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特許7440105動的に調整されたバッテリー電圧しきい値を用いて充電モードを切り換えるバッテリー充電システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】動的に調整されたバッテリー電圧しきい値を用いて充電モードを切り換えるバッテリー充電システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20240220BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240220BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H02J7/04 A
H02J7/00 301D
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021569367
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2020090939
(87)【国際公開番号】W WO2020233552
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】62/852,143
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505134165
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ホンコン
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF HONG KONG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ホイ,シュ ユエン ロン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ユン
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/043744(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0181824(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0344219(US,A1)
【文献】特開2009-112113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを充電するためのバッテリー充電システムであって、
上記バッテリーを充電するように構成された充電回路と、
上記充電回路に通信可能に接続されたコントローラとを備え、
上記コントローラは、
上記バッテリーの現在の健全度(SoH)又は最大の充電率(SoCmax)を含む、上記バッテリーの現在の状態を決定し、
上記現在の状態に基づいて、上記充電回路の充電モードを制御するためのしきい値電圧を動的に決定し、
充電中に上記バッテリーのバッテリー電圧を決定し、
上記バッテリー電圧が上記しきい値電圧未満である場合に、定電流(CC)モードを用いて上記バッテリーを充電するように上記充電回路を構成し、
上記バッテリー電圧が上記しきい値電圧以上である場合に、定電圧(CV)モードを用いて上記バッテリーを充電するように上記充電回路を構成する
ように構成され
上記充電回路は、
無線送電するように構成された送電側部分と、
上記送電側部分から無線受電し、上記送電側部分への制御フィードバックを提供することなく上記バッテリーを充電するように構成された受電側部分とを備える、
バッテリー充電システム。
【請求項2】
上記コントローラは、上記SoH又はSoCmaxに基づいて上記しきい値電圧を決定するようにさらに構成される、
請求項1記載のバッテリー充電システム。
【請求項3】
上記送電側部分は、直列の補償された回路を備え、
上記受電側部分は、直列の補償された回路を備える、
請求項記載のバッテリー充電システム。
【請求項4】
上記受電側部分は、直列の補償された回路を備え、
上記送電側部分は、並列の補償された回路を備える、
請求項記載のバッテリー充電システム。
【請求項5】
上記受電側部分は、直列の補償された回路を備え、
上記送電側部分は、誘導性-容量性-容量性(LCC)の補償された回路を備える、
請求項記載のバッテリー充電システム。
【請求項6】
上記受電側部分は、直列の補償された回路を備え、
上記送電側部分は、誘導性-容量性-誘導性(LCL)の補償された回路を備える、
請求項記載のバッテリー充電システム。
【請求項7】
上記受電側部分は整流器を備え、上記整流器は、上記整流器及び上記バッテリーの間の充電管理回路を用いることなく、上記バッテリーを充電するように構成される、
請求項記載のバッテリー充電システム。
【請求項8】
上記送電側部分は、コイル共振器と、上記コイル共振器の1次電圧及び1次電流をモニタリングするように構成された少なくとも1つのセンサとを備え、
上記コントローラは、
上記1次電圧及び上記1次電流に基づいて上記バッテリーの電圧及び電流を推定し、
上記バッテリーの推定された電圧及び推定された電流に基づいて上記バッテリーの状態を決定するようにさらに構成される、
請求項記載のバッテリー充電システム。
【請求項9】
上記コントローラは、上記受電側部分から上記バッテリーについての情報を受信することなく、上記バッテリーの電圧及び電流を決定するようにさらに構成される、
請求項記載のバッテリー充電システム。
【請求項10】
上記送電側部分は、複数のスイッチング信号によって制御される電力インバータを備え、
上記コントローラは、上記複数のスイッチング信号の移相角を制御して上記1次電流及び上記1次電圧を制御するようにさらに構成される、
請求項記載のバッテリー充電システム。
【請求項11】
上記電力インバータは、上記複数のスイッチング信号の移相角に従って、上記バッテリーを上記CCモード及び上記CVモードで充電する場合、同じスイッチング周波数で動作するように構成される、
請求項10記載のバッテリー充電システム。
【請求項12】
上記スイッチング周波数は、上記コイル共振器の共振周波数に実質的に等しい、
請求項11記載のバッテリー充電システム。
【請求項13】
上記送電側部分のコイル共振器の共振周波数は、上記受電側部分のコイル共振器の共振周波数に実質的に等しい、
請求項10記載のバッテリー充電システム。
【請求項14】
バッテリーの現在の健全度(SoH)又は最大の充電率(SoCmax)を含む、上記バッテリーの現在の状況を決定することと、
上記現在の状態に基づいて、上記バッテリーの充電モードを制御するためのしきい値電圧を動的に決定することと、
充電中に上記バッテリーのバッテリー電圧を決定することと、
上記バッテリー電圧が上記しきい値電圧未満である場合に、定電流(CC)モードを用いて上記バッテリーを充電することと、
上記バッテリー電圧が上記しきい値電圧以上である場合に、定電圧(CV)モードを用いて上記バッテリーを充電することと
充電器の送電側部分において無線送電することと、
上記送電側部分への制御フィードバックを提供することなく上記バッテリーを充電するように構成された上記充電器の受電側部分において無線受電することとを含む、
バッテリー充電方法。
【請求項15】
上記のしきい値電圧を動的に決定することは、上記SoH又はSoCmaxに基づいて上記しきい値電圧を決定することを含む、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
上記送電側部分に含まれた直列の補償された回路を用いて送電することと、
上記受電側部分に含まれた直列の補償された回路を用いて受電することとを含む、
請求項14記載の方法。
【請求項17】
上記送電側部分に含まれた並列の補償された回路を用いて送電することと、
上記受電側部分に含まれた直列の補償された回路を用いて受電することとを含む、
請求項14記載の方法。
【請求項18】
上記送電側部分に含まれた誘導性-容量性-容量性(LCC)の補償された回路を用いて送電することと、
上記受電側部分に含まれた直列の補償された回路を用いて受電することとを含む、
請求項14記載の方法。
【請求項19】
上記送電側部分に含まれた誘導性-容量性-誘導性(LCL)の補償された回路を用いて送電することと、
上記受電側部分に含まれた直列の補償された回路を用いて受電することとを含む、
請求項14記載の方法。
【請求項20】
上記受電側部分の整流器及び上記バッテリーの間の充電管理回路を用いることなく、上記バッテリーを充電することをさらに含む、
請求項14記載の方法。
【請求項21】
上記送電側部分のコイル共振器の1次電圧及び1次電流をモニタリングすることと、
上記1次電圧及び上記1次電流に基づいて上記バッテリーの電圧及び電流を推定することと、
上記バッテリーの推定された電圧及び推定された電流に基づいて上記バッテリーの状態を決定することとをさらに含む、
請求項14記載の方法。
【請求項22】
上記受電側部分から上記バッテリーについての情報を受信することなく、上記バッテリーの電圧及び電流を決定することをさらに含む、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
複数のスイッチング信号を用いて上記送電側部分の電力インバータを制御することと、
上記複数のスイッチング信号の移相角を制御して上記1次電流及び上記1次電圧を制御することと、をさらに含む、
請求項21記載の方法。
【請求項24】
上記複数のスイッチング信号の移相角に従って、上記バッテリーを上記CCモード及び上記CVモードで充電する場合、上記電力インバータを同じスイッチング周波数で動作させることをさらに含む、
請求項23記載の方法。
【請求項25】
上記スイッチング周波数は、上記コイル共振器の共振周波数に実質的に等しい、
請求項24記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張.
本願は、2019年5月23日に米国特許商標庁に出願された米国仮特許出願第62/852143号の優先権及び利益を主張し、その内容の全体は、あたかもすべての適用可能な目的のために完全に以下に示しているかのように、参照によって本願に援用される。
【0002】
技術分野.
下記に説明される技術は、概して、再充電可能なバッテリーに関し、具体的には、充電モードを制御するために動的に調整されたバッテリーしきい値電圧に基づいてバッテリーを充電する充電システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
図1は、例示的な2段階のバッテリー充電処理を示す図である。2つの段階は、定電流(constant-current:CC)モード及び定電圧(constant-voltage:CV)モードである。CCモードにおいて、システムは、定電流でバッテリーを充電する。CVモードにおいて、システムは、定電圧でバッテリーを充電する。充電率(state-of-charge:SoC)は、バッテリーの全容量の割合として定義されてもよく、これは、充電処理を制御するために使用されてもよい。健全度(state-of-health:SoH)は、新品の状態と比較したバッテリーの状態を示す。典型的には、バッテリーのSoHは、製造時に100%であり、時間及び使用に応じて次第に低下する。充電システムは、充電中にバッテリー状態(例えば、電圧及び電流)をモニタリングするバッテリー管理回路を有してもよい。充電モードの選択は、所定のSoCに対応するバッテリー電圧に依存しうる。一例では、バッテリー電圧が、所定の予め設定された値又はバッテリー基準値(Vbatref)より低い場合、充電システムはCCモードで動作し、一定の充電電流102をバッテリーに提供する。バッテリーがCCモードの定電流で充電される場合、バッテリー電圧は上昇する。バッテリー電圧(Vbat)が、予め設定された値又は基準値に到達又は超過したとき(例えば、Vbat≧Vbatref)、充電システムはCVモードに切り換わり、一定の充電電圧104をバッテリーに提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、充電モード(CCモード又はCVモード)を選択するために一定又は固定値の予め設定された電圧Vbatrefを用いることは、電池寿命の延長及び/又は充電効率の目的に関して、バッテリーの最適な充電をもたらさない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概して、本開示は、バッテリーの変化する最大の充電率(SoC)及び/又は健全度(SoH)に基づいて動的に決定又は更新されるバッテリー電圧しきい値を用いてバッテリーを充電する方法及びシステムを提供する。
【0006】
本開示の1つの態様は、バッテリーを充電するバッテリー充電システムを提供する。バッテリー充電システムは、バッテリーを充電するように構成された充電回路と、充電回路に通信可能に接続されたコントローラとを含む。コントローラは、バッテリーの現在の状態を決定し、現在の状態に基づいて、充電回路の充電モードを制御するしきい値電圧を動的に決定するように構成される。コントローラは、充電中にバッテリーのバッテリー電圧を決定し、バッテリー電圧がしきい値電圧未満である場合に定電流(CC)モードを用いてバッテリーを充電するように充電回路を構成し、バッテリー電圧がしきい値電圧以上である場合に定電圧(CV)モードを用いてバッテリーを充電するように充電回路を構成するようにさらに構成される。
【0007】
本開示のもう1つの態様は、バッテリーの充電方法を提供する。本方法は、バッテリーの現在の状態を決定し、現在の状態に基づいて、バッテリーの充電モードを制御するしきい値電圧を動的に決定する。本方法はさらに、充電中にバッテリーのバッテリー電圧を決定し、バッテリー電圧がしきい値電圧未満である場合に定電流(CC)モードを用いてバッテリーを充電し、バッテリー電圧がしきい値電圧以上である場合に定電圧(CV)モードを用いてバッテリーを充電する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】例示的な2段階のバッテリー充電処理を示す図である。
図2】本開示のいくつかの態様に係る例示的なバッテリー充電システムを示す図である。
図3】、例示的なバッテリーの充電率(SoC)特性の変動を示す図である。
図4】本開示のいくつかの態様に係る例示的な充電プロファイルを示す図である。
図5】本開示のいくつかの態様に係る、例示的なバッテリーの健全度(SoH)の変化に関するしきい値電圧の変動を示す図である。
図6】合計電荷を強調した例示的な充電プロファイルを示す図面である。
図7】本開示のいくつかの態様に係る、例示的なバッテリーのしきい値電圧(Vbatref)及び最大SoC(SoCmax)の間のマッピングを示す図である。
図8】SoCを決定するために本開示において使用されうる2つの例示的なバッテリー回路モデルを示す。
図9】SoCを決定するために本開示において使用されうる2つの例示的なバッテリー回路モデルを示す。
図10】本開示のいくつかの態様に係る、充電モードを選択するために動的に更新されるしきい値電圧を用いる例示的な充電手順を示すフローチャートである。
図11】本開示のいくつかの態様に係る例示的な無線充電システムを示すブロック図である。
図12】例示的な電力インバータ回路を示す図である。
図13】本開示のいくつかの態様に係る電力インバータ回路の例示的な制御信号を示す図である。
図14】本開示のいくつかの態様に係る電力インバータ回路の例示的な制御信号を示す図である。
図15】本開示のいくつかの態様に係る例示的な電圧センサを示す図である。
図16】本開示のいくつかの態様に係る例示的な電流センサを示す図である。
図17】本開示のいくつかの態様に係る、図11の無線充電システムの一部の簡単化された等価回路である。
図18】本開示のいくつかの態様に係る、充電モードを選択するための例示的な制御ブロックを示すブロック図である。
図19】本開示のいくつかの態様に係る、充電モードを選択するためのもう1つの例示的な制御ブロックを示すブロック図である。
図20】本開示のいくつかの態様に係る、補償された無線電力伝送(WPT)システムを示す図である。
図21】本開示のいくつかの態様に係る、図20のWPTシステムの簡単化された等価回路を示す図である。
図22】本開示のいくつかの態様に係る、図20のWPTシステムの一般化された制御方式を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面に関して下記に示す詳細な説明は、さまざまな構成の説明として意図されたものであり、本願で説明される概念が実施されうる唯一の構成を表すことを意図していない。詳細な説明は、様々な概念についての詳細な理解を提供する目的で、特定の詳細事項を含む。しかしながら、当業者には、これらの概念がこれらの特定の詳細事項なしで実施されてもよいことが理解されるであろう。いくつかの例では、そのような概念を不明瞭にすることを避けるために、公知の構造及び構成要素がブロック図の形式で示される。本願ではいくつかの例を示すことで複数の態様及び実施形態について説明しているが、当業者は、追加の実装及びユースケースが、多数の異なる配置及びシナリオで実現されてもよいことを理解するであろう。
【0010】
本開示の態様は、バッテリーの変化する最大の充電率(SoC)及び/又は健全度(SoH)に基づいて動的に決定又は更新されるバッテリー電圧しきい値を用いてバッテリーを充電する方法及びシステムを提供する。本開示のいくつかの態様では、SoC及びSoHは、下記の式(1)及び式(2)によって定義されてもよい。
【0011】
【数1】
【数2】
【0012】
releasable:バッテリー負荷の放電可能な電荷容量
rated:バッテリー負荷の定格電荷容量
max:時間に応じて劣化するバッテリーの最大電荷容量
【0013】
例示的なバッテリー充電処理は、バッテリーの変化する最大のSoC又はSoHに関連して動的に決定されるバッテリー電圧しきい値に基づいて、バッテリー充電処理の異なる段階中に、定電流(CC)モード又は定電圧(CV)モードを選択する。本開示のいくつかの態様では、充電処理は、有線充電システム及び無線充電システムにおいて使用されてもよい。本開示のいくつかの態様は、充電システムの送電回路の1次電圧及び電流のみに基づいて充電処理を制御するように構成される無線充電システムを提供する。本開示のいくつかの態様では、無線バッテリー充電システムは、フィードバック制御目的の無線通信システムなしで、かつ、バッテリー負荷及び整流器出力の間における受電側の余分なバッテリー管理回路なしで実装されうる。
【0014】
図2は、バッテリー負荷204を充電するように構成された、例示的なバッテリー充電システム202を示す図である。バッテリー充電システム202は、コントローラ206と、2つ以上の充電モード、例えば定電流(CC)モード及び定電圧(CV)モードを用いてバッテリー204を充電するように構成された充電回路208とを含んでもよい。コントローラ206は、充電処理を制御及びモニタリングするための様々な機能を実行する。コントローラ206及び充電回路208は、ハードウェア及びソフトウェア構成の様々な組み合わせで実装されてもよい。コントローラ206は、バッテリー電圧に依存して充電モード(CC又はCVモード)を選択する。例えば、充電回路208及び/又はコントローラ206は、充電中に、バッテリー電圧をリアルタイムでモニタリングするか、又は、バッテリー電圧を頻繁かつ厳密にモニタリングするように構成されてもよい。バッテリー電圧(Vbat)が予め設定された基準値(Vbatref)又は電圧しきい値未満である場合、充電回路は、定電流(CCモード)を提供してバッテリーを充電する。バッテリー電圧が電圧しきい値に到達又は超過した場合(Vbat≧Vbatref)、充電回路は、定電圧(CVモード)を提供してバッテリーを充電する。
【0015】
いくつかの実施例において、しきい値電圧(Vbatref)は定数値に固定されてもよい。しかしながら、充電モード(CCモード又はCVモード)を制御するために一定又は固定のしきい値電圧を用いることは、概して、電池寿命の延長の目的に関して、バッテリーの最適な充電をもたらさない。それは、バッテリー電圧と、バッテリーのSoC及びSoHとの関係が、時間とともに変化するからである。実際に、バッテリーのVbatref及びSoCの間の実際の関係は、時間、使用、及びバッテリーの経年劣化とともに変化する。図3は、新品の状態及び経年劣化した状態において、例示的なバッテリーの時間に対する最大SoCの変化を示す。概して、最大SoC(SoCmax)は、バッテリーの経年劣化とともに低下する。充電モードをCCモードからCVモードに切り換えることに適した(例えば最適な)電圧しきい値(Vbatref)もまた、時間とともに変化する。従って、本開示のいくつかの態様では、充電処理は、充電中にCCモード及びCVモードの間で切り換えるために、正しい、最適な、又は適切なVbatrefを決定するために、SoCに対するVbatrefの関係を頻繁に(例えばリアルタイムで)更新する。
【0016】
本開示の態様は、充電の異なる段階中にCCモード及びCVモードを選択するために、バッテリーの最新の最大のSoC容量(SoCmax)及びSoHに関連して動的に更新されるバッテリー電圧しきい値(Vbatref)を利用する、改善された充電方法及びシステムに関する。SoCmax及びSoHの両方は、バッテリーの動作寿命及び使用中に変化する可能性がある。電圧しきい値を一定値又は固定値として扱う既知の実施とは異なり、そのようなVbatref値は、バッテリーの動作時間にわたって、充電中に、SoCmax及びSoHの変化に応じて変化してもよい。本開示のいくつかの態様では、変化するSoCmax及びSoHに基づいてVbatref値を動的に設定するための手順を開示する。Vbatrefを更新するためのこの手順は、有線(例えばプラグイン)充電器及び無線充電器の両方に適用可能である。
【0017】
図3に示すように、新品の状態及び経年劣化した状態におけるバッテリーは、充電中にCCモード及びCVモードの間で切り換えるために、異なる最適なバッテリーしきい値(Vbatref)を有してもよい。本開示の態様は、バッテリーの変化するSoCmax及びSoHを考慮してCCモードからCVモードに充電モードを変更できるように、バッテリー充電中にVbatref値を決定するための手順を提供する。
【0018】
図4は、例示的な充電プロファイルを示す図である。図5は、バッテリーの使用時間が経過するにつれて、VbatrefがSoC/SoHに応じて次第に変化することを示す図である。図4を参照すると、初期充電段階(図4ではプリチャージフェーズとして示す)において、バッテリー電圧(Vbat)は、バッテリーのほとんど「短絡」した状況を示す予め決められたローレベル値(Vbat(sc))と比較される。VbatがVbat(sc)未満である場合(Vbat<Vbat(sc))、バッテリー充電器は、小さな一定の電流Ibat(sc)を用いて、CCモードの下でバッテリーを充電する。VbatがVbat(sc)以上である場合(Vbat≧Vbat(sc))、充電器は、定電流の大きさをIprechgのプリチャージレベルまで増大させる。VbatがVlowvのレベルを超過する場合、充電器は、定電流の大きさをIbatrefのレベルまでさらに増大させ、それは、定電流フェーズにおけるバルク電流とも呼ばれる。VbatがVbatref以上である場合(Vbat≧Vbatref)、充電器は、充電サイクルをCVモード又は定電圧フェーズに変更する。充電器は、バッテリー充電電流(Ibat)が図4に示すような予め設定されたレベルIterm-th未満に低下するまで、定電圧を用いてCVモードでバッテリーを充電し続ける。本開示のいくつかの態様では、Vbatrefは、バッテリーのSoCmax及びSoHが図5に示すように経年劣化することに起因して変化した場合にさえ、充電器が適切なCCモード及びCVモードを適用できるように、変化するSoH又はSoCmaxに関連して自動的又は動的に調整される。
【0019】
初期充電段階(例えばプリチャージフェーズ)の間に、バッテリー電圧(Vbat)が電圧しきい値(Vbatref)より低い場合、充電電流を安全なレベル(例えばIprechg)に制限するためにCCモードが使用される。CCモード中にバッテリーに送られる電荷の総量は、CC電流の下の電流-時間の面積に等しく、図6ではQccとして示す。Vbat≧Vbatrefが真である場合、CVモードが使用され、充電電流はゼロ又は非常に低い値まで次第に減少する。CVモード下でバッテリーによって吸収された電荷の量は、図6ではQcvとして示す。
【0020】
一例では、時間tにおける現在のSoCは、式(3)により表すことができる。
【0021】
【数3】
【0022】
式(3)において、SoC(t)は、時間tにおける初期SoCであり、ηは充電効率であり、Ibat(t)は充電電流である。
【0023】
kファクターは、SoCref(t)をSoCmaxに基づく式(4)に関連づけるために使用されうる。
【0024】
【数4】
【0025】
式(4)において、SoCref(t)は、CVモード及びCCモード変更が行われるべきバッテリー電圧しきい値に対応するSoCであり、SoCmax(t)は、バッテリーの動作寿命及び使用に応じて減少する可能性があるバッテリーの最大SoC容量に対応する。
【0026】
図6に示す電荷Qcc及びQcvに基づいて、かつ、式(3)の一般形式を用いて、式(4)は式(5)として表すことができる。
【0027】
【数5】
【0028】
式(5)は、k及び電荷変数に関して式(6)として表すことができる。
【0029】
【数6】
【0030】
式(4)及び式(6)から、0<k<1について(例えば、バッテリーの性質又はタイプに依存して0.8~0.95の範囲で)、kファクターは、式(7a)又は式(7b)として表されてもよい。
【0031】
【数7】
【数8】
【0032】
本開示のいくつかの態様では、充電器は、バッテリーの寿命中に定期的又は頻繁にSoCmaxを決定又は更新してもよい。電荷変数Q(t)、Qcc、及びQcvは、当該技術において既知の様々な方法によって計算されてもよい。バッテリーの使用時間が経過するにつれて、SoCmaxは、例えば図3に示すように減少する。図7は、Vbatref及びSoCmaxの間の関係又はマッピングを示す図である。この例では、SoCmaxがバッテリーの寿命にわたって減少する場合、対応するVbatrefも減少する。本開示のいくつかの態様では、Vbatrefは固定値でも定数でもなく、バッテリーの寿命中にSoCmaxの減少に関連して変化する可能性がある変数である。本開示のいくつかの態様では、所定のバッテリーモデルを用いてSoC及びSoCmaxを推定することによって、また、バッテリータイプに従って式(7a)のkファクターを設定することによって、Vbatrefは、バッテリーの寿命全体にわたって動的に決定可能である。
【0033】
本開示のいくつかの態様では、kファクターは、再充電可能なバッテリーのタイプに依存する範囲(例えば、リチウムイオン電池などの場合には0.8~0.95)において選択可能である。SoCmax(t)が特定のバッテリーの動作寿命に応じて減少する場合、当該バッテリーに対して選択された所与のkファクターについて、式(7a)に係るSoC=k SoCmaxに対応するバッテリー電圧(Vbat)は、充電サイクル中にCCモード及びCVモードの変更が行われるべきバッテリーしきい値電圧(Vbatref)として選択されてもよい。Vbatは、充電中にバッテリーの正及び負の端子にかかる電圧であってもよい。
【0034】
頻繁に更新されるVbatrefを用いてCCモード及びCVモードの変更の制御する方法を実現するために、充電コントローラ(例えば、図2のコントローラ206)は、適切なバッテリーモデルを用いて、SoC、SoCmax、及びバッテリー電圧Vbatに対するそれらの対応するマッピングを推定してもよい。図8及び図9は、SoC及びSoCmaxを決定するために本開示において使用されうる2つの例示的なバッテリー回路モデルを示す。しかしながら、本開示は、何らかの特定のバッテリーモデルに限定されることはない。SoC、SoCmax、及びバッテリー電圧に対するそれらのマッピングの推定において許容可能な精度を提供することができる任意の適切なバッテリーモデルを使用可能である。
【0035】
また、SoCmaxはバッテリーのSoHに関連する。前述したように、所定の時間におけるバッテリーの最大SoC能力SoCmax(t)と、CCモード及びCVのモードの変更が行われる対応するバッテリー電圧しきい値(Vbatref(t))とは、バッテリーの使用時間が経過するにつれて変化する。現在のSoH(SoH(t))を定義する1つの例示的な方法は、式(8)として表される。
【0036】
【数9】
【0037】
本開示の1つの態様では、充電手順は、現在の最大SoC(SoCmax(t))に関連又はマッピングされる変数として、バッテリーしきい値電圧Vbatref(t)を扱う。式(9a)及び式(9b)は、Vbatref(t)及びSoC(t)/SoH(t)の関係を示す例である。
【0038】
【数10】
【数11】
【0039】
本開示のいくつかの態様では、上述の充電手順は、CCモードからCVモードに、又はその逆に切り換えるために、より正確かつ最適なバッテリー電圧しきい値を使用可能であるように、有線又は無線充電システムに適用可能である。
【0040】
図10は、充電モードを選択するために動的に更新されるしきい値電圧(Vbatref)を用いる例示的な充電手順300を示すフローチャートである。手順300は、有線又は無線充電システム(例えば、バッテリー充電システム202又は無線充電システム400)を用いて実施されてもよい。ブロック302において、充電システム(例えばコントローラ206)は、バッテリーの現在の状態を決定する。例えば、現在の状態は、時間期間又は使用期間にわたってバッテリー(例えばバッテリー204)の現在の状態(例えば、SoHの劣化)を示すバッテリーの現在のSoH(例えばSoH(t))又は最大SoCであってもよい。いくつかの実施例において、現在のSoHは、現在のSoCmax(例えばSoCmax(t))に等しくてもよい。現在のSoHは、前述したように、式(8)を用いて決定されてもよい。
【0041】
ブロック304において、充電システムは、バッテリーの現在の状態(例えばSoH(t))に基づいて充電モード(例えば、CCモード及びCVモード)を選択するためのしきい値電圧(例えばVbatref)を動的に決定する。動的にしきい値電圧を決定することは、しきい値電圧が固定されず、現在のSoH又はSoCmaxのような他のファクターに基づいて変更可能であることを意味する。例えば、しきい値電圧は、上述した式9(a)又は式9(b)を用いて、リアルタイム又は頻繁に決定されてもよい。ブロック306において、充電システムは、充電中にバッテリーのバッテリー電圧を決定する。バッテリー電圧は、バッテリー端子にわたって測定された電圧であってもよく、又は、所定のフロントエンド充電器パラメータ(例えば、1次充電電流及び電圧、又は無線充電器)に基づいて推定された電圧であってもよい。ブロック308において、充電システムは、バッテリー電圧及びしきい値電圧の間の比較に基づいて選択されたCCモード又はCVモードを用いて、バッテリーを充電する。例えば、バッテリー電圧がしきい値電圧未満である場合、CCモードが選択され、一方、バッテリー電圧がしきい値電圧以上である場合、CVモードが選択される。バッテリー使用及び経年劣化に起因する変化するSoH/SoCmaxを考慮してしきい値電圧が動的に更新されるので、充電システムは、電池寿命を延長するために最適なバッテリー電圧で、CCモード及びCVモードの間で切り換えることができる。
【0042】
図11は、本開示のいくつかの態様に係る例示的な無線充電システム400を示すブロック図である。無線充電システムは、無線電力転送(wireless power transfer:WPT)システムと呼ばれてもよい。無線充電システム400は、LCC又はLLC共振タンクのような、より高次の共振回路をともなうことなく、簡単な直列-直列LC共振回路を用いて実装されてもよい。しかしながら、受電装置において使用される直列LC共振回路については、並列(P)、直列(S)、LCC、又はLLC共振タンクを採用可能である送電回路をカバーするように本発明を一般化可能であることを、本明細書において後に説明する。
【0043】
無線充電システム400は、固定されたインバータスイッチング周波数を用いてバッテリー負荷を充電するために、定電流(CC)モード及び定電圧(CV)モードを自動的に選択する。無線充電システム400は、フロントエンド(送電側)のモニタリング及び制御方法を用いてシステムパラメータ及び/又はバッテリー負荷状態を推定し、それにより、フィードバック制御目的の無線通信システムの必要性を除くように構成される。無線充電システム400は、送電側のモニタリングに基づいて(すなわち、送電側において利用可能な情報をのみ用いて)、バッテリーのSoC及び/又はSoHの変化をリアルタイム又は頻繁にモニタリングするように構成される。無線充電システム400は、送電側制御において頻繁に(例えば周期的に)更新されたSoC/SoH情報及びその対応するバッテリー電圧(経年劣化の影響を含む)を用いて、充電中にCCモード及びCVモードを選択するために、また、バッテリー寿命を延長するように最大SoCを制限するために、しきい値電圧(Vbatref)を決定する。他の充電方法と異なり、無線充電システム400は、Vbatref及びSoC/SoHの間の関係をリアルタイム又は頻繁に更新する。その目的で、Vbatrefは、一定値でも、固定値でも、予め決められた値でもなく、バッテリーの経年劣化の影響及び使用に応じて変化する。
【0044】
図11を参照すると、無線充電システム400は、図4に示す充電プロファイルを用いてCCモード又はCVモードでバッテリー(バッテリー負荷)を充電するように構成されてもよい。無線充電システム400は、送電側部分及び受電側部分を有する。送電側部分は、コイル共振器402を介して、受電側部分における対応するコイル共振器404に無線送電するように構成される。受電側部分は、整流器406及びバッテリー負荷408を含む。整流器406は、余分な充電コントローラ及び/又は電圧コンバータを用いることなく、バッテリー負荷408を直接的に充電する。すなわち、無線充電システム400は、整流器出力及びバッテリー負荷408の間における余分なバッテリー管理システム又は電圧コントローラを必要としない。送電側部分は、DC電力(Vdc)をAC電力に変換してコイル共振器402を駆動する電力インバータ410をさらに含む。センサブロック412は、コイル共振器402を駆動する1次電圧(v)及び1次電流(i)を測定するように構成される。送電側部分はさらに、バッテリー電圧及び電流推定器414、バッテリー状態推定器416、しきい値電圧生成器418、及び充電コントローラ420を含む。
【0045】
一例では、電力インバータ410は、4つの電力スイッチ(例えば、S1、S2、S3、及びS4)を有するフルインバータブリッジ(図12を参照)を備える。4個のスイッチのゲート信号は、ゼロの移相角(すなわち、α=0;例えば図13)又は正の移相角(すなわち、α>0;例えば図14)を有してもよい。概して、対角ペアのスイッチ(例えば、S1及びS3、S2及びS4)は、ともにスイッチングされる。S1及びS3がオンされるとき、S2及びS4はオフされ、また、その逆にスイッチングされる。いくつかの実施例では、スイッチング電力損失を低減するためにソフトスイッチング状態を提供するために、スイッチング状態の変化の間に小さな不感時間が含まれてもよい。この不感時間は、典型的には、インバータのスイッチング周期よりもずっと短く、従って、図13及び図14には示していない。
【0046】
この例では、インバータのDC電圧入力(Vdc)は一定であると仮定される。移相角αがゼロである場合(α=0)、インバータの出力電圧は、最大の大きさを有する矩形波である(図13を参照)。移相角αが増大されると、図14に示すように、インバータの出力電圧の大きさは低減される。従って、インバータの出力電圧は、移相角αを変更することで制御可能である。例えば、インバータ出力電圧の大きさは、αを増大させることで低減され、また、その逆に制御することができる。αがより大きくなると、インバータの出力電圧における矩形電圧波形からより派生がより大きくなり、出力電圧に存在する高調波成分がより大きくなることに注意するべきである。従って、電圧高調波成分は、増大するαに応じて増大する。このインバータ出力電圧は、送電回路における1次コイル共振器に印加される。
【0047】
バッテリー電圧及び電流推定器414(C-V推定器)は、受電側からの何らかのフィードバックに依存することなく、センサ(例えば、センサブロック412)によって測定された1次電圧(v)及び1次電流(i)の情報のみに基づいて、フロントエンドモニタリング方法を用いて、バッテリーの電圧(Vbat)及び電流(Ibat)を決定又は推定する。図15は、Vbatを決定するために使用可能である例示的な電圧センサ回路500を示す図である。図16は、Ibatを決定するために使用可能である例示的な電流センサ回路600及び602を示す図である。例えば、Vbatは、演算増幅器502の出力電圧Vp_ADC及び演算増幅器602の出力電流Ip_ADCから導出可能である。
【0048】
図17は、直列-直列のLCの補償された無線電力伝送回路として示した、無線充電システム400の一部の簡単化された等価回路700の例である。図17を参照すると、電流ipn及びisnは、1次電流及び2次電流のn番目の高調波をそれぞれ示す。電圧vpnは、1次コイル共振器(例えば、コイル共振器402)に印加される1次電圧のn番目の高調波を示す。電圧vsnは、整流器及びバッテリー負荷に印加される2次出力電圧のn番目の高調波である。電圧vpn及びvsnは、式(15)で表すことができる。
【0049】
【数12】
【0050】
式(15)において、次式を用いる。
【0051】
【数13】
【数14】
【0052】
次いで、n次高調波成分isn及びvsnは、式(16.1)及び式(16.2)におけるipn及びvpnに基づいて推定することができる。
【0053】
【数15】
【数16】
【0054】
sn及びvsnの振幅はさらに、式(17.1)及び式(17.2)として導出することができる。
【0055】
【数17】
【数18】
【0056】
式(17.1)及び式(17.2)において、演算子|・|は信号の振幅を示す。それに加えて、バッテリー負荷の電流及び電圧Ibat及びVbatは、式(18.1)及び式(18.2)に示すようなフーリエ級数展開を用いて、isn及びvsnに基づいて推定することができる。
【0057】
【数19】
【数20】
【0058】
本開示の1つの態様では、バッテリー負荷の電流Ibat及び電圧Vbatは、下記の式(19.1)及び式(19.2)で表すように、フロントエンド測定値ipn及びvpnに基づいて推定することができる。
【0059】
【数21】
【数22】
【0060】
共振器の基本高調波成分が支配的である場合(n=1)、1次近似式は式(20.1)及び式(20.2)として表すことができる。
【0061】
【数23】
【数24】
【0062】
さらに、共振する周波数(ω=ω)において、等価入力インピーダンスZinは、vp1及びip1が同相であるように、純抵抗性である。従って、Ibat及びVbatは、共振周波数(ω=ωo)において、簡単化された式(21.1)及び式(21.2)によって推定することができる。
【0063】
【数25】
【数26】
【0064】
ほとんどの場合、バッテリー電圧Vbatは、Vよりずっと大きく(V≫2V)、また、共振器の等価直列抵抗(ESR)は小さい(ω ≫Rp1s1)。Vは、ダイオードブリッジ整流器(例えば整流器406)のダイオード電圧降下である。共振周波数(ω=ω)における出力電圧の推定式は、数式(22)としてさらに簡単化することができる。
【0065】
【数27】
【0066】
それに加えて、インバータについて、フーリエ級数展開に基づいて次式が得られる。
【0067】
【数28】
【0068】
式(23)において、αは移相角である。等価入力インピーダンスZinは式(24)で表される。
【0069】
【数29】
【0070】
式(24)において、Reqは、バッテリー負荷及びダイオードブリッジ整流器の等価抵抗である。
【0071】
【数30】
【0072】
式(20)へ式(18)及び式(19)を代入すると、‥‥バッテリー電流及び電圧の全次数推定モデルは、式(25.1)及び式(25.2)によって表すことができる。
【0073】
【数31】
【数32】
【0074】
式(25.1)及び式(25.2)を用いて、Ibat及びVbatは、移相角αを制御することで調整することができる。本開示のいくつかの態様では、CCモード制御は式(25.1)を用いて実施することができ、CVモード制御は式(25.2)を用いて実施することができる。
【0075】
bat及びVdcの比は、トランスコンダクタンスGとして定義される。
【0076】
【数33】
【0077】
+2V及びVdcの比は、電圧伝達比Gとして定義される。
【0078】
【数34】
【0079】
共振器の基本高調波成分が支配的である場合(n=1)、G及びGは式(27.1)及び式(27.2)として表すことができる。
【0080】
【数35】
【数36】
【0081】
さらに、共振周波数(ω=ω)において、G及びGは、式(28.1)及び式(28.2)として表すことができる。
【0082】
【数37】
【数38】
【0083】
ほとんどの場合、高次高調波が存在しても、1次推定式(20.1)は正確にIbatを推定することができる。従って、CCモード制御は1次推定式を使用することができる。
【0084】
【数39】
【0085】
しかしながら、本開示のいくつかの態様では、CCモード制御のためのIbatを決定するために、上述した全次数の推定式(19.1)が使用されてもよい。
【0086】
しかしながら、大部分の場合では、高調波成分が増大する場合、電圧伝達比は増大する。従って、CVモード制御は、全次数の推定式(19.2)を使用する。
【0087】
【数40】
【0088】
本開示のいくつかの態様では、許容できる精度のために、Nは3以上(例えばN≧5)であってもよい。
【0089】
上述の導出された式を用いると、充電システム400は、1次側又は送電側回路において測定可能な電気的変数(v及びi)のみに基づいて、CCモードにおけるバッテリー電流(Ibat)及びCVモードにおけるバッテリー電圧(Vbat)を制御するために、送電側制御を使用することができる。
【0090】
送電側のバッテリー状態推定.
バッテリー状態推定器416(図11)は、適切な方法及びバッテリーモデルを用いて、現在のSoC及びSoHをリアルタイム又は頻繁に決定するように構成される。いくつかの非限定的かつ例示的な方法は、クーロンカウンティング法(又は拡張クーロンカウンティング法)、電圧法(開路電圧法を含む)、カルマンフィルタ(又は拡張カルマンフィルタ)、インピーダンス分光法、及びバッテリーモデルに基づくヒューリスティックなアルゴリズムを含む。バッテリーモデルの選択は、モデルの複雑性及び/又は精度に依存し、また、コントローラ(例えば、バッテリー状態推定器416)において使用されるプロセッサの計算能力にも依存する。
【0091】
クーロンカウンティング法を用いたSoCの推定.
本開示の1つの態様では、充電システム400は、送電側モニタリング方法を使用することで、クーロンカウンティング法及びハイブリッド電池モデルを用いて現在のSoC及びSoHをリアルタイム又は頻繁に決定するように構成されてもよい。SoCは、次式の式(3)に従って、クーロンカウンティング法を用いて決定されてもよい。
【0092】
【数41】
【0093】
SoC(t):初期SoC
η:充電効率
【0094】
本方法のステップ1において、バッテリー負荷の出力電圧及び電流、すなわちVbat及びIbatは、予め決められた時間間隔ごとに周期的に、式(19.2)及び式(19.1)に基づいて推定することができる。例示的な5分の期間を用いると、20分間で5つのVbat値(Vbat(t),Vbat(t),Vbat(t),Vbat(t),Vbat(t))を取得することができる。バッテリー負荷の対応するSoC(SoC(t),SoC(t),SoC(t),SoC(t),SoC(t))は、フロントエンドにおいて、フロントエンドの推定されたVbat及びIbatに基づいて推定することができる。本開示のいくつかの態様では、Vbat及びSoCの対応又はマッピングは、オフラインテストにより決定されてもよく、又は、予め決定されていてもよい。いくつかの実施例では、SoCの正確な推定は、長い静止期間時間の後に測定された開回路のバッテリー電圧Vbatに基づく、オフラインでテストされたルックアップテーブルを使用してもよい。したがって、いくつかの実施例では、Vbat及びIbatをそれらの対応するSoCにマッピングして推定誤差を低減するために、線形のあてはめ技術が使用されてもよい。
【0095】
本方法のステップ2において、推定されたSoC(例えば、SoC(t),SoC(t),SoC(t),SoC(t),SoC(t))と、バッテリー負荷の一定の出力電流Ibatとに基づいて、SoCsは線形あてはめを用いて調整される。調整されたSoCs及びIbatによれば、充電効率η及び定格電気量Qratedは、式(1)及び式(3)に基づいて決定することができる。
【0096】
本方法のステップ3において、既知のSoC(t)、η、及びQratedに基づいて、フロントエンドにおけるバッテリー負荷のSoCのリアルタイムモニタリングを達成することができる。
【0097】
本方法のステップ4において、バッテリーのSoHは、充電サイクルの終了時に、SoH=SoCとして決定することができる。
【0098】
ヒューリスティックなアルゴリズムを用いたSoC及びSoHの推定.
本開示のもう1つの態様では、充電システム400は、送電側のモニタリング方法を使用することで、ハイブリッド電池モデルに基づいて、ヒューリスティックなアルゴリズムを用いて、SoC及びSoHをリアルタイムで決定するように構成されてもよい。図9に、ハイブリッドモデルの等価回路の一例を示す。ハイブリッド電池モデルのパラメータは、下記の式(30-1,30-2,30-3,30-4,30-5,30-6)によって表すことができる。
【0099】
【数42】
【数43】
【数44】
【数45】
【数46】
【数47】
【0100】
ハイブリッドバッテリーモデルのパラメータ、すなわち、a、a、a、a、a、a、b、b、b、b、b、b、c、c、c、d、d、d、e、e、e、f、f、及びfを含むパラメータは、SoCが高い場合(例えば、20%及び100%の間)には近似的に一定であり、また、バッテリー負荷の電気化学的反応に起因してSoCが所定値(例えば、0%及び20%の間)よりも低下する場合には指数関数的に変化する。何らかのオフライン測定及びルックアップテーブルを用いることなく、バッテリー負荷のパラメータは、周期的又は頻繁に更新することができ、バッテリー負荷のSoCは、既知のヒューリスティックなアルゴリズム、例えば、遺伝的アルゴリズム、粒子群最適化、人工ニューラルネットワーク、群知能、タブーサーチ、シミュレーテッドアニーリング、サポートベクトルマシン、及び差分進化を用いるハイブリッドモデルの式(1)、(3)、(30)に基づいて推定することができる。次いで、バッテリー負荷のSoHは、充電の終了時に、SoH=SoCによって決定することができる。
【0101】
本方法のステップ1において、バッテリー負荷のいくつかの出力電圧及び電流、例えば、Vbat=[Vbat(t),Vbat(t),Vbat(t),…,Vbat(t)]、Ibat=[Ibat(t),Ibat(t),Ibat(t),…,Ibat(t)]は、所定の時間期間にわたって測定される。本方法のステップ2において、ハイブリッドバッテリーモデルに基づいて式又は方程式を導出することで、測定されたIbatを用いて、バッテリー負荷の理想的な出力電圧Vbatestを計算することができる。本方法のステップ3において、バッテリー負荷のSoCは、Vbat及びVbatestの間の差のノルムを最小化するように、ヒューリスティックなアルゴリズムを用いて推定することができる。本方法のステップ4において、バッテリーのSoHは、充電の終了時に、SoH=SoCとして決定することができる。
【0102】
電圧しきい値を更新するための送電側のモニタリング及び制御方式.
しきい値電圧生成器418は、充電サイクル中にCCモード及びCVモードを選択するためのしきい値電圧Vbatrefを更新するように構成される。しきい値電圧生成器418は、バッテリーの使用時間が経過するにつれて全SoC能力(すなわちSoCmax)が減少することに起因するバッテリーの経年劣化の影響を考慮してCCモード及びCVモードを適切に選択することができるように、変化するSoH/SoCに応答してVbatrefを調整又は更新することができる。
【0103】
図3に関連して前述したように、最大SoC能力SoCmax(t)と、CCモード及びCVモードの変更が行われるその対応する電圧しきい値(Vbatref(t))とは、時間とともに、また、バッテリーの経年劣化に応じて変化する。本開示の1つの態様では、現在のSoH(SoH(t))は、式(8)として表すことができる。
【0104】
【数48】
【0105】
充電システム400(例えば、しきい値電圧生成器418)は、SoC及びバッテリー電圧Vbatの関係を連続的又は頻繁に更新し、Vbatref(t)を式(9a)におけるSoCmax(t)にマッピングされる変数とみなす。
【0106】
【数49】
【0107】
式9(a)において、kは、バッテリータイプに依存する値(0<k<1.0)を有するファクターである。一例では、リチウムイオン電池の場合、kは0.8~0.9の範囲内に設定されてもよい。式(8)に基づいて、Vbatref(t)はSoH(t)にマッピングされてもよく、式(9a)は式(9b)として表すこともできる。
【0108】
【数50】
【0109】
batrefがSoCに対応するので、式(9a)及び式(9b)から、電圧しきい値Vbatref(t)は、式(4)で表されるようなSoCrefのSoCしきい値に対応する。
【0110】
【数51】
【0111】
自動的なCC及びCVモードの変更.
充電コントローラ(例えば、制御ストラテジブロック420)は、現在のSoH/SoC及びVbatrefに基づいて、電力インバータを制御するように、例えば、インバータスを制御するイッチング信号の移相角を制御するように構成されてもよい。無線充電システム400は、CCモード及びCVモードの間で変更するための手段として、インバータの動作周波数を変化させることを必要としない。図18は、充電中に充電モードを選択するための例示的な制御ブロック800を示すブロック図である。制御ブロック800は、ハードウェア及び/又はソフトウェアを含む、アナログ形式、ディジタル形式、又はこれら両方の組み合わせで実装することができる。本開示の1つの態様では、制御ブロックは、充電コントローラ420によって実装されてもよい。
【0112】
図18を参照すると、CVモードは、CVモードのための移相角αを生成するコントローラ1によって制御される。これに対して、CCモードは、CCモードのための移相角αを提供するコントローラ2によって制御される。CCモード又はCVモードの選択は、式(9b)で示すようなVbatとVbatref(ファクターk及びSoHの関数)との比較によって決定される。移相角αは式(31)によって表すことができる。
【0113】
【数52】
【0114】
図18の比較器の論理出力は、CC及びCVモードのいずれかをイネーブルにする。Vbat<Vbatrefである場合、図18の比較器の出力はローレベルであり(すなわち0)、αのための乗算器を介して、0を乗算した任意のαもゼロであり、したがってCVモードをディセーブルにする。この場合、移相角はα=αである、すなわちCCモード下にある。コントローラ2は、瞬間又は現在のVbatであって、例えばバッテリー電圧及び電流推定器414によって決定されるVbatに依存する、予め設定された電流レベルIbatref(例えば、図6に示すIbat(sc)、Iprechg、Ibatref、Iterm-th)に従うように充電電流を制御する。
【0115】
なお図18を参照すると、Vbat≧Vbatrefが生じる場合、比較器の出力はハイレベル(すなわち1)になる。その場合、コントローラ-2の出力のための減算器の出力は0になり、したがって、αのための第2の乗算器の出力もまたゼロになり、CCモードをディセーブルにする。移相角はα=αになる、すなわちCVモードの下にある。CVモードにおいて、コントローラ1は、充電電圧をVbatrefの予め設定された値の近くに制御してバッテリーを充電する。
【0116】
図19は、充電中に充電モード(例えば、CCモード又はCVモード)を選択するためのもう1つの例示的な制御ブロック900を示すブロック図である。前述したように、Vbatrefはk及びSoHの関数であり、SoHはSoCmaxとして定義することができる。この実施例は、図18に関連して説明した制御ブロックに実質的に類似しているので、簡潔さのために、それらの間の差分のみを説明する。図19の制御ブロックは、SoC(Vbatに対応する)とSoCref(式(4)を参照)とを比較することで、充電モードの変更を制御するための代替アプローチを使用する。
【0117】
図17は、送電回路及び受電回路の両方が直列で補償される例示的な直列-直列(SS)の補償された無線電力転送(WPT)システムを示しているが、本発明の態様は、XSの補償されたWPTシステムにも適用可能である。ここで、Xは、P(並列)、S(直列)、LCL(誘導性-容量性-誘導性)、又はLCC(誘導性-容量性-容量性)タイプの補償された送電回路を示す。すなわち、本発明の態様は、受電回路が直列で補償される限りは、広範囲の補償された送電回路に適用可能である。
【0118】
図20は、本開示のいくつかの態様に係る、XSの補償されたWPTシステム1000を示す図である。WPTシステム1000において、送電回路は、P、S、LCL、又はLCCタイプで補償されてもよい。図21は、WPTシステム1000の簡単化された等価回路1100の図である。図21に、共振器の等価回路を示す。ここで、ωはスイッチング角周波数である。vp1、ip1、vpL1、ipL1、is1、及びvs1は、v、i、vpL、ipL、i、及びvの基本成分である。既知の回路理論に基づいて、これらの変数は次式で表すことができる。
【0119】
【数53】
【数54】
【数55】
【0120】
ここで、次式を用いる。
【0121】
【数56】
【数57】
【数58】
【数59】
【数60】
【0122】
異なるタイプの補償のための特定の送電パラメータ(すなわち、Apc、Bpc、Cpc、及びDpc)を、下記の表1に提示する。
【0123】
【表1】
表1:1次回路の異なる補償の伝送パラメータ
【0124】
式(31.2)及び式(31.3)に基づいて、受電回路の出力電圧及び電流の基本成分を、vpL1及びipL1を用いて推定することができる。
【0125】
【数61】
【0126】
(31.1)を(32.1)に代入することによって、受電側の出力電圧及び電流の基本成分を、式(32.2)におけるvp1及びip1に基づいて推定することができる、
【0127】
【数62】
【数63】
【数64】
【数65】
【数66】
【0128】
式(32.2)に基づいて、
【数67】
及び
【数68】
の振幅を次式により推定することができる。
【0129】
【数69】
【数70】
【0130】
ここで、演算子|・|は、AC信号の振幅を示す。
【0131】
それに加えて、ダイオードブリッジ整流器及びフィルタキャパシタの入力及び出力は、式(40.1)及び式(40.2)を満たす。
【0132】
【数71】
【数72】
【0133】
ここでVは、ダイオード(すなわち、図20におけるダイオードD5~D8)の順方向電圧である。
【0134】
式(33.1)及び式(33.2)を式(40.1)及び式(40.2)にそれぞれ代入することにより、出力電圧及び電流は、1次側において、式(50.1)及び式(50.2)を用いて推定することができる。
【0135】
【数73】
【数74】
【0136】
本開示のいくつかの態様では、補償されたキャパシタCは、式(60)で表すように、受電コイルの自己インダクタンスをゼロにして、回路の電力伝送能力を増大(例えば最大化)させることができる。
【0137】
【数75】
【0138】
ここで、ωは、動作角周波数である。
【0139】
さらに、高いQファクターを有するコイルの場合、次式の項はゼロに近似することができる。
【0140】
【数76】
【0141】
式(60)及び式(70)を式(50.1)及び式(50.2)にそれぞれ代入することにより、1次側の出力電圧及び電流は、下記の式(80.1)及び式(80.2)を用いて推定することができる。
【0142】
【数77】
【数78】
【0143】
式(80.1)及び式(80.2)と、表1における送電パラメータとに基づいて、充電電圧及び電流のための特定の推定式を、下記の表2を用いて決定することができる。
【0144】
【表2】
表2:異なる補償の推定式
【0145】
表2におけるE及びHの値を、下記のように決定することができる。
【0146】
【数79】
【数80】
【数81】
【数82】
【0147】
図22は、本開示のいくつかの態様に係る、WPTシステム1000の一般化された制御方式を示すブロック図1200である。この一般化された制御方式において、推定式1202は、表2に示したように、送電回路で使用される補償のタイプ(例えば、図20図21に関連して前述したようなXSの補償された回路)に依存しうる。
【0148】
バッテリーを充電するためのバッテリー充電システムの第1の実施形態は、バッテリーを充電するように構成された充電回路と、充電回路に通信可能に接続されたコントローラとを含む。コントローラは、バッテリーの現在の状態を決定する。コントローラは、現在の状態に基づいて、充電回路の充電モードを制御するためのしきい値電圧を動的に決定する。コントローラは、充電中にバッテリーのバッテリー電圧を決定する。コントローラは、バッテリー電圧がしきい値電圧未満である場合に定電流(CC)モードを用いてバッテリーを充電するように充電回路を構成し、バッテリー電圧がしきい値電圧以上である場合に定電圧(CV)モードを用いてバッテリーを充電するように充電回路を構成する
【0149】
第1の実施形態と組み合わされる第2の実施形態によれば、現在の状態は、バッテリーの現在の健全度(SoH)又は最大の充電率(SoC)を含む。第2の実施形態と組み合わされる第3の実施形態によれば、コントローラは、SoH又はSoCmaxに基づいてしきい値電圧を決定するようにさらに構成される。
【0150】
第1の実施形態と組み合わされる第4の実施形態によれば、充電回路は、無線送電するように構成された送電側部分と、送電側部分から無線受電し、送電側部分への制御フィードバックを提供することなくバッテリーを充電するように構成された受電側部分とを備える。
【0151】
第1~第4の実施形態のうちのいずれかと組み合わされる第5の実施形態によれば、受電側部分は、直列の補償された回路を備え、送電側部分は、直列の補償された回路、並列の補償された回路、誘導性-容量性-容量性(LCC)の補償された回路、又は誘導性-容量性-誘導性の(LCL)補償された回路を備える。
【0152】
第1~第5の実施形態のうちのいずれかと組み合わされる第6の実施形態によれば、受電側部分は整流器を備え、整流器は、整流器及びバッテリーの間の充電管理回路を用いることなく、バッテリーを充電するように構成される。
【0153】
第1~第6の実施形態のうちのいずれかと組み合わされる第7の実施形態によれば、送電側部分は、コイル共振器と、コイル共振器の1次電圧及び1次電流をモニタリングするように構成された少なくとも1つのセンサとを備える。コントローラは、1次電圧及び1次電流に基づいてバッテリーの電圧及び電流を推定し、バッテリーの推定された電圧及び推定された電流に基づいてバッテリーの状態を決定するようにさらに構成される。
【0154】
第1~第7の実施形態のうちのいずれかと組み合わされる第8の実施形態によれば、コントローラは、受電側部分からバッテリーについての情報を受信することなく、バッテリーの電圧及び電流を決定するようにさらに構成される。
【0155】
第1~第8の実施形態のうちのいずれかと組み合わされる第9の実施形態によれば、送電側部分は、複数のスイッチング信号によって制御される電力インバータを備え、コントローラは、複数のスイッチング信号の移相角を制御して1次電流及び1次電圧を制御するようにさらに構成される。
【0156】
第1~第9の実施形態のうちのいずれかと組み合わされる第10の実施形態によれば、電力インバータは、複数のスイッチング信号の移相角に従って、バッテリーをCCモード及びCVモードで充電する場合、同じスイッチング周波数で動作するように構成される。
【0157】
第1~第10の実施形態のうちのいずれかと組み合わされる第11の実施形態によれば、スイッチング周波数は、コイル共振器の共振周波数に実質的に等しい。
【0158】
第1~第11の実施形態のうちのいずれかと組み合わされる第12の実施形態によれば、送電側部分のコイル共振器の共振周波数は、受電側部分のコイル共振器の共振する周波数に実質的に等しい。
【0159】
本開示内では、語句「例示的な」は、「例示、実例、又は例証として提供する」ことを意味するために使用される。本願において「例示的な」ものとして説明した任意の実施例又は態様は、必ずしも、本開示の他の態様よりも好ましい又は有利なものとして解釈されるべきではない。同様に、用語「態様」は、本開示のすべての態様が、説明した特徴、優位点、又は動作モードを含むことを必要としない。用語「接続された」は、本願では、2つのオブジェクト間の直接又は間接の接続を示すために使用される。例えば、オブジェクトAがオブジェクトBに物理的に接触し、オブジェクトBがオブジェクトCに接触する場合、オブジェクトA及びCは、それらが互いに直接的には物理的に接触していなくてもなお、互いに接続されていると考えられてもよい。例えば、第1のオブジェクトが第2のオブジェクトに直接的には決して物理的に接触していない場合であっても、第1のオブジェクトは第2のオブジェクトに接続されることがある。用語「回路("circuit" and "circuitry")」は広義で使用され、接続及び構成されたとき、電子回路のタイプに関する制限なしに、本開示で説明した機能の実行を可能にする電気的デバイス及び導体のハードウェア実装と、プロセッサによって実行されたとき、本開示で説明した機能の実行を可能にする情報及び命令のソフトウェア実装との両方を含むことを意図している。
【0160】
図1図22に示した構成要素、ステップ、特徴、及び/又は機能のうちの1つ又は複数は、単一の構成要素、ステップ、特徴、又は機能に整理及び/又は組み合わされてもよく、又は、いくつかの構成要素、ステップ、又は機能として具体化されてもよい。本願で開示した新規な特徴から外れることなく、追加の構成要素、部品、ステップ、及び/又は機能が追加されてもよい。図1図22に示した装置、デバイス、及び/又は構成要素は、本願で説明した方法、特徴、又はステップのうちの1つ又は複数を実行するように構成されてもよい。本願で説明した新規なアルゴリズムは、効率的にソフトウェアで実装されてもよく、及び/又はハードウェアに埋め込まれてもよい。
【0161】
開示した方法における特定の順序又は階層のステップは例示的な処理の例証であることが理解されるべきである。設計上の選好に基づいて、本方法における特定の順序又は階層のステップが整理されてもよいことが理解される。添付する方法の請求項は、様々なステップの要素をサンプルの順序で提示し、そこで具体的に述べていない限り、提示した特定の順序又は階層に制限されることを意味していない。
【0162】
上述の説明は、任意の当業者が本願で説明したさまざまな態様を実施することを可能にするように提供される。これらの態様に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかになり、本願で定義した一般的な原理が他の態様にも適用されうる。したがって、請求項は、本願で示した態様に限定することを意図していないが、請求項の言語に沿った範囲全体に一致するものとする。ここで、ある構成要素について単数形で言及していることは、具体的にそのように述べていない限りは、「1つかつ唯一」を意味することを意図せず、「1つ以上」を意味することを意図している。特に別記しない限り、用語「いくらかの」は、1つ又は複数を参照する。「少なくとも1つの」物品のリストに言及するフレーズは、単一のメンバーを含む、これらの物品の任意の組み合わせを示す。一例として、「a、b、及びcのうちの少なくとも1つ」は、a;b;c;a及びb;a及びc;b及びc;及びa、b、及びcをカバーすることを意図している。当業者に既知であるか又は後に既知になる、本開示の全体にわたって説明した様々な態様の構成要素に対するすべての構造的及び機能的等価物は、参照によって明示的に本願に援用され、請求項によって包含されることを意図している。また、本願で開示したものは、そのような開示が請求項に明示的に記載されているか否かにかかわらず、公に委ねることを意図していない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図16
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図19
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図21
図22