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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ヘアアイロン
(51)【国際特許分類】
   A45D 1/06 20060101AFI20240220BHJP
   A45D 1/04 20060101ALI20240220BHJP
   A45D 1/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A45D1/06 C
A45D1/04 C
A45D1/00 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020122701
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019107
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】301000239
【氏名又は名称】テスコム電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】金森 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】臼井 郁也
(72)【発明者】
【氏名】久保田 仁
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-092308(JP,A)
【文献】特開2019-180634(JP,A)
【文献】特開平05-309011(JP,A)
【文献】特開昭58-092309(JP,A)
【文献】登録実用新案第3210054(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0223394(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 1/00- 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ部により開閉可能に連結され、互いの挟持部の間に毛髪を挟んで加熱処理を行う一対の開閉部を有するヘアアイロンであって、
前記一対の開閉部に対し、前記挟持部の間隔が最小である閉じ位置からの開き方向への可動角度を変更可能な開度調節手段を備え
前記一対の開閉部の一方に設けられ、前記ヒンジ部を挟んで前記挟持部とは反対側に向けて突出する支持部を有し、
前記支持部に対して、前記ヒンジ部における前記一対の開閉部の回転中心である開閉軸と交差する回転軸を中心として回動可能に支持された回動部材を有し、
前記開度調節手段は、前記回動部材の外面に設けられ、前記回転軸を中心とする周方向での位置の違いに応じて径方向への突出量が異なる調節用突出部を有し、
前記一対の開閉部の他方に設けたストッパ部に対する前記調節用突出部の当接位置の変化により、前記一対の開閉部の前記可動角度が変更されることを特徴とするヘアアイロン。
【請求項2】
ヒンジ部により開閉可能に連結され、互いの挟持部の間に毛髪を挟んで加熱処理を行う一対の開閉部を有するヘアアイロンであって、
前記一対の開閉部に対し、前記挟持部の間隔が最小である閉じ位置からの開き方向への可動角度を変更可能な開度調節手段を備え、
前記一対の開閉部の一方に設けられ、前記ヒンジ部を挟んで前記挟持部とは反対側に向けて突出する支持部を有し、
前記支持部に対して、前記ヒンジ部における前記一対の開閉部の回転中心である開閉軸に接近及び離間する進退方向へ移動可能に支持された進退部材を有し、
前記開度調節手段は、前記進退部材の外面に設けられ、前記進退方向での位置の違いに応じて前記進退方向と交差する方向への突出量が異なる調節用突出部を有し、
前記一対の開閉部の他方に設けたストッパ部に対する前記調節用突出部の当接位置の変化により、前記一対の開閉部の前記可動角度が変更されることを特徴とするヘアアイロン。
【請求項3】
前記開度調節手段は、前記一対の開閉部の前記可動角度を無段階で変更可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘアアイロン。
【請求項4】
前記開度調節手段は、前記一対の開閉部の前記可動角度を複数の有限段数で変更可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘアアイロン。
【請求項5】
前記調節用突出部は、前記周方向に進むにつれて前記径方向への突出量が徐変する円弧面を有することを特徴とする請求項を引用する請求項に記載のヘアアイロン。
【請求項6】
前記周方向での前記調節用突出部の一端に、前記ストッパ部に当接して前記一対の開閉部を前記閉じ位置に保持させる閉塞保持部を有することを特徴とする請求項に記載のヘアアイロン。
【請求項7】
前記回動部材は、前記閉塞保持部に対して前記調節用突出部とは周方向の反対側に隣接する位置に、前記ストッパ部との当接により前記一対の開閉部の最大開度を定める最大開度規制部を有し、
前記回動部材は、前記閉塞保持部に前記ストッパ部が当接する位置から、前記調節用突出部に前記ストッパ部が当接する第1の回転方向と、前記最大開度規制部に前記ストッパ部が当接する第2の回転方向との両方に回転可能であることを特徴とする請求項6に記載のヘアアイロン。
【請求項8】
前記回動部材は、前記回転軸に沿う方向へ移動可能であり、
前記回転軸に沿う方向で前記調節用突出部とは位置を異ならせて、前記ストッパ部に当接して前記一対の開閉部を前記閉じ位置に保持させる閉塞保持部を有していることを特徴とする請求項に記載のヘアアイロン。
【請求項9】
前記調節用突出部は、前記進退方向で前記開閉軸に近い側から遠い側に進むにつれて、前記進退方向と交差する方向への突出量を段階的に大きくする複数の段差面を有することを特徴とする請求項を引用する請求項に記載のヘアアイロン。
【請求項10】
前記進退方向での前記調節用突出部の一端に、前記ストッパ部に当接して前記一対の開閉部を前記閉じ位置に保持する閉塞保持部を有することを特徴とする請求項に記載のヘアアイロン。
【請求項11】
前記進退部材は、前記進退方向に対して略垂直に突出するガイド突起を有し、
前記進退部材を前記進退方向に移動可能に支持する前記支持部は、前記進退方向の複数の位置で前記ガイド突起に係合して前記進退部材を停止させる複数の係合部を有していることを特徴とする請求項に記載のヘアアイロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪にストレートやカール等の癖付けを行うヘアアイロンに関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪にストレートやカール等の癖付けを行うヘアアイロンとして、一対の開閉部をヒンジ部で開閉可能に連結し、毛髪加熱用の挟持部を開閉部に備えたものが広く用いられている。挟持部の挟持面を加熱した状態で、一対の開閉部の間隔を使用者が適宜操作して挟持面の間に毛髪を挟み込むことで、挟持面から伝わる熱と、挟持面の形状とによって、毛髪の癖付けを行うことができる。
【0003】
ヘアアイロンの収納性や携帯性を向上させるべく、一対の開閉部をV字状に開いたままにせず、非使用時に一対の開閉部を閉じさせることが可能なロック機構を搭載した技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3210054号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なヘアアイロンでは、一対の開閉部のうち長手方向の一端付近をヒンジ部で連結し、ヒンジ部と反対の他端側に挟持部を備えている。挟持部は加熱によって高温になるため、使用者が把持する把持部は、挟持部から離れたヒンジ部寄りの位置に設定される。つまり、使用時には、V字型のヘアアイロンの基端に近い位置を使用者が把持して、開閉部の開閉操作を行う。
【0006】
また、ヘアアイロンでは、一対の開閉部をバネ等で開き方向に付勢している場合が多く、この付勢力に抗して使用者が閉じ方向に操作することで、一対の開閉部の間隔を調節する。毛髪のどのような部位でも挟むことができるように、一対の開閉部の機械的な最大開度は、余裕を持たせた大きさに設定されている。
【0007】
そのため、前髪や毛先のように厚みが小さい部位を施術する場合には、使用者が手動操作で一対の開閉部の開度を狭めて、施術対象となる毛髪の位置がずれないように閉じ方向への力を与えながらヘアアイロンを使用する必要があり、手間がかかっていた。また、施術の途中で閉じ方向への力を緩めると、一対の開閉部が最大開度まで戻ってしまい、施術に適した開度に維持させることが難しかった。
【0008】
また、一対の開閉部の開度が大きいままでは、手の小さい使用者がつかみにくい場合があった。さらに、上述のようにヒンジ部に近い基端寄りを把持するという構造上、付勢力に抗して一対の開閉部を閉じるために必要な力が大きくなりがちであり、握力の弱い使用者や長時間に亘って使用する使用者にとって負担が大きい場合があった。
【0009】
特許文献1に記載されているロック機構は、ヘアアイロンの非使用時の収納性や携帯性に着目したものであり、ヘアアイロンの使用時における以上のような操作性の問題を解消するものではなかった。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、使用時の操作性、特に一対の開閉部の開度調節の操作性に優れるヘアアイロンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヒンジ部により開閉可能に連結され、互いの挟持部の間に毛髪を挟んで加熱処理を行う一対の開閉部を有するヘアアイロンであって、前記一対の開閉部に対し、前記挟持部の間隔が最小である閉じ位置からの開き方向への可動角度を変更可能な開度調節手段を備える。
本発明のヘアアイロンの一態様として、前記一対の開閉部の一方に設けられ、前記ヒンジ部を挟んで前記挟持部とは反対側に向けて突出する支持部を有し、前記支持部に対して、前記ヒンジ部における前記一対の開閉部の回転中心である開閉軸と交差する回転軸を中心として回動可能に支持された回動部材を有し、前記開度調節手段は、前記回動部材の外面に設けられ、前記回転軸を中心とする周方向での位置の違いに応じて径方向への突出量が異なる調節用突出部を有し、前記一対の開閉部の他方に設けたストッパ部に対する前記調節用突出部の当接位置の変化により、前記一対の開閉部の前記可動角度が変更される。
本発明のヘアアイロンの異なる態様として、前記一対の開閉部の一方に設けられ、前記ヒンジ部を挟んで前記挟持部とは反対側に向けて突出する支持部を有し、前記支持部に対して、前記ヒンジ部における前記一対の開閉部の回転中心である開閉軸に接近及び離間する進退方向へ移動可能に支持された進退部材を有し、前記開度調節手段は、前記進退部材の外面に設けられ、前記進退方向での位置の違いに応じて前記進退方向と交差する方向への突出量が異なる調節用突出部を有し、前記一対の開閉部の他方に設けたストッパ部に対する前記調節用突出部の当接位置の変化により、前記一対の開閉部の前記可動角度が変更される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヘアアイロンによれば、施術対象の条件や使用者の好み等に応じて、開度調節手段によって開き方向への一対の開閉部の可動角度を変更することで、開閉部に対する操作の負担や手間を低減して、使用時の操作性の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の形態のヘアアイロンで、一対の開閉部を閉じ位置に保持したロック状態を示す斜視図である。
図2図1と同じ状態の側面図である。
図3図1と同じ状態の背面図である。
図4】第1の形態のヘアアイロンで、開度調節手段により一対の開閉部の可動角度を変更した状態を示す側面図である。
図5図4と同じ状態の背面図である。
図6】第1の形態のヘアアイロンで、調節ダイヤルを図4の位置よりも開度増大方向に回動させて一対の開閉部を最大開度にさせた状態を示す側面図である。
図7図6と同じ状態の背面図である。
図8】第1の形態のヘアアイロンで、最大開度規制部により一対の開閉部の最大開度を定めた状態を示す側面図である。
図9図8と同じ状態の背面図である。
図10】第1の形態のヘアアイロンの開度調節手段を構成する調節ダイヤルの正面図である。
図11】調節ダイヤルの斜視図である。
図12】第1の形態のヘアアイロンで、変形例の閉塞保持部により一対の開閉部を閉じ位置に保持したロック状態を示す側面図である。
図13】第1の形態のヘアアイロンで、変形例の開度調節手段により一対の開閉部の可動角度を設定した状態を示す側面図であり、(A)は一方の側面、(B)は反対側の側面を示す。
図14図12と同じ状態における調節ダイヤル付近を示す斜視図である。
図15図13と同じ状態における調節ダイヤル付近を示す斜視図である。
図16】第2の形態のヘアアイロンで、一対の開閉部を閉じ位置に保持したロック状態を示す斜視図である。
図17図16と同じ状態の側面図である。
図18】第2の形態のヘアアイロンで、開度調節手段により一対の開閉部を小開度に設定した状態の斜視図である。
図19図18と同じ状態の側面図である。
図20】第2の形態のヘアアイロンで、開度調節手段により一対の開閉部を中開度に設定した状態の斜視図である。
図21図20と同じ状態の側面図である。
図22】第2の形態のヘアアイロンで、最大開度規制部により一対の開閉部の最大開度を定めた状態を示す斜視図である。
図23図22と同じ状態の側面図である。
図24】第2の形態のヘアアイロンで調節レバーを支持する支持部の内部構造を示す図である。
図25】第2の形態のヘアアイロンの開度調節手段を構成する調節レバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態のヘアアイロンについて説明する。本実施の形態のヘアアイロンは、開度調節手段に回動部材(後述する調節ダイヤル31)を用いる第1の形態(図1から図11)と、第1の形態から開度調節手段の構成を変更した変形例(図12から図15)と、開度調節手段に進退部材(後述する調節レバー51)を用いる第2の形態(図16から図25)とを含んでいる。
【0015】
図1から図11を参照して、第1の形態のヘアアイロン1について説明する。ヘアアイロン1は、ヒンジ部12で連結された一対の開閉部10と開閉部11を有しており、開閉部10における挟持部10aと、開閉部11における挟持部11aとの間に毛髪を挟んで加熱処理を行う。
【0016】
ヒンジ部12は、開閉部10と開閉部11の長手方向における一端(基端)付近を連結している。開閉部10と開閉部11は、ヒンジ部12を通る開閉軸P1を回転中心として相対的に回転を行って、先端側の挟持部10aと挟持部11aの間隔を変化させる。つまり、開閉軸P1を中心として開閉部10と開閉部11の間の開度(開き角度)が変化する。開閉軸P1を中心とする開閉部10と開閉部11の回転動作の方向を開閉方向とし、開閉方向のうち、挟持部10aと挟持部11aの間隔を小さくする方向を閉じ方向、挟持部10aと挟持部11aの間隔を大きくする方向を開き方向とする。また、開閉部10と開閉部11において、閉じ方向を向く側を内側、開き方向を向く側を外側、とする。なお、以下の説明における開閉部10と開閉部11の開度の数値は、後述する挟持面13aと挟持面14aの相対的な角度を基準としたものである。
【0017】
図示していないが、ヒンジ部12付近には、開閉部10と開閉部11を開き方向に付勢する付勢手段が設けられている。付勢手段の一例として、トーションバネやコイルバネ等を用いることができるが、これ以外の付勢手段を用いてもよい。ヘアアイロン1を使用する際には、開閉部10及び開閉部11のうち、挟持部10a及び挟持部11aよりも基端側の把持部10b及び把持部11bを使用者が把持して、付勢手段の付勢力に抗して閉じ方向への力を付与して開閉部10と開閉部11を所望の開度まで閉じさせる。
【0018】
挟持部10aと挟持部11aの内側には、加熱プレート13と加熱プレート14が設けられている。各加熱プレート13,14は、互いに対向する挟持面13aと挟持面14aを有している。開閉部10と開閉部11の内部に設けたヒーター(図示略)によって加熱プレート13と加熱プレート14が加熱され、加熱した状態で挟持面13aと挟持面14aによって毛髪を挟むことによって、毛髪が癖付けされる。本実施の形態では、毛髪をストレート状に癖付けするのに適した平面状の挟持面13a,14aを備えているが、挟持面の形状はこれに限定されず、毛髪をカール状に癖付けするのに適した曲面状の挟持面等に適用することも可能である。
【0019】
開閉部10のうち把持部10bの内側に操作部15が設けられている。操作部15の側面には、電源スイッチ16、温度調整ボタン17、温度表示部18が設けられている。また、操作部15の内部には、ヘアアイロン1を統括的に制御する制御部(図示略)が設けられている。
【0020】
図1に示すように、ヘアアイロン1のうちヒンジ部12が設けられている基端側に、円筒状の支持スリーブ20が設けられている。支持スリーブ20は開閉部10に対して固定的に取り付けられており、開閉部10の長手方向において、ヒンジ部12を挟んで挟持部10a及び把持部10bとは反対側に向けて支持スリーブ20が突出している。ヘアアイロン1に電力供給するための電源コード21が、支持スリーブ20の内側を通って操作部15内の電源回路に接続している。電源コード21の基端部分は、コードブッシュ21aで覆われて保護されている。
【0021】
ヘアアイロン1の電源がオフの状態で、使用者が電源スイッチ16を操作(長押し)すると、電源オン信号が制御部に入力され、制御部はヒーターに通電して加熱プレート13,14への加熱を開始させる。加熱プレート13,14(挟持面13a,14a)の温度が温度センサで検知され、設定された所定の温度(設定温度)に達すると、制御部はヒーターへの通電を遮断して設定温度を維持する。使用者が温度調整ボタン17を操作して設定温度を選択(変更)することが可能である。温度表示部18には設定温度等の情報が表示される。ヘアアイロン1の電源がオンの状態で、使用者が電源スイッチ16を操作すると、電源オフ信号が制御部に入力されて、制御部はヒーターへの通電を終了してヘアアイロン1を電源オフ状態にする。
【0022】
なお、ヘアアイロン1においては、加熱プレート13,14での加熱処理だけではなく、毛髪に対して蒸気の状態で水分を供給するスチーム機能等を備えていてもよい。この場合、操作部15内に貯水部等を設ける。
【0023】
ヘアアイロン1を使用する際には、付勢手段によって開き方向に付勢されている開閉部10と開閉部11を、使用者が閉じ方向に閉塞操作して、挟持部10a,11aの加熱プレート13,14の間隔を狭めて、挟持面13aと挟持面14aの間に毛髪を挟むことができる。様々な毛髪の量や毛髪の状態に対応できるように、開閉部10と開閉部11の最大開度はある程度の余裕を持った大きさであることが求められる。しかしながら、常に一定の最大開度から開閉部10と開閉部11の閉じ方向への操作を行うものであると、付勢力に抗しての操作量が大きくなって、使用者の負担が大きくなるおそれがある。特に、前髪や毛先のように厚みが比較的少ない対象を施術する場合に、閉じ方向への操作量をできるだけ小さくして、毛髪を精度良く挟持できるようにしたいという要求がある。また、使用者の手のサイズが小さい場合や、握力が弱い場合や、付勢手段による付勢力が大きい場合に、使用者の操作負担を軽減したいという要求がある。
【0024】
ヘアアイロン1は、開閉部10と開閉部11を閉じ方向に動作させて加熱プレート13と加熱プレート14によって毛髪を挟む際に、使用者の負担を軽減して操作性を向上させるために、閉じ位置からの開き方向への開閉部10と開閉部11の可動角度(可動範囲)を、使用者の操作に応じて機械的に変更可能な開度調節手段30を有している。開度調節手段30を構成する要素として、開閉部10側に回動部材である調節ダイヤル31が設けられており、開閉部11側にストッパ部22が設けられている。
【0025】
図10及び図11に示すように、調節ダイヤル31は、円筒状の本体部32を有する。本体部32は、支持スリーブ20の外側を囲んで配置されている。支持スリーブ20の外周面に対して本体部32の内周面が摺接することにより、調節ダイヤル31は、支持スリーブ20の中心を通る回転軸P2を中心として回動可能に支持されている。回転軸P2は、開閉軸P1に対して垂直な軸線であり、概ね開閉部10の長手方向に延びている。調節ダイヤル31は、回転軸P2に沿う方向の移動は規制されており、一定の位置で回動する。
【0026】
調節ダイヤル31における本体部32の外面には、回転軸P2を中心とする周方向に位置を異ならせて、複数のリブ33が設けられている。リブ33は、回転軸P2に沿う方向に延びる直線状の突起部であり、使用者が調節ダイヤル31を把持して回転操作する際に、力を伝えやすくして操作性を向上させる機能を有する。
【0027】
また、調節ダイヤル31の本体部32の外面には、周方向に延びる調節用突出部34が設けられている。調節用突出部34は、回転軸P2に沿う方向で、ヒンジ部12(開閉軸P1)に近い側の端部付近に設けられている。調節用突出部34は、周方向での位置の違いに応じて径方向への突出量(回転軸P2からの突出量)が異なる突出部である。より詳しくは、調節用突出部34の外径側の面は、径方向への突出量が最も大きい最大突出部34aから、径方向への突出量が最も小さい最小突出部34bに至るまで、周方向に進むにつれて径方向への突出量が無段階に徐変する滑らかな円弧面34cになっている。なお、最小突出部34bは、周方向の所定の範囲に亘って形成されている。リブ33と、調節用突出部34の最小突出部34bとは、径方向の突出量が同程度に設定されている。
【0028】
調節ダイヤル31の本体部32の外面にはさらに、閉塞保持部35が設けられている。閉塞保持部35は、周方向での調節用突出部34の一端である最大突出部34aに隣接する位置に設けられており、最大突出部34aよりも径方向の突出量が大きい突出部である。
【0029】
調節ダイヤル31の本体部32の外面のうち、調節用突出部34と閉塞保持部35が形成されていない周方向の領域は、回転軸P2からの径方向の大きさが一定の定径外面部36となっている。定径外面部36が調節ダイヤル31における外面の基準位置であり、調節用突出部34と閉塞保持部35は、定径外面部36よりも径方向に突出している。なお、リブ33は定径外面部36上に設けられており、リブ33の箇所のみ、僅かな突出形状が存在する。
【0030】
図10及び図11に示すように、調節用突出部34と閉塞保持部35の内径側には、調節ダイヤル31の軸方向端面(図10及び図11に表れている側の端面)に開口する内部空間37が存在する。調節ダイヤル31は、回転軸P2に沿う方向に移動する型によって形成される成形品であり、成形時に型が内部空間37に対応する部分に位置し、成形後に型抜きすることで内部空間37が現れる。このようにして調節ダイヤル31を成形することで、シンプルで低コストに得られる型構造によって、調節用突出部34と閉塞保持部35を含む形状を高精度に形成することができる。また、調節ダイヤル31をヘアアイロン1に組み付けた状態では、内部空間37の開口はヒンジ部12側を向いていて外観に現れないため、見栄えにも影響しない。
【0031】
図3図5図7図9に示すように、ストッパ部22は、開閉部11のうち調節ダイヤル31の外面に対向する内側部分に設けられた突出部である。開閉部10及び開閉部11の長手方向において、ストッパ部22は、調節用突出部34及び閉塞保持部35と対応する位置に配されている。また、ストッパ部22は、図3図5図7図9のように回転軸P2に沿って見たときに(ヘアアイロン1の背面視で)、開閉軸P1に対して垂直で回転軸P2を通る仮想線P3上に位置している。ストッパ部22は開閉部11に固定的に設けられており、回転軸P2を中心として調節ダイヤル31が回転することによって、ストッパ部22に対向する箇所が、調節用突出部34と閉塞保持部35と定径外面部36に切り替わる。開閉部11の外面側には、仮想線P3上に位置する突起状の指標部23が設けられており、使用者は、指標部23を外観上の指標として目視しながら、ストッパ部22に対する調節ダイヤル31の回転位置を把握することができる。
【0032】
図2図4図6図8に示すように、開閉部10及び開閉部11の長手方向において、調節ダイヤル31及びストッパ部22は、ヒンジ部12(開閉軸P1)を挟んで、挟持部10a,11aや把持部10b,11bとは反対側の基端側に位置する。従って、ストッパ部22が調節ダイヤル31に当接すると、それ以上の開き方向への開閉部10と開閉部11の動作が規制される。そして、ストッパ部22に対する調節ダイヤル31の各部の当接関係の変化によって、開閉部10と開閉部11の開度や可動角度が変更される。
【0033】
図1から図3は、閉塞保持部35が仮想線P3上に位置する(ストッパ部22に対向する)回転位置に調節ダイヤル31を保持した状態を示している。調節ダイヤル31のうち最も径方向に突出している閉塞保持部35がストッパ部22に当接することにより、ストッパ部22が回転軸P2から離れる方向に押し込まれている(回転軸P2からの距離を大きくしている)。その結果として、開閉部10と開閉部11は、付勢手段の付勢力に抗して、先端側の挟持部10aと挟持部11aの間隔が最小となる(開度が0度である)閉じ位置に保持されている。つまり、開閉部10と開閉部11が開かないようにロックされている。このロック状態により、ヘアアイロン1の非使用状態での収納性や携帯性を向上させることができる。
【0034】
ロック状態から、調節ダイヤル31を第1の回転方向である開度増大方向(図3の反時計方向)に回転操作すると、図4及び図5のように、調節用突出部34が仮想線P3上に位置して、円弧面34cがストッパ部22に対向する状態に変化する。開閉部10と開閉部11を開き方向に付勢している付勢手段によって、ストッパ部22には常に回転軸P2に接近しようとする負荷がかかっているため、閉塞保持部35よりも突出量が小さい調節用突出部34がストッパ部22に対向するようになると、ストッパ部22は円弧面34cに当接するまで移動する。これに応じて、開閉部10に対して開閉部11が開き方向に動作し、挟持部10aと挟持部11aが離れる。
【0035】
調節用突出部34は、閉塞保持部35に隣接する最大突出部34aから最小突出部34b側に進むにつれて径方向の突出量が小さくなる形状である。すなわち、図3のロック状態から開度増大方向への調節ダイヤル31の回転量(回転角度)を大きくするほど、回転軸P2側へのストッパ部22の移動可能量(ストッパ部22に対する円弧面34cの退避量)を大きくさせて、開閉部10と開閉部11の開度の機械的限界を増大させる構造を有している。従って、開度増大方向への調節ダイヤル31の回転量に応じて、閉じ位置から開き方向への開閉部10と開閉部11の可動角度が変化する。調節用突出部34の円弧面34cは徐々に径方向の突出量が変化する滑らかな面であるため、調節用突出部34(円弧面34c)とストッパ部22の当接により定まる開閉部10と開閉部11の可動角度は無段階で連続的に変化する。
【0036】
図11に示すように、調節用突出部34は、調節ダイヤル31の周方向で半分近く(180度弱)の範囲に亘って形成されている。よって、ロック状態から調節ダイヤル31を開度増大方向に半周近く回転させる間、徐々に開き方向への開閉部10と開閉部11の可動角度が大きくなる。図4及び図5は、調節ダイヤル31をロック状態から開度増大方向に約45度回転させた状態を示している。図4及び図5の位置よりもさらに開度増大方向に調節ダイヤル31を回転させると、開閉部10と開閉部11の開度が大きくなる。図6及び図7は、調節用突出部34の最小突出部34bがストッパ部22に対向して当接する位置まで調節ダイヤル31を回転させた状態を示している。この状態では、開閉部10と開閉部11は、調節ダイヤル31とストッパ部22によって許容される最大開度になっている。
【0037】
このように、使用者が調節ダイヤル31を回転操作して閉じ位置からの開閉部10と開閉部11の可動角度を変更して、開閉部10と開閉部11が任意の開度になるように調整することができる。これにより、使用者が開閉部10と開閉部11を閉じ方向に動作させてヘアアイロン1を使用する際の操作性が向上し、ヘアアイロン1の使い勝手が良くなる。開閉部10と開閉部11の可動角度は無段階で変更可能であるため、調節の自由度が高く、好みの開度に設定しやすい。
【0038】
本実施の形態では、調節用突出部34とストッパ部22の当接によって調節される開閉部10と開閉部11の可動角度の変更範囲を、5度から12度に設定している。調節用突出部34の最大突出部34aがストッパ部22に当接する状態で、開閉部10と開閉部11の可動角度が範囲内で最小の5度になり、調節用突出部34の最小突出部34bがストッパ部22に当接する状態で、開閉部10と開閉部11の可動角度が範囲内で最大の12度になる。なお、この可動角度の範囲は一例であり、異なる値に設定してもよい。回転軸P2に対する調節用突出部34の突出量や、開閉部11からのストッパ部22の突出量等の変更によって、開閉部10と開閉部11の可動角度が変化するので、調節ダイヤル31やストッパ部22の設計によって可動角度の範囲を適宜設定することができる。例えば、最大突出部34aの突出量を図示の構成よりも大きくすれば、最大突出部34aがストッパ部22に当接する状態での開閉部10と開閉部11の可動角度が、5度よりも小さくなる。
【0039】
また、調節ダイヤル31の回転位置の変化に応じた開閉部10と開閉部11の可動角度の変化は、調節用突出部34における円弧面34cの曲率に依拠する。従って、最大突出部34aから最小突出部34bに至るまでの周方向での調節用突出部34の長さ、最大突出部34aと最小突出部34bとの径方向の突出量の差、等の条件を変更することで、調節ダイヤル31の単位回転角あたりの開閉部10と開閉部11の可動角度の変化量(変化率)を異ならせることができる。例えば、周方向での調節用突出部34の長さは変えずに、最大突出部34aの突出量を図示の構成よりも大きくすると、円弧面34cの曲率が大きくなって、調節ダイヤル31の単位回転角あたりの開閉部10と開閉部11の可動角度の変化は大きくなる。あるいは、径方向での最大突出部34aと最小突出部34bの突出量を変化させずに、周方向での調節用突出部34の長さを図示の構成よりも大きくすると、円弧面34cの曲率が小さくなって、調節ダイヤル31の単位回転角あたりの開閉部10と開閉部11の可動角度の変化は小さくなる。
【0040】
ロック状態から、調節ダイヤル31を第2の回転方向であるロック解除方向(図3の時計方向)に回転操作すると、図8及び図9のように、定径外面部36が仮想線P3上に位置して、定径外面部36がストッパ部22に対向する状態に変化する。定径外面部36は、調節用突出部34のように径方向への突出量を徐々に変化させる形状ではなく、閉塞保持部35に隣接する領域で直ちに径方向への突出部分が存在しなくなる。そのため、ロック状態からロック解除方向へ調節ダイヤル31を回転させると、開閉部10と開閉部11を開き方向に付勢している付勢手段によって、ストッパ部22が定径外面部36に当接するまで一気に開閉部10に対して開閉部11が開き方向に動作し、調節ダイヤル31とストッパ部22によって許容される最大開度まで開閉部10と開閉部11が開かれる。つまり、調節ダイヤル31で調節用突出部34とは異なる周方向位置にある定径外面部36は、ストッパ部22との当接により開閉部10と開閉部11の最大開度を定める最大開度規制部として機能する。定径外面部36とストッパ部22の当接で設定される開閉部10と開閉部11の最大開度は、調節用突出部34の最小突出部34bとストッパ部22との当接によって調節される開閉部10と開閉部11の可動角度の最大値(本実施の形態では12度)とほぼ同じになる。
【0041】
図8及び図9は、ロック状態からロック解除方向へ調節ダイヤル31を約90度回転させた状態であるが、構造的には、これよりも小さい調節ダイヤル31の回転量で、閉塞保持部35とストッパ部22の当接を解除してロック解除させることができる。
【0042】
定径外面部36上には複数のリブ33が形成されている。図11に示すように、リブ33は、回転軸P2に沿って見たときに凸状に湾曲した外面形状を有しており、径方向への突出量も小さい。従って、開閉部10と開閉部11の最大開度を定める際に、ストッパ部22がリブ33に当接した状態のままで維持される可能性は低く、仮にストッパ部22がリブ33に当接した状態が維持されるとしても、開閉部10と開閉部11の最大開度の設定にはほとんど影響を及ぼさない。しかし、調節ダイヤル31の異なる形態として、定径外面部36のうち、周方向で調節用突出部34及び閉塞保持部35の延長上の領域(ストッパ部22に対向する可能性がある領域)では、リブ33を形成しないようにすることも可能である。
【0043】
ヘアアイロン1の使用が完了すると、使用者は、閉塞保持部35がストッパ部22に対向する位置まで調節ダイヤル31を回転させる。これにより、開度調節手段30は上述したロック状態(図1から図3)になり、挟持部10aと挟持部11aの間隔を最小としたコンパクトな状態での収納や運搬が可能になる。図10及び図11に示すように、閉塞保持部35は、周方向の両側に滑らかな湾曲形状を有しており、この湾曲形状でストッパ部22を押し込みながらストッパ部22に当接するので、引っ掛かりを生じずスムーズにロック状態に移行させることができる。
【0044】
このように、ヘアアイロン1の開度調節手段30では、ロック状態から調節ダイヤル31を開度増大方向(第1の回転方向)に回転させると、開き方向への開閉部10と開閉部11の可動角度が徐々に変更される。また、ロック状態から調節ダイヤル31をロック解除方向(第2の回転方向)に回転させると、開閉部10と開閉部11を直ちに最大開度にさせることができる。使用者は、ヘアアイロン1の使用状況や好みに応じて、開閉部10と開閉部11の開き状態を、調節ダイヤル31の簡単な回転操作で自由に選択できるため、既存のヘアアイロンに比して使用時の操作性が大幅に向上する。特に、調節ダイヤル31の調節用突出部34を用いることで、微妙な開度調整が可能であり、様々な厚みの施術対象に適した開度を選択しながら、ヘアアイロン1を使用することができる。
【0045】
例えば、調節ダイヤル31の操作によって、施術する毛髪の厚みに最適化した開閉部10と開閉部11の開度に設定すれば、使用者が開閉部10と開閉部11を閉じ方向に操作しなくても、挟持面13a,14aに毛髪を挟ませることができ、余分な操作力を要さずにムラ無く毛髪の癖付けを行うことが可能になる。調節ダイヤル31の操作による開度調節は、挟持面13a,14aの間に毛髪を挿入してから行うこともできるため、閉じ方向への把持部10b,11bの握り込み操作を完全に省略した作業形態の実現も可能である。
【0046】
また、調節ダイヤル31の操作によって開閉部10と開閉部11の開度を必要最小限にすることで、加熱プレート13,14の露出の度合いが低くなる。従って、使用者が高熱部分に不用意に触れてしまうおそれが低減され、安全性の面でも優れている。例えば、ヘアアイロン1によって前髪を施術する際に、開閉部10と開閉部11の開度を小さくしておくことで、額等に加熱プレート13,14が触れる可能性を抑えることができる。
【0047】
なお、ロック状態を起点として開度増大方向とロック解除方向に選択的に調節ダイヤル31を回転させる以外の態様として、調節ダイヤル31を回転方向や回転量に制限の無い自由回転構造にして、よりシームレスな操作性を実現することも可能である。例えば、調節用突出部34とストッパ部22の当接によって開閉部10と開閉部11の可動角度を設定した状態から、さらに開度増大方向へ調節ダイヤル31を回転させて、定径外面部36とストッパ部22の当接によって開閉部10と開閉部11の最大開度を定める状態に移行させることができる。逆に、定径外面部36とストッパ部22の当接によって開閉部10と開閉部11の最大開度を定めた状態から、さらにロック解除方向へ調節ダイヤル31を回転させて、調節用突出部34とストッパ部22の当接によって開閉部10と開閉部11の可動角度を変更する状態に移行させることができる。
【0048】
開度調節手段30は、ヘアアイロン1をロック状態にさせるための閉塞保持部35と、ヘアアイロン1の最大開度を定めるための定径外面部36に加えて、調節用突出部34を調節ダイヤル31に設けることで構成されており、ロック機構を備えた既存のヘアアイロンに比して部品点数を増やすことなく、簡単な構成によって、開閉部10と開閉部11の可動角度を変更可能にしている。従って、低コストで効率的にヘアアイロン1の操作性や機能性を向上させて、商品価値を高めることができる。
【0049】
図12から図15は、ヘアアイロン1が備える開度調節手段の変形例を示したものである。この変形例の開度調節手段40では、調節ダイヤル41が、支持スリーブ20に対して、回転軸P2を中心とする回動に加えて、回転軸P2に沿う方向の移動も可能に支持されている。回転軸P2に沿う方向で、調節ダイヤル41が開閉軸P1に近づいた位置(図12及び図14)を接近位置とし、調節ダイヤル41が開閉軸P1から離れた位置(図13及び図15)を離間位置とする。図には示していないが、接近位置と離間位置の間の調節ダイヤル41の移動に所定の抵抗を与える手段を備えてもよい。
【0050】
調節ダイヤル41の本体部42の外面上には、複数のリブ43、調節用突出部44、閉塞保持部45、定径外面部46が設けられている。これらの部位はそれぞれ、上述した調節ダイヤル31における複数のリブ33、調節用突出部34、閉塞保持部35、定径外面部36に対応する役割を備えている。調節ダイヤル31と相違する点として、調節ダイヤル41では、調節用突出部44と閉塞保持部45が回転軸P2に沿う方向で互いに位置を異ならせて設けられている。より詳しくは、調節用突出部44が開閉軸P1に近い側に設けられ、閉塞保持部45が、調節用突出部44よりも開閉軸P1から遠い側に設けられている。
【0051】
調節用突出部44は、本体部42の周方向に延びており、周方向の一端である最大突出部44a(図13(B)参照)から最小突出部44b(図13(A)参照)に進むにつれて、径方向の突出量が徐々に小さくなる形状である。調節用突出部44の外面は、周方向に進むにつれて径方向への突出量が無段階に徐変する滑らかな円弧面44cになっている。
【0052】
閉塞保持部45は、周方向のいずれの位置でも径方向への突出量が一定(定径)の突出部であり、調節用突出部44と並行して本体部42の周方向に延びている。図13(B)に示すように、調節用突出部44の最大突出部44aと閉塞保持部45の一端は、周方向の同じ位置にある。最大突出部44aと閉塞保持部45は径方向への突出量が等しく、最大突出部44aと閉塞保持部45が段差無く滑らかに連続している。
【0053】
図13(B)に示すように、調節ダイヤル41のうち調節用突出部44及び閉塞保持部45が存在しない周方向の範囲では、定径外面部46によって本体部42の外面が構成されている。調節用突出部44とは異なり、定径外面部46は、周方向のいずれの位置でも径方向での位置が一定(定径)の円弧面であり、調節用突出部44の円弧面44cよりも回転軸P2に近い(低い)位置にある。
【0054】
以上の構成の開度調節手段40では、開閉部10と開閉部11の開度設定を次のように行う。図12及び図14に示すように、調節ダイヤル41が接近位置にある状態では、回転軸P2に沿う方向で、閉塞保持部45が開閉部11側のストッパ部22と対応して位置する。そのため、接近位置にある調節ダイヤル41で、閉塞保持部45がストッパ部22に当接する回転位置に設定すると、閉塞保持部45がストッパ部22を押し込んで、開閉部10と開閉部11を閉じ位置に保持させてロック状態になる。
【0055】
図13及び図15に示すように、調節ダイヤル41が離間位置にある状態では、回転軸P2に沿う方向で、調節用突出部44が開閉部11側のストッパ部22と対応して位置する。そのため、離間位置にある調節ダイヤル41を回動させて、調節用突出部44の円弧面44cがストッパ部22に当接する状態で調節ダイヤル41の回転位置を変化させると、閉じ位置からの開閉部10と開閉部11の開度が変更される。調節ダイヤル41の回転位置の変化に応じて、ストッパ部22に当接する調節用突出部44の径方向の高さ(突出量)が変化するため、調節ダイヤル41の回転操作に応じて開閉部10と開閉部11の可動角度を任意に変更することができる。
【0056】
調節ダイヤル41を離間位置と接近位置にスライドさせることで、調節用突出部44を用いて開閉部10と開閉部11の開度を調節する状態(図13及び図15)と、閉塞保持部45を用いて開閉部10と開閉部11を閉じ位置に保持させるロック状態(図12及び図14)を適宜切り替えることができる。調節用突出部44が形成されている周方向の範囲に対応させて、閉塞保持部45が周方向に長く形成されているため、調節ダイヤル41のスライドによるこのような切り替えが可能である。
【0057】
例えば、離間位置にある調節ダイヤル41を使用者が回転操作して開閉部10と開閉部11を所定の開き角度に調節して、ヘアアイロン1を使用する。使用後に、調節ダイヤル41を回転させずにそのまま接近位置にスライドさせる。すると、先に調節ダイヤル41の離間位置で設定した開閉部10と開閉部11の開き角度(調節ダイヤル41の回転位置)を記憶したまま、開閉部10と開閉部11を閉じさせてロックすることができる。そして、調節ダイヤル41を回転させずに接近位置から再び離間位置にスライドさせることにより、前回の使用時に調節した状態と同じ開閉部10と開閉部11の開き角度でヘアアイロン1を再度使用することが可能になる。これにより、開閉部10と開閉部11を閉じた状態からヘアアイロン1を使用する際に、開き角度の調節を都度行わずに直ちに使用することができ、毛髪のセッティング時間を短くすることができる。また、開閉部10と開閉部11の同じ開き角度でヘアアイロン1を常用できるため、毛髪のセッティングを行いやすくなる。
【0058】
また、開度調節手段40は、1つの調節ダイヤル41で、開閉部10と開閉部11の開度調節と閉塞保持とを行うため、部品点数を少なくできるという利点がある。なお、図示の開度調節手段40とは異なり、開閉部10と開閉部11の開度調節用の部品(調節用突出部44に相当する部分を有するもの)と、開閉部10と開閉部11の閉塞保持用の部品(閉塞保持部45に相当する部分を有するもの)を、別々に備える構成を選択することも可能である。
【0059】
開度調節手段40における調節用突出部44の円弧面44cは、最大突出部44a以外の箇所では、閉塞保持部45よりも径方向の低い位置にあり、調節用突出部44と閉塞保持部45との間に段差がある。そのため、調節用突出部44のうち最大突出部44a以外の箇所がストッパ部22に当接している状態で、調節ダイヤル41を離間位置から接近位置にスライドさせる場合に、調節用突出部44と閉塞保持部45の間の段差によってスライドが妨げられないように構成するとよい。具体的には、当該段差部分とストッパ部22の少なくとも一方に、離間位置から接近位置への調節ダイヤル41の移動力が加わると、開閉部11を閉じ方向に動作させる力(分力)を発生させるテーパ形状等を設けることで、ストッパ部22に段差を乗り越えさせて調節用突出部44から閉塞保持部45に移動させることができる。これにより、使用者が開閉部10と開閉部11を閉じ方向に操作してストッパ部22を調節ダイヤル41から退避させることを要さずに、調節ダイヤル41の操作だけで、開閉部10と開閉部11の可動角度を変更する状態とロック状態(閉じ位置)とを自在に切り替えることができる。なお、最大突出部44aがストッパ部22に対向する状態の調節ダイヤル41の回転位置では、調節用突出部44と閉塞保持部45の間に段差が無い部分をストッパ部22が通過するので、ストッパ部22が調節用突出部44に当接する状態(離間位置)から閉塞保持部45に当接する状態(接近位置)にスムーズに切り替えることができる。
【0060】
調節用突出部44と閉塞保持部45のいずれもストッパ部22に対向しない回転位置に調節ダイヤル41を設定すると、ストッパ部22が定径外面部46に当接可能になる。定径外面部46は、調節用突出部44及び閉塞保持部45よりも径方向の低い位置にあるため、ストッパ部22が定径外面部46に当接するまでの開閉部11の開き角度が大きくなる。つまり、定径外面部46は、ストッパ部22との当接により開閉部10と開閉部11の最大開度を定める最大開度規制部として機能する。
【0061】
定径外面部46は、調節用突出部44の周方向の延長上と、閉塞保持部45の周方向の延長上の両方に存在しているため、調節ダイヤル41の接近位置と離間位置のいずれでも、調節ダイヤル41の回動操作(回転位置の設定)によって、定径外面部46とストッパ部22の当接による最大開度状態に移行させることができる。
【0062】
以上のように、開度調節手段40では、回転軸P2に沿う方向の調節ダイヤル41の移動操作によって、開閉部10と開閉部11を閉じさせるロック状態と、開閉部10と開閉部11の可動角度を変更する状態とを切り替える。調節用突出部44と閉塞保持部45が周方向に並ばないため、調節用突出部44の周方向長さの設定自由度が高くなる効果や、調節ダイヤル41の回転操作量を抑制できる効果が得られる。
【0063】
逆に、上述した開度調節手段30では、調節用突出部34と閉塞保持部35が回転軸P2に沿う方向に並ばないため、回転軸P2に沿う方向での部品のコンパクト化や、調節ダイヤル31の回転のみによる操作体系の簡略化、といった効果が得られる。
【0064】
なお、以上の開度調節手段30(40)の説明では、調節ダイヤル31(41)の調節用突出部34(44)と閉塞保持部35(45)と定径外面部36(46)とのいずれに対しても、開閉部11側の共通のストッパ部22が当接するものとしたが、調節用突出部34(44)に当接するストッパ部と、閉塞保持部35(45)に当接するストッパ部と、定径外面部36(46)に当接するストッパ部の一部又は全てを、別々の箇所として開閉部11に設けることも可能である。
【0065】
続いて、図16から図25を参照して、第2の形態であるヘアアイロン2について説明する。ヘアアイロン2は、閉じ位置からの開き方向への開閉部10と開閉部11の可動角度を、使用者の操作に応じて機械的に変更可能な開度調節手段50を有している。ヘアアイロン2のうち開度調節手段50以外の構成については、先に説明したヘアアイロン1とは図面上での形状や寸法関係が多少異なる場合でも、ヘアアイロン1の各部位と同じ符号で示して説明を省略する。
【0066】
開度調節手段50を構成する要素として、開閉部10側には、直線的に移動する進退部材である調節レバー51が設けられており、開閉部11側には、ストッパ部24が設けられている。調節レバー51は、開閉部10の長手方向に沿って、開閉軸P1に接近及び離間する進退方向へ移動可能に支持されている。
【0067】
開閉部10は、ヒンジ部12の近傍から、長手方向で挟持部10a及び把持部10bとは反対側に突出する支持部52を有している。支持部52の内部には電源コード21を挿通させる空間が形成されており、後端開口52a(図24参照)を通して支持部52内へ電源コード21が挿入される。支持部52は、円筒の一部を平坦な上面部52bとしたD形の周面形状を有している。上面部52bは、開閉部11のストッパ部24側に向けて形成されている。上面部52bのうち開閉軸P1から遠い側の端部に、スライド規制部52cが突設されている。
【0068】
図24に示すように、支持部52の内部には、進退案内部53が設けられている。進退案内部53は、開閉部10の長手方向(調節レバー51の進退方向)に延びる一対のレール部53aを有する。レール部53aの内側には、開閉部10の長手方向に位置を異ならせて3つの係合部53bが形成されている。各係合部53bは、開閉軸P1に対して垂直な方向に延びる円筒状の穴からなり、隣接する係合部53bが連通されて、開閉部10の長手方向に連続する溝状に構成されている。一対のレール部53aの両側には、レール部53aと略平行に延びる一対の規制面53cが形成されている。
【0069】
図25に示すように、調節レバー51は、平面視で矩形状であるベース部54を有している。ベース部54の側部には、一対の(図25には片側のみが表れている)側部ガイド板55が設けられている。また、一対の側部ガイド板55の間には、進退方向に対して略垂直に突出するガイド突起56(図24参照)が設けられている。
【0070】
図24に示すように、一対のレール部53aと一対の規制面53cの間に一対の側部ガイド板55を位置させ、3つの係合部53bの延長上にガイド突起56を位置させた状態で、調節レバー51が支持部52に支持される。レール部53aと規制面53cに対して側部ガイド板55が摺接することで、調節レバー51が進退方向に移動可能に案内される。また、3つの係合部53bに対してガイド突起56が順次係合することで、調節レバー51が進退方向の複数の位置で停止される。
【0071】
支持部52の上面部52bは、調節レバー51が進退方向に移動する範囲で開口しており、調節レバー51の一部が、当該開口を通して上面部52bよりもストッパ部24側に突出している。調節レバー51は、スライド規制部52cに当接することで、進退方向のうち開閉軸P1から離れる方向への移動が規制される。また、一対の側部ガイド板55の端部に設けた屈曲部55a(図25参照)が支持部52の内部に係合することで、上面部52bの開口からの調節レバー51の離脱が規制される。
【0072】
図25に示すように、調節レバー51は、ベース部54の進退方向の一端側(開閉軸P1に近い側)の外面に、調節用突出部57と閉塞保持部58を有している。調節用突出部57と閉塞保持部58は、進退方向での位置の違いに応じて、進退方向と交差する方向(ストッパ部24側)への突出量が異なっている。より詳しくは、調節用突出部57は、進退方向で開閉軸P1に近い側から遠い側に進むにつれて、進退方向と交差する方向への突出量を段階的に大きくする2つの段差面57a及び段差面57bを有している。閉塞保持部58は、調節用突出部57のうち開閉軸P1から遠い側の端部に位置しており、段差面57bよりも外方への突出量が大きい。段差面57a,57bと閉塞保持部58はそれぞれ、調節レバー51の進退方向と略平行な平面となっている。
【0073】
また、調節用突出部57には、進退方向に位置を異ならせて3つの傾斜面57c,57d,57eが設けられている。傾斜面57cは、段差面57aに隣接しており、調節用突出部57のうちで最も開閉軸P1に近い位置に形成されている。傾斜面57dは、段差面57aと段差面57bの間に形成されている。傾斜面57eは、段差面57bと閉塞保持部58の間に形成されている。傾斜面57c,57d,57eはいずれも、進退方向で開閉軸P1から近い側から遠い側に進むにつれて、徐々にベース部54からの突出量を大きくする面である。
【0074】
調節レバー51はさらに、ベース部54の進退方向の他端側(開閉軸P1から遠い側)の外面に、操作用突出部59を有している。使用者が調節レバー51を操作する際に、操作用突出部59に指を掛けて力を与えることによって、操作を行いやすくなる。
【0075】
図16から図23に示すように、調節レバー51が支持部52に組み付けられた状態では、支持部52の上面部52bから調節用突出部57と閉塞保持部58と操作用突出部59が突出している。ストッパ部24は、開閉部11のうち調節レバー51の外面に対向する内側部分に設けられた突出部である。ストッパ部24は開閉部11に固定的に設けられており、調節レバー51が進退方向に移動することによって、調節用突出部57と閉塞保持部58が切り替えられてストッパ部24に対向する。
【0076】
図16及び図17は、調節レバー51が進退方向で最も開閉軸P1に接近して、閉塞保持部58がストッパ部24に対向する位置に調節レバー51を保持したロック状態を示している。このとき、調節レバー51に設けたガイド突起56は、支持部52側の進退案内部53に3つ設けた係合部53bのうち、最も開閉軸P1に近い側の係合部53bに対して係合しており、この係合によって進退方向での調節レバー51の位置が安定して定まる。調節レバー51のうち突出量が大きい閉塞保持部58がストッパ部24に当接することにより、開閉部10から離れる方向にストッパ部24が押し込まれている。その結果として、開閉部10と開閉部11は、付勢手段の付勢力に抗して、先端側の挟持部10aと挟持部11aの間隔が最小となる(開度が0度である)閉じ位置に保持され、開閉部10と開閉部11が開かないようにロックされる。
【0077】
図18及び図19は、ロック状態から、開閉軸P1に対して離れる開度増大方向(図17の右方向)に調節レバー51を一段階スライドさせた、小開度設定状態を示している。このとき、調節レバー51に設けたガイド突起56は、進退案内部53に3つ設けた係合部53bのうち、中間の係合部53bに対して係合しており、この係合によって進退方向での調節レバー51の位置が安定して定まる。ロック状態からの調節レバー51のスライドにより、調節用突出部57の段差面57bがストッパ部24に対向する状態に変化している。開閉部10と開閉部11を開き方向に付勢している付勢手段(図示略)によって、ストッパ部24には常に調節レバー51に接近しようとする負荷がかかっているため、閉塞保持部58よりも突出量が小さい段差面57bがストッパ部24に対向するようになると、ストッパ部24は段差面57bに当接するまでの移動が許される。これに応じて、開閉部10に対して開閉部11が開き方向に動作し、加熱プレート13から加熱プレート14が離れて、ロック状態よりも挟持部10aと挟持部11aの間隔が大きくなる。
【0078】
図20及び図21は、小開度設定状態から、調節レバー51を開度増大方向(図19の右方向)に一段階スライドさせた中開度設定状態を示している。このとき、調節レバー51に設けたガイド突起56は、進退案内部53に3つ設けた係合部53bのうち、開閉軸P1から遠い側の係合部53bに対して係合しており、この係合によって進退方向での調節レバー51の位置が安定して定まる。小開度設定状態からの調節レバー51のスライドにより、調節用突出部57の段差面57aがストッパ部24に対向する状態に変化している。これにより、開き方向に作用する付勢手段の付勢力で、ストッパ部24が段差面57aに当接するまで移動して、小開度設定状態よりも開閉部10と開閉部11の開度(挟持部10aと挟持部11aの間隔)が大きくなっている。
【0079】
図22及び図23は、中開度設定状態から、調節レバー51を開度増大方向(図21の右方向)にさらに一段階スライドさせた最大開度状態を示している。調節レバー51のうち操作用突出部59側の端部がスライド規制部52cに対して当接して、開閉軸P1から離れる方向へのそれ以上の調節レバー51のスライドが規制される。このとき、調節レバー51に設けたガイド突起56は、係合部53bから離脱して、進退案内部53の端部に設けた凹部に係合して、進退方向での調節レバー51の位置を安定させている。中開度設定状態からの調節レバー51のスライドにより、調節用突出部57を含む調節レバー51の全体がストッパ部24に対向しない状態に変化している。開き方向に作用する付勢手段の付勢力で、ストッパ部24が支持部52の上面部52bに当接するまで移動して、中開度設定状態よりも開閉部10と開閉部11の開度(挟持部10aと挟持部11aの間隔)を大きくした最大開度になっている。つまり、支持部52の上面部52bが最大開度規制部として機能している。
【0080】
以上の動作とは逆に、開閉軸P1に接近する開度減少方向(図19図21図23の左方向)へ調節レバー51をスライドさせると、開閉部10と開閉部11の関係が、最大開度状態(図22及び図23)から、中開度設定状態(図20及び図21)、小開度設定状態(図18及び図19)、ロック状態(図16及び図17)、の順で変化する。
【0081】
最大開度状態から中開度設定状態に移行する際には、傾斜面57cがストッパ部24に当接することで、進退方向(開度減少方向)へ調節レバー51を移動させる力から、ストッパ部24を押し上げる分力が発生する。中開度設定状態から小開度設定状態に移行する際には、傾斜面57dがストッパ部24に当接することで、進退方向(開度減少方向)へ調節レバー51を移動させる力から、ストッパ部24を押し上げる分力が発生する。小開度設定状態からロック状態に移行する際には、傾斜面57eがストッパ部24に当接することで、進退方向(開度減少方向)へ調節レバー51を移動させる力から、ストッパ部24を押し上げる分力が発生する。従って、開閉部11を段階的に閉じ方向に動作させながら、調節レバー51をスムーズにスライドさせることができる。
【0082】
このように、ヘアアイロン2の開度調節手段50では、調節レバー51を進退方向にスライドさせると、開き方向への開閉部10と開閉部11の可動角度が段階的に変更される。開閉軸P1に最も近い位置に調節レバー51を保持させると、開閉部10と開閉部11を閉じ位置に維持させるロック状態になる。開閉軸P1から離れる側に調節レバー51を最もスライドさせると、支持部52(上面部52b)とストッパ部24によって許容される最大開度まで開閉部10と開閉部11を開くことができる。そして、ロック状態と最大開度状態との間に調節レバー51の停止位置を設定することで、開閉部10と開閉部11の可動角度を、小開度設定状態と中開度設定状態に変更させることができる。使用者は、ヘアアイロン2の使用状況や好みに応じて、開閉部10と開閉部11の開き状態を、調節レバー51の簡単なスライド操作で選択できるため、既存のヘアアイロンに比して使用時の操作性が大幅に向上する。
【0083】
本実施の形態では、小開度設定状態における閉じ位置からの開閉部10と開閉部11の可動角度を5度に設定し、中開度設定状態における閉じ位置からの開閉部10と開閉部11の可動角度を8度に設定し、開閉部10と開閉部11の最大開度を12度に設定している。なお、この開度設定は一例であり、異なる値に設定してもよい。調節レバー51における調節用突出部57(段差面57a,57b)や閉塞保持部58の突出量や、開閉部11からのストッパ部24の突出量等の変更によって、調節レバー51の各停止位置での開閉部10と開閉部11の開度が変化するので、調節レバー51やストッパ部24の設計によって可動角度の範囲を適宜設定することができる。例えば、段差面57aや段差面57bの突出量を図示の構成よりも大きくすれば、段差面57aや段差面57bがストッパ部24に当接する状態での開閉部10と開閉部11の可動角度が、5度や8度よりも小さくなる。
【0084】
開度調節手段50は、ヘアアイロン2をロック状態にさせるための閉塞保持部58に加えて、調節用突出部57を調節レバー51に設けることで構成されている。調節用突出部57は、閉塞保持部58と共に調節レバー51の一部として容易に形成可能な形状(具体的には、開閉軸P1に対して垂直な方向に移動する型によって成形可能な形状)である。そのため、上述した第1の形態のヘアアイロン1と同様に、ロック機構を備えた既存のヘアアイロンに比して部品点数を増やすことなく、簡単な構成によって開閉部10と開閉部11の可動角度を変更可能にでき、低コストで効率的にヘアアイロン2の操作性や機能性を向上させて、商品価値を高めることができる。
【0085】
第1の形態のヘアアイロン1における開度調節手段30との相違点として、開度調節手段50では、開閉軸P1に対して接近及び離間する進退方向への調節レバー51の直線的な移動によって、開閉部10と開閉部11の開度を調節している。また、開度調節手段50は、調節レバー51の調節用突出部57を複数の段差面57a,57bを有する構成にして、閉じ位置からの開閉部10と開閉部11の可動角度を、複数の有限段数で変更可能にしている。また、開閉部10と開閉部11の最大開度については、進退部材である調節レバー51ではなく、調節レバー51を支持する支持部52に設けた上面部52bに対してストッパ部24を当接させることで設定している。
【0086】
使用者が調節レバー51を進退方向にスライドさせる際に、ガイド突起56が係合部53bに対して係合及び係合解除する動作によって、所定の動作抵抗とクリック感を使用者に感じさせる。これにより、開閉部10と開閉部11の可動角度の変更が行われたか否かを、使用者が認識しやすくなる。また、開閉部10と開閉部11の開き角度を変更するときや、開閉部10と開閉部11を閉じ位置でロックさせるときに、ガイド突起56が係合部53bに係合することによって、調節レバー51の位置がずれること防止して、確実な動作を実現できる。
【0087】
なお、図示の構成では、調節レバー51の調節用突出部57が2つの段差面57a,57bを有して、開閉部10と開閉部11の可動角度を2段階(閉塞保持部58によるロック状態を含めると3段階)に変化させているが、可動角度の段数はこれに限定されず、段差面の数に応じて任意の段数を選択可能である。例えば、ロック状態を除いて、3段階以上に開閉部10と開閉部11の可動角度を変更可能な構造にすることも可能である。
【0088】
開度調節手段50では、調節レバー51ではなく、支持部52の上面部52bへのストッパ部24の当接で開閉部10と開閉部11の最大開度を設定している。最大開度規制部を、可動の部材である調節レバー51ではなく、固定部材である支持部52に設けることで、進退方向で調節レバー51を小型にして、開度調節手段50を全体的にコンパクトにする効果が得られる。しかし、上面部52bのような最大開度規制部を、調節レバー51の一部として設けることもできる。
【0089】
以上、図示の形態に基づいて説明したが、本発明の技術は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0090】
例えば、上記のヘアアイロン1では、調節ダイヤル31,41の回転軸P2が、ヒンジ部12の開閉軸P1に対して垂直な関係であるが、開度調節手段の構成要素として回動部材を用いる場合に、ヒンジ部の開閉軸に対して回動部材の回転軸が垂直な関係でなくてもよい。具体的には、ヒンジ部の開閉軸に対して回動部材の回転軸が、垂直以外の角度で交差していてもよい。なお、ここで言う交差とは、開閉軸と回転軸が実際に交わる場合と、開閉軸と回転軸が実際には交わっていないが、一対の開閉部の開閉方向に沿って見たときに開閉軸と回転軸が交差して見える場合のいずれも含む概念である。
【0091】
また、上記のヘアアイロン2では、調節レバー51の進退方向が、ヒンジ部12の開閉軸P1に対して垂直な方向であるが、開度調節手段の構成要素として進退部材を用いる場合に、ヒンジ部の開閉軸に対して進退部材の進退方向が垂直な関係でなくてもよい。進退部材の進退方向が、少なくとも開閉軸に対して接近及び離間する方向の成分を含んでいればよい。
【0092】
上記実施の形態では、回動部材である調節ダイヤル31,41が、開閉部10と開閉部11の可動角度を無段階で変更させる調節用突出部34,44を有し、進退部材である調節レバー51が、開閉部10と開閉部11の可動角度を複数の有限段数で変更させる調節用突出部57を有している。これとは逆の構成にすることも可能である。例えば、調節ダイヤル31,41が、周方向の位置の違いに応じて径方向の高さが異なる複数の段差面を持つ調節用突出部を有して、開閉部10と開閉部11の可動角度を複数の有限段数で変更させるようにしてもよい。また、調節レバー51が、進退方向に進むにつれて突出量を徐々に変化させる傾斜面(テーパ構造)を持つ調節用突出部を有して、開閉部10と開閉部11の可動角度を無段階で変更させるようにしてもよい。
【0093】
さらに、1つの回動部材や1つの進退部材に、開閉部10と開閉部11の可動角度を無段階で変更させる部分と、複数の有限段数で変更させる部分とを、併存させることも可能である。
【0094】
上記実施の形態では、調節ダイヤル31,41が、調節用突出部34,44による開閉部10と開閉部11の可動角度の変更機能に加えて、閉塞保持部35,45によるロック機能と、定径外面部36,46による最大開度設定機能とを備えている。また、調節レバー51が、調節用突出部57による開閉部10と開閉部11の可動角度の変更機能に加えて、閉塞保持部58によるロック機能を備えている。このように、1つの操作部材に複数の機能を持たせることで、少ない部品点数で開度調節手段を高機能化させることができる。しかし、本発明は、ロック機能や最大開度設定機能を備えずに、可動角度の変更機能のみを備えた単機能型の操作部材を適用することを排除するものではない。あるいは、操作部材において、上記実施の形態よりも多くの機能を持たせた構成を選択することも可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 :ヘアアイロン
2 :ヘアアイロン
10 :開閉部
10a :挟持部
11 :開閉部
11a :挟持部
12 :ヒンジ部
13a :挟持面
14a :挟持面
15 :操作部
20 :支持スリーブ(支持部)
22 :ストッパ部
24 :ストッパ部
30 :開度調節手段
31 :調節ダイヤル(回動部材)
34 :調節用突出部
34a :最大突出部
34b :最小突出部
34c :円弧面
35 :閉塞保持部
36 :定径外面部(最大開度規制部)
40 :開度調節手段
41 :調節ダイヤル(回動部材)
44 :調節用突出部
44a :最大突出部
44b :最小突出部
44c :円弧面
45 :閉塞保持部
46 :定径外面部(最大開度規制部)
50 :開度調節手段
51 :調節レバー(進退部材)
52 :支持部
52b :上面部(最大開度規制部)
53 :進退案内部
53a :レール部
53b :係合部
54 :ベース部
56 :ガイド突起
57 :調節用突出部
57a :段差面
57b :段差面
58 :閉塞保持部
59 :操作用突出部
P1 :開閉軸
P2 :回転軸
図1
図2
図3
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