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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】観賞用植物収納容器
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20240220BHJP
   A47G 7/06 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A01G9/02 E
A47G7/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020089071
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021182877
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】593069130
【氏名又は名称】株式会社アクアデザインアマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】天野 しのぶ
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実公昭44-015324(JP,Y2)
【文献】実開昭55-151159(JP,U)
【文献】実開平03-083037(JP,U)
【文献】特開昭57-177620(JP,A)
【文献】特表2010-521140(JP,A)
【文献】特開2020-054265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0186152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02
A47G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、前記容器の上部に設けられる蓋体とで構成された観賞用植物収納容器であって、前記蓋体の上部には液体を貯留する凹状の貯液部が設けられ、前記蓋体の中央にして前記貯液部には前記液体が前記容器の内部へ滴下するように構成された滴下孔が設けられていることを特徴とする観賞用植物収納容器。
【請求項2】
請求項1記載の観賞用植物収納容器において、前記滴下孔から前記容器の内部へ滴下する雫一滴の分量は0.3cc程度となるように構成されていることを特徴とする観賞用植物収納容器。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の観賞用植物収納容器において、前記容器の側面部には通気孔が設けられていることを特徴とする観賞用植物収納容器。
【請求項4】
請求項1~いずれか1項に記載の観賞用植物収納容器において、前記容器は透明な素材で構成されていることを特徴とする観賞用植物収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体の貯液部に貯留された液体が、前記蓋体に設けられた滴下孔から容器内の植物へ滴下するように構成された観賞用植物収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
植物や魚類の観賞容器は従来から多種多様な形態が存在する。金魚や熱帯魚を飼育するための水槽は勿論のこと、近年では水生植物を収納し、容器内に自然の生態系を演出することを目的としたアクアリウム用の容器も様々なデザインが生み出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5177351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水生植物のアクアリウムは、照明装置や濾過装置を設置することが通常であり、初期費用だけでもある程度の金額が必要となる。
【0005】
また、アクアリウムは一般的に購入者が自らの好みに従って育成する植物を選び、少しずつ手を加えながら、自ら植物の育成変化を楽しむものであるが、容器内での育成変化を楽しもうとすると、必然的に容器に付随させる設備が複雑になってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑み、容器の蓋体に貯液部を設け、この貯液部に貯留された水が容器内の植物に、自然の水滴のように滴下することを容易に構築することができるシンプルな観賞用植物収納容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
容器1と、前記容器1の上部に設けられる蓋体2とで構成された観賞用植物収納容器であって、前記蓋体2の上部には液体を貯留する凹状の貯液部3が設けられ、前記蓋体2の中央にして前記貯液部3には前記液体が前記容器1の内部へ滴下するように構成された滴下孔4が設けられていることを特徴とする観賞用植物収納容器に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の観賞用植物収納容器において、前記滴下孔4から前記容器1の内部へ滴下する雫一滴の分量は0.3cc程度となるように構成されていることを特徴とする観賞用植物収納容器に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の観賞用植物収納容器において、前記容器1の側面部には通気孔6が設けられていることを特徴とする観賞用植物収納容器に係るものである。
【0011】
また、請求項1~いずれか1項に記載の観賞用植物収納容器において、前記容器1は透明な素材で構成されていることを特徴とする観賞用植物収納容器に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成したから、蓋体の貯液部に水を定期的に補充するという簡易作業だけで、水が滴下孔から自然の水滴と同様に雫となって容器内の植物に滴下し、室内に癒しを提供する優れた観賞用植物収納容器となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1における容器及び蓋体の分解斜視図である。
図2】実施例1における要部の拡大縦断面図である。
図3】実施例1における使用状態を示す縦断面図である。
図4】実施例2における容器及び蓋体の斜視図である。
図5】実施例2における要部の拡大縦断面図である。
図6】実施例2における使用状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0015】
容器1の上部に設けられた蓋体2の貯液部3に貯留された液体が、前記蓋体2に設けられた滴下孔4を通過し、雫形成部5において雫9となり前記容器1内部へ滴下する。
【0016】
したがって、容器1内の植物8に水滴が自然の雫のように落下する。
【実施例
【0017】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0018】
本実施例1は、容器1と、前記容器1の上部に設けられる蓋体2とで構成された観賞用植物収納容器であって、前記蓋体2には液体を貯留する貯液部3が設けられ、この貯液部3には前記液体が前記容器1の内部へ滴下するように構成された滴下孔4が設けられている観賞用植物収納容器である。
【0019】
また、前記貯液部3は前記蓋体2の上部に形成された凹部であり、前記滴下孔4は、前記蓋体2の中央に設けられ、また、前記容器1の側面部には通気孔6が設けられている。さらに、前記容器1は透明な素材で構成されている。
【0020】
また、前記滴下孔4の下端には、前記滴下孔4を通過した液体を滴下に適した膨出形状とし、落滴へと至るようにする雫形成部5が設けられている。また、前記滴下孔4及び前記雫形成部5は、前記滴下孔4を通過した液体を滴下に適した膨出形状とし、落滴へと至る過程を周期的に繰り返すように構成されている。
【0021】
具体的には、前記貯液部3に水を入れた場合、前記滴下孔4の径、前記滴下孔4の内面の粗さ、前記雫形成部5の外縁形状を考慮して1~2秒間に一滴が滴下し、この滴下する一滴(雫)の分量が0.3cc程度となるように構成されている。
【0022】
前記容器1内で育成する前記植物8としては、樹木に固着するコケ類をはじめとした着生植物が好適である。着生植物は水分補給の手段を根に頼らず、雨水や霧を補給源とする植物であるから、前記容器1上部に位置する前記蓋体2から滴下する前記雫9は適した給水手段となる。
【0023】
以下に本実施例の容器についての構成を具体的に説明する。
【0024】
図1図2及び図3は、横断面円形の深鉢形をしている容器1と、漏斗状に形成された蓋体2によって構成されている。
【0025】
また、前記容器1の側面部には四ヶ所の通気孔6が設けられている。前記通気孔6は上方開口端部の近傍に等間隔に設けられている。
【0026】
前記蓋体2には水を貯留するための凹状の貯液部3が設けられ、この貯液部3の中央には前記滴下孔4(貫通孔)が設けられている。前記滴下孔4が前記容器1の開口部中央に位置することから、前記滴下孔4を通過した水は前記容器1内の中心に滴下する。
【0027】
前記蓋体2の下面には前記容器1の前記上方開口端部と係合する突部7が設けられている。前記突部7によって前記容器1に対する前記蓋体2のズレが防止され、前記滴下孔4の位置が前記容器1の中央に固定される。
【0028】
また、前記滴下孔4の径は、前記貯液部3から前記滴下孔4下端の雫形成部5へ膨出した液体、この場合水が、滴下に適した雫9の形状へ成長し、間断的に滴下するように設定されている。
【0029】
前記雫9の質量をM、重力加速度をg、雫くびれ部(雫上端部の最も細い部分)の半径をr、表面張力をλ、接触角をθとして、以下に詳述する。
【0030】
前記雫形成部5へ漏出した水が、表面張力によって前記雫形成部5に吊下っている状態を保ちながら成長し、前記雫9を形成する。この状態は下記の式で表される。

M×g<2πr×λ×cosθ
【0031】
やがて前記雫9が表面張力によって前記雫形成部に吊下がる状態を維持できる限界点を迎える。この状態は下記の式で表される。

M×g=2πr×λ×cosθ
【0032】
その後、前記雫9の重量による下向きの力が表面張力より大きくなるため、前記雫9は前記雫形成部5に吊下がる状態を維持できなくなり滴下へ至る。この状態は下記の式で表される。

M×g>2πr×λ×cosθ
【0033】
また、前記貯液部3に貯留された液体は前記滴下孔4を通過するため、液体の粘度も関係する。本実施例1では前記貯液部3に貯留される液体は水である。水の粘度は20℃において1.002mPa・s、35℃において0.719mPa・sであり、常温においてほぼ一定を保つ。したがって、通常想定される本実施例1の使用態様において、水が前記滴下孔4を通過する上で粘度が阻害要因となることは考えられない。
【0034】
前記雫形成部5において前記雫9は上記の成長から滴下への過程を繰り返す構成となっている。したがって、前記貯液部3に貯留された水が枯渇しない限り、前記滴下孔4から前記雫9が滴下し続ける(水量が減少した場合上記の滴下へ至るサイクルはペースが遅くなる。)。
【0035】
また、前記雫9の滴下速度について、滴下する様子を見る者の観点から、自然状態に近く、また心地よく感じるリズムとして、前記滴下孔4から前記雫9が滴下する一滴の間隔はおよそ1~2秒に一滴とし、一滴の分量はおよそ0.3cc程度とするのが望ましい。
【0036】
本実施例1は以上のように構成したから、前記雫形成部5から落滴する雫9が当たる範囲に植物8を設置することで、前記蓋体2から前記雫9を前記植物8の所望の位置へ正確に滴下させることができる。
【0037】
また、前記通気孔6によって前記容器1内部の余分な湿気は効率的に排出され、前記容器1内部は適度な湿度に保たれるため結露の発生が軽減される。したがって、透明な素材で構成された前記容器1の表面上に曇りを生じさせることはなく景観を損ねる心配はない。
【0038】
また、前記容器1と前記蓋体2は前記突部7によって係合されているだけであるから前記蓋体2は容易に着脱可能である。したがって、前記容器1内部の前記植物8を別の植物と入れ替える作業は上部開口部から容易に行うことが可能である。
【0039】
よって、本実施例1は構造が簡易であり、また単に前記貯液部3に水を定期的に補充するだけで基本的な維持管理が可能でありながら、恰も自然の一部を切り取ったかのように前記雫9が前記容器1へ滴下する様子を演出することができる観賞用植物収納容器となる。
【0040】
図4図5,及び図6は別形状の実施例2であり、横断面方形の直方体である容器1と、上面部に凹部を有する蓋体2によって構成されている。
【0041】
前記容器1の側面部には四面に一箇所ずつ通気孔6が設けられている。また、前記通気孔6は前記蓋体2に被嵌されない位置に設けられている。したがって、空気の取り入れ及び湿気の排出を阻害することなく実施例1同様に良好な通気性を確保できる。
【0042】
さらに、前記蓋体2が前記容器1上部に被嵌される構成であるから、図1図2及び図3に示された実施例1と比し、前記蓋体2のズレが一層防止される。
【0043】
その余は図1図2及び図3で示した実施例1と同様である。
【符号の説明】
【0044】
1 容器
2 蓋体
3 貯液部
4 滴下孔
6 通気孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6