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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】生体情報収集装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20240220BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/01 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019038778
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020141746
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」「スマート治療室における患者情報統合モニター上にデータ表示可能な、外科医の指先や鏡視下手術鉗子ならびにロボットアーム先端に装着可能な小型組織オキシメーター温度センサーの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】海野 直樹
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087326(JP,A)
【文献】特開2016-214731(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0103355(KR,A)
【文献】特開2005-204869(JP,A)
【文献】特開2002-136505(JP,A)
【文献】米国特許第05007423(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0317939(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105056357(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455
A61B 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の表面に接触させて生体情報を収集する生体情報収集センサと、
少なくとも一つの前記生体情報収集センサが収集した生体情報を表示する、前記生体情報収集センサとは別体に構成された表示装置と、を有する生体情報収集装置であって、
前記生体情報収集装置は、複数の前記生体情報収集センサを有しており、
前記生体情報収集センサは、
赤外線、あるいは近赤外線を発光する発光部と、
前記測定対象を透過した光を収集する受光部と、
前記測定対象の温度を測定する温度計測部と、
前記発光部、前記受光部及び前記温度計測部を収容する本体部と、
少なくとも前記発光部を制御して前記生体情報の収集を制御する計測制御部と、
を備え、
前記本体部は前記生体情報を収集する際に前記測定対象の側を向き、前記測定対象と接触する装着面を有し、
前記発光部、前記受光部及び前記温度計測部は、
前記装着面側に並んで配置されており、
前記計測制御部は、
前記測定対象の温度が予め定められた測定停止温度を下回る場合には、前記発光部を消灯し、更に前記測定対象の温度が、予め定められた前記測定停止温度よりも大きな所定温度を上回るまで前記発光部が消灯された状態を維持する制御を行う、
生体情報収集装置。
【請求項2】
前記温度計測部は、
前記装着面において、前記発光部と前記受光部が並ぶ方向に延びる仮想直線上に配置されている請求項1に記載の生体情報収集装置。
【請求項3】
前記本体部の前記装着面側の外周に、前記測定対象と接触し、前記本体部から離れる方向に突出して延びる辺縁遮光部が設けられている請求項1または請求項2に記載の生体情報収集装置。
【請求項4】
前記辺縁遮光部は、
前記測定対象と接触する接触面と、前記接触面とは反対側の外側面の間の前記測定対象に向かう方向の距離が、前記本体部から離れるにつれ短くなっている請求項3に記載の生体情報収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報の収集に用いて好適な生体情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線や近赤外線を、照射端面から生体の組織に照射すると共に、生体の組織を透過した透過光を受光端面にて受光して、測定対象の組織の酸素飽和度などの生体に関する情報を収集する代謝情報測定用プローブが知られている(例えば特許文献1参照。)。また、発光部及び受光部を備えた酸素飽和度測定部と、測定対象の温度に関する情報を収集するための温度感知部を備えた医療機器も知られている(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-234737号公報
【文献】特表2005-534376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載された技術では、受光端面にて受光した透過光を処理演算して、測定対象の組織の酸素飽和度に関する情報の収集を行うことはできるものの、酸素飽和度に関する情報の収集を行った部分の温度など、その他の生体に関する情報を収集することができないという問題があった。
【0005】
また特許文献2に記載された技術では、酸素飽和度に関する情報に加えて温度にする情報の収集はできるものの、温度に関する情報の収集を行う温度感知部は、酸素飽和度に関する情報の収集を行う酸素飽和度測定部が配置されている側とは反対側に配置されている。このため、酸素飽和度に関する情報の収集が行われる箇所とは異なる部分の温度に関する情報を収集することになるため、同一の箇所における組織の酸素飽和度に関する情報と温度に関する情報を同時に収集することはできないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、測定対象の酸素飽和度に関する情報と、酸素飽和度に関する情報が収集された部分の温度に関する情報も同時に収集可能な生体情報収集センサ、及び当該生体情報収集センサを用いた生体情報収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の生体情報収集センサは、測定対象の表面に接触させて生体情報を収集するセンサであって、赤外線、あるいは近赤外線を発光する発光部と、前記測定対象を透過した光を収集する受光部と、前記測定対象の温度を測定する温度計測部と、前記発光部、前記受光部及び前記温度計測部を収容する本体部とを備え、前記本体部は前記生体情報を収集する際に前記測定対象の側を向き、前記測定対象と接触する装着面を有し、前記発光部、前記受光部及び前記温度計測部は、前記装着面側に並んで配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記発明においては、前記温度計測部は、前記装着面において、前記発光部と前記受光部が並ぶ方向に延びる仮想直線上に配置されていることが好ましい。
【0009】
上記発明においては、前記本体部の前記装着面側の外周に、前記測定対象と接触し、前記本体部から離れる方向に突出して延びる辺縁遮光部が設けられていることが好ましい。
【0010】
上記発明においては、前記辺縁遮光部は、前記測定対象と接触する接触面と、前記接触面とは反対側の外側面との間の前記測定対象に向かう方向の間の距離が、前記本体部から離れるにつれ短くなっていることが好ましい。
【0011】
上記発明においては、少なくとも前記発光部を制御して前記生体情報の収集を制御する計測制御部を更に備え、前記計測制御部は、前記温度計測部が測定した前記測定対象の温度が予め定められた測定停止温度を下回る場合には、前記発光部を消灯する制御を行うことが好ましい。
【0012】
本発明の生体情報収集装置は、上記いずれかの生体情報収集センサと、少なくとも一つの前記生体情報収集センサが収集した生体情報を表示する表示装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の生体情報収集センサによれば、同一の箇所の組織の酸素飽和度に関する情報と、温度に関する情報の収集を同時に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)は、本発明の生体情報収集装置に係る生体情報収集センサの一実施形態を説明する斜視図である。図1(b)は、本発明の生体情報収集装置に係る表示装置の一実施形態を説明する図である。
図2】本発明の生体情報収集装置を説明するブロック図である。
図3図3(a)は、本発明の生体情報収集装置に係る生体情報収集センサの一実施形態を説明する側面図である。図3(b)は、本発明の生体情報収集装置に係る生体情報収集センサの他の例を説明する側面図である。
図4】本発明の生体情報収集装置に係る生体情報収集センサの一実施形態を説明する下面図である。
図5】本発明の生体情報収集装置に係る生体情報収集センサの使用状態の一例を説明する図である。
図6】本発明の生体情報収集装置に係る表示装置の表示画面の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る生体情報収集装置100について図1から図6を参照しながら説明する。本実施形態に係る生体情報収集装置100は、生体情報収集センサ1と、表示装置50から主に構成されている。
【0016】
本実施形態に係る生体情報収集装置100は、生体情報収集センサ1を患者の皮膚に配置して、患者の組織の酸素飽和度に関する情報や、温度に関する情報を収集する医療用の生体情報収集装置である。なお以降において、生体情報収集装置100が収集する、患者の組織の酸素飽和度に関する情報や温度に関する生体に関する情報を「生体情報」とも記載する。生体情報収集センサ1が収集した生体情報は、表示装置50に表示される。
【0017】
1.構成の説明
生体情報収集センサ1は、患者の組織の酸素飽和度に関する情報や、生体情報収集センサ1が装着された箇所における患者の温度に関する情報を取得する機能を主に有している。また生体情報収集センサ1は、取得した生体情報を、生体情報データとして表示装置50に出力する機能も有している。表示装置50は、生体情報収集センサ1が収集した生体情報を表示する機能を主に有している。
【0018】
なお以降の説明では、前後、左右、上下の方向は特に断りの無い限り、図中に示した方向とする。また、生体情報収集センサ1を、生体情報が収集可能な状態で患者に接触させて配置することを、「装着する」とも記載する。更に、生体情報収集センサ1を患者に装着した際、測定対象となる患者と接触する生体情報収集センサ1の面を「装着面」とも記載する。また、生体情報収集センサ1が生体情報を収集することを、「測定」とも記載する。
【0019】
生体情報収集センサ1は、主に発光部2、受光部3,4、温度計測部5、制御部6、バッテリ7、発光制御部8、及び温度計測制御部9(以降においてこれらを総称して「電子部品」とも記載する。)を主に備えている。これらの電子部品は、略直方体形状の筐体部10の内部に収容されている。
【0020】
発光部2は、赤外線あるいは近赤外線の光を発光し、発光した光を測定対象部位の組織に照射する部分である。発光部2は、それぞれ波長の異なる光を発光する図示されていない2つの発光ダイオード(以降に於いて「LED」とも記載する。)を備えている。本実施形態では発光部2が、約770nmの波長の光を発光する図示されていないLED2aと、約830nmの波長の光を発光する図示されていないLED2bを備えている例に適用して以降の説明を行う。なお発光部2は、所定の波長の光を発光する他の公知の発光素子を備えたものであってもよい。
【0021】
発光制御部8は、発光部2による光の照射を制御する部分である。具体的には発光制御部8は、詳細は後述する制御部6からの信号に従って、発光部2のLED2a、LED2bが発光するために必要な電流を出力したり停止したりして、発光部2による光の照射を制御する。
【0022】
受光部3,4は、受光した光に応じた信号を制御部6が処理可能な信号として出力する部分である。受光部3,4は、受光した光に応じた電気信号を出力する図示されていないフォトダイオード(以降において「PD」とも記載する。)と、PDが出力した電気信号を制御部6が処理可能な信号として出力する図示されていない信号処理部を主に備えている。なお以降の説明において、受光部3に備えられているPDをPDaと、受光部4に備えられているPDをPDbと記載する。また、受光部3,4が出力する、PDa及びPDbが受光した光に関する情報を「光学情報」とも記載する。なお受光部3,4は、受光した光に応じた電気信号を出力する他の公知の素子を備えたものであってもよい。
【0023】
温度計測部5は、その端部に設けられた計測部5aが接触した部分の温度に関する情報を収集し、収集した温度に関する情報を電気信号として出力する公知の温度センサ(サーミスタ)である。本実施形態では、温度計測部5が略円柱形状の形状をしており、その先端部に接触した部分の温度を計測する計測部5aが備えられている例に適用して以降の説明を行うが、温度計測部5の形状はこれに限定されるものではない。
【0024】
温度計測制御部9は、温度計測部5が出力した電気信号を、制御部6が処理可能な信号に変換して出力する部分である。具体的には、温度計測制御部9は、温度計測部5が出力した電流に関する信号を電圧信号に変換して出力する機能を有する部分である。以降の説明において温度計測部5が収集した温度に関する情報を「温度情報」とも記載する。
【0025】
制御部6は、主に発光部2、受光部3,4、及び温度計測部5を制御すると共に、受光部3,4からの光学情報、及び温度計測制御部9からの温度情報を処理して、患者の測定対象部位である組織の酸素飽和度に関する情報、及び測定対象の温度に関する情報(以降において「体温情報」とも記載する。)を算出する部分である。また制御部6は、算出した組織の酸素飽和度に関する情報、及び体温情報を、表示装置50が処理可能な生体情報データとして出力する機能も有している。
【0026】
制御部6は、生体情報の収集を制御する計測制御部61、アナログ信号をデジタルデータに変換処理するA/D変換部62、光学情報及び温度情報に基づいて、組織の酸素飽和度に関する情報や体温情報を算出する演算処理部63などを主に有している。また制御部6は、表示装置50と通信を行う通信部64も有している。なお演算処理部63は、取得した光学情報が予め定められた所定の条件を逸脱するなど、生体情報収集センサ1が通常とは異なる状態であると判断される場合に、異常を通知する信号を通信部64に出力させる機能も有している。
【0027】
本実施形態では制御部6がアンテナ部65を備え、通信部64がアンテナ部65を介して無線通信信号を送受信して表示装置50と通信を行う公知の無線通信機能を有している例に適用して以降の説明を行う。具体的には通信部64が、公知の無線通信規格であるBLE規格(Bluetooth Low Energy)(「Bluetooth」は登録商標。)に従った通信が可能な無線通信機能を有している例に適用して以降の説明を行う。なお通信部64は、通信信号を受信する受信装置が、当該通信信号を送信した通信部64を識別できる識別情報を含む通信信号を無線当該通信規格に従って送信する。なお通信部64は、上記とは異なる公知の通信規格に従い通信を行う通信機能を備えたものであってもよい。
【0028】
バッテリ7は、筐体部10の内部の電子部品に、動作に必要な電力を供給する電源である。バッテリ7は、生体情報収集センサ1の用途に応じた使用時間の間、必要となる電力を供給可能な容量を有していることが好ましい。ON/OFF回路11は、使用者の操作に従って、筐体部10の内部の電子部品への電気の供給、停止を行う電源スイッチ回路である。
【0029】
発光部2、受光部3,4、温度計測部5、制御部6、発光制御部8、温度計測制御部9、及びON/OFF回路11は、図示されていない基板40に半田などの公知の方法で固定され、電気的に接続されている。少なくとも発光部2、受光部3,4、及び温度計測部5は、基板40の詳細は後述する装着面36側の面に並んで配置されている。より具体的に説明すると、発光部2、受光部3,4、及び温度計測部5は、装着面36の左右方向の中心を通って前後の方向に向かって延びる仮想直線H上に並んで配置されている。本実施形態では、前側から温度計測部5、発光部2、受光部3、受光部4の順番で並んで配置されている例に適用して以降の説明を行う(図4参照。)。なお発光部2、受光部3,4、及び温度計測部5は、基板40の装着面36側の面の上記とは異なる部分に直線状に並んで配置されてもよい。また温度計測部5は、装着面36側の面に配置されるのであれば、上記とは異なる位置に配置されていてもよい。
【0030】
なお、発光部2と受光部3の間の距離、及び発光部2と受光部4の間の距離は、組織の酸素飽和度を算出する演算式に従い、酸素飽和度に関する情報を収集する組織の深度、即ち生体情報収集センサ1を装着する患者の皮膚の表面から酸素飽和度に関する情報が収集される組織までの距離に基づいてそれぞれの算出される間隔で配置されている。
【0031】
なお基板40上の、発光部2と受光部3の間には、遮光素材からできた図示されていない遮光板が設けられている。この遮光板は、測定対象である患者の組織を通過せずに受光部3,4に直接入射される発光部2からの光を遮るためのものである。
【0032】
バッテリ7は、筐体部10の内側の基板40より上側の部分に公知の方法で固定され、ON/OFF回路11を介して基板40に電気的に接続されている。なおバッテリ7は、無線通信機能の妨げとなることのない様に配置されている。
【0033】
表示装置50は、通信機能部51、表示部52、演算処理部53及び記憶部54を主に有している。表示部52は、タッチパネル式の公知のディスプレイデバイスである。表示部52には、生体情報収集センサ1から送信された生体情報データが表示される他、生体情報収集センサ1の操作や設定に関する画面が表示される。具体的には、使用者によって生体情報の収集の開始や停止、あるいは一次停止が指示される画面や、使用者によって生体情報が算出される時間間隔などが設定されるための画面等が表示される。表示部52は、タッチパネル式のディスプレイデバイスであるため、使用者は表示されたボタンなどを直接触れて操作することで、演算処理部53などに必要な入力を行うことができる。なお使用者による操作は、その他の公知の入力デバイスによって行われてもよい。
【0034】
通信機能部51は、主に生体情報収集センサ1の通信部64と通信を行う部分である。本実施形態では、通信機能部51が、複数の通信部64と同時に通信可能な公知の無線通信規格(BLE規格)に従って通信を行う例に適用して以降の説明を行う。具体的に説明すると、通信機能部51は、公知の無線通信規格に従った無線通信信号を送受信して生体情報収集センサ1と通信を行う。通信機能部51は、複数の通信部64と通信を行う場合に、受信した通信信号に含まれる通信部64の識別情報から、当該通信信号を送信した通信部64を識別して必要な処理を行う。即ち、表示装置50は、複数の生体情報収集センサ1からそれぞれの生体情報データを受信し、それぞれ別個のデータとして処理し、複数の生体情報データを生体情報収集センサ1ごとに同時に表示部52に表示する。
【0035】
演算処理部53は、通信機能部51や表示部52を制御するとともに、通信機能部51が受信した生体情報データを表示部52に表示するために必要な処理を行う部分である。記憶部54は、通信機能部51が受信した生体情報データなどを記憶するハードディスクやメモリなどの公知の記憶媒体である。
【0036】
本実施形態では表示装置50が、公知のタブレットPCに、専用のプログラムがインストールされたものである例に適用して以降の説明を行う。即ち、表示装置50の上記の各部の機能が、タブレットPCのハードウェアと、記憶部54にインストールされた専用プログラムが協働して実現されている例に適用して以降の説明を行う。なお表示装置50は、専用のプログラムがインストールされた他の公知のノートPCや他のPCであってもよい。あるいは表示装置50は、上記の各機能を有する専用のハードウェアから構成された専用の装置であってもよい。
【0037】
2.生体情報収集センサの外観の説明
筐体部10は、一方の側が開口した略直方体の外装20と、板状の装着面板30から主に構成されている。外装20は、ポリカーボネートなどの公知の樹脂素材からなる板材が、略直方体形状に形成されたものである。装着面板30は、ゴムなどの柔軟性を有した公知の素材からなる板状の部分である。なお装着面板30は、少なくとも生体情報を収集する際に用いられる波長の光を遮光する特性も有している。外装20及び装着面板30は、バッテリ7の出力電圧に応じた耐電圧を有していることが好ましい。また装着面板30は、例えば患者の皮膚などに接触させても炎症などを生じるおそれのない、生物学的に安全な素材でできていることが好ましい。なお、装着面板30は、少なくとも生体情報を収集する際に用いられる波長の光を遮光する特性を有すると共に、生物学的に安全な素材であれば他の公知の素材が用いられていてもよい。なお筐体部10が、特許請求の範囲における本体部とされている。
【0038】
外装20は、使用時に生体情報の収集が行われる患者の皮膚の表面と同じ側を向く略長方形の上側面部21と、上側面部21の4つ辺からそれぞれ延出する4つの側面部22と、4つの側面部22に囲まれ、上側面部21とは反対側にある開口部を主に有している。なお、上側面部21は、前後方向に長い略長方形をしている。以降の説明において、この上側面部21の長い側の方向を、「長手方向」とも記載する。なお上側面部21の形状は上記に限定される訳ではなく、正方形や他の形状をしていてもよい。
【0039】
上側面部21の端側には、スイッチ23が設けられている。このスイッチ23は、ON/OFF回路11を動作させて生体情報収集センサ1の電気のON/OFFを行う公知のスイッチである。また、このスイッチ23と隣接してバッテリ7から電気が供給されている際に点灯するランプ24が設けられている。なおスイッチ23のON/OFFの状態が、スイッチ23に備えられているトグルスイッチなどの位置などによって識別可能な場合などには、ランプ24を設けない構成としてもよい。
【0040】
外装20の開口部には、上側面部21よりも大きな面積の装着面板30が、外装20の開口部を塞ぐようにして配置されている。外装20と装着面板30は、公知の方法によって固定されている。より具体的に説明すると、外装20は、筐体部10を上側から見た状態において装着面板30の略中心に上側面部21の中心が一致する様に配置され、装着面板30に固定されている。換言すれば、外装20は、装着面板30の一方の側の面に配置した際に、外装20が重なっていない装着面板30の部分、即ち重ねられた外装20からはみ出した装着面板30の部分の前後方向の幅がそれぞれ略等しく、更に左右方向の幅もそれぞれ略等しくなる様に配置され、装着面板30に固定されている。なお以降において、外装20からはみ出している装着面板30の部分(外装20と重なっていない装着面板30の部分)を辺縁遮光部31とも記載する。なお、装着面板30の外装20とは反対側の面が、使用時に患者の皮膚の表面と接触する装着面36である。
【0041】
辺縁遮光部31は、外装20から離れるにつれ、その上下方向の厚さが薄くなる形状をしている。即ち、筐体部10を一方の側面部22の側から見た際に、装着面36に向かって傾斜した形状をしている(図3(a)参照。)。換言すれば、装着面36側の面と装着面36とは反対側の外側面37との間の上下方向の長さが、外装20から離れるにつれ、短くなる形状をしている。なお、辺縁遮光部31は、上記の様な形状に限定される訳ではなく、同一の厚さを有したものであってもよい(図3(b)参照。)。あるいは他の形状をしたものであってもよい。
【0042】
装着面板30には、基板40に配置された発光部2、受光部3,4、及び温度計測部5と対応する部分に、それぞれ貫通孔32~35が設けられている。この貫通孔32~35は、仮想直線H上に並んで配置されている。
【0043】
貫通孔32,33は、装着面36側から見た時の開口の大きさが、それぞれ同じ側から見た受光部3,4のPDa,PDbが配置されている部分と略同一の大きさの開口を有した貫通穴である。なお、貫通孔32,33の開口は、受光部3,4が透過光を受光する妨げとならない大きさであれば、上記と異なるものであってもよい。また、貫通孔34は、装着面36側から見た時の開口の大きさが、同じ側から見た発光部2のLED2a、LED2bが配置されている部分と略同一の大きさの開口を有した貫通穴である。なお、貫通孔34の開口は、発光部2が測定対象に必要な光を照射できる大きさであれば上記とは異なるものであってもよい。貫通孔35は、温度計測部5の計測部5aが挿入可能な大きさの開口を有した貫通穴である。なお温度計測部5は、その計測部5aが装着面36から僅かに突出する様に貫通孔35に挿入され配置される。なお、貫通孔32~34は、光の照射及び受光の妨げとならない様な透明な公知の樹脂素材等で封止され、発光部2や受光部3,4の部分が露出しない様にされていてもよい。あるいは装着面36に、光の照射や受光の妨げとならない様な公知のフィルム素材が貼り付けられて、発光部2や受光部3,4の部分が露出しない様にされていてもよい。
【0044】
3.動作の説明
続いて、生体情報収集装置100の動作について説明を行う。なお、以降では、同一の2つの生体情報収集センサ1(以降において「生体情報収集センサ1A,1B」とも記載する。)が用いられて生体情報の収集が行われる例に適用して説明を行う。具体的に説明すると、生体情報収集センサ1A,1Bが、それぞれ患者の異なる部位に貼り付けられて、それぞれの部分の生体情報を収集する例に適用して以降の説明を行う。なお使用する生体情報収集センサ1の数は、上記に限定される訳でなく、1つであっても3つ以上であってもよい。本実施形態では、透明なフィルム状の被覆材(透明なドレッシング材)が貼り付けられた患者の皮膚の部分に生体情報収集センサ1が装着される例に適用して以降の説明を行うが、生体情報収集センサ1の装着面36側にその様なフィルム素材を貼り付けてもよく、あるいは生体情報収集センサ1が、その様なフィルム素材を介さずに直接患者の皮膚に装着されてもよい。
【0045】
はじめに生体情報収集センサ1A,1Bが、患者の生体情報の収集が行われる部位にそれぞれ装着される(図5参照。)。具体的には、装着面板30の装着面36が、生体情報の収集が行われる患者の部位の皮膚の表面と接触する様にして筐体部10が配置される。筐体部10は、絆創膏や医療用のテープなどを用いて患者に固定される。使用者によってスイッチ23が操作されると、バッテリ7から筐体部10の各電子素子に電気が供給され、筐体部10が通電状態となってランプ24が点灯する。
【0046】
続いて使用者によって生体情報の収集に必要な操作が行われると、表示装置50の表示部52に生体情報の収集に必要な情報の入力を求める画面が表示される。本実施形態では、表示部52の表示画面が、使用される生体情報収集センサ1の数に応じて分割されて表示される例に適用して説明を行うと、生体情報収集センサ1Aに対応する表示部52の部分に、生体情報収集センサ1Aが生体情報データを算出する時間間隔の入力を求める画面や、生体情報収集センサ1Aによる生体情報の収集の開始及び停止や一時停止の指示を行う図示されていない画面が表示される。また、生体情報収集センサ1Bに対応する表示部52の部分に、生体情報収集センサ1Bが生体情報データを算出する時間間隔の入力を求める画面や、生体情報収集センサ1Bによる生体情報の収集の開始及び停止や一時停止の指示を行う図示されていない画面が表示される。使用者によって表示部52が操作されて生体情報の収集に必要な情報が入力されると、通信機能部51が、入力された情報を生体情報収集センサ1A,1Bにそれぞれ送信する。なお、表示部52の同一の部分に生体情報収集センサ1A,1Bに対応するこれらの表示が行われてもよい。
【0047】
続いて生体情報収集センサ1A,1Bの動作の説明を行う。なお、生体情報収集センサ1Aと生体情報収集センサ1Bの動作は同一であるため、以降は主に生体情報収集センサ1Aを例に動作の説明を行う。生体情報収集センサ1Aは、通信機能部51が送信した生体情報の収集に必要な情報を受信すると、生体情報の収集を開始する。具体的には、発光部2のLED2a、LED2bが、それぞれ波長の異なる光を生体情報収集センサ1Aが装着された患者の組織に向かって照射する。そして受光部3,4のPDa、PDbが、患者の組織を透過した光をそれぞれ受光し、受光した光に応じた光学情報を制御部6に入力する。また、温度計測部5は、計測部5aが接触した部分の温度に応じた信号を出力する。温度計測制御部9は、温度計測部5の出力信号を電圧に関する信号に変換して、制御部6に入力する。
【0048】
制御部6は、受光部3,4から取得した光学情報に基づいて、使用者が設定した時間間隔毎に演算処理を行い、組織の酸素飽和度に関する情報を算出する。具体的には、演算処理部63が、組織の酸素飽和度を算出する公知の演算方法に従い、受光部3,4から取得した光学情報に基づいて、測定対象の組織の酸素飽和度に関する情報を算出する。本実施形態では制御部6が、受光部3,4が取得した光学情報に基づいて、酸素飽和度(rSO)と総ヘモグロビン指数(T-HbI)を算出する例に適用して以降の説明を行う。
【0049】
更に制御部6は、温度計測制御部9から受信した温度情報に基づき、使用者が設定した時間間隔毎に、計測部5aが接触した患者の部分の温度を算出する。具体的には、A/D変換部62が温度計測制御部9から受信した温度情報を変換し、演算処理部63が変換された情報に基づいて当該部分の温度(体温)を算出する。更に制御部6は、算出した酸素飽和度(rSO)、総ヘモグロビン指数(T-HbI)及び体温情報を、生体情報データとして送信する。具体的には、通信部64が、収集した生体情報データと通信部64の識別情報データを含む信号を公知の通信規格に従ってアンテナ部65を介して送信する。
【0050】
なお計測制御部61は、一回の組織の酸素飽和度に関する情報を算出するのに必要な光学情報を取得した後に発光部2を消灯させ、次の組織の酸素飽和度に関する情報を算出するのに必要な光学情報を取得する際に、改めて発光部2を発光させる制御を行ってもよい。この様な制御を行えば、バッテリ7の消耗を低減させることが期待できる。
【0051】
生体情報収集センサ1Aから送信された信号を通信機能部51が受信すると、受信した信号に含まれる生体情報データが、表示部52の生体情報収集センサ1Aと紐付けされた表示部52の部分である表示部52Aに表示される。また、生体情報収集センサ1Bから送信された信号を通信機能部51が受信すると、受信した信号に含まれる生体情報データが、表示部52の生体情報収集センサ1Bに紐付けられた表示部52の部分である表示部52Bに表示される。
【0052】
表示部52は、受信された生体情報データを数値として表示する数値表示部55と、生体情報データの数値の時間変化をグラフとして表示するトレンド表示部56に分かれている。生体情報収集センサ1Aが送信した生体情報データの内容は、表示部52Aの数値表示部55及びトレンド表示部56に表示される。なお、これらの表示は予め定められた時間間隔で更新される(図6参照。)。
【0053】
使用者によって表示部52が操作され、生体情報収集センサ1Aによる生体情報の収集を一時中断する信号が通信機能部51から送信されると、生体情報収集センサ1Aは生体情報の収集を中断する。具体的には、演算処理部63が酸素飽和度に関する情報等を算出する処理を中断するとともに、計測制御部61が生体情報の収集を中断する処理を行う。計測制御部61が生体情報の収集を中断する処理を行うと、発光制御部8は発光部2への電流の供給を停止してLED2a、LED2bを消灯させる。
【0054】
使用者によって再び表示部52が操作され、生体情報収集センサ1Aによる生体情報の収集を再開する信号が通信機能部51から送信されると、生体情報収集センサ1Aは生体情報の収集を再開する。具体的には、計測制御部61が発光制御部8に対して生体情報の収集を開始する信号を出力し、LED2a、LED2bを発光させる。また、演算処理部63が、受光部3,4からの光学情報に基づいて酸素飽和度に関する情報等を算出する処理を行い、通信部64が生体情報データを送信する。
【0055】
使用者によってスイッチ23が操作され、生体情報収集センサ1AがOFF状態となると、生体情報収集センサ1Aは生体情報の収集を終了する。具体的には、使用者がスイッチ23を操作してOFF状態にすると、ON/OFF回路11から筐体部10の内部の電子部品への電気の供給が停止し、生体情報収集センサ1AがOFF状態となって生体情報の収集が終了する。
【0056】
使用者によって、表示部52に表示された保存ボタン57が操作されると、演算処理部53は、受信した生体情報データを記憶部54に記憶する処理を行う。更に使用者によって、表示部52に表示された終了ボタン58が操作されると、演算処理部53は、専用プログラムを終了する処理を行う。
【0057】
上記の構成からなる生体情報収集センサ1によれば、組織の酸素飽和度に関する情報を収集する発光部2及び受光部3,4と、体温に関する情報を収集する温度計測部5が、装着面36側に並んで配置されている。このため、酸素飽和度に関する情報が収集された組織に近い部分の温度に関する情報を同時に収集することができる。このため、同一の箇所の二つの種類の生体情報を同時に収集することが可能となる。即ち同一の箇所の二つの種類の生体情報を同時に収集することができるため、同一の部分にある組織に関する多角的な情報を使用者に提供することができる。
【0058】
更に生体情報収集センサ1の温度計測部5は、発光部2及び受光部3,4が並ぶ同一の仮想直線H上に並んで配置されている。このため温度計測部5は、発光部2及び受光部3,4によって酸素飽和度が算出される組織により近い部分の皮膚の体温に関する情報の収集を行うことができる。また発光部2、受光部3,4及び温度計測部5を適切な状態で測定対象の部分に配置することが容易となる。
【0059】
更に生体情報収集センサ1には、筐体部10の装着面36側の端部から離れる方向に突出して延びる辺縁遮光部31を有している。前述の様に、組織の酸素飽和度に関する情報は、受光部3,4からの光学情報に基づいて算出される。このため受光部3,4が、発光部2から照射され組織を透過した透過光以外の光を受光してしまうと正確な組織の酸素飽和度に関する情報を算出することができない。辺縁遮光部31は、受光部3,4から離れた外装20の外側で、患者の皮膚と接触するため、照明などの外来光が生体情報収集センサ1と患者の皮膚の接触面の間から入射してしまうことを防ぐことができる。このためより正確な組織の酸素飽和度に関する情報を収集することができる様になる。
【0060】
更にこの辺縁遮光部31は、延出する先側ほどその厚さが薄くなる様に形成されている。このため、装着面板30の端側で、患者の皮膚とより柔軟に接触し、例えば患者の皮膚の表面に凹凸がある様な場合でも、隙間なく接触することができる。このため、外来光が入射されることがより有効に防がれて、より正確な組織の酸素飽和度に関する情報を収集することができる様になる。
【0061】
また制御部6は、データを送信した制御部6を識別可能な無線通信規格に従って生体情報データを送信するため、表示装置50は、複数の生体情報収集センサ1から生体情報データを受信し、表示部52に同時に表示することができる。このため、例えば下肢における閉塞性動脈硬化症の治療などの際に、治療対象となる血管が走行する向きに従って複数の生体情報収集センサ1を配置して、それぞれの生体情報データを表示装置50に表示して、治療による血流変化の様子を観察したり、治療を行った箇所と関連する血管が走行する複数箇所の組織の状態の時間変化をモニタリングしたりすることも可能となる。あるいは他の手術や治療、その他の診断の際に、患者の複数の部分の生体情報を同時に収集したりモニタリングしたりすることができる。
【0062】
また制御部6の計測制御部61は、生体情報の収集を一時中断する信号が通信機能部51から送信されると、発光制御部8に対して生体情報の収集を中断する信号を出力し、発光部2への電流の供給を停止する処理を行う。このようにしてLED2a、LED2bが消灯し、バッテリ7の消費電力が低減されるため、より長時間生体情報の収集が行える様になる。
【0063】
また本実施形態に係る生体情報収集装置100では、生体情報収集センサ1は、バッテリ7を内蔵しており外部から電気の供給を受ける必要がない。更に生体情報収集センサ1と表示装置50は、無線にて通信を行うため、生体情報収集センサ1と表示装置50の間を接続するケーブルも不要である。このため、生体情報の収集の際にケーブルが患者に触れてしまうなどのおそれがなく、安全に生体情報の収集を行うことができる。また、生体情報収集センサ1を患者に装着する際にケーブルが邪魔になることもないため、任意の箇所に生体情報収集センサ1を装着して生体情報の収集を行うことが容易である。
【0064】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記の実施形態では、辺縁遮光部31を有する構成について説明を行ったが、辺縁遮光部31を有さない構成としてもよい。即ち装着面板30が、上側面部21と略同一の面積を有するものとしてもよい。この様にすれば、よりコンパクトで簡易な構成の生体情報収集センサ1を提供することができる。
【0065】
また上記の実施形態では、辺縁遮光部31が装着面板30と一体となって設けられている例に適用して説明を行ったが、これに限られる訳ではない。例えば、辺縁遮光部31が、側面部22の装着面36側の部分から、筐体部10から離れる方向に向かって突出して延びて設けられていてもよい。
【0066】
また上記の実施形態では、生体情報収集センサ1と表示装置50が無線通信を行う例に適用して説明を行ったが、生体情報収集センサ1と表示装置50がケーブル等によって接続されていてもよい。この様にすれば、無線通信状況に影響を受けない簡易な構成の生体情報収集装置とすることができる。
【0067】
また上記の実施形態では、筐体部10が略直方体形状をしている例に適用して説明を行ったがこれに限定される訳ではない。筐体部10の形状は、各電子部品を収容可能な形状で、測定対象に装着容易であれば、立方体や他の形状をしていてもよい。
【0068】
また上記の実施形態では、本発明に係る生体情報収集装置100を患者の生体情報を収集する医療機器として使用する例に適用して説明を行ったが、生体情報収集装置100を、例えば動物などの生体情報を収集する目的で使用してもよい。あるいは学術的な研究を目的として生体情報を収集する装置として使用してもよく特にその用途を限定するものではない。
【0069】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態に係る生体情報収集装置200について主に図2を参照しながら説明を行う。本実施形態では、温度計測部が収集した温度情報に基づいて、組織の酸素飽和度に関する情報の収集が制御される点が上記の実施形態と相違する。このため、以降の説明では、相違する点について主に説明を行い、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
実施形態に係る生体情報収集センサ150の制御部600は、温度計測部5が収集した温度情報に基づいて、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を制御する機能を有した計測制御部610を備えている。組織の酸素飽和度に関する情報は、組織を透過した透過光を受光部3,4が受光して得られた光学情報に基づいて算出される。このため、発光部2及び受光部3,4が、測定対象となる患者の皮膚に適切に配置されている必要がある。換言すれば、装着面36が測定対象となる患者の皮膚に適切に接触している必要がある。装着面36が測定対象となる患者の皮膚に適切に接触していなかった場合には、受光部3,4が、発光部2が発光した光を直接受光してしまったり、外来光などの生体情報の収集とは関係のない光を受光してしまったりする。即ち、受光部3,4が、組織からの透過光以外の光を受光してしまう。この様な場合には、受光部3,4が、正確な光学情報を出力することができないため、不正確な組織の酸素飽和度に関する情報が算出されて表示されてしまう。
【0071】
なお、生体情報収集センサ150の温度計測部5は、発光部2及び受光部3,4と同じ装着面36に配置されているため、装着面36が測定対象となる患者の皮膚に適切に接触していれば、温度計測部5は患者の皮膚の温度を測定することになる。一方、装着面36が測定対象となる患者の皮膚に適切に接触していない場合には、温度計測部5は患者の皮膚ではなく、大気等の患者の皮膚とは異なる部分の温度(部屋の大気の温度)を測定することになる。即ち、温度計測部5からの温度情報に基づいて、装着面36が測定対象となる患者の皮膚に適切に接触しているか否かを推定することができる。
【0072】
このため、本実施形態に係る生体情報収集センサ150の計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報から、温度計測部5が測定対象の患者の皮膚の温度を測定していると想定される場合には、組織の酸素飽和度に関する情報を収集する処理行う。一方計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報から、温度計測部5が測定対象の患者の皮膚以外の部分の温度を測定していると想定される場合には、温度計測部5が測定対象の患者の皮膚の温度を測定していると想定される状態になるまで、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を中断する処理を行う。
【0073】
本実施形態では、温度計測部5が取得した温度情報が、予め定められた測定開始温度Xを上回る場合に、計測制御部610が、組織の酸素飽和度に関する情報を収集する処理を行う例に適用して以降の説明を行う。また温度計測部5が取得した温度情報が予め定められた測定停止温度Yを下回る場合に、計測制御部610が、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を停止する処理を行う例に適用して以降の説明を行う。なお、測定停止温度Yは測定開始温度Xよりも低い(小さな)値である。なお、測定開始温度X及び測定停止温度Yは、使用者が表示装置50の表示部52を操作して事前に設定された値であっても、予め計測制御部610等に記憶された値であってもよい。
【0074】
以下、生体情報収集センサ150の動作について説明を行う。以降の説明では、測定開始温度Xが34℃に、測定停止温度Yが30℃に設定されている例に適用して以降の説明を行う。また、生体情報収集センサ150が使用される部屋の温度は25℃であるものとする。
【0075】
使用者がスイッチ23を操作して、生体情報収集センサ150の電源を入れると、温度計測部5が温度の測定を開始する。また、発光部2のLED2a、LED2bが発光し、受光部3,4が受光した光に基づく光学情報を出力する。この際、生体情報収集センサ150は患者に装着されていないため、温度計測部5は患者の皮膚とは異なる部分の温度(部屋の大気の温度)を測定する。計測制御部610は、温度計測部5が測定した温度情報(25℃)と測定停止温度Yを比較する処理を行い、温度情報が測定停止温度Yを上回る値であるか否かを判断する。計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報が、測定停止温度Y(30℃)よりも低い値であるため、酸素飽和度に関する情報の収集を停止する処理を行う。具体的には、計測制御部610が発光制御部8を介して発光部2の発光を停止させる処理を行う。即ち、発光制御部8からの発光部2のLED2a、LED2bへの電流の供給が停止され、LED2a、LED2bが消灯する。
【0076】
続いて使用者によって生体情報収集センサ150が測定対象となる患者に装着されると、温度計測部5の計測部5aが測定対象となる皮膚の部分と接触し、接触した部分の温度を計測する。温度計測制御部9は、温度計測部5が取得した温度情報を制御部600に逐次入力する。
【0077】
計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報と測定開始温度X(34℃)を比較する処理を随時行い、温度計測部5が取得した温度情報が測定開始温度X(34℃)よりも高い値となった時点で組織の酸素飽和度に関する情報の収集を開始する処理を行う。具体的には、発光制御部8を制御して発光部2を発光させる処理を行うと共に、演算処理部63に受光部3,4から取得した光学情報に基づいて組織の酸素飽和度に関する情報を算出させる処理を行う。
【0078】
計測制御部610は、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を開始する処理を行うと、温度計測部5が取得した温度情報と測定停止温度Yを比較する処理を随時行い、温度計測部5が取得した温度情報が、測定停止温度Yよりも大きな値である場合には、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を継続させる処理を行う。
【0079】
一方、患者の動きなどによって装着面36と患者の皮膚の接触が不十分となり、温度計測部5が患者の皮膚から離れると、温度計測部5は部屋の大気の温度を計測する。この場合には、制御部600には患者の皮膚の温度よりも低い大気の温度情報が入力される。計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報が、測定停止温度Y(30℃)よりも小さな値となると、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を中断する処理を行う。具体的には、発光制御部8を介して発光部2の発光を停止する処理を行う。即ち、発光制御部8からの発光部2のLED2a、LED2bへの電流の供給が停止され、LED2a、LED2bが消灯する。
【0080】
組織の酸素飽和度に関する情報の収集を中断する処理を行うと、計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報と測定開始温度Xを比較する処理を行う。計測制御部610は、温度情報が測定開始温度Xを上回るまで、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を中断した状態を維持する。そして温度計測部5が取得した温度情報が測定開始温度Xを上回った場合には、計測制御部610は、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を再開する処理を行う。具体的には、発光制御部8を制御して発光部2を発光させる処理を行う。以降、使用者が生体情報の収集の終了するまで、上記の処理が繰り返される。
【0081】
本実施形態の生体情報収集センサ150によれば、計測制御部610は、温度計測部5が収集した温度情報に基づいて組織の酸素飽和度に関する情報の収集を制御する。即ち、温度計測部5が収集した温度情報が予め定められた値を下回る場合には、発光部2及び受光部3,4が適切に測定部位に対して配置されておらず、組織の酸素飽和度に関する情報の収集が適切に行えないとみなして組織の酸素飽和度に関する情報の収集を停止する処理を行う。発光部2及び受光部3,4が適切に配置されていない場合には、不正確なデータが表示されるおそれがある。この場合には、使用者がその不正確なデータに基づいて誤った判断をしてしまう可能性がある。しかしながら、上記の様な処理を行えば、組織の酸素飽和度に関する情報の収集が中断され、不正確な生体情報は表示されないため、使用者がその不正確なデータに基づいて誤った判断をしてしまったりすることが防がれる。
【0082】
また、発光部2のLED2a、LED2bへの電流の供給が停止されるため、バッテリ7の電力の消費が低減されて、より長時間の生体情報収集センサ150の使用が可能となる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記の実施形態では測定開始温度Xと測定停止温度Yが異なる例に適用して説明を行ったが、測定開始温度Xと測定停止温度Yが同じ値であってもよい。この様にすれば、酸素飽和度に関する情報の収集の制御をより精密に行うことができる。また、上記の実施形態では測定開始温度Xと測定停止温度Yが別々にされる例に適用して説明を行ったが、測定開始温度Xと測定停止温度Yの差分の温度が予め設定されており、測定開始温度Xあるいは測定停止温度Yのいずれか一方の温度が設定されれば、自動的に他方の温度が設定される様にしてもよい。このようにすれば、設定操作が容易な生体情報収集センサ150とすることが可能となる。
【0084】
また計測制御部610は、温度計測部5が収集した温度情報が、測定停止温度Yよりも小さな値となった際に、受光部3,4による透過光の受光を中断したり、制御部600への光学情報の出力を中断したりする処理を行ってもよい。あるいは計測制御部610は、温度計測部5が収集した温度情報が、測定停止温度Yよりも小さな値となった際に、演算処理部63に組織の酸素飽和度に関する情報の算出をさせる処理を行ってもよい。
【0085】
また例えば取得した光学情報が所定の条件を逸脱するなど、演算処理部63が、生体情報収集センサ1が通常とは異なる状態であると判定した場合に、計測制御部610が、発光部2を消灯する制御を行ってもよい。また、計測制御部610は、発光部2を消灯する制御を行った後は、その後に収集された温度情報に関わらず、表示装置50からの生体情報の収集の再開の指示情報を受信するまで、発光部2を消灯した状態に維持する処理を行ってもよい。この様な制御を行えば、更に効率的にバッテリ7の電力の消費を抑えることが期待できる。また、例えば、本発明を上記の実施形態に適用したものに限られることなく、これらの実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0086】
1,1A,1B,150・・・生体情報収集センサ 2・・・発光部
3,4・・・受光部 5・・・温度計測部 5a・・・計測部
6,600・・・制御部 7・・・バッテリ 8・・・発光制御部
9・・・温度計測制御部 10・・・筐体部 11・・・ON/OFF回路
20・・・外装 21・・・上側面部 22・・・側面部
23・・・スイッチ 24・・・ランプ 30・・・装着面板
31・・・辺縁遮光部 32~35・・・貫通孔 36・・・装着面
37・・・外側面 40・・・基板 50・・・表示装置
51・・・通信機能部 52,52A,52B・・・表示部
53・・・演算処理部 54・・・記憶部 55・・・数値表示部
56・・・トレンド表示部 57・・・保存ボタン 58・・・終了ボタン
61,610・・・計測制御部 62・・・A/D変換部
63・・・演算処理部 64・・・通信部 65・・・アンテナ部
100,200・・・生体情報収集装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6