながれた線状部37aが、後側X2に移動する(引っ張られる)。すると、線状部37aにつながれた複数の操作部35fが、連動して(同時に)、本体部35aに対して後側X2に操作される(例えば回転する)。操作部35fが操作されると、
図4に示す針状部35dが、往復運動する。さらに詳しくは、針状部35dが、ガスボンベ31に近づき、ガスボンベ31に突き刺さり、ガスボンベ31に孔をあけた後、ガスボンベ31から離れ、元の位置(ガス供給開始操作が行われる前の位置)に戻る。すると、ガスボンベ31の内部のガスが、ガスボンベ31から開放され、膨張する。このガスが、ガスボンベ31の内部から、ガス通路35bを通り、シュート本体10の内部に供給される。このとき、複数のガスボンベ31が同時に、シュート本体10の内部にガスを供給する。
【0058】
(シュート本体10の展開)
すると、
図9に示すように、ロール体Rが、上屈曲部17を起点として前側X1に転がるように展開する。このとき、ロール体Rが、
図7に示すシュート本体10の表面(滑降面11aなど)を転がるように展開する。また、
図2に示す側壁部20が、上屈曲部17および滑降部11から、上側Z1に延びる(突出する)。また、脚部支持部15が、脚部本体部13に対して後側X2に延びる(突出する)。その結果、シュート本体10は、膨らんだ所定形状(滑り台のような形状)になり、所定の剛性を有し、使用状態になる。このとき、上屈曲部17が、車両Cの床面に置かれ、脚部12が、地面Gに置かれた状態になる。なお、脚部12と地面Gとの間に、クッション材などが配置されてもよい。また、シュート本体10の全体または一部が展開(
図9参照)された後に、ガス供給部30からシュート本体10の内部にガスが供給されてもよい。
【0059】
(展開の変形例)
図10に示すように、避難用シュート1が第2タイプの格納状態で格納された場合の、避難用シュート1の展開の手順の一例について、第1タイプとの相違点を説明する。格納状態の避難用シュート1が、例えば車両C(
図2参照)の床面に置かれる際に、ロール体Rよりも上にガス供給部30が配置される。そして、折り返し部Fが略平らになるように(折り返されない状態になるように)、ロール体Rが、ガス供給部30よりも前側X1に移動させられる。その後、第1タイプと同様に、連動機構37が操作される。
【0060】
図12に示すように、避難用シュート1が第3タイプの格納状態で格納された場合の、避難用シュート1の展開の手順の一例について、第1タイプとの相違点を説明する。
図13に示すガス供給部30がロール体Rよりも上(鉛直方向の上)に配置されるように、避難用シュート1が配置される。すなわち、
図12に示す避難用シュート1とは上下逆となるように、避難用シュート1が配置される。この避難用シュート1が、例えば車両Cの床面に置かれる。
図13に示すように、上屈曲部下面17bが車両Cの床面に接触するように、ロール体Rが前側X1に移動させられる。このとき、連動機構37を操作すべき方向が車両Cの外部から内部に向かう向きとなるように、避難用シュート1が置かれる。例えば、ガスボンベ31よりも起動装置35が、車両Cの外部から内部に向かう向きに配置されるように、避難用シュート1が置かれる。そして、連動機構37が後側X2(すなわち車両Cの外部から内部に向かう向き)に操作される。よって、車両Cの内部から外部に向かう向きに連動機構37が操作される場合に比べ、操作者が、連動機構37の操作を容易に行える。連動機構37が操作されると、ロール体Rが、上屈曲部17を起点として前側X1に転がるように展開する。このとき、ロール体Rが、シュート本体10の裏面(反滑降面11bなど)を転がるように展開する。その結果、
図2に示すように、避難用シュート1が、使用状態になる。
【0061】
なお、避難用シュート1の展開は様々な方法で行うことができる。上記の例では、避難用シュート1が、車両Cの床面に置かれた状態から展開されたが、避難用シュート1が、地面Gに置かれた状態から展開されてもよい。
【0062】
(追加のガス供給)
例えばガス供給部30の一部に不具合がある場合や、避難用シュート1の使用中に圧力が低下した場合などには、シュート本体10の内部の圧力が不十分になる場合が想定される。避難用シュート1では、シュート本体10の内部にガスを追加することができる。具体的には例えば、
図3に示す使用済みガスボンベ31が、未使用のガスボンベ31に交換される。そして、起動装置35が、未使用のガスボンベ31からシュート本体10の内部へのガスの供給を開始させる。また、例えば、起動装置35に不具合がある場合には、正常な起動装置35に未使用のガスボンベ31が取り付けられる。そして、正常な起動装置35が、ガスボンベ31からシュート本体10の内部へのガスの供給を開始させる。起動装置35は逆止弁35e(
図4参照)を備えるので、起動装置35からガスボンベ31が取り外されても、シュート本体10の内部のガスが起動装置35を通って外部に漏れることはない(または略ない)。
【0063】
(第1の発明の効果)
図2に示す避難用シュート1による効果は次の通りである。避難用シュート1は、格納状態(
図8参照)から膨張した使用状態になる。避難用シュート1は、車両Cの内部から車両Cの外部に避難者を滑降させるためのものである。避難用シュート1は、滑降部11と、上屈曲部17と、側壁部20と、ガス供給部30と、を備える。滑降部11は、避難用シュート1が使用状態のときに、水平方向に対して傾斜して配置され、避難者を滑降させるためのものである。
【0064】
[構成1-1]上屈曲部17は、避難用シュート1が使用状態のときに、車両Cの外部に配置される滑降部11の上側Z1部分から車両Cの内部に向かって延びるように設けられる。
【0065】
[構成1-2]側壁部20は、避難用シュート1が使用状態のときに、滑降部11および上屈曲部17のそれぞれのシュート幅方向外側Y2部分から上側Z1に延びるように設けられる。
【0066】
[構成1-3]ガス供給部30は、避難用シュート1を格納状態(
図8参照)から使用状態に変化させるときに、側壁部20の内部にガスを供給することで側壁部20を膨らませる。
図3に示すように、ガス供給部30は、複数のガスボンベ31と、起動装置35と、を備える。起動装置35は、複数のガスボンベ31のそれぞれに取り付けられ、ガスボンベ31から側壁部20の内部へのガスの供給を開始させる。
【0067】
[構成1-4]
図2に示すように、ガス供給部30は、側壁部20および上屈曲部17の少なくともいずれかの部分であって、避難用シュート1が使用状態のときに車両Cの内部に配置される部分に取り付けられる。
【0068】
上記[構成1-4]により、車両Cの内部から車両Cの外部に向かって避難用シュート1を展開させる場合に、次の効果が得られる。避難用シュート1のうち、避難用シュート1が使用状態のときに車両Cの外部に配置される部分(例えば滑降側壁部21)にガス供給部30が取り付けられる場合に比べ、ガス供給部30をより後側X2(より車両Cの内部側)に配置することができる。よって、ガス供給部30の操作を車両Cの内部で操作者に容易に行わせることができる。よって、避難用シュート1を格納状態から使用状態に変える作業の手間および時間を抑制することができる。また、車両Cの内部でガス供給部30が操作され、避難用シュート1が展開した後、ガス供給部30が車両Cの内部から外部に移動する程度に避難用シュート1を大きく移動させる作業を作業者が行う必要はない。よって、避難用シュート1を格納状態から使用状態に変える作業の手間および時間を抑制することができる。その結果、避難用シュート1による避難者の避難の開始を早めることができる。
【0069】
この効果の詳細は次の通りである。避難用シュート1が使用状態のときに車両Cの外部に配置される部分(例えば滑降側壁部21)にガス供給部30が取り付けられる場合について検討する(この場合の避難用シュート1を「シュート」とする)。[例A]格納状態のシュートが車両Cの出入口に置かれ、操作者がガス供給部30を操作することで、車両Cの出入口から車両Cの外部に向かってシュートが展開されることが想定される。このとき、操作者は、車両Cの出入口の近傍で操作を行う必要がある。[例A1]例えば、操作者は、車両Cの出入口から車両Cの外部に身を乗り出してガス供給部30を操作する場合が想定される。このような場合、操作者は、車両Cから落下しないように注意してガス供給部30を操作する必要がある。その結果、この操作に手間および時間がかかるおそれがある。[例A2]また、操作者が、車両Cの外部に身を乗り出さなくても、出入口の近傍(車両Cの前側X1の端部の近傍)でガス供給部30を操作する場合は、上記[例A1]と同様の問題が生じる。[例B]シュートが車両Cの内部で展開された後、展開されたシュートが、車両Cの外部の所定位置に配置される場合が想定される。この場合は、操作者は、車両Cの内部でガス供給部30を操作できる。しかし、この操作の後、操作者は、ガス供給部30が車両Cの内部から外部に移動する程度にシュートを大きく移動させる作業を行う必要がある。そのため、この作業に手間および時間がかかる。一方、上記[構成1-4]では、ガス供給部30は、側壁部20および上屈曲部17の少なくともいずれかの部分であって、避難用シュート1が使用状態のときに車両Cの内部に配置される部分に取り付けられる。よって、例えば、上記[例A1]、[例A2]、および[例B]のような問題を解消または抑制することができる。
【0070】
上記[構成1-1]では、上屈曲部17が、滑降部11の上側Z1部分から車両Cの内部に向かって延びるように設けられる。よって、上屈曲部17が設けられない場合(例えば避難者が車両Cの床などから滑降部11に直接移動する必要がある場合)に比べ、避難者が、上屈曲部17上から滑降部11上に容易に移動することができる。また、上記[構成1-2]では、
図1に示すように、上屈曲部17から上側Z1に延びる側壁部20(上側壁部27)が設けられる。よって、上屈曲部17上の避難者が、上側壁部27に対してシュート幅方向外側Y2に移動することが制限される。よって、避難者が、上屈曲部17上の所定の位置から滑降部11上に容易に移動することができる。よって、上記[構成1-1]および[構成1-2]により、避難者が、スムーズに避難できる。
【0071】
(第2の発明の効果)
図1に示すように、側壁部20は、滑降側壁部21と、上側壁部27と、を備える。滑降側壁部21は、避難用シュート1が使用状態のときに、滑降部11のシュート幅方向外側Y2部分から上側Z1に延びるように設けられる。上側壁部27は、避難用シュート1が使用状態のときに、上屈曲部17のシュート幅方向外側Y2部分から上側Z1に延びるように設けられる。
【0072】
[構成2]ガス供給部30は、上側壁部27に取り付けられる。
【0073】
上記[構成2]により、次の効果が得られる。ガス供給部30が滑降側壁部21に取り付けられる場合は、避難者が滑降部11を滑降する際に、避難者の手などがガス供給部30に接触しうる。または、避難者の手などがガス供給部30に接触しないような対策が必要になりうる。一方、上記[構成2]では、ガス供給部30は、上側壁部27に取り付けられるので、滑降側壁部21に取り付けられる必要はない。よって、避難者が滑降部11を滑降する際に、ガス供給部30が接触しない。
【0074】
(第3の発明の効果)
[構成3-1]避難用シュート1が格納状態(
図8および
図10参照)のときの上側壁部27は、上屈曲部17と対向するように、上屈曲部17に対して折り畳まれた状態である(
図5および
図6参照)。
【0075】
[構成3-2]避難用シュート1が格納状態(
図8および
図10参照)のときの滑降部11は、避難用シュート1が使用状態のときに滑降部11の下側Z2部分となる部分から上側Z1部分となる部分に向かって巻かれたロール状である(
図6および
図7参照)。
【0076】
上記[構成3-1]により、
図5に示す上側壁部27が上屈曲部17と対向するように折り畳まれない場合に比べ、格納状態のときの避難用シュート1のシュート幅方向Yの長さを短くすることができる。
【0077】
上記[構成3-1]および[構成3-2]により、
図8および
図10に示すように、避難用シュート1が格納状態のとき、上屈曲部17および上側壁部27は、ロール状に巻かれた滑降部11よりもロールの外側に配置される。また、上記[構成2]では、ガス供給部30は、上側壁部27に取り付けられる(
図2参照)。よって、避難用シュート1が格納状態のとき、ガス供給部30は、ロール状に巻かれた滑降部11よりもロールの外側に配置される。よって、
図7に示すように、滑降部11がロール状に巻かれる際に、ガス供給部30が邪魔にならず(または邪魔になりにくく)、滑降部11をロール状に巻く作業を作業者に容易に行わせることができる。
【0078】
上記[構成3-2]により、
図9および
図13に示すように、避難用シュート1が格納状態から使用状態に変えられる際に、ロール状に巻かれた滑降部11(ロール体R)が、上屈曲部17を起点として転がるように展開できる。よって、
図9に示す滑降部11が蛇腹状に折りたたまれた場合などに比べ、滑降部11を展開させるのに必要な時間を削減することができる。
【0079】
(第4の発明の効果)
図2に示すように、避難用シュート1が使用状態のときに滑降部11の上面となる面を滑降面11aとする。滑降面11aの一部を、滑降面特定部11a1とする。避難用シュート1が使用状態のときに滑降部11の下面となる面を反滑降面11bとする。反滑降面11bのうち、避難用シュート1が使用状態のときに滑降部11の厚さ方向に滑降面特定部11a1と対向する部分を、反滑降面特定部11b1とする。
【0080】
[構成4]
図8に示すように、避難用シュート1が格納状態のとき、滑降面特定部11a1は、反滑降面特定部11b1よりもロールの内側に配置される。
【0081】
上記[構成4]により、
図9に示すように、ロール状に巻かれた滑降部11など(ロール体R)が転がるように展開する際、ロール体Rが、滑降面11a側(反滑降面11b側でなく滑降面11a側)に配置される。よって、上屈曲部17の上屈曲部下面17bが下(鉛直方向の下)を向くように配置された状態で滑降部11が展開される際に、ロール体Rが地面G(
図2参照)や車両Cの床(
図2参照)などに接触しない。よって、ロール体R(少なくとも滑降部11)をスムーズに展開させることができる。
【0082】
(第5の発明の効果)
[構成5]
図6に示すように、避難用シュート1が格納状態(
図8参照)のときの上側壁部27は、上屈曲部上面17a(使用状態のときに上屈曲部17の上面となる面)と対向するように、上屈曲部17に対して折り畳まれた状態である(
図6参照)。
【0083】
上記[構成2]では、
図1に示すように、ガス供給部30は、避難用シュート1が使用状態のときの上側壁部27のシュート幅方向外側Y2部分に取り付けられる。そして、上記[構成5]では、
図6に示すように、避難用シュート1が格納状態(
図8参照)のときに、上側壁部27が、上屈曲部上面17aと対向するように上屈曲部17に対して折り畳まれた状態である。よって、避難用シュート1が格納状態(
図8参照)から使用状態に変えられる途中の状態(
図7、
図9参照)で、上屈曲部17に対して上側壁部27が折り畳まれた状態のままで、操作者が、ガス供給部30を操作できる。よって、上屈曲部17に対して折り畳まれた上側壁部27を展開しなければガス供給部30を操作できない場合に比べ、ガス供給開始操作をより早く開始することができる。その結果、避難者をより早く避難させることができる。
【0084】
(第6の発明の効果)
[構成6]
図8に示すように、避難用シュート1が格納状態のときのガス供給部30は、上側壁部27と滑降部11との間に配置される。
【0085】
上記[構成6]により、避難用シュート1が格納状態のときに、ガス供給部30が避難用シュート1の外部側に露出することが抑制される。よって、ガス供給部30が誤って操作されることを抑制することができる。よって、ガス供給部30から側壁部20の内部へのガスの供給が誤って開始されることを抑制することができる。
【0086】
(第7の発明の効果)
[構成7]
図1に示すように、避難用シュート1が使用状態のとき、シュート幅方向Yにおけるガスボンベ31の長さは、側壁部20のシュート幅方向Yにおける設計厚さよりも小さい。
【0087】
上記[構成7]により、ガスボンベ31の周囲の物がガスボンベ31に接触しても、ガスボンベ31が側壁部20にシュート幅方向内側Y1に入り込む(食い込む)ことができる。よって、左右の側壁部20・20の間隔が狭くなることが抑制される。よって、避難者が、上屈曲部17上を移動しやすい、または、滑降部11上を滑降しやすい。
【0088】
(第8の発明の効果)
[構成8]ガスボンベ31の数は、避難用シュート1を格納状態(
図8参照)から使用状態に変化させるのに必要なガスボンベ31の数よりも多い。
【0089】
上記[構成8]により、複数のガスボンベ31および複数の起動装置35(
図3参照)の一部に不具合がある場合でも、避難用シュート1を使用状態にしやすい。
【0090】
(第9の発明の効果)
[構成9]
図2に示すように、使用状態のときに滑降部11から上屈曲部17に向かう側を、後側X2とする。
図3に示すように、起動装置35は、後側X2に操作されることで、ガス供給部30にガスの供給を開始させるように構成される。
【0091】
上記[構成9]により、
図13に示すように、ガス供給部30でのガス供給開始操作が車両Cの内部で行われる場合に、操作者が、起動装置35の操作を、車両Cの内部側から容易に行うことができる。さらに詳しくは、例えば滑降側壁部21にガス供給部30が取り付けられ、かつ、起動装置35の操作が前側X1に行われる必要がある場合に比べ、操作者が、起動装置35の操作を車両Cの内部側から容易に行うことができる。
【0092】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 避難用シュート
11 滑降部
11a 滑降面
11b 反滑降面
17 上屈曲部
20 側壁部
21 滑降側壁部
27 上側壁部
30 ガス供給部
31 ガスボンベ
35 起動装置
C 車両
X2 後側
Y シュート幅方向
Y2 シュート幅方向外側