(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】尿素水の製造方法
(51)【国際特許分類】
F23J 15/00 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F23J15/00 A
(21)【出願番号】P 2020082828
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391060281
【氏名又は名称】株式会社キンセイ産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 正元
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-082588(JP,A)
【文献】特開平08-057258(JP,A)
【文献】特開2010-280596(JP,A)
【文献】特開2003-269141(JP,A)
【文献】特開2005-233492(JP,A)
【文献】国際公開第2007/148402(WO,A1)
【文献】特開2000-329323(JP,A)
【文献】米国特許第05616307(US,A)
【文献】特開2012-237232(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1949869(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/00 - 99/00
F23G 5/00 - 7/14
B01D 53/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の範囲の温度の温水に尿素を溶解して尿素水を製造する尿素水の製造方法であって、
収納された廃棄物の一部を燃焼させつつ該燃焼熱により該廃棄物の残部を乾留して可燃性ガスを発生させる乾留炉と、該乾留炉から導入される可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉とを備える乾留ガス化焼却処理装置における
乾留が安定に進行する段階から灰化段階の間において、該乾留炉を構成する材料を保護するウォータージャケットから得られる60~100℃の範囲の温度の温水に尿素を溶解することを特徴とする尿素水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素水(尿素水溶液)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物等の焼却処理を行う装置において、燃焼排気中の窒素酸化物(NOx)を除去するためにアンモニア(NH3)水を用いる方法が知られている。アンモニア水によれば、次式のように、窒素酸化物を分解して窒素と水を得ることができる。
4NO + 4NH3 + O2 → 4N2 + 6H2O
【0003】
ところが、アンモニアは劇物であり管理が難しいため、アンモニアに代えて取り扱いが容易な尿素(CO(NH2)2)を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
尿素は水溶液(尿素水)にすると次式のように分解してアンモニアを生成するので、尿素水はアンモニア水と同様に窒素酸化物の分解に用いることができる。
CO(NH2)2 + H2O → 2NH3 + CO2
【0005】
ここで、粉体の尿素を水に溶解する反応は吸熱反応であるので外部から反応系に熱を供給する必要があり、通常、尿素水の製造は粉体の尿素を所定の範囲の温度、例えば60℃以上の温水に溶解させることにより行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-108668号公報
【文献】特開2018-169131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようにして尿素水を製造する際には、所定の温度の温水を得るためには、燃料や電気等のエネルギーを必要とし、燃焼装置のランニングコストが増加する。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、燃料や電気等のエネルギーを別途必要とすることなく、尿素水を製造することができる尿素水の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の尿素水の製造方法は、所定の範囲の温度の温水に尿素を溶解して尿素水を製造する尿素水の製造方法であって、収納された廃棄物の一部を燃焼させつつ該燃焼熱により該廃棄物の残部を乾留して可燃性ガスを発生させる乾留炉と、該乾留炉から導入される可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉とを備える乾留ガス化焼却処理装置における乾留が安定に進行する段階から灰化段階の間において、該乾留炉を構成する材料を保護するウォータージャケットから得られる60~100℃の範囲の温度の温水に尿素を溶解することを特徴とする。
【0010】
廃棄物を焼却処理する焼却処理装置として、例えば、収納された廃棄物の一部を燃焼させつつ該燃焼熱により該廃棄物の残部を乾溜して可燃性ガスを発生させる乾溜炉と、該乾溜炉から導入される可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉とを備える乾溜ガス化焼却処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
前記乾溜ガス化焼却処理装置では、前記乾溜炉内に収納した廃タイヤ等の廃棄物の一部を燃焼させ、その燃焼熱により該廃棄物の残部を乾溜(熱分解)して、可燃性ガスを生成させる乾溜ガス化を行う。そして、前記乾溜ガス化により生成する可燃性ガスを該乾溜炉から前記燃焼炉に導入して燃焼させる。
【0012】
このとき、前記乾溜ガス化焼却処理装置では、前記乾留炉に対する空気の供給量を増減することにより前記廃棄物の乾留により生成する可燃性ガスの生成量を調整して、前記燃焼炉における前記可燃性ガスの燃焼温度がほぼ一定となるように制御されている。前記乾溜ガス化焼却処理装置では、前記廃棄物の乾留による熱から前記乾留炉を保護する必要があるが、前述のように、該乾留炉では炉内に対する空気の供給量を増減することにより、前記可燃性ガスの生成量を調整しているので、耐火物のような蓄熱する材料を用いることができず、炉壁をウォータージャケット構造にすることにより、該乾留炉を保護している。
【0013】
そこで、本発明の尿素水の製造方法では、前記ウォータージャケットから得られる60~100℃の範囲の温度の温水に尿素を溶解することにより、燃料や電気等のエネルギーを別途必要とすることなく、尿素水を製造することができる。
【0014】
前記ウォータージャケットから得られる温水の温度が60℃未満では尿素を完全に溶解することができず、100℃超とすることは技術的に困難である。
【0015】
また、前記乾溜ガス化焼却処理装置では、前記乾留炉における前記廃棄物の乾留は、該乾留炉に収容されている廃棄物に着火され、乾留炉の底部の該廃棄物の一部に火床が形成される火床形成段階、該火床の燃焼熱により該廃棄物の残部の乾留が開始される乾留の初期段階、乾留が安定に進行する段階、乾留し得る廃棄物の量が減少し、発生する可燃性ガスの量も減少していく乾留の終了段階を経て最終的に該廃棄物が灰化される灰化段階に至るので、前記ウォータージャケットでは、前記廃棄物の乾留の各段階によって、得られる温水の温度が異なる。そこで、本発明の尿素水の製造方法では、前記温水は、例えば、前記乾溜ガス化焼却処理装置における乾留が安定に進行する段階から灰化段階の間において、前記ウォータージャケットから得ることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の尿素水の製造方法に用いる乾溜ガス化焼却処理装置の構成例を示すシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
本実施形態の尿素水の製造方法は、所定の範囲の温度の温水に尿素を溶解して尿素水を製造する尿素水の製造方法であって、
図1に示す乾溜ガス化焼却処理装置1における乾溜炉2a、2bを構成する材料を保護するウォータージャケットから得られる60~100℃の範囲の温度の温水に尿素を溶解する。
【0019】
図1に示す乾溜ガス化焼却処理装置1は、廃タイヤ等の廃棄物Aを収納し、その乾留ガス化及び灰化を行う2基の乾溜炉2a,2bと、乾溜炉2a,2bにガス通路3a,3bを介して接続される燃焼炉4とを備える。
【0020】
乾溜炉2a,2bは、その上面部にそれぞれ開閉自在な投入扉5a,5bを備える投入口6a,6bが形成され、投入口6a,6bから廃棄物Aを乾溜炉2a,2b内に投入可能とされている。また、乾溜炉2a,2bの下部は開閉自在の底扉7a,7bとなっている。そして、乾溜炉2a,2bは、投入扉5a,5b及び底扉7a,7bを閉じた状態では、その内部が実質的に外部と遮断されるようになっている。
【0021】
底扉7a,7bの下部には乾溜炉2a,2bの内部と隔離された空室8a,8bが形成されており、空室8a,8bは、底扉7a,7bに設けられた複数の給気ノズル9a,9bを介して、乾溜炉2a,2bの内部に連通している。乾溜炉2a,2bの下部の空室8a,8bには、それぞれ乾溜酸素供給路10a,10bが接続されており、乾溜酸素供給路10a,10bは、酸素供給路11を介して押込ファン等により構成された酸素供給源12に接続されている。
【0022】
乾溜酸素供給路10a,10bにはそれぞれ制御弁13a,13bが設けられ、制御弁13a,13bは弁駆動器14a,14bによりその開度が制御されるようになっている。この場合、弁駆動器14a,14bは、CPU等を含む電子回路により構成された制御装置15により制御される。
【0023】
さらに、乾溜炉2a,2bの下部には、それぞれ乾溜炉2a,2bに収容された廃棄物Aに着火するための着火装置16a,16bが取り付けられている。着火装置16a,16bは点火バーナ等により構成され、燃料供給装置17a,17bから燃料供給路18a,18bを介して供給される燃料を燃焼させることにより、廃棄物Aに燃焼炎を供給する。
【0024】
燃焼炉4は、廃棄物Aの乾溜により生じる可燃性ガスとその完全燃焼に必要な酸素(空気)とを混合するバーナ部19と、酸素(空気)と混合された可燃性ガスを燃焼させる燃焼部20とからなり、燃焼部20はバーナ部19の下流側でバーナ部19に連通している。バーナ部19の上流側には、ガス通路3a,3bがそれぞれダンパ21a,21bを介して接続され、乾溜炉2a,2bにおける廃棄物Aの乾溜により生じた可燃性ガスがガス通路3a,3bを介してバーナ部19に導入される。
【0025】
バーナ部19の外周部には、その内部と隔離された空室(図示せず)が形成され、該空室はバーナ部19の内周部に穿設された複数のノズル孔(図示せず)を介してバーナ部19の内部に連通している。前記空室には、酸素供給路11から分岐する燃焼酸素供給路22が接続されている。
【0026】
燃焼酸素供給路22には制御弁23が設けられ、制御弁23は弁駆動器24によりその開度が制御されるようになっている。この場合、弁駆動器24は、制御装置15により制御される。
【0027】
バーナ部19の上流側には、燃焼装置25が取り付けられている。燃焼装置25は点火バーナ等により構成され、燃料供給装置26から燃料供給路27を介して供給される燃料を燃焼させることにより、バーナ部19に導入された可燃性ガスに着火し、或いは燃焼炉4を加熱する。
【0028】
燃焼部20の下流側には、燃焼炉4内で燃焼された燃焼排気により加熱される温水ボイラ28が取り付けられている。温水ボイラ28の出口側には、温水ボイラ28で冷却された燃焼排気を排出するダクト29aが設けられており、ダクト29aは開閉弁30を介して空冷式熱交換器31の上端部に接続されている。空冷式熱交換器31で冷却された燃焼排気は、空冷式熱交換器31の下部に開閉弁32を介して接続されたダクト29bにより取出される。
【0029】
一方、ダクト29aからは、開閉弁30の上流側でダクト29cが分岐しており、ダクト29cは開閉弁33を介して急冷塔34の上端部に接続されている。急冷塔34は、ダクト29cから導入される燃焼排気に散水して冷却するスプレー35を備えており、スプレー35は冷却水を供給する給水装置(図示せず)及び空気圧縮機(図示せず)に接続されている。
【0030】
急冷塔34で冷却された燃焼排気は、急冷塔34の下部に開閉弁36を介して接続されたダクト29dにより取出される。ダクト29dは開閉弁32,36の下流側でダクト29bに合流する。
【0031】
ダクト29bはバグフィルタ37の一方の端部に接続されており、ダクト29bからバグフィルタ37に導入される燃焼排気には薬剤サイロ38から供給される消石灰及び活性炭が混合され、硫黄酸化物(SOx)の脱硫及び脱臭が行われる。バグフィルタ37の他方の端部には、ダクト29eが接続されており、ダクト29eは燃焼炉4内の燃焼排気を誘引する誘引ファン39を介して煙突40に接続されている。この結果、ダクト29eに流通される燃焼排気は、煙突40から大気中に放出される。
【0032】
また、燃焼炉4の下流側には、温水ボイラ28を用いない場合に燃焼排気を排出するダクト29fが設けられており、ダクト29fは開閉弁41を介してダクト29aに接続されている。
【0033】
乾溜ガス化焼却処理装置1において、廃棄物Aを焼却処理する際には、まず、底扉7aが閉じた状態で乾溜炉2aの投入扉5aを開き、投入口6aから廃タイヤ等の廃棄物Aを乾溜炉2a内に投入する。次に、制御装置15により乾溜炉2aに対する廃棄物Aの投入が完了し、乾溜炉2aに廃棄物Aが収容されていることが検知されると、投入扉5aを閉じて乾溜炉2a内を密封状態としたのち、燃焼炉4の燃焼装置25を作動させることにより、燃焼炉4の予熱が開始される。
【0034】
次に、燃焼炉4内の温度が次第に上昇し、例えば760℃に達すると、制御装置15により弁駆動器14aが駆動されて制御弁13aの開度Vaが所定の開度、例えば25%とされ、乾溜炉2aに酸素(空気)の供給が開始される。次に、制御装置15により、乾溜炉2aに対する廃棄物Aの投入の完了と、乾溜炉2aに廃棄物Aが収容されていること、ダンパ21aが開かれていることとが検知されると、乾溜炉2aの着火装置16aが作動されて廃棄物Aに着火され、廃棄物Aの部分的燃焼が開始される。
【0035】
次に、乾溜炉2aでは、制御装置15により弁駆動器14aが制御されて、制御弁13aの開度Vaが段階的に増大される。これに伴って、乾溜炉2aにおける廃棄物Aの部分的燃焼は、次第に拡大して安定化し、廃棄物Aの底部に火床が形成される(火床形成段階)。
【0036】
前記火床が形成されると着火装置16aは停止され、廃棄物Aの部分的燃焼の熱により廃棄物Aの他の部分の乾溜が開始され、可燃性ガスの生成が始まり、該可燃性ガスはガス通路3aを介してバーナ部19に導入される(乾留の初期段階)。
【0037】
バーナ部19では、制御装置15により弁駆動器24が駆動されて制御弁23の開度が所定の開度とされ、酸素供給源12から酸素供給路11、燃焼酸素供給路22を介して酸素(空気)が供給されている。そこで、前記可燃性ガスは、燃焼酸素供給路22を介して供給される酸素(空気)と混合され、燃焼装置25から供給される燃焼炎により着火されて、燃焼部20における燃焼が開始される。
【0038】
乾溜炉2aにおける可燃性ガスの発生が活発になり、該可燃性ガスが燃焼炉4において自然燃焼を開始すると、燃焼炉4内の温度は次第に上昇し、予め設定された第1の温度(以下、第1の設定温度という)、例えば930℃に達する。
【0039】
前記可燃性ガスの燃焼により燃焼炉4内の温度が前記第1の設定温度に達すると、燃焼装置25が停止され、制御装置15は、前記可燃性ガスの燃焼により、燃焼炉4内の温度が該第1の設定温度に維持されるように制御弁13aの開度Vaを調整し、乾溜炉2aにおける該可燃性ガスの生成をフィードバック制御する(乾留が安定に進行する段階)。
【0040】
乾溜炉2aは、前記乾留による熱から炉材を保護する必要があるが、該炉材に耐火物のような蓄熱する材料を用いると、蓄熱された熱量が、炉内に対する空気の供給量の増減による前記可燃性ガスの生成量の調整の妨げとなる。そこで、乾溜炉2aは、炉壁を図示しないウォータージャケット構造にすることにより、前記乾留による熱から炉材を保護している。
【0041】
燃焼部20における前記可燃性ガスの燃焼により発生する燃焼排気は、温水ボイラ28で冷却されてダクト29aに排出され、又は、温水ボイラ28を経由することなく、ダクト29fを介してダクト29aに排出される。
【0042】
ダクト29aに排出された前記燃焼排気は、温水ボイラ28を経由した場合には、ダクト29aから空冷式熱交換器31に導入されてさらに冷却され、ダクト29bに排出される。また、温水ボイラ28を経由しなかった場合には、ダクト29cから急冷塔34に導入されて冷却され、ダクト29dを介してダクト29bに排出される。
【0043】
次に、ダクト29bに排出された前記燃焼排気は、薬剤サイロ38から供給される消石灰及び活性炭と混合されて脱硫及び脱臭され、バグフィルタ37に導入されて灰や塵埃等が除去された後、ダクト29eに排出され、さらに煙突40から大気中に放出される。
【0044】
乾溜炉2aにおける乾溜ガス化が進行し、乾溜炉2a内において可燃性ガスを生成させることができる廃棄物Aは殆ど失われると(乾留の終了段階)、第2の乾溜炉2bで生成した可燃性ガスが燃焼炉4に導入され、第2の乾溜炉2bで生成した可燃性ガスが燃焼炉4内で燃焼されるようになる。その後、乾溜炉2a内において乾溜により可燃性ガスを生成させることができる廃棄物Aは全く失われると、制御装置15は弁駆動器14aを介して制御弁13aの開度を所定の開度、例えば70%に維持し、乾溜炉2a内の廃棄物Aを灰化させる(灰化段階)。そして、廃棄物Aが灰化した後は、制御装置15は弁駆動器14aを介して、制御弁13aが閉弁されるまでその開度を所定の割合で減少させる。
【0045】
乾溜炉2aでは、廃棄物Aの灰化が終了し、制御弁13aが閉弁されたならば、底扉7aを下降させて灰化物の払い出し(灰出し)を行ったのち、底扉7aを元の位置に復帰させる。そして、投入扉5aを開き、投入口6aから廃タイヤ等の廃棄物Aを乾溜炉2a内に投入して、次回の処理を準備する。
【0046】
尚、本実施形態では、乾溜炉2aの場合を例として説明しているが、乾溜炉2bも乾溜炉2aの場合と全く同一の構成を備え、全く同一に作動する。
【0047】
ところで、乾溜ガス化焼却処理装置1では、燃焼炉4で前記可燃性ガスを燃焼させる際に、前記硫黄酸化物(SOx)と共に窒素酸化物(NOx)も発生するので、前記燃焼排気を煙突40から大気中に放出する前に、窒素酸化物(NOx)を除去する操作(脱硝)を行う必要がある。前記脱硝は、燃焼炉4から煙突40に至る経路中のどこかで、例えば前記燃焼排気に尿素水を噴射する等の方法により、前記燃焼排気を尿素水に接触させることにより行うことができる。
【0048】
ここで、前記尿素水は、粉体の尿素を水に溶解することにより製造することができるが、粉体の尿素を水に溶解する反応は吸熱反応であるので外部から反応系に熱を供給する必要があり、例えば、粉体の尿素を所定の範囲の温度、例えば、60~100℃の温水に溶解させることにより製造されている。
【0049】
しかし、前記範囲の温度の温水を得るには、乾溜ガス化焼却処理装置1とは別に、燃料や電気等のエネルギーを必要とし、燃焼装置のランニングコストが増加するばかりか、乾溜ガス化焼却処理装置1が山間部等に設置されるときには前記エネルギーを得ることが困難な場合もある。
【0050】
そこで、本実施形態では、乾留炉2a,2bに、前記乾留による熱から炉材を保護する設けられているウォータージャケットから得られる60~100℃の範囲の温度の温水に尿素を溶解することにより、容易に尿素水を得ることができる。前記範囲の温度の温水は、例えば、乾留炉2a,2bにおける廃棄物Aの乾留における、乾留が安定に進行する段階から灰化段階の間において、前記ウォータージャケットから得ることができる。
【0051】
本実施形態の尿素水の製造方法は、例えば、モータにより回転駆動される撹拌羽根と、水位計とを備える撹拌槽に、粉体の尿素と前記ウォータージャケットから得られる60~100℃の範囲の温度の温水とを投入して撹拌することにより実施することができる。前記撹拌槽は、途中に開閉バルブを備える給湯配管を介して前記ウォータージャケットに接続される一方、途中に送液ポンプを備える移送配管を介して尿素水貯留タンクに接続されている。
【0052】
前記撹拌槽では、例えば、粉体の尿素4トンに対し、前記範囲の温度の温水6トンを投入して前記撹拌羽根で撹拌することにより、40質量%の濃度の尿素水を得ることができる。前記粉体の尿素は、例えば、フレキシブルコンテナバック(フレコン)を用いて前記撹拌槽に投入することができる。また、前記範囲の温度の温水は前記給湯配管の途中に備えられた開閉バルブを開閉することにより所定量を前記撹拌槽に投入することができ、前記範囲の温度の温水の投入量は前記水位計により把握することができる。
【0053】
本実施形態の尿素水の製造方法では、まず、所定量(例えば4トン)の粉体の尿素を前記撹拌槽に投入した後、前記給湯配管から少量の前記温水を前記撹拌槽に投入し、前記撹拌羽根を回転駆動して撹拌することにより、前記粉体の尿素をスラリー乃至濃厚溶液とする。そして、次に、前記給湯配管から前記温水を所定量(例えば6トン)まで前記撹拌槽に投入し、前記撹拌羽根によりさらに撹拌することにより、所定の濃度(例えば40質量%)の尿素水を得ることができる。得られた尿素水は、前記送液ポンプを駆動することにより前記移送配管を介して前記尿素水貯留タンクに移送される。
【符号の説明】
【0054】
1…乾溜ガス化焼却処理装置、 2a,2b…乾溜炉、 4…燃焼炉。