(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】乳酸生成およびポリ乳酸リサイクリングのための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12P 7/56 20060101AFI20240220BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C12P7/56
C08J11/16 ZAB
(21)【出願番号】P 2022549664
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 IL2021050189
(87)【国際公開番号】W WO2021165964
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-01-11
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522327348
【氏名又は名称】トリプルダブリュー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シャピラ,タル
(72)【発明者】
【氏名】グリーナー,ツヴィカ
(72)【発明者】
【氏名】ハーノイ,アッサフ ジェイ.
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-339420(JP,A)
【文献】特表2012-523442(JP,A)
【文献】Recycling Polylactic Acid (PLA) - Student Guide,2018年05月15日,p.1-11,https://www.beyondbenign.org/bbdocs/pdfs/Lactic_Acid_Titration_Extension.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/00-7/66
C08J 11/00-11/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(PLA)
廃棄物のリサイクリングおよび有機廃棄物のリサイクリングの組み合わせからL-乳酸塩を生成するための方法であって、
(a)
ポリL-乳酸(PLLA)、ポリD-乳酸(PDLA)、ポリ(D-L-)乳酸(PDLLA)、ステレオコンプレックスPLA(sc-PLA)またはそれらの任意の組み合わせを含む、PLA廃棄物を金属酸化物または水酸化物を用いて加水分解し、L-乳酸モノマーおよび第1の対イオンを含むPLA加水分解スラリーを得るステップ;
(b)
炭水化物を含み、食品廃棄物、都市廃棄物の有機画分、農業廃棄物、植物材料、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、有機廃棄物を、
L-乳酸産生微生物を用いて発酵槽においてアルカリ化合物の存在下で発酵させ、L-乳酸モノマーおよび第2の対イオンを含む発酵ブロスを得るステップであって、
前記第1および第2の対イオンが同じである;または、前記第1および第2の対イオンの少なくとも1つがイオン交換に供せられ、よって、同じである第1および第2の対イオンが得られる、
ステップ;
および
(
c)ステップ(a)の前記PLA加水分解スラリーおよびステップ(b)の前記発酵ブロスを含む混合物
を形成させ、前記混合物からL-乳酸
塩を精製
することにより、L-乳酸塩を得るステップ
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)およびステップ(b)は任意の順序で、または同時に、実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の前記PLA加水分解スラリーおよびステップ(b)の前記発酵ブロスを含
む混合物
を形成させる工程は、
L-乳酸産生微生物を用いて前記有機廃棄物が発酵される前
記発酵槽に
前記PLA加水分解スラリーを徐々に添加することにより
行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)より前に、ステップ(a)の前記PLA加水分解スラリーおよびステップ(b)の前記発酵ブロスをD-乳酸分解酵素またはD-乳酸利用微生物と接触させ、前記PLA加水分解スラリーおよび前記発酵ブロスからD-乳酸モノマーを排除するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法であって、ステップ(c)は、D-乳酸モノマーが排除された前記PLA加水分解スラリーおよび前記発酵ブロスに対して行われる、方法。
【請求項5】
ステップ(c)におけるL-乳酸塩を精製する工程が、前記PLA加水分解スラリーおよび前記発酵ブロスを含む前記混合物を、D-乳酸分解酵素またはD-乳酸利用微生物と接触させ、D-乳酸モノマーを排除することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)は50℃~90℃の範囲の温度で実施される、または
ステップ(a)は1~12時間もしくは12~36時間の範囲の期間の間実施される、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)の前記金属酸化物または水酸化物およびステップ(b)の前記アルカリ化合物は同じ化合物である、または
前記第1および第2の対イオンは異なる、または
ステップ(a)の前記
PLA加水分解スラリーおよびステップ(b)の前記発酵ブロスの少なくとも1つはイオン交換に供せられ、よって、同じである第1および第2の対イオンが得られる、
請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属酸化物または前記アルカリ化合物は、MgO
およびCa
Oのうちの少なくとも1つを含む;または
前記アルカリ化合物は、CaCO
3
およびMgCO
3
のうちの少なくとも1つを含む;または
前記水酸化物または前記アルカリ化合物は、NaOH、KOH、NH
4OH、Ca(OH)
2、
およびMg(OH)
2
のうちの少なくとも1つを含む;または
前記水酸化物はMg(OH)
2である、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記
L-乳酸塩はL-乳酸マグネシウム塩である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)の前に前記PLA廃棄物の前処理をさらに含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前処理は、粉砕、チッピング、寸断、ミリング、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される機械的前処理を含む;または
ステップ(a)で得られた前記PLA加水分解スラリーを固液分離に供することをさらに含む、
請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記有機廃棄物は、内在性D-乳酸、L-乳酸またはその両方を含む;または
前記PLA廃棄物は、ポリL-乳酸(PLLA)およびポリD-乳酸(PDLA)を含む、
請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記D-乳酸分解酵素はD-乳酸オキシダーゼである、請求項
4~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前
記L-乳酸塩は結晶化、再結晶、蒸留、分配、シリカゲルクロマトグラフィー、分取HPLC、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つにより精製される;または
前
記L-乳酸塩は酸性化され、その後のポリ乳酸形成のためのL-乳酸が形成される、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物およびポリ乳酸の二重リサイクリングに関する。特に、ポリ乳酸(PLA)のケミカルリサイクリングと組み合わせた有機廃棄物の乳酸へのリサイクリングのための方法およびシステムが提供される。
【背景技術】
【0002】
乳酸発酵
乳酸発酵、すなわち、微生物発酵を介する炭水化物源からの乳酸の生成は、バイオプラスチックの製造においてビルディングブロックとして乳酸を使用することができるために、近年、関心を集めている。乳酸は重合させることができ、生分解性のリサイクル可能なポリエステル、ポリ乳酸(PLA)が形成され、これは、石油から製造されたプラスチックの潜在的代用品と考えられる。PLAは、食品包装、使い捨て品、織物および衛生用品業界における繊維、その他いろいろを含む様々な製品の製造において使用される。
【0003】
発酵バイオプロセスによる乳酸の生成は、環境への懸念、コストおよび、ほとんどの産業用途では望ましい化学合成により鏡像異性的に純粋な乳酸を生成させる困難さを含む様々な検討事項のために化学合成法より好ましい。従来の発酵プロセスは典型的には、炭水化物発酵の主代謝最終生成物として乳酸を生成する乳酸産生微生物による嫌気性発酵に基づく。PLAの生成については、発酵中に生成された乳酸が発酵ブロスから分離され、様々なプロセスにより精製され、次いで、精製された乳酸は重合に供せられる。
【0004】
乳酸はキラル炭素原子を有し、そのため、2つの鏡像異性体型、D-およびL-乳酸で存在する。産業用途に好適なPLAを生成させるために、生成プロセスに入るD-またはL-乳酸は、重合に要求される仕様を満たすために高度に精製されなければならない。加えて、L-乳酸鏡像異性体のみ、または、D-乳酸鏡像異性体のみを産生する乳酸菌が典型的には、1つの別々の鏡像異性体(LまたはD)を生成させるために使用される。
【0005】
現在のところ利用できる商業的プロセスでは、乳酸発酵のための炭水化物源は典型的には、トウモロコシおよびキャッサバ根などのデンプン含有再生可能資源である。追加の資源、例えば、セルロースリッチサトウキビバガスもまた、提案されている。典型的には、乳酸菌はグルコースおよびフルクトースのような還元糖を利用することができるが、デンプンおよびセルロースのような多糖を分解する能力は有していない。よって、そのような多糖を利用するためには、プロセスは、典型的には化学的処理と組み合わせて、糖分解酵素を添加し、多糖を分解し、還元糖を放出させることを必要とする。
【0006】
提案されている乳酸発酵のための追加の炭水化物源は複合有機廃棄物、例えば、自治体、工業および市場起源由来の混合食品廃棄物である。有機廃棄物は有利である。というのも、乳酸発酵のための他の炭水化物源に比べて、容易に入手でき、安価であるからである。
【0007】
混合食品廃棄物は典型的には、様々な割合の還元糖(グルコース、フルクトース、ラクトース、など)、デンプンおよびリグノセルロース材料を含む。混合食品廃棄物はまた、内在性D,L-乳酸(例えば、乳製品由来、または輸送中の自然分解)を含み、そのうちの1つは、廃棄物を、光学的に純粋な乳酸(L-またはD-乳酸)を生成させるための基質として使用するために除去する必要がある。本発明の出願人に譲渡されたWO2017/122197号は、廃棄物中に存在する乳酸を排除し、かつ、複合多糖を分解するように有機廃棄物を処理するのに有用な、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、およびアミラーゼなどの多糖-分解酵素を分泌するように遺伝子改変された二重作用乳酸(LA)利用細菌を開示する。
【0008】
混合食品廃棄物などの有機廃棄物はまた、炭水化物含量の観点から、高い変動性により特徴付けられ、その組成はバッチ間で変動し、いくつかのバッチは、低炭水化物含量を有する他のものに比べて、炭水化物に富む可能性がある。よって、有機廃棄物に基づく乳酸発酵プロセスでは、収率が、バッチ間で変動する結果となる可能性があり、場合によっては乳酸の非常に低い収率が得られる。
【0009】
ポリ乳酸(PLA)リサイクリング
再生可能資源から生成されるPLAは石油由来プラスチックの代替品であり、食品包装などの製品の製造におけるその使用は増え続けている。使い捨て最終製品中のPLAの存在が増加しているために、確実に、PLAが廃棄後十分対処されることが重要である。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびポリ(エチレンテレフタレート)などの熱可塑性樹脂とは異なり、PLAは熱分解を受ける。したがって、PLAおよび前記プラスチックの混合物を含む製品がリサイクルされる場合、リサイクルストリームの汚染を回避するためにPLAを分離することが望ましい。
【0010】
PLAについてのリサイクリング選択肢は、埋め立て、堆肥化、嫌気性消化(バイオガス生成)、焼却および構成モノマーへのケミカルリサイクリングを含む。ケミカルリサイクリングは他の方法よりも好ましく、というのも、モノマーは新規PLAの生成において再利用することができるからである。
【0011】
市場で販売されているPLAの一般的な形態の1つは、主にPLLA(L-乳酸から作られる)、および、少量のPDLA(D-乳酸から作られる)からなるコポリマーPDLLA(ポリ(D-L-)乳酸)である。市場で販売されているPLAプラスチックのかなりの部分が、加水分解されると、D-乳酸を放出する少量のPDLAを含む。加水分解された材料はまた、加水分解中のラセミ化により形成される未知の量のD-LAを含み得る。99%を超える光学純度が典型的には、PLA生成プロセスに入るD-乳酸およびL-乳酸の両方のために必要とされる。そのため、PLAリサイクリングプロセスは異性体分離の問題に対処すべきである。2つの鏡像異性体の化学的分離は、通常、液体または固体エナンチオ選択的膜または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用し、高額である。
【0012】
Cam, Hyon and Ikada (1995) Biomaterials, 16(11): 833-43は、アルカリ性媒質中での高分子量ポリ(L-ラクチド)の分解を報告する。研究は分子量および形態の加水分解に対する効果を試験した。分解は37℃で0.01N NaOH溶液中にて実施された。
【0013】
Siparsky, Voorhees, and Miao (1998) Journal of environmental polymer degradation, 6(1): 31-41は、アセトニトリル水溶液中でのポリ乳酸(PLA)およびポリカプロラクトン(PCL)の加水分解を報告する。
【0014】
Xu, Crawford and Gorman (2011) Macromolecules, 44(12): 4777-4782は、ポリ(乳酸)ブラシの分解に対する温度およびpHの効果を報告する。
【0015】
Chauliac (2013) “Development of a thermochemical process for hydrolysis of polylactic acid polymers to L-lactic acid and its purification using an engineered microbe” Ph.D.論文, University of Florida, UMI Number: 3583516は、PLAポリマーの使用済み後の使用のためのプロセスを提案する。このプロセスでは、熱加水分解が第1のステップであり、続いて、加水分解された材料からのD-LA除去により、純粋L-LAが得られ、これは、ポリマー自体の生成に向け直すことができる。熱加水分解は水を用いてNaOHの存在下実施された。得られたシロップからのD-LA除去は、同定されたL-乳酸デヒドロゲナーゼ3つ全てを欠く大腸菌を使用して達成された。
【0016】
Wadso and Karlsson (2013) Polymer Degradation and Stability, 98(1): 73-78は、カルボン酸のエステルを含むポリマーのアルカリ加水分解のエンタルピーを測定する2つの研究を報告する。2つの材料を使用した:ポリ(酢酸ビニル)、PVAc、フィルムおよびポリ(乳酸)、PLA、繊維。分解は水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを使用して30℃で実施された。
【0017】
Elsawy et al. (2017) Renewable and Sustainable Energy Reviews, 79: 1346-1352はポリ乳酸(PLA)およびその複合物の加水分解について概説する。
【0018】
Motoyama et al. (2007) Polymer Degradation and Stability, 92(7): 1350-1358は、ポリ-L-乳酸からL,L-ラクチドへの脱重合についてのMgO触媒の効果を報告する。
【0019】
WO2015/112098号は、PLA系プラスチックを調製すること、アルコーリシスまたは加水分解によりプラスチック中のポリ乳酸の分解を加速し、低分子量ポリ乳酸を提供すること、および低分子量ポリ乳酸の熱分解により、ラクチドを提供することを含む、ポリ乳酸を有するプラスチック(PLA系プラスチック)からラクチドを製造するためのプロセスを開示する。また、プロセスは、調製ステップ後にPLA系プラスチックのサイズを最小にすること、ならびに、低分子量ポリ乳酸の熱分解後にラクチドを精製することをさらに含む。
【0020】
U.S.7,985,778号は、加水分解処理、次いで分離収集処理を実施することにより、その組成構造においてエステル結合を有する合成樹脂を分解し、再生利用するための方法を開示する。加水分解処理では、分解され、再生利用される合成樹脂を含む物品は、合成樹脂の融点以下の処理温度で、飽和水蒸気圧下で充填された水蒸気雰囲気に曝露される。処理される物品中の合成樹脂は処理温度で生成した水蒸気により加水分解され、分解生成物が生成し、その後、重合され、エステル結合を含む合成樹脂が生成される。分離収集処理は、加水分解処理により生成した分解生成物が液体成分および固体成分に分離され、個別に収集される処理である。
【0021】
U.S.8,614,338号は、そのモノマーまたはその誘導体の1つを再形成するための、ポリ乳酸PLAに基づくポリマーの混合物の立体特異的ケミカルリサイクリングのための方法を開示する。方法は、ポリマーの混合物を、PLA画分を溶解することができる乳酸エステル中の懸濁液に入れ、続いて、第一に、乳酸エステル、PLAおよび他の溶解不純物、第二に、他のポリマーおよび不溶性の不純物の混合物の分離を実施するステップを含む。このように得られたPLAを含む溶液は次いで、オリゴエステルを形成するためにエステル交換による触媒脱重合反応に供せられる。次いで、エステル交換による脱重合反応は、定められた時に中止され、残留乳酸エステルが分離される。このように得られたオリゴエステルは、次いで、ラクチドを生成するために環化反応を受け、これは最終的に、立体特異的に精製され、0.1%~40%のメソ-ラクチド含量を有する精製ラクチドの画分が得られる。
【0022】
U.S.8,431,683号およびU.S.8,481,675号は、PLAの粉砕、圧縮、溶媒中での溶解、不溶汚染ポリマーの除去、アルコーリシス脱重合反応および精製ステップを含む、必ずPLAを含むポリマーブレンドをリサイクルするためのプロセスを開示する。
【0023】
U.S.8,895,778号はポリエステル、例えば、使用済みポリ乳酸の脱重合を開示する。超音波に誘導される内破を使用して、脱重合を促進することができる。使用済みPLAを、懸濁媒質としてのメタノールに、脱重合触媒としての炭酸カリウムおよび水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の有機もしくはイオン塩の存在下で曝露し、高品質乳酸モノマーを高収率で提供した。
【0024】
U.S.2018/0051156号は、ポリマー(例えば、加水分解性結合を含むもの)の脱重合を増強/加速するための方法を開示し、方法は一般に、加水分解性結合を含むポリマーを溶媒およびアルコールと接触させ、ポリマーが実質的に溶解されているポリマー混合物を与えることを含み、接触は、ポリマー混合物の沸点以下の温度で実施される。得られた、脱重合されたポリマーはそこから(例えば、モノマーおよび/またはオリゴマーを含む)分離することができる。そのような方法は、比較的穏やかな温度および圧力条件下で実施することができる。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリ(乳酸)である。
【0025】
PLAのコスト効率の良いケミカルリサイクリング、および、加水分解されたPLAの既存のLA/PLA生成プロセスとの統合の成功が、必要とされたままである。
【0026】
特に有機廃棄物からの乳酸生成の収率を改善することもまた、必要とされたままである。
【発明の概要】
【0027】
本発明は、有機廃棄物およびPLA廃棄物のリサイクリングの組み合わせにより、鏡像異性的に純粋な乳酸塩、特にL-乳酸塩を非常に効率的に生成するための方法およびシステムを提供する。より特定的には、本発明は有機廃棄物の乳酸発酵によるL-乳酸モノマーの生成を、PLAのその構成モノマー(L-および任意でD-乳酸モノマー)への化学加水分解と統合させる。本明細書で開示されるように、発酵により生成されたL-乳酸モノマーおよびPLAの化学加水分解により生成された乳酸モノマーは合わせられ、単一下流精製および回収プロセスで一緒に精製され、純粋L-乳酸塩が得られる。いくつかの実施形態では、PLA加水分解から生じる乳酸モノマーは、発酵により生成されたL-乳酸モノマーと発酵が完了した後に合わせられる。あるいは、PLA加水分解により生成された乳酸モノマーは、L-乳酸モノマーが、有機廃棄物の発酵により生成される乳酸生成反応器に補充され、その後、補充された乳酸モノマーおよび新たに生成されたL-乳酸モノマーは単一精製プロセスに供せられ、純粋L-乳酸塩が得られる。精製L-乳酸塩は次いで、酸性化してL-乳酸にすることができ、新規PLAの生成において使用することができる。
【0028】
本明細書で開示されるように、乳酸発酵は発酵中pHを調整するアルカリ化合物の存在下で実施され、L-乳酸モノマーおよび対イオンを含む発酵ブロスが得られる。PLA加水分解は金属酸化物または水酸化物を使用して実施され、乳酸モノマー(L-および任意でD-)および対イオンを含む加水分解スラリーが得られる。本発明による、発酵中に使用されるアルカリ化合物ならびにPLA加水分解のために使用される金属酸化物または水酸化物は、L-乳酸モノマーおよび対イオンを生成させ、それは、同じか、または異なっていてもよく、各可能性は別個の実施形態を表す。同じ対イオンを使用する場合、L-乳酸モノマーおよび対イオンは合わせることができ、一緒に精製され、純粋乳酸塩が得られる。異なる対イオンを使用する場合、対イオンの少なくとも1つは交換することができ、よって同じ対イオンが得られ、それはL-乳酸モノマーと一緒に、その後の複合精製に供せられ得る。いくつかの実施形態では、発酵中に使用されるアルカリ化合物およびPLA加水分解のために使用される金属酸化物または水酸化物は同じ化合物であり、すなわち、同じ化合物がPLA加水分解および発酵槽におけるpH調整の両方のために使用される。例えば、水酸化マグネシウムを、PLA加水分解のための水酸化物として、かつ、発酵中のpH調整のためのアルカリ化合物として使用することができ、加水分解スラリーおよび発酵ブロスの両方において乳酸モノマーおよびマグネシウムイオンが得られ、これは乳酸マグネシウムとして回収することができる。他の実施形態では、化合物は異なるが、同じ対イオンを生成させる。例えば、水酸化マグネシウムは、PLA加水分解のための水酸化物として使用することができ、炭酸マグネシウムは発酵中のpH調整のためのアルカリ化合物として使用することができ、加水分解スラリーおよび発酵ブロスの両方において乳酸モノマーおよびマグネシウムイオンが得られ、これは乳酸マグネシウムとして回収することができる。さらに他の実施形態では、化合物は異なるが、対イオンの1つは交換され、その後の精製のために他のものと同じ対イオンが生成される。例えば、水酸化ナトリウムは、PLA加水分解のための水酸化物として使用することができ、水酸化マグネシウムは発酵中のpH調整のためのアルカリ化合物として使用することができる。次いで、加水分解スラリー中のナトリウムイオンはマグネシウムイオンと交換することができ、よって、加水分解スラリーおよび発酵ブロスの両方において乳酸モノマーおよびマグネシウムイオンが得られ、これは乳酸マグネシウム塩として回収することができる。さらなる実施形態では、両方の対イオンが交換され、その後の精製のための同じ対イオンが生成される。
【0029】
本発明は便宜的に、2つのプロセスの生成物、すなわち、i)PLAから加水分解された乳酸塩およびii)有機廃棄物の発酵により生成された乳酸塩を、L-乳酸塩を回収するための単一下流精製プロセスに統合し、よって資本支出(CAPEX)および操作支出(OPEX)の両方が節約される。
【0030】
加えて、本発明は有機廃棄物からのL-乳酸生成の収率を改善する。混合食品廃棄物などの有機廃棄物は、炭水化物含量の観点から高い変動性により特徴付けられ、その組成はバッチ間で変動し、いくつかのバッチは、低炭水化物含量を有する他のものに比べて、炭水化物に富む可能性がある。よって、有機廃棄物に基づく乳酸発酵プロセスは、バッチ間で変動する収率という結果になる可能性があり、場合によっては、乳酸の非常に低い収率が得られる。PLAから加水分解された乳酸および有機廃棄物の発酵により生成された乳酸の統合により、1発酵サイクルあたりに得られる乳酸の量が増加し、よって収率が改善し、乳酸発酵プロセスの再現性が促進される。
【0031】
そのため、本発明のシステムおよび方法は、コスト効率が良く、L-乳酸生成の収率が改善された、PLAおよび有機廃棄物のリサイクリングを提供する。
【0032】
第1の態様によれば、ポリ乳酸(PLA)および有機廃棄物のリサイクリングの組み合わせからL-乳酸塩を生成するための方法が提供され、方法は下記のステップを含む:
(a)PLA廃棄物を金属酸化物または水酸化物を用いて加水分解し、L-乳酸モノマーおよび第1の対イオンを含むPLA加水分解スラリーを得るステップ;
(b)有機廃棄物を、乳酸産生微生物を用いて発酵槽においてアルカリ化合物の存在下で発酵させ、L-乳酸モノマーおよび第2の対イオンを含む発酵ブロスを得るステップであって、
第1および第2の対イオンは同じであり;または、第1および第2の対イオンの少なくとも1つはイオン交換に供せられ、よって、同じである第1および第2の対イオンが得られるステップ;
(c)任意でステップ(a)のPLA加水分解スラリー、ステップ(b)の発酵ブロス、または、ステップ(a)のPLA加水分解スラリーおよびステップ(b)の発酵ブロスを含む混合物を、D-乳酸分解酵素またはD-乳酸利用微生物と接触させ、D-乳酸モノマーを排除し、よってL-乳酸モノマーを得るステップ;ならびに
(d)ステップ(a)のPLA加水分解スラリーおよびステップ(b)の発酵ブロスを含む混合物またはステップ(c)のL-乳酸モノマーを精製し、よって、L-乳酸塩を得るステップ。
【0033】
1つの実施形態では、ステップ(a)およびステップ(b)は任意の順序で、または同時に実施され、各可能性は別個の実施形態を表す。
【0034】
いくつかの実施形態では、PLA加水分解スラリーは、ステップ(b)の乳酸発酵槽に、発酵中に徐々に添加される。これらの実施形態によれば、ステップ(a)のPLA加水分解スラリーおよびステップ(b)の発酵ブロスを含む混合物は、PLA加水分解スラリーを乳酸発酵槽に、発酵中に徐々に添加することにより得られる。いくつかの実施形態では、PLA加水分解スラリーがステップ(b)の乳酸発酵槽に添加される場合、ステップ(a)は金属酸化物または水酸化物を過剰に含むことができ、よって、アルカリ化合物をステップ(b)において乳酸発酵槽に、発酵中のpH調整のために添加する必要性がなくなる。
【0035】
便宜的に、乳酸発酵により生成されたL-乳酸モノマーをPLA加水分解から生じるL-乳酸モノマーと共に、単一下流精製プロセスに統合して、精製L-乳酸塩を得ると、L-乳酸生成の全収率が増加し、これは、乳酸の高い力価に到達することができない低炭水化物含量を有する有機廃棄物に特に有益である。1つの実施形態では、L-乳酸生成の全収率は10%以上だけ増加する。別の実施形態では、L-乳酸生成の全収率は50%以上だけ増加する。さらに別の実施形態では、L-乳酸生成の全収率は100%以上だけ増加する。
【0036】
ある一定の実施形態では、乳酸塩はL-乳酸マグネシウムである。特定の実施形態では、乳酸塩は結晶性L-乳酸マグネシウムである。特定の実施形態では、乳酸塩は結晶性L-乳酸マグネシウム二水和物である。
【0037】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)の金属酸化物または水酸化物およびステップ(b)のアルカリ化合物は同じ化合物である。
【0038】
様々な実施形態では、ステップ(b)のアルカリ化合物は金属酸化物、炭酸塩または水酸化物である。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0039】
ある一定の実施形態では、金属酸化物はMgO、CaOおよびその混合物または組み合わせの少なくとも1つを含む。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0040】
他の実施形態では、炭酸塩はCaCO3、MgCO3およびその混合物または組み合わせの少なくとも1つを含む。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0041】
ある一定の実施形態では、水酸化物はNaOH、KOH、NH4OH、Ca(OH)2、Mg(OH)2およびその混合物または組み合わせの少なくとも1つを含む。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0042】
1つの特定の実施形態では、ステップ(a)の水酸化物はNaOHであり、ステップ(b)のアルカリ化合物はMg(OH)2である。別の特定の実施形態では、ステップ(a)の水酸化物およびステップ(b)のアルカリ化合物はMg(OH)2である。
【0043】
様々な実施形態では、ステップ(a)における加水分解は約50℃~約90℃の範囲の高温、例えば、約60℃~約90℃、約70℃~約90℃、約50℃~約80℃、および約50℃~約75℃の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の温度で実施される。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0044】
さらなる実施形態では、ステップ(a)における加水分解は約1~約12時間の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の期間の間実施される。他の実施形態では、ステップ(a)における加水分解は約12~約36時間の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の期間の間実施される。
【0045】
追加の実施形態では、ステップ(a)は約5~約15wt%の濃度のMg(OH)2を用いてPLA廃棄物を加水分解し、L-乳酸モノマーおよびマグネシウムイオンを含むPLA加水分解スラリーを得ることを含む。
【0046】
他の実施形態では、ステップ(a)における加水分解により、L-乳酸モノマーおよび第1の対イオンが結晶形態で得られる。さらに他の実施形態では、ステップ(b)における発酵により、L-乳酸モノマーおよび第2の対イオンが結晶形態で得られる。
【0047】
追加の実施形態では、L-乳酸塩を生成するための方法は、ステップ(a)前にPLA廃棄物の前処理をさらに含む。特定の実施形態では、前処理は粉砕、チッピング、寸断、ミリング、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される機械的前処理を含む。各可能性は別個の実施形態を表す。他の特定の実施形態では、前処理は押出前処理を含む。
【0048】
さらなる実施形態では、L-乳酸塩を生成するための方法は、ステップ(a)で得られたPLA加水分解スラリーを固液分離に供することをさらに含む。固液分離は、非加水分解PLA廃棄物または不純物、例えば、他のポリマー、不活性材料および/または食品廃棄物の、スラリーからの除去を提供することが企図される。
【0049】
本発明によるPLA廃棄物は非PLA不純物および汚染物質を含み得る。いくつかの実施形態では、PLA廃棄物はステップ(a)前に選別され、前記廃棄物中のPLAの量が、非PLA不純物および汚染物質に対して増加される。便宜的に、本発明によるPLAリサイクリングはPLA廃棄物中に存在する不純物および汚染物質(うまく選別できない汚染物質を含む)に不応性である。本明細書で開示されるように、アルカリ加水分解後のPLA廃棄物は乳酸発酵ブロスの下流精製プロセスに統合され、下流精製プロセスは、発酵のための基質として使用された有機廃棄物およびPLA廃棄物の両方に由来する汚染物質を同時に排除する。
【0050】
ある一定の実施形態では、PLA廃棄物はポリL-乳酸(PLLA)およびポリD-乳酸(PDLA)の両方を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、有機廃棄物は内在性D-乳酸、L-乳酸またはそれらの組み合わせを含む。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0052】
ある一定の実施形態では、D-乳酸が形成される、および/または存在する場合、ステップ(a)のPLA加水分解スラリー、ステップ(b)の発酵ブロス、または、ステップ(a)のPLA加水分解スラリーおよびステップ(b)の発酵ブロスを含む混合物はD-乳酸分解酵素またはD-乳酸利用微生物と接触させられ、D-乳酸モノマーが排除され、よってL-乳酸モノマーが得られる。特定の実施形態では、ステップ(c)におけるD-乳酸分解酵素はD-乳酸オキシダーゼである。
【0053】
いくつかの実施形態では、有機廃棄物は、食品廃棄物、都市廃棄物、農業廃棄物、植物材料およびその混合物または組み合わせからなる群より選択される。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0054】
他の実施形態では、得られたL-乳酸塩は結晶化、再結晶、蒸留、分配、シリカゲルクロマトグラフィー、分取HPLC、およびそれらの組み合わせの少なくとも1つにより精製される。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0055】
さらなる実施形態では、得られたL-乳酸塩は塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、およびそれらの組み合わせの少なくとも1つにより酸性化され、L-乳酸が形成する。各可能性は別個の実施形態を表す。特定の実施形態では、L-乳酸はその後のポリ乳酸形成のために使用される。
【0056】
第2の態様によれば、ポリ乳酸(PLA)廃棄物のリサイクリングによりL-乳酸マグネシウム塩を生成するための方法が提供され、方法は下記のステップを含む:
(a)PLA廃棄物を水酸化ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択される塩基を用いて加水分解し、L-乳酸モノマーおよびナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択される対イオンを含むPLA加水分解スラリーを得るステップ;
(b)任意で、PLA加水分解スラリーを、酸を用いて中和すること、および、非加水分解PLA廃棄物を除去することの少なくとも1つを実施するステップ;ならびに
(c)マグネシウム塩をステップ(a)または(b)のPLA加水分解スラリーに添加し、よって、L-乳酸マグネシウム塩を沈殿させるステップ。
【0057】
いくつかの実施形態では、塩基は水酸化ナトリウムである。
【0058】
他の実施形態では、ステップ(a)における加水分解は約50℃~約90℃の範囲の高温、例えば、約60℃~約90℃、約70℃~約90℃、約50℃~約80℃、および約50℃~約75℃の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の温度で実施される。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0059】
さらに他の実施形態では、ステップ(a)における加水分解は約1~約24時間の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の期間の間実施される。他の実施形態では、ステップ(a)における加水分解は約1~約12時間の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の期間の間実施される。
【0060】
ある一定の実施形態では、塩基はPLA廃棄物を超過している。他の実施形態では、PLA廃棄物は塩基を超過している。
【0061】
さらなる実施形態では、ステップ(b)が実施され、酸は塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、およびそれらの組み合わせから選択される。各可能性は別個の実施形態を表す。1つの実施形態では、ステップ(b)が実施され、酸は硫酸である。
【0062】
様々な実施形態では、ステップ(b)が実施され、非加水分解PLA廃棄物を除去することは、固液分離を含む。
【0063】
追加の実施形態では、ステップ(c)におけるマグネシウム塩は固体形態で添加される。他の実施形態では、ステップ(c)におけるマグネシウム塩は水溶液として添加される。さらなる実施形態では、ステップ(c)におけるマグネシウム塩は徐々に添加される。特定の実施形態では、ステップ(c)におけるマグネシウム塩は硫酸マグネシウムである。
【0064】
追加の実施形態では、得られたL-乳酸マグネシウム塩はさらにその後の精製に供せられる。他の実施形態では、L-乳酸マグネシウム塩は有機廃棄物の発酵に由来するL-乳酸マグネシウム塩と合わせられ、続いて、その後の精製を受ける。
【0065】
本発明の他の目的、特徴および利点は下記記載、実施例および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】本発明のある一定の実施形態による乳酸生成およびPLAリサイクリングの組み合わせの略図である。
【
図2】本発明の追加の実施形態による乳酸生成およびPLAリサイクリングの組み合わせの略図であり、Mg(OH)
2が、PLAアルカリ加水分解剤として、かつ、乳酸発酵におけるpH調整アルカリ化合物として使用される。
【
図3】本発明の追加の実施形態による乳酸生成およびPLAリサイクリングの組み合わせの略図であり、NH
4OHが、PLAアルカリ加水分解剤として、かつ、乳酸発酵におけるpH調整アルカリ化合物として使用され、イオン交換が実施され、Mg(LA)
2が得られ、これは回収して、精製することができる。
【
図4】水酸化マグネシウムを使用した薄膜PLAバッグのアルカリ熱加水分解を示す。乳酸収率対Mg(OH)
2wt%。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明は、鏡像異性的に純粋なL-乳酸塩を高収率で得るための、乳酸発酵およびポリ乳酸(PLA)リサイクリングの組み合わせのための方法およびシステムを提供する。
【0068】
提供されるシステムおよび方法は容易にPLA廃棄物の分解を誘導し、その構成モノマー-乳酸(LA)に戻し、LAモノマーをPLA生成プロセスに効率的にリサイクルする。PLAが生分解性バイオプラスチックと考えられるとしても、その加水分解速度は、水溶液またはアルコール溶液中で比較的低い。加えて、「開放環境」において起こるPLA分解は廃棄物と考えることができ、というのも、生成される乳酸は再利用されないからである。本発明はPLA廃棄物の加速された分解を提供するだけでなく、PLAのコスト効率の良い持続可能なリサイクリングを提供し、というのも、加水分解から得られたLAモノマーは乳酸塩の形態で提供され、これは、次いで有機廃棄物に由来する乳酸発酵ブロスの下流精製処理に合わせられ、統合される。
【0069】
本明細書では、「乳酸」という用語は、化学式CH3CH(OH)CO2Hを有するヒドロキシカルボン酸を示す。乳酸または乳酸塩(非プロトン化乳酸)という用語は、乳酸の立体異性体:L-乳酸/L-乳酸塩、D-乳酸/D-乳酸塩、またはその組み合わせを示すことができる。
【0070】
ほとんどの産業用途では、好適な特性を有するPLAを生成するために高純度のL-乳酸モノマーが必要とされる。よって、本発明の方法およびシステムは、特に、L-乳酸塩を高収率で生成するためのプロセスを対象とし、それらは、次いで、再利用に好適なL-乳酸に変換され得る。
【0071】
特に、本発明は、PLA廃棄物および有機廃棄物のリサイクリングの組み合わせを提供する。本明細書で提供される原理によれば、PLAリサイクリングはPLA廃棄物の加水分解を介して実施され、有機廃棄物リサイクリングは乳酸発酵を介して実施され、どちらのプロセスでも、乳酸モノマーおよび同じ対イオンが得られる。得られた対イオンが異なる場合、加水分解または発酵生成物の少なくとも1つはイオン交換処理ステップに供することができ、同じ対イオンが得られることが理解されるべきである。PLAの加水分解および乳酸発酵から得られた生成物は合わせられ、一緒に処理され、純粋乳酸塩、好ましくはL-乳酸塩が高収率で得られる。L-乳酸塩は次いで、精製することができ、高度に精製されたL-乳酸塩が改善された収率で得られる。いくつかの実施形態では、回収されたL-乳酸塩は乳酸に変換させ、新規PLAの生成のために使用することができる。
【0072】
発明の少なくとも1つの実施形態について詳細に説明する前に、発明はその適用において、下記説明において明記され、または、実施例により例示される細部に制限されないことが理解されるべきである。発明または他の実施形態は様々な様式で実行され、実施することができる。また、本明細書で使用される表現および専門用語は説明目的のためのものであり、制限するものと見なすべきではないことが理解されるべきである。
【0073】
以下、図面について説明すると、
図1は本発明の実施形態によるL-乳酸生成およびPLAリサイクリングの組み合わせの総括を提供する。都市廃棄物、食品廃棄物および農業廃棄物などの有機廃棄物はL-乳酸産生微生物によるL-乳酸発酵のための基質として機能する。有機廃棄物は生物学的プロセスを受け、L-乳酸が生成する。生物学的プロセスは、廃棄物中に存在する多糖を分解し、発酵に好適な可溶性還元糖を放出させるために、多糖-分解酵素(例えばアミラーゼ、セルラーゼ)を使用する廃棄物の酵素消化を含む。生物学的プロセスはさらに、L-乳酸産生微生物によるL-乳酸発酵を含む。L-乳酸の形成のために、pHの内因性低下が起こる。よって、発酵プロセスは発酵中のpHを調整するためにアルカリ化合物の存在下で実施される。アルカリ化合物はpHを中和し、説明のために
図1ではX
2+として表される対イオンが形成される。使用されるアルカリ化合物は一価カチオンを含むことができ、よって、発酵ブロス中で一価対イオンが得られることが理解されるべきである。酵素消化および乳酸発酵は同時に実施することができる。あるいは、酵素消化は、乳酸発酵前に、発酵が実施される同じ反応器内でまたは異なる反応器内で実施することができる。各可能性は別個の実施形態を表す。生物学的プロセスおよび/またはPLA加水分解はさらに、D-乳酸排除を含むことができる。D-乳酸排除は、有機廃棄物中に存在するD-乳酸を排除するために発酵の終わりに、PLA廃棄物中に存在する、または、加水分解中に生成したD-乳酸塩を排除するためにPLA加水分解の終わりに、または発酵ブロスをPLA加水分解スラリーと混合した後に、実施することができる。各可能性は別個の実施形態を表す。D-乳酸排除は、発酵および加水分解が実施された同じ反応器内で、または異なる反応器内で実施することができる。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0074】
本発明によるPLA廃棄物は任意の捨てられたPLA製品、例えば、都市固形廃棄物(=MSW)またはPLA製品の生成から残っている工業/商業廃棄物/スクラップから分離された捨てられたPLAを含む。例えば、PLA廃棄物は食品業界、医療装置、自動車業界、家具業界、および航空業界から得られ得る。各可能性は別個の実施形態を表す。PLA廃棄物はアルカリ加水分解を介する分解を受ける。説明のために
図1ではX(OH)
2として表される金属酸化物または水酸化物はPLA廃棄物と混合される。使用される金属酸化物または水酸化物は一価カチオンを含むことができ、よって、加水分解スラリー中に、L-乳酸モノマーと共に一価対イオンが得られることが理解されるべきである。PLA廃棄物がPLLAおよびPDLAを含む場合、加水分解スラリーはさらに、D-乳酸モノマーを含み得る。いくつかの実施形態では、加水分解スラリーは発酵が完了した後乳酸発酵ブロスと混合される。他の実施形態では、加水分解スラリーは過剰の金属酸化物または水酸化物を含み、よって、アルカリ性pHを与え、発酵中、乳酸発酵プロセスに徐々に添加される。アルカリ性スラリーは発酵ブロスのpHを中和し、よって、pH調整剤を別に添加する必要性がなくなる。次いで、PLA加水分解スラリーと発酵ブロスの混合物は処理され、精製L-LA塩が得られる。次いで、L-LA塩は再酸化され、重合され、PLA製品の生成において有用なPLAが形成され得、よって、PLA分解および合成のサイクル、ならびに有機廃棄物の乳酸へのリサイクリングが完了する。
【0075】
図2は本発明のいくつかの実施形態による複合プロセスを示し、Mg(OH)
2が、PLAアルカリ加水分解剤および乳酸発酵におけるpH調整アルカリ化合物の両方として使用される。PLA廃棄物はMg(OH)
2を使用する化学分解を受け、Mg(LA)
2が得られる。有機廃棄物はpH中和のためのMg(OH)
2の存在下、L-乳酸産生微生物による発酵を受け、Mg(L-LA)
2が得られる。PLA加水分解から得られたMg(LA)
2および発酵により生成されたMg(LA)
2は合わせられ、酸性化に供せられ、L-乳酸(LAH)およびMg(OH)
2が得られる。LAHは新規PLAの合成において使用することができる。Mg(OH)
2はさらなる乳酸発酵およびPLA加水分解プロセスにおいて、pH調整および/またはPLA加水分解のために再利用することができる。
【0076】
図3は本発明の追加の実施形態による複合プロセスを示し、NH
4OHがPLAアルカリ加水分解剤および乳酸発酵におけるpH調整アルカリ化合物として使用され、イオン交換が実施され、Mg(LA)
2が得られ、これは、回収して、精製することができる。PLA廃棄物はNH
4OHを使用する化学分解を受け、NH
4LAが得られる。有機廃棄物はpH中和のためのNH
4OHの存在下で、L-乳酸産生微生物による発酵を受け、NH
4(L-LA)が得られる。PLA加水分解から得られたNH
4LAおよび発酵により生成されたNH
4LAは合わせられ、Mg(OH)
2を用いたイオン交換に供せられ、Mg(LA)
2およびNH
4OHが得られる。Mg(LA)
2は回収、精製および酸性化することができ、LAHが得られ、これは新規PLAの合成において使用することができる。NH
4OHはさらなる乳酸発酵およびPLA加水分解プロセスにおいて、pH調整および/またはPLA加水分解のために再利用することができる。あるいは、NH
4OHはアンモニアガスの蒸発により廃棄することができる。
【0077】
本発明のある一定の例示的な実施形態によれば、プロセスは、NaOHをPLAアルカリ加水分解剤として、および、Mg(OH)2を乳酸発酵におけるpH調整アルカリ化合物として使用して実施される。イオン交換が加水分解スラリーに対して実施され、Mg(LA)2が得られ、これは、次いで発酵ブロスのMg(LA)2と合わせられる。Mg(LA)2は回収、精製および酸性化することができ、その後のPLA形成のためのLAHが得られる。
【0078】
本発明の原理によれば、PLA加水分解において存在する対イオン(第1の対イオン)および/または発酵ブロス中に存在する対イオン(第2の対イオン)は同じ対イオンであるか、または、交換されて同じ対イオンになる。加水分解および発酵中に同じ対イオンが生成される場合であっても、本発明は第1および第2の対イオンが交換され、望ましい乳酸塩が得られる実施形態を包含する。イオン交換は当技術分野で知られているように、例えばカチオン交換樹脂を使用することにより実施することができる。カチオン交換樹脂は負電荷を持つポリマーであり、これは、カチオンの選択性の違いに基づき、関連カチオンを自由に交換することができる。本発明の範囲内の好適なカチオン交換樹脂としては、商業的供給源から得られたもの、例えば、DOWEX(商標)カチオン交換樹脂が挙げられるが、それらに限定されない。他の実施形態では、イオン交換は、好適な酸、例えば、限定はされないが、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、およびそれらの組み合わせを用いて乳酸塩を中和し、続いて、得られた乳酸を所望の対イオンを含む塩基または塩に曝露することにより実施することができる。好適な塩基としては水酸化ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムが挙げられるが、それらに限定されない。各可能性は別個の実施形態を表す。MgCl2、MgCO3、MgSO4、Mg3(PO4)2などから選択されるマグネシウム塩の使用が現在のところ好ましく、乳酸マグネシウムが得られる。各可能性は別個の実施形態を表す。本発明に包含されるさらなる実施形態は金属酸化物または水酸化物を超えるPLAの使用を含む。これらの実施形態によれば、PLA分解後、過剰のPLAは加水分解スラリーから分離され、次いで、加水分解スラリーは、以上で記載される塩を使用するイオン交換に供せられる。便宜的に、PLAを過剰に使用する場合、加水分解後の酸による乳酸塩の中和は必要とされない。
【0079】
本発明の原理によれば、PLA廃棄物は、非PLA材料と比べて廃棄物中のPLAの相対量を増加させるために、本発明の方法において使用される前に選別され得る。一般に、3つの型のPLAポリマーが存在する:ホモポリマー、コポリマー、およびステレオコンプレックス。ホモポリマーは100%L-乳酸(PLLA)または100%D-乳酸(PDLA)から構成される。PLAの一般的な市販のコポリマーは、主にL-乳酸から、少量のD-乳酸と共に構成されるPDLLA(ポリ(D-L-)乳酸)である。ステレオコンプレックスPLA(sc-PLA)もまた使用可能であり、これはPLLAおよびPDLA鎖から構成され、PLLAおよびPDLA鎖は一緒に充填され、PLLAよりも改善された熱および機械的特性を有する超構造が形成される。
【0080】
よって、ほとんどの市販のPLAはL-乳酸を主成分として含むが、また、D-乳酸も含み、そのため、PLAの化学加水分解後に、どちらのアイソフォームも加水分解スラリー中に存在する。加えて、加水分解中のラセミ化が未知の、コントロール不良の量のD-乳酸の一因となり得る。
【0081】
いずれの理論または作用機序にも縛られないが、PLAの加水分解は典型的には、表面浸食を介して起こり、この場合、エステル基は主に捨てられたPLAの表面上で加水分解され、1つまたは複数の浸食前面を介してバルクに進行する。表面加水分解は典型的には、結合加水分解の動力学が水拡散より迅速である場合に起こる。したがって、表面積を増加させ、これにより、加水分解プロセスを加速させることが望ましい。表面積を増加させる好適な様式としては、機械的前処理、例えば、限定はされないが、粉砕、チッピング、寸断、およびミリングが挙げられる。各可能性は別個の実施形態を表す。さらなる実施形態では、表面積は、化学加水分解への前処理として酵素加水分解を使用して増加させることができる。ある一定の態様および実施形態では、捨てられたPLAの表面積は、押出前処理を用いて、任意で、その後、アルカリ加水分解を用いて増加させることができる。押出前処理は熱、圧縮力、およびせん断力の組み合わせを使用し、押出機を通過する材料の物理破壊および化学修飾が引き起こされる。アルカリ加水分解は押出と組み合わせることができ、プロセスの効率が改善される。使用することができる押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、例えば、共回転、逆回転、噛合、および非噛合押出機、多軸押出機、加熱シリンダおよび供給物を押出すためのピストンを使用するラム押出機、加熱ギアポンプを使用するギア-ポンプ押出機、およびコンベア押出機が挙げられるが、それらに限定されない。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0082】
前記前処理(例えば押出)はまた、本発明のプロセスの一部として、プロセスの1つ以上のステップ後に連続して、プロセスの1つ以上のステップと同時に、またはそれらの組み合わせで、使用され得ることが理解されるべきである。各可能性は別個の実施形態を表す。全プロセス後に1つ以上の前記前処理が続く実施形態も同様に企図される。
【0083】
いくつかの態様および実施形態では、前処理されたPLAは、アルカリ加水分解を誘導するための金属酸化物または水酸化物を含むアルカリ性スラリー中に送り込まれる。本発明の範囲内の好適な金属酸化物としてはMgO、CaO、およびその組み合わせの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。各可能性は別個の実施形態を表す。本発明の範囲内の使用に好適な水酸化物としては、NaOH、KOH、NH4OH、Ca(OH)2、Mg(OH)2、およびその混合物または組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。各可能性は別個の実施形態を表す。水酸化マグネシウムの使用が現在のところ好ましく、よって、乳酸マグネシウムが得られる。水酸化マグネシウムが加水分解のために使用される場合、それは典型的には、約2~約15wt%(特定の範囲内の各値が含まれる)の濃度で存在する。加えて好ましい実施形態は加水分解のための水酸化ナトリウムの使用を含み、よって、乳酸ナトリウムが得られ、これは、次いで、例えばMgCl2、MgCO3、MgSO4、Mg3(PO4)2、Mg(OH)2などを使用するイオン交換に供すことができ、乳酸マグネシウムが得られる。水酸化ナトリウムが加水分解のために使用される場合、それは典型的には、1N~約10N(特定の範囲内の各値が含まれる)の濃度で存在する。
【0084】
任意で、PLA加水分解を加速するのに好適な少なくとも1つの添加物もまた、金属酸化物または水酸化物と一緒に使用することができる。PLA加水分解を加速するために使用することができる添加物としては、下記が挙げられるが、それらに限定されない:相間移動触媒、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化メチルトリカプリルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、および塩化メチルトリオクチルアンモニウムから選択される四級アンモニウム塩(各可能性は別個の実施形態を表す);またはテトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、およびヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロミドから選択される四級ホスホニウム塩(各可能性は別個の実施形態を表す)。PLA加水分解を加速するために使用することができる追加の添加物としては、酵素触媒、例えばリパーゼが挙げられる。
【0085】
PLA廃棄物を加水分解するステップはさらに、以上で詳述されるアルカリ性化学加水分解の代わりに、または、これに加えて熱加水分解の使用を含み得る。典型的には、熱加水分解は約50℃~約90℃の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の高温で実施される。典型的には、約60℃~約90℃、約70℃~約90℃、約50℃~約80℃、約50℃~約75℃の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の温度が使用され得る。各可能性は別個の実施形態を表す。熱加水分解の期間は約1~約36時間の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の期間の間実施することができる。例示的な期間としては、約1~約12時間、約12時間~約36時間およびそれらの間の任意の期間が挙げられるが、それらに限定されない。典型的には、熱加水分解は約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、または約24時間実施される。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0086】
加水分解できなかったPLA廃棄物の粒子が存在する場合、それらは加水分解スラリーから、例えば固液分離技術、例えば、濾過またはデカンテーションにより分離することができる。各可能性は別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、乳酸塩の形態の乳酸モノマーは加水分解ステップの終わりに結晶化される。例えば、PLA加水分解スラリーは蒸発および/または冷却に供せられ得、乳酸塩の結晶が得られる。結晶は収集し、本明細書で記載される乳酸生成プロセスに統合させることができる。
【0087】
本発明の原理によれば、本明細書では、ポリ乳酸(PLA)廃棄物のリサイクリングによりL-乳酸マグネシウム塩を生成するための方法がさらに提供される。方法は便宜的に、より低い温度、およびより短い期間(例えば、12時間未満、10時間未満、または実に5時間未満)でのPLA化学加水分解を提供し、さらに、より高密度の、よりコンパクトなPLA廃棄物の分解を提供する。PLA廃棄物(本明細書で記載されるように前処理することができる)は水酸化ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択される塩基を用いて加水分解され、L-乳酸モノマーおよびナトリウム、カリウムおよびアンモニウムから選択される対イオンを含むPLA加水分解スラリーが得られる。各可能性は別個の実施形態を表す。現在のところ、塩基として水酸化ナトリウムの使用が好ましく、よって、L-乳酸およびナトリウムイオンを含むPLA加水分解スラリーが得られる。加水分解は典型的には、約50℃~約90℃の範囲の高温で約1~約36時間、好ましくは約1~約24時間の期間(特定の範囲内の各値が含まれる)の間実施される。例示的な温度範囲としては、約60℃~約90℃、約70℃~約90℃、約50℃~約80℃、および約50℃~約75℃(特定の範囲内の各値が含まれる)が挙げられるが、それらに限定されない。各可能性は別個の実施形態を表す。加水分解の例示的な期間としては、約1~約5時間、約1~約10時間、約1~約12時間、約1~約24時間、約12~約24時間および約12~約36時間(特定の範囲内の各値が含まれる)が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、塩基はPLA廃棄物を超過しており、よって、約10~約14のpH範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)のPLAスラリーが得られる。他の実施形態では、PLA廃棄物は塩基を超過しており、よって、約7~約10のpH範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)のPLAスラリーが得られる。加水分解スラリーは次いで、限定はされないが、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、およびそれらの組み合わせなどの酸を使用する中和に供せられ得る。各可能性は別個の実施形態を表す。加えてまたはその代わりに、加水分解スラリーは、例えば濾過またはデカンテーションを使用する、例えば固液分離技術による、非加水分解PLAの除去に供せられ得る。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0088】
次いで、マグネシウム塩が添加され、L-乳酸マグネシウムの沈殿が誘導される。マグネシウム塩は固体形態でまたは水溶液として添加することができる。各可能性は別個の実施形態を表す。現在のところ、約50~約500g/Lの範囲の濃度(特定の範囲内の各値が含まれる)の水溶液としてのマグネシウム塩の添加が好ましい。いくつかの実施形態では、マグネシウム塩水溶液は、PLAスラリーに混合しながら徐々に添加される。本発明の範囲内のマグネシウム塩としては、MgCl2、MgCO3、MgSO4、Mg3(PO4)2、Mg(OH)2などが挙げられるが、それらに限定されない。各可能性は別個の実施形態を表す。現在のところ、硫酸マグネシウム(例えば硫酸マグネシウム七水和物)の添加が好ましい。このように得られたL-乳酸マグネシウム塩はさらに、乳酸発酵由来のL-乳酸マグネシウム塩と共に、またはなしで、下流精製プロセスに供せられ得る。
【0089】
本発明による乳酸発酵のための炭素源は有機廃棄物に由来する。本発明のある一定の実施形態による使用に好適な有機廃棄物としては、食品廃棄物、都市廃棄物の有機画分、農業廃棄物、植物材料、およびその混合物または組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。各可能性は別個の実施形態を表す。本発明による食品廃棄物は植物起源の食品廃棄物を包含する。本発明による食品廃棄物は家庭食品廃棄物、市販食品廃棄物、および産業食品廃棄物を包含する。各可能性は別個の実施形態を表す。有機食品廃棄物は、野菜および果実残余物、植物、調理済み食品、タンパク質残余物、屠殺場廃棄物、およびそれらの組み合わせを起源とする可能性がある。各可能性は別個の実施形態を表す。産業有機食品廃棄物は工場廃棄物、例えば、副産物、不合格品、市場返却物または食べられない食品部分の切り取り物(例えば、皮)を含み得る。市販有機食品廃棄物は、ショッピングモール、レストラン、スーパーマーケット、などからの廃棄物を含み得る。本発明による植物材料は、農業廃棄物および人造製品、例えば、紙くずを包含する。典型的には、有機廃棄物は、例えば、乳製品における例えば、自然発酵プロセスに起因する内在性D-乳酸、L-乳酸またはL-およびD-乳酸の両方を含む。
【0090】
乳酸発酵は乳酸産生微生物を用いて実施される。「LA産生微生物」は本明細書では、炭水化物発酵の主代謝最終生成物として乳酸を産生する微生物を示す。現在のところ、L-乳酸のみを産生する微生物の使用が好ましい。LA産生微生物は本来L-乳酸のみを産生することができ、または、例えば、望ましくないD-鏡像異性体の合成に関与する1つ以上の酵素をノックアウトすることにより、L-乳酸のみを産生するように遺伝子改変することができる。LA産生微生物としては様々な細菌が挙げられ、例えばラクトバチルス種およびバチルス種、ならびに真菌が含まれる。
【0091】
発酵は典型的には、以上で詳述されるように、アルカリ化合物、例えば、金属酸化物、炭酸塩または水酸化物の存在下で実施される。好適なアルカリ化合物としては、MgO、CaO、CaCO3、MgCO3、NaOH、KOH、NH4OH、Ca(OH)2、Mg(OH)2、およびその混合物または組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。各可能性は別個の実施形態を表す。アルカリ化合物は、発酵ブロスのpHを、典型的には5~7の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の所望の値に調整するために添加される。アルカリ化合物によりさらに、L-乳酸の乳酸塩への中和が得られる。発酵中、発酵槽内のpHは乳酸の生成のために減少し、これは、乳酸産生微生物の生産性に悪影響を及ぼす。マグネシウム-、ナトリウム-、カリウム-、またはカルシウム-水酸化物などの塩基を添加すると、乳酸を中和することによりpHが調整され、よって、乳酸塩の形成が得られる。PLA加水分解スラリーが発酵槽に発酵中に添加される実施形態では、PLA加水分解スラリーは金属酸化物または水酸化物を過剰に含み得る。過剰の金属酸化物または水酸化物は発酵槽内のpHを調整し、よって、発酵中のpHを調整するためにアルカリ化合物を別に添加する必要性がなくなる。
【0092】
発酵ブロスをPLA加水分解スラリーで補うことに起因する追加の利点はL-乳酸生成の全収率の増加であり、これは、低炭水化物含量を有する有機廃棄物に特に有益である。L-乳酸生成の全収率は典型的には、少なくとも10%だけ、好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または実に100%以上だけ増加する。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0093】
典型的には、発酵は、嫌気性または微好気性条件下、バッチ、流加、連続または半連続発酵を使用して実施される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0094】
バッチ発酵では、炭素基質および他の成分が反応器に投入され、発酵が完了すると、生成物が収集される。pH制御のために上述されたアルカリ化合物を除いて、他の材料成分は反応が完了する前に反応に添加されない。種菌サイズは典型的には反応器内の液体体積の約5-10%である。発酵は実質的に一定の温度およびpHで維持され、pHはアルカリ化合物を添加することにより維持される。
【0095】
流加発酵では、基質は連続して、または順次、反応器に供給され、発酵ブロスの除去はない(すなわち、生成物(複数可)は実行の終わりまで反応器内に残ったままである)。一般的な供給方法としては、断続的、一定、パルス供給、および指数関数的供給が挙げられる。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0096】
連続発酵では、基質は反応器に連続して固定速度で添加され、発酵生成物は連続して取り出される。
【0097】
半連続プロセスでは、培養物の一部は周期的に引き出され、新鮮培地が系に添加される。無限に維持することができる流加培養を繰り返すことは、半連続プロセスとも考えられる。
【0098】
乳酸発酵は典型的には、約1-4日またはその間の任意の量、例えば、1-2日、または2-4日、または3-4日の間(特定の範囲内の各値が含まれる)実施される。
【0099】
発酵が完了した後、ブロスは遠心分離により浄化させ、または、フィルタープレスに通過させることができ、固体残渣が発酵液から分離される。濾液は、例えば、ロータリー真空エバポレーターを用いることにより濃縮させることができる。
【0100】
本発明による発酵ブロスは有機廃棄物由来のD-乳酸を含み得る。加えて、分解されたPLA由来の、または加水分解中のラセミ化により形成された、D-乳酸がPLA加水分解スラリー中に存在する可能性がある。D-LAは重合のためのL-LAの生成において望ましくなく、というのも、これにより、より多くのD,D-ラクチドおよびメソ-ラクチドが形成するからであり、これは、PLLA最終製品の品質に悪影響を与える。D-LAが形成される場合、本発明は便宜的にそれを、D-乳酸分解酵素またはD-乳酸利用微生物を、発酵ブロスまたは加水分解スラリーの各々(単独)、またはそれらを合わせた混合物に対して使用することにより排除する。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0101】
現在のところ、D-乳酸分解酵素としてD-乳酸オキシダーゼの使用が好ましい。D-乳酸オキシダーゼは、O2を電子受容体として使用して、D-乳酸のピルビン酸およびH2O2への酸化を触媒する酵素である。酵素は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)をその触媒活性のための補助因子として使用する。本発明によるD-乳酸オキシダーゼは典型的には、可溶性D-乳酸オキシダーゼ(膜結合型ではなく)である。便宜的に、酵素は、発酵ブロスにおいて直接働き、D-乳酸を排除する。いくつかの実施形態では、D-乳酸オキシダーゼはグルコノバクター種に由来する。いくつかの実施形態では、D-乳酸オキシダーゼはグルコノバクター・オキシダンスに由来する(例えば、GenBank受入番号:AAW61807を参照されたい)。D-乳酸オキシダーゼを使用する、有機廃棄物に由来する発酵ブロスからのD-乳酸の排除は、本発明の出願人に譲渡されたWO2020/208635号において記載される。
【0102】
本発明の範囲内の好適なD-乳酸利用微生物としては、3つ全てのL-乳酸デヒドロゲナーゼを欠く大腸菌が挙げられるが、それに限定されない。
【0103】
本明細書では、「排除」は、D-乳酸/D-乳酸塩に関する場合、L-乳酸を生成する下流プロセス、その後、産業用途に好適であるポリ(L-乳酸)への重合を妨害しないような残余量までの低減を示す。「残余量」は発酵の終わりの発酵ブロスをPLA加水分解生成物と一緒にした処理済み混合物中の総乳酸塩(L+D)から、1%(w/w)未満のD-乳酸塩、さらにいっそう好ましくは0.5%(w/w)未満のD-乳酸塩を示す。いくつかの特定の実施形態では、D-乳酸塩の排除は、発酵の終わりの発酵ブロスをPLA加水分解生成物と一緒にした処理済み混合物中の総乳酸塩から、0.5%(w/w)未満のD-乳酸までの低減である。
【0104】
さらなる態様および実施形態によれば、L-乳酸モノマーはさらに精製される。L-乳酸モノマーはL-乳酸塩として精製され得る。典型的には、L-乳酸塩の精製は結晶化、再結晶、蒸留、分配、シリカゲルクロマトグラフィー、分取HPLC、およびそれらの組み合わせの少なくとも1つにより実施することができる。各可能性は別個の実施形態を表す。あるいは、再酸性化ステップは粗L-乳酸を得るために実施することができ、続いて、精製ステップが実施され、精製L-乳酸が得られる。再酸性化は当技術分野で知られているように、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、およびそれらの組み合わせの少なくとも1つを使用することにより実施することができる。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0105】
精製プロセスは蒸留、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、結晶化、およびこれらの方法の組み合わせを含み得る。いくつかの方法は、例えば、Ghaffar et al. (2014) Journal of Radiation Research and Applied Sciences, 7(2): 222-229;およびLopez-Garzon et al. (2014) Biotechnol Adv., 32(5): 873-904において概説されている。あるいは、単一ステップでの乳酸の回収およびラクチドへの変換が使用され得る(Dusselier et al. (2015) Science, 349(6243): 78-80)。
【0106】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、PLA加水分解のために使用される金属酸化物または水酸化物および発酵中のpH調整のために使用されるアルカリ化合物はマグネシウムイオンを対イオンとして生成させる。例えば、いくつかの実施形態では、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)がPLA加水分解のために、また、発酵中のpH調整のために使用される。他の実施形態では、他のカチオン(例えばナトリウムまたはカルシウムイオン)がPLA加水分解において、および発酵中に使用され、それらは、以上で記載される通りマグネシウムイオンに交換される。これらの実施形態によれば、PLA加水分解スラリーは、乳酸モノマーおよびMg2+を含み、乳酸発酵ブロスは、乳酸モノマーおよびMg2+を含み、これは乳酸マグネシウムとして回収することができる。乳酸マグネシウムは結晶またはアモルファス形態で得ることができ、各可能性は別個の実施形態を表す。L-乳酸マグネシウムの任意の溶媒和物または多形は回収することができ、特に、結晶性L-乳酸マグネシウム二水和物が含まれる。
【0107】
結晶化を介して乳酸マグネシウムを精製するための特定の下流精製プロセスが本発明の出願人に譲渡された同時係属中の特許出願、WO2020/110108号において記載される。精製プロセスは、適用可能であればD-乳酸モノマーを排除する処理後の、PLA加水分解スラリーの発酵ブロスとの混合物に適用することができる。精製プロセスは下記ステップを含む:
-不溶性不純物が除去された浄化混合物を提供するステップであって、浄化は発酵ブロスに対して、PLA加水分解スラリーと混合するステップ前に、または後に実施することができ、浄化混合物は可溶性形態の乳酸マグネシウムを含み、混合物は45℃~75℃の温度にあるステップ;
-浄化混合物を150-220g/Lの乳酸濃度まで濃縮するステップ;
-濃縮浄化混合物の少なくとも1つの冷却結晶化を実施し、乳酸マグネシウム結晶を得るステップ;ならびに
-得られた乳酸マグネシウム結晶を収集するステップ。
【0108】
いくつかの実施形態では、混合物は55℃~65℃の温度で提供される。
【0109】
不溶性不純物の分離は下記から選択される少なくとも1つの技術を含み得る:濾過、遠心分離、浮選、沈降、凝集およびデカンテーション。各可能性は別個の実施形態を表す。例えば、不溶性不純物の分離は遠心分離および精密濾過を使用して実施することができる。
【0110】
浄化混合物の濃縮は蒸発、ナノ濾過、逆浸透、またはそれらの組み合わせにより実施することができる。いくつかの実施形態では、浄化混合物は、160-220g/Lの乳酸、例えば、170-220g/Lの乳酸、180-220g/Lの乳酸(特定の範囲内の各値が含まれる)の濃度まで濃縮される。
【0111】
少なくとも1つの冷却結晶化は50~75℃の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の第1の温度で始まり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの冷却結晶化は50~70℃の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の第1の温度で始まる。追加の実施形態では、少なくとも1つの冷却結晶化は50~65℃の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の第1の温度で始まる。
【0112】
少なくとも1つの冷却結晶化ステップは10~1℃の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の第2の温度で終わることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの冷却結晶化は6~2℃の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)の第2の温度で終わる。
【0113】
少なくとも1つの冷却結晶化の冷却速度は10~0.5℃/hの範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)とすることができる。いくつかの実施形態では、冷却速度は5~1℃/hの範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)にある。
【0114】
冷却結晶化前に、濃縮混合物のpHは、6~7の範囲にあるように調整され得る。
【0115】
得られた乳酸マグネシウム結晶は、残りの液体から精密濾過またはナノ濾過により分離することができる。残りの液体は、追加の乳酸マグネシウム結晶を得るために、濃縮、続いて、少なくとも1つの追加の冷却結晶化を受けることができる。液体からのそれらの分離後、乳酸マグネシウム結晶は、水溶液で、またはエタノールなどの有機溶媒で洗浄し、精製することができる。乳酸マグネシウム結晶のさらなる処理は抽出、精密濾過、ナノ濾過、活性炭処理、蒸留、乾燥および粉砕の少なくとも1つを含み得る。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0116】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、「約」という用語は±10%を示す。
【0117】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で明確に別記されない限り複数形の言及を含む。よって、例えば、「アルカリ化合物」への言及は、文脈で明確に別記されない限り、複数のそのような化合物を含む。「および」という用語あるいは「または」という用語は一般に、文脈で明確に別記されない限り「および/または」を含むその意味で使用されることに注意すべきである。
【0118】
下記実施例は、発明のある一定の実施形態をより詳しく説明するために提供される。しかしながら、それらは発明の広い範囲を限定するものとして決して解釈されるべきでない。当業者であれば容易に、発明の範囲から逸脱せずに、本明細書で開示される原理の多くの変更および改変を考案することができる。
【0119】
実施例
実施例1
水酸化マグネシウムを使用した薄膜PLAバッグのアルカリ熱加水分解
下記実験は、水酸化マグネシウムを使用して、使用済み廃棄物由来の薄膜PLAバッグの加水分解を試験した。
【0120】
基材調製
PLAバッグを、はさみを用いて手作業で切断し、約3×5cmの寸法を有する小さな長方形形状の小片とした。PLAバッグの各切断片はざっとおよそ100-200mgの重量があった。
【0121】
実験デザイン
PLA製品の完全分解を達成するために必要とされるMg(OH)2の量を評価するために、5gのPLAバッグの切断片を、150mL DW中、0(対照として)、1、2.5、5、10および15wt%のMg(OH)2を使用する加水分解に供した。反応は90℃で24時間実施した。
【0122】
手順:
全ての反応を大きな卵形形状の磁気撹拌子を備えた250mL丸底フラスコ内で実施した。Mg(OH)2を、粉末漏斗を使用して各フラスコに添加し、乳白色懸濁液を形成させた。フラスコを油浴内に置き、90℃まで24時間撹拌しながら加熱した。次に、各フラスコからの懸濁液をワットマン3濾紙が備えられた90mmブフナー漏斗を使用して真空濾過した。フラスコ内の残りをDWで洗浄し、フィルタに通過させた。濾液は、典型的には半乳白色であり、もう一度、形成させたMg(OH)2濾過ケーキに通して濾過すると、透明の無色水溶液が得られた。各溶液を秤量した丸底フラスコに移し、水を、Rotovapを使用して蒸発乾固させ、白色固体を得た。蒸発後、フラスコを一晩、真空下デシカントに置き、残留水を処分した。各フラスコを完全乾燥後に再び秤量し、フラスコ内の固体の総重量を計算した。次いで、固体をDW(250mL)に少なくとも30分間RTで撹拌しながら溶解させた。溶液のpHおよび導電率を較正計器により測定した。乳酸塩を、酵素キット(乳酸試験)を用いて測定した。
【0123】
対照実験(Mg(OH)2なし)のための手順:
上記実験手順を同じ条件下だが、Mg(OH)2の添加なしで繰り返した。PLAの残りの濾過後、水溶液を蒸発乾固させなかった。というのも、固体二乳酸マグネシウム(magnesium dilactate)は形成できなかったからである。代わりに、濾液の総体積を250mLまでDWを用いて増加させ、pH、導電率および乳酸測定を実施した。
【0124】
結果:
結果は下記表1および
図4においてまとめて示す。
【表1】
【0125】
*提供される乳酸濃度は、3つの測定の平均であり、誤差は相対標準偏差(RSD)である。Mg(OH)2が添加されなかった対照実験についての乳酸濃度は、DWを用いた×10希釈を使用して測定した。というのも、PLA分解はほとんど起こらなかったからである。
【0126】
**100%収率計算により、全てのPLAが乳酸単位まで分解したことが仮定された。PLAの各繰り返し単位は72Daの重さがあり、乳酸分子量は89Daであるので、全重量は、加水分解での水分子の付加のために、89/72=1.236倍増加するはずである。したがって、5.0gのPLAは、PLA全てが完全加水分解された場合、5.0×1.236=6.18gの乳酸を与えるはずである。よって、上記15wt%実施例によれば、4.675g乳酸は(4.675/6.18)×100%=76%収率に対応する。
【0127】
PLAの低分子量オリゴマーが、依然として、加水分解懸濁液の濾過後に得られた水溶液中に存在した可能性がある。これが観察された透明溶液の理由であると考えられた。さらに76%以下の収率が達成された。
【0128】
5wt%のMg(OH)2は、これらの濃度のMg(OH)2について達成された同様の量の乳酸により明らかなように、10および15wt%と同様のレベルのPLAの加水分解を提供するように見える。
【0129】
乳酸産生ラインとの統合:
5%Mg(OH)2中での加水分解の結果形成された乳酸含有溶液を酸性(pH=5.5)乳酸発酵ブロス中にうまく添加した。本発明の出願人に譲渡された同時係属中の特許出願、WO2020/110108号に記載されるように、pHをpH=6.8まで増加させ、溶液を下流処理(DSP)手順に供し、純粋乳酸マグネシウム結晶を生成させた。
【0130】
実施例2
水酸化ナトリウムを使用したPLAペレットのアルカリ熱加水分解
50gのPLAペレット(Ingeo(商標)Biopolymer 4032D、NatureWorks LLC.)を凝縮器および温度計が備えられた250ml三つ口フラスコに添加した。150mlのNaOH 5Mを添加し、フラスコを80℃まで加熱した。pHを測定すると13.5であった。
【0131】
3.5時間の急速分解後、濃度は320g/Lに到達し、時間と共に、乳酸濃度はわずかにさらに増加しただけであった。21.5時間後、乳酸濃度は増加をやめ(340g/Lの最終濃度)、反応物を室温まで冷却させた。
【0132】
PLA残渣を、焼結ガラス漏斗を使用して濾過し、透明溶液を得た。測定した最終pHは12.9であり、これは追加のPLA分解に好適である。
【0133】
溶液を濃H2SO4で中和し、次いで280mlの硫酸マグネシウム七水和物溶液(300g/L)を1滴ずつ、撹拌しながら添加した。形成したMgLa2・2H2O沈殿物を、焼結ガラス漏斗を使用して濾過し、アセトンで洗浄し、80℃で乾燥させ、64grの最終重量とした。濾液を1滴ずつ、500mlのアセトンに撹拌しながら添加し、次いで、さらに1時間撹拌した。形成した沈殿物を、焼結ガラス漏斗を使用して濾過し、アセトンで洗浄し、80℃で乾燥させた。収率:74%収率。
【0134】
乳酸マグネシウム沈殿物を乳酸発酵ブロス中に添加し、その後、下流処理(DSP)手順に供し、純粋L-乳酸マグネシウム結晶を生成させた。
【0135】
特定の実施形態の前記記載は、発明の一般的性質を十分完全に明らかにするため、他の人達は現在の知識を適用することにより、必要以上の実験をせずに、かつ、上位概念から逸脱せずに、容易に、そのような特定の実施形態を改変し、および/または様々な適用のために適合させることができ、そのため、そのような適合および改変は、開示された実施形態の等価物の意味および範囲内に包含されるはずであり、そうであることが意図される。本明細書で使用される表現または専門用語は説明目的のためのものであり、制限することを目的としていないことが理解されるべきである。様々な開示された機能を実施するための手段、材料、およびステップは発明から逸脱せずに様々な別の形態を取ることができる。