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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】反復的蛍光画像化
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20240220BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01N33/48 P
G01N33/53 Y
G01N21/64 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020559536
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060532
(87)【国際公開番号】W WO2019207004
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】18169077.7
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515098691
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】ガット,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ペルクマン,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,マーカス
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/137402(WO,A1)
【文献】特開2013-046576(JP,A)
【文献】ROGERS et al.,Thiol-reactive compounds prevent nonspecific antibody binding in immunohistochemistry,Laboratory Investigation,Vol.86,2006年,PP.526-533
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - G01N 33/98
G01N 21/62 - G01N 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を多重染色する方法であって、以下のステップ:
a. ブロッキングステップにおいて、画像化のために調製される生体試料をブロッキング溶液と接触させるステップであって、前記ブロッキング溶液は、
i. 非特異的に疎水性結合部位に結合することが可能であるブロッキング化合物、及び
ii. スルフヒドリル反応性化合物、
を含む、前記ステップ、
b. 第1の洗浄ステップにおいて、前記生体試料を洗浄液と接触させるステップ、
c. 第1の染色ステップにおいて、前記生体試料を第1の抗原に特異的な第1の抗体と接触させるステップであって、
i. 前記第1の抗体は、検出可能な標識、又は
ii. 前記第1の抗体は、検出可能な標識を有さず、第1の染色ステップの後に、試料を洗浄液に接触させ、そして前記生体試料を第2の抗体と接触させる第2の染色ステップが実施され、前記第2の抗体は、
- 検出可能な標識、及び
- 第1の抗体に特異的である、
前記ステップ、
d. 第2の洗浄ステップにおいて、前記生体試料を洗浄液と接触させるステップ、
e. 画像化ステップにおいて、前記生体試料を、ラジカル捕捉剤及びフリーラジカル誘導性光架橋結合の受容体を含有する中性pHにて画像化溶液に接触させ、その後、試料の蛍光画像を記録するステップであって、前記ラジカル捕捉剤及びフリーラジカル誘導性光架橋結合の受容体はN-アセチルシステイン、N-アセチルシステインアミド、システイン、L-アスコルビン酸、レスベラトロール、β-カロテン、セレノ-L-メチオニン、クロロゲン酸及び/又はカフェイン酸から選択される前記ステップ、
f. 第3の洗浄ステップにおいて、前記生体試料を洗浄液と接触させるステップ、
g. 溶出ステップにおいて、前記生体試料を溶出液と接触させるステップであって、前記溶出液は、
i pHが(<)4より低いことを特徴とする、及び
ii. 緩衝成分、還元剤、及び水素結合を切断する少なくとも1つの化合物を含む、
前記ステップ、
を含み、ステップa~gは、各繰り返しにおいて異なる第1の抗体を使用して、繰り返される、
前記方法。
【請求項2】
画像化ステップ(ステップ(e))の直前に、以下のステップ:
i. 前記生体試料をDNA結合性蛍光化合物に接触させる、核標識化ステップ、
ii. 前記生体試料を洗浄液に接触させる、洗浄ステップ、
が実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- ブロッキング溶液中のブロッキング化合物は、ブロッキングポリペプチドである、及び/又は
- 水素結合を切断する溶出液中の化合物は、カオトロピック塩である、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
- ブロッキングポリペプチドは、BSA、FBS、SA、ヒト血清、ゼラチン、脱脂粉乳、又はブタ由来の高純度皮膚コラーゲンのポリペプチド画分(Prionex(登録商標)試薬)から選択される、及び/又は
- スルフヒドリル反応性化合物は、マレイミド、ハロアセチル、又はピリジルジスルフィドから選択される、及び/又
緩衝成分は、リン酸塩/クエン酸塩、フタル酸水素カリウム、及びL-グリシンから選択される、及び/又は
- 還元剤は、TCEP、ジチオスレイトール、又は2-メルカプトエタノールから選択される、及び/又は
- カオトロピック塩は、塩化グアニジニウム、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム、又は塩化マグネシウムの1つ又は複数から選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
- ブロッキング溶液は、BSA、FBS、SA、ヒト血清、ゼラチン、脱脂粉乳又はPrionex(登録商標)試薬から選択される0.1~4%の化合物、及び/又は1mmol/L~1mol/Lの、マレイミド、ハロアセチル、又はピリジルジスルフィドを含む、及び/又は
- 画像化溶液は、N-アセチルシステイン、N-アセチルシステインアミド、システイン、L-アスコルビン酸、レスベラトロール、β-カロテン、セレノ-L-メチオニン、クロロゲン酸又はカフェイン酸から選択される1mmol/L~1mol/Lの化合物を含み、及び/又はpHが7.2~7.6で構成される、及び/又は
- 溶出液は、0.5MのL-グリシン、及びTCEP、ジチオスレイトール又は2-メルカプトエタノールから選択される1mmol/L~1mol/Lの化合物、及び/又は1mmol/L~10mol/Lの塩化グアニジニウム、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム又は塩化マグネシウムの1つ又は複数を含み、及び/又はpHが2.2~2.6で構成される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
- ブロッキング溶液は、PBS中に1%のBSA及び150mMのマレイミドを含む、及び/又は
- 画像化溶液は、pH 7.4でHO中に、700mMのN-アセチルシステインを含む、及び/又は
- 溶出液は、pH 2.5でHO中に、0.5MのL-グリシン、70mMのTCEP、3Mの塩化グアニジニウム及び3Mの尿素を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
- 第1の抗体は、10分~16時間インキュベートされる、及び/又は
- 第2の抗体は、10分~2時間インキュベートされる、及び/又は
- ブロッキング溶液は、5分~1時間インキュベートされる、及び/又は
- 溶出液は、1分~30分間インキュベートされる、及び/又は
すべてのステップは、室温で実施される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ブロッキング緩衝液であって、
i. 非特異的に疎水性結合部位に結合することが可能であるブロッキング化合物、及び
ii. スルフヒドリル反応性化合物、
iii. 緩衝成分、
を含む、前記ブロッキング緩衝液と、
画像化緩衝液であって、
i. ラジカル捕捉剤及びフリーラジカル誘導性光架橋結合の受容体であって、N-アセチルシステイン、N-アセチルシステインアミド、システイン、L-アスコルビン酸、レスベラトロール、β-カロテン、セレノ-L-メチオニン、クロロゲン酸及び/又はカフェイン酸から選択される、前記ラジカル捕捉剤及びフリーラジカル誘導性光架橋結合の受容体
を含み、及び
ii. pHが7.2~7.6
で構成される、前記画像化緩衝液と、
溶出緩衝液であって、
i. 還元剤、及び
ii. 水素結合を切断する少なくとも1つの化合物、及び
iii. 緩衝成分
を含み、及び
iv. pHが(<)4より低い
で構成される、前記溶出緩衝液
を含む部品(セット)のキット。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法に従う方法を実行するための指示書をさらに含む、請求項8に記載の部品のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロッキング、画像化(imaging)及び溶出のための緩衝液を含む、画像化のために生体試料を多重抗体染色することを可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な方法により、単一細胞からの数百、数千の異なる分子種の存在量を多重測定するための技術が革新されてきた。これらにより大規模な取り組みを介して人体の機能的に関連するすべての細胞型がこれらのデータから不偏の様式で明らかになるであろうという期待をもたらしてきた。これらの方法のいくつかはin situで適用することができるので、同定される細胞型は、細胞集団又は組織の環境内に配置していることが可能である。しかしながら、タンパク質若しくはタンパク質状態、又はRNA転写物の存在量は、細胞機能への関与について直接的には情報を与えないことがよく知られている。これは、特定の細胞内の位置、及び他の分子及び細胞内構造との相互作用に依存しており、全細胞プールのごく一部しか関与していない可能性がある。さらに、個々の細胞の表現型は、細胞内小器官及び細胞骨格構造の機能状態、存在量、形態、ターンオーバーなどによって決定される。したがって、機能的に関連する情報を得るためには、これらの不偏的な大規模な方法は、分子多重化の長さスケールを細胞内領域にまで拡張し、最終的には経時的な情報を得る必要がある。近年、ツアー・ド・フォース(tour-de-force)研究では、12,000個のタンパク質の高分解能細胞内免疫蛍光画像化を実現し、これによりヒトプロテオームの平均的な細胞下マップを作成した。ただし、プロテオームの細胞下分布が細胞の表現型状態及びその微小環境にどのように機能的に関連しているか、及び変化する条件にどのように応答するかを理解するには、そのようなマップを同じ単一細胞で、かつin situで多くの細胞にわたって直接測定する必要がある。組織又は単一細胞上で空間的に分解される抗体の多重化を実現できる強力な方法は数多く存在するが、組織、単一細胞、及び高分解の細胞内の長さスケールを同時にカバーしながら、複数の条件でのハイスループットな様式で試料の品質を維持し、かつ大規模な画像処理及び多変量統計学的アプローチと組み合わせて、そのようなデータに存在する豊富な量の生物学的情報を抽出するというすべての要件を満たしているものはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような多重化データを記録する際の主な問題は、抗体を試料に架橋させることなく、抗体染色の複数の周回を可能にすることである。
【0004】
本発明の目的は、抗体を試料に架橋させることなく、抗体染色の複数の周回を可能にする手段及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本明細書の独立請求項の主題によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図面の簡単な説明
図1A】4iは、単一細胞及びピクセルレベルで高い再現性を維持しながら、同じ細胞による少なくとも40プレックスの空間的に分解される分子読み出しを実現する。(A)蛍光シグナルの画像取得では、試料に対する抗体の光架橋を引き起こす。TUBA1Aに対する免疫蛍光(IF)を実施した。試料を画像化緩衝液なしで画像化した(1,オレンジ色のボックス、灰色は画像化されていないウェル領域を表す)。次いで、抗体を試料から溶出させた。次に、試料を二次抗体とインキュベートし、2回目の画像化をテール化様式で行い(緑色のボックス)、レーザー光に暴露された領域及びされていない領域の両方で蛍光をそれぞれ記録した(2)。前者は明らかに高いシグナルを示し、一次抗体が試料に架橋する際の光の影響を示している。第1及び第2の画像化からの画像は独立して再スケーリングされる。
図1B】(B)4iは、エピトープの完全性を維持しながら、画像取得後に試料から一次及び二次抗体を溶出する。Alexa Fluor 588(左)及びAlexa Fluor 568(右)で標識された二次抗体によって検出される複数の一次抗体の統合された細胞の強度の箱ひげ図。バックグラウンド強度は、二次抗体のみで細胞をインキュベートすることによって定量した(左から1番目の箱ひげ図)。2回及び20回の溶出後に細胞の強度を測定したところ(左から2番目及び4番目の箱ひげ図)、同様のダイナミックレンジを示した。一次抗体及び二次抗体の複合体を溶出し、二次抗体のみで染色した後に、細胞の強度はバックグラウンドまで低下した(左から3番目及び5番目の箱ひげ図)(図3B)。箱ひげ図は、中央のマークは母集団の中央値を示し、ボックスは25~75パーセンタイルの母集団の範囲を示し、ひげは母集団の範囲の99.3%をカバーし、外れ値はドットとしてマークされるように構成される。
図1C】(C)サイクル(cycle)1、11及び21、又はサイクル2、10及び20から、それぞれCTNNB1又はTUBA1Aのいずれかで染色された同じ細胞の重ね合わせ画像。サイクル1及び2の画像はシアンで、サイクル11及び10の画像はマゼンタで、サイクル21及び20の画像は黄色で色分けされている。3つのサイクル間の共局在性が高い領域は白く表示される。異なる4iサイクルの画像は、重ね合わせ画像を作成する前に別々に再スケーリングされる。
図1D】(D)4iは、21サイクルの反復的IFにわたって、統合された単一細胞の強度の高い相関関係を保持する。箱ひげ図は、CTNNB1又はTUBA1Aのいずれかについて、互いにそれぞれのサイクルのすべてのサイクルにわたって測定された統合された細胞の強度の単一細胞の相関を表す。箱ひげ図は、中央のマークは母集団の中央値を示し、ボックスは25~75パーセンタイルの母集団の範囲を示し、ひげは母集団の範囲の99.3%をカバーし、外れ値はドットとしてマークされるように構成される細胞数16,000個。
図1E】(E)4iは、21サイクルの反復的IFにわたって高いピクセルの強度の相関を保持する。箱ひげ図は、サイズの増加する平均フィルタ(なし、2×2、3×3、5×5、7×7、及び10×10ピクセル)によって平滑化された画像において、CTNNB1とCTNNB1(シアン)、TUBA1AとTUBA1A(緑)、及びCTNNB1とTUBA1A(紫)について、21つの4iサイクルにわたって細胞間で測定されたピクセルの強度の相関を示す(図3D,E)。箱ひげ図は、中央のマークは母集団の中央値を示し、ボックスは25~75パーセンタイルの母集団の範囲を示し、ひげは母集団の範囲の99.3%をカバーし、外れ値はドットとしてマークされるように構成される。細胞数16,000個。
図2】4iのハイスループット設定での適用は、生物学的スケールにわたる情報を生成する。4iの手順の概略図を示す。(1)マレイミドとのチオエーテル反応により、非特異的な抗体の結合及び遊離スルホヒドリル/チオールのブロッキングを防止するために試料をブロッキングする。(2)目的の2つの異なる抗原に対する間接的免疫蛍光(IF)を行う。(3)試料に画像化緩衝液を添加し、画像化する。(4)溶出緩衝液を使用して、試料から一次抗体及び二次抗体を溶出させ、これにより、以降に4iの別の周回を行う準備ができる。
図3A】4i手順の最適化(A)画像化緩衝液は、画像取得中の抗体と試料との架橋結合を防止する。一次抗体及び二次抗体を用いてTUBA1Aを染色した細胞の顕微鏡写真(左の最初の2つのパネル)及び二次抗体のみでインキュベートした細胞の顕微鏡写真(左から3番目のパネル、対照)。4iは、TUBA1A(左から最初の2つのパネル、一次抗体及び二次抗体)、並びに二次抗体のみ(対照、左から3番目のパネル)に対して細胞において行った。抗体を試料から溶出させ(各パネルの第1の顕微鏡写真)、試料細胞を二次抗体のみでインキュベートして一次抗体の完全溶出をプローブし(各パネルの2番目の顕微鏡写真)、TUBA1Aについて再染色した(各パネルの3番目の顕微鏡写真)。個々のパネルの顕微鏡写真は、同じように再スケーリングした。1番目のパネルの顕微鏡写真は、2番目のパネル及び3番目のパネルとは、異なって再スケーリングした。
図3B1】(B)試料のブロッキングにおいてマレイミド処理は、試料の構造的完全性を保持しながら、抗体の溶出を補助する。上段の散布図は、AlexaFurour488(左上)又はAlexaFurour568(右上)で標識した二次抗体を用いて、X軸において、免疫蛍光(染色1)後に取得したシグナルと試料の溶出後に二次抗体のみで再染色した(二次抗体再染色(SecAbRestain))後に取得したシグナルとの間で測定されたピクセル強度の単一細胞内で定量化された相関の平均値、及びY軸において、免疫蛍光(染色1)後に取得したシグナルと、抗体溶出後に第2の周回の免疫蛍光(染色2)の後に取得したシグナルとの間で測定されたピクセル強度について、単一細胞において定量化される相関関係の平均値を可視化する。染色1と染色2の間の最高の相関値、及び二次抗体再染色と染色1の間の最低の相関値が、ブロッキング緩衝液にマレイミドを添加することによって達成される。同様の解析を行い、単一細胞の強度の相関関係を定量化した結果、同じ結果となった(下段)
図3B2】(B)試料のブロッキングにおいてマレイミド処理は、試料の構造的完全性を保持しながら、抗体の溶出を補助する。上段の散布図は、AlexaFurour488(左上)又はAlexaFurour568(右上)で標識した二次抗体を用いて、X軸において、免疫蛍光(染色1)後に取得したシグナルと試料の溶出後に二次抗体のみで再染色した(二次抗体再染色(SecAbRestain))後に取得したシグナルとの間で測定されたピクセル強度の単一細胞内で定量化された相関の平均値、及びY軸において、免疫蛍光(染色1)後に取得したシグナルと、抗体溶出後に第2の周回の免疫蛍光(染色2)の後に取得したシグナルとの間で測定されたピクセル強度について、単一細胞において定量化される相関関係の平均値を可視化する。染色1と染色2の間の最高の相関値、及び二次抗体再染色と染色1の間の最低の相関値が、ブロッキング緩衝液にマレイミドを添加することによって達成される。同様の解析を行い、単一細胞の強度の相関関係を定量化した結果、同じ結果となった(下段)
図3C】(C)マウス(二次抗体ヤギ抗マウスAlexa Fluor 488)で産生される抗体を4iの20サイクルにわたり実験に使用して測定した統合された細胞の強度の箱ひげ図。灰色の箱ひげ図は、一次抗体と二次抗体の両方でインキュベートした細胞で測定した細胞の強度を表す。青色の箱ひげ図は、二次抗体のみでインキュベートした細胞で測定した細胞の強度を示す。これは、二次抗体の非特異的結合、試料からの一次抗体及び二次抗体の不完全な溶出、及びエピトープの安定性によるバックグラウンドシグナルの増強を定量するための対照として働く。免疫蛍光を表す白い箱ひげ図の間の実験全体の類似性は、4iの20サイクルについて安定なダイナミックレンジを示し、並びに4iの20サイクルにわたり試料からの抗体の溶出の成功を示し、これは、二次抗体のみで試料(一次抗体なし)を再染色する全てのステップでの白と青の箱ひげ図の類似性によって例示される。最後に、バックグラウンドシグナルの増強は検出されず、これは、実験のすべての段階で青い箱ひげ図の類似性によって浮き彫りにされる。上段に記載されるとおり同じ実験及び結果であるが、ウサギで産生された一次抗体(及び二次抗体ヤギ抗ウサギAlexa Fluor568)を使用する。箱ひげ図は、中央のマークは母集団の中央値を示し、ボックスは25~75パーセンタイルの母集団の範囲を示し、ひげは母集団の範囲の99.3%をカバーし、外れ値はドットとしてマークされるように構成される。
図3D】(D)棒グラフは、サイクル1から21までのPCNA、FBL、CTNNB1及びTUBA1Aの統合された細胞の強度を、第1の染色のサイクル(PCNA及びCTNB1についてはサイクル1、FBL及びTUBA1Aについてはサイクル2)と比較したときの相関(青でピアソン(Pearson)、緑でスピアマン(Spearmam))を示す。
図3E】(E)4iは、21サイクルの反復的IFにわたって高いピクセルの強度の相関を保持する。箱ひげ図は、サイズを増加する(なし、2×2、3×3、5×5、7×7、及び10×10ピクセル)平均フィルタによって平滑化された画像におけるPCNAとPCNA(シアン)、FBLとFBL(緑)、及びPCNAとFBL(紫)について、4iの21サイクルにわたって細胞間で測定されたピクセル強度の相関を表す。箱ひげ図は、中央のマークは母集団の中央値を示し、ボックスは25~75パーセンタイルの母集団の範囲を示し、ひげは母集団の範囲の99.3%をカバーし、外れ値はドットとしてマークされるように構成される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
用語と定義
本明細書の文脈における用語「4i」は、反復的間接免疫蛍光画像化アプローチの略語である。
【0008】
本明細書の文脈における用語「PBS」は、10mmol/LのPO 3-、137mmol/LのNaCl、及び2.7mmol/LのKClの濃度、及び7.4のpHを有するリン酸緩衝生理食塩水に関する。
【0009】
本明細書の文脈における用語「BSA」は、ウシ血清アルブミンに関する。
【0010】
本明細書の文脈における用語「FBS」は、ウシ胎児血清に関する。
【0011】
本明細書の文脈における用語「SA」は、任意の種の血清アルブミンに関する。
【0012】
本明細書の文脈における用語「TCEP」は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンに関する。
【0013】
本明細書の文脈において、「画像化のために調製される生体試料」という用語は、画像化のために使用可能なデバイスに固定される任意の生物学的材料を指し、特に蛍光顕微鏡法に限定されるものではない。画像化のために調製される生体試料は、顕微鏡検査に適したスライドガラス又はマルチウェルプレート(ガラス/プラスチック)又は他の種類の検体ホルダー上に、直接的に、又は3D有機若しくは無機マトリックスによって支持されるフレッシュフローズン、又はホルマリン固定パラフィン包埋など、異なる調製物の生物学的材料のパラホルムアルデヒド固定の単一細胞又は細胞集合体(例えば、オルガノイド、スフェロイド)、又は組織又は切片から選択され得るが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書の文脈において、「抗体」という用語は、これらに限定されないが、免疫グロブリンG型(IgG)、A型(IgA)、D型(IgD)、E型(IgE)又はM型(IgM)を含む全ての抗体、任意の抗原結合断片又はその一本鎖、及び関連又は誘導構築物を指す。全ての抗体とは、ジスルフィド結合で相互に連結された、少なくとも2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(V)及び重鎖定常領域(C)で構成される。重鎖定常領域は、C1、C2、C3の3つのドメインで構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(以下、Vと略記)及び軽鎖定常領域(以下、Cと略記)で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCで構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。同様に、この用語は、いわゆるナノボディ又は単一ドメイン抗体、単一単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片を包含する。
【0015】
本明細書の文脈において、「標識抗体」という用語は、検出可能な標識に共有結合されている抗体に使用される。このような検出可能な標識は、例えば、限定されることなく、オクタデシルローダミンB、7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸、アクリジン及び誘導体、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-(3-[ビニルスルホニル]フェニル)ナフタルイミド-3,6-ジスルホネートジリチウム塩、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、BODIPY、ブリリアントイエロー、クマリン及び誘導体、シアニン染料、シアノシン、4’6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ブロモピロガロールレッド、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン、ジエチレントリアミン五酢酸、4,4’-ジイソチオシアナトジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸、4,4’-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、ダンシルクロリド、4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC)、エオシン及び誘導体、エリスロシン及び誘導体、エチジウム、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、X-ローダミン-5-(及び6)-イソチオシアネート(QFITC又はXRITC)、フルオレサミン、IR-144(2-[2-[3-[[1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-2H-benz[e]インドール2-イリデン]エチリデン]-2-[4-(エトキシカルボニル)-1-ピペラジニル]-1-シクロペンテン-1-イル]エテニル] -1,1-ジメチル-3-(3-スルホルプロピル)-1H-benz[e]インドリウムヒドロキシド、分子内塩、n,n-ジエチルエタンアミン(1:1)との化合物、CAS番号:54849-69-3)、5-クロロ-2-[2-[3-[(5-クロロ-3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾール-イリデン)エチリデン]-2-(ジフェニルアミノ)-1-シクロペンテン-1-イル]エテニル]-3-エチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩(IR140)、マラカイトグリーンイソチオシアネート、4-メチルウンベリフェロン、オルソクレゾールフタレイン、ニトロチロシン、パラロサニリン、フェノールレッド、B-フィコエリスリン、o-フタルジアルデヒド、ピレン、ピレンブチレート、サクシニミジル1-ピレン、酪酸量子ドット、リアクティブレッド4(チバクロンブリリアントレッド3B-A)、ローダミン及び誘導体、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリドローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101の塩化スルホニル誘導体(テキサスレッド)、N,N,N′,N′テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リボフラビン、ロソル酸、テルビウムキレート誘導体、シアニン-3(Cy3)、シアニン-5(Cy5)、シアニン-5.5(Cy5.5)、シアニン-7(Cy7)、IRD700、IRD800、Alexa647、ラジョルタブルー、フタロシアニン、及びナフタロシアニンを含む。
【0016】
本明細書の文脈において、「ラジカル捕捉剤」という用語は、フリーラジカルと迅速に反応し、それによってフリーラジカルを除去する化合物に使用される。
【0017】
本明細書の文脈において、「洗浄液」という用語は、本明細書で採用されるいずれの他の緩衝液又は染色液のうち、試料に特異的に結合していない残りの成分を洗い流すことができる溶液に使用される。洗浄液は、試料から特異的に結合したリガンド(抗体など)を除去するものではない。
【0018】
本明細書の文脈において、「多重染色」という用語は、生体試料を2種以上の(一次的又は二次的に)標識抗体で染色することによる方法、言い換えれば2種以上の抗原が検出される方法に使用される。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明の第1の態様は、特定の抗原に特異的に結合することができる標識抗体又は抗体様リガンドで生体試料を多重染色する方法に関する。
【0020】
この方法は、以下のステップを含む:
(a)ブロッキングステップでは、画像化のために調製される生体試料を、後の染色ステップで使用される抗体の非特異的結合(この非特異的結合は高いバックグラウンド染色を引き起こすであろう)を減少させるために使用されるブロッキング溶液と接触させる。ブロッキング溶液は、疎水性結合部位に非特異的に結合可能なブロッキング化合物及び抗体と試料との共有結合を引き起こす可能性のあるジスルフィド橋の形成を防止するスルフヒドリル反応性化合物を含む。その後、ブロッキング溶液を除去する。
(b)第1の洗浄ステップでは、前記生体試料を洗浄液に接触させ、その後、前記洗浄液を除去する。任意に、第1の洗浄ステップは、1~10回、特に3~6回繰り返され得る。
(c)第1の染色ステップでは、前記生体試料を、第1の抗原に特異的な第1の抗体と接触させる。特定の実施形態では、前記第1の抗体は、検出可能な標識、特に蛍光標識を有する。よって、ステップd及びeは行われない。前記第1の抗体が検出可能な標識を持たない場合、第2の染色ステップが必要である。
(d)第2の洗浄ステップでは、前記生体試料を洗浄液に接触させ、その後、前記洗浄液を除去する。任意に、第1の洗浄ステップは、1~10回、特に3~6回繰り返され得る。
(e)第2の染色ステップでは、前記生体試料を、検出可能な標識、特に蛍光標識を有する第2の抗体と接触させる。前記第2の抗体は、前記第1の抗体に対して特異的である。
(f)第3の洗浄ステップでは、前記生体試料を洗浄液に接触させ、その後、前記洗浄液を除去する。任意に、第1の洗浄ステップは、1~10回、特に3~6回繰り返され得る。
(g)画像化ステップでは、前記生体試料を、中性のpHを有し、ラジカル捕捉剤を含む画像化溶液と接触させる。その後、試料の蛍光画像を記録し、その後、画像化溶液を除去する。
(h)第4の洗浄ステップでは、前記生体試料を洗浄液に接触させ、その後、前記洗浄液を除去する。任意に、第1の洗浄ステップは、1~10回、特に3~6回繰り返され得る。
(i)溶出ステップでは、前記生体試料を、試料から結合抗体を溶出するように選択される溶出液と接触させる。溶出液は、(<)4より低いpH、特にpH<3、より好ましくは≦2,7を有し、緩衝成分、還元剤、及び水素結合を破壊する少なくとも1種の化合物を含む。その後、溶出液を除去する。
【0021】
特定の実施形態では、ステップa~iは、各繰り返しにおいて異なる第1の抗体を使用して、1、2、3、4、5回以上(≧5)、≧10、≧15、≧20、≧25、≧30、≧35、又はさらには≧40回繰り返される。
【0022】
この方法を使用した抗体の溶出能力は、1回、11回、及び21回の周回の染色で同じ抗体で得られた画像を重ね合わせすることによって調査された。これにより、さまざまな種類の細胞内構造に対してほぼ完全な重ね合わせが得られ、すべての周回の間で非常に高い単一細胞及び単一ピクセルの強度の相関が得られた。
【0023】
従来の緩衝液では、抗体が試料に光架橋しているためと考えられるため、光を照射した領域での溶出効率が大きく低下した。
【0024】
特定の実施形態では、画像化ステップの直前に、核標識するステップが実行され、DNA結合性蛍光化合物を前記生体試料に接触させ、次いで洗浄ステップが実行され、洗浄液を前記生体試料に接触させ、その後に洗浄液を除去し、任意に第1の洗浄ステップを1、2、3、4、5、又は6回繰り返す。
【0025】
特定の実施形態では、標識抗体の検出可能な標識は蛍光色素分子である。
【0026】
特定の実施形態では、生体試料の画像化は、蛍光顕微鏡法、特に共焦点蛍光顕微鏡法として実行される。
【0027】
特定の実施形態では、洗浄液は、HO又はPBS、特にPBS又はHOのみから構成される。
【0028】
特定の実施形態では、ブロッキング溶液中のブロッキング化合物は、第1の染色ステップ又は第2の染色ステップで採用される抗体のいずれによっても認識されないブロッキングポリペプチドである。
【0029】
特定の実施形態では、ブロッキングポリペプチドは、BSA、FBS、SA、ヒト血清、ゼラチン、脱脂粉乳、又はブタ由来の高純度皮膚コラーゲンのポリペプチド画分(Prionex(登録商標)試薬)から選択される。
【0030】
特定の実施形態では、スルフヒドリル反応性化合物は、マレイミド、ハロアセチル、又はピリジルジスルフィドから選択される。
【0031】
特定の実施形態では、ブロッキング溶液は、BSA、FBS、SA、正常血清、ゼラチン、脱脂粉乳又はPrionex(登録商標)試薬から選択される0.5~2%、特に約1%の化合物及び/又は1mmol/L~1mol/L、特に10mmol/L~500mol/Lのマレイミド、ハロアセチル、又はピリジルジスルフィドを含む。
【0032】
特定の実施形態では、ブロッキング溶液は、PBS中に1%のBSA及び150mMのマレイミドを含む。
【0033】
特定の実施形態では、水素結合を切断する溶出液中の化合物は、カオトロピック塩である。
【0034】
特定の実施形態では、溶出液の緩衝成分は、L-グリシン、リン酸塩/クエン酸塩、又はフタル酸水素カリウムから選択される。
【0035】
特定の実施形態では、還元剤は、TCEP、ジチオスレイトール、又は2-メルカプトエタノールから選択される。
【0036】
特定の実施形態では、カオトロピック塩は、塩化グアニジニウム、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム、又は塩化マグネシウムの1つ又は複数から選択される。
【0037】
特定の実施形態では、溶出液は、0.5MのL-グリシンと、TCEP、ジチオスレイトール、又は2-メルカプトエタノールから選択される1mmol/L~1mol/Lの化合物、及び/又は1mmol/L~10mol/Lの塩化グアニジニウム、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム、又は塩化マグネシウムの1つ又は複数を含み、及び/又はpHが2.2~2.6である。
【0038】
特定の実施形態では、溶出液は、HO中でpH 2.5で、0.5MのL-グリシン、70mMのTCEP、3Mの塩化グアニジニウム及び3Mの尿素を含む。
【0039】
特定の実施形態では、ラジカル捕捉剤は、N-アセチルシステイン、N-アセチルシステインアミド、システイン、L-アスコルビン酸、レスベラトロール、β-カロテン、セレノ-L-メチオニン、クロロゲン酸及び/又はカフェイン酸から選択される。
【0040】
特定の実施形態では、画像化溶液は、N-アセチルシステイン、N-アセチルシステインアミド、システイン、L-アスコルビン酸、レスベラトロール、β-カロテン、セレノ-L-メチオニン、クロロゲン酸又はカフェ酸から選択される1mmol/L~1mol/Lの化合物を含み、及び/又はpHが7.2~7.6である。
【0041】
特定の実施形態では、画像化溶液は、pH7.4でHO中の700mMのN-アセチルシステインを含む。
【0042】
特定の実施形態では、第1の抗体は、10分~16時間インキュベートされる。
【0043】
特定の実施形態では、第2の抗体は、10分~2時間インキュベートされる。
【0044】
特定の実施形態では、ブロッキング溶液は、5分~1時間インキュベートされる。
【0045】
特定の実施形態では、溶出液は、1分から30分間インキュベートされる。
【0046】
特定の実施形態では、言及されたすべてのステップは、室温で実行される。
【0047】
本発明の第2の態様は、以下を含むブロッキング緩衝液に関する:
(a)疎水性結合部位に非特異的に結合することができるブロッキング化合物、特にブロッキングポリペプチド、より特にBSA、FBS、SA、正常血清、ゼラチン、脱脂粉乳又はPrionex(登録商標)試薬から選択されるブロッキングポリペプチド、なおより特にBSA、FBS、SA、正常血清、ゼラチン、脱脂粉乳又はPrionex(登録商標)試薬から選択される0.5~2%化合物、最も特に1%のBSA、及び
(b)スルフヒドリル反応性化合物、特にマレイミド、ハロアセチル、又はピリジルジスルフィドから選択される化合物、より特にマレイミド、ハロアセチル、又はピリジルジスルフィドから選択される1mmol/L~1mol/L、特に10mmol/L~500mol/Lの化合物、最も特に150mMのマレイミド、及び
(c)緩衝成分、特にPBS。
【0048】
本発明の第3の態様は、以下を含む画像化緩衝液に関する:
(a)ラジカル捕捉剤、特にN-アセチルシステイン、N-アセチルシステインアミド、システイン、L-アスコルビン酸、レスベラトロール、β-カロテン、セレノ-L-メチオニン、クロロゲン酸及び/又はカフェイン酸から選択される化合物、より特にN-アセチルシステイン、N-アセチルシステインアミド、システイン、L-アスコルビン酸、レスベラトロール、β-カロテン、セレノ-L-メチオニン、クロロゲン酸又はカフェイン酸から選択される1mmol/L~1mol/Lの化合物、最も特に700mMのN-アセチルシステイン、及び
(b)pHが7.2~7.6、特にpHが7.4。
【0049】
本発明の第4の態様は、以下を含む溶出緩衝液に関する:
(a)還元剤、特にTCEP、ジチオスレイトール、又は2-メルカプトエタノールから選択される化合物、より特にTCEP、ジチオスレイトール、又は2-メルカプトエタノールから選択される1mmol/L~1mol/Lの化合物、最も特に70mMのTCEP、及び
(b)水素結合を切断する少なくとも1つの化合物、特にカオトロピック塩、より特に塩化グアニジニウム、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム又は塩化マグネシウムから選択される化合物、より特に1mmol/L~10mol/Lの塩化グアニジニウム、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム又は塩化マグネシウムの1つ又は複数、最も特に3Mの塩化グアニジニウム及び3Mの尿素、及び
(c)緩衝成分、特にL-グリシン、より特に0.5MのL-グリシン、及び
(d)pHが(<)4より低い、特にpH<3、より特に≦2,7。
【0050】
本発明の第5の態様は、第2の態様に従ったブロッキング緩衝液、第3の態様に従った画像化緩衝液、及び第4の態様に従った溶出緩衝液を含む部品(セット)のキットに関する。
【0051】
特定の実施形態では、キットは、第1の側態様の方法に従って進める追加の指示書を含む。
【0052】
例えば、ラジカル捕捉剤又はブロッキングポリペプチドなどの単一の分離可能な特徴の代替が「実施形態」として本明細書に記載されている場合はどこでも、そのような代替は、本明細書に開示される本発明の離散的な実施形態を形成するために自由に組み合わせてもよいことが理解されるであろう。
【0053】
本発明は、以下の実施例及び図面によってさらに例示され、そこからさらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を例示するためのものであるが、その範囲を限定するものではない。
【実施例
【0054】
材料及び方法
細胞培養
細胞株
HeLa Kyoto(ヒト子宮頸部上皮細胞株、J.Ellenberg教授研究室、EMBL、ドイツ)。細胞を、使用前にカリオタイプ法で同一性を検査し、マイコプラズマが存在しないことを検査した。
【0055】
完全培地(CM)
CMは、DMEM中、10%のウシ胎児血清(FBS)及び5%のグルタミンからなる。
DMEM(Lifetechnologies)、ウシ胎児血清(Sigma Aldrich)、グルタミン(Lifetechnologies)。
【0056】
薬理学的摂動
上皮成長因子(EGF)(Milipore)、ノコダゾール(Sigma Aldrich)、ラトランクリンA(Sigma Aldrich)、バフィロマイシンA1(Sigma Aldrich)、ブレフェルディンA(Sigma Aldrich)、ウォルトマニン(Sigma Aldrich)、ラパマイシン(Sigma Aldrich)。
【0057】
反復的間接免疫蛍光画像化(4i)
4iブロッキング溶液(sBS)
sBSは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)と150mMのマレイミドからなる。
マレイミドを、4i手順のブロッキングステップの直前に水溶液に添加する。
BSA(Sigma Aldrich)、マレイミド(Sigma Aldrich)
【0058】
従来のブロッキング溶液(cBS)
cBSは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)からなる。
BSA(Sigma Aldrich)
【0059】
画像化緩衝液(IB)
IBは、dHO中の700mMのN-アセチルシステイン(NAC)からなる。
pH 7.4に調整する。
NAC(Sigma Aldrich)
【0060】
溶出緩衝液(EB)
EBは、ddHO中に0.5MのL-グリシン、3Mの尿素、3Mの塩化グアニジニウム(GC)、及び70mMのTCEP-HCl(TCEP)からなる。
pH 2.5に調整する。
L-グリシン(Sigma-Aldrich)、尿素(Sigma-Aldrich)、GC(Sigma-Aldrich)、TCEP(Sigma-Aldrich)
【0061】
一次抗体
抗体は、以下の基準に基づいて選択した:1.免疫蛍光における抗体の成功した使用については、過去に科学文献に発表されていること。2.抗体は、小器官の真正なマーカー上のエピトープに対して産生されること。3.マウスとウサギの両方で同じ数の抗体が産生されることを確認すること。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
この公表の抗体を試験する間に、50以上の抗体のうち2つ(TOM20上のエピトープに対する抗体(Abcam ab56783)とCAT(Abcam ab110292))は、4i手順と一緒に動作しないことが確認された。
【0065】
二次抗体
それぞれcBSに、抗マウスAlexaFluor-488を1:600に希釈し、抗ウサギAlexaFluor-568を1:300に希釈した。
抗マウスAlexaFluor-488(Lifetechnologies)、抗ウサギAlexaFluor-568(Lifetechnologies)
【0066】
DNA染色溶液(DSS)
4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)をPBS中に1:250~1:50に希釈した。
DNAの脱プリンによって失われたシグナルを補うために、溶出回数の増加に伴ってDAPI濃度が増加し、その結果、DAPIの結合親和性が低下した。
DAPI(Lifetechnologies)
【0067】
計算的インフラストラクチャ
画像解析のステップは、ETH チューリッヒにて高性能クラスターコンピューターBrutusで実行した。多重化ピクセルプロファイルの抽出、及び自己組織化アルゴリズムを使用したそれらのクラスタリングは、Science Cloud UZHで実行した。記載される他のすべての計算的な方法は、デスクトップコンピュータで実行した。
【0068】
補足的方法
細胞培養
細胞を、37°C、95%湿度、5%のCOにて完全培地で培養した。1ウェルあたり750個の細胞を384ウェルプレート(Greiner)に播種し、上記の条件で3日間増殖した。
【0069】
薬理学的及び代謝的摂動
すべての化合物を、EGFを除き、DMEMのみで希釈した完全培地を用いてそれぞれの最終濃度に希釈した。
【0070】
【表3】
薬理学的な摂動:
細胞を化合物で3時間インキュベートした。
【0071】
【表4】
【0072】
顕微鏡
強化されたCSU-W1スピニングディスク(マイクロレンズ強化デュアルニプコーディスク共焦点スキャナー、ワイドビュー型)を備えた横河電機の自動回転ディスク顕微鏡(CellVoyager 7000)を、0.95NAの40倍オリンパス対物レンズ及びNeo sCMOSカメラ(Andor、2,560×2,160ピクセル)と組み合わせて使用し顕微鏡画像を取得した。各部位ごとに500nmのz間隔で18個のz平面を取得し、最大強度の投影を計算し、その後の画像解析に使用した。UV(406nm)、緑(488nm)、赤(568nm)のシグナルを順次取得した。
【0073】
反復的間接免疫蛍光画像化(4i)
試料の調製
それぞれ記載されない場合は、すべてのステップは室温で実行した。細胞を4%のパラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences)中で30分間固定化した。その後、細胞を0.5%のTriton X-100で15分間透過処理した。細胞を透過処理前と透過処理後の両方にてPBSで6回洗浄した。固定化及び透過処理は室温で行った。
【0074】
免疫蛍光
次の各ステップを、言及の順序で、かつ4iのすべてのサイクルで実行した。それぞれ記載されない場合は、すべてのステップは室温で実行した。
1.抗体溶出
試料をddHOで6回洗浄した。残留したddHOを、最小の体積まで吸引した。次の動作を3回繰り返す:試料にEBを添加し、100rpmで10分間振とうした。その後、EBを可能な限り最小の体積まで吸引した。
2.ブロッキング
sBSを試料に添加し、100回転/分(rpm)で1時間振とうした。
1時間後、試料をPBSで6回洗浄した。
3.間接免疫蛍光、一次抗体染色
一次抗体溶液を試料に添加し、100rpmで2時間振とうした。
2時間後、試料をPBSで6回洗浄した。
4.間接免疫蛍光、二次抗体染色
二次抗体溶液を試料に添加し、100rpmで2時間振とうした。
2時間後、試料をPBSで6回洗浄した。
5.核染色
試料にDSSを添加し、100rpmで10分間振とうした。
10分後に試料をddHOで6回洗浄した。残留したddHOを、最小の体積まで吸引した。
6.画像化
試料にIBを添加し、試料を画像化した。
7.必要とされるプレキシティ(plexity)が達成されるまで、ステップ1から6を実行する。
4iの手順のすべての液体を調合するステップ及び洗浄するステップは、Washer Dispenser EL406(BioTek)を使用して実行した。一次抗体及び二次抗体は、AgilentTechnologiesのBravo液体処理プラットフォームを使用して調合した。
【0075】
4iの20サイクルにわたる抗体の溶出性及びダイナミックレンジの保存
試料の安定性、試料からの一次抗体及び二次抗体の溶出、及び4iの20サイクルの間の二次抗体の非特異的結合による可能なバックグランドシグナルの増加を試験するために、以下の実験を行った。(1)試料を最初にEB(1×溶出)で処理し、(2)次いで二次抗体のみで染色して蛍光バックグラウンドレベルを記録した(二次抗体のみ)。(3)その後、試料をEB(2×溶出)で処理し、次いで(4)試験ウェルにおいて一次抗体と二次抗体の両方を、対照ウェルにおいて二次抗体のみをインキュベートした(IF)。(5)試料から一次抗体及び二次抗体を溶出させ(3×溶出)、(6)試料を試験ウェル及び対照ウェルの両方で二次抗体のみ(二次抗体のみ)でインキュベートした。次に(7)抗体染色及び画像取得を行わない試料を用いて4iを5サイクル行い、(8)その後、別の周回のIFを行った(8×溶出)。(9)一次抗体及び二次抗体を試料から溶出し(9×溶出)、(10)二次抗体のみでインキュベートした(二次抗体のみ)。ステップ7~10を2回繰り返した(15×溶出、21×溶出)。
【0076】
単一細胞のピクセルの相関の計算
ピクセル相関を、2つの4iのシグナル間で計算した。同一の取得中にシグナルが記録されない場合は、相関測定の前に画像アライメントを行った。第1に、同じバックグラウンド値を両画像から減算した。次に、同じ細胞に由来する2つの異なる4iシグナルの単一ピクセル強度を、セグメント化領域(細胞、細胞質、核)において相関させた。これは、各セルごとに個別に行った。ピクセル相関は、2×2、3×3、5×5、7×7、10×10のピクセル平均フィルタで平滑化されていない画像、又は平滑化された画像のいずれかで計算した。
【0077】
図1E及び図3Eのピクセル相関は、以下のように算出した。最初のCTNNB1染色(サイクル1)のピクセル強度を、21番目のサイクルまでCTNNB1染色(奇数サイクル)と互いに相関させた。最初のTUBA1A染色(サイクル2)のピクセル強度を、20番目のサイクルまでTUBA1A染色(偶数サイクル)と互いに相関させた(緑色の箱ひげ図)。CTNNB1とTUBA1Aとの間のピクセル強度相関を、最初のCTNNB1染色(サイクル1)と各TUBA1A染色(サイクル2、4、6、8、10、12、14、16、18、20)の間で計算した。各染色のすべてのサイクルにわたって計算される相関を、それぞれ1つの箱ひげ図に集約し、そして対応する画像を、全てのサイクルのサイズの増加(なし、2×2、3×3、5×5、7×7、及び10×10ピクセル)のピクセル相関の平均フィルタによって平滑化した後に計算した。
【0078】
異なる4iサイクルから取得される画像アライメント
同じ部位からの異なるサイクルの顕微鏡画像は、不完全であるステージの再配置のために、取得の間にXとYのわずかなシフトが発生するため、画像のアラインメントが必要である。2つのサイクルのDAPI画像に対して、高速フーリエ変換に基づく画像記録を行った。488nmと568nmの取得、及びセグメンテーションマスクは、計算されたオフセットによってシフトされ、結果として顕微鏡部位がアライメントされた。
【0079】
実施例1:
すべての要件を満たすアプローチを得るために、ハイスループット多変量画像化及びコンピュータビジョンのアプローチ(Snijderら、(2009)Nature461,520~523;Liberaliら、(2014)Cell 157,1473~1487;Battichら(2015).Cell 163,1596~1610)を、他の蛍光ベースの多重化アプローチで使用される原理である、染色、シグナル除去、及び再染色の複数の反復を適用する自動液体処理プラットフォームと組み合わせた(Schubertら、(2006)、Nat Biotechnol 24、1270~1278;Wahlbyら、(2002)、Cytometry 47,32~41;Linら、(2015)、Nat 6項、8390)。これらのスケールでは、シグナル除去のためのフォトブリーチングは実用的ではなかったため、化学的抗体溶出を選択した。さらに、抗体の選択に制限がなく、一次抗体の結合を必要としないために、本発明者らは、従来の間接免疫蛍光法に目を向け、そして予想外の発見をした(図1A及び図3A)。標準的な免疫蛍光の手順(第1の画像化)の後、試料の1つの部位を自動化高分解能スピニングディスク共焦点顕微鏡で画像化し、結合した抗体を試料から溶出させ、二次抗体のみで再染色し、抗体溶出効率を確認したところ(第2の画像化)、本発明者らは、第1の画像化の第1の周回の間に、光に曝された領域では溶出効率が強く損なわれるが、光に曝されなかった領域では損なわれないことを観察した(図1A)。これは、蛍光色素分子の励起中に、蛍光色素分子の近くにあるタンパク質の反応性アミノ酸(メチオニン及びシステイン)間に共有結合を導入することができる一重項酸素ラジカルが形成され、共焦点顕微鏡で使用される高エネルギーレーザー光への曝露中に、試料に対する抗体の架橋が生じることに起因する可能性がある。これまでの抗体溶出アプローチでは気づかずに進められたため、それは完全な溶出を妨げ、特に試料を分解する過酷な条件を使用することをもたらしていた可能性がある。
【0080】
次に、光発光の効率を低下させることなく、画像化中のそのような光誘発性架橋結合を防止し、したがって、抗原を除去又は分解しない非常にマイルドな条件下で完全な抗体溶出を可能にする試薬の組み合わせを介してスクリーニングした(図3B)。これにより、低量のラジカル捕捉剤、並びにフリーラジカル誘導性光架橋結合の受容体を含む画像化緩衝液、還元剤、低pH及びカオトロピック塩によるマイルドな溶出緩衝液、並びに試料中の遊離スルフヒドリル基をブロックするブロッキング緩衝液を同定した。40種類以上の異なる抗体について、この組み合わせは、染色及び溶出の、試験された最大サイクル数である最大21回の反復にわたって一次抗体及び二次抗体の完全な溶出を達成し、一方で、染色における検出可能な損失又は形態学的変化を防止した(図1B及び図3B、C)。第1の周回、第11の周回、及び第21の周回の染色で同じ抗体を用いて得られた画像を重ね合わせると、様々な種類の細胞内構造のほぼ完全なグレースケール画像が得られ(図1C)、すべての周回の間で非常に高い単一細胞と単一ピクセルの強度の相関が得られた(図1D~E及び図3D~E)。このように、ハイスループット自動反復性間接免疫蛍光画像化アプローチ(4iと呼ばれる)は、40倍対物レンズ及びsCMOSカメラを用いた単一ピクセルの表面積に対応する165nm×165nmのように小さい副試料から、少なくとも20回の反復にわたって定量的に再現可能な数mmの大きさの表面積からのシグナルを得ることができる。
【0081】
実施例2:
次に、ヒト組織培養細胞に4iを適用し(図2)、11種類の実験条件で、18つのz平面で細胞の全高及び総表面積9mmをカバーし、約2万個の単一細胞を捕捉した。集合的に、これらの画像には、数桁の空間スケールにわたる多変量の分子及び表現型情報を含有し、複数のレベルの生物学的組織間のつながりを直接研究することができる可能性を提供している。例えば、細胞集団レベルでの新生特性である小器官の存在量に対する局所的な細胞の混み合い影響、又は細胞サイクルにおける位置が細胞レベルでの特性であるタンパク質のリン酸化状態にどのように影響するかを可視化することができる。同時に、例えば微小管、アクチンラッフル(actin ruffle)及び焦点性接着、エンドソームの複数の型、ミトコンドリアの個々の細管、及びゴルジ複合体のリボンなど細胞骨格構造及び小器官の詳細な形態を捕らえるために十分な分解能で、同一の単一細胞内、かつ数十万個の細胞にわたって全てにおいて細胞下レベルでの特性であるタンパク質の亜区画化を評価することを可能にする。
【0082】
議論
本発明者らは、同一の生体試料において、mm~nmの長さスケールにまたがる40回のタンパク質測定値をハイスループットかつ複数の条件で取得し、これらの様々な生物学的なスケールから抽出した情報を一つのデータセットに組み合わせた。既存のタンパク質多重化アプローチは、これらのスケールの異なるサブレンジに対して同程度のレベルの多重化を達成するが、低スループット又はハイスループットのいずれにおいても、すべてを同時に網羅したものはない。さらに、本発明者らは、同一細胞内のすべての細胞内小器官のほぼ包括的な可視化を初めて達成した。基本的な方法論は簡潔である。4iの技術は、反復的な染色及びシグナル除去の実証された原理を適用した自動液体処理を組み合わせる、十分に確立された高スループット多変量画像化プラットフォームに構築される。4iは特別な結合を必要としない市販の抗体を使用しているため、明るい蛍光色素分子の使用及び二次抗体によるシグナル増幅により、高いシグナル収率を実現している。これにより重要な要因は、画像化中の光架橋結合の防止であり、これは多数のサイクル数に渡って最小の空間スケールでもなお試料を完全に保持しながら、マイルドな溶出緩衝液で一次抗体と二次抗体の両方を完全に除去することを可能にした。これは、近接した複数の抗原の検出時にエピトープのマスキングをおこさないという付加的な利点がある。興味深いことに、本発明者らは本明細書で、解析を単一細胞の2次元投影に限定したが、そのアプローチは3次元解析のためのボクセルにも適用可能である。さらに、定量的に再現性のある単一ピクセル測定が可能であることから、4iは超解像顕微鏡へ適用できることが約束される。実際に、隣接するピクセルの高度に多重化された測定は、以前に提案されたように、画像の解像度を向上させることができる付加的な情報を提供することが可能である。生物学的な長さスケールを橋渡しする能力は、生命科学の主要な課題の一つである。通常、外挿や推論が適用される。しかし、より高いスケールでの特性が、より低いスケールで発生する複数の相互作用からどのように発生し、それがどのように相互にフィードバックされるかを予測するためには、1つの測定されるデータセットの中で複数の長さスケールをカバーする必要がある。このようなデータセットには、現在の生物学的プロセスのモデルではまだ考慮されていないスケール間のつながりを多く含有している。しかし、どの遺伝子発現が細胞の状態に適合されるか、細胞の型がどのように決定されるか、病理学的な細胞表現型がどのように出現するか、又は腫瘍細胞がどのように薬剤に応答するかは、まさにこれらのつながりによる。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B1
図3B2
図3C
図3D
図3E