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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】血管採取システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3205 20060101AFI20240220BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20240220BHJP
   A61B 8/12 20060101ALI20240220BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61B 1/005 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61B17/3205
A61F2/07
A61B8/12
A61B1/00 530
A61B1/00 620
A61B1/005
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020561440
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049296
(87)【国際公開番号】W WO2020129943
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018237433
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】池田 司
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-505315(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051565(WO,A1)
【文献】特開平09-122133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3205
A61F 2/07
A61B 8/12
A61B 1/00
A61B 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離デバイスと表示デバイスとを備え、周囲組織に覆われた状態で血管を採取する血管採取システムであって、
前記剥離デバイスは、
生体内に挿入されるロッド部と、
前記ロッド部の先端部に配置され、光透過性を有する先細り形状の剥離部と、
前記ロッド部内に配置され、前記剥離部を介して生体内の内視鏡画像を撮像する内視鏡部と、
前記ロッド部の外周面に配置され、生体内に超音波を照射し、生体内からの反射波を受信する超音波送受信部とを備え、
前記剥離部は、血管の周囲組織の剥離を行い、
前記表示デバイスは、周囲組織の画像を含む前記内視鏡画像と、前記超音波送受信部によって受信された反射波に基づいて生成された血管の画像を含む超音波画像とが表示される表示画面を備え、
前記表示デバイスは、
前記内視鏡画像の縮尺と前記超音波画像との縮尺とを一致させ、かつ、前記内視鏡画像と前記超音波画像とを並べて同時に前記表示画面に表示すると共に、
生体内の所定位置を示す前記内視鏡画像中の点と、前記所定位置を示す前記超音波画像中の点とが前記表示画面上で一致するように、前記内視鏡画像と前記超音波画像とを前記表示画面に配置する、
血管採取システム。
【請求項2】
前記超音波送受信部は、
前記超音波送受信部から延びている前記外周面の法線よりも前記剥離部の側に、前記超音波を照射する、
請求項1に記載の血管採取システム。
【請求項3】
前記表示デバイスは、
前記超音波画像中の血管を中心とする所定の大きさの半径を有する円弧状のラインを、剥離位置ガイドラインとして前記内視鏡画像中に表示する、
請求項2に記載の血管採取システム。
【請求項4】
前記血管採取システムの操作者の入力操作を受け付ける入力デバイスを更に備え、
前記入力デバイスは、前記剥離位置ガイドラインの半径の設定値の入力を受け付ける剥離位置ガイドライン半径設定部を備え、
前記表示デバイスは、
前記剥離位置ガイドライン半径設定部に入力された前記設定値の半径を有する前記剥離位置ガイドラインを前記内視鏡画像中に表示する、
請求項3に記載の血管採取システム。
【請求項5】
前記剥離デバイスは、音響媒体としての生理食塩水を生体内に供給する音響媒体供給部を備える、
請求項1に記載の血管採取システム。
【請求項6】
前記表示デバイスが前記超音波画像を前記表示画面に表示する期間中に、採取される血管内に圧力をかける血管加圧デバイスを更に備える、
請求項1に記載の血管採取システム。
【請求項7】
採取される血管の外周面から径方向に延びている側枝の止血および切断を行う切離デバイスを更に備え、
前記切離デバイスは、側枝の止血を行うクリップ処理部と、側枝の切断を行う剪刀部と
を備える、
請求項1に記載の血管採取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管採取システムに関する。
本願は、2018年12月19日に、日本に出願された特願2018-237433号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
静脈グラフトは、例えば冠動脈バイパス術において使用される代用血管であり、静脈グラフトとして、例えば大伏在静脈(SVG:saphenous vein graft)が用いられる。グラフトを採取する手法には、これまで一般的であった皮膚を切開してグラフトを採取する手法(OVH:Open Vessel Harvesting)(第1従来手法)がある。また、グラフトを採取する他の手法には、内視鏡を用いる手法(EVH:Endoscopic Vessel Harvesting)(第2従来手法)がある。EVHには、創トラブル(創感染やリンパ瘻など)が少ない、美容面に優れるなどの利点がある。
【0003】
現行のEVHデバイスを使用する手法(第2従来手法)では、SVGが周囲の脂肪組織から剥離され、SVGのみが採取される。この手法では、例えばEVHデバイスの操作者が、まず、皮膚に小切開を置き、直下のSVGを確保する。次いで、EVHデバイスの操作者は、内視鏡の先端部に取り付けられた、光透過性を有する先細り形状の剥離子によって、例えば、SVGの上側に位置する周囲の脂肪組織を、SVGの外周面の上側部分から剥離する。また、EVHデバイスの操作者は、SVGの下側に位置する周囲の脂肪組織を、SVGの外周面の下側部分から剥離する。また、EVHデバイスの操作者は、SVGの左側に位置する周囲の脂肪組織を、SVGの外周面の左側部分から剥離する。また、EVHデバイスの操作者は、SVGの右側に位置する周囲の脂肪組織を、SVGの外周面の右側部分から剥離する。その結果、SVGは、SVGの外周面から径方向に延びている側枝を介して、周囲の脂肪組織からぶら下がった状態になる。次いで、切離デバイスの操作者は、切離デバイスを内視鏡に平行に生体内に挿入し、切離デバイスによって側枝を切離する側枝処理を実行する。
【0004】
上述した第1従来手法および第2従来手法では、SVGがむき出しの状態で採取されるため、グラフト損傷、グラフトに高圧をかけて拡張させる処理に伴う内膜の損傷などが引き起こされることに伴って、例えばグラフト開存率などのようなSVGの質が低下してしまうおそれがあり、第1従来手法および第2従来手法の問題点として指摘されている。そこで、SVGに触れることなく、SVG(の本幹)が周囲の脂肪組織に覆われている状態でSVGを採取するno touch法(pedicle法)が用いられることがある。
no touch法では、上述したように、SVGに触れることなく、SVG(の本幹)が、周囲の脂肪組織に覆われている状態で採取され、グラフトに高圧をかけて静脈を拡張させる処理も行わないため、血管内皮の障害が少なくなり、周囲の脂肪組織からSVGへの血管内皮保護物質の作用が期待され、グラフト開存率の向上が期待される。一方、no touch法では、皮膚が切開されるため、術後の創トラブルが多いなどの問題がある。
【0005】
そこで、従来においては、EVHによるno touch法が試みられている。現段階におけるEVHによるno touch法では、操作者は、従来のデバイスを用いて、SVGが見えていない内視鏡画像に基づいて内視鏡を操作し、SVG(の本幹)が周囲の脂肪組織に覆われている状態でSVGを採取する必要がある。つまり、現段階におけるEVHによるno touch法は、難易度がかなり高く、普及するのが難しいと言える。
【0006】
また従来から、血管をその周辺組織とともに採取する剥離デバイスが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、剥離デバイスは、撮像デバイス(例えば内視鏡)が挿入可能な挿入ルーメンを有する把持部と、把持部の先端部に設けられた剥離部材とを備えている。剥離部材は、血管から分岐した分岐血管(側枝)に所定の処理を行う処理部が設けられた剥離部と、剥離部から剥離部の厚さ方向に突出した突出部とを有する。
ところで、特許文献1に記載された技術では、撮像デバイスによって例えば内視鏡画像が得られるものの、血管は、周辺組織によって覆われている。そのため、血管は、例えば内視鏡画像のような、撮像デバイスによって得られる画像に映らない。従って、特許文献1に記載された剥離デバイスの操作者は、血管の位置を把握できない状態で、剥離デバイスを操作しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-153606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した問題点に鑑み、本発明は、剥離デバイスの操作時に周囲組織に覆われた血管の位置を把握することができる血管採取システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、剥離デバイスと表示デバイスとを備え、周囲組織に覆われた状態で血管を採取する血管採取システムであって、前記剥離デバイスは、生体内に挿入されるロッド部と、前記ロッド部の先端部に配置され、光透過性を有する先細り形状の剥離部と、前記ロッド部内に配置され、前記剥離部を介して生体内の内視鏡画像を撮像する内視鏡部と、前記ロッド部の外周面に配置され、生体内に超音波を照射し、生体内からの反射波を受信する超音波送受信部とを備え、前記剥離部は、血管の周囲組織の剥離を行い、前記表示デバイスは、周囲組織の画像を含む前記内視鏡画像と、血管の画像を含む前記超音波送受信部によって受信された反射波に基づいて生成された超音波画像とが表示される表示画面を備え、前記表示デバイスは、前記内視鏡画像の縮尺と前記超音波画像との縮尺とを一致させ、かつ、前記内視鏡画像と前記超音波画像とを並べて同時に前記表示画面に表示すると共に、生体内の所定位置を示す前記内視鏡画像中の点と、前記所定位置を示す前記超音波画像中の点とが前記表示画面上で一致するように、前記内視鏡画像と前記超音波画像とを前記表示画面に配置する、血管採取システムである。
【0010】
本発明の一態様の血管採取システムでは、前記超音波送受信部は、前記超音波送受信部から延びている前記外周面の法線よりも前記剥離部の側に、前記超音波を照射してもよい。
【0011】
本発明の一態様の血管採取システムでは、前記表示デバイスは、前記超音波画像中の血管を中心とする所定の大きさの半径を有する円弧状のラインを、剥離位置ガイドラインとして前記内視鏡画像中に表示してもよい。
【0012】
本発明の一態様の血管採取システムは、前記血管採取システムの操作者の入力操作を受け付ける入力デバイスを更に備え、前記入力デバイスは、前記剥離位置ガイドラインの半径の設定値の入力を受け付ける剥離位置ガイドライン半径設定部を備え、前記表示デバイスは、前記剥離位置ガイドライン半径設定部に入力された前記設定値の半径を有する前記剥離位置ガイドラインを前記内視鏡画像中に表示してもよい。
【0013】
本発明の一態様の血管採取システムでは、前記剥離デバイスは、音響媒体としての生理食塩水を生体内に供給する音響媒体供給部を備えてもよい。
【0014】
本発明の一態様の血管採取システムは、前記表示デバイスが前記超音波画像を前記表示画面に表示する期間中に、採取される血管内に圧力をかける血管加圧デバイスを更に備えてもよい。血管加圧デバイスは、例えば、血管内に圧力をかけることに伴う血管内皮の損傷を回避するために、動脈に穿刺したラインから動脈圧で血液を流す程度の加圧を行うことが好ましい。
【0015】
本発明の一態様の血管採取システムは、採取される血管の外周面から径方向に延びている側枝の止血および切断を行う切離デバイスを更に備え、前記切離デバイスは、側枝の止血を行うクリップ処理部と、側枝の切断を行う剪刀部とを備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、剥離デバイスの操作時に周囲組織に覆われた血管の位置を把握することができる血管採取システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の血管採取システムの構成の一例を示す図である。
図2図1に示す剥離デバイスの全体構成の一例を示す図である。
図3】超音波送受信部から照射される超音波の照射方向の一例を示す図である。
図4】均一な厚さの周囲組織に覆われた状態で血管を採取するために設定される剥離位置の一例を説明するための図である。
図5A】剥離デバイスの剥離部によって周囲組織の上側部分が剥離位置で剥離される場合における血管と剥離デバイスの超音波送受信部との関係の一例を示す図である。
図5B】剥離デバイスの剥離部によって周囲組織の下側部分が剥離位置で剥離される場合における血管と剥離デバイスの超音波送受信部との関係の一例を示す図である。
図5C】剥離デバイスの剥離部によって周囲組織の左側部分が剥離位置で剥離される場合における血管と剥離デバイスの超音波送受信部との関係の一例を示す図である。
図5D】剥離デバイスの剥離部によって周囲組織の右側部分が剥離位置で剥離される場合における血管と剥離デバイスの超音波送受信部との関係の一例を示す図である。
図6A図5Aに示す周囲組織の上側部分の剥離位置に剥離デバイスの剥離部を位置させる操作が行われる時に、表示デバイスの表示画面に表示される内視鏡画像および超音波画像の一例を示す図である。
図6B図5Bに示す周囲組織の下側部分の剥離位置に剥離デバイスの剥離部を位置させる操作が行われる時に、表示デバイスの表示画面に表示される内視鏡画像および超音波画像の一例を示す図である。
図6C図5Cに示す周囲組織の左側部分の剥離位置に剥離デバイスの剥離部を位置させる操作が行われる時に、表示デバイスの表示画面に表示される内視鏡画像および超音波画像の一例を示す図である。
図6D図5Dに示す周囲組織の右側部分の剥離位置に剥離デバイスの剥離部を位置させる操作が行われる時に、表示デバイスの表示画面に表示される内視鏡画像および超音波画像の一例を示す図である。
図7A】剥離位置ガイドラインの半径が第1設定値に設定された場合に表示デバイスの表示画面に表示される内視鏡画像および超音波画像の一例を示す図である。
図7B】剥離位置ガイドラインの半径が第2設定値(>第1設定値)に設定された場合に表示デバイスの表示画面に表示される内視鏡画像および超音波画像の一例を示す図である。
図8】第2実施形態の血管採取システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の血管採取システムの実施形態について説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の血管採取システム10の構成の一例を示す図である。図2図1に示す剥離デバイスAの全体構成の一例を示す図である。
図1および図2に示す例では、第1実施形態の血管採取システム10が、例えば大伏在静脈などのような代用血管として使用される血管GR(図3参照)を、均一な厚さの周囲組織SR(図3参照)に覆われた状態で採取するために用いられる。血管採取システム10が、剥離デバイスAと、表示デバイスBと、入力デバイスCと、血管加圧デバイスDと、切離デバイスEと、制御ユニットFとを備えている。
剥離デバイスAは、血管GRの周囲組織SRの剥離などを行う。剥離デバイスAは、ロッド部A1と、剥離部A2と、内視鏡部A3と、超音波送受信部A4と、音響媒体供給部A5と、把持部A6とを備えている。
ロッド部A1は、皮膚の小切開から生体内IV(図3参照)に挿入される部分である。
図1および図2に示す例では、ロッド部A1が概略円柱形状である(円形の断面形状を有する)が、他の例では、ロッドA1が、例えば特許文献1のベース部と同様に、扁平形状であってもよい(楕円形の断面形状を有してもよい)。
【0020】
図1および図2に示す例では、剥離部A2は、光透過性を有する材料によって、先細り形状(例えば概略円錐形状)に形成されている。剥離部A2は、ロッド部A1の先端部A11に配置されている。剥離部A2は頂部A21を備えている。
内視鏡部A3は、ロッド部A1の内部に配置されている。内視鏡部A3は、剥離部A2を介して生体内の内視鏡画像B11を撮像する。内視鏡部A3は、内視鏡用の撮像デバイスである。内視鏡部A3は、生体内IVに照明光を照射する照明部(図示せず)と、照明光によって照らされた生体内IVの画像(内視鏡画像B11)を撮像するカメラ部(図示せず)とを備えている。剥離部A2の頂部A21は、例えばカメラ部の中心軸(光軸)上に配置されている。
超音波送受信部A4は、ロッド部A1の外周面A12に配置されている。超音波送受信部A4は、生体内IVに超音波US(図3参照)を照射し、生体内IVからの反射波を受信する振動子ユニット(図示せず)を備えている。
【0021】
図3は超音波送受信部A4から照射される超音波USの照射方向の一例を示す図である。
図3に示す例では、超音波送受信部A4から照射される超音波USの照射方向が、例えば音響レンズ(図示せず)などによって、剥離デバイスAの進行方向(図3の右側)に設定されている。詳細には、超音波送受信部A4は、超音波送受信部A4から延びているロッド部A1の外周面A12の法線A12Lよりも剥離部A2の側(図3の右側)に、超音波USを照射する。
図3において、SBは、採取される血管GRの外周面から径方向に延びている側枝を示している。SRCは、剥離部A2が血管GRの周囲組織SRを剥離することによって生体内IVに形成された空洞部分を示している。
図3に示す例では、上述したように、超音波送受信部A4が、超音波送受信部A4から延びているロッド部A1の外周面A12の法線A12Lよりも剥離部A2の側に超音波USを照射するが、他の例では、超音波送受信部A4が、図3に示す例とは異なる向きに超音波USを照射してもよい。
【0022】
図1および図2に示す例では、音響媒体供給部A5は、超音波送受信部A4から照射された超音波USが伝搬する音響媒体としての例えば生理食塩水を生体内IVに供給する。把持部A6は、剥離デバイスAの操作者によって把持される。
他の例では、剥離デバイスAが音響媒体供給部A5を備えていなくてもよい。
【0023】
図1および図2に示す例では、制御ユニットFが、超音波送受信部A4によって受信された生体内IVからの反射波に基づいて、生体内IVの超音波画像B12を生成する。詳細には、制御ユニットFは、生体内IVからの反射波に対する輝度変調などの処理を行うことによって、生体内IVの超音波画像B12を生成する。
表示デバイスBは、内視鏡部A3によって撮像された内視鏡画像B11と、制御ユニットFによって生成された超音波画像B12とを表示する。表示デバイスBは、内視鏡画像B11と超音波画像B12とが表示される表示画面B1を備えている。また、表示デバイスBは、内視鏡画像B11と超音波画像B12との境界線B13を表示画面B1に表示する。
剥離デバイスAの操作者は、表示画面B1に表示される内視鏡画像B11を見ることによって、剥離部A2によって剥離すべき周囲組織SRの位置、方向などを把握することができる。剥離デバイスAの操作者は、表示画面B1に表示される内視鏡画像B11および超音波画像B12を見ることによって、血管GRおよび側枝SBの位置と、血管GRに付着した状態で残すべき周囲組織SRの厚さとを把握しながら、剥離処理を進めることができる。
【0024】
図4は均一な厚さの周囲組織SRに覆われた状態で血管GRを採取するために設定される剥離位置SRPの一例を説明するための図である。
図4に示す例では、均一な厚さ(例えば5mmの厚さ)の周囲組織SRに覆われた状態で血管GRを採取するために、剥離デバイスAの剥離部A2によって周囲組織SRの剥離が行われる位置である剥離位置SRPが、血管GRを中心とする円筒面上に設定されている。
図4において、SRTは、周囲組織SRの剥離位置SRPのうちの、血管GRの上側に位置する上側部分を示している。SRBは、周囲組織SRの剥離位置SRPのうちの、血管GRの下側に位置する下側部分を示している。SRLは、周囲組織SRの剥離位置SRPのうちの、血管GRの左側に位置する左側部分を示している。SRRは、周囲組織SRの剥離位置SRPのうちの、血管GRの右側に位置する右側部分を示している。
【0025】
図5Aは剥離デバイスAの剥離部A2によって周囲組織SRの上側部分SRTが剥離位置SRPで剥離される場合における血管GRと剥離デバイスAの超音波送受信部A4との関係の一例を示す図である。
図5Aに示す例では、剥離デバイスAの剥離部A2によって周囲組織SRの上側部分SRTが剥離位置SRPで剥離される場合に、超音波送受信部A4が、剥離部A2の頂部A21よりも下側に位置し、かつ、血管GRに対向するように、剥離デバイスAが、剥離デバイスAの操作者によって操作される。
【0026】
図6A図5Aに示す周囲組織SRの上側部分SRTの剥離位置SRPに剥離デバイスAの剥離部A2を位置させる操作が行われる時に、表示デバイスBの表示画面B1に表示される内視鏡画像B11および超音波画像B12の一例を示す図である。
図1および図6Aに示す例では、表示デバイスBが、内視鏡画像B11の縮尺と超音波画像B12との縮尺とを一致させ、かつ、内視鏡画像B11と超音波画像B12とを並べて同時に表示画面B1に表示する。また、表示デバイスBは、生体内IVの所定位置を示す内視鏡画像B11中の点B11Aと、その所定位置を示す超音波画像B12中の点B12Aとが表示画面B1上で一致するように、内視鏡画像B11と超音波画像B12とを表示画面B1に配置する。
詳細には、図6Aに示す例では、剥離デバイスAの内視鏡部A3のカメラ部の中心軸(光軸)上に配置されている剥離部A2の頂部A21と、周囲組織SRに覆われた血管GRとが、表示デバイスBの表示画面B1に同時に表示される。そのため、剥離デバイスAの操作者は、周囲組織SRに覆われた血管GRの位置を把握しながら(つまり、血管GRと剥離デバイスAの剥離部A2との距離を把握しながら)、剥離部A2による周囲組織SRの上側部分SRTの剥離の処理を行うことができる。
すなわち、図6Aに示す例では、剥離デバイスAの操作者は、周囲組織SRに覆われた血管GRの位置を把握しながら、剥離デバイスAを操作することによって、採取される血管GRの外周面の上側部分を覆う周囲組織SRの上側部分SRTの厚さを均一にすることができる。
【0027】
また、図1および図6Aに示す例では、表示デバイスBが、超音波画像B12中の血管GRを中心とする所定の大きさの半径を有する円弧状のラインを、剥離位置ガイドラインB11Gとして内視鏡画像B11中に表示する。
他の例では、剥離位置ガイドラインB11Gが内視鏡画像B11中に表示されなくてもよい。
【0028】
図6Aに示す例では、内視鏡画像B11中に表示されている剥離部A2(図1および図2参照)の頂部A21が、剥離位置ガイドラインB11Gよりも上側に位置する。そのため、剥離デバイスAの操作者は、剥離部A2を下側に移動させて、剥離部A2による周囲組織SRの上側部分SRTの剥離の処理を行う必要がある旨を把握することができる。
【0029】
図5Bは剥離デバイスAの剥離部A2によって周囲組織SRの下側部分SRBが剥離位置SRPで剥離される場合における血管GRと剥離デバイスAの超音波送受信部A4との関係の一例を示す図である。
図5Bに示す例では、剥離デバイスAの剥離部A2によって周囲組織SRの下側部分SRBが剥離位置SRPで剥離される場合に、超音波送受信部A4が、剥離部A2の頂部A21よりも上側に位置し、かつ、血管GRに対向するように、剥離デバイスAが、剥離デバイスAの操作者によって操作される。
【0030】
図6B図5Bに示す周囲組織SRの下側部分SRBの剥離位置SRPに剥離デバイスAの剥離部A2を位置させる操作が行われる時に、表示デバイスBの表示画面B1に表示される内視鏡画像B11および超音波画像B12の一例を示す図である。
図1および図6Bに示す例では、図6Aに示す例と同様に、表示デバイスBが、内視鏡画像B11の縮尺と超音波画像B12との縮尺とを一致させ、かつ、内視鏡画像B11と超音波画像B12とを並べて同時に表示画面B1に表示する。また、表示デバイスBは、生体内IVの所定位置を示す内視鏡画像B11中の点B11Bと、その所定位置を示す超音波画像B12中の点B12Bとが表示画面B1上で一致するように、内視鏡画像B11と超音波画像B12とを表示画面B1に配置する。
詳細には、図6Bに示す例では、剥離デバイスAの内視鏡部A3のカメラ部の中心軸(光軸)上に配置されている剥離部A2の頂部A21と、周囲組織SRに覆われた血管GRとが、表示デバイスBの表示画面B1に同時に表示される。そのため、剥離デバイスAの操作者は、周囲組織SRに覆われた血管GRの位置を把握しながら(つまり、血管GRと剥離デバイスAの剥離部A2との距離を把握しながら)、剥離部A2による周囲組織SRの下側部分SRBの剥離の処理を行うことができる。
すなわち、図6Bに示す例では、剥離デバイスAの操作者は、周囲組織SRに覆われた血管GRの位置を把握しながら、剥離デバイスAを操作することによって、採取される血管GRの外周面の下側部分を覆う周囲組織SRの下側部分SRBの厚さを均一にすることができる。
【0031】
また、図1および図6Bに示す例では、図6Aに示す例と同様に、表示デバイスBが、超音波画像B12中の血管GRを中心とする所定の大きさの半径を有する円弧状のラインを、剥離位置ガイドラインB11Gとして内視鏡画像B11中に表示する。
他の例では、剥離位置ガイドラインB11Gが内視鏡画像B11中に表示されなくてもよい。
【0032】
図6Bに示す例では、内視鏡画像B11中に表示されている剥離部A2(図1および図2参照)の頂部A21が、剥離位置ガイドラインB11Gよりも上側に位置する。そのため、剥離デバイスAの操作者は、剥離部A2を下側に移動させて、剥離部A2による周囲組織SRの下側部分SRBの剥離の処理を行う必要がある旨を把握することができる。
【0033】
図5Cは剥離デバイスAの剥離部A2によって周囲組織SRの左側部分SRLが剥離位置SRPで剥離される場合における血管GRと剥離デバイスAの超音波送受信部A4との関係の一例を示す図である。
図5Cに示す例では、剥離デバイスAの剥離部A2によって周囲組織SRの左側部分SRLが剥離位置SRPで剥離される場合に、超音波送受信部A4が、剥離部A2の頂部A21よりも右側に位置し、かつ、血管GRに対向するように、剥離デバイスAが、剥離デバイスAの操作者によって操作される。
【0034】
図6C図5Cに示す周囲組織SRの左側部分SRLの剥離位置SRPに剥離デバイスAの剥離部A2を位置させる操作が行われる時に、表示デバイスBの表示画面B1に表示される内視鏡画像B11および超音波画像B12の一例を示す図である。
図1および図6Cに示す例では、図6Aに示す例と同様に、表示デバイスBが、内視鏡画像B11の縮尺と超音波画像B12との縮尺とを一致させ、かつ、内視鏡画像B11と超音波画像B12とを並べて同時に表示画面B1に表示する。また、表示デバイスBは、生体内IVの所定位置を示す内視鏡画像B11中の点B11Cと、その所定位置を示す超音波画像B12中の点B12Cとが表示画面B1上で一致するように、内視鏡画像B11と超音波画像B12とを表示画面B1に配置する。
詳細には、図6Cに示す例では、剥離デバイスAの内視鏡部A3のカメラ部の中心軸(光軸)上に配置されている剥離部A2の頂部A21と、周囲組織SRに覆われた血管GRとが、表示デバイスBの表示画面B1に同時に表示される。そのため、剥離デバイスAの操作者は、周囲組織SRに覆われた血管GRの位置を把握しながら(つまり、血管GRと剥離デバイスAの剥離部A2との距離を把握しながら)、剥離部A2による周囲組織SRの左側部分SRLの剥離の処理を行うことができる。
すなわち、図6Cに示す例では、剥離デバイスAの操作者は、周囲組織SRに覆われた血管GRの位置を把握しながら、剥離デバイスAを操作することによって、採取される血管GRの外周面の左側部分を覆う周囲組織SRの左側部分SRLの厚さを均一にすることができる。
【0035】
また、図1および図6Cに示す例では、図6Aに示す例と同様に、表示デバイスBが、超音波画像B12中の血管GRを中心とする所定の大きさの半径を有する円弧状のラインを、剥離位置ガイドラインB11Gとして内視鏡画像B11中に表示する。
他の例では、剥離位置ガイドラインB11Gが内視鏡画像B11中に表示されなくてもよい。
【0036】
図6Cに示す例では、内視鏡画像B11中に表示されている剥離部A2(図1および図2参照)の頂部A21が、剥離位置ガイドラインB11G上に位置する。そのため、剥離デバイスAの操作者は、現在の位置の剥離部A2によって、周囲組織SRの左側部分SRLの剥離の処理を行えばよい旨を把握することができる。
【0037】
図5Dは剥離デバイスAの剥離部A2によって周囲組織SRの右側部分SRRが剥離位置SRPで剥離される場合における血管GRと剥離デバイスAの超音波送受信部A4との関係の一例を示す図である。
図5Dに示す例では、剥離デバイスAの剥離部A2によって周囲組織SRの右側部分SRRが剥離位置SRPで剥離される場合に、超音波送受信部A4が、剥離部A2の頂部A21よりも左側に位置し、かつ、血管GRに対向するように、剥離デバイスAが、剥離デバイスAの操作者によって操作される。
【0038】
図6D図5Dに示す周囲組織SRの右側部分SRRの剥離位置SRPに剥離デバイスAの剥離部A2を位置させる操作が行われる時に、表示デバイスBの表示画面B1に表示される内視鏡画像B11および超音波画像B12の一例を示す図である。
図1および図6Dに示す例では、図6Aに示す例と同様に、表示デバイスBが、内視鏡画像B11の縮尺と超音波画像B12との縮尺とを一致させ、かつ、内視鏡画像B11と超音波画像B12とを並べて同時に表示画面B1に表示する。また、表示デバイスBは、生体内IVの所定位置を示す内視鏡画像B11中の点B11Dと、その所定位置を示す超音波画像B12中の点B12Dとが表示画面B1上で一致するように、内視鏡画像B11と超音波画像B12とを表示画面B1に配置する。
詳細には、図6Dに示す例では、剥離デバイスAの内視鏡部A3のカメラ部の中心軸(光軸)上に配置されている剥離部A2の頂部A21と、周囲組織SRに覆われた血管GRとが、表示デバイスBの表示画面B1に同時に表示される。そのため、剥離デバイスAの操作者は、周囲組織SRに覆われた血管GRの位置を把握しながら(つまり、血管GRと剥離デバイスAの剥離部A2との距離を把握しながら)、剥離部A2による周囲組織SRの右側部分SRRの剥離の処理を行うことができる。
すなわち、図6Dに示す例では、剥離デバイスAの操作者は、周囲組織SRに覆われた血管GRの位置を把握しながら、剥離デバイスAを操作することによって、採取される血管GRの外周面の右側部分を覆う周囲組織SRの右側部分SRRの厚さを均一にすることができる。
【0039】
また、図1および図6Dに示す例では、図6Aに示す例と同様に、表示デバイスBが、超音波画像B12中の血管GRを中心とする所定の大きさの半径を有する円弧状のラインを、剥離位置ガイドラインB11Gとして内視鏡画像B11中に表示する。
他の例では、剥離位置ガイドラインB11Gが内視鏡画像B11中に表示されなくてもよい。
【0040】
図6Dに示す例では、内視鏡画像B11中に表示されている剥離部A2(図1および図2参照)の頂部A21が、剥離位置ガイドラインB11Gよりも右側に位置する。そのため、剥離デバイスAの操作者は、剥離部A2を左側に移動させて、剥離部A2による周囲組織SRの右側部分SRRの剥離の処理を行う必要がある旨を把握することができる。
【0041】
図1に示す例では、入力デバイスCが、血管採取システム10の操作者の入力操作を受け付ける。入力デバイスCは半径設定部C1を備えている。半径設定部C1は、例えば剥離デバイスAの操作者による、剥離位置ガイドラインB11G(図6A等参照)の半径の設定値の入力を受け付ける。
他の例では、入力デバイスCが半径設定部C1を備えていなくてもよい。
【0042】
図7Aは剥離位置ガイドラインB11Gの半径が第1設定値に設定された場合に表示デバイスBの表示画面B1に表示される内視鏡画像B11および超音波画像B12の一例を示す図である。図7Bは剥離位置ガイドラインB11Gの半径が第2設定値(>第1設定値)に設定された場合に表示デバイスBの表示画面B1に表示される内視鏡画像B11および超音波画像B12の一例を示す図である。
図1および図7Aに示す例では、剥離位置ガイドラインB11Gの半径が、入力デバイスCの半径設定部C1を介して、第1設定値に設定されている。表示デバイスBは、半径設定部C1に入力された第1設定値の半径を有する剥離位置ガイドラインB11Gを内視鏡画像B11中に表示する。そのため、剥離デバイスAの操作者は、第1設定値の半径を有する概略円柱形状の周囲組織SRに覆われた状態で血管GRを採取するために、剥離部A2を下側(図7Aの下側)に移動させる必要がある旨を把握することができる。
図1および図7Bに示す例では、剥離位置ガイドラインB11Gの半径が、入力デバイスCの半径設定部C1を介して、第2設定値(>第1設定値)に設定されている。表示デバイスBは、半径設定部C1に入力された第2設定値の半径を有する剥離位置ガイドラインB11Gを内視鏡画像B11中に表示する。そのため、剥離デバイスAの操作者は、第2設定値の半径を有する概略円柱形状の周囲組織SRに覆われた状態で血管GRを採取するために、剥離部A2を上側(図7Bの上側)に移動させる必要がある旨を把握することができる。
【0043】
図1に示す例では、血管加圧デバイスDは、表示デバイスBが超音波画像B12を表示画面B1に表示する期間中に、採取される血管GR内に圧力をかける。例えば、大伏在静脈が採取される場合には、超音波画像B12中の大伏在静脈の視認性を向上させるために、創部でカニュレーションが行われ、大腿動脈に留置したシースから延長したカテーテルをつなぐことによって、動脈圧をかけた血流が大伏在静脈に流される。
他の例では、血管採取システム10が血管加圧デバイスDを備えていなくてもよい。
【0044】
図1に示す例では、切離デバイスEが、側枝SB(図3参照)の止血および切断(側枝処理)を行う止血・切断処理部E3を備えている。止血・切断処理部E3は、例えばバイポーラ構造の一対の電極を備えている。
ある程度の太さを有する側枝SBは、周囲組織SRに埋もれていても超音波画像B12に表示されるため、剥離デバイスAの操作者は、表示画面B1に表示される超音波画像B12を見ることによって、止血・切断処理が必要な側枝SBを内視鏡画像に現れる前に把握することができる。これにより思わぬ側枝SBの出現が少なくなり、側枝SBおよび血管GRの損傷が低減される。
【0045】
<第1実施形態のまとめ>
第1実施形態の血管採取システム10では、上述したように、内視鏡部A3によって撮像された生体内IVの内視鏡画像B11と、超音波送受信部A4によって受信された反射波に基づいて生成された超音波画像B12とが、並べられて同時に表示される。そのため、剥離デバイスAの操作者は、超音波画像B12を見ることによって、周囲組織SRに覆われた血管GRの位置を把握しつつ、内視鏡画像B11を見ながら、周囲組織SRの剥離処理を進めることができる。その結果、剥離デバイスAの操作者は、均一な厚さの周囲組織SRに覆われた状態で血管GRを採取することができる。
また、第1実施形態の血管採取システム10では、上述したように、超音波送受信部A4は、超音波送受信部A4から延びているロッド部A1の外周面A12の法線A12Lよりも剥離部A2の側(図3の右側)に超音波USを照射する。そのため、表示デバイスBは、生体内IVのうちの、内視鏡画像B11に含まれる位置に隣接する位置の超音波画像B12を表示することができる。
【0046】
また、第1実施形態の血管採取システム10では、上述したように、表示デバイスBが、超音波画像B12中の血管GRを中心とする所定の大きさの半径を有する円弧状のラインを、剥離位置ガイドラインB11Gとして内視鏡画像B11中に表示する。そのため、血管採取システム10は、剥離位置ガイドラインB11Gが表示されない場合よりも、剥離デバイスAの操作者による周囲組織SRの剥離処理の難易度を低減することができる。
また、第1実施形態の血管採取システム10では、上述したように、表示デバイスBは、半径設定部C1に入力された設定値の半径を有する剥離位置ガイドラインB11Gを内視鏡画像B11中に表示する。そのため、表示デバイスBは、半径設定部C1に対する設定値の入力に応じて、異なる大きさの半径を有する剥離位置ガイドラインB11Gを内視鏡画像B11中に表示することができる。
【0047】
また、第1実施形態の血管採取システム10では、上述したように、音響媒体供給部A5は、超音波送受信部A4から照射された超音波USが伝搬する音響媒体としての例えば生理食塩水を生体内IVに供給する。そのため、音響媒体が生体内IVに供給されない場合よりも、超音波画像B12を明瞭にすることができる。
また、第1実施形態の血管採取システム10では、上述したように、血管加圧デバイスDは、表示デバイスBが超音波画像B12を表示画面B1に表示する期間中に、採取される血管GR内に圧力をかける。そのため、表示デバイスBが超音波画像B12を表示画面B1に表示する期間中に血管GRが潰れてしまうおそれを抑制することができる。その結果、表示デバイスBは、採取される血管GR内に圧力がかけられない場合よりも、超音波画像B12中の血管GRを明瞭に表示することができる。
【0048】
[第2実施形態]
以下、本発明の血管採取システムの第2実施形態について、図面を参照して説明する。
第2実施形態の血管採取システム10は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の血管採取システム10と同様に構成されている。従って、第2実施形態の血管採取システム10によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の血管採取システム10と同様の効果を奏することができる。
【0049】
図8は第2実施形態の血管採取システム10の構成の一例を示す図である。
図1に示す例では、切離デバイスEが、側枝SB(図3参照)の止血および切断(側枝処理)を行う止血・切断処理部E3を備えているが、図8に示す例では、切離デバイスEが、クリップ処理部E1と、剪刀部E2とを備えている。
図8に示す例では、クリップ処理部E1と剪刀部E2とによって側枝処理が行われる。詳細には、クリップ処理部E1は、側枝SBの止血を行う。剪刀部E2は、剪刀部E2の両側のクリップ処理部E1によって側枝SBの止血が行われている状態で、側枝SBの切断を行う。
【0050】
上述したように、これまでEVHでは創トラブルや美容面において利点があったものの、グラフト損傷やグラフト開存率において問題が指摘される面もあった。一方で、no touch法は、静脈グラフトの開存率の向上を期待させる方法であるが、現時点では、皮膚を切開する採取方法が主流であり、創トラブルや美容面で不利な点がある。EVHによるno touch法がこのような新規なデバイスにより簡易にできるようになれば、この両面において利点が得られ、患者利益につながり、発展していくのではないかと考えられる。
なお、EVH、no touch法ともに本邦ではまだ広く一般に普及している状況ではないが、主に米国ではEVHは広く一般に普及しており、海外展開も期待できるものと思われる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…血管採取システム、A…剥離デバイス、A1…ロッド部、A11…先端部、A12…外周面、A12L…法線、A2…剥離部、A21…頂部、A3…内視鏡部、A4…超音波送受信部、A5…音響媒体供給部、A6…把持部、B…表示デバイス、B1…表示画面、B11…内視鏡画像、B11A、B11B、B11C、B11D…点、B11G…剥離位置ガイドライン、B12…超音波画像、B12A、B12B、B12C、B12D…点、B13…境界線、C…入力デバイス、C1…半径設定部、D…血管加圧デバイス、E…切離デバイス、E1…クリップ処理部、E2…剪刀部、E3…止血・切断処理部、F…制御ユニット、IV…生体内、GR…血管、SB…側枝、SR…周囲組織、SRT…上側部分、SRB…下側部分、SRL…左側部分、SRR…右側部分、SRP…剥離位置、SRC…空洞部分、US…超音波
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8