IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社不二工機の特許一覧

<>
  • 特許-電動弁 図1
  • 特許-電動弁 図2
  • 特許-電動弁 図3
  • 特許-電動弁 図4
  • 特許-電動弁 図5
  • 特許-電動弁 図6
  • 特許-電動弁 図7
  • 特許-電動弁 図8
  • 特許-電動弁 図9
  • 特許-電動弁 図10
  • 特許-電動弁 図11
  • 特許-電動弁 図12
  • 特許-電動弁 図13
  • 特許-電動弁 図14
  • 特許-電動弁 図15
  • 特許-電動弁 図16
  • 特許-電動弁 図17
  • 特許-電動弁 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F16K31/04 K
F16K31/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022006318
(22)【出願日】2022-01-19
(65)【公開番号】P2023105470
(43)【公開日】2023-07-31
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 将志
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 威
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135954(JP,A)
【文献】特開2002-122367(JP,A)
【文献】特開2017-223263(JP,A)
【文献】特表2017-515055(JP,A)
【文献】特開2011-208716(JP,A)
【文献】特開2001-304445(JP,A)
【文献】特開2001-343083(JP,A)
【文献】特開2017-180569(JP,A)
【文献】特開2019-219048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
31/00-31/05
F25B 31/00-31/02
39/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁口および弁座を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが一方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが他方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁であって、
前記弁口が、一定の内径を有するオリフィス部を有し、
前記弁座が、前記オリフィス部の一端を囲んでおり、
前記弁体が、着座部と、中間部と、先端部と、を有し、
前記中間部の一端が、前記着座部に連設され、
前記中間部の他端が、前記先端部に連設され、
前記中間部の他端の外径が、前記先端部の外径より大きく、
前記ローターが前記基準位置にあるとき、前記着座部が前記弁座に接し、前記中間部の他端が前記弁口に配置され、
前記ローターが前記他方向に回転されて前記着座部が前記弁座から離れたときの前記ローターの位置が開弁位置であり、
前記ローターが前記開弁位置にあるとき、前記中間部の他端と前記オリフィス部との間に最小絞り通路が形成され、
前記ローターが前記基準位置から前記開弁位置まで回転されるときに前記ステッピングモーターに入力されるパルス数の公差範囲の大きさをDとしたとき、前記着座部が前記弁座に接しているときの前記中間部の他端から前記オリフィス部の一端までの距離(以下、「最小絞り通路距離」という。)が、D+1個のパルスに対応する前記弁体の移動距離以上であることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記最小絞り通路距離が、前記ローターが前記基準位置から前記弁体が前記弁口から最も離れる全開位置まで回転されるときに前記ステッピングモーターに入力されるパルス数の1~15%のパルスに対応する前記弁体の移動距離である、請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記中間部が、一定の外径を有する円柱形状の部分を少なくとも1つ含む、請求項1または請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記中間部が、外周面に形成された環状の溝を少なくとも1つ含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電動弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電動弁の一例を開示している。このような電動弁は、エアコンなどが有する冷凍サイクルに組み込まれる。電動弁は、弁本体と、弁体と、弁体を移動させるためのステッピングモーターと、を有している。ステッピングモーターは、ローターとステーターとを有している。ステッピングモーターにパルスが入力されるとローターが回転する。ローターの回転に応じて弁体が移動し、弁本体の弁口の開度が変化する。ローターが一方向に回転されると、弁体が弁口に近づき、弁口の開度が小さくなる。ローターが他方向に回転されると、弁体が弁口から離れ、弁口の開度が大きくなる。ローターが基準位置にあるとき、ローターに取り付けられた可動ストッパが弁本体に取り付けられた固定ストッパに当接して、ローターの一方向への回転が規制される。
【0003】
電動弁は、電動弁制御装置によって制御される。電動弁制御装置は、初期化動作において、ステッピングモーターにパルスを入力してローターを一方向に回転させ、ローターを基準位置に位置付ける。次に、電動弁制御装置は、ステッピングモーターにパルスを入力してローターを他方向に回転させ、ローターを開弁位置に位置付ける。ローターが開弁位置に位置付けられると、弁口を流れる流体の流量が最小絞り流量になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-208716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図14に、従来の電動弁が有する弁体の一例を示す。図14に示す弁体930は、着座部935と、先端部937と、を有している。着座部935は、上端から下端に向かうにしたがって外径が小さくなるテーパー形状を有している。先端部937は、着座部935の下端に連設されている。先端部937は、上端から下端に向かうにしたがって外径が小さくなるテーパー形状を有している。弁口917は、一定の内径を有するオリフィス部917aを有している。
【0006】
電動弁のローターが基準位置にあるとき、着座部935が弁座918に接しており、先端部937が弁口917に配置されている。このとき、弁口917に流体は流れない。次に、ステッピングモーターにパルスが入力されてローターが基準位置から開弁位置まで回転されると、着座部935が弁座918から離れ、先端部937とオリフィス部917aとの間に最小絞り通路938が形成される。具体的には、ローターが基準位置から開弁位置の直前の位置までの間にあるときは、図15に示すように、着座部935が弁座918に接している。そして、ローターが開弁位置の直前の位置にあるときに1個のパルスがステッピングモーターに入力されると、ローターが開弁位置に位置付けられ、図16に示すように、着座部935が弁座918から離れる。最小絞り通路938が形成されると、弁口917を流れる流体の流量が最小絞り流量になる。そして、ローターが開弁位置から他方向にさらに回転されると、弁体930が弁口917から離れ、弁口917を流れる流体の流量が線形的に増加する。図17は、従来の電動弁におけるステッピングモーターに入力されたパルス数と弁口917を流れる流体の流量との関係の一例を示すグラフである。図17において、一点鎖線の円内にグラフ上の各点における弁口917と弁体930との位置関係を示す。図15は、図17の符号XVを付した円内の一部を拡大した図である。図16は、図17の符号XVIを付した円内の一部を拡大した図である。
【0007】
複数の電動弁は、ステッピングモーターに同じ数のパルスが入力されたとき、各電動弁において弁口917を流れる流体の流量が同じになるように製造される。しかしながら、部品精度または組立精度によって、複数の電動弁において弁口917を流れる流体の流量がばらつくことがある。また、ローターが基準位置から開弁位置まで回転されるときにステッピングモーターに入力されるパルス数(開弁パルス数C)もばらつくことがある。図18は、ステッピングモーターに入力されたパルス数に対する弁口917を流れる流体の流量の公差範囲の一例を示すグラフである。図18に示すグラフは、電動弁のローターが開弁位置またはその付近にあるときのステッピングモーターに入力されたパルス数に対する弁口917を流れる流体の流量との関係を示す。図18において、下限数Na~上限数Nbは、開弁パルス数Cの公差範囲の一例である。
【0008】
しかしながら、ローターが開弁位置から他方向にさらに回転されると弁口917を流れる流体の流量が線形的に増加するので、最小絞り流量のばらつき幅(下限値Fa~上限値Fb)が大きくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、最小絞り流量のばらつき幅を小さくすることができる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る電動弁は、弁口および弁座を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが一方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが他方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁であって、前記弁口が、一定の内径を有するオリフィス部を有し、前記弁座が、前記オリフィス部の一端を囲んでおり、前記弁体が、着座部と、中間部と、先端部と、を有し、前記中間部の一端が、前記着座部に連設され、前記中間部の他端が、前記先端部に連設され、前記中間部の他端の外径が、前記先端部の外径より大きく、前記ローターが前記基準位置にあるとき、前記着座部が前記弁座に接し、前記中間部の他端が前記弁口に配置され、前記ローターが前記他方向に回転されて前記着座部が前記弁座から離れたときの前記ローターの位置が開弁位置であり、前記ローターが前記開弁位置にあるとき、前記中間部の他端と前記オリフィス部との間に最小絞り通路が形成され、前記ローターが前記基準位置から前記開弁位置まで回転されるときに前記ステッピングモーターに入力されるパルス数の公差範囲の大きさをDとしたとき、前記着座部が前記弁座に接しているときの前記中間部の他端から前記オリフィス部の一端までの距離(以下、「最小絞り通路距離」という。)が、D+1個のパルスに対応する前記弁体の移動距離以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記最小絞り通路距離が、前記ローターが前記基準位置から前記弁体が前記弁口から最も離れる全開位置まで回転されるときに前記ステッピングモーターに入力されるパルス数の1~15%のパルスに対応する前記弁体の移動距離である、ことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記中間部が、一定の外径を有する円柱形状の部分を少なくとも1つ含む、ことが好ましい。
【0013】
本発明において、前記中間部が、外周面に形成された環状の溝を少なくとも1つ含む、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弁口が、一定の内径を有するオリフィス部を有する。弁座が、オリフィス部の一端を囲んでいる。弁体が、着座部と、中間部と、先端部と、を有する。中間部の一端が、着座部に連設され、中間部の他端が、先端部に連設されている。中間部の他端の外径が、先端部の外径より大きい。ローターが基準位置にあるとき、着座部が弁座に接し、中間部の他端が弁口に配置される。ローターが他方向に回転されて着座部が弁座から離れたときのローターの位置が開弁位置である。ローターが開弁位置にあるとき、中間部の他端とオリフィス部との間に最小絞り通路が形成される。ローターが基準位置から開弁位置まで回転されるときにステッピングモーターに入力されるパルス数(以下、「開弁パルス数」という。)の公差範囲の大きさをDとしたとき、最小絞り通路距離が、D+1個のパルスに対応する弁体の移動距離以上である。
【0015】
このようにしたことから、開弁パルス数が公差範囲の上限数Nbである電動弁において、ローターが基準位置にあるときにNb~Nb+D個のパルスが入力されると、最小絞り通路が形成される。開弁パルス数が公差範囲の下限数Naである電動弁において、ローターが基準位置にあるときにNa~Na+D個のパルスが入力されると、最小絞り通路が形成される。公差範囲の大きさはD(D=Nb-Na)であることから、Na+D=Nbである。そのため、複数の電動弁の初期化動作において、開弁パルス数として上限数Nbを用いることで、いずれの電動弁においても弁口を流れる流体の流量を最小絞り流量にすることができる。したがって、複数の電動弁において、最小絞り流量のばらつき幅を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例に係る電動弁の断面図である。
図2図1の電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。
図3図1の電動弁が有する弁軸ホルダー、ストッパ部材、ローターおよびステーターの平面図である。
図4図1の電動弁が有するステッピングモーターを説明する図である。
図5図1の電動弁が有する弁体およびその近傍を示す断面図である。
図6図1の電動弁が有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である(弁体の着座部が弁座に接した状態)
図7図1の電動弁が有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である(弁体の着座部が弁座から離れた直後の状態)。
図8図1の電動弁が有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である(弁体の中間部の下端が弁口のオリフィス部の上端と軸線方向について同じ位置にある状態)。
図9図1の電動弁におけるステッピングモーターに入力されたパルス数と弁口を流れる流体の流量との関係の一例を示すグラフである。
図10図1の電動弁におけるステッピングモーターに入力されたパルス数に対する弁口を流れる流体の流量の公差範囲の一例を示すグラフである。
図11図5の弁体の第1変形例を示す断面図である。
図12図5の弁体の第2変形例を示す断面図である。
図13図5の弁体の第3変形例を示す断面図である。
図14】従来の電動弁が有する弁体およびその近傍を示す断面図である。
図15図14の弁体およびその近傍を拡大した断面図である(弁体の着座部が弁座に接した状態)。
図16図14の弁体およびその近傍を拡大した断面図である(弁体の着座部が弁座から離れた直後の状態)。
図17】従来の電動弁におけるステッピングモーターに入力されたパルス数と弁口を流れる流体の流量との関係の一例を示すグラフである。
図18】従来の電動弁におけるステッピングモーターに入力されたパルス数に対する弁口を流れる流体の流量の公差範囲の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例に係る電動弁について、図1図13を参照して説明する。本実施例に係る電動弁は、例えば、エアコンの冷凍サイクルにおいて冷媒流量を制御する流量制御弁として使用される。
【0018】
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁の断面図である。図2は、図1の電動弁が有する弁本体アセンブリの断面図である。図3は、図1の電動弁が有する弁軸ホルダー、ストッパ部材、ローターおよびステーターの平面図である。図3において、ステーターを模式的に示している。また、図3において、ローターの磁極を模式的に示している。図4は、図1の電動弁が有するステッピングモーターを説明する図である。図4Aは、ローターとステーターのコイルとを模式的に示している。図4Bは、パルスとステーターに供給される駆動電流との対応の一例を示す。図5は、図1の電動弁が有する弁体およびその近傍を示す断面図である。図6図8は、図1の電動弁が有する弁体およびその近傍を拡大した断面図である。図6は、弁体の着座部が弁座に接した状態を示す。図7は、弁体の着座部が弁座から離れた直後の状態(ローターが開弁位置にある状態)を示す。図8は、弁体の中間部の下端が弁口のオリフィス部の上端と軸線方向について同じ位置にある状態を示す。図9は、図1の電動弁におけるステッピングモーターに入力されたパルス数と弁口を流れる流体の流量との関係の一例を示すグラフである。図10は、図1の電動弁におけるステッピングモーターに入力されたパルス数に対する弁口を流れる流体の流量の公差範囲の一例を示すグラフである。図11は、図5の弁体の第1変形例を示す断面図である。図12は、図5の弁体の第2変形例を示す断面図である。図13は、図5の弁体の第3変形例を示す断面図である。図2図5図8図11図13において、弁体は正面から見た状態で示されている。
【0019】
図1に示すように、本実施例に係る電動弁1は、弁本体アセンブリ5と、ステーターユニット7と、を有している。
【0020】
図2に示すように、弁本体アセンブリ5は、弁本体10と、キャン20と、取付板23と、弁体30と、駆動機構40と、を有している。
【0021】
弁本体10は、本体部材11と、接続部材13と、を有している。本体部材11は、円柱形状を有している。本体部材11は、弁室14を有している。本体部材11には、第1導管15および第2導管16が接合されている。第1導管15は、軸線Lと直交する方向(図2の左右方向)に沿って配置され、弁室14に接続されている。第2導管16は、軸線L方向(図2の上下方向)に沿って配置され、弁口17を介して弁室14に接続されている。弁口17は、弁室14において円環テーパー形状の弁座18に囲まれている。本体部材11の上端面には、円形の嵌合穴11aが形成されている。嵌合穴11aの内周面は、図2において左方を向く平面11dを有している。嵌合穴11aの底面には、弁室14に通じる軸孔11bが形成されている。接続部材13は、円環板形状を有している。接続部材13の内周縁は、本体部材11の上部に接合されている。本体部材11および接続部材13は、アルミニウム合金、ステンレスまたは真ちゅうなどの金属製である。
【0022】
図5に示すように、弁口17は、オリフィス部17aと、導流部17bと、を有している。オリフィス部17aの上端17a1(一端)は、弁座18の内縁に連設されている。オリフィス部17aの上端17a1は、弁座18に囲まれている。オリフィス部17aは、軸線L方向全体にわたって一定の内径を有している。導流部17bの上端は、オリフィス部17aの下端に連設されている。導流部17bは、上端から下端に向かうにしたがって内径が大きくなるテーパー形状を有している。導流部17bは、オリフィス部17aの流体を第2導管16に導き、第2導管16の流体をオリフィス部17aに導く。
【0023】
図2に示すように、キャン20は、ステンレスなどの金属製である。キャン20は、下端が開口しかつ上端が塞がれた円筒形状を有している。キャン20の下端は、接続部材13の外周縁に接合されている。
【0024】
取付板23は、円弧形状を有している。取付板23の内縁は接続部材13の外周縁に連設されている。接続部材13と取付板23とは1つの部品を構成している。取付板23の円弧中心および接続部材13の中心を軸線Lが通る。取付板23は、接続部材13から径方向外方に突出している。取付板23は、孔24を有している。孔24は、円形であり、取付板23を貫通している。
【0025】
弁体30は、第1軸部31と、第2軸部32と、弁部33と、を有している。第1軸部31と第2軸部32とは、円柱形状を有している。第2軸部32の径は、第1軸部31の径より小さい。第2軸部32は、第1軸部31の上端に同軸に連設されている。第1軸部31と第2軸部32との連設部分に、上方を向く円環状の平面である段部34が形成されている。弁部33は、第1軸部31の下端に同軸に連設されている。弁部33は、弁座18と向かい合って配置される。弁部33は、閉弁状態において弁座18に接する。
【0026】
図5に示すように、弁部33は、着座部35と、中間部36と、先端部37と、を有している。着座部35と中間部36と先端部37とは、軸線L方向に沿って順に配置されている。
【0027】
着座部35は、上端から下端に向かうにしたがって外径が小さくなるテーパー形状を有している。着座部35の上端は、第1軸部31の下端に同軸に連設されている。
【0028】
中間部36は、軸線L方向全体にわたって一定の外径を有する円柱形状を有している。中間部36の上端36a(一端)は、着座部35の下端に同軸に連設されている。中間部36の外径は、オリフィス部17aの内径よりわずかに小さい。中間部36の軸線L方向の長さは、オリフィス部17aの軸線L方向の長さより短い。中間部36の下端36b(他端)の外径は、中間部36の下端36b以外の部分の外径以上である。
【0029】
先端部37は、上端から下端に向かうにしたがって外径が小さくなるテーパー形状を有している。本実施例において、先端部37は、テーパー角度が小さい部分とテーパー角度が大きい部分とを有する2段テーパー形状を有している。なお、先端部37は、上端から下端に向かうにしたがって外径が小さくなる半楕円球形状を有していてもよい。先端部37の上端は、中間部36の下端36bに同軸に連設されている。先端部37のいずれの箇所の外径も、中間部36の下端36bの外径より小さい。
【0030】
駆動機構40は、弁体30を軸線L方向に移動させる。弁体30の移動によって弁口17が開閉する。図2図3に示すように、駆動機構40は、ローター41と、弁軸ホルダー42と、ガイドブッシュ43と、ストッパ部材44と、固定具45と、を有している。
【0031】
ローター41は、円筒形状を有している。ローター41の外径は、キャン20の内径より若干小さい。ローター41は、キャン20の内側に配置される。ローター41は、弁本体10に対して回転可能である。ローター41の外周面には、複数のN極および複数のS極が形成されている。複数のN極および複数のS極は、軸線L方向に延在している。複数のN極および複数のS極は、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、ローター41は、N極を12個有し、S極を12個有している。互いに隣り合うN極とS極との間の角度は、15度である。
【0032】
弁軸ホルダー42は、下端が開口しかつ上端が塞がれた円筒形状を有している。弁軸ホルダー42はローター41の嵌合孔41aに嵌合されている。弁軸ホルダー42は、ローター41と共に回転する。弁軸ホルダー42は、可動ストッパ42sを有している。可動ストッパ42sは、弁軸ホルダー42の外周面の下部から径方向外方に突出している。弁軸ホルダー42の上壁部42aには、軸孔42bが形成されている。軸孔42bには、弁体30の第2軸部32が軸線L方向に移動可能に配置される。弁軸ホルダー42の上壁部42aの下面にはワッシャー46が配置される。ワッシャー46と弁体30の段部34との間には閉弁ばね47が配置される。閉弁ばね47は、コイルばねであり、弁体30を弁座18に向けて押す。弁軸ホルダー42の内周面には、雌ねじ42cが形成されている。可動ストッパ42sは、ローター41に対して固定されている。
【0033】
ガイドブッシュ43は、基部43aと、支持部43bと、を有している。基部43aと支持部43bとは、円筒形状を有している。基部43aの外周面は、平面43dを有している。基部43aは本体部材11の嵌合穴11aに圧入され、平面43dが嵌合穴11aの平面11dと接する。これにより、本体部材11の中心軸とガイドブッシュ43の中心軸とが軸線L上で一致するとともに、ガイドブッシュ43が本体部材11に対して軸線L周りに正しく位置付けられる。支持部43bの外径は、基部43aの外径より小さい。支持部43bの内径は、基部43aの内径と同じである。支持部43bは、基部43aの上端に同軸に連設されている。支持部43bの外周面には、雄ねじ43cが形成されている。雄ねじ43cは、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cと螺合される。ガイドブッシュ43の内側には、弁体30の第1軸部31が配置される。ガイドブッシュ43は、弁体30を軸線L方向に移動可能に支持する。
【0034】
ストッパ部材44は、ストッパ本体44aを有している。ストッパ本体44aは、円筒形状を有している。ストッパ本体44aの内周面には、雌ねじ44cが形成されている。ストッパ本体44aは、固定ストッパ44sを有している。固定ストッパ44sは、ストッパ本体44aの外周面から径方向外方に突出している。雌ねじ44cは、ストッパ本体44aがガイドブッシュ43の基部43aに当接するまで雄ねじ43cに螺合されている。これにより、ストッパ部材44は、ガイドブッシュ43に固定される。固定ストッパ44sは、弁本体10に対して固定されている。
【0035】
固定具45は、固定部45aと、フランジ部45bと、を有している。固定部45aは、段付きの円筒形状を有している。固定部45aの内側には、弁体30の第2軸部32が配置される。固定部45aは、第2軸部32に接合される。フランジ部45bは、固定部45aの下端に連設されている。固定具45の外側には、復帰ばね48が配置される。復帰ばね48は、コイルばねである。
【0036】
図1に示すように、ステーターユニット7は、ステーター60と、ハウジング70と、取付片80と、を有している。
【0037】
ステーター60は、円筒形状を有している。ステーター60は、A相ステーター61と、B相ステーター62と、を有している。
【0038】
A相ステーター61は、複数のクローポール型の極歯61a、61bを内周に有している。極歯61aの先端は下方に向いており、極歯61bの先端は上方に向いている。極歯61aと極歯61bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、A相ステーター61は、極歯61aを12個有し、極歯61bを12個有している。互いに隣り合う極歯61aと極歯61bとの間の角度は、15度である。A相ステーター61のコイル61cが通電されると、極歯61aと極歯61bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0039】
B相ステーター62は、複数のクローポール型の極歯62a、62bを内周に有している。極歯62aの先端は下方に向いており、極歯62bの先端は上方に向いている。極歯62aと極歯62bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、B相ステーター62は、極歯62aを12個有し、極歯62bを12個有している。互いに隣り合う極歯62aと極歯62bとの間の角度は、15度である。B相ステーター62のコイル62cが通電されると、極歯62aと極歯62bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0040】
A相ステーター61は、B相ステーター62の上に同軸に配置されている。軸線L方向から見たときに互いに隣り合うA相ステーター61の極歯61aとB相ステーター62の極歯62aとの間の角度は、7.5度である。つまり、B相ステーター62は、極歯61aと極歯62aとが軸線L方向に並ぶ位置からA相ステーター61に対して軸線L周りに7.5度回転した位置にある。図4Aに示すように、A相ステーター61のコイル61cは、端子A1、A2を有している。B相ステーター62のコイル62cは、端子B1、B2を有している。端子A1、A2および端子B1、B2は、図示しないモータードライバに接続されている。
【0041】
ステーター60の内側には、キャン20が配置される。ステーター60は、キャン20の内側に配置されたローター41とともにステッピングモーター66を構成する。本実施例において、ステッピングモーター66の励磁モードは、1-2相励磁である。ステッピングモーター66のステップ角θは、3.75度である。ステップ角θは、ステッピングモーター66における1パルスあたりの回転角度である。
【0042】
ステッピングモーター66にパルスP(P1~P8)が入力されることによりローター41が回転する。具体的には、ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されることによりローター41が回転する。本明細書において、「ステッピングモーター66にパルスPが入力されること」は、「ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されること」と同義である。図4Bに、パルスP1~P8とステーター60に供給される駆動電流の状態(以下、「励磁パターン」という。)との対応の一例を示す。図4Bにおいて、(+)は、端子A1から端子A2への駆動電流、または、端子B1から端子B2への駆動電流を供給することを示し、(-)は、端子A2から端子A1への駆動電流、または、端子B2から端子B1への駆動電流を供給することを示し、(0)は、駆動電流を供給しないことを示す。本実施例において、励磁パターンの数Mは8である。ステッピングモーター66には、図4Bに示すパルスP1~P8が順番に入力される。
【0043】
ローター41を一方向(図3において時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター66にパルスPを降順(パルスP8~P1の順番)で循環的に入力する。ローター41が一方向に回転すると、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとのねじ送り作用によってローター41が下方に移動する。ローター41が、閉弁ばね47を介して弁体30を下方に押す。弁体30が下方に移動して弁部33が弁座18に接する。このときのローター41の位置は、閉弁位置Rcである。この状態からローター41を一方向にさらに回転させると、閉弁ばね47が圧縮されてローター41が下方にさらに移動する。弁体30は下方に移動しない。そして、弁軸ホルダー42の可動ストッパ42sがストッパ部材44の固定ストッパ44sに接すると、ローター41の一方向への回転が規制される。このときのローター41の位置は、基準位置Rxである。
【0044】
ローター41を一方向と反対の他方向(図3において反時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター66にパルスPを昇順(パルスP1~P8の順番)で循環的に入力する。ローター41が他方向に回転すると、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとのねじ送り作用によってローター41が上方に移動する。ローター41と共に弁軸ホルダー42が上方に移動して、弁軸ホルダー42が固定具45を上方に押す。固定具45とともに弁体30が上方に移動して、弁体30が弁座18から離れる。
【0045】
図9のグラフは、電動弁1におけるステッピングモーター66に入力されたパルス数と弁口17を流れる流体の流量との関係を示す。図9において、一点鎖線の円内にグラフ上の各点における弁口17と弁体30との位置関係を示す。図9において、所定の流量測定環境でローター41が全開位置Rzにあるときに弁口17を流れる流量(例えば、Cv値)を流量100%としている。電動弁1の通常使用において、ローター41は、基準位置Rxから全開位置Rzの間に位置付けられる。ローター41が基準位置Rxにあるとき、弁体30の着座部35が弁座18に接する。ローター41が全開位置Rzにあるとき、弁体30が弁口17から最も離れる。ローター41が基準位置Rxから全開位置Rzまで回転されるときにステッピングモーター66に入力されるパルス数が、全開パルス数Czである。
【0046】
電動弁1において、ローター41を基準位置Rxから他方向に回転させ、弁体30の着座部35が弁座18から離れたときのローター41の位置が開弁位置Roである。ローター41が開弁位置Roに位置付けられると、弁口17のオリフィス部17aと弁体30の中間部36の下端36bとの間に最小絞り通路38が形成される。最小絞り通路38が形成されると、弁口17を流れる流体の流量が最小絞り流量となる。最小絞り流量は、オリフィス部17aの内径と中間部36の下端36bの外径とによって決定される。
【0047】
ハウジング70は、合成樹脂製である。ハウジング70は、射出成形されている。ハウジング70は、ステーター60を収容している。ハウジング70は、周壁部71と、上壁部72と、を有している。
【0048】
周壁部71は、円筒形状を有している。周壁部71には、ステーター60が埋め込まれている。上壁部72は、周壁部71の上端に連設されている。周壁部71の内周面、上壁部72の内面およびステーター60の内周面は、ステーターユニット7の内側空間74を形成している。内側空間74にはキャン20が配置される。
【0049】
取付片80は、長方形の金属板をクランク形状に折り曲げたものである。取付片80の一端部は、周壁部71の下部に埋め込まれた導通部材76にかしめられている。取付片80は、導通部材76に溶接されていてもよい。導通部材76は、B相ステーター62のヨークに電気的に接続されている。取付片80の他端部には、上方に突出する1つの凸部81が形成されている。凸部81は、取付板23の下面に押し付けられる。
【0050】
凸部81は、取付板23の孔24に配置される。凸部81の先端が孔24に嵌まる。凸部81の先端が孔24に嵌まると凸部81が孔24に留まり、ステーターユニット7が弁本体アセンブリ5に対して位置決めされる。
【0051】
電動弁1において、弁本体10(本体部材11、接続部材13)、弁口17、キャン20、弁体30、ローター41、弁軸ホルダー42、ガイドブッシュ43、ステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。また、取付板23の円弧中心も軸線Lに一致する。
【0052】
複数の電動弁1は、ステッピングモーター66に同じ数のパルスPが入力されたとき、各電動弁1において弁口17を流れる流体の流量が同じになるように製造される。しかしながら、部品精度または組立精度によって、複数の電動弁1において弁口17を流れる流体の流量がばらつくことがある。また、ローター41が基準位置Rxから開弁位置Roまで回転されるときにステッピングモーター66に入力されるパルス数(開弁パルス数C)もばらつくことがある。図10は、ステッピングモーター66に入力されたパルス数に対する弁口17を流れる流体の流量の公差範囲を示すグラフである。図10において、下限数Na~上限数Nbは、開弁パルス数Cの公差範囲である。
【0053】
電動弁1において、開弁パルス数Cの公差範囲の大きさ(公差範囲の上限数Nbと下限数Naとの差分数)をDとしたとき、着座部35が弁座18に接しているときの中間部36の下端36bからオリフィス部17aの上端17a1までの距離(以下、「最小絞り通路距離E」という。)は、D+1個のパルスPに対応する弁体30の移動距離と同じである。本明細書において、n個のパルスPに対応する弁体30の移動距離とは、n個のパルスPがステッピングモーター66に入力されたときに弁体30が移動される距離のことである。つまり、最小絞り通路距離Eは、D+1個のパルスPがステッピングモーター66に入力されたときに弁体30が移動される距離と同じである。例えば、開弁パルス数Cの公差範囲の大きさが12である場合、最小絞り通路距離Eは、13個のパルスPに対応する弁体30の移動距離と同じである。なお、最小絞り通路距離Eは、D+1個のパルスPに対応する弁体30の移動距離以上であればよい。
【0054】
また、最小絞り通路距離Eは、全開パルス数Czの1~15%のパルスPに対応する弁体30の移動距離であることが好ましく、全開パルス数Czの5~15%のパルスPに対応する弁体30の移動距離であることがより好ましい。本実施例において、全開パルス数Czは500である。最小絞り通路距離Eが全開パルス数Czの1%のパルスPに対応する弁体30の移動距離より短い場合、開弁パルス数Cの公差範囲を小さくする必要がある。そのため、電動弁1の歩留まりが低下する。最小絞り通路距離Eが全開パルス数Czの5%のパルスPに対応する弁体30の移動距離以上であると、電動弁1の歩留まりをより向上できる。最小絞り通路距離Eが全開パルス数Czの15%のパルスPに対応する弁体30の移動距離より長い場合、ステッピングモーター66に入力されたパルス数に応じて弁口17を流れる流体の流量が変化する区間(図9におけるN1~N2の区間)が小さくなる。そのため、1パルスあたりの流量の変化量が大きくなり、流量の細かい制御ができなくなる。
【0055】
次に、電動弁1の初期化動作の一例について、図6図8を参照して説明する。
【0056】
電動弁1は、図示しない電動弁制御装置によって制御される。電動弁制御装置は、電動弁1の初期化動作において、ステッピングモーター66にパルスP1~P8を降順に入力してローター41を一方向に回転させ、ローター41を基準位置Rxに位置付ける。
【0057】
続いて、電動弁制御装置は、ステッピングモーター66にパルスP1~P8を昇順で入力してローター41を他方向に回転させる。
【0058】
電動弁1の開弁パルス数をCとし、開弁パルス数の公差範囲の下限数をNaとし、上限数をNbとし、公差範囲の大きさをD(D=Nb-Na)とする。電動弁1において、ステッピングモーター66にC個のパルスPが入力されるとローター41が開弁位置Roに位置付けられる。具体的には、ステッピングモーター66に入力されたパルス数が「0」から「C-1」までは、図6に示すように、着座部35が弁座18に接している。そして、ステッピングモーター66に入力されたパルス数が「C」になると、図7に示すように、着座部35が弁座18から離れる。このとき、オリフィス部17aと中間部36の下端36bとの間に最小絞り通路38が形成され、弁口17を流れる流体の流量が最小絞り流量になる。図6は、図9の符号VIを付した円内の一部を拡大した図である。図7は、図9の符号VIIを付した円内の一部を拡大した図である。
【0059】
そして、ステッピングモーター66に入力されたパルス数が「C」から「C+D」までは、最小絞り通路38が形成された状態が続く。ステッピングモーター66に入力されたパルス数が「C+D」になると、図8に示すように、中間部36の下端36bがオリフィス部17aの上端17a1と軸線L方向について同じ位置になる。図8は、図9の符号VIIIを付した円内の一部を拡大した図である。
【0060】
換言すると、ステッピングモーター66に入力されたパルス数が「C-1」のとき着座部35が弁座18に接している。さらにステッピングモーター66にD+1個のパルスPが入力されると、弁体30が最小絞り通路距離Eだけ上方に移動して、中間部36の下端36bがオリフィス部17aの上端17a1と軸線L方向について同じ位置になる。この時点でのステッピングモーター66に入力されたパルス数は「C-1+D+1=C+D」である。
【0061】
そして、ステッピングモーター66に入力されたパルス数が「C+D」より大きくなると、先端部37とオリフィス部17aとの間に最小絞り通路38より通路面積の大きい通路が形成され、弁口17を流れる流体の流量が最小絞り流量より大きくなる。
【0062】
例えば、図10のG1線で示されるパルス数と弁口17を流れる流量との関係を有する電動弁1(前者の電動弁1)では、開弁パルス数Cが上限数Nbである。そして、この電動弁1において、ローター41が基準位置RxにあるときにNb~Nb+D個のパルスPがステッピングモーター66に入力されると最小絞り通路38が形成される。このとき、弁口17を流れる流体の流量は最小絞り流量(下限値Fa)である。
【0063】
例えば、図10のG2線で示されるパルス数と弁口17を流れる流量との関係を有する電動弁1(後者の電動弁1)では、開弁パルス数Cが下限数Naである。そして、この電動弁1において、ローター41が基準位置RxにあるときにNa~Na+D個のパルスPがステッピングモーター66に入力されると最小絞り通路38が形成される。このとき、弁口17を流れる流体の流量は最小絞り流量(上限値Fb)である。
【0064】
前者の電動弁1では、最小絞り通路38が形成されるパルス数がNb~Nb+D個である。後者の電動弁1では、最小絞り通路38が形成されるパルス数がNa~Na+D個である。Dは開弁パルス数Cの公差範囲の大きさ(D=Nb-Na)である。そのため、後者の電動弁1では、最小絞り通路38が形成されるパルス数がNa~Nb個である。
【0065】
このことから、開弁パルス数Cが公差範囲(下限数Na~上限数Nb)にあるいずれの電動弁1においても、初期化動作において上限数NbのパルスPがステッピングモーター66に入力されたとき、弁口17に最小絞り通路38が形成され、弁口17を流れる流体の流量が最小絞り流量(下限値Fa~上限値Fb)になる。そのため、開弁パルス数Cの公差の最小絞り流量のばらつきへの影響を排除でき、最小絞り流量のばらつきの要因を、弁口17(オリフィス部17a)および弁体30(中間部36の下端36b)の寸法に限定することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施例に係る電動弁1は、弁口17および弁座18を有する弁本体10と、ローター41を有するステッピングモーター66と、ローター41が一方向に回転されると弁口17に近づきかつローター41が他方向に回転されると弁口17から離れる弁体30と、ローター41が基準位置Rxにあるときにローター41の一方向への回転を規制するストッパ機構49と、を有する。弁口17が、一定の内径を有するオリフィス部17aを有する。弁座18が、オリフィス部17aの上端17a1を囲んでいる。弁体30が、着座部35と、中間部36と、先端部37と、を有する。中間部36の上端36aが、着座部35に連設されている。中間部36の下端36bが、先端部37に連設されている。中間部36の下端36bの外径が、先端部37の外径より大きい。ローター41が基準位置Rxにあるとき、着座部35が弁座18に接し、中間部36の下端36bが弁口17に配置される。ローター41が他方向に回転されて着座部35が弁座18から離れたときのローター41の位置が開弁位置Roである。ローター41が開弁位置Roにあるとき、中間部36の下端36bとオリフィス部17aとの間に最小絞り通路38が形成される。開弁パルス数Cの公差範囲の大きさをDとしたとき、着座部35が弁座18に接しているときの中間部36の下端36bからオリフィス部17aの上端17a1までの距離(最小絞り通路距離E)が、D+1個のパルスPに対応する弁体30の移動距離と同じである。
【0067】
このようにしたことから、開弁パルス数Cが公差範囲の上限数Nbである電動弁1において、ローター41が基準位置RxにあるときにNb~Nb+D個のパルスPが入力されたとき、最小絞り通路38が形成される。開弁パルス数Cが公差範囲の下限数Naである電動弁1において、ローター41が基準位置RxにあるときにNa~Na+D個のパルスPが入力されたとき、最小絞り通路38が形成される。Dは公差範囲の大きさ(D=Nb-Na)であることから、Na+D=Nbである。そのため、複数の電動弁1の初期化動作において、開弁パルス数Cとして公差範囲の上限数Nbを用いることで、いずれの電動弁1においても弁口17を流れる流体の流量を最小絞り流量にすることができる。したがって、複数の電動弁1において、最小絞り流量のばらつき幅を小さくすることができる。
【0068】
電動弁1において、弁体30の中間部36は一定の外径を有する円柱形状を有している。中間部36の形状はこのような形状に限定されない。図11に示すように、弁体30は、外周面に断面U字状の環状の溝を有する中間部36Aを有していてもよい。環状の溝は、中間部36Aの外周面の周方向全体にわたって形成されている。環状の溝は、断面V字状であってもよい。または、図12に示すように、弁体30は、一定の外径を有する円柱形状の部分36cと外周面に環状の溝が形成された部分36dとを有する中間部36Bを有していてもよい。弁体30は、複数の円柱形状の部分と環状の溝が形成された部分とが軸線L方向に交互に配置された中間部を有していてもよい。または、図13に示すように、弁体30が、一定の外径を有する円柱形状の部分36eと上端から下端に向かうにしたがって外径が大きくなるテーパー形状の部分36fとを有する中間部36Cを有していてもよい。図13の弁体30は、着座部35が弁座18に接している状態において、着座部35の下端が弁口17に配置されている。
【0069】
電動弁1において、中間部36が、一定の外径を有する円柱形状の部分を少なくとも1つ含むことが好ましい。また、電動弁1において、中間部36が、外周面に形成された環状の溝を少なくとも1つ含むことが好ましい。このようにすることで、中間部36が比較的簡易な形状になる。
【0070】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の部材の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。
【0071】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…電動弁、5…弁本体アセンブリ、7…ステーターユニット、10…弁本体、11…本体部材、11a…嵌合穴、11b…軸孔、11d…平面、13…接続部材、14…弁室、15…第1導管、16…第2導管、17…弁口、17a…オリフィス部、17a1…上端、17b…導流部、18…弁座、20…キャン、23…取付板、24…孔、30…弁体、31…第1軸部、32…第2軸部、33…弁部、34…段部、35…着座部、36…中間部、36a…上端、36b…下端、37…先端部、38…最小絞り通路、40…駆動機構、41…ローター、41a…嵌合孔、42…弁軸ホルダー、42a…上壁部、42b…軸孔、42c…雌ねじ、42s…可動ストッパ、43…ガイドブッシュ、43a…基部、43b…支持部、43c…雄ねじ、43d…平面、44…ストッパ部材、44a…ストッパ本体、44c…雌ねじ、44s…固定ストッパ、45…固定具、45a…固定部、45b…フランジ部、46…ワッシャー、47…閉弁ばね、48…復帰ばね、49…ストッパ機構、60…ステーター、61…A相ステーター、61a…極歯、61b…極歯、61c…コイル、62…B相ステーター、62a…極歯、62b…極歯、62c…コイル、66…ステッピングモーター、70…ハウジング、71…周壁部、72…上壁部、74…内側空間、76…導通部材、80…取付片、81…凸部、A1…端子、A2…端子、B1…端子、B2…端子、C…開弁パルス数、Cz…全開パルス数、L…軸線、P…パルス、Rc…閉弁位置、Ro…開弁位置、Rx…基準位置、Rz…全開位置、E…最小絞り通路距離、Na…下限数、Nb…上限数、Fa…下限値、Fb…上限値

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18