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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240220BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240220BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/01 307
B41J2/01 305
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D3/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021533099
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027694
(87)【国際公開番号】W WO2021010438
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019131775
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008833
【氏名又は名称】東伸工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一ノ▲瀬▼ 孝一
(72)【発明者】
【氏名】土肥 克己
(72)【発明者】
【氏名】松下 俊宏
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-148737(JP,A)
【文献】特開2012-126128(JP,A)
【文献】特開2013-216073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B05D 1/26
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にシート状の印刷対象物が載置される支持面を有し、一対のローラに架け渡された環状の搬送ベルトと、
前記ローラを駆動させる駆動部と、
布地の表面にインクジェット印刷を施す複数のプリントヘッドと、
前記プリントヘッドを布地の搬送方向と直交する方向に移動させる移動機構と、
前記駆動部の動作を制御して搬送ベルトを周回させながら前記移動機構の動作を制御して前記プリントヘッドを移動させる間に、前記プリントヘッドにインクジェット印刷を施させる制御装置を備え、
前記制御装置は、前記搬送ベルトが一周する毎に、印刷対象物の搬送方向と直交する方向に沿って、前記プリントヘッドがプリントヘッドの印刷ピッチに相当する距離を移動するように、前記駆動部及び前記移動機構の動作を制御する印刷装置。
【請求項2】
前記印刷対象物は、帯状であって、前記搬送ベルトの周長さよりも短い請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記複数のプリントヘッドはそれぞれ複数のノズルを含み、前記複数のノズルは布地の搬送方向と直交する方向に沿って並べられる、請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記複数のプリントヘッドはそれぞれ複数のノズルを含み、前記複数のノズルは布地の搬送方向に沿って並べられる、請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記複数のプリントヘッドはそれぞれ複数のノズルを含み、前記複数のノズルは布地の搬送方向に対して斜め方向に並べられる、請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項6】
表面に印刷対象物を載置した環状の搬送ベルトを周回させながら、プリントヘッドを前記搬送ベルトによる印刷対象物の搬送方向に直交する方向へ移動させることにより、印刷対象物の表面に印刷対象物の搬送方向に対して斜めの方向に印刷を施し、
前記プリントヘッドの移動速度は、前記搬送ベルトが一周する毎に、印刷対象物の搬送方向と直交する方向に沿って、プリントヘッドの印刷ピッチに相当する距離を移動する速度である、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関し、詳しくは、布地の表面に斜め方向にインクジェット印刷を施す印刷装置及び印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷対象物にインクジェット印刷を行う装置として、例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載の印刷装置は、インクを噴射する複数のノズルがそれぞれ収容された複数のプリントヘッドと、回転駆動する上流側及び下流側のローラと、この2つのローラ間に架けられ、印刷対象物である布地を表面に支持して搬送する無端状の搬送ベルトを備えている。布地は各プリントヘッドの幅(布地の搬送方向の長さ)に相当する間隔で間欠的に搬送される。布地が間欠搬送されて停止している間に、布地の搬送方向に直交する方向(布地の幅方向)に沿ってプリントヘッドを往復動させてノズルからインクを噴射することで、布地の表面に図柄の印刷が施される。プリントヘッドの往動または復動の1回の移動により、プリントヘッドの幅に相当する長さの印刷が施される。インクジェット印刷では、例えば、シアン(青)、マゼンダ(赤)、イエロー(黄色)、ブラック(黒)等のインクを濃淡を付けて重ね刷りするため、微細で複雑な図柄を表現することが可能である。
【0003】
上記のいわゆるスキャンタイプと呼ばれるインクジェット印刷方法では、単方向スキャンまたは双方向スキャンが行われる。単方向スキャンとは、プリントヘッドの往復動のうち往動時のみまたは復動時にのみ、ノズルからインクを吐出させて印刷を施す方式である。この方式では、布地が間欠搬送されて停止している時にプリントヘッドを布地の幅方向に沿って一方向に移動させてインクを吐出して印刷を施し、次に、布地をプリントヘッドの幅分だけ間欠搬送させて停止させるとともにプリントヘッドを元の位置に戻す。そして、再びプリントヘッドを一方向に移動させて印刷を施す。
【0004】
これに対して、双方向スキャンとは、プリントヘッドの往復動の往動時及び復動時の両方で、ノズルからインクを吐出させて印刷を施す方式である。この方式では、布地が間欠搬送されて停止している時にプリントヘッドを布地の幅方向に沿って一方向に移動させてインクを吐出して印刷を施し、次に、布地をプリントヘッドの幅分だけ間欠搬送させて停止させ、プリントヘッドを先の移動方向と反対の方向に移動させて印刷を施す。そして、布地をプリントヘッドの幅分だけ間欠搬送させて停止させ、再度プリントヘッドを一方向に移動させて印刷を施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5116542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
双方向スキャン方式を用いた場合、プリントヘッドの往復動の両方で印刷を行っているため、印刷速度が速くなる。しかし、以下の理由により、印刷品質が単方向スキャン方式よりも劣るという問題がある。
【0007】
図17(A)、図17(B)は搬送ベルト102に貼付けられた布地101上に、ヘッドユニット100が布地101の幅方向に沿って移動可能に設けられている。ヘッドユニット100は、布地101の幅方向に沿って複数並べられたプリントヘッド100a~100dを有している。プリントヘッド100a~100dには、布地101の幅方向に沿ってシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの各色のインクが充填されている。図17(A)に示す往動時には、布地101にはまずプリントヘッド100aからシアンのインクが吐出され、その上にプリントヘッド100bからマゼンダのインクが重ねて吐出され、次にプリントヘッド100cからイエロー、最後にプリントヘッド100dからブラックのインクが順に重ねて吐出されて印刷が施される。
【0008】
図17(B)に示す復動時には、往動時とは逆順に印刷が施される。すなわち、布地101にはまずプリントヘッド100dからブラックのインクが吐出され、その上にプリントヘッド100cからイエローのインクが重ねて吐出され、次にプリントヘッド100bからマゼンダ、最後にプリントヘッド100aからシアンのインクが順に重ねて吐出されて印刷が施される。
【0009】
このように、双方向スキャン方式ではプリントヘッドの往動時と復動時とで色の重ねる順序が変わるため、印刷された色が所望の色とは異なる色に見えたり、縞模様が浮き上がって見えることがあり、印刷の品質が低下する場合がある。特に、いわゆるベタ柄と呼ばれる、布地の比較広い面積に一色に見える印刷を施す場合にこの品質の低下が現れやすい。
【0010】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、品質の低下を防ぐとともに高速で印刷することが可能な印刷装置及び印刷方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による印刷装置は、表面にシート状の印刷対象物が載置される支持面を有し、一対のローラに架け渡された環状の搬送ベルトと、前記ローラを駆動させる駆動部と、布地の表面にインクジェット印刷を施す複数のプリントヘッドと、前記プリントヘッドを布地の搬送方向と直交する方向に移動させる移動機構と、前記駆動部の動作を制御して搬送ベルトを周回させながら前記移動機構の動作を制御して前記プリントヘッドを移動させる間に、前記プリントヘッドにインクジェット印刷を施させる制御装置を備え、前記制御装置は、前記搬送ベルトが一周する毎に、印刷対象物の搬送方向と直交する方向に沿って、前記プリントヘッドがプリントヘッドの印刷ピッチに相当する距離を移動するように、前記駆動部及び前記移動機構の動作を制御する。
【0012】
搬送ベルトを周回させながらプリントヘッドを搬送ベルトによる印刷対象物の搬送方向に直交する方向へ移動させることにより、印刷対象物の搬送方向に対して斜めの方向に印刷ピッチ幅の帯状の印刷が施される。このとき、プリントヘッドの移動速度を、搬送ベルトが一周する毎に、印刷対象物の搬送方向と直交する方向に沿って、プリントヘッドがプリントヘッドの印刷ピッチに相当する距離を移動する速度とすることで、印刷対象物上には、帯状の印刷が隙間無く施される。なお、印刷ピッチとは、1つのプリントヘッドがインクを吐出することが可能な長さであり、布地の幅方向に沿う長さである。
【0013】
上記の構成によれば、プリントヘッドは印刷時には一方向にのみ移動しており、複数のプリントヘッドの色が重なる順序が変わることがなく、また、従来技術のように1回のスキャン毎にプリントヘッドをもとの位置に戻す必要がないため、印刷の高速化を図るとともに印刷の品質が保たれる。
【0014】
前記印刷対象物は、帯状であって、前記搬送ベルトの周長さよりも短いことが好ましい。
【0015】
前記複数のプリントヘッドは、布地の搬送方向と直交する方向に沿って並べられるものであってもよい。
【0016】
前記複数のプリントヘッドは、布地の搬送方向に沿って並べられていてもよい。
【0017】
本発明による印刷方法は、表面に印刷対象物を載置した環状の搬送ベルトを周回させながら、プリントヘッドを前記搬送ベルトによる印刷対象物の搬送方向に直交する方向へ移動させることにより、印刷対象物の表面に印刷対象物の搬送方向に対して斜めの方向に印刷を施すものである。前記プリントヘッドの移動速度は、前記搬送ベルトが一周する毎に、印刷対象物の搬送方向と直交する方向に沿って、プリントヘッドの印刷ピッチに相当する距離を移動する速度である。
【0018】
上記の方法によれば、プリントヘッドは印刷時には一方向にのみ移動しており、複数のプリントヘッドの色が重なる順序が変わることがなく、また、プリントヘッドをもとの位置に戻す必要がないため、印刷の高速化を図るとともに印刷の品質が保たれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、印刷の品質の悪化を防ぐとともに高速で印刷することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置の全体の概略構成を示す平面図である。
図2】印刷装置の全体の概略構成を示す側面である。
図3】移動機構の構成を示す側面図である。
図4】ヘッドユニットの構成を示す説明図である。
図5】布地が貼付けられた搬送ベルトをA-A線で切り開いた説明図である。
図6】印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
図7】印刷方法の説明図である。
図8】印刷方法の説明図である。
図9】印刷方法の説明図である。
図10】印刷装置の全体の概略構成を示す斜視図である。
図11】ガイド機構の拡大断面図である。
図12】ガイド機構の他の例を説明するための(A)は平面図、(B)は拡大断面図である。
図13】ヘッドユニットの構成の他の例の説明図である。
図14図13のヘッドユニットを用いた印刷方法の説明図である。
図15】(A)はヘッドユニットの構成の他の例の説明図であり、(B)は(A)のヘッドユニットを用いた印刷方法の説明図である。
図16】(A)はヘッドユニットの構成の他の例の説明図であり、(B)は(A)のヘッドユニットを用いた印刷方法の説明図である。
図17】従来技術を示す図であり、(A)は往動時、(B)は復動時である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(全体構成)
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1図2図10は、本発明の一実施形態のインクジェット印刷装置1を示す。インクジェット印刷装置1は、印刷対象物である布地Cの搬送機構10と、インクジェット印刷機構20と、制御装置41とを備える。なお、印刷対象物はシート状であれば素材は布地に限定されず、例えば紙であってもよい。また、布地Cの場合には、綿、絹などの天然繊維からなる布や、ポリエステル、レーヨン、アセテートなどの人造繊維からなる布であってもよい。なお、本明細書における図は、実際の縮尺によるものではない。
【0022】
(搬送機構10)
搬送機構10は、搬送ベルト11と、基台(図示せず)の両端に取付けられた上流側の従動ローラ12a及び下流側の駆動ローラ12bとを備えている。搬送ベルト11は表面に布地Cが載置される支持面11aを有しており、従動ローラ12a及び駆動ローラ12bに架け渡されており、図2に示すように、側面からみた形状が環状である。駆動ローラ12bには、駆動部として例えばサーボモータ13が取付けられており、サーボモータ13の回転力が駆動ローラ12bに伝達されて搬送ベルト11を周回させる。本実施形態では、図2において搬送ベルト11は反時計回りに周回し、この方向を布地Cの搬送方向((図1における矢印A1の方向)という。搬送ベルト11はウレタンゴム等の弾性体により構成され、搬送ベルト11の支持面11aに粘着剤が塗布されており、布地Cが貼付けられている。なお、搬送ベルト11は例えばスチール等の金属により構成されるベルトであってもよい。本明細書では、図1における上下方向を布地Cまたは搬送ベルト11の幅方向、または単に「幅方向」「X方向」といい、幅方向に直交する方向を「Y方向」という。Y方向は搬送方向及び搬送方向に対して反対方向を含む。
【0023】
基台には、搬送ベルト11の搬送を案内するためのガイド機構14が設けられている。本実施形態では、ガイド機構14は、幅方向に沿って搬送ベルト11の両側に設けられた一対のガイド部材14A、14Aである。図11に示すように、各ガイド部材は、断面形状において略直方体の部材の角部の一部が切り取られたであり、搬送ベルト11の両側端部が当接する当接面14aと、搬送ベルト11の側端部を下側から支える支持面14bとが形成されている。一対のガイド部材14A,14Aの当接面14a、14aの間の距離は、搬送ベルト11の幅方向の長さとほぼ同じである。搬送ベルト11はその両側端部がガイド部材14A、14Aの当接面14aに当接して搬送されるため、搬送ベルト11の搬送時に搬送ベルト11が幅方向や斜め方向にずれたり曲がすることが防がれ、インクジェット印刷機構20による印刷時に印刷部分にずれが生じにくくなる。
【0024】
なお、ガイド機構14は図11の形態に限定されず、搬送ベルト11の搬送時に搬送ベルト11が幅方向や斜め方向に曲がすることを防ぐことができればいずれの形態でもよい。例えば、図12(A)、図12(B)に示すように、ガイド機構14は、搬送ベルト11の裏面にY方向に沿って搬送ベルト11の1周にわたって設けられた突条14Bと、この突条14Bに係合する周溝が設けられたプーリー14Cから構成されていてもよい。プーリー14Cは基台に設けられた支持フレーム15にベアリングを介して回転可能に支持されており、プーリー14Cに突条14Bが係合することで、搬送ベルト11の搬送が案内される。
【0025】
図5は布地Cが貼付けられた搬送ベルト11を図1のA-A線で切り開いて平面に表した説明図であり、本実施形態においては、布地Cは帯状であり、布地Cの長さ方向が搬送ベルト11の周方向に沿うように貼付けられている。また、布地Cの長さは搬送ベルト11の一周長さよりも若干短く設定されており、布地Cが搬送ベルト11に貼付けられた状態で、搬送方向の先端側の側縁Caと後端側の側縁Cbの間は搬送ベルト11の表面が露出している。布地Cには、Y方向(搬送方向)に対して斜めの方向に印刷ピッチL1の幅で印刷が施される。
【0026】
(インクジェット印刷機構20の構成)
本実施形態のインクジェット印刷機構20はいわゆる「スキャンタイプ」と呼ばれる印刷を行うものであり、布地Cの搬送方向と直交する方向に沿って並べられ、布地Cの表面にインクジェット印刷を施す複数のプリントヘッド22a~22dと、このプリントヘッド22a~22dを布地Cの搬送方向と直交する方向、すなわち布地Cの幅方向に移動させる移動機構30と、布地位置検出部とを備えている。
【0027】
(ヘッドユニット21)
図4に示すように、複数の(本実施形態では4つの)プリントヘッド22a~22dは、ハウジングに収容されてヘッドユニット21を構成している。プリントヘッド22a~22dは、従来のプリントヘッドと同様の構成を備えており、布地Cの幅方向に所定の間隔L2を空けて一列に並んで配置されている。なお、間隔L2を開けずに連続して配置されていてもよい。各プリントヘッド22a~22dには布地Cに向けてインクを吐出するノズル23が布地Cの幅方向に複数並んで設けられており、制御装置41によりノズル毎にインクの吐出量や吐出タイミングが制御される。なお、図4ではノズル23はプリントヘッド22a~22d毎に1列のみ設けられているが、複数列設けられていてもよい。各プリントヘッド22a~22dによってインクが布地Cに吐出可能な幅であって布地Cの幅方向に沿った長さ(図1図4においては、各プリントヘッド22a~22dの布地Cの幅方向に沿った長さとして示される)を各プリントヘッド22a~22dの印刷ピッチL1という。各プリントヘッド22a~22dには、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのプロセスカラーと呼ばれる4色のインクがそれぞれ充填されている。なお、プリントヘッド22a~22dの数は4つに限定されず、5つ以上備えていてもよく、3つ以下であってもよい。プリントヘッド22a~22dに充填されるインクの色も本実施形態に限定されない。
【0028】
また、図示しないが、各プリントヘッド22a~22dは、脱気モジュールを介してインクタンクに接続されており、インクタンクから導出されたインクは、脱気モジュールでインク中に含まれる気体が取り除かれた後、各プリントヘッド22a~22dに充填される。
【0029】
なお、図1に示すように、ヘッドユニット21は、印刷を行わないときは搬送ベルト11の外側の待機位置Pで停止している。ヘッドユニット21は移動機構30により往復動が可能であり、印刷時には待機位置Pから布地Cを挟んで反対側に向かう方向(以下、「印刷方向」といい、図1において下から上に向かう矢印A2の方向である。)に移動する。
【0030】
(移動機構30)
このヘッドユニット21に隣接して、布地Cの幅方向に延びる移動機構30が基台に設置されている。移動機構30は、搬送ベルト11の上方において、ヘッドユニット21を布地Cの幅方向の一端と他端との間で移動させるものである。移動機構30は、ヘッドユニット21を支持する断面L字状のユニット支持部材31と、布地Cの幅方向に延びるガイドフレーム32と、ユニット支持部材31をガイドフレーム32に沿って移動させるリニアモータ機構33と、ヘッドユニット21の布地Cの幅方向の移動距離を測定する測定部34とを備える。
【0031】
ガイドフレーム32のユニット支持部材31の背面31aと対向する面32aには、上下に2本の断面T字形状のレール35、35が布地Cの幅方向に沿ってガイドフレーム32の略全長にわたって設けられ、2本のレール35、35の間には、ガイドフレーム32の略全長にわたって溝32bが形成されている。この溝32bには、リニアモータ機構33の固定子を構成する磁石33aが溝32bの略全長にわたって設置されている。ユニット支持部材31の背面31aには、幅方向に2つ、上下方向に2つの計4つのスライド部材36、36、36、36が設けられ、スライド部材36、36、36、36には、レール35に対応する形状を有する溝36aが形成されている。このスライド部材36、36、36、36の溝36aとガイドフレーム32のレール35、35とが係り合って摺動することで、ガイドフレーム32に沿ってユニット支持部材31が布地Cの幅方向に摺動する。
【0032】
ユニット支持部材31の背面31aであって磁石33aと対向する位置には、リニアモータ機構33の移動子を構成するコイル部33bが設けられている。コイル部33bは制御装置41と接続され、制御装置41によりコイル部33bに電流が流されることにより、コイル部33bと磁石33aとの間に推進力が発生し、ユニット支持部材31に支持されたヘッドユニット21が布地Cの幅方向に移動する。なお、ユニット支持部材31の移動はリニアモータ機構33に限定されず、ユニット支持部材31に支持されたヘッドユニット21が布地Cの幅方向に沿って移動できればいずれの形態でもよく、例えば、ユニット支持部材31にタイミングベルトを取りつけ、タイミングベルトが掛け渡されたタイミングプーリをサーボモータにより駆動させてユニット支持部材31を移動させてもよく、また、ボールネジと、このボールネジに螺合されたナットを用い、ナットにユニット支持部材31が取付けられ、サーボモータによりボールネジを回転させることでユニット支持部材31を移動させてもよい。
【0033】
測定部34は、磁気スケール34aと検出器34bとを備えている。磁気スケール34aは、ガイドフレーム32の下側のレール35の下方に、布地Cの幅方向に沿ってガイドフレーム32の略全長にわたって取付けられている。磁気スケール34aは、磁性材料にN極、S極が交互に並ぶ磁気パターンを形成して、この磁気パターンを目盛りとして利用するものであり、例えば10μmのピッチで目盛りが設けられている。ユニット支持部材31の背面31aには、磁気スケール34aに対向する位置に検出器34bが取付けられている。検出器34bは、磁気スケール34aの目盛りを読み取り可能な磁気抵抗効果素子等の磁気センサからなり、ユニット支持部材31の移動とともに磁気スケール34aに沿って移動する。検出器34bは制御装置41と接続されて、磁気スケール34aの目盛りを通過する毎にパルス信号を発生して制御装置41に送信している。なお、測定部34は本実施形態に限定されず、制御装置41がヘッドユニット21の移動距離を算出できればいずれの構成でもよく、例えば光の反射を用いる光学式の測定部であってもよい。
【0034】
(布地位置検出部)
布地位置検出部は、搬送ベルト11に対する布地Cの貼付け位置を検出するものであり、布地Cの4つの側縁Ca,Cb,Cc,Cdのうち、搬送方向の先端側の側縁Caの位置を検出する原点マーク37及び第1原点検知センサ38と、ヘッドユニット21の待機位置P側の側縁Ccの位置を検出する第2原点検知センサ39とを備えている。
【0035】
原点マーク37は、図1に示すように、原点マーク37のY方向(搬送方向)の位置が先端側の側縁Caの位置と揃うように、搬送ベルト11の幅方向の待機位置P側の一端に設けられる。原点マーク37は布地Cの搬送ベルト11への貼付け前に搬送ベルト11に設けられ、布地は側縁Caの位置が原点マーク37と揃うように搬送ベルト11に貼付けられてもよく、搬送ベルト11に布地Cが貼付けられた後に、布地Cの先端側の側縁Caの位置に合わせて原点マーク37を搬送ベルト11に取付けてもよい。原点マーク37は、例えば表面に反射面を有するシール部材である。
【0036】
第1原点検知センサ38は、例えば光電センサであり、光を発する発光部と、光を受ける受光部とを備える。第1原点検知センサ38は、ガイドフレーム32の一端に取付アーム32cを介して取付けられ、搬送ベルト11の幅方向において原点マーク37に対応した位置に設けられている。搬送ベルト11の周回により原点マーク37が第1原点検知センサ38の直下を通過すると、第1原点検知センサ38の発光部が発した光が原点マーク37で反射されて受光部で受け取られ、これにより原点マーク37を検知する。第1原点検知センサ38は制御装置41に接続されており、原点マーク37を検知したことを示す第1原点検知信号を制御装置41に送信する。
【0037】
第2原点検知センサ39は、ユニット支持部材31の底面の下面に設けられ、例えば光電センサであり、光を発する発光部と、発光部が発し、光を受ける受光部とを備え、発光部が下向きに光を発するように設けられている。ガイドフレーム32に沿ってユニット支持部材31を移動させる際に、第2原点検知センサ39が搬送ベルト11上にある場合には、発光部が発した光が搬送ベルト11で反射されて受光部で受け取られ、第2原点検知センサ39が布地C上にある場合には、発光部が発した光が布地Cで反射されて受光部で受け取られる。このとき、布地Cと搬送ベルト11とでは光の反射率が異なるため、第2原点検知センサ39の受光部が受け取る光の量が異なる。第2原点検知センサ39は制御装置41に接続されており、受光部が受けた光の量を示す第2原点検知信号を制御装置41に送信する。
【0038】
(制御装置41)
制御装置41は、サーボモータ13の動作を制御して搬送ベルト11を周回させながら、移動機構30のリニアモータ機構33のコイル部33bの動作を制御してプリントヘッド22a~22dを移動させている間にプリントヘッド22a~22dにインクジェット印刷を施させるものである。制御装置41は、搬送ベルト11が一周する毎に、布地Cの幅方向に沿って、プリントヘッド22a~22dが、プリントヘッド22a~22dの印刷ピッチL1に相当する距離を移動するように、サーボモータ13及び移動機構30のコイル部33bの動作を制御している。
【0039】
制御装置41は、CPU41a、メモリ41b、ハードディスク41c、入出力インターフェース41d等から構成されるコンピュータである。制御装置41は、プリントヘッド22a~22d、サーボモータ13、リニアモータ機構33のコイル部33b、第1原点検知センサ38、第2原点検知センサ39、インクジェット印刷機構20の測定部34の検出器34bの各部と接続されており、CPU41aがハードディスク41cやメモリ41bに記憶されたプログラムを実行し、入出力インターフェース41dを介して各部を制御する。また、制御装置41にはタッチパネル42などの入力部及び表示部が接続されており、作業者により印刷に必要なパラメータが入力されるとともに、印刷装置1の動作開始や終了の指示が作業者から入力される。
【0040】
制御装置41はサーボモータ13の駆動を制御するとともに、サーボモータ13の回転軸に設けられたエンコーダから出力されるパルス信号を受信する。このサーボモータ13のパルス信号のパルスのカウント値は、搬送ベルト11の移動距離、すなわち布地Cの搬送距離に相当し、制御装置41はパルス信号のカウント値に基づいてサーボモータ13の駆動を制御することで、搬送ベルト11の周回移動を制御している。なお、搬送ベルト11の移動の制御の方法はこれに限定されず、例えば、搬送ベルト11の全長に光学式又は磁気式のスケールを設け、このスケールに対向する位置にスケールを読み取るための検出器を設け、検出器が発するパルス信号に基づいて搬送ベルト13の駆動部を制御することで、搬送ベルト11の周回移動を制御してもよい。
【0041】
制御装置41は、リニアモータ機構33のコイル部33bに流れる電流を制御して、ヘッドユニット21(プリントヘッド22a~22d)の布地Cの幅方向の移動を制御する。制御装置41には、インクジェット印刷機構20の検出器34bからのパルス信号が入力される。検出器34bのパルス信号のパルスのカウント値は、ヘッドユニット21の移動距離に相当する。
【0042】
制御装置41は、第1原点検知センサ38から第1原点検知信号を受信して、布地Cの先端側の側縁Caを検知する。制御装置41は、搬送ベルト11を一周させた際に、第1原点検知信号を受信すると、布地Cの先端側の側縁Caを検知したものと判断して、その時点でのサーボモータ13のパルス信号のカウント値をゼロ(原点)とする。すなわち、搬送ベルト11が1周する毎に、サーボモータ13のカウント値はゼロになる。
【0043】
制御装置41は、第2原点検知センサ39から第2原点検知信号を受信して、布地Cのヘッドユニット21の待機位置P側の側縁Ccを検知する。制御装置41は、搬送ベルト11上に位置している時の第2原点検知信号の値と、布地C上に位置している時の第2原点検知信号の値との間の値に設定された閾値を記憶している。プリントヘッド22a~22dを待機位置Pから布地Cの幅方向に沿って搬送ベルト11上を移動させ、第2原点検知センサ39の位置が搬送ベルト11上から布地C上に移動した時に、第2原点検知信号の値が閾値を下回るため、布地Cのヘッドユニット21の待機位置P側の側縁Ccが検知されたと判断する。
【0044】
また、メモリ41bには、第1原点検知センサ38とプリントヘッド22a~22dとの間のY方向(搬送方向)に沿う距離L3(図1)に相当する、サーボモータ13からのパルス信号のパルス数が記憶されている。さらに、メモリ41bには、印刷方向の最も先端側のプリントヘッド22aから第2原点検知センサ39までの距離L4(図4)に相当する、検出器34bからのパルス信号のパルス数が記憶されている。
【0045】
また、メモリ41bには、印刷用データが記憶されている。制御装置41は、印刷用データに基づき、布地C上に所定の図柄を有する印刷形状の印刷を施すように各プリントヘッド22a~22dのノズル23からのインクの吐出を制御する。本実施形態では、印刷用データにおいては、布地Cに施す印刷形状が、布地Cの幅方向の長さD1、印刷形状のY方向(搬送方向)の長さD2の矩形状に設定されている。この印刷形状の大きさは、布地Cよりもひとまわり小さく、布地C上に所定の図柄の印刷形状の印刷が施されて布地C上に印刷領域が形成されたときに、印刷領域の周りに余白が生じる。
【0046】
詳細には、印刷用データは、各プリントヘッド22a~22dの布地Cに対するY方向(搬送方向)の位置及び印刷方向(幅方向)の位置に対応して、各プリントヘッド22a~22dが有する各ノズル23のインクの吐出の有無を示したものである。この印刷用データにおいては、布地C上の前記余白に相当する部分及び搬送ベルト11が布地Cに覆われていない部分には印刷が施されないように、各プリントヘッド22a~22dのノズル23がこれらの部分の上方に位置する場合には、これらのノズル23からインクが吐出されないことを示す空白データが設定されている。印刷用データは搬送ベルト11の1周長さに対応するデータを含んでいる。
【0047】
なお、本実施形態では印刷形状の大きさは布地Cよりもひとまわり小さく設定されているが、これに限定されず、印刷形状が布地Cよりも大きく設定されていてもよい。この場合、布地C全面に印刷を施すことが可能となる。
【0048】
制御装置41には、タッチパネル42から布地Cへの印刷開始位置に関する情報が作業者により入力されてメモリ41bに記憶される。印刷開始位置に関する情報は、例えば、布地C上に所定の図柄の印刷形状の印刷が施されて布地C上に印刷領域が形成されたときに、印刷領域の周りに生じる余白の長さである。すなわち、布地Cの搬送方向の先端側の側縁Caから布地C上の印刷領域までの長さであるY方向(搬送方向)の余白長さD3と、布地Cの幅方向の待機位置P側の側縁Ccから印刷領域までの長さである幅方向の余白長さD4とが入力される。従って、印刷開始位置とは、Y方向においては布地Cの側縁Caから余白長さD3後端側の位置であり、幅方向においては布地Cの側縁Ccから余白長さD4先端側の位置である。なお、メモリ41bに予め余白長さD3、D4が記憶されていてもよい。
【0049】
(初期設定)
次に、本発明のインクジェット印刷装置1による印刷を行う際の初期設定動作について説明する。作業者は、搬送ベルト11に設けられた原点マーク37に対応する位置に布地Cの先端側の側縁Caが位置するように、搬送ベルト11に布地Cを貼付ける。次に、作業者は、タッチパネル42から、布地Cに対して印刷開始位置に関する設定値を入力する。具体的には、Y方向(搬送方向)の余白長さD3と幅方向の余白長さD4とを入力する。
【0050】
そして、作業者は、タッチパネル42から初期設定開始を制御装置41に指示する。制御装置41は、サーボモータ13を駆動させて搬送ベルト11を一周させる。搬送ベルト11が一周する間に原点マーク37が第1原点検知センサ38の下を通過し、制御装置41は、第1原点検知センサ38から第1原点検知信号を受信する。この受信により、制御装置41は布地Cの先端側の側縁Caを検知し、受信時点でのサーボモータ13のパルス信号のカウント値をゼロ(原点)とする。
【0051】
次に、制御装置41は、搬送方向における印刷開始時を示すサーボモータ13のパルス信号のカウント値を設定する。印刷開始時のカウント値として、搬送方向の余白長さD3に相当するパルス数に、第1原点検知センサ38とプリントヘッド22a~22dとの間の搬送方向に沿う距離L3に相当するパルス数を加えた値を設定し、その値を記憶する。
【0052】
次に、制御装置41は、移動機構30を駆動させてヘッドユニット21を待機位置Pに位置させる。このときの測定部34の検出器34bのパルス信号のカウント値をゼロ(原点)とする。また、サーボモータ13を駆動して、布地Cをヘッドユニット21の下に位置させる。そして、ヘッドユニット21を待機位置Pから搬送ベルト11を挟んで反対側の位置まで移動させる。制御装置41は、第2原点検知センサ39から第2原点検知信号を受信しており、第2原点検知信号の値が閾値を下回った時に、布地Cのヘッドユニット21の待機位置P側の側縁Ccが検知されたと判断して、そのときの検出器34bのパルス信号のパルス数を記憶する。
【0053】
制御装置41は、印刷方向における印刷開始時を示す検出器34bのパルス信号のパル数を設定する。印刷開始時のパルス数として、布地Cのヘッドユニット21の待機位置P側の側縁Ccが検知された時のパルス数から、待機位置Pにおいて布地Cに最も近いプリントヘッド22a~22dから第2原点検知センサ39までの距離L4に相当する検出器34bからのパルス信号のパルス数を引き、さらに、幅方向の余白長さD4に相当するパルス数を加えた値を設定し、その値を記憶する。
【0054】
(印刷方法)
次に、本実施形態の印刷装置1を用いた印刷方法について説明する。本実施形態の印刷方法は、搬送ベルト11を周回させながら、複数のプリントヘッド22a~22dを搬送ベルト11による布地Cの搬送方向に直交する方向、すなわち布地Cの幅方向へ移動させるものである。プリントヘッド22a~22dの移動速度は、搬送ベルト11が一周する毎に、布地Cの搬送方向と直交する方向に沿って、各プリントヘッド22a~22dの印刷ピッチL1に相当する距離を移動する速度である。搬送ベルト11が複数回周回して、布地Cの表面に布地Cの搬送方向に対して斜めの方向に、印刷ピッチL1の幅の帯状の印刷が隙間無く施される。
【0055】
図5は、プリントヘッド22aによって布地Cの表面に施された印刷部分の例を示している。搬送ベルト11が1周する間に印刷部分C1が印刷され、次の搬送ベルト11の1周により印刷部分C2が印刷され、順次、搬送ベルトの周回毎に印刷部分C3・・・C7が印刷される。各印刷部分C1~C7は布地の搬送方向に対して斜め方向に延びている。各印刷部分の搬送方向に対する角度は、印刷ピッチL1と搬送ベルト11の一周長さに応じて定まる。制御装置41は、印刷用データに基づき印刷を施しており、印刷用データは、上述したように、布地C上の前記余白に相当する部分及び搬送ベルト11が布地Cに覆われていない部分の上方にプリントヘッド22aのノズル23が位置する場合には、これらのノズル23からインクが吐出されない設定となっているため、印刷部分C1、C6,C7は完全な帯状とはならず、所望の印刷用データの印刷形状に沿った形状となる。
【0056】
印刷方法の詳細について、図7~9を用いて説明する。なお、図7図9においては、説明の便宜上、ヘッドユニット21が有するプリントヘッド22a、22bの数を2つとして説明しているが、プリントヘッド22a、22bの数は2つに限定されるものではない。また、図7図9においては、布の幅方向の長さ、搬送ベルト11の幅方向の長さ、プリントヘッド22a、22bの印刷ピッチL1やプリントヘッド22a、22b間の間隔L2は、実際の縮尺によるものではなく、また、図には搬送ベルト11と、布地Cと、プリントヘッド22a、22bのみを示しており、他の部材の図示を省略している。
【0057】
制御装置41は作業者から印刷開始の指示を受け取ると、サーボモータ13のパルス信号のカウント値が印刷開始時の設定値に達し、検出器34bのパルス信号のカウント値が印刷開始時の設定値に達するまでサーボモータ13及び移動機構30を駆動させて、印刷方向の最も先端側のプリントヘッド22aを印刷開始位置に移動させる(図7(A))。
【0058】
次に、制御装置41は、メモリ41bに記憶された印刷用データに基づいてインクジェット印刷行う。印刷時に、制御装置41は、サーボモータ13の動作を制御して搬送ベルト11を周回させながら、移動機構30の動作を制御してプリントヘッド22a、22bを移動させる。プリントヘッド22a、22bが移動する速度は、搬送ベルト11が一周する毎に、布地Cの搬送方向と直交する方向に沿って、プリントヘッド22a、22b(ヘッドユニット21)がプリントヘッド22a、22bの印刷ピッチL1に相当する距離を移動する速度である。搬送ベルト11が約半周周回したときには、図7(B)に示すように、プリントヘッド22aにより印刷用データに基づき布地Cの搬送方向に対して斜めの方向に印刷が施されている。
【0059】
制御装置41は、印刷用データに基づき、布地Cが印刷形状の搬送方向の長さD2の距離を搬送されるまでプリントヘッド22aに印刷を行わせ、その後に印刷を停止する。制御装置41は、印刷が停止している間もプリントヘッド22a、22b及び搬送ベルト11を動作させており、搬送ベルト11が一周したときには、プリントヘッド22a、22bがプリントヘッド22a、22bの印刷ピッチL1に相当する距離を移動している(図7(C))。制御装置41は、第1原点検知センサ38から第1原点検知信号を受け取り、サーボモータ13のパルスのカウント値をゼロとし、印刷用データに基づき印刷を開始する。
【0060】
搬送ベルト11の2周目においては、プリントヘッド22aは、搬送ベルト11の1周目で施された印刷ピッチL1の幅の帯状の印刷部分に隣接して、印刷ピッチL1で、搬送方向に対して斜めに印刷を施していく。
【0061】
プリントヘッド22bが布地Cの幅方向の印刷開始位置に到達すると(図8(D))、制御装置41は、プリントヘッド22bに、プリントヘッド22aによる印刷部分に重ねて印刷を開始させる。さらに印刷が進み、布地Cが印刷形状の搬送方向の長さD2の距離を搬送されると、制御装置41は印刷用データに基づき印刷を停止する。制御装置41は、印刷が停止している間もプリントヘッド22a、22b及び搬送ベルト11を移動させている。搬送ベルト11が二周したときには、プリントヘッド22a、22bは、印刷ピッチL1の2倍に相当する距離を印刷方向に移動している(図8(E))。この後、搬送ベルト11の3周目においてプリントヘッド22a、22bによる印刷が施される(図8(F))。
【0062】
プリントヘッド22aの先端が印刷形状の幅方向の長さD1を進み印刷停止位置に達したときには、制御装置41は、印刷用データに基づきプリントヘッド22aの先端のノズル23からインクの吐出を停止させ、プリントヘッド22aの後端が印刷停止位置に達したときには、プリントヘッド22aの全てのノズル23でインクの吐出を停止して印刷を停止させる(図9(G))。プリントヘッド22bによる印刷は引き続き行われ、プリントヘッド22bの後端が印刷停止位置に達したときには、全てのノズル23でインクの吐出を停止して印刷を停止する(図9(G))。そして、制御装置41は、布地Cに対する印刷が終了したと判断して、移動機構30を動作させてヘッドユニット21を待機位置Pまで戻す。
【0063】
上記の印刷方法及び印刷装置により、布地Cには、各プリントヘッド22a、22bによって搬送方向に対して斜めの方向に印刷が施された印刷領域が形成される。
【0064】
上記の構成によれば、搬送ベルト11を周回させながらプリントヘッド22a~22dを搬送ベルト11による布地Cの搬送方向に直交する方向へ移動させることにより、布地Cの搬送方向に対して斜めの方向に印刷が施される。このとき、搬送ベルト11が一周する毎に、布地Cの搬送方向と直交する方向に沿って、プリントヘッド22a~22dがプリントヘッド22a~22dの印刷ピッチL1に相当する距離を移動することで、布地C上には、印刷ピッチ幅の帯状の印刷部分が隙間無く形成される。このため、プリントヘッド22a~22dは印刷時には一方向にのみ移動しており、複数のプリントヘッド22a~22dの色が重なる順序が変わることがなく、また、従来技術のように1回のスキャン毎にプリントヘッド22a~22dをもとの位置に戻す必要がないため、印刷の高速化を図るとともに印刷の品質が保たれる。
【0065】
図13にヘッドユニットの他の例を示す。図13に示すヘッドユニット51は、図4に示すヘッドユニット21とプリントヘッド52a~52dの並ぶ方向が異なっており、プリントヘッド52a~52dはY方向(搬送方向)に沿って所定の間隔を空けて並んで配置されている。なお、間隔を開けずに連続して配置されていてもよい。各プリントヘッド52a~52dには布地Cに向けてインクを吐出するノズル53が布地Cの幅方向に複数並んで設けられており、制御装置41によりノズル53毎にインクの吐出量や吐出タイミングが制御される。
【0066】
本実施形態のヘッドユニット51を用いて印刷を行う場合も、ヘッドユニット21の場合と同様に、搬送ベルト11を周回させながら、複数のプリントヘッド52a~52dを布地Cの幅方向へ移動させ、その移動速度は、搬送ベルト11が一周する毎に複数のプリントヘッド52a~52dが印刷ピッチL1に相当する距離を移動する速度である。
【0067】
ヘッドユニット51を用いて印刷は、以下のように行われる。
搬送方向の最も先端側のプリントヘッド52aが印刷開始位置に配置される。このとき、後続のプリントヘッド52bは、印刷開始位置から搬送方向の下流側に位置している(図14(A))。印刷が開始されると、プリントヘッド52a、52bからインクが吐出され、搬送ベルト11が約半周周回したときには、図14(B)に示すように、プリントヘッド52a、52bそれぞれにより印刷用データに基づき布地CのY方向(搬送方向)に対して斜めの方向に印刷が施されている。制御装置41は、印刷用データに基づき、布地Cの印刷形状に合わせてプリントヘッド52a、52bにそれぞれ印刷を行わせる。制御装置41は、印刷形状から外れた位置にプリントヘッド52a、52bが移動したと判断した時には各プリントヘッド52a、52bによる印刷を停止するが、印刷が停止している間もプリントヘッド52a、52b及び搬送ベルト11を動作させている。搬送ベルト11が一周したときには、プリントヘッド52a、52bが印刷ピッチL1に相当する距離を移動している(図14(C))。制御装置41は、上記の動作を繰り返して、ヘッドユニット51に順次印刷を行わせ、そして、プリントヘッド52a、52bの後端が印刷開始位置から印刷形状の幅方向の長さD1進んだ印刷停止位置に来た時に、印刷を終了する。(図14(D))。制御装置41は、布地Cに対する印刷が終了したと判断して、移動機構30を動作させてヘッドユニット21を待機位置Pまで戻す。
【0068】
上記の印刷方法及び印刷装置によれば、プリントヘッド52a~52dは印刷時には一方向にのみ移動しており、複数のプリントヘッド52a~52dの色が重なる順序が変わることがなく、また、従来技術のように1回のスキャン毎にプリントヘッド52a~52dをもとの位置に戻す必要がないため、印刷の高速化を図るとともに印刷の品質が保たれる。さらに、図13に示すヘッドユニット51は、幅方向の長さが図4に示すヘッドユニット21よりも短いため、ヘッドユニット51を布地Cの幅方向に移動させて印刷を施す際の移動距離を短くすることができる。
【0069】
他の構成および作用効果は図1に示す実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。なお、図14においては、説明の便宜上、ヘッドユニット51が有するプリントヘッド52a、52bの数を2つとして説明しているが、プリントヘッド52a、52bの数は2つに限定されるものではない。また、図14には搬送ベルト11と、布地Cと、プリントヘッド52a、52bのみを示しており、他の部材の図示を省略している。
【0070】
図15(A)、図15(B)にヘッドユニットの他の例を示す。図15のヘッドユニット61は、図4に示すヘッドユニット21とプリントヘッド62a~62dの並ぶ方向と、隣り合うプリントヘッド62a~62d間の間隔とが異なっており、プリントヘッド62a~62dは幅方向(布地Cの搬送方向に直交する方向)または搬送方向に対して斜め方向に沿って間隔を開けずに連続して配置されている。すなわち、各プリントヘッド62a~62dのノズル63は、幅方向または搬送方向に対して斜め方向に並んで配置されている。図15(B)に示すように、ノズル63が並ぶ斜め方向は、布地Cに斜めに印刷が施される方向に対して直交する方向であり、幅方向に対するノズル63の並ぶ方向の角度は印刷ピッチL1と搬送ベルト11の長さに応じて定められる。なお、本実施形態では、隣り合うプリントヘッド62a~62dの間隔を開けずに連続して配置しているが、間隔L2が設けられていてもよい。その他の構成は図4に示すヘッドユニットと同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図16(A)、図16(B)にヘッドユニットの他の例を示す。図16のヘッドユニット71は、図13に示すヘッドユニット51とプリントヘッド72a~72dの並ぶ方向と、隣り合うプリントヘッド72a~72d間の間隔とが異なっている。プリントヘッド72a~72dは幅方向(布地Cの搬送方向に直交する方向)または搬送方向に対して斜め方向に間隔を開けずに連続して配置されている。すなわち、各プリントヘッド72a~72dのノズル73は、幅方向または搬送方向に対して斜め方向に並んで配置されている。図16(B)に示すように、ノズル73が並ぶ斜め方向は、布地Cに斜めに印刷が施される方向に対して直交する方向であり、幅方向に対するノズル73の並ぶ方向の角度は印刷ピッチL1と搬送ベルト11の長さに応じて定められる。なお、本実施形態では、隣り合うプリントヘッド72a~72dの間隔を開けずに連続して配置しているが、間隔L2が設けられていてもよい。その他の構成は図13に示すヘッドユニットと同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【符号の説明】
【0073】
1 印刷装置
11 搬送ベルト
11a 支持面
12a、12b ローラ
13 サーボモータ(駆動部)
22a~22d プリントヘッド
30 移動機構
41 制御装置
C 布地(印刷対象物)
L1 プリントヘッドの印刷ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図11
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図17