(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】健康器具
(51)【国際特許分類】
A63B 23/04 20060101AFI20240220BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A63B23/04 Z
A61H1/02 N
(21)【出願番号】P 2021170767
(22)【出願日】2021-10-19
【審査請求日】2023-07-12
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】521458568
【氏名又は名称】株式会社みどりの丘
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】山岸 克也
【審査官】上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-279479(JP,A)
【文献】登録実用新案第3134642(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0110604(US,A1)
【文献】特開2017-023209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 21/00 - 23/10
A61H 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下肢機能訓練を行うため、
利用者が接触しない場合には正規状態を保持し、利用者が接触した場合に揺動して、正規状態に戻る健康器具であって、
少なくとも足上げ動作を行うための、
棒状、又は、縦向きに板状の長尺物と、
当該長尺物の両端を保持する、一対の側端部材と、
当該一対の側端部材の所定箇所を重心とし、前記足上げ動作の方向に沿って、揺動させる揺動部材と、
を備え、
前記揺動部材が、前記一対の側端部材の間に連結されてなる所定重量物であることを特徴とする健康器具。
【請求項2】
前記長尺物が、木質材料、ゴム材料、樹脂材料、紙材料、繊維材料、セラミック材料の少なくとも一つから構成してあることを特徴とする請求項1に記載の健康器具。
【請求項3】
前記長尺物の長さを可変とするための、長さ収縮機構及び折り曲げ機構、あるいは、いずれか一方を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の健康器具。
【請求項4】
前記長尺物が、前記一対の側端部材に対して、脱着可能であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の健康器具。
【請求項5】
前記長尺物の、前記一対の側端部材に対する取り付け位置が可変であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の健康器具。
【請求項6】
前記揺動部材が、
棒状又は厚板状であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の健康器具。
【請求項7】
前記揺動部材が、前記一対の側端部材に対して、脱着可能であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の健康器具。
【請求項8】
前記一対の側端部材を側方から眺めた場合の形状が、円形、半円形、扇形、楕円形、三日月、8角形以上の多角形、ひょうたん形、卵形、花弁形の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の健康器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康器具に関する。特に、高齢者等の下肢機能訓練において、自立性等に優れると共に、簡易構造の健康器具に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や、身体に異変が生じてなる歩行障害者等の場合、腸腰筋が弱って、下肢機能が低下し、ひいては、足を上げて、所定物を跨ぐような動作が困難になることが多い。
かかる下肢機能の低下は、階段昇降動作の遅延や、床に置かれた所定物をつまずいで避ける動作の低下につながり、そのため、階段から落下したり、あるいは、転倒して、骨折したりする等の深刻な原因になっていた。
【0003】
そこで、高齢者等に対する下肢機能訓練のための健康器具が、各種提案されている。
より具体的には、
図10(a)に示すように、三角形状の運動支援器具101を、底辺が床に接するようにかつ頂点が鉛直上方を向くように、床上に設置する上下肢の運動支援器具である(例えば、特許文献1参照)。
かかる、上下肢の運動支援器具101の頂点上方を、椅子に座った状態で、利用者103が、足で振り跨ぐことで、上下肢の運動支援を行うことができる。
【0004】
又、下肢機能訓練のための健康器具でないものの、
図10(b)に示すように、自立性や起き上がり性に優れた、シーソー式の陸上競技用ハードル200(例えば、特許文献2参照)や、
図10(c)に示すように、起き上がり式ハードル300についても提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-23209号公報(特許請求の範囲、
図1等)
【文献】実開昭49-85251号公報(特許請求の範囲、
図1等)
【文献】実開昭54-174467号公報(特許請求の範囲、
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の上下肢の運動支援器具は、利用者が接触した場合に、正常位置に戻って、自立できないという問題があった。
逆に言えば、そもそも利用者は、椅子に座った状態で、運動支援器具を使用することから、つまずきくという概念がなく、ひいては、そのような自立機構を設ける意義がなかった。
従って、コンパクト性や簡易構造性を低下させることから、自立機構を設ける意義も、実際に余分な物理的スペースもなく、不必要であると考えるのが自然であった。
【0007】
又、特許文献2に記載のシーソー式の陸上競技用ハードルや、特許文献3に記載の起き上がり式ハードルは、それぞれ競技用ハードルであって、日本陸上競技連盟の競技規則に準じて、10kg以上の重さがあり、3.6kg未満の力で押されても倒れない構成になっている。すなわち、競技用ハードルを、高齢者等の下肢機能訓練のための健康器具へ転用することは、事実上困難であった。
しかも、それぞれのハードル構造が複雑であって、製造が困難なばかりか、持ち運び性や保管性についても低いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の発明者は、鋭意研究した結果、所定の健康器具において、所定長尺物と、側端部材と、揺動部材と、を備えることによって、適度な安定度で所定状態を保てると共に、利用者が接触したような場合には、揺動して、所定状態に戻り、かつ、簡易構成の健康器具が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、自立性等に優れると共に、簡易構造の健康器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、下肢機能訓練を行うための健康器具であって、少なくとも足上げ動作をするための長尺物と、当該長尺物の両端を保持する、一対の側端部材と、当該一対の側端部材の所定箇所を重心とし、足上げ動作の方向に沿って、揺動させる揺動部材と、を備えることを特徴とする健康器具が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、本発明の健康器具によれば、適度な安定度で正規状態を保てると共に、利用者が当該健康器具の長尺物に接触したような場合には、所定方向に揺動して、正規状態に戻ることができる。
又、各構成要素が、基本的に、棒状や板状のシンプル形態であり、それらを組み合わせて健康器具を構成した場合に、全体として、簡易構成とすることができる。
よって、本発明の簡易構成の健康器具によれば、構成部品数が比較的少なく、製造自体も容易になり、しかも、全体的にコンパクトであって、側端部材や長尺物が、それぞれ把持しやすいため、持ち運び性についても容易となり、利用者の利便性も向上する。
【0010】
又、本発明を構成するにあたり、長尺物が、木質材料、ゴム材料、樹脂材料、紙材料、繊維材料、セラミック材料の少なくとも一つから構成してあることが好ましい。
このように構成することによって、利用者の使用目的や使用用途に応じた、より適切な健康器具を提供することができる。
【0011】
又、本発明を構成するにあたり、長尺物の長さを可変とするための、長さ収縮機構及び折り曲げ機構、あるいは、いずれか一方を備えることが好ましい。
このように構成することによって、利用者の使用目的や使用用途に応じた健康器具を提供することができ、しかも、保管性や持ち運び性についても向上することができる。
【0012】
又、本発明を構成するにあたり、長尺物が、一対の側端部材に対して、脱着可能であることが好ましい。
このように構成することによって、利用者の使用目的や使用用途に応じて、長尺物が適宜異なる健康器具を容易に提供することができ、ひいては、健康器具を使用しない時には、健康器具をより軽量化、コンパクト化することができる。
【0013】
又、本発明を構成するにあたり、長尺物の、一対の側端部材に対する取り付け位置が可変であることが好ましい。
このように構成することによって、利用者の使用目的や使用用途に応じて、長尺物の位置(高さ)が適宜異なる健康器具を提供することができる。
【0014】
又、本発明を構成するにあたり、揺動部材が、一対の側端部材の間に連結されてなる所定重量物、及び、一対の側端部材のそれぞれに対して連結されてなる所定重量物、あるいは、いずれか一方であることが好ましい。
このように構成することによって、利用者の使用目的や使用用途に応じて、所定重量物の種類、重さ、位置等が適宜異なる健康器具を提供することができる。
【0015】
又、本発明を構成するにあたり、揺動部材が、一対の側端部材に対して、脱着可能であることが好ましい。
このように構成することによって、揺動部材の形態が適宜異なる健康器具を容易に提供することができ、ひいては、健康器具を使用しない時には、健康器具をより軽量化、コンパクト化することができる。
【0016】
又、本発明を構成するにあたり、一対の側端部材を側方から眺めた場合の形状が、円形、半円形、扇形、楕円形、三日月、8角形以上の多角形、ひょうたん形、卵形、花弁形の少なくとも一つであることが好ましい。
このように構成することによって、より適度な安定度で正規状態を保てると共に、利用者が当該健康器具の長尺物に接触したような場合には、所定方向に揺動して、正規状態に戻ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)~(b)は、それぞれ第1実施形態の健康器具の斜視図及び正面図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、それぞれ第1実施形態の健康器具の作用効果を説明するために供する図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、長尺物の形状の一例を説明するために供する図である。
【
図4】
図4(a)~(d)は、側端部材の形状の一例を説明するために供する図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、側端部材の側面形状を説明するために供する図である。
【
図6】
図6(a)~(b)は、本願発明の健康器具の一例を説明するために供する図である。
【
図7】
図7(a)~(b)は、本願発明の健康器具の変形例(変形例1)を説明するために供する図である。
【
図8】
図8(a)~(b)は、本願発明の健康器具の別の変形例(変形例2)を説明するために供する図である。
【
図9】
図9(a)~(c)は、本願発明の健康器具のさらに別の変形例(変形例3)を説明するために供する図である。
【
図10】
図10(a)は、従来の健康器具の斜視図、
図10(b)~(c)は、それぞれ従来の自立性を示す陸上競技用ハードルを説明するために供する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、
図1(a)~(b)に示すように、下肢機能訓練を行うための健康器具20であって、少なくとも足上げ動作を行うための長尺物11と、当該長尺物11の両端を保持する、一対の側端部材23と、当該一対の側端部材23の所定箇所を重心とし、足上げ動作の方向に沿って、揺動させる揺動部材17と、を備えることを特徴とする健康器具20である。
以下、適宜図面を参照しながら、第1の実施形態の健康器具を、構成要件等に分けて、具体的に説明する。
【0019】
1.下肢機能訓練を行うための健康器具
(1)主構成
主構成としては、
図1(a)の斜視図、及び
図1(b)の正面図に示すように、長尺物11と、一対の側端部材23と、揺動部材17と、を含んでなる、下肢機能訓練を行うための健康器具20である。
すなわち、長尺物は、利用者が、例えば、蹴ったり跨いだりするような足上げ動作を行うために、蹴る対象又は跨ぐ障害物となる長尺状の部材である。
又、一対の側端部材は、長尺物の両端を保持して、健康器具としての基本的構成を形成するための対向する複数の部材(一方の側端部材を第1の側端部材と称し、もう一方の側端部材を第2の側端部材と称する。)である。
更に、揺動部材は、利用者の跨ぎ動作の方向に沿って、健康器具を揺動させる部材であって、通常、一対の側端部材の重心である健康器具の重心を、所定位置よりも低くするための重量物である。
【0020】
(2)作用
又、健康器具20を足上げ動作としての跨ぎ動作に使用した場合の作用の例を、
図2(a)~(c)及び
図6(a)~(b)を参照して説明する。
すなわち、
図2(a)に示すように、利用者90が、健康器具20における長尺物11を跨ぐ前の長尺物11に接触していない状態では、所定力(
図2(a)中の矢印F)は発生しない。
一方、
図2(b)に示すように、利用者90が、健康器具20における長尺物11を跨いで接触した際には、所定力(
図2(b)中の矢印F)が発生する。
すると、所定力の発生に応答して、
図6(a)~(b)に示すように、長尺物11の幅方向(
図2中の矢印Xの方向。)と直交する方向(
図2中の矢印Yの方向であって、利用者90の動作方向)に傾ける作用を発揮する。
すなわち、利用者が長尺物に接触しても、長尺物からの抗力が小さくなり、利用者が転倒等するリスクを著しく軽減させることができる。
その後、
図2(c)に示すように、利用者90の足が長尺物11から離れると、健康器具20における揺動部材17によって、揺動しつつ、初期状態に戻る自立作用を発揮する。
すなわち、利用者90が長尺物11に接触した場合であっても、健康器具20が起き上がりこぼし的な動作をして、元の状態に戻す負荷を軽減することができる。
【0021】
又、足上げ動作としての蹴り動作に使用した場合の作用の例を説明する。
すなわち、特に図示しないものの、利用者が、健康器具に向かって椅子に座り、片足を長尺物の高さまで上げる。
次いで、利用者が足で長尺物を押すように蹴ることで、所定力が働いて、長尺物の幅方向と直交する方向に、健康器具を傾ける作用が発揮される。
次いで、利用者が蹴った足を引くと、健康器具における揺動部材によって、長尺物が利用者側に戻ってくる。
その後、利用者が、戻ってきた長尺物を再度押すように蹴ることで、足上げ動作を反復的に行うことができ、下肢機能訓練をより効果的に行うことができる。
【0022】
従って、本発明の健康器具によれば、従来の健康器具に比べ、より安全で、然も自立性が高いことから、高齢者等が気兼ねすることなく、下肢機能訓練を行うことができる。
しかも、健康器具の構造が簡易であるため、製造が容易なばかりか、廉価な健康器具を実現できるという利点も得られる。
その上、比較的小型であるため、介護施設や病院に設置し易く、かつ、持ち運びによる移動も容易であるという利点も得ることができる。
【0023】
(3)重心
又、健康器具の重心Gの位置としては、側端部材の想定される鉛直方向の中心線(以下、想定垂直線Lと称する) と、側端部材の縁の想定垂直線L上ではない点から吊るした時の鉛直方向に沿った線との交点で表すことができる。
このとき、吊るす側端部材としては、揺動部材の代わりに当該揺動部材と同じ質量の錘を取り付けるとともに、長尺物の代わりに当該長尺物と同じ質量の錘を取り付けた状態の一方の側端部材を用いることが好ましい。
一方、側端部材と長尺物の合計質量が、揺動部材の質量に比べて1/10以下である場合には、簡易的に、健康器具の重心Gの位置を、想定垂直線L上であり、かつ、揺動部材の取り付け高さ17Hの位置としても良い。
なお、揺動部材が複数ある場合には、揺動部材の平均高さを取り付け高さとすることが好ましい。
【0024】
2.長尺物
(1)形状1
図1(a)~(b)に示す、長尺物11の形状は、利用者の使用目的や使用用途に応じて、適宜変更することができるが、通常、棒状や板状であることが好ましい。
そして、かかる長尺物が棒状や板状である場合、その直径(円相当径)は、健康器具の使用目的や用途等を考慮して定めることが好ましいが、通常、0.5~30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、長尺物の直径(円相当径)が0.5mm未満になると、機械的強度が低下し、健康器具の耐久性や持ち運び性も困難になる場合があるためである。
一方、長尺物の直径(円相当径)が30mmを超えると、構成材料にもよるが、健康器具の重量が過度に大きくなって、持ち運び性や、一対の側端部材に対する脱着性が困難になる場合があるためである。
従って、長尺物が棒状や板状である場合、構成材料にもよるが、その直径(円相当径)を1~20mmの範囲内の値とすることがより好ましく、5~10mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0025】
(2)形状2
又、長尺物の形状を、構成材料を考慮して定めることが好ましい。
例えば、長尺物が、ゴム材料、繊維材料、布材料、不織布材料から構成してある場合、帯状、テープ状、組紐状とすることが好ましい。
この理由は、帯状等であれば、装飾性や取扱い性に優れ、一対の側端部材に対する脱着性が極めて容易になるばかりか、破断したような場合であっても、すぐに交換できるためである。
従って、長尺物が帯状等である場合、その幅を5~100mmの範囲内の値とすることが好ましく、10~80mmの範囲内の値とすることが好ましく、15~50mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0026】
(3)長さ
又、
図1(b)に示すように、長尺物の幅方向の長さW(mm)についても、健康器具の使用目的や用途等を考慮して定めることが好ましいが、通常、100~1000mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、長尺物の長さが100mm未満になると、利用者の使用範囲が過度に狭くなって、健康器具の使い勝手性が著しく困難になる場合があるためである。
一方、長尺物の長さが1000mmを超えると、構成材料にもよるが、健康器具の重量が過度に大きくなって、持ち運び性や、保管性が著しく低下する場合があるためである。
従って、長尺物の長さを200~800mmの範囲内の値とすることがより好ましく、300~600mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0027】
(4)材料1
又、長尺物が、木質材料、ゴム材料、樹脂材料、紙材料(段ボール材料も含む。以下、同様である。)、セラミック材料の少なくとも一つから構成してあることが好ましい。
具体的には、木質材料であれば、オーク、バルサ、杉、桑、樫、檜等であることが好ましく、樹脂であれば、ポリカーボネート、アクリル、ナイロン等であることが好ましい。
この理由は、このような材料から長尺物を構成することによって、利用者の使用目的や用途に応じた、より適切な健康器具を提供することができるためである。
特に、木質材料から構成されている場合、比較的軽量であって、かつ、機械的強度や加工性に優れているから好適である。
又、ゴム材料から構成されている場合、破断伸びが100%以上と大きくなって、利用者が顕著に接触したような場合でも、適度に伸びることから、より安全性が高いと言える。
更に、樹脂材料から構成されている場合、製造容易であって、所定形状や重量を安定させやすいし、かつ、透明樹脂材料であれば、LED等と組み合わせて、外観上、長尺物を点滅させたり、所定文字を光らせたりして、情報性を高めることもできる。
【0028】
(5)材料2
又、長尺物において、内部又は外周に、孔部又は溝部を設けることが好ましい。
具体的には、
図3(a)~(c)に例示するように、管状の空洞部31a、円形又は楕円形の貫通孔31b、コの字状の溝部31c、円形又は楕円形の座繰り部(図示せず)等を、設けることが好ましい。
この理由は、孔部又は溝部を設けることによる肉抜きや、孔部又は溝部に錘をはめ込むことによって、長尺物の質量やバランスの調整が容易になるとともに、弾性率や耐久性等の調整も容易になるためである。更に、孔部又は溝部を取っ手として用いることで、持ち運びや保管等が容易になるためである。
又、孔部又は溝部の数としては、少なくとも1箇所設けることが好ましいが、2~10箇所の複数箇所設けることも好ましい。
【0029】
(6)長さ収縮機構及び折り曲げ機構
又、特に図示しないものの、長尺物の長さを可変とするための、長さ収縮機構及び折り曲げ機構、あるいは、いずれか一方を備えることが好ましい。
この理由は、このように長さ収縮機構等を設けることによって、利用者の使用目的や使用用途に応じた健康器具を提供することができ、しかも、長尺物の長さが可変であることから、保管性や持ち運び性についても向上することができるためである。
【0030】
ここで、長さ収縮機構としては、例えば、長尺物を少なくとも第1の長尺物及び第2の長尺物のパイプ構造に分割しておき、第1の長尺物の内径を、第2の長尺物の外形よりも大きくして、第1の長尺物の内部に、第2の長尺物がスライドし、所定場所で停止する構造であることが好ましい。
【0031】
又、別な長さ収縮機構としては、例えば、長尺物を少なくとも第1の長尺物及び第2の長尺物に分割しておき、その分割面の間に、長尺物の長さ方向に収縮するコイルや、長さ調節用の第3の長尺物を設けることも好ましい。
一方、折り曲げ機構としては、例えば、長尺物を少なくとも第1の長尺物及び第2の長尺物に分割しておき、その分割面の間に、角度調整部材を設けることが好ましい。
【0032】
(7)脱着性
又、長尺物が、一対の側端部材に対して、脱着可能であることが好ましい。
この理由は、このように脱着性を有する構成とすることによって、利用者の使用目的や用途に応じて、長尺物が適宜異なる健康器具を容易に提供することができ、ひいては、健康器具を使用しない時には、健康器具をより軽量化、コンパクト化することができるためである。
ここで、長尺物の脱着性を発揮させる構成(固定具等の脱着機構)としては、特に制限されるものではないが、通常、ネジ、フランジ、接着剤、テープ、取り付け孔等の少なくとも一つが挙げられる。
【0033】
(8)固定具(第1固定具及び第2固定具)
又、
図1(a)~(b)に示すように、長尺物11を一対の側端部材23(第1の側端部材23a及び第2の側端部材23b)の先端に対して、それぞれ固定するための、固定具として第1固定具31と、第2固定具34とを設けてあることが好ましい。
具体的には、
図1(a)~(b)に示すように、長尺物11の両端の内部に、第2固定具34としての雌ネジ等を埋設してあることが好ましい。
更に、長尺物11は、第2固定具34としての雌ネジに対して、第1固定具31としてのグリップ付きの雄ネジを締め付けて、接続固定してあることが好ましい。
このように第1固定具31及び第2固定具34を備えることにより、長尺物11を、一対の側端部材23の任意位置に、かつ、比較的強固に取り付けることができる。
【0034】
3.側端部材
(1)形状1
又、側端部材を側方から眺めた場合の形状(以下、側方形状)が、円形、半円形、扇形、楕円形、三日月、8角形以上の多角形、ひょうたん形、卵形、花弁形の少なくとも一つであることが好ましい。
この理由は、このような側方形状とすることによって、より適度な安定度で正規状態を保てると共に、利用者が当該健康器具の長尺物に接触した場合には、所定方向に揺動して、正常状態に戻りやすいためである。
更に、このような側方形状であれば、製造が比較的容易であって、安定的供給が可能となるためである。
【0035】
又、
図7(a)~(b)に示すように、側方形状を卵形にすることも好ましい。
この理由は、健康器具が、相当の傾斜角度、例えば、90°の傾斜角度となるように倒れた場合であっても、元の状態に戻りやすく、自立性がより高いためである。
ここで、傾斜角度は、想定垂直線Lと、鉛直方向とのなす角度とすることができる。
【0036】
(2)形状2
又、
図5(a)~(b)に示すように、側端部材23の底部に、円弧状部25(25x、25y、25z)を設けることが好ましい。
具体的には、
図5(a)に示すように、側端部材23xの円弧状部25xを真円又は楕円の円弧とし、当該円弧の鉛直方向に沿った半径R(mm)を30~300mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような円弧状部を有する底部とすることによって、より適度な安定度で正規状態を保てると共に、利用者が当該健康器具の長尺物に接触した場合には、所定方向に揺動して、正常状態に戻りやすいためである。
従って、円弧の鉛直方向に沿った半径R(mm)を40~250mmの範囲内の値とすることがより好ましく、50~200mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
又、
図5(b)に示すように、側端部材23yの円弧状部25yの一部に平坦部を設けることも好ましい。
この理由は、このように構成することで、側端部材が大きく揺動した場合であっても少ない揺動回数で静止させることができるためである。
従って、平坦部の幅b(mm)を10~200mmとすることが好ましく、20~100mmとすることがより好ましく、30~80mmの範囲内とすることが更に好ましい。
【0037】
(3)形状3
又、
図5(c)に示すように、側端部材の側面から見た形状(側面形状)に関し、利用者が接触した場合であっても過度に傾斜しないように、側端部材の一部に、ストッパー25z(規制部材)を設けた側端部材23zとすることが好ましい。
具体的には、所定のストッパー25zを設けることによって、健康器具において想定垂直線Lと、鉛直方向とがなす角度としての傾斜角度θ(
図5(c)参照)が、例えば、45°以上にならないように規制することが好ましい。
この理由は、このような側方形状とすることにより、良好な傾斜性と、自立性とのバランスをさらに良好なものとすることができるためである。
すなわち、かかる形状とすることにより、健康器具が過度に傾斜して、揺動速度が過度に速くなったり、揺動時間が過度に多くなったりすることを効果的に防ぐことができるためである。
従って、側面形状において、ストッパーとして、突起、くさび、羽、板バネ、螺旋バネ等の少なくとも一つを設けることが好ましい。
又、ストッパーの材料としては、側端部材と同様の材料とすることが好ましいが、例えば、金属、樹脂、木材、ゴム、スポンジ、布、エアクッション等の少なくとも一つを設けることが好ましい。
【0038】
(4)形状4
又、一対の側端部材の側方形状に関し、実質的に同一であることも好ましいが、相似形状であることも好ましい。
すなわち、一対の側端部材を構成する第1の側端部材及び第2の側端部材は、基本的に、長尺物を介して、対向するように配置されてなる、実質的に同一形状又は相似形状とすることが好ましい。
この理由は、第1の側端部材及び第2の側端部材が実質的に同一形状であれば、その間の長尺物を、精度良く水平方向に調整しやすくなるためである。
一方、第1の側端部材及び第2の側端部材が相似形状の場合には、その間の長尺物が、水平方向に対して、所定角度をなすように傾斜させやすくなるためである。
すなわち、健康器具の使用目的や用途によるが、第1の側端部材及び第2の側端部材の側面形状につき、長尺物の水平方向に対する傾斜角度を考慮して、実質的に相似形状とすることも好ましい。
【0039】
(5)形状5
又、側端部材において、内部又は外周に、孔部又は溝部を設けることが好ましい。
具体的には、
図4(a)~(b)に例示するように、円形又は楕円形の貫通孔26a、コの字状の溝部26b、円形又は楕円形の座繰り部(図示せず)等を、設けることが好ましい。
この理由は、孔部又は溝部を設けることによる肉抜きや、孔部又は溝部に錘をはめ込むことによって、側端部材の質量やバランスの調整が容易になるとともに、弾性率や耐久性等の調整も容易になるためである。更に、孔部又は溝部を取っ手として用いることで、持ち運びや保管等が容易になるためである。
又、孔部又は溝部の数としては、少なくとも1箇所設けることが好ましいが、2~10箇所の複数箇所設けることも好ましい。
【0040】
(6)配置
又、一対の側端部材を、正面から見た場合に、鉛直方向に対して傾けて配置することが好ましい。
具体的には、
図4(c)に示すように、側端部材27aを、正面から見た場合に、八の字状に傾けて配置することが好ましい。
又、
図4(d)に示すように、側端部材27bを、正面から見た場合に、逆ハの字状に傾けて配置することが好ましい。
この理由は、このように傾けた配置とすることで、健康器具の揺動を複雑化させて、より効果的に下肢機能訓練を行うことができるためである。
従って、側端部材を正面から見た場合に、鉛直方向に対して5~60°傾けて配置することが好ましく、10~45°傾けて配置することがより好ましく、20~30°傾けて配置することが更に好ましい。
又、側端部材を正面から見た場合に、鉛直方向に対して傾ける角度を可変とすることが好ましい。
【0041】
(7)高さ調節部材
又、
図1等に示すように、側端部材の一部、又は側端部材に延設されてなる、所定の高さ調節部材35を設けることが好ましい。
この理由は、所定の高さ調節部材を設けることによって、長尺物の取り付け位置(高さ)を、可変とすることができ、ひいては、使い勝手性を向上することができるためである。
従って、利用者の使用目的や使用用途に応じて、長尺物の取り付け位置が適宜異なる健康器具を容易に提供することができる。
このような高さ調節部材の一例としては、受け皿としての突起物が典型的であるが、長尺物の位置(高さ)が固定される部材や部位であれば、フック、開口部、切り欠き(図示せず)等とすることも好ましい。
なお、高さ調節部材によって、長尺物の取り付け位置を、底面からの高さとして、5~50cmの範囲内で、1~5cmの間隔で可変とすることが好ましい。
よって、長尺物の位置が、底面からの高さとして、例えば、5cm、10cm、15cm、20cm、25cmとなるように、所定の高さ調節部材を設けることが好ましい。
【0042】
(8)材料
又、側端部材の材料についても、長尺物と同様に、木質材料、ゴム材料、樹脂材料、紙材料(段ボール材料も含む。以下、同様である。)、セラミック材料の少なくとも一つから構成してあることが好ましい。
特に、側端部材が、木質材料から構成されている場合、比較的軽量であって、かつ、機械的強度や加工性に優れているから好適である。
又、側端部材が、樹脂材料から構成されている場合、製造容易であって、所定形状や重量を安定させやすいし、かつ、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の透明樹脂材料であれば、LED等と組み合わせて、外観上、長尺物を点滅させたり、所定文字を光らせたりして、情報性を高めることもできる。
【0043】
(9)脱着性
又、側端部材が、長尺物や揺動部材に対して、分離可能であって、ひいては、脱着可能であることが好ましい。
この理由は、このように分離可能性を有する構成とすることによって、利用者の使用目的や使用用途に応じて、側端部材が適宜異なる健康器具を容易に提供することができ、ひいては、健康器具を使用しない時には、長尺物や揺動部材と分離させ、健康器具をより軽量化、コンパクト化することができるためである。
ここで、側端部材の脱着性を発揮させる構成としては、特に制限されるものではないが、通常、ネジ、フランジ、接着剤、テープ、取り付け孔等が挙げられる。
【0044】
(10)固定部
又、
図1(a)~(b)に示すように、側端部材23は、第1固定具31を貫通させて第2固定具34と締結するための固定部33が設けてあることが好ましい。
具体的には、固定部33は、貫通孔や鉛直方向に延びる貫通溝等であることが好ましい。
このように固定部33を設けることにより、長尺物を、側端部材の任意位置に、かつ、比較的強固に取り付けることができる。
なお、
図1(a)~(b)の場合、一例であるが、雌ネジと、グリップ付きの雄ネジとを用いて、長尺物11は第1の側端部材23a及び第2の側端部材23b各々の上端に接続固定してある。
【0045】
4.揺動部材
(1)形状
揺動部材の形状につき、健康器具の使用目的や用途に応じて定めることが好ましいが、例えば、丸棒、角棒等の棒状とすること好ましい。
この理由は、かかる形状であれば、取り扱いが容易になって、簡易構造の健康器具を得られやすいためである。
又、かかる棒状であれば、長尺物に対して、平行関係となることから、健康器具の重心位置の調整が容易になるためである。
従って、利用者がぶつかって傾斜した場合であっても、安定的に自立制御性を発揮することができる。
【0046】
又、揺動部材の形状につき、特に限定されるものではないが、円形、楕円形、多角形、花形等の断面形状を有する厚板状とすることが好ましい。
この理由は、かかる形状であれば、側端部材の形状に合わせて、揺動部材の断面形状を選択でき、配置の自由度を更に向上させることができるためである。
【0047】
(2)数
揺動部材の数につき、健康器具の使用目的や使用用途に応じて定めることが好ましいが、例えば、揺動部材を棒状とする場合には、少なくとも一本あれば良いが、2~5本の複数本有することが好ましい。
一方、揺動部材を厚板状とする場合には、一対の側端部材の一方に、少なくとも1個あれば良いが、一対の側端部材の両方に、それぞれ少なくとも1個有することが好ましい。
又、一対の側端部材に、それぞれ同一又は異なる形状の重量物を、合わせて2~10個の複数個有することがより好ましい。
この理由は、健康器具の重心の位置の自由度を高めることができるためである。
【0048】
(3)高さ位置
揺動部材の高さ位置につき、健康器具の重心、使用目的や使用用途に応じて定めることが好ましいが、例えば、揺動部材の形状を棒状とする場合には、底面と、長尺物の高さの間となるように、高さ位置を定めることが好ましい。
この理由は、かかる重量物の高さ位置によって、健康器具の重心の位置を調整し、健康器具が傾斜した場合に、確実に揺動して、所定位置に戻りやすくなるためである。
一方、揺動部材を厚板状とする場合には、健康器具が傾斜した際に、確実に揺動して、元の所定位置に戻る態様であればよいが、側端部材の高さをH(
図5(a)参照)とした場合に、重心の高さがH/5となる高さに、揺動部材を設けることが好ましい。
従って、重心の高さが、H/10となる高さに揺動部材を設けることがより好ましく、H/20となる高さに揺動部材を設けることが更に好ましい。
【0049】
(4)材料
揺動部材の構成材料につき、健康器具の重心、使用目的や使用用途に応じて定めることが好ましいが、通常、金属、木質材料、セラミック(ガラスを含む)、樹脂材料の少なくとも一つであることが好ましい。
具体的には、金属であれば、鉄、アルミ、ステンレス等であることが好ましく、木質材料であれば、オーク、バルサ、杉、桑、樫、檜等であることが好ましく、樹脂であれば、ポリカーボネート、アクリル、ナイロン等であることが好ましい。
この理由は、これらの構成材料であれば、機械的強度や加工性等に優れているためである。
更に、揺動部材を金属とする場合には、防錆処理メッキが施されていることがより好ましい。
【0050】
(5)質量
揺動部材に用いる重量物の質量は、健康器具の重心、使用目的や使用用途に応じて定めることが好ましいが、形状を棒状とする場合には、通常300~3000gの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような質量であれば、健康器具の良好な自立性を確保できると共に、持ち運びが容易になるためである。
従って、揺動部材に用いる重量物の質量を、400~2000gの範囲内の値とすることがより好ましく、500~1500gの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、揺動部材が複数本存在する場合には、複数本の合計質量を、かかる質量の範囲内の値とすることが好ましい。
【0051】
又、揺動部材に用いる重量物の質量につき、形状を厚板状とする場合には、通常300~3000gの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような質量であれば、健康器具の良好な自立性を確保できると共に、持ち運びが容易になるためである。
従って、揺動部材に用いる重量物の質量を、400~2000gの範囲内の値とすることがより好ましく、500~1500gの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、揺動部材が複数個存在する場合には、複数個の合計質量を、かかる質量の範囲内の値とすることが好ましい。
【0052】
又、揺動部材に用いる重量物の質量を可変構造とすることが好ましい。
具体的には、揺動部材を、内部に水や砂等を保持できる空間を有する容器とし、内部に入れる水や砂の量を調整できる可変構造とすることが好ましい。
この理由は、揺動部材の質量を可変構造とすることで、揺動する周期、揺動が静止するまでの時間、揺動する速さ等を使用する環境に合わせて調整することができるためである。
従って、より具体的には、揺動部材をペットボトル等のプラスチック容器とすることが好ましい。
【0053】
(6)固定具(第3固定具)
又、
図1(a)~(b)に示すように、揺動部材の形状を棒状とする場合には、その両端に、側端部材に対して固定するための、揺動部材17用の固定具(第3固定具39と称する場合がある。)としての、ネジ付きフランジ等が設けてあることが好ましい。
この理由は、このような第3固定具39を備えることにより、所定重量物を、側端部材23の任意位置に、かつ、比較的強固に取り付けることができるためである。
なお、
図1(a)~(b)の場合、一例であるが、第3固定具39としてのネジ付きフランジを用いて、揺動部材17としての鉄棒が、第1の側端部材23a及び第2の側端部材23b各々の上端に接続固定してある。
【0054】
(7)脱着性
又、揺動部材が、側端部材に対して、脱着可能であることが好ましい。
この理由は、揺動部材を脱着可能に構成することによって、揺動部材の形態や重さが異なる健康器具を容易に提供することができるためである。
従って、利用者の使用目的や使用用途に、より合致した健康器具を、適切に提供することができる。
しかも、揺動部材が脱着可能であることから、健康器具としての保管性や持ち運び性についても向上することができるためである。
すなわち、健康器具を使用しない時には、揺動部材を外して、より軽量化、コンパクト化することができる。
【0055】
5.機能付加部
(1)機能付加部1
又、本発明の健康器具は、下肢機能訓練の効果を増加させるための機能付加部を備えていることが好ましい。
具体的には、例えば、機能付加部として、健康器具の揺動に合わせて音楽、音声、効果音等の音を発する音声機器を備えることが好ましい。
この理由は、音声機器を備えることにより、利用者が健康器具に接触したことを知らせたり、リズムに合わせて健康器具を傾斜させたりすることができ、より効果的に下肢機能訓練を行うことができるためである。
従って、音声機器として、ブザー、メロディIC、マラカス、鈴、シリンダオルゴール、ディスクオルゴール等を備えることが好ましい。
【0056】
(2)機能付加部2
又、機能付加部として、健康器具の重心の高さを調整できる重心調整機構を備えていることが好ましい。
具体的には、例えば、側端部材に対して鉛直方向に沿ってスライドレールを備えるとともに、当該スライドレール上の任意の位置で固定可能な錘を備えていることが好ましい。
この理由は、錘を上下させることで、健康器具の重心の高さを調整することができ、利用者のスキルや体格等に合わせて、健康器具の揺動周期や揺動速さを変えることができるためである。
【0057】
6.変形例1
次に、
図7(a)~(b)を参照して、変形例1の健康器具40について説明する。
かかる変形例1の場合、平ゴムから構成された長尺物41と、卵型の第1の側端部材43a及び第2の側端部材43bを構成部品として含む点に特徴がある。
よって、かかる変形例1の健康器具40の場合、側端部材43が卵型であるから、健康器具40が相当傾斜した場合、例えば、健康器具における想定垂直線Lと、鉛直方向とがなす角度が、60°以上であっても、確実に揺動して、所定位置に戻りやすくなるためである。
又、平ゴムから構成された長尺物41であれば、利用者が顕著に接触したような場合でも、適度に伸びることから、より安全性が高く、かつ、取り扱い性や装飾性が高いと言える。
又、長尺物41を平ゴムで構成した場合、側端部材43に設けられた鉛直方向に延びる溝44に平ゴムを通し、端部をクリップ42で挟むことが好ましい。
この理由は、クリップ42を溝44に引っ掛けることで、平ゴムの位置(高さ)を任意に固定することができ、より簡易な構成、かつ、より容易に高さ調整をすることができるためである。
【0058】
7.変形例2
次に、
図8(a)~(b)を参照して、変形例2の健康器具50について説明する。
すなわち、
図8(a)に示すように、変形例2の健康器具50は、側端部材23としての第1の側端部材23a及び第2の側端部材23bの下端部に、それぞれ健康器具50を直立させるための、揺動部材57としての重量物を設けた構成である。
そして、
図8(b)に示すように、利用者が長尺物11を跨いだ際に、それに接触したような場合には、起き上がりこぼし的動作、すなわち、自立性を実現するための揺動部材57としての重量物を設けた構成の健康器具50である。
【0059】
より具体的には、かかる健康器具50において、揺動部材57としての重量物を、第1の側端部材23a及び第2の側端部材23bの下端部付近の両主面に、所定重さの金属ブロックを固定して、自立性を実現している。
そして、変形例2の健康器具50の大きな特徴は、揺動部材が棒状ではないため、長尺物11の下方領域に、所定空間Sが生じる点にある。
従って、利用者が長尺物11に接触して、当該健康器具50が傾くような動作をしたとしても、利用者に他の物体が接触することが無いので、利用者に対する安全性が一層高い、健康器具を提供することができる。
更に言えば、所定空間Sが生じることから、それを利用して、同一形態の複数個の健康器具50を重ねた状態で保管したり、運搬したりすることができるという利便性も向上することができる。
【0060】
8.変形例3
次に、
図9(a)~(d)を参照して、本願発明の変形例3の健康器具60について説明する。
かかる変形例3の健康器具60は、コの字状の長尺物61と、揺動部材67を収容できる、円形側面の第1の側端部材63aと、同様に第2の側端部材63bを構成部品として、含む点に特徴がある。
従って、長尺物61は、全体として門型構造であって、かかる長尺物61は、例えば金属製のパイプや樹脂製のパイプで構成することができる。
そして、かかる変形例3の健康器具60の場合、長尺物61の第2部分61bは、長尺物61の第3部分61c内を上下でき、かつ、所定の複数の位置にて、第3部分61cに、例えば雌ネジ62aと雄ネジ62bとによって、固定することができる。
よって、かかる変形例3の健康器具60の場合、傾斜した場合に、優れた自立性を発揮できるばかりか、第2部分61bを上下させることで、第1部分61aと、床との高さを種々の高さに変更できるという作用効果を発揮することができる。
【0061】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態の健康器具を用いてなる下肢機能訓練方法に関する実施形態である。
すなわち、少なくとも足上げ動作を行うための長尺物と、当該長尺物の両端を保持する、一対の側端部材と、当該一対の側端部材の所定箇所を重心とし、足上げ動作の方向に沿って、揺動させる揺動部材と、を備えることを特徴とする健康器具を用いてなる下肢機能訓練方法である。
以下、適宜図面を参照しながら、第2の実施形態の下肢機能訓練方法を、具体的に説明する。
【0062】
1.準備工程
所定構成の健康器具を準備する工程である。
すなわち、少なくとも足上げ動作を行うための長尺物と、当該長尺物の両端を保持する、一対の側端部材と、当該一対の側端部材の所定箇所を重心とし、足上げ動作の方向に沿って、揺動させる揺動部材と、を備える健康器具を、床等の所定場所に裁置する工程である。
そして、この準備工程において、鉛直方向に対して、例えば、15°以内の傾斜角度となるように、意図的に傾斜させた場合には、健康器具が揺動して、傾斜前の元の状態、すなわち、正常状態となることを確認することが好ましい。
【0063】
2.足上げ工程
次いで、利用者(図示せず)が、足上げ動作を行う工程である。
すなわち、利用者が、足上げ動作として、準備された健康器具における長尺物を繰り返し蹴ったり跨いだりすることにより、腸腰筋等が鍛えることができ、下肢機能訓練を適切に行うことができる。
具体的には、足上げ動作として、健康器具を、前後に片足ずつ跨ぐ動作、左右に片足ずつ跨ぐ動作、椅子に座って片足を上げた状態で蹴る動作等を反復して行うことで、下肢機能訓練を適切に行うことができる。
その際、利用者(図示せず)が、健康器具における長尺物を蹴ったり接触したりして生じた力によって、健康器具は、円弧状部25(
図1参照)によって、利用者の動作方向に向かって傾くことになる。
すなわち、足上げ動作として跨ぎ動作を行った場合には、利用者が長尺物に接触しても、健康器具自体が傾くので、長尺物からの抗力が小さく、利用者が転倒等するリスクを著しく軽減することができる。
又、蹴り動作を行った場合には、利用者が長尺物を蹴って、意図的に健康器具を傾斜させる運動を、健康器具の自立性を利用して、繰り返し行うことができる。
【0064】
又、長尺物を、例えば、プレートや幅広ゴム(平ゴムと称する場合がある。)等によって、構成してあることが好ましい。
この理由は、かかる構成とすることにより、文字、図形、記号などを装飾したり、あるいは、着色したりすることが容易にできるためである。
更に、装飾等した長尺物であれば、下肢機能訓練を行う上での目印になると共に、利用者の動機付け向上にもつながることになるためである。
【0065】
3.繰り返し工程
又、健康器具が傾斜した状態で、利用者が離れると、揺動部材の作用によって自立性を発揮し、揺動しつつ、元の状態に所定時間内に戻ることになる。
すなわち、本発明の健康器具は、起き上がりこぼし的な動作をさせることができ、自立性等に優れた健康器具を具体的に実現することができる。
従って、より安全に、然も自立性が高いことから、高齢者等の利用者が気兼ねすることなく、健康器具を繰り返し傾斜させることができ、下肢機能訓練を効果的に行えることになる。
しかも、健康器具の自立性による好適な意識が働き、高齢者等の利用者が、喜んで下肢機能訓練を行うという機運(データ有り)が生じるという非予想的効果も得られている。
【0066】
4.運搬工程/保管工程
本発明の健康器具によれば、全体的に、簡易かつ小型であって、運搬工程(持ち運び性)も容易であるばかりか、設置場所も狭くてすみ、保管性にも優れているという利点がある。
その上、長尺物の長さを可変とすることができる場合には、さらに、保管性や持ち運び性についても向上することができる。
よって、介護施設や病院等の種々の箇所において、高齢者等の利用者であっても、所定場所に運搬し、好適に使用し、下肢機能訓練が終了した場合には、所定場所に戻して、容易に保管することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の健康器具によれば、高齢者等が下肢機能訓練を行うための健康器具であって、所定の長尺物と、側端部材と、揺動部材と、を備えることによって、使い勝手性に優れ、かつ、簡易構成の健康器具を得られるようになった。
すなわち、利用者によって健康器具が傾けられると、揺動しつつ、初期状態に自動的に戻るという起き上がりこぼし的動作を実現させることができる。
【0068】
従って、高齢者や身体に異変が起きて歩行障害になった人等の、跨ぎ動作の訓練を極めて安全にかつ利用者の気兼ねを生じさせることなく行える。
しかも、本発明の健康器具によれば、全体的に、簡易かつ小型であって、持ち運びも容易であるばかりか、設置場所も狭くてすむという利点もある。
さらに、簡易かつ小型であって、部品点数も相対的に少なく、製造や組み立ても容易であることから、比較的安価な健康器具を提供することができ、経済的にも有利である。
よって、介護施設や病院等の種々の箇所において、高齢者等の利用者が、好適に使用できるものであり、産業上の利用可能性が極めて高いものである。
【符号の説明】
【0069】
20、40、50、60:健康器具
11、41、61:長尺物
17、57:揺動部材
23、23x、23y、23z、27a、27b、43:側端部材
23a、43a、63a:第1の側端部材
23b、43b、63b:第2の側端部材
25:円弧状部
26a:貫通孔(側端部材)
26b:溝部(側端部材)
31a:空洞部(長尺物)
31b:貫通孔(長尺物)
31c:溝部(長尺物)
33:固定部
35:高さ調節部材
42:クリップ
44:溝
90:利用者
G:重心
S:所定空間
L:想定垂直線
R:半径(円弧状部)