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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】水素ガス混合装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/71 20220101AFI20240220BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240220BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240220BHJP
   B01F 23/10 20220101ALI20240220BHJP
【FI】
B01F35/71
C25B9/00 A
C25B15/02
B01F23/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020002340
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021109143
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】594123387
【氏名又は名称】ヤマハファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】市ノ木山 尚士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】石井 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 行雄
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140361(JP,A)
【文献】特開2017-034843(JP,A)
【文献】特開2018-065073(JP,A)
【文献】特開2009-228044(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/132517(JP,A1)
【文献】特開2012-052208(JP,A)
【文献】特開2018-162484(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/056277(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0355590(US,A1)
【文献】米国特許第05457963(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0282951(US,A1)
【文献】中国実用新案第201524879(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00 - 25/90
B01F 35/00 - 35/95
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
C01B 3/00 - 3/58
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の電気分解により水素ガスと酸素ガスとを発生する水電解部と、
空気から分離して取り出した窒素ガスである混合用ガスを供給する混合用ガス供給部と、
前記水素ガス及び前記混合用ガスを混合するガス混合部と、
を備える水素ガス混合装置において、
通常時には、前記水電解部のうち前記酸素ガスが流通する酸素流通部に前記混合用ガス供給部から供給された前記混合用ガスを導入することで、前記酸素流通部に流通する前記酸素ガスを希釈し、
前記混合用ガスに含まれる酸素ガスの濃度が所定値以上となった異常発生時に、前記水電解部における前記水素ガス及び前記酸素ガスの発生を停止する水素ガス混合装置。
【請求項2】
希釈用ガスを圧縮した状態で貯留する圧力容器を備え、
前記酸素流通部に前記混合用ガス供給部から供給された前記混合用ガスまたは前記圧力容器から供給される前記希釈用ガスを導入することを特徴とする請求項1に記載の水素ガス混合装置。
【請求項3】
前記酸素流通部に導入される前記混合用ガスの流量に応じて前記水電解部における前記水素ガス及び酸素ガスの発生を停止する請求項1又は請求項2に記載の水素ガス混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素ガスと混合用ガス(窒素ガス)とを混合して供給する水素ガス混合装置が開示されている。特許文献1の水素ガス混合装置は、水素ガスを発生する水素発生部、混合用ガスを供給する混合用ガス供給部、及び、水素ガスと混合用ガスとを混合するガス混合部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-140361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水素ガス混合装置の水素発生部は、水の電気分解によって高濃度の水素ガス(可燃性ガス)の他に高濃度の酸素ガス(助燃性ガス)が発生する水電解部である。水電解部で発生した高濃度の酸素ガスがそのまま外部(例えば大気)に放出されることは避けることが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、水電解部において発生する酸素ガスを処置した上で外部に放出できる水素ガス混合装置を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、水の電気分解により水素ガスと酸素ガスとを発生する水電解部と、空気から分離して取り出した窒素ガスである混合用ガスを供給する混合用ガス供給部と、前記水素ガス及び前記混合用ガスを混合するガス混合部と、を備える水素ガス混合装置において、通常時には、前記水電解部のうち前記酸素ガスが流通する酸素流通部に前記混合用ガス供給部から供給された前記混合用ガスを導入することで、前記酸素流通部に流通する前記酸素ガスを希釈し、前記混合用ガスに含まれる酸素ガスの濃度が所定値以上となった異常発生時に、前記水電解部における前記水素ガス及び前記酸素ガスの発生を停止する水素ガス混合装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水電解部において発生する酸素ガスを処置した上で外部に放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るガス混合装置を示すブロック図である。
図2図1のガス混合装置の水素発生部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1,2を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態のガス混合装置(水素ガス混合装置)1は、可燃性ガスと非可燃性ガスとを混合し、これらの混合ガスを漏れ検査装置などの各種の装置に供給する。混合ガスは、例えば漏れ検査(リークテスト)における検査用ガスとして用いられる。
【0010】
ガス混合装置1は、水素発生部(可燃性ガス発生部)2と、混合用ガス供給部3と、ガス混合部4と、を備える。また、ガス混合装置1は、希釈ガス供給部5と、弁回路6と、を備える。さらに、ガス混合装置1は、電気機器7と、筐体8と、を備える。
【0011】
水素発生部2は、可燃性ガスの一種である水素ガスを発生する。本実施形態の水素発生部2は、図2に示すように、水を電気分解すること(水電解)により水素ガスと酸素ガスとを発生する水電解部である。水素発生部2は、固体高分子電解質膜201と、陽極側電極触媒層202と、陰極側電極触媒層203と、陽極側給電体204と、気液分離器205と、水循環ポンプ206と、酸素経路207と、陰極側給電体208と、水素経路209と、を備える。
【0012】
固体高分子電解質膜201は、陽イオン(ここでは水素イオン)のみを通過させるイオン濾過膜である。陽極側電極触媒層202は、固体高分子電解質膜201の一方側(陽極側)に設けられている。陰極側電極触媒層203は、固体高分子電解質膜201の他方側(陰極側)に設けられている。陽極側電極触媒層202と陰極側電極触媒層203とは、電源を介して電気的に接続される。
【0013】
陽極側給電体204は、固体高分子電解質膜201との間に陽極側電極触媒層202を挟むように設けられている。気液分離器205は、陽極側給電体204の上方に配され、二つの配管211,212を介して陽極側給電体204に接続されている。気液分離器205は、複数の配管が接続された水タンクである。第一配管211は、陽極側給電体204の上部と気液分離器205の下部とを接続している。第二配管212は、気液分離器205の下部と陽極側給電体204の下部とを接続している。水循環ポンプ206は、第二配管212の中途部に設けられている。
【0014】
陽極側給電体204、気液分離器205の下部、第一配管211及び第二配管212には、水が流通する。この水は、水循環ポンプ206によって、陽極側給電体204、第一配管211、気液分離器205の下部及び第二配管212に順番に流れる、すなわち陽極側給電体204と気液分離器205との間で循環する。
酸素経路207は、気液分離器205の上部に接続された配管であり、大気に開放される、あるいは、他の排気ガスが流れる工場の排気管(不図示)に接続される。酸素経路207には、陽極側給電体204において発生した酸素ガスが流通する。
【0015】
陰極側給電体208は、固体高分子電解質膜201との間に陰極側電極触媒層203を挟むように設けられている。水素経路209は、陰極側給電体208の上部に接続される配管であり、後述する第一混合用経路11(図1参照)に接続される。水素経路209には、陰極側給電体208において発生した水素ガスが流通する。
【0016】
水素発生部2では、電源によって固体高分子電解質膜201の陽極側から陰極側に電圧が印加された状態で、陽極側給電体204にある水が電気分解され、陽極側電極触媒層202及び陰極側電極触媒層203が、当該電気分解を促進する。
水の電気分解により、陽極側給電体204に水素イオンが生成され、この水素イオンが、固体高分子電解質膜201を通過して、陰極側給電体208に移動する。陰極側給電体208に移動した水素イオンは、電子と結合して水素ガスとなる。陰極側給電体208で発生した水素ガスは、高濃度であり、水素経路209を通して第一混合用経路11(図1参照)に流出する。
【0017】
一方、陽極側給電体204では、水の電気分解により高濃度の酸素ガスが発生する。陽極側給電体204で発生した酸素ガスは、第一配管211を通り気液分離器205において水から分離され、酸素経路207を通して外部(大気あるいは工場の排気管)に放出される。なお、陽極側給電体204で発生した酸素ガスの一部は、気液分離器205において水から分離されずに、水循環ポンプ206の作用によって第二配管212にも流通し得る。すなわち、陽極側給電体204、気液分離器205及び第一、第二配管211,212は、酸素ガスが流通する酸素流通部20を構成している。
【0018】
図1に示す混合用ガス供給部3は、非可燃性ガスであり、前述した水素ガスと混合するための混合用ガスを供給する。本実施形態における混合用ガスは、窒素ガスである。なお、混合用ガスは、例えばヘリウムガスや、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどであってもよい。
【0019】
混合用ガス供給部3は、空気供給源31と、フィルター32と、を備える。空気供給源31は、フィルター32に接続され、空気をフィルター32に供給する。空気供給源31は、空気が流通する空気配管や、空気をフィルター32に向けて流すファンやブロワなどであってよい。フィルター32は、例えば膜モジュール(膜分離窒素ガス発生装置)であり、取り入れられた空気から窒素ガスを分離して取り出す。すなわち、フィルター32は、比較的高濃度の窒素ガスを発生する混合用ガス発生部として機能する。フィルター32で発生した窒素ガスは、後述する第二混合用経路12に流出する。
【0020】
ガス混合部4は、水素発生部2からの水素ガスと、混合用ガス供給部3からの窒素ガスと、を混合する。具体的に、ガス混合部4は、第一混合用経路11を介して水素発生部2に接続されている。また、ガス混合部4は、第二混合用経路12を介して混合用ガス供給部3(特にフィルター32)に接続されている。これにより、高濃度の水素ガスが、水素発生部2から第一混合用経路11を通してガス混合部4に導かれる。また、高濃度の窒素ガスが、混合用ガス供給部3から第二混合用経路12を通してガス混合部4に導かれる。ガス混合部4において水素ガスと窒素ガスとを混合した混合ガスは、供給ポート41から漏れ検査装置などの各種の装置に供給される。
【0021】
水素発生部2からガス混合部4まで延びる第一混合用経路11の中途部には、排気用経路(第一経路)13が接続されている。排気用経路13の延長方向の先端には、排気ポート131が設けられている。排気ポート131は、大気に開放される、あるいは、工場の排気管(不図示)に接続される。これにより、水素発生部2からの水素ガスを、排気用経路13に通すことでガス混合装置1の外部(大気あるいは工場の排気管)に放出することができる。
【0022】
希釈ガス供給部5は、非可燃性の希釈用ガスを供給する。希釈用ガスは、水素発生部2から排気用経路13を通って外部に放出される水素ガスを希釈するために用いられる。具体的には、希釈ガス供給部5から延びる希釈ガス経路(第二経路)14が、排気用経路13の延長方向の中途部に接続されている。これにより、希釈用ガスが希釈ガス経路14を通して排気用経路13に導入されることで、排気用経路13に通る水素ガスを希釈用ガスによって希釈して外部に放出することができる。本実施形態では、希釈用ガスとして、窒素ガスが用いられる。なお、希釈用ガスには、例えばヘリウムガスや、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどが用いられてもよい。
【0023】
希釈ガス供給部5は、窒素ガス(希釈用ガス)を圧縮した状態で貯留する圧力容器51を含む。圧力容器51は、ボンベやタンクなどであってよい。また、希釈ガス供給部5は、前述した混合用ガス供給部3も含む。このため、希釈ガス経路14は、その中途部で分岐されて、圧力容器51と混合用ガス供給部3とにそれぞれ接続される。希釈ガス経路14は、第二混合用経路12を介して混合用ガス供給部3に接続されている。なお、希釈ガス経路14は、例えば混合用ガス供給部3に直接接続されてもよい。
希釈ガス経路14の分岐部分には、シャトルバルブ(切換部)52が設けられている。シャトルバルブ52は、水素ガスを希釈するための希釈用ガスとして、混合用ガス供給部3からの窒素ガスと圧力容器51に貯留された窒素ガスとに切り換える。具体的に、シャトルバルブ52は、圧力容器51からの窒素ガス、及び、混合用ガス供給部3からの窒素ガスのうち、圧力が高い方の窒素ガスを排気用経路13に向けて流す。
【0024】
排気用経路13のうち希釈ガス経路14との合流部分よりも上流側(第一混合用経路11側)の部分には、レギュレータ132及びオリフィス133が設けられている。レギュレータ132及びオリフィス133は、排気用経路13に流れる水素ガスの流量を調整する。同様に、希釈ガス経路14には、当該希釈ガス経路14に流れる窒素ガスの流量を調整するためのレギュレータ142及びオリフィス143が設けられている。これにより、外部に放出される水素ガスと窒素ガスとの混合比、すなわち、窒素ガスによって希釈される水素ガスの濃度を調整することができる。レギュレータ132,142やオリフィス133,143は、電力等の動力が無くても水素ガスや窒素ガスの流量を調整することができる。オリフィス133,143は、例えば流量調整弁(スピードコントローラー)であってもよい。
【0025】
弁回路6は、ガス混合装置1に異常が発生していない通常時において、水素ガスを水素発生部2から第一混合用経路11に通してガス混合部4に導くと共に、窒素ガスを混合用ガス供給部3から第二混合用経路12に通してガス混合部4に導く。具体的に、弁回路6は、第一混合用経路11を開閉する第一の常閉電磁弁61と、第二混合用経路12を開閉する第二の常閉電磁弁62と、を有する。第一、第二の常閉電磁弁61,62は、いずれもこれらに電力が供給されている通電時に第一、第二混合用経路11,12を開き、電力が供給されていない非通電時に第一、第二混合用経路11,12を閉じる。すなわち、ガス混合装置1では、水素ガス及び窒素ガスが、通電時にのみガス混合部4に供給され、非通電時にはガス混合部4に供給されない。
【0026】
また、弁回路6は、停電時などガス混合装置1に異常が発生した時(異常発生時)において、水素発生部2からの水素ガスの排気用経路(第一経路)13と希釈ガス供給部5からの窒素ガス(希釈用ガス)の希釈ガス経路(第二経路)14とを接続することで水素ガスを窒素ガスによって希釈する。具体的に、弁回路6は、排気用経路13を開閉する第一の常開電磁弁63と、希釈ガス経路14を開閉する第二の常開電磁弁64と、を有する。第一、第二の常開電磁弁63,64は、いずれもこれらに電力が供給されていない非通電時に排気用経路13や希釈ガス経路14を開き、電力が供給されている通電時に排気用経路13や希釈ガス経路14を閉じる。すなわち、ガス混合装置1では、窒素ガスで希釈された水素ガスが、非通電時にのみ外部に放出され、通電時には外部に放出されない。
上記した第一、第二の常閉電磁弁61,62及び第一、第二の常開電磁弁63,64への電力供給の制御は、例えば後述の電気機器7によって行われる。
【0027】
ガス混合装置1では、前述した水素発生部2のうち酸素ガスが流通する酸素流通部20に非可燃性の希釈用ガスを導入する。本実施形態において、酸素流通部20に導入される希釈用ガスは、混合用ガス供給部3から供給される窒素ガス(混合用ガス)である。なお、酸素流通部20に導入される希釈用ガスは、例えば圧力容器51から供給される窒素ガスであってもよい。
【0028】
水素発生部2の酸素流通部20は、第一導入経路15を介して混合用ガス供給部3に接続されている。具体的に、第一導入経路15は、第二の常閉電磁弁62よりも上流側において第二混合用経路12につながることで混合用ガス供給部3に接続されている。なお、第一導入経路15は、例えば混合用ガス供給部3に直接接続されてもよい。また、第一導入経路15は、図2に示すように、酸素流通部20の気液分離器205に接続されている。具体的に、第一導入経路15は気液分離器205のうち水面よりも上方に位置する部位に接続されている。なお、第一導入経路15は、例えば酸素流通部20のうち水面よりも下方に位置する部位(陽極側給電体204、気液分離器205の下部、第一、第二配管211,212)に接続されてもよい。
図1に示すように、第一導入経路15には、酸素流通部20に導入される窒素ガス(希釈用ガス)の流量を計測する第一流量計151が設けられている。
【0029】
電気機器7は、ガス混合装置1の各部(例えば水素発生部2や弁回路6)への電力供給や電気制御を行う機器(例えば制御盤)である。電気機器7は、リレー接点やボタン、ブレーカーなどのように放電が生じ得る部品や、帯電し得る部品を含む。筐体8は、上記した電気機器7を収容する。筐体8の内部には、非可燃性ガスが導入される。本実施形態において、筐体8の内部に導入される非可燃性ガスは、混合用ガス供給部3から供給される窒素ガス(混合用ガス)である。なお、筐体8内部に導入される非可燃性ガスは、例えば圧力容器51からの窒素ガスであってもよい。
【0030】
筐体8は、第二導入経路16を介して混合用ガス供給部3に接続されている。具体的には、第二導入経路16を構成する管が、筐体8に形成された穴を通して筐体8の内部空間につながっていることで、筐体8の内部が混合用ガス供給部3とつながっている。これにより、混合用ガス供給部3からの窒素ガスを筐体8の内部に導入することができる。また、第二導入経路16は、第二の常閉電磁弁62よりも上流側において第二混合用経路12につながることで混合用ガス供給部3に接続されている。なお、第二導入経路16は、例えば混合用ガス供給部3に直接接続されてもよい。
筐体8は、外部に対して完全には密閉されていない。このため、筐体8の内部には、混合用ガス供給部3からの窒素ガスが継続的に導入される。なお、筐体8は、例えば外部に対して完全に密閉されてもよい。
第二導入経路16には、筐体8内部に導入される窒素ガス(希釈用ガス)の流量を計測する第二流量計161が設けられている。なお、第二導入経路16には、第二流量計161の代わりに、第二導入経路16における圧力(気圧)を計測する圧力計が設けられてもよい。
【0031】
本実施形態のガス混合装置1では、水素発生部2の酸素流通部20や筐体8内部に導入される窒素ガス(希釈用ガス、非可燃性ガス)に含まれる酸素ガスの濃度に応じて、水素発生部2における水素ガス及び酸素ガスの発生を停止する。この制御は、例えば筐体8内に配された電気機器7(制御盤)において行われる。
具体的には、第二混合用経路12に設けられた酸素濃度計121によって、混合用ガス供給部3からの窒素ガスに含まれる酸素ガスの濃度を計測する。そして、電気機器7は、酸素濃度計121から出力された計測結果に基づいて水素発生部2における水素ガスの発生を制御する。すなわち、酸素濃度計121において計測される酸素ガスの濃度が所定値以上となった際に、電気機器7は水素発生部2における水素ガスの発生を停止する。
上記した酸素濃度計121は、例えば第一導入経路15や第二導入経路16に設けられてもよい。
【0032】
本実施形態のガス混合装置1では、酸素流通部20や筐体8内部に導入される窒素ガス(希釈用ガス)の流量に応じて、水素発生部2における水素ガス及び酸素ガスの発生を停止する。この制御は、例えば筐体8内に配された電気機器7(制御盤)において行われる。
具体的には、第一流量計151が、第一導入経路15に流れて酸素流通部20に導入される窒素ガス(希釈用ガス)の流量を計測する。また、第二流量計161が、第二導入経路16に流れて筐体8内部に導入される窒素ガス(非可燃性ガス)の流量を計測する。そして、電気機器7は、第一流量計151、第二流量計161から出力された計測結果に基づいて水素発生部2における水素ガスの発生を制御する。すなわち、第一流量計151や第二流量計161において計測される窒素ガスの流量が所定値以下となった際に、電気機器7は水素発生部2における水素ガスの発生を停止する。
【0033】
次に、本実施形態のガス混合装置1の動作について説明する。はじめに、ガス混合装置1に異常が発生していない通常時における動作について説明する。
通常時には、水素発生部2に電力が供給されることで、水素発生部2において水素ガス及び酸素ガスが発生する。また、混合用ガス供給部3において窒素ガスが発生する。さらに、通常時には、第一、第二の常閉電磁弁61,62、第一、第二の常開電磁弁63,64にそれぞれ電力が供給される。これにより、第一、第二の常閉電磁弁61,62は、それぞれ第一、第二混合用経路11,12を開く。また、第一、第二の常開電磁弁63,64は、それぞれ排気用経路13、希釈ガス経路14を閉じる。このため、水素発生部2からの水素ガス及び混合用ガス供給部3からの窒素ガスが、それぞれガス混合部4に導かれて混合する。
【0034】
また、通常時には、混合用ガス供給部3からの窒素ガスは、水素発生部2の酸素流通部20にも導入される。これにより、酸素流通部20に流通する酸素ガスは、窒素ガスで希釈された上で、水素発生部2の外部に放出される。すなわち、酸素ガスを低い濃度で水素発生部2の外部に放出することができる。
【0035】
また、通常時には、混合用ガス供給部3からの窒素ガスは、電気機器7を収容した筐体8の内部にも導入される。これにより、筐体8の内部を非可燃性ガスである窒素ガスで充満させることができ、水素ガスなどの可燃性ガスが筐体8内部に配された電気機器7に影響することを抑制できる。
【0036】
次いで、ガス混合装置1において異常が発生した時(異常発生時)の動作について三つの例を挙げて説明する。
異常発生時の第一例は、混合用ガス供給部3から酸素流通部20や筐体8の内部に供給される窒素ガスに含まれる酸素ガスの濃度が所定値以上となった時である。この時には、電気機器7が水素発生部2への電力供給を停止して、水素発生部2における水素ガス及び酸素ガスの発生を停止させる。これにより、助燃性ガスである酸素ガスが高い濃度で水素発生部2の外部に放出されることを抑制できる。また、筐体8内部において酸素ガスの濃度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0037】
また、混合用ガス供給部3からの窒素ガスに含まれる酸素ガスの濃度が所定値以上となった時には、電気機器7が弁回路6への電力供給を停止する。このため、第一、第二の常閉電磁弁61,62がそれぞれ第一、第二混合用経路11,12を閉じると共に、第一、第二の常開電磁弁63,64がそれぞれ排気用経路13、希釈ガス経路14を開く。これにより、水素発生部2に残存し排気用経路13を通る水素ガスは、希釈ガス経路14を通り排気用経路13に向かう窒素ガス(希釈用ガス)によって希釈された上で、排気ポート131を介して外部に放出される。この際、希釈ガス経路14を通り排気用経路13に向かう窒素ガスは、混合用ガス供給部3から供給される窒素ガスであってもよいし、圧力容器51から供給される窒素ガスであってもよい。
【0038】
異常発生時の第二例は、混合用ガス供給部3から酸素流通部20や筐体8の内部に供給される窒素ガスの流量が所定値以下となった時である。この時には、電気機器7が水素発生部2における水素ガス及び酸素ガスの発生を停止させる。また、電気機器7が弁回路6への電力供給を停止して、第一、第二の常閉電磁弁61,62がそれぞれ第一、第二混合用経路11,12を閉じる、また、第一、第二の常開電磁弁63,64がそれぞれ排気用経路13、希釈ガス経路14を開く。
これにより、酸素流通部20に流通する酸素ガスが高い濃度で水素発生部2の外部に放出されることを防止できる。また、水素発生部2に残存し排気用経路13を通る水素ガスを、希釈ガス経路14を通り排気用経路13に向かう窒素ガス(希釈用ガス)によって希釈した上で、排気ポート131を介して外部に放出することができる。この際、希釈ガス経路14を通り排気用経路13に向かう窒素ガスは、混合用ガス供給部3から供給される窒素ガスであってもよいし、圧力容器51から供給される窒素ガスであってもよい。
【0039】
異常発生時の第三例は、停電などによりガス混合装置1への電力供給が停止された時(停電時)である。停電時には、水素発生部2への電力供給が停止されるため、水素発生部2における水素ガス及び酸素ガスの発生が停止される。
また、停電時には、第一、第二の常閉電磁弁61,62、第一、第二の常開電磁弁63,64への電力供給が停止される。このため、第一、第二の常閉電磁弁61,62がそれぞれ第一、第二混合用経路11,12を閉じる、また、第一、第二の常開電磁弁63,64がそれぞれ排気用経路13、希釈ガス経路14を開く。これにより、水素発生部2に残存し排気用経路13を通る水素ガスは、希釈ガス経路14を通り排気用経路13に向かう窒素ガス(希釈用ガス)によって希釈された上で、排気ポート131を介して外部に放出される。
【0040】
この際、希釈ガス経路14を通り排気用経路13に向かう窒素ガスは、混合用ガス供給部3から供給される窒素ガスであってよい。ただし、停電などの影響を受けて混合用ガス供給部3からの窒素ガスの供給が停止した場合には、シャトルバルブ52の機能により、窒素ガスの供給源が混合用ガス供給部3から圧力容器51に切り換えられる。すなわち、圧力容器51からの窒素ガスが、希釈ガス経路14を通り排気用経路13に向けて流れ、排気用経路13を通る水素ガスを希釈する。
なお、上記の第一例、第二例、第三例のそれぞれにおいては、例えば第一、第二の常閉電磁弁61,62が無くてもよい。すなわち、上記の第一例、第二例、第三例のそれぞれにおいて、第一、第二混合用経路11,12を閉じない状態で、排気用経路13を通る水素ガスが希釈ガス経路14を通る窒素ガスにより希釈されてもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係るガス混合装置1は、停電時などの異常発生時に、水素発生部2からの水素ガスの排気用経路13と希釈ガス供給部5からの窒素ガス(希釈用ガス)の希釈ガス経路14とを接続することで、水素ガスを窒素ガスによって希釈する弁回路6を備える。このため、異常発生時において、水素発生部2にある高濃度の水素ガスを希釈して低濃度の水素ガスとすることができる。したがって、異常発生時においても水素ガスを処置することができる。
【0042】
また、本実施形態のガス混合装置1では、水素発生部2にある水素ガスを、希釈ガス供給部5からの窒素ガスにより希釈した上で、大気に放出する。このため、水素発生部2にある高濃度の水素ガスが大気に放出されることを防止できる。
【0043】
また、本実施形態に係るガス混合装置1によれば、弁回路6は、排気用経路13を開閉する第一の常開電磁弁63と、希釈ガス経路14を開閉する第二の常開電磁弁64と、を有する。そして、第一、第二の常開電磁弁63,64は、これに電力が供給されていない状態で排気用経路13、希釈ガス経路14をそれぞれ開く。このため、異常発生時に第一、第二の常開電磁弁63,64への電力供給を停止することで、排気用経路13と希釈ガス経路14とを確実に接続することができる。また、停電時には、第一、第二の常開電磁弁63,64への電力供給が自動的に停止されるため、排気用経路13と希釈ガス経路14とを自動的に接続することができる。したがって、異常発生時には、水素ガスを確実に窒素ガス(希釈用ガス)によって希釈することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るガス混合装置1によれば、窒素ガス(非可燃性の希釈用ガス)を供給する希釈ガス供給部5が、混合用ガス供給部3を含んでいる。すなわち、混合用ガス供給部3が希釈ガス供給部5としても機能する。したがって、希釈ガス供給部5と混合用ガス供給部3とを完全に別個に構成する場合と比較して、ガス混合装置1の占有領域を小さく抑えたり、製造コストを低く抑えたりすることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るガス混合装置1では、希釈ガス供給部5として機能する混合用ガス供給部3が、空気から窒素ガスを分離して取り出すフィルター32を有する。このため、希釈用ガスとしての窒素ガスを、連続して希釈ガス経路14に流し続けることが可能となる。すなわち、水素発生部2からの水素ガスを窒素ガスによって十分に希釈することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るガス混合装置1では、窒素ガス(非可燃性の希釈用ガス)を供給する希釈ガス供給部5が、窒素ガスを圧縮した状態で貯留する圧力容器51を含んでいる。このため、電力等の動力が無くても、窒素ガス自体の圧力で窒素ガスを希釈ガス経路14に流すことができる。したがって、停電時などの異常発生時において、水素発生部2からの水素ガスを圧力容器51からの窒素ガスによって確実に希釈することができる。
また、窒素ガスを高圧の状態で貯留する圧力容器51は、窒素ガスを大気圧で貯留する容器と比較してコンパクトであるため、ガス混合装置1をコンパクトに構成することもできる。
【0047】
また、本実施形態に係るガス混合装置1では、水素発生部2の酸素流通部20に、非可燃性の窒素ガス(希釈用ガス)が導入される。これにより、酸素流通部20で流通する酸素ガスを、非可燃性の窒素ガスで希釈した上で、外部(例えば大気)に放出することができる。すなわち、水素発生部2において発生する酸素ガスを処置した上で外部に放出することができる。
また、仮に固体高分子電解質膜が破れて水素ガスが酸素流通部20に侵入しても、酸素ガスが窒素ガスによって希釈されていることで、可燃性ガスである水素ガスと助燃性ガスである酸素ガスとが混合した混合ガスの濃度を低く抑えることができる。
【0048】
また、本実施形態に係るガス混合装置1では、酸素流通部20に導入される窒素ガス(希釈用ガス)に含まれる酸素ガスの濃度が所定値以上となった際に、水素発生部2における水素ガス及び酸素ガスの発生を停止する。また、本実施形態に係るガス混合装置1では、酸素流通部20に導入される窒素ガスの流量が所定値以下となった際にも、水素発生部2における水素ガス及び酸素ガスの発生を停止する。これにより、水素発生部2から外部に放出される酸素ガスの濃度が高くなることを防止できる。
【0049】
また、本実施形態に係るガス混合装置1では、酸素流通部20に導入される窒素ガス(希釈用ガス)が混合用ガス供給部3から供給される。このため、酸素流通部20に導入するための窒素ガスの供給源を別途用意する場合と比較して、ガス混合装置1の占有領域を小さく抑えたり、製造コストを低く抑えたりすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るガス混合装置1では、電気機器7を収容した筐体8の内部に、非可燃性の窒素ガス(非可燃性ガス)が導入される。これにより、水素発生部2において発生する水素ガス(可燃性ガス)が筐体8内部に侵入することを抑制できる。したがって、当該水素ガスが筐体8内に配された電気機器7に影響することを抑制できる。
また、筐体8内部に導入される窒素ガス(非可燃性ガス)には、水素ガス(可燃性ガス)との混合に用いるガスが利用されている。このため、筐体8内部に導入する非可燃性ガスの供給源を別途用意する場合と比較して、ガス混合装置1の占有領域を小さく抑えたり、製造コストを低く抑えたりすることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るガス混合装置1では、筐体8の内部に導入される窒素ガス(非可燃性ガス)に含まれる酸素ガスの濃度が所定値以上となった際に、水素発生部2における水素ガスの発生を停止する。これにより、筐体8の内部に導入される窒素ガスに含まれる酸素ガスが筐体8内部に配された電気機器7に影響することを抑制できる。
【0052】
また、本実施形態に係るガス混合装置1では、筐体8内部に導入される窒素ガスの流量が所定値以下となった際にも、水素発生部2における水素ガス及び酸素ガスの発生を停止する。これにより、筐体8内部に導入される窒素ガスの流量低下(あるいは筐体8内における窒素ガスの圧力低下)に基づいて、水素発生部2において発生する水素ガスなどの可燃性ガスが筐体8内に配された電気機器7に影響することを抑制できる。
【0053】
なお、本実施形態に係るガス混合装置1において、筐体8内部に導入される窒素ガス(非可燃性ガス)が、圧力容器51からの窒素ガスである場合には、電力等の動力が無くても、窒素ガス自体の圧力で窒素ガスを筐体8の内部に導入することができる。したがって、停電時などの異常発生時においても、筐体8内部に配された電気機器7を水素ガスなどの可燃性ガスから保護することができる。
【0054】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0055】
本発明の混合ガス供給装置は、水素発生部2を備えることに限らず、少なくとも可燃性ガスを発生する可燃性ガス発生部を備えればよい。
【符号の説明】
【0056】
1…ガス混合装置(水素ガス混合装置)、2…水素発生部(水電解部)、3…混合用ガス供給部、4…ガス混合部、5…希釈ガス供給部、6…弁回路、7…電気機器、8…筐体、13…排気用経路(第一経路)、14…希釈ガス経路(第二経路)、15…第一導入経路、16…第二導入経路、20…酸素流通部、32…フィルター、51…圧力容器、52…シャトルバルブ(切換部)、63…第一の常開電磁弁、64…第二の常開電磁弁、121…酸素濃度計、151…第一流量計、161…第二流量計
図1
図2