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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】CLDN18.2抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240220BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240220BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240220BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/68
A61K45/00
A61K31/704
A61K31/513
A61K31/282
A61P35/00
A61P37/02
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P43/00 121
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2022528357
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2020101383
(87)【国際公開番号】W WO2021008463
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】201910628018.9
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522015364
【氏名又は名称】明済生物製薬(北京)有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUTUREGEN BIOPHARMACEUTICAL (BEIJING) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】2-201, Building 1, #16 Baoshennanjie, Daxing Shengwuyiyao Chanyejidi, Zhongguancun Science Park, Daxing District, Beijing 102629, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】▲ジン▼ 照宇
(72)【発明者】
【氏名】李 芸
(72)【発明者】
【氏名】李 鋒
(72)【発明者】
【氏名】霍 耐凡
(72)【発明者】
【氏名】金 秀梅
(72)【発明者】
【氏名】任 麗
(72)【発明者】
【氏名】閻 哲賢
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522543(JP,A)
【文献】国際公開第2015/113576(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109762067(CN,A)
【文献】Journal of Hematology & Oncology,2017年,Vol.10:105,p.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CLDN18.2に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、前記抗体は以下の重鎖CDR(CDRH)と軽鎖CDR(CDRL)を有する、抗体又はその抗原結合断片:
a.配列番号1に示す重鎖可変領域(VH)におけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号6に示す軽鎖可変領域(VL)におけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
b.配列番号21に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号26に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
c.配列番号31に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号36に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
d.配列番号41に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号46に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;又は
e.配列番号55に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号60に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3。
【請求項2】
前記抗体は以下のCDRHとCDRLを有する、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片:
a.配列番号3-5に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号8-10に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
b.配列番号23-25に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号28-30に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
c.配列番号33-35に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号38-40に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
d.配列番号43-45に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号48-50に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;又は
e.配列番号57-59に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号62-64に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3。
【請求項3】
前記抗体は以下のVHとVLを有する、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片:
a.配列番号1のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むVL;
b.配列番号21のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むVL;
c.配列番号31のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVL;
d.配列番号41のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号46のアミノ酸配列を含むVL;又は
e.配列番号55のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号60のアミノ酸配列を含むVL。
【請求項4】
前記抗体はFc領域を有する、請求項1-3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
Euナンバリングシステムでナンバリングする場合、前記抗体はAsn297において糖鎖構造修飾を有する、請求項4に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項1-5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体は二重特異性抗体又は多重特異性抗体である、請求項1-5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体はIgG、IgA、IgM、IgEとIgDのアイソタイプから選択される、請求項1-7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体はIgG1、IgG2、IgG3とIgG4のサブタイプから選択される、請求項1-7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗原結合断片はFab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fd’断片、Fv断片、scFv断片、ds-scFv断片、dAb断片、一本鎖断片、二価抗体及び線状抗体から選択される、請求項1-9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
請求項1-10のいずれか一項の抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項13】
請求項11に記載の核酸分子又は請求項12に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項14】
治療剤、診断剤又は顕像剤とコンジュゲート化する請求項1-10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、コンジュゲート。
【請求項15】
請求項1-10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項14に記載のコンジュゲート、及び、一種又は多種の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含む、組成物。
【請求項16】
Euナンバリングシステムでナンバリングする場合、前記抗体のAsn297における糖鎖構造において、フコースの糖鎖構造を有する割合が50%又はそれ以下である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記抗体の前記糖鎖構造において、フコースの糖鎖構造を有する割合が30%又はそれ以下、例えば20%又はそれ以下、10%又はそれ以下、5%又はそれ以下、2%又はそれ以下、又は1%又はそれ以下である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗体において、フコースの糖鎖構造を有する割合が0%-1%である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗体はFut8遺伝子ノックアウト細胞によって生成される、請求項16-18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記細胞はCHO細胞とHEK293細胞から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
Fut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体と比べ、前記抗体がより高いFcγRIIIa結合活性を有する、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
Fut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体と比べ、前記抗体がより高いADCC活性を有する、請求項19-21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物は一種又は多種の他の治療剤をさらに含む、請求項15~22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
前記治療剤は抗体、化学療法の薬物と小分子薬物から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記化学療法の薬物はエピルビシン(Epirubicin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)及び5-フルオロウラシル(5-FU)から選択される一種又は多種である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
者のCLDN18.2の発現に関連する疾患を治療するための、請求項15-25のいずれか一項に記載の組成物
【請求項27】
前記疾患は癌である、請求項26に記載の組成物
【請求項28】
前記癌は胃癌、胆管癌、食道癌と膵臓癌から選択される、請求項27に記載の組成物
【請求項29】
種又は多種の他の療法と併用して患者に投与することに利用される、請求項26-28のいずれか一項に記載の組成物
【請求項30】
前記他の療法は、化学療法、放射療法、免疫療法及び手術治療から選択される、請求項29に記載の組成物
【請求項31】
前記免疫療法は、免疫チェックポイント分子に対する療法、CAR-T細胞療法及びCAR-NK細胞療法から選択される、請求項30に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年07月12日に出願された、出願番号がCN 201910628018.9であり、発明名称が“CLDN18.2抗体及びその用途”である中国特許に基づき優先権を主張し、その内容を本願に援用する。
【0002】
本願発明は、免疫治療分野に関する。具体的に、本願発明は、CLDN18.2に結合する抗体及びその脱フコシル化形態、及びこれらの疾患の治療、特に癌の治療における応用に関する。
【背景技術】
【0003】
胃癌や食道癌を含む上部消化管腫瘍は、世界的によく見られ、予後が比較的悪い悪性腫瘍である。胃癌は中国では特に好発しており、世界中約42%の胃癌新発症例が中国で報告されている。早期診断が欠けているため、約80%胃癌患者は、発見時にすでに末期である。胃癌が一般的な化学療法薬物に対する感受性が低いので、末期胃癌の五年生存率極めて低く、現に中国の3番目に大きな致死性悪性腫瘍になっている。それ故、近年では、胃癌特異性を標的とする治療方法に対する研究が展開されている。
【0004】
クローディン(Claudin)ファミリータンパク質は、上皮細胞に広く分布されている密着結合構造の主要構成部である。他のクローディンファミリータンパク質の構造と類似して、CLDN18.2は分子量が約27.8kd、四つの膜貫通ドメインを持つ膜タンパク質であり、且つCLDN18.2は二つ比較的に短い細胞外ドメインEC1とEC2をも持っている。他のクローディンファミリータンパク質と異なる点は、正常組織において、CLDN18.2が胃部の高度分化した上皮細胞にのみ極めて特異的に発現している点である(Tureci O et al.,Gene,2011)。胃上皮細胞由来の腫瘍において、高い割合の腫瘍細胞の表面にCLDN18.2が発現している。胃癌細胞のリンパ節と他の組織転移腫瘍においても高レベルのCLDN18.2発現が検出されている(Woll S.et al.,Int.J.Cancer,2013)。CLDN18.2は、胃癌に加えて、高い割合の胆管癌、食道癌と膵臓癌等の腫瘍細胞に発現している。特異性表面マーカーとして、CLDN18.2が癌治療の潜在的標的分子となる。CLDN18.2に対する高効率抗体薬物の開発は、多様な癌の治療を可能とし、巨大な応用可能性と市場価値を有する。
【0005】
治療性モノクローナル抗体が腫瘍細胞を傷害する主な作用機構の一つは、ADCC効果(抗体依存性細胞が媒介する細胞毒性、antibody dependent cell mediated cytotoxicity)である。治療性抗体の抗原認識領域(Fab)が腫瘍細胞表面の特異性抗原と結合した後、抗体定常領域(Fc)がFC受容体を発現している(FcγR)エフェクター細胞と結合することによってエフェクター細胞の細胞傷害活性を活性化することにより、グランザイムとパーフォリン等を含む細胞毒性メディエーターを分泌し、最終的に標的細胞(腫瘍細胞)の溶解破壊を引き起こす。抗体の抗原に対する結合能力の強さ、抗原発現の量(Abundance)、並びに抗体FC領域とエフェクター細胞表面のFC受容体の結合力の強さは、全てADCC効果の強度に影響する可能性があり、それにより癌の治療効果に影響する可能性がある(Jefferis and Lund、2002)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、新しい抗CLDN18.2の抗体を提供した。前記抗体は、高い親和力でCLDN18.2と特異的に結合し、エフェクター細胞のCLDN18.2発現標的細胞(例えば腫瘍細胞)に対する傷害を媒介する。また、前記抗体の脱フコシル化形態をも作成しており、この脱フコシル化形態は、通常抗体に比べて、FcγRIIaにより効率的に結合し、ADCC効果を誘導する。
【0007】
それに応じて、一つの局面では、本発明はCLDN18.2に結合する抗体又はその抗原結合断片に関し、前記抗体は以下の重鎖CDR(CDRH)と軽鎖CDR(CDRL)を有する:
a.配列番号1に示す重鎖可変領域(VH)におけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号6に示す軽鎖可変領域(VL)におけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
b.配列番号11に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号16に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
c.配列番号21に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号26に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
d.配列番号31に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号36に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
e.配列番号41に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号46に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;又は
f.配列番号55に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号60に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3。
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体は以下のCDRHとCDRLを有する:
a.配列番号3-5に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号8-10に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
b.配列番号13-15に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号18-20に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
c.配列番号23-25に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号28-30に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
d.配列番号33-35に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号38-40に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
e.配列番号43-45に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号48-50に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;又は
f.配列番号57-59に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号62-64に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3。
【0008】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体は以下のVHとVLを有する:
a.配列番号1のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むVL;
b.配列番号11のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVL;
c.配列番号21のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むVL;
d.配列番号31のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVL;
e.配列番号41のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号46のアミノ酸配列を含むVL;
f.配列番号55のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号60のアミノ酸配列を含むVL。
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体が配列番号51に示す重鎖定常領域配列及び/又は配列番号53に示す軽鎖定常領域配列を有してもよい。
【0009】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体はFc領域を有する。ある特定の実施様態において、Euナンバリングシステムでナンバリングする場合、前記抗体はAsn297において糖鎖構造修飾を有してもよい。ある特定の実施様態において、前記糖鎖構造において、フコースの糖鎖構造を有する割合が50%又はそれ以下である。ある特定の実施様態において、前記糖鎖構造において、フコースの糖鎖構造を有する割合が30%以下、例えば20%以下、10%以下、5%以下、2%以下又は1%以下である。
【0010】
好ましい実施様態において、前記抗体において、フコースの糖鎖構造を有する割合が0%-1%である。
【0011】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体はFut8遺伝子ノックアウトの細胞によって生成される。ある特定の実施様態において、前記細胞はCHO細胞とHEK293細胞から選択されてもよい。
【0012】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、Fut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体と比べ、前記抗体がより高いFcγRIIIa結合活性を有する。ある特定の実施様態において、Fut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体と比べ、前記抗体がより高いADCC活性を有する。
【0013】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体はモノクローナル抗体であってもよい。他の特定の実施様態において、前記抗体は二重特異性抗体また多重特異性抗体であってもよい。
【0014】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体はIgG、IgA、IgM、IgEとIgDのアイソタイプから選択されてもよい。ある特定の実施様態において、前記抗体はIgG1、IgG2、IgG3とIgG4のサブタイプから選択されてもよい。
【0015】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のいかなる実施様態において、前記抗原結合断片はFab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fd’断片、Fv断片、scFv断片、ds-scFv断片、dAb断片、一本鎖断片、二価抗体及び線状抗体から選択されてもよい。
【0016】
ある局面において、本発明は核酸分子に関し、前記核酸分子は本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0017】
他の局面において、本発明はベクターに関し、前記ベクターは本発明の核酸分子を含む。
【0018】
さらに他の局面において、本発明は宿主細胞に関し、前記宿主細胞は本発明の核酸分子又はベクターを含む。
【0019】
ある局面において、本発明はコンジュゲートに関し、前記コンジュゲートは、治療剤、診断剤又は顕像剤とコンジュゲート化する本発明のいかなる抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0020】
他の局面において、本発明は組成物に関し、前記組成物は、本発明の抗体又はその抗原結合断片、又はコンジュゲート、及び、一種又は多種の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含む。ある特定の実施様態において、前記組成物は一種又は多種の他の治療剤をさらに含む。
【0021】
ある特定の実施様態において、前記治療剤は抗体、化学療法の薬物と小分子薬物から選択されてもよい。ある特定の実施様態において、前記化学療法の薬物はエピルビシン(Epirubicin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)及び5-フルオロウラシル(5-FU)から選択される一種又は多種であってもよい。
【0022】
ある局面において、本発明は被験者のCLDN18.2発現に関連する疾患を治療する方法に関し、前記方法は前記被験者に対して、本発明の抗体又はその抗原結合断片、コンジュゲート、又は組成物を投与するステップを含む。
【0023】
ある特定の実施様態において、前記疾患は癌である。例えば、前記癌は胃癌、胆管癌、食道癌と膵臓癌から選択されてもよい。
【0024】
ある特定の実施様態において、前記方法は前記被験者に対して、一種又は多種の他の療法、例えば癌療法を実施するステップをさらに含む。ある特定の実施様態において、前記他の療法は化学療法、放射療法、免疫療法と手術治療から選択される。
【0025】
ある特定の実施様態において、前記免疫療法は免疫チェックポイント分子に対する療法、CAR-T細胞療法及びCAR-NK細胞療法から選択される。
【0026】
ある特定の実施様態において、前記化学療法はエピルビシン、オキサリプラチン及び5-フルオロウラシルを含む併用化学療法から選択される。
【0027】
ある局面において、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合断片、コンジュゲート、又は組成物の、被験者のCLDN18.2の発現に関連する疾患の治療における用途に関する。
【0028】
他の局面において、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合断片、コンジュゲート、又は組成物の、被験者のCLDN18.2の発現に関連する疾患を治療するための薬物の製作における用途に関する。
【0029】
本発明の用途のある特定の実施様態において、前記疾患は癌である。例えば、前記癌は胃癌、胆管癌、食道癌と膵臓癌から選択されてもよい。
【0030】
ある局面において、本発明はポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは配列番号1、6、11、16、21、26、31、36、41、46、55及び60から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0031】
他の局面において、本発明は核酸分子に関し、前記核酸分子は配列番号2、7、12、17、22、27、32、37、42、47、56及び61から選択されるヌクレオチド配列を有する。また、本発明は前記核酸分子を含むベクターに関する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1はフローサイトメトリーでCHO、CT26、SNU601細胞並びに構築のCHO-CLDN18.2、CT26-CLDN18.2及びSNU601-CLDN18.2細胞のCLDN18.2発現を検出した結果を示す。
図2図2はフローサイトメトリーでコントロールM13ファージ並びに一次、二次、三次スクリーニングを経たファージライブラリーとCHO細胞、CHO-CLDN18.2細胞との結合を検出した結果を示す。
図3図3はフローサイトメトリーでスクリーニングしたファージクローンA1、A2、A3、A4、A5(図3A)及びA6(図3B)とCHO細胞、CHO-CLDN18.2細胞との結合を検出した結果を示す。
図4図4はフローサイトメトリーで違う濃度の組換え抗体18.2-A1、18.2-A2、18.2-A3、18.2-A4、18.2-A5(図4A)、18.2-A5F及び18.2-A6F(図4B)とCT26-CLDN18.2細胞との結合を検出した結果並びにEC50値を示す。
図5図5はフローサイトメトリーでCLDN18.2抗体とCLDN18.1(18.1-flag)又はCLDN18.2(18.2-flag)を発現する293t細胞との結合を検出した結果を示す。
図6図6は4℃、37℃のインキュベート条件で、CLDN18.2抗体と、CLDN18.2を発現するSNU601細胞の表面との結合、並びに細胞にエンドサイトーシスされることを検出した結果を示す。
図7図7はフローサイトメトリーで抗体CLDN18.2抗体並びに脱フコシル化した抗体とCT26-CLDN18.2細胞との結合を検出した結果を示す。
図8図8はBiacore方法でCLDN18.2-A1及びCLDN18.2-A1FとFcγRIIIaとの結合を検出した結果を示す。図8Aは抗体がFcγRIIIaと結合するカーブフィッティング曲線を示す、且つ図8Bは抗体がFcγRIIIaと結合するKa、Kd、KD及びtc値を示す。
図9図9はフローサイトメトリーでCLDN18.2抗体並びに脱フコシル化した抗体と細胞表面で発現したFcγRIIIaとの結合を検出した結果を示す。図9Aは抗体とFcγRIIIa-Jurkat細胞との結合の結果を示す。図9Bは抗体とNK92MI細胞との結合の結果を示す。
図10図10はルシフェラーゼレポーターシステムにより、SNU601-CLDN18.2細胞(図10A)又はCT26-CLDN18.2(図10B)の存在下で、CLDN18.2抗体並びに脱フコシル化した抗体がFcγRIIIa-Jurkat細胞におけるFcγRIIIa受容体を活性化させることを検出した結果を示す。
図11図11はフローサイトメトリーでKATOIII細胞上でのCLDN18.2発現レベルを検出した結果を示す。
図12図12はルシフェラーゼレポーターシステムにより、SNU601-CLDN18.2細胞の存在下で、CLDN18.2抗体(図12A)及びCLDN18.2抗体と化学療法の薬物EOFとの併用(図12B)がFcγRIIIa-Jurkat細胞におけるFcγRIIIa受容体を活性化させることを検出した結果を示す。
図13図13は健常人ドナー1(図13A)、ドナー2(図13B)又はドナー3(図13C)由来のPBMCの存在下で、CLDN18.2抗体並びに脱フコシル化した抗体の媒介するADCC経路がSNU601-CLDN18.2標的細胞に対する傷害効果を示す。
図14図14は補体の存在下で、CLDN18.2抗体並びに脱フコシル化した抗体の媒介するCDC経路がCHO-CLDN18.2標的細胞に対する傷害効果を示す。
図15図15はSNU601-CLDN18.2細胞のマウス異種移植モデルにおいて、違う用量のCLDN18.2抗体18.2-A1Fが腫瘍成長を抑制する結果を示す。
図16図16は異種移植モデルに使用するCLDN18.2高発現KATOIII細胞(KATOIII-18.2High)のフローサイトメトリーでの結果を示す。
図17図17はKATOIII-18.2High細胞のマウス異種移植モデルにおいて、CLDN18.2抗体18.2-A1F並びに18.2-A1Fと化学療法の薬物EOFの併用が腫瘍成長を抑制する結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
特別の説明がない限り、本発明と結合して使用する科学的、技術的用語及びその略語は本発明が関連する分野の当業者が普通に理解している意義を有する。以下に、本明細書で使用される術語と略語の一部を挙げている。
【0034】
抗体:antibody、Ab;免疫グロブリン:immunoglobulin、Ig;
重鎖:heavy chain、HC;軽鎖:light chain、LC;
重鎖可変領域:heavy chain variable domain、VH;
重鎖定常領域:heavy chain constant domain、CH;
軽鎖可変領域:light chain variable domain、VL;
軽鎖定常領域:light chain constant domain、CL;
相補性決定領域:complementarity determining region、CDR;
Fab断片:antigen binding fragment、Fab;
Fc領域:fragment crystallizable region、Fc;
モノクローナル抗体:monoclonal antibody、mAb;
抗体依存性細胞毒作用:antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC;
補体依存性細胞毒性作用:complement dependent cytotoxicity、CDC。
【0035】
一方、本発明はCLDN18.2に結合する抗体又はその抗原結合断片に関し、前記抗体は以下の重鎖CDR(CDRH)と軽鎖CDR(CDRL)を有する:
a.配列番号1に示す重鎖可変領域(VH)におけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号6に示す軽鎖可変領域(VL)におけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
b.配列番号11に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号16に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
c.配列番号21に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号26に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
d.配列番号31に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号36に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
e.配列番号41に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号46に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;又は
f.配列番号55に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号60に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3。
【0036】
本明細書で使用される場合、術語“結合”又は“特異的に結合”とは、二種類の分子間の非ランダム的な結合反応、例えば、抗体とその対象である抗原との間の反応を指す。ある特定の実施様態において、ある抗原に特異的に結合する抗体(又はある抗原に対する特異性を有する抗体)とは、抗体が約10-5 M未満、例えば約10-6 M未満、10-7 M未満、10-8 M未満、10-9 M未満、又は10-10 M未満又はさらに小さい親和力(K)で当該抗原に結合することを指す。本明細書が使用する“K”とは、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数であり、抗体と抗原との間の結合親和力を表現する。平衡解離定数が小さいほど、抗体-抗原の結合が強くなり、抗体と抗原との間の親和力が高くなる。
【0037】
本明細書で使用される場合、術語“抗体”とは、少なくとも一つの抗原認識サイトを含み、且つ抗原に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。術語“抗原”は、生体内において免疫応答を誘導することができ、且つ抗体と特異的に結合する物質、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ハプテン又は前記物質の組合である。抗体と抗原との結合は、両者の間に形成する相互作用を媒介するものであり、水素結合、ファンデルワールス力、イオン結合並びに疎水性結合を含む。抗原表面の抗体と結合するドメインは、“抗原決定基”又は“エピトープ”であり、一般的に、一つの抗原が複数のエピトープを有してもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、術語の“エピトープ”は、連続のアミノ酸、又はタンパク質の三次フォールディングによって並置された非連続のアミノ酸により形成されてもよい。エピトープは、通常、独特な空間的コンフォメーションにおいて少なくとも3つ、より通常は少なくとも5つ、約9つ、又は約8-10つアミノ酸を含む。“エピトープ”は通常免疫グロブリンVH/VL対により結合される構造単位を含む。エピトープは、抗体の最小結合サイトを定義するので、抗体又はその抗原結合断片の特異性標的物を代表する。
【0039】
本発明で言及される術語“抗体”は最も広い意義で理解され、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、抗体断片、少なくとも二つの異なる抗原結合構造領域を含む多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含む。抗体はマウス抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体並びにその他由来の抗体をさらに含む。抗体は他の改変を含んでもよい、例えば、非天然アミノ酸、Fcエフェクター機能変異と糖鎖化サイト変異等。期望する生物活性を示す限り、抗体は、翻訳後修飾した抗体、抗体を含む抗原決定基の融合タンパク質、並びに抗原認識サイトに対するいかなるその他修飾を含む免疫グロブリン分子をさらに含む。言い替えると、抗体は、免疫グロブリン分子や免疫グロブリン分子の免疫活性断片、即ち少なくとも一つの抗原結合構造領域を含有する分子を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、“可変領域”(重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VL)は対になった軽鎖及び重鎖構造領域部分を示す、これは直接的に抗体と抗原の結合に参与する。各VH及びVL領域は以下の順でN末端からC末端まで並べる三つの超可変領域又は相補性決定領域(CDR)と四つフレームワーク領域(FR)によって構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0041】
本明細書で使用される場合、術語“CDR”とは、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。各可変領域は、重鎖と軽鎖の各可変領域において三つのCDRを有し、これらはCDR1、CDR2とCDR3を称する。これらのCDRの具体的な境界は、違うシステムによって定義が違くなる。Kabatら(Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)と(1991))が発表したシステムは、抗体可変領域に適用する明確な残基ナンバリングシステムを提供しただけではなく、三つのCDRを限定する残基境界をも提供した。これらのCDRはKabat CDRと呼ばれてもよい。各相補性決定領域は、Kabatによって定義される“相補性決定領域”のアミノ酸残基を含んでもよい。Chothiaら(Chothia & Lesk,J.Mol.Biol,196:901-917(1987)とChothia et al.,Nature 342:877-883(1989))は、アミノ酸配列レベルにおいて多様性を有しているが、Kabat CDR内特定の一部のサブパーツがほぼ同じペプチド骨格コンフォメーションを採用していることを発現した。これらのサブパーツは、それぞれL1、L2とL3又はH1、H2とH3と呼ばれ、そのなか“L”と“H”は、それぞれ軽鎖と重鎖領域を示す。これらのドメインは、Kabat CDRと重ねる境界を有し、Chothia CDRと呼ばれてもよい。また、他のCDR境界の定義は、前記システムのどちらかに従う必要がないが、Kabat CDRと重ねることになる。本明細書に使用している方法は、好ましい実施様態においてKabat又はChothia定義のCDRを使用するが、いかなる前記システムによって定義されるCDRを利用してもよい。
【0042】
Kabatシステムを使用するCDR配列を定義する場合、配列番号1に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3は、それぞれ配列番号3(SSWLI)、配列番号4(TIVPSDSYTNYNQKFKD)と配列番号5(FRTGNSFDY)のアミノ酸配列を有し、且つ配列番号6に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3は、それぞれ配列番号8(KSSQSVLNSGNQKNYLT)、配列番号9(WAVARQS)と配列番号10(QNSIAYPFT)のアミノ酸配列を有する;
配列番号11に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3は、それぞれ配列番号13(SFWVG)、配列番号14(NVSPSDSYTNYNQKFKD)と配列番号15(LSSGNSFDY)のアミノ酸配列を有し、且つ配列番号16に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3は、それぞれ配列番号18(KSSQSVLNSGNQKNYLT)、配列番号19(WSSTKQS)と配列番号20(QNAFSFPFT)のアミノ酸配列を有する;
配列番号21に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3は、それぞれ配列番号23(SYWLN)、配列番号24(SMYPSDSYTNYNQKFKD)と配列番号25(FSRGNSFDY)のアミノ酸配列を有し、且つ配列番号26に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3は、それぞれ配列番号28(KSSQSLLESGNQKNYLT)、配列番号29(WSWAKNS)と配列番号30(QNAYAFPFT)のアミノ酸配列を有する;
配列番号31に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3は、それぞれ配列番号33(SFWIS)、配列番号34(NILPSDSYTNYNQKFKD)と配列番号35(YWRGNSFDY)のアミノ酸配列を有し、且つ配列番号36に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3は、それぞれ配列番号38(KSSQSIINSGNQKNYLT)、配列番号39(WGGTRHS)と配列番号40(QNGYYSPFT)のアミノ酸配列を有する;
配列番号41に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3は、それぞれ配列番号43(SSWVG)、配列番号44(NSYPSDSYTNYNQKFKD)と配列番号45(LGRGNSFDY)のアミノ酸配列を有し、且つ配列番号46に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3は、それぞれ配列番号48(KSSQSLIHSGNQKNYLT)、配列番号49(WGLSKNS)と配列番号50(QNSIYYPFT)のアミノ酸配列を有する;
配列番号55に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3は、それぞれ配列番号57(SYWLG)、配列番号58(IIYPSDSYTNYNQKFKD)と配列番号59(FWRGNSFDY)のアミノ酸配列を有し、且つ配列番号60に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3は、それぞれ配列番号62(KSSQSLLESGNQKNYLT)、配列番号63(WAAGKES)と配列番号64(QNGYSHPFT)のアミノ酸配列を有する。
【0043】
それに応じて、本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体は以下CDRHとCDRLを有する:
a.配列番号3-5に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号8-10に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
b.配列番号13-15に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号18-20に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
c.配列番号23-25に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号28-30に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
d.配列番号33-35に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号38-40に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
e.配列番号43-45に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号48-50に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;又は
f.配列番号57-59に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号62-64に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3。
【0044】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体は以下のVHとVLを有する:
a.配列番号1のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むVL;
b.配列番号11のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVL;
c.配列番号21のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むVL;
d.配列番号31のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVL;
e.配列番号41のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号46のアミノ酸配列を含むVL;又は
f.配列番号55のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号60のアミノ酸配列を含むVL。
【0045】
本発明の抗体又はその抗原結合断片の他の特定の実施様態において、前記抗体は以下のVHとVLを有する:
a.配列番号1において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号6において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVL;
b.配列番号11において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号16において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVL;
c.配列番号21において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVL;
d.配列番号31において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号36において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVL;
e.配列番号41において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号46において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVL;又は
f.配列番号55において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号60において一つ又は幾つかのアミノ酸修飾をしたアミノ酸配列を含むVL。
【0046】
ある特定の実施様態において、前記アミノ酸修飾は抗体のCDR配列を改変しない、即ち、前記アミノ酸修飾は可変領域のフレームワーク領域(FR)において行われる。
【0047】
ある特定の実施様態において、前記一つ又は幾つかのアミノ酸修飾とは、1-10つのアミノ酸修飾又は1-5つのアミノ酸修飾、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10つのアミノ酸修飾を指す。
【0048】
ある特定の実施様態において、前記アミノ酸修飾はアミノ酸残基の置換、欠失、付加及び/又は挿入から選択される。ある特定の実施様態において、前記アミノ酸修飾はアミノ酸置換であり、例えば保存的置換である。
【0049】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体は以下のVHとVLを有する:
a.配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL;
b.配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL;
c.配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL;
d.配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL;
e.配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号46のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL;又は
f.配列番号55のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号60のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL。
【0050】
例えば、当業者が理解する、二つのアミノ酸配列の間又は二つのヌクレオチド配列の間の関連性は、パラメータ“配列同一性”で表現できる。例えば、数学アルゴリズムを使って、二種類の配列間の配列同一性の百分比を測定することができる。例えば、数学アルゴリズムを使って、二種類の配列間の配列同一性の百分比を測定することができる。このような数学アルゴリズムの非限定的実例は、MyersとMiller(1988)CABIOS 4:11-17のアルゴリズム、Smith等(1981)Adv.Appl.Math.2:482のローカルホモロジーアルゴリズム、NeedlemanとWunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443-453の相同性比較アルゴリズム、PearsonとLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444-2448の相同性検索用方法、及びKarlinとAltschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264のアルゴリズムの改変形式、KarlinとAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877に記載したアルゴリズムを含む。このような数学アルゴリズムに基づいたプログラムにより、配列同一性を測定するための配列比較(即ち比較)を行うことができる。プログラムはコンピューターにより適切に実施されてもよい。このようなプログラムの実例は、PC/GeneプログラムのCLUSTAL、ALIGNプログラム(Version 2.0)、及びWisconsin遺伝学ソフトウェアパッケージのGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTAを含むが、この限りではない。例えば、初期パラメータを使って、プログラムを使用した比較を実施してもよい。
【0051】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体は配列番号51に示す重鎖定常領域配列及び/又は配列番号53に示す軽鎖定常領域配列を有してもよい。
【0052】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体はFc領域を有する。ある特定の実施様態において、Euナンバリングシステムでナンバリングする場合、前記抗体はAsn297において糖鎖構造修飾を有する。本発明における“Asn297”とは、Euナンバリングシステムにおいて、抗体Fc領域の297位に位置するアスパラギン。具体的な抗体の些細な配列変化によって、Asn297は297位から上流に、又は下流に幾つかのアミノ酸を離れたところに位置してもよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、術語“抗体のFc領域”又は“人免疫グロブリンFc領域”は、抗体の重鎖定常領域1(CH1)以外の定常領域ポリペプチド、例えば人免疫グロブリンIgA、IgD、IgG重鎖定常領域のカルボキシル基端の二つの定常領域構造領域CH2及びCH3、並びに人免疫グロブリンIgEとIgM重鎖定常領域のカルボキシル基端の三つの定常領域構造領域CH2、CH3及びCH4を含み、且つこれらの構造領域のアミノ基端の柔性ヒンジ領域をさらに含む。Fc領域の境界が変化してもよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、A231からそのカルボキシル基末端までの残基を含むと定義される。
【0054】
免疫グロブリンFc領域は、抗体が免疫効果を発揮する機能的ドメイン。IgG抗体のFcは、複数の受容体と相互作用することができ、そのなかで最も重要なのはFcγ受容体(FcγR)ファミリーである。治療性モノクローナル抗体が腫瘍細胞を傷害する主な作用機構の一つは、ADCC効果(抗体依存性細胞が媒介する細胞毒性、antibody dependent cell mediated cytotoxicity)である。治療性抗体の抗原認識領域が腫瘍細胞表面の特異性抗原と結合した後、抗体のFc領域とFcγRを発現する傷害細胞との結合により、エフェクター細胞の細胞傷害活性を活性化するこれにより、グランザイム、パーフォリン等を含む細胞毒性メディエーターを分泌し、最終的に標的細胞(例えば腫瘍細胞)の溶解破壊を引き起こす。それ以外、Fcは、補体タンパク質C1qとも結合し、CDC効果(補体依存性細胞毒性complement dependent cytotoxicity、CDC)を発生させることができる。
【0055】
抗体Fc領域の糖鎖化修飾レベルと形式は、Fc領域とその受容体FcγRの結合能力に影響を及ぼすことができ、これにより抗体のADCC効果の強さに影響する。本明細書で使用される場合、抗体Fc領域の糖鎖化修飾は通常、Asn297における糖鎖化修飾を指す。抗体は、生成過程において、細胞ERとゴルジネットワークでの糖鎖化を受ける。抗体糖鎖化の関連研究において、抗体のフコース化レベルを低下させることはFc領域のFcγRIIIaと結合する能力の向上に寄与し、これにより抗体のADCC効果を向上させることが明らかとなった。したがって、抗体発現細胞の糖鎖化代謝経路を改変することで、発現抗体のフコースレベルを効果的に改変することができ、これにより抗体によって媒介されるADCC効果を調節することができる(Jefferis R.2009、NAT.REV.Drug.DISC)。
【0056】
それに応じて、本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体は、低下されたフコース化レベルを有する。例えば、本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、Asn297の糖鎖構造において、フコースの糖鎖構造を有する割合は、60%又はそれ以下、例えば50%又はそれ以下、例えば40%又はそれ以下、30%又はそれ以下、20%又はそれ以下、10%又はそれ以下、5%又はそれ以下、2%又はそれ以下、或いは1%又はそれ以下である。ある特定の実施様態において、フコースの糖鎖構造を有する割合は、0%-10%、例えば0%-5%、0%-2%又は0%-1%である。ある特定の実施様態において、フコースの糖鎖構造を有する割合は、0.1%又はそれ以下である。他の特定の実施様態において、Asn297の糖鎖構造において、検出できるフコースがない。
【0057】
当業者が既知した技術でこのような脱フコシル化した抗体を生成してもよい。例えば、抗体は、フコース鎖化能力が欠損又は不足している細胞において発現してもよい。ある特定の実施様態において、例えば、Fut8遺伝子ノックアウトを有する細胞系は、低下されたフコース化レベルを有する抗体の生成に使ってもよい。あるいは、低下されたフコース含量を有する抗体、フコース含量がない抗体、又は抗原結合断片を生成してもよい、例えば:(i)フコース鎖化が阻止又は減少される条件で細胞を培養する;(ii)翻訳後でフコースを除去する(例えば、フコシダーゼで);(iii)所望の炭水化物の翻訳後付加、例えば非糖鎖化糖タンパク質を組換え発現した後で;又は(iv)糖タンパク質の精製これによって、フコース鎖化されてない抗体又はその抗原結合断片を選択する。
【0058】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、低下されたフコース化レベルを有する抗体を得るために、前記抗体はFut8遺伝子ノックアウト細胞によって生成される。ある特定の実施様態において、前記細胞は、中国ハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHO-K1細胞、CHOS細胞又はその他CHO由来の細胞である。ある特定の実施様態において、前記細胞はFut8遺伝子ノックアウトCHO細胞である。
【0059】
他の特定の実施様態において、前記細胞はヒト胎児腎細胞(HEK)293細胞、例えばHEK293、HEK293A、HEK293T、HEK293F又はその他HEK293由来の細胞である。ある特定の実施様態において、前記細胞はFut8遺伝子ノックアウトHEK 293細胞である。
【0060】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体はFut8遺伝子ノックアウト細胞によって生成され、且つそのなかFut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体、例えば配列が同じであるコントロール抗体と比べ、前記抗体がより高いFcγRIIIa結合活性を有する。ある特定の実施様態において、Fut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体、例えば配列が同じであるコントロール抗体と比べ、Fut8遺伝子ノックアウト細胞によって生成された抗体は、強化したFcγRIIIa活性を誘導する能力を有する。例えば、ある特定の実施様態において、Fut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体と比べ、Fut8遺伝子ノックアウト細胞によって生成された抗体がFcγRIIIa活性を誘導するEC50値は、少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍又は少なくとも10倍、例えば10-20倍向上されている。本明細書で使用される場合、術語“EC50”とは、50%最大効果が引き起こされた時が対応する抗体濃度を指す。
【0061】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体はFut8遺伝子ノックアウト細胞によって生成され、且つそのなかFut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体、例えば配列が同じであるコントロール抗体と比べ、前記抗体がより高いADCC活性を有する。例えば、ある特定の実施様態において、Fut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体と比べ、Fut8遺伝子ノックアウト細胞によって生成された抗体のADCC活性は、少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍又は少なくとも10倍、例えば10-20倍向上されている。
【0062】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【0063】
本明細書で使用される場合、術語“モノクローナル抗体”とは、基本的に均質な抗体集団から得られる抗体を指し、即ち少量で存在し得る可能な天然に存在する突然変異を除いて、集団を構成する各抗体は同じである。モノクローナル抗体は、高度な特異性を持ち、単一の抗原を認識する。また、通常違う決定基(エピトープ)を認識する違う抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは反対に、モノクローナル製剤において、全種類の抗体が抗原上同一な単一決定簇を認識する。本明細書で使用される場合、術語“モノクローナル抗体”はハイブリドーマ技術によって生成された抗体に限らない、また、修飾語“モノクローナル抗体”はいかなる特定な方法で生産されなければならない抗体に解釈されるべきではない。
【0064】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗体は二重特異性抗体又は多重特異性抗体である。
【0065】
例えば、前記二重特異性抗体又は多重特異性抗体は、CLDN18.2上のエピトープと結合する第一抗原結合領域、並びに別の抗原エピトープと結合する第二抗原結合領域を有し、そのなか前記第一抗原結合領域が本発明前記の抗体又はその抗原結合断片のCDRH1、CDRH2とCDRH3並びにCDRL1、CDRL2とCDRL3;又はVHとVL配列を有し、且つ前記第二抗原結合領域が前記第一抗原結合領域とは別の抗原エピトープに結合する。
【0066】
ある特定の実施様態において、前記第二抗原結合領域はCLDN18.2分子上の別の抗原結合エピトープと結合する。他の特定の実施様態において、前記第二抗原結合領域は別の抗原を結合する。ある特定の実施様態において、前記別の抗原は腫瘍関連抗原と免疫チェックポイント分子から選択される。
【0067】
本分野において、すでに特定癌に関連する多くの腫瘍関連抗原が鑑定されている。本明細書で使用される場合、術語“腫瘍関連抗原”とは、癌細胞で差次的に発現され、よって癌細胞を標的とするのに利用できる抗原を指す。腫瘍関連抗原は明らかな腫瘍特異性免疫応答を潜在的に刺激することができる抗原である。これらの抗原の一部は正常細胞にコードされるが、正常細胞において発現されるとは限らない。これらの抗原は、通常正常細胞において沈黙(即ち発現しない)である抗原、特定の分化段階でのみ発現する抗原や特定の時間点で発現する抗原、例えば、胚や胎児の抗原などである。他の癌抗原は、変異した細胞遺伝子、例えば、癌遺伝子(例えば活性化したras癌遺伝子)、抑制遺伝子(例えば変異型p53)や内部欠失又は染色体転座によって生成された融合タンパク質にコードされる。他の癌抗原はウイルス遺伝子、例えば、RNAとDNA腫瘍ウイルスに搭載されている遺伝子にコードされてもよい。多くの他の腫瘍関連抗原及びこれに対する抗体は既知及び/又は商品化されたものであり、且つ当業者によって製作されてもよい。
【0068】
免疫チェックポイントタンパク質受容体及びその配体(本明細書では免疫チェックポイント分子を称する)はT細胞が媒介する細胞毒性の抑制を媒介し、通常では腫瘍又は腫瘍微小環境中の無反応性T細胞に発現され、腫瘍が免疫攻撃を回避できるようにする。免疫抑制チェックポイントタンパク質受容体及びその配体の活性を阻害する阻害剤は、免疫抑制性腫瘍環境を克服し、腫瘍に対する細胞毒性T細胞攻撃を可能にすることができる。免疫チェックポイントタンパク質の実例は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、OX40、LAG3、TIM3、TIGIT及びCD103を含むが、これらに限らない。このようなタンパク質の活性の調節(阻害を含む)は免疫チェックポイント調節剤で行うことができ、例えばチェックポイントタンパク質を標的とする抗体、適体、小分子及びチェックポイント受容体タンパク質の可溶性形式を含むでもよい。PD-1、PD-L2、CTLA4、OX40、LAG3、TIM3、TIGIT及びCD103に対して特異的な抗体は、既知及び/又は商品化されたものであり、且つ当業者によって製作されてもよい。
【0069】
抗体重鎖定常領域のアミノ酸配列により、免疫グロブリンを5つの系(アイソタイプ)に分類することができる:IgA、IgD、IgE、IgGとIgM。さらに違うサブタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2等に分類することもできる。軽鎖アミノ酸配列により、軽鎖をλ鎖とκ鎖に分類することができる。本発明の抗体は前記種系又は亞系のいずれかであってもよい。
【0070】
ある特定の実施様態において、本発明の抗体はIgG、IgA、IgM、IgEとIgDのアイソタイプから選択される。ある特定の実施様態において、本発明の抗体はIgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3とIgG4のサブタイプから選択される。
【0071】
本明細書で使用される場合、術語“抗原結合断片”は以下のものを含むが、これらに限らない:VL、CL、VHとCH1ドメインを有するFab断片;CH1ドメインのC端において一つ又は複数のシステイン残基を有するFab断片であるFab’断片;VHとCH1ドメインを有するFd断片;VHとCH1ドメインとCH1ドメインのC端に位置する一つ又は複数のシステイン残基を有するFd’断片;抗体の片方のアームのVLとVHドメインを有するFv断片とscFv;VHドメイン又はVLドメインによって構成されるdAb断片;分離のCDR領域;ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連接された二つのFab’断片を含む二価断片であるF(ab’)断片;一本鎖抗体分子(例えば一本鎖Fv;scFv);その同一ポリペプチド鎖において、軽鎖可変域(VL)と連接する重鎖可変域(VH)を含み、二つの抗原結合サイトを有する“二価抗体(diabody)”;一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む“線状抗体”、当該セグメントは相補的な軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する;並びに抗原結合活性を保有するいかなる前述物質の修飾された形式。
【0072】
本発明の抗体又はその抗原結合断片のある特定の実施様態において、前記抗原結合断片はFab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fd’断片、Fv断片、scFv断片、ds-scFv断片、dAb断片、一本鎖断片、二価抗体及び線状抗体から選択される。
【0073】
他の局面において、本発明は核酸分子に関し、前記核酸分子が本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む。また、本発明はベクターに関し、前記ベクターが本発明の核酸分子を含む。
【0074】
本明細書が使用する“ベクター”とは、ポリヌクレオチドをこれに挿入することができる核酸送達ツール。ベクターは、挿入されたポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現されることができる場合、当該ベクターを発現ベクターと称する。ベクターは、形質転換、形質導入又はトランスフェクション等の方法で宿主細胞に導入さてることができ、これにより宿主細胞内で搭載した遺伝物質ユニットを発現させる。ベクターは当業者が認識されているものであり、以下のものを含むが、これらに限らない:(1)プラスミド;(2)ファージミド;(3)Cosプラスミド;(4)人工染色体、例えば、酵母人工染色体、細菌人工染色体又はP1由来の人工染色体;(5)ファージ、例えば、λファージ又はM13ファージ、及び(6)動物ウイルス、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス。一種のベクターは複数の発現制御ユニットを含んでもよく、前記制御ユニットがプロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、スクリーニングユニット及びレポーター遺伝子を含むが、これらに限らない;また、ベクターは複製開始サイトを含んでもよい。
【0075】
ある局面において、本発明は宿主細胞に関し、前記宿主細胞が本発明の核酸分子又はベクターを含む。ある特定の実施様態において、前記宿主細胞はCHO細胞、例えばCHO-K1細胞、CHOS細胞又はその他CHO由来の細胞である。他の特定の実施様態において、前記宿主細胞はHEK 293細胞、例えばHEK293、HEK293A、HEK293T、HEK293F又はその他HEK293由来の細胞である。
【0076】
ある局面において、本発明はコンジュゲートに関し、前記コンジュゲートは治療剤、診断剤又は顕像剤とコンジュゲート化する本発明の抗体又はその抗原結合部を含む。ある特定の実施様態において、前記治療剤は細胞毒素と放射性同位体から選択されてもよい。ある特定の実施様態において、前記診断剤又は顕像剤は蛍光マーカー、発光物質、発色性物質及び酵素から選択されてもよい。
【0077】
他の局面において、本発明は組成物に関し、前記組成物は本発明の抗体又はその抗原結合断片、又はコンジュゲート、並びに一種又は多種の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含む。
【0078】
短語“薬学的に許容される”とは、合理的な医学判断の範囲内で、人や動物の組織との接触に適用し、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応、又は他の問題又は合併症がなく、合理的な収益/リスク比に相応する化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指す。例えば、本明細書で使用する、短語“薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤”とは、薬学的に許容される材料、組成物又は媒介物、例えば、液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、媒体、カプセル化材料、製造助剤又は溶媒カプセル化材料であり、これらが本発明の抗体又はその抗原結合断片の安定性、溶解度又は活性の維持に関連する。
【0079】
本発明の組成物は調製によって、固体、液体又はゲルの形式で被験者に投与することができる。例えば、本発明の組成物は調製によって、例えば無菌溶液、懸濁液又は徐放性製剤として、腸胃外投与に使用することができ、例えば皮下、筋肉内、静脉内又は硬膜外で注射することができる。
【0080】
ある特定の実施様態において、前記組成物は一種又は多種の他の治療剤をさらに含む。ある特定の実施様態において、前記他の治療剤は抗体、化学療法の薬物と小分子薬物から選択される。ある特定の実施様態において、前記治療剤は腫瘍関連抗原、例えば、上記のような腫瘍関連抗原を標的とする。他の特定の実施様態において、前記治療剤は免疫チェックポイント分子、例えば、上記のような免疫チェックポイント分子を標的とする。
【0081】
本明細書で使用される場合、術語“化学療法の薬物”とは、異常的な細胞成長を特徴とする疾患の治療において、治療有用性を有する全ての化学試剤を指す。本明細書で使用される場合、化学治療剤は化学剤と生物剤を含む。これらの試剤は、その機能を発揮して、癌細胞が継続的な生存のために依存する細胞活性を阻害する。化学療法剤のカテゴリーはアルキル化剤/アルカロイド剤、代謝拮抗剤、ホルモン又はホルモン類似物、並びに各種抗新生薬物を含む。
【0082】
ある特定の実施様態において、前記他の治療剤は化学療法の薬物であり、且つ前記化学療法の薬物がエピルビシン(Epirubicin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)と5-フルオロウラシル(5-FU)から選択される一種又は多種であってもよい。
【0083】
ある局面において、本発明は被験者のCLDN18.2の発現に関連する疾患を治療する方法に関し、前記方法は、前記被験者に対して、本発明の抗体又はその抗原結合断片、コンジュゲート又は組成物を投与するステップを含む。
【0084】
本明細書で使用される場合、術語“治療”とは、治療性処理を指し、その目のが疾患又は病症に関連する状况の進行又は重症度を逆転、軽減、改善、阻害、減速、又は停止させることである。術語“治療”は疾患又は病症の少なくとも一種の副作用又は症状を減少や軽減させることを含む。例えば、一種又は多種の症状又は臨床マーカーを減少させた場合、通常、治療を“有効”とする。あるいは、例えば、疾患の進行を減少又は停止させた場合、治療を“有効”とする、つまり、“治療”は症状の改善のみではなく、治療が欠けている場合での予期される症状の進行や悪化を停止させ、少なくとも減速させることをも含む。有益又は望ましい臨床結果は一種又は多種の症状の軽減、疾患重症度の減少、疾患状態の安定化(即ち悪化しない)、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態改善又は緩和、及び緩和(部分的緩和と全体的緩和を含む)を含むが、これらに限られず、検出できるものと検出できないものを全て含む。
【0085】
本明細書で使用される場合、術語“被験者”、“患者”と“個体”は、本明細書において、交換して使用してもよい、且つ、動物、例えば人類のことを指す。術語被験者は“非人哺乳動物”、例えば、ラット、マウス、兎、羊、猫、犬、牛、豚と非人霊長類動物をさらに含む。好ましい実施様態において、前記被験者は人類被験者である。
【0086】
前記方法のある特定の実施様態において、前記疾患は癌である。癌の具体例は以下のものを含むが、これらに限らない:基底細胞癌、胆管癌;膀胱癌;骨癌;乳癌;腹膜癌;頸部癌;胆管癌;脈絡癌;結腸及び直腸癌;結合組織癌;消化器系癌;子宮内膜癌;食道癌;眼癌;頭頸癌;胃癌;神経膠芽細胞腫;肝臓癌;腎癌;喉癌;白血病;肝癌;肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌と肺扁平上皮癌);ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;メラノーマ;骨髓腫;神経芽細胞腫;口腔癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系癌;唾液腺癌;肉腫;皮膚癌;扁平上皮癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮又は子宮内膜癌;尿路癌; B細胞リンパ腫;慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);毛状細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病等。好ましい実施様態において、前記癌は胃癌、胆管癌、食道癌と膵臓癌から選択される。
【0087】
前記方法のある特定の実施様態において、前記方法は一種又は多種の他の療法を実施するステップことをさらに含む。例えば、ある特定の実施様態において、前記療法は化学療法、放射療法、免疫療法と手術療法から選択される。
【0088】
ある特定の実施様態において、前記免疫療法は免疫チェックポイント分子に対する療法、CAR-T細胞療法とCAR-NK細胞療法から選択される。例えば、前記免疫チェックポイント分子はPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、OX40、LAG3、TIM3、TIGITとCD103から選択されてもよい。
【0089】
ある特定の実施様態において、前記化学療法はエピルビシン、オキサリプラチンと5-フルオロウラシルを含む併用化学療法から選択される。
【0090】
ある局面において、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合断片、コンジュゲート又は組成物が被験者のCLDN18.2の発現に関連する疾患の治療における用途に関する。他の局面において、本発明は本発明の抗体又はその抗原結合断片、コンジュゲート又は組成物が被験者のCLDN18.2の発現に関連する疾患を治療するための薬物の製作における用途に関する。
【0091】
前記用途のある特定の実施様態において、前記疾患は癌であり、例えば、上記のような種類の癌である。好ましい実施様態において、前記癌は胃癌、胆管癌、食道癌と膵臓癌から選択される。
【0092】
前記用途のある特定の実施様態において、前記被験者は人である。
【0093】
他の局面において、本発明は核酸分子に関し、前記核酸分子は配列番号2、7、12、17、22、27、32、37、42、47、56及び61から選択されるヌクレオチド配列を有する。本発明は前記核酸分子を含むベクターにも関する。
本開示は、例えば、以下に関する。
[1]
CLDN18.2に結合する抗体又はその抗原結合断片であり、前記抗体は以下の重鎖CDR(CDRH)と軽鎖CDR(CDRL)を有する、抗体又はその抗原結合断片;
a.配列番号1に示す重鎖可変領域(VH)におけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号6に示す軽鎖可変領域(VL)におけるCDRL1、CDRL2とCDRL3:
b.配列番号11に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号16に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
c.配列番号21に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号26に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
d.配列番号31に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号36に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;
e.配列番号41に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号46に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3;又は
f.配列番号55に示すVHにおけるCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号60に示すVLにおけるCDRL1、CDRL2とCDRL3。
[2]
前記抗体は以下のCDRHとCDRLを有する、前記[1]に記載の抗体又はその抗原結合断片:
a.配列番号3-5に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号8-10に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
b.配列番号13-15に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号18-20に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
c.配列番号23-25に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号28-30に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
d.配列番号33-35に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号38-40に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
e.配列番号43-45に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号48-50に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3;
f.配列番号57-59に示すCDRH1、CDRH2とCDRH3;及び配列番号62-64に示すCDRL1、CDRL2とCDRL3。
[3]
前記抗体は以下のVHとVLを有する、前記[1]又は[2]に記載の抗体又はその抗原結合断片:
a.配列番号1のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むVL;
b.配列番号11のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVL;
c.配列番号21のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むVL;
d.配列番号31のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVL;
e.配列番号41のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号46のアミノ酸配列を含むVL;
f.配列番号55のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号60のアミノ酸配列を含むVL。
[4]
前記抗体はFc領域を有する、前記[1]-[3]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[5]
Euナンバリングシステムでナンバリングする場合、前記抗体はAsn297において糖鎖構造修飾を有する、前記[4]に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[6]
前記糖鎖構造において、フコースの糖鎖構造を有する比例が50%又はそれ以下である、前記[5]に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[7]
前記糖鎖構造において、フコースの糖鎖構造を有する比例が30%又はそれ以下、例えば20%又はそれ以下、10%又はそれ以下、5%又はそれ以下、2%又はそれ以下、又は1%又はそれ以下である、前記[6]に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[8]
前記抗体において、フコースの糖鎖構造を有する比例が0%-1%である、前記[6]に記載の抗体又はその抗原能結合断片。
[9]
前記抗体はFut8遺伝子ノックアウト細胞によって生成される、前記[6]-[8]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[10]
前記細胞はCHO細胞とHEK293細胞から選択される、前記[9]に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[11]
Fut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体と比べ、前記抗体がより高いFcγRIIIa結合活性を有する、前記[9]又は[10]に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[12]
Fut8遺伝子ノックアウトを有しない細胞において生成した抗体と比べ、前記抗体がより高いADCC活性を有する、前記[9]-[11]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[13]
前記抗体はモノクローナル抗体である、前記[1]-[12]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[14]
前記抗体は二重特異性抗体又は多重特異性抗体である、前記[1]-[12]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[15]
前記抗体はIgG、IgA、IgM、IgEとIgDのアイソタイプから選択される、前記[1]-[14]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[16]
前記抗体はIgG1、IgG2、IgG3とIgG4のサブタイプから選択される、前記[1]-[14]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[17]
前記抗原結合断片はFab断片、Fab’断片、F(ab’) 断片、Fd断片、Fd’断片、Fv断片、scFv断片、ds-scFv断片、dAb断片、一本鎖断片、二価抗体及び線状抗体から選択される、前記[1]-[16]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[18]
前記[1]-[17]のいずれか一項の抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
[19]
前記[18]に記載の核酸分子を含む、ベクター。
[20]
前記[18]に記載の核酸分子又は前記[19]に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[21]
治療剤、診断剤又は顕像剤とコンジュゲート化する前記[1]-[17]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、コンジュゲート。
[22]
前記[1]-[17]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は前記[21]に記載のコンジュゲート、及び、一種又は多種の薬学的に許容されるベクター、賦形剤及び/又は希釈剤を含む、組成物。
[23]
前記組成物は一種又は多種の他の治療剤をさらに含む、前記[22]に記載の組成物。
[24]
前記治療剤は抗体、化学療法の薬物と小分子薬物から選択される、前記[23]に記載の組成物。
[25]
前記化学療法の薬物はエピルビシン(Epirubicin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)及び5-フルオロウラシル(5-FU)から選択される一種又は多種である、前記[24]に記載の組成物。
[26]
被験者に対して、前記[1]-[17]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、前記[21]に記載のコンジュゲート、又は前記[22]-[25]のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップを含む、被験者のCLDN18.2の発現に関連する疾患を治療する方法。
[27]
前記疾患は癌である、前記[26]に記載の方法。
[28]
前記癌は胃癌、胆管癌、食道癌及び膵臓癌から選択される、前記[27]に記載の方法。[29]
前記被験者に対して、一種又は多種の他の療法を実施するステップをさらに含む、前記[26]-[28]のいずれか一項に記載の方法。
[30]
前記他の療法は化学療法、放射療法、免疫療法及び手術治療から選択される、前記[29]に記載の方法。
[31]
前記免疫療法は免疫チェックポイント分子に対する療法、CAR-T細胞療法及びCAR-NK細胞療法から選択される、前記[30]に記載の方法。
[32]
前記化学療法はエピルビシン、オキサリプラチン及び5-フルオロウラシルを含む併用化学療法から選択される、前記[30]に記載の方法。
[33]
前記[1]-[17]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、前記[21]に記載のコンジュゲート、又は前記[22]-[25]のいずれか一項に記載の組成物の、被験者のCLDN18.2の発現に関連する疾患の治療における用途。
[34]
前記[1]-[17]のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、前記[21]に記載のコンジュゲート、又は前記[22]-[25]のいずれか一項に記載の組成物の、被験者のCLDN18.2の発現に関連する疾患を治療するための薬物の製作における用途。
[35]
前記疾患は癌である、前記[33]又は[34]に記載の用途。
[36]
前記癌は胃癌、胆管癌、食道癌と膵臓癌から選択される、前記[35]に記載の用途。
[37]
配列番号1、6、11、16、21、26、31、36、41、46、55及び60から選択されるアミノ酸配列を有する、ポリペプチド。
[38]
配列番号2、7、12、17、22、27、32、37、42、47、56及び61から選択されるヌクレオチド配列を有する、核酸分子。
[39]
前記[38]に記載の核酸分子を含む、ベクター。


【0094】
他の局面において、本発明は核酸分子に関し、前記核酸分子は配列番号2、7、12、17、22、27、32、37、42、47、56及び61から選択されるヌクレオチド配列を有する。本発明は前記核酸分子を含むベクターにも関する。
【実施例
【0095】
以下は、具体的な実施例を参考しながら、本発明をより詳しく説明する。本発明の利点及び特徴は、説明により一段明確になる。しかしこれらの実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲に対する一切の限定効果を持たない。当業者が理解すべきのは、本発明の趣旨や範囲から逸脱しない限り、本発明の技術方案の細部や形式に改変や置換を加わってもよいが、これらの改変や置換はすべて本発明の保護範囲にある。
【実施例1】
【0096】
天然ファージライブラリーの構築
抗体薬物の開発は現在、主にその他物種由来の抗体をヒト化させること、又は遺伝子改変動物及び体外スクリーニング技術で完全ヒト抗体をスクリーニングすることにより実現し、これは抗体が人体における免疫原性をより低下させ、対応する副作用を軽減し、同時に成薬性を向上させているので、抗体薬物の発展重要方向の一つである。
【0097】
体外スクリーニング技術において、ファージディスプレイ抗体ライブラリー技術は完全ヒト抗体を得る主要手段の一つ。ファージディスプレイ技術(phage display technology)は、分子生物学手段を利用し、将外因性遺伝子断片をファージ特定タンパク質、例えば、gIIIの遺伝子に挿入し、ファージを外因性遺伝子がコードするタンパク質又はポリペプチドを発現させることで、組換え融合タンパク質を相対的な空間構造と生物学活性が維持されるままでファージの表面に展示させる。構築した多様なファージライブラリーを標的タンパク質と共にインキュベートし、バイオパニングで非標的タンパク質結合型ファージ株を除去する。ファージライブラリー容量が十分に大きい場合、複数回の収集、増幅及び濃縮で高親和力、高特異性を持つファージクローン株を獲得し、遺伝子シーケンシングでこれらのファージクローンがコードするタンパク質配列を鑑定することで、次の研究に使用することが可能である。
【0098】
ファージ抗体ライブラリーは、抗体遺伝子がファージディスプレイされた後に形成した多様なファージライブラリー。ファージ抗体ライブラリーの品質は、主にライブラリー容量及び多様性によって決定される。高親和力な抗体を獲得するために、ファージ抗体ライブラリーは、多様性が確保される前提で、ライブラリー容量をできるだけ増大させる必要がある。ファージ表面にディスプレイされる抗体断片の数はライブラリー容量の大きさを代表し、ディスプレイの断片の多様性は抗体ライブラリーの多様性を代表する。理論的に言えば、ファージ抗体ライブラリーのライブラリー容量が大きいほど、スクリーニングで得た抗体の親和力が高くなる。
【0099】
本実施例において、個体差異による抗体ライブラリーの偏りを避け、同時にライブラリーの多様性をできるだけ保証するために、合計で120個の成年健常個体の末梢血と脾臓、並びに新生児臍帯血由来の単核細胞の総RNAを獲得、収集並びに抽出した。前記RNAを逆転写させ、一本鎖cDNAを合成し、そして抗体の異なるサブグループに対する可変領域プライマーでVH、VκとVλ遺伝子をそれぞれ増幅させる。増幅した産物を一定の割合で混合した後、それぞれ重鎖と軽鎖遺伝子をPCR法で連結して一本鎖抗体(scFv)とし、二重酵素消化法でファージプラスミド中にクローンする。エレクトロポレーションにより、scFv遺伝子を搭載するファージプラスミドでSS320大腸菌コンピテントセルを形質転換する。SS320が対数期まで増殖した後、ヘルパーファージを入れて感染する。
【0100】
最終的に、ライブラリー容量が1.2×1012であり、陽性率が88%である天然抗体ファージ抗体ライブラリーを獲得した。ランダムにクローンを選定し、シーケンシングすることで、当該抗体ライブラリー遺伝子ファミリーが自然の分布に近いことがわかり、CDR3領域のアミノ酸数が3-20分布であった。シーケンシングにおいて、抗体の反復配列が発現されず、且つ88%の遺伝子配列は正確のリーディングフレームを有する。前記結果は、当該ファージ抗体ライブラリーの多様性が良好で、有効ライブラリー容量率が高いことを示した。
【実施例2】
【0101】
CLDN18.2安定発現細胞株の製作
本実施例において、細胞によるファージディスプレイスクリーニングに使用するために、CLDN18.2を安定発現するCHO細胞株(CHO-CLDN18.2)を製作した。その具体的な実験過程は次のとおりである:ヒトCLDN18.2のcDNA配列をpCDHレンチウイルスベクター中にクローンし、その後レンチウイルスパッケージングベクターと共に293t細胞にトランスフェクションする。48又は72時間培養後、レンチウイルス粒子を多く含む細胞上清を収集し、そのままCHO細胞、CT26細胞又はSNU601細胞を感染する。レンチウイルス感染後の細胞をピューロマイシンでスクリーニング培養をし、2-3周後にCLDN18.2特異性抗体(IMAB362、Ganymed)によるフローサイトメトリーで細胞のCLDN18.2発現を検出し、その結果を図1に示す。
【0102】
前記結果から分かるように、レンチウイルストランスフェクション及びピューロマイシンスクリーニングによって、CLDN18.2安定発現CHO細胞(CHO-CLDN18.2細胞系と命名された)、CT26細胞(CT26-CLDN18.2)及びSNU601細胞(SNU601-CLDN18.2)を獲得した。
【実施例3】
【0103】
抗体ファージディスプレイライブラリーから抗CLDN18.2抗体をスクリーニングする
CHO-CLDN18.2安定発現細胞株を利用し、ファージディスプレイライブラリーの選択を三回行った。実験手順は主に以下の文献を参考した:Targeting membrane proteins for antibody discovery using phage display Jones ML et al.Scientific Reports 2016。
【0104】
具体的な手順は以下の通りである:ファージライブラリーをCHO-K1細胞とインキュベートし、遠心して上清液を回収する。前記上清液をCHO-CLDN18.2細胞とインキュベートし、CLDN18.2に対する特異性を有するファージを細胞と結合させる。遠心して細胞ペレットを収集し、細胞を洗浄、収集する。その後75mMのクエン酸ナトリウム緩衝液で細胞と結合したファージライブラリーを溶出させた。ファージライブラリーを中和した後、M13K07ヘルパーファージでスクリーニング後のファージライブラリーを100倍増幅させ、その後に一次スクリーニングを類似する方法で二次と三次スクリーニングを行う。ファージの濃縮状況は、毎回スクリーニングの初期ファージ用量とスクリーニング後に収集したファージ価でモニターし、ファージライブラリーとCHO又はCHO-CLDN18.2安定発現細胞株でフローサイトメトリーを行うことにより検出する。図2に示す結果のように、二次濃縮スクリーニングから、ファージディスプレイライブラリーは、CHO-CLDN18.2と特異的に結合することができ、その結合強さがスクリーニング回数の増えに連れて強化される。
【0105】
三回のスクリーニング後に濃縮のファージライブラリーを得た。当該ライブラリーで細菌を感染した後、アガロースプレートに広げて培養した。モノクローナル菌落を選び、96ウェルのディープウェルプレートに入れて、アンピシリンとカナマイシンを含有する2YT培地を使って、37℃で振とう培養し、モノクローナルファージを含有する上清を得た。モノクローナルファージ上清をCHO-CLDN18.2細胞又はCT26-CLDN18.2細胞と4℃で1時間インキュベートし、その後1mM EDTAと0.5% BSAを含有するPBS(フローサイトメトリーバッファー)で洗浄した。PE標識抗M13抗体(Sino Biologicalから購入)を入れ、4℃で30分インキュベートした。その後、フローサイトメトリーでファージと細胞の結合を検出し、その結果を図3に示す。
【0106】
前記結果から分かるように、スクリーニングで得たモノクローナルファージA1-A6はいずれもCHO-CLDN18.2細胞とよく結合し、同時にCHOコントロール細胞とは結合しない。
【実施例4】
【0107】
組換え抗体の製作
モノクローナルファージの重鎖と軽鎖可変領域のcDNA配列をすでに抗体定常領域を含有するpcDNA3.4ベクター(Invitrogen)中にそれぞれクローンし、合計6種類のモノクローナル抗体の重鎖と軽鎖発現プラスミドを獲得した。PEI法でプラスミドをEXPI-293細胞(Invitrogen)中にトランスフェクションし、7-10日一過性トランスフェクションし、遠心して上清液を回収した。上清液をprotein Aで精製し、精製した抗体を得た。前記6種類のモノクローナル抗体をそれぞれ18.2-A1(A1)、18.2-A2(A2)、18.2-A3(A3)、18.2-A4(A4)、18.2-A5(A5)と18.2-A6(A6)に命名した。これらの抗体の重鎖と軽鎖可変領域のアミノ酸配列並びにコードする配列は以下の表1と表2に示す。Kabat CDRシステムで確定した抗体のCDR配列は表3に示す。組換え抗体の重鎖と軽鎖定常領域配列は表4に示す。
【0108】
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【実施例5】
【0109】
組換えモノクローナル抗体の結合活性の検出
組換えモノクローナル抗体のCLDN18.2に対する結合活性を検出した。具体的には、成長が良好なCT26-CLDN18.2安定発現細胞株を取る。細胞をPBSで洗浄した後、倍数で希釈した抗体と混合し、4℃で1時間インキュベートした。細胞をフローサイトメトリーバッファーで一回洗浄し、PE標識抗ヒトIgG抗体を入れ、4℃で30分インキュベートした。遠心して上清を取り除き、フローサイトメトリーバッファーで洗浄した後、フローサイトメーターで細胞表面の蛍光強度を検出した。平均蛍光強度で各種抗体の相対結合活性を計算した。
【0110】
18.2-A1(A1)、18.2-A2(A2)、18.2-A3(A3)、18.2-A4(A4) 18.2-A5(A5)と18.2-A6(A6)抗体はいずれもコントロールであるCT26細胞株と結合しない(結果は示していない)が、図4に示すように、CLDN18.2発現CT26細胞株とよく結合する。抗体の希釈に連れて、CT26-CLDN18.2の平均蛍光強度徐々に弱くなる。また、図4は前記CLDN18.2抗体の相対結合活性(EC50)をも示した。
【実施例6】
【0111】
組換え抗体の結合特異性の検出
ヒトClaudin18タンパク質には二つアイソフォーム、即ちCLDN18.1とCLDN18.2があり、この二つアイソフォームはエクソン1以外の他のエクソンを共有し、且つCLDN18.1とCLDN18.2のエクソン1配列は極めて似ていて、そのなか、第一の細胞外ドメインにおいて、異なるアミノ酸が僅か8つしか存在しない。CLDN18.1とCLDN18.2エクソン1は、それぞれ異なるプロモーターの制御下で、特異的に異なる組織に発現する。そのなか、CLDN18.1は肺上皮細胞に特異的に発現し、CLDN18.2 は胃上皮細胞に特異的に発現する。スクリーニングされたCLDN18.2抗体の特異性を鑑定するために、抗体とCLDN18.1及びCLDN18.2の結合を検出した。
【0112】
具体的に、成長が良好な293t細胞を取り、flagタグで標識したCLDN18.1(CLDN18.1-Flag)又はCLDN18.2(CLDN18.2-Flag)を一時発現させる。トランスフェクション後48時間に、トリプシンで細胞を消化する。フローサイトメトリーバッファーで洗浄した後、200μlフローサイトメトリーバッファーにおいて、細胞を10μg/mlのアイソタイプコントロール抗体又は前記5株のCLDN18.2抗体と混合し、4℃で1時間インキュベートする。その後、細胞をフローサイトメトリーバッファーで一回洗浄し、PE標識抗ヒトIgG抗体を入れ、4℃で30分インキュベートする。遠心して上清を取り除き、フローサイトメトリーバッファーで二回洗浄し、1%ポリホルムアルデヒドと0.5% triton-X100を含有する固定液において細胞を固定し、細胞膜に透過処理する。その後、APC標識抗flag抗体を使って、細胞と30分インキュベートし、フローサイトメーターで検出を行う。
【0113】
結果は図5に示すように、CLDN18.1-flag又はCLDN18.2-flagを外因性発現する293t細胞のすべてにおいて、flag陽性細胞群が検出され、これはトランスフェクションされたCLDN18.1又はCLDN18.2タンパク質は細胞において正常に発現されたことを示し、発現陽性率は20%程度である。CLDN18.2抗体18.2-A1、18.2-A2、18.2-A3、18.2-A4、18.2-A5と18.2-A6はいずれもCLDN18.2-flagトランスフェクションの陽性293t細胞とよく結合することができるが、6株の抗体はいずれもCLDN18.1陽性細胞と結合しない。前記結果から分かるように、この6株のCLDN18.2抗体はいずれもCLDN18.2と特異的に結合し、CLDN18.1とは結合しない。
【実施例7】
【0114】
CLDN18.2抗体が細胞に結合した後にエンドサイトーシスされることの検出
すでに報告されたように、一部の抗体は細胞表面の抗原に結合した後、抗原と抗体の復合物のエンドサイトーシスを引き起こすことができ、これにより細胞表面抗原の発現レベルを低下させ、抗体が体内における代謝を加速させる(Schrama D et al.2006、Nat Rev Drug Discov)。本実施例では、CLDN18.2安定発現SNU601細胞において、抗体18.2-A1、18.2-A3、18.2-A4及び18.2-A6の細胞にエンドサイトーシスされる能力を検出した。具体的に、濃度が10μg/mlであるCLDN18.2抗体18.2-A1、18.2-A3、18.2-A4、18.2-A6又はIMAB362抗体(例えば、実施例2に記載)、空白コントロール(PBS)及びアイソタイプコントロール(ISO)をそれぞれ細胞と4℃で又は37℃で4時間インキュベートした。その後、4℃で洗浄を行い、PE標識抗ヒトIgG抗体で染色をした。4%ホルマリンによる固定後、フローサイトメーターで細胞表面の抗体結合を検出した。
【0115】
図6に示した結果のように、4℃でインキュベートする条件下で、IMAB362抗体、18.2-A1、18.2-A3、18.2-A4及び18.2-A6抗体はいずれもCLDN18.2発現SNU601細胞とよく結合することができる。しかし37℃でインキュベートする条件下で、IMAB362抗体は細胞にエンドサイトーシスされ、細胞表面の抗体染色が明らかに低下した;18.2-A1、18.2-A3、18.2-A4と18.2-A6抗体には著しいエンドサイトーシス現象がなく、37℃条件下であっても細胞とよく結合することができる。
【0116】
前記結果から分かるように、IMAB362抗体は細胞のエンドサイトーシス作用を引き起し、これによりCLDN18.2抗原の細胞表面における発現レベルをダウンレギュレートする可能性がある。体内において、エンドサイトーシス作用は抗体代謝の改変をも引き起し、抗体が体内におけるクリアランス速度を加速させることもできる。反面、本発明のCLDN18.2抗体は明らかな細胞エンドサイトーシス作用を引き起こさず、よって細胞表面の標的抗原CLDN18.2のレベルをダウンレギュレートせず、抗体が体内における代謝にも影響しない。
【実施例8】
【0117】
脱フコシル化抗体の製作と精製
さらにCLDN18.2抗体の脱フコシル化形態を製作した。具体的に、抗体の重鎖と軽鎖をコードする配列を安定発現できる哺乳動物GS発現ベクター中にクローンした。重鎖と軽鎖をコードする配列はすべてCMVプロモーターに制御される。発現ベクターを無血清及び懸濁培養で家畜化されたCHO-K1細胞とFut8遺伝子がノックアウトされた家畜化CHO-K1細胞株にトランスフェクションした。MSXスクリーニングで安定発現細胞株を選択した。安定発現細胞株を得た後、振とうフラスコで12-14日培養し、期間内に必要に応じてサプリメント培地を補充した。
【0118】
その後、培養上清を回収し、ろ過した後、protein Aクロマトグラフィーカラムで発現した抗体を捕獲した。抗体を溶出させた後、PBSで透析し、精製した抗体を得た。そのなか、Fut8遺伝子ノックアウトCHO-K1細胞株において発現した18.2-A1、18.2-A2、18.2-A3、18.2-A4、18.2-A5と18.2-A6抗体は、それぞれ18.2-A1F、18.2-A2F、18.2-A1F、18.2-A4F、18.2-A5Fと18.2-A6Fに命名された。
【実施例9】
【0119】
脱フコシル化抗体の糖鎖化修飾の特性評価
その後、Fut8遺伝子ノックアウトCHO-K1細胞株に発現した脱フコシル化抗体とCHO-K1細胞に生成した通常抗体の糖鎖化修飾を分析した。100μgの抗体をトリプシンとグリコシルペプチダーゼで分解した後に精製して抗体の糖鎖を獲得し、その後蛍光タンデム質量分析を行った。各種糖鎖の鑑定はその質量電荷比m/zによるものであり、蛍光により検出した面積百分比で糖鎖百分比を計算した。
【0120】
糖鎖命名:

N-アセチルノイラミン酸
N-アセチルガラクトサミン
フコース
マンノース
ガラクトース
N-グリコリルノイラミン酸
【0121】
糖鎖番号の定義:5つの数字は、それぞれ異なる糖の数を表現する:ヘキソース(ガラクトース、マンノース、あるいはグルコース)、N-アセチルヘキソサミン(GlcNAあるいはGalNAc)、フコース(Fucose、FUCと略称する)、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、及びN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)。そのなかで3番目の数字はフコースの数を示す。例えば、以下表4に示す:
【表5】
【0122】
CHO-K1細胞において生成したClaudin18.2-A1抗体の糖鎖分析結果は以下の表5に示す。
【表6】
【0123】
Fut8遺伝子ノックアウトCHO-K1細胞において生成した三つのバッチの脱フコシル化Claudin18.2抗体(18.2-A1及び18.2-A4)の糖鎖分析結果は表6に示す。
【表7】
【0124】
以上の結果は、CHO-K1細胞に生成した通常Claudin18.2抗体の糖鎖構造における91.0%がフコースを含むことを示した。一方、Fut8遺伝子ノックアウトCHO-K1細胞に生成した三つのバッチの脱フコシル化Claudin18.2抗体の糖鎖において、基本的に検出可能なフコースを含有しない。
【実施例10】
【0125】
脱フコシル化抗体の結合活性の検出
フローサイトメトリーにより、18.2-A1、18.2-A3及び18.2-A4とCLDN18.2との結合活性と比べての、脱フコシル化抗体18.2-A1F、18.2-A3F及び18.2-A4FとCLDN18.2との結合活性を検出し、その検出方法は実施例5に記載したものと同じであり、実験結果は図7に示す。
【0126】
当該結果から分かるように、脱フコシル化したCLDN18.2抗体は通常抗体と比べて、CLDN18.2に対する生物学的結合活性に著しい差がなかった。
【実施例11】
【0127】
CLDN18.2抗体及びその脱フコシル化形態とFcγRIIIaとの結合活性の検出
その後、Biacore方法でCLDN18.2抗体及びその脱フコシル化形態とFcγRIIIaとの結合活性を検出した。具体的に、FcγRIIIa(Sino Biological Inc、10389-H08C1)をHBS-EPバッファーで0.1μg/mlに希釈し、配体とする。そして18.2-A1Fと18.2-A1の抗体サンプルをそれぞれ360μg/ml、120μg/ml、40μg/ml、13.3μg/ml及び4.4μg/mlに希釈して、分析物とする。間接的な捕獲の方法で配体FcγRIIIaを固定し、まず50μg/mlのAnti-His IgGを使い、アミノカップリングでCM5チップの表面に共有結合し、その後に配体及び分析物に結合する。Biacore Wizardモードで複数循環方式を使い、FcγRIIIaを配体とし、18.2-A1Fと18.2-A1の抗体サンプルを分析物とし、親和力分析実験を行った。
【0128】
各サンプルのテストは3つのStart up、1つの濃度0のコントロール、5つの勾配濃度サンプル及び1つの繰り返しサンプル(参考品)を含む。各循環が終了後、10mMグリシン-HCl、pH 1.5再生液でチップを再生させる。分析物の各濃度循環の捕獲時間を60sとし、配体溶液の流速が10μl/min;配体と分析物との結合時間が180s、分析物溶液の流速が30μl/min;解離時間が180sである。Anti-His IgGがカップリングしているCM5チップをスロット内にセットし、検出分析を行った。生データをBIACORETM X100分析ソフトウェアに導入し、濃度0コントロールを差し引き、ボリューム効果を消除するために参照チャネルをも差し引き、親和力分析方法を使い、定常状態モードでグラフにフィッティングして、データを整理した。
【0129】
図8の結果から分かるように、18.2-A1抗体及びその脱フコシル化形態18.2-A1Fは、いずれもFcγRIIIaと効果的に結合することができる。且つ、18.2-A1F抗体とFcγRIIIaとの結合のKD値は明らかに18.2-A1抗体より低い。この結果から分かるように、脱フコシル化した18.2-A1F抗体とFcγRIIIaとの結合活性が著しく強化された。
【実施例12】
【0130】
CLDN18.2抗体及びその脱フコシル化形態と細胞表面のFcγRIIIaとの結合活性の検出
次に、我々はさらにCLDN18.2抗体及びその脱フコシル化形態と細胞表面で発現したFcγRIIIaとの結合活性を検出した。具体的に、ヒトFcγRIIIa(V158、高FC結合サブタイプ)遺伝子をピューロマイシンスクリーニング標識を持つ哺乳動物細胞発現ベクターにクローンし、Jurkat細胞株中にトランスフェクションした。ピューロマイシンでFcγRIIIaを安定発現する細胞株(FcγRIIIa-Jurkat)をスクリーニングした。また、NK92MIはヒトNK細胞株であり、FcγRIIIa受容体(F158、低FC結合サブタイプ)を天然的に発現する。フローサイトメトリーでCLDN18.2抗体及びその脱フコシル化形態とFcγRIIIa-jurkat細胞及びNK92MI細胞表面で発現したFcγRIIIaとの結合能力を検出した。具体的なフローサイトメトリー検出方法は実施例6に記載したものを参照する。
【0131】
フローサイトメトリーの検出結果は図9に示す。CLDN18.2抗体18.2-A1及び18.2-A4及びそれらの脱フコシル化形態18.2-A1F及び18.2-A4Fは、いずれもFcγRIIIa-jurkat細胞と結合することができ、同時にトランスフェクションされていないJurkat細胞には結合しない(結果は示していない)。且つ、脱フコシル化した18.2-A1Fと18.2-A4F抗体は、FcγRIIIa-Jurkat細胞並びにNK92MI細胞とより良く結合することができ、そのEC50がCLDN18.2抗体18.2-A1及び18.2-A4抗体と比べて明らかに低い。前記結果から分かるように、脱フコシル化したCLDN18.2抗体は、著しく向上されたFc受容体FcγRIIIaとの結合能力を有する。
【実施例13】
【0132】
CLDN18.2抗体及びその脱フコシル化形態がFcγRIIIa受容体を活性化させる
FcγRIIIa受容体は抗体FC領域と結合した後、エフェクター細胞内のNF-AT転写因子通路を活性化させる。したがって、NF-ATが媒介するレポーター遺伝子強度の検出はFcγRIIIa受容体の活性化強度を反映することができる。本実施例において、NF-AT結合サイトを含有するプロモーターをルシフェラーゼレポーター遺伝子発現ベクターに挿入し、これをJurkat細胞株に安定的にトランスフェクションした。同時に、高FC結合のFcγRIIIa(V158)もJurkat細胞に安定的にトランスフェクションし、FcγRIIIa受容体の活性化強度を感知できる機能性細胞株(FcγRIIIa-Jurkat)を構築した。
【0133】
CLDN18.2安定発現SNU601胃癌細胞(SNU601-CLDN18.2)を取り、4x10/mlまで希釈し、FcγRIIIa-Jurkat細胞と1:6の割合で混合させた。100μlの混合細胞を取り96ウェルプレートに入れ、そして倍比希釈した抗体をそれぞれ入れて、37℃で6時間静置培養した。その後、One-Glo試剤盒(promega)でルシフェラーゼ活性を検出した。
【0134】
結果は図10に示す。CHO-K1細胞に生成した18.2-A1及び18.2-A4抗体と比べ、Fut8遺伝子ノックアウトCHO細胞株に発現した脱フコシル化抗体18.2-A1F及び18.2-A4Fに誘導されたFcγRIIIa受容体活性は著しく強化し、そのEC50値が約10-20倍に向上した。
【実施例14】
【0135】
化学療法薬EOFとの併用でCLDN18.2抗体に誘導されたFcγRIIIa受容体活性化を強化させる
現在、EOF(エピルビシン、Epirubicin;オキサリプラチン、Oxaliplatin;5-フルオロウラシル、5-FU)を含む併用化学療法は、胃癌の主な治療手段である。EOF感受性細胞株はEOF処理後で、異なる程度の細胞分裂周期の遮断、増殖阻害及びアポトーシスが起こされる。
【0136】
KATOIII細胞はヒト胃上皮癌細胞株の一種であり、レベルの低いCLDN18.2を発現し、フローサイトメトリーでは僅か約5.2%の細胞が明らかな陽性を示した(図11)。そのCLDN18.2発現レベルの低さによって、KATOIII細胞及びFcγRIIIa-Jurkat細胞と共にインキュベートした、抗体に誘導されたFcγRIIIa受容体活性化実験において(実験方法は実施例13に記載した通り)、18.2-A1Fと18.2-A6F抗体はFcγRIIIa受容体の活性化を引き起こさなかった(図12A)。
【0137】
さらに、亞致死量のEOFで(エピルビシン:300nM;オキサリプラチン:130nM;5-フルオロウラシル:561.3nM)KATOIII細胞を処理した48時間後に、顕微鏡観察とフローサイトメトリー検出により、細胞体積の増大、形状が丸くなること、分裂期細胞の減少が観察された。これは細胞は分裂期にとどまったことを示す。しかし、細胞は依然として生存しており、明らかなアポトーシス現象が観察されなかった(結果は示していない)。EOFに処理されたKATOIII細胞をFcγRIIIa-Jurkat細胞、異なる濃度のCLDN18.2抗体と共にインキュベートした。結果から分かるように、アイソタイプコントロール(ISO)と比べ、18.2-A1Fと18.2-A6F抗体はFcγRIIIa受容体の活性化(図12B)を著しく誘導することができる。
【0138】
以上結果から分かるように、現在一般的に使用されている化学療法薬であるEOFは胃癌細胞に対して成長抑制作用を持つ。EOF処理はCLDN18.2抗体に誘導されたFcγRIIIa受容体活性化を強化させることができる。理論に縛られなく、当該効果は化学療法薬の処理が細胞上の抗原発現をアップレギュレーションしたこと及び他のメカニズムによってCLDN18.2抗体のADCC効果を促進するためである可能性がある。
【実施例15】
【0139】
抗体がCLDN18.2発現腫瘍細胞に対する傷害
Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare)で健常人(ドナー1とドナー2)の末梢血白血球(PBMC)を分離して、37℃で一晩中培養した。CLDN18.2安定発現SNU601胃癌細胞(SNU601-CLDN18.2)を取り1x10/mlに希釈し、PBMCを5x10/mlに希釈して、両者を同じ体積で混合し、エフェクター細胞と標的細胞の比率が50:1である。100μl混合細胞を取り、96ウェルプレートに入れ、そして倍比希釈した抗体をそれぞれ入れて、37℃で24時間静置培養した。その後、乳酸脱水素酵素(LDH)法(promega)で細胞生存率を検出した。そのなか、マイクロプレートリーダーによりOD490での吸光度を測定する。傷害率の計算方法は以下の通りである:
最小放出組:標的細胞を単独で培養する
最大放出組:標的細胞+Lysis Solution
実験組:標的細胞+エフェクター細胞+CLDN18.2抗体
コントロール組:標的細胞+エフェクター細胞+陰性コントロール抗体
傷害率(%)=(実験組-最小放出組)/(最大放出組-最小放出組)%×100%
【0140】
結果は図13に示す。陰性コントロール抗体が明らかな細胞傷害を示さなかったが(結果は示していない)、CLDN18.2抗体18.2-A1及び脱フコシル化した抗体18.2-A1Fと18.2-A4FはいずれもCLDN18.2を発現する標的細胞の死亡を効果的に引き起すことができ、その最大傷害率は80-90%まで達した。また、脱フコシル化した抗体と通常抗体とを比較すると、脱フコシル化した抗体の標的細胞最大傷害率とIC50値はいずれも通常抗体より明らかに高いことが分かった。
【実施例16】
【0141】
CLDN18.2抗体のCDC活性
CLDN18.2安定発現HELA細胞を取り、1%不活化補体を含有する血清を含む培地で再懸濁カウントし、細胞濃度を2x10/mlに調整した。細胞生存率が90%を超えた。96ウェルプレートにウェルあたり50μlの細胞を入れ、そして倍比希釈した抗体と50μl希釈後のヒト血清をそれぞれ入れた。細胞を37℃で2時間インキュベートした。その後、CCK8法で細胞溶解率を測定した。細胞溶解率の計算方法は以下の通りである:
最小放出組:標的細胞
最大放出組:標的細胞+Lysis Solution
実験組:標的細胞+CLDN18.2抗体+補体
陰性コントロール組:標的細胞+陰性コントロール抗体+補体
傷害率(%)=(実験組-最小放出組)/(最大放出組-最小放出組)×100%
【0142】
結果は図14に示す。CLDN18.2抗体18.2-A1と18.2-A4及びその脱フコシル化形態18.2-A1Fと18.2-A4Fはいずれも明らかなCDC活性を有し、標的細胞に対する最大傷害率は全部95%を超えた。また、脱フコシル化形態の抗体が通常抗体と比べて、CDC活性に著しい差がなかった。
【実施例17】
【0143】
CLDN18.2抗体の体内腫瘍に対する傷害活性
NPG免疫不全マウスに対して、SNU601-CLDN18.2細胞とFicollで分離したヒトPBMC細胞(SNU601-CLDN18.2細胞:PBMCが1:0.8)を皮下接種することで、SNU601細胞のマウス異種移植モデルを建築した。その後、SNU601腫瘍細胞を接種したNPG免疫不全マウスに腹腔内注射で10mg/kg又は5mg/kg用量の18.2-A1F抗体18.2-A1F、又は空白コントロール(PBS)又はIgGアイソタイプコントロール(ISO)を注射した。各組n=マウス15匹。腫瘍接種後に3日ごとに投薬して、マウス体内腫瘍の体積を測定した。
【0144】
図15に記載した結果から分かるように、PBS組、IgGアイソタイプコントロール抗体組と比べ、5mg/kgと10mg/kg用量の18.2-A1F抗体処理組は、いずれも良好な腫瘍抑制効果を示し、且つ5mg/kgと10mg/kg組の間に明らかな効果の差が観察されなかった。
【実施例18】
【0145】
CLDN18.2抗体と化学療法薬物との併用の体内腫瘍に対する傷害活性
実施例14に記載した結果のように、体外でのEOF併用化学療法は、CLDN18.2抗体に誘導されたFcγRIIIa受容体活性化を向上させることができる。KATOIIIは体外IMDM培地において培養する時、レベルの低いCLDN18.2を発現し、僅か約5.2%の細胞はフローサイトメトリー検出で明らかな陽性を示した(図11)。フローサイトメトリーでソーティング後、CLDN18.2高発現のKATOIII細胞(KATOIII-18.2High)を選択して、NPG免疫不全マウスに接種し、異種移植モデル実験を行った(図16)。
【0146】
NPG免疫不全マウスにKATOIII-18.2High細胞とFicollで分離したヒトPBMC細胞(KATOIII-18.2High細胞:PBMCが1:0.8)を皮下接種し、KATOIII-18.2High細胞の異種移植モデルを建築した。その後、KATOIII-18.2High腫瘍細胞を接種したNPG免疫不全マウスに腹腔内注射でアイソタイプコントロール抗体(ISO)、EOF(エピルビシン:1mg/kg;オキサリプラチン:3mg/kg;5-フルオロウラシル:30mg/kg)、10mg/kg用量の18.2-A1F抗体、又はEOF及び18.2-A1Fを注射した。各組n=マウス6匹。腫瘍接種後に3日ごとに投薬して、マウス体内腫瘍の体積を測定した。
【0147】
図17に記載した結果から分かるように、EOF組及びコントロール抗体組と比べ、18.2-A1Fは腫瘍成長を効果的に抑制し、18.2-A1FとEOFとの併用は腫瘍成長をさらに著しく低下させ、それと化学療法との併用が癌の臨床治療におけるポテンシャルを示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
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