(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/536 20060101AFI20240220BHJP
G01S 7/35 20060101ALI20240220BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01S13/536
G01S7/35
A61B5/11 110
(21)【出願番号】P 2022554166
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2019015255
(87)【国際公開番号】W WO2021095893
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0143162
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522184039
【氏名又は名称】ジェーシーエフテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン ミョン
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ホ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ドン イル
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-129558(JP,A)
【文献】特開2016-057168(JP,A)
【文献】特開2016-156754(JP,A)
【文献】特開2016-168177(JP,A)
【文献】特開2012-130391(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111812629(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0077015(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0336989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S13/00-13/95
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去方法であって、
(a)IF信号生成器の電圧制御発振部(VCO)において外部から印加された電圧(V(t))にて所定の周期の発振周波数を
有する信号を連続的に生成して、単一の送信アンテナを介して動的ターゲットの主な部位に送出し、前記動的ターゲットから反射された信号と前記動的ターゲットの周りにおいて生じた各種の信号をn個
(nは2以上の整数)の受信アンテナにおいて受信するステップと、
(b)前記IF信号生成器は、
前記発信周波数を有する信号と受信されたn個の信号
との差分からそれぞれドップラIF信号を生成するステップと、
(c)アナログ/デジタル変換器が、前記IF信号生成器から入力された複数のドップラIF信号をそれぞれのデジタルデータに変換するステップと、
(d)前記アナログ/デジタル変換器(20)において単位時間の間に収集されたデジタル信号を高速フーリエ変換器においてサンプリング時間間隔にてシンボルを有するデータ列として構成し、前記データ列を複数のインデックス(Index)の周波数成分シンボル列(symbol set)に切り換えるステップと、
(e
)信号演算器の演算部において前記周波数成分シンボル列に切り換えられたインデックスシンボルを各インデックス列に加算して、n個の受信アンテナの数で割った値を演算するステップと、
(f)前記演算部において演算された値に対して共通して生じる周期的な信号と共通的ではない非周期的な信号とのスペクトル成分の偏差を所定の基準のしきい(Threshold)値に応じて分類して周期的な信号のみをフィルタリングするステップと、
を含
み、
前記周波数成分シンボル列のシンボルデータはスペクトルの強さを示す、生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去方法。
【請求項2】
生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置であって、
電圧制御発振部(Voltage Controlled Oscillator;VCO)において外部から印加された電圧(V(t))にて所定の周期の発振周波数を
有する信号を連続的に生成して単一の送信アンテナ(Tx)から送出し、所定の距離の動的ターゲットを有するレーダ信号収集領域から反射された反射波を複数の受信アンテナ(Rx-1~Rx-n)
(nは2以上の整数)においてそれぞれ受信し、
前記発信周波数を有する信号と受信されたn個の信号
との差分から
それぞれドップラIF信号を生成するIF信号生成器と、
前記IF信号生成器において生成されたn個のアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器において単位時間の間に収集されたデジタル信号を高速フーリエ変換器においてサンプリング時間間隔にてシンボルを有するデータ列として構成し、構成された前記データ列をインデックス(Index)の周波数成分シンボル列(symbol set)に切り換えた後、演算部においてインデックスシンボルを各インデックス列に加算して、n個の受信アンテナ(Rx)の数で割った値を求める信号演算器と、
前記信号演算器において求めた値に対して共通して生じる周期的な信号と共通的ではない非周期的な信号とのスペクトル成分の偏差を所定の基準のしきい(Threshold)値に応じて分類してフィルタリングするデジタルフィルタリング信号処理器と、
を備
え、
前記周波数成分シンボル列のシンボルデータはスペクトルの強さを示す、生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置。
【請求項3】
前記受信アンテナ(Rx-1~Rx-n)は、動的ターゲットとそれ以外の領域から同時に信号を受信できる位置及び方向に並べられた、請求項2に記載の生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置。
【請求項4】
前記デジタルフィルタリング信号処理器は、基準しきい値にてフィルタリングするために所定の帯域のバンドパスフィルタ(BPF)や高域パスフィルタ(HPF)または低域パスフィルタ(LPF)のいずれか一つが適用される、請求項2に記載の生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波ドップラレーダを用いて人体の生体信号を取得する間に外部から取り込まれる各種の振動ノイズを効果的に減衰しかつ除去するための方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、センシング技術の一つとしてのレーダは、物体までの正確な距離と観測個所に対する物体の相対速度とを正確に測定することができる。レーダ装置は、概ねマイクロ波の電磁気波を物体に発射して、その物体から反射される電磁気波を受信して作動する。処理された信号は、オペレータやレーダによって制御される周辺装置が使用可能な形態に変換される。レーダを用いて動きや生体信号などを感知する技術の商用化が進んでいく一方である。実際に、レーダが用いられる環境下で生じ得る外部の影響によるレーダ受信信号に含まれている各種のノイズ問題を解決するための方案が提案されている。
【0003】
また、ドップラレーダ(Doppler Radar)は、電波のドップラ効果を用いたものであり、目標に向かって送信するレーダ電波の周波数と反射する周波数との差分にて移動する目標を検出する。気象レーダや航空機の自律航法装置、軍事用のレーダに用いられる。気象用のものにおいては、雲の内部において起きている風の速度の変化を測定する。自律航法装置においては、地面に達する電波の速度を測定して現在の位置を算出する。軍事用のレーダにおいては、通常、単一パルス信号を用いて地表及び海水面上の反射波中において移動する目標のみを捕捉し、かつ追跡するパルスドップラレーダが主流をなしている。
【0004】
図1中、従来のマイクロ波レーダを用いて生体信号を測定する方法においては、心拍動、呼吸によって生じる人体の振動や動きに伴い生じるドップラ効果をデータとして取り集めることによりセンシングするのが普通である。
【0005】
しかしながら、実際に人体の生体信号を測定する過程においては、人体の動きや筋肉の動きまたは周りの環境要因によるさらなるドップラ効果が生じる。したがって、
図2中、実際にレーダがセンシングする収集信号には、生体信号データの他に、生体信号が存在する時間的、周波数的な同一の領域にランダムなノイズが一緒に載ってしまう。このようなランダムノイズは、周期性に乏しい故に、経時的に種々に変化しながら現れる特性があるのに対し、生体信号は、所定の周期的なパターンを保持するという特性がある。そのため、人体の心拍スペクトル領域に混ざったランダムノイズとの差分を演算して区別できる取り組みが行われなければならない。
【0006】
本発明と関わる先行技術であって、特許文献1は、心拍を測定しようとするターゲットから反射されたレーダパルスが重なり合った単一のフレームを予め定められた受信時間に従って累積させてフレームセット(Frame Set)を生成するステップと、前記生成されたフレームセットに含まれている単一のフレームのそれぞれに対して最大のピークを示す第1のサンプラインデックス及び前記第1のサンプラインデックスのうち最も多い最大のピークに対応するサンプラインデックスである第2のサンプラインデックスを用いて、前記ターゲットの動きによって前記最大のピークの遷移区間が生じた単一のフレームを除去するステップと、前記ターゲットの動きによって前記最大のピークの遷移区間が生じた単一のフレームが除去されて空き空間が含まれているフレームセットに対して、不完全データに対する周期的なパターンを探知してピーク周波数を識別するアルゴリズムを適用することにより、前記ターゲットの心拍周波数を決めるステップと、を含み、前記ターゲットから反射されたレーダパルスは、前記ターゲットの動きが反映されたレーダ信号であり、前記遷移区間が生じた部分を除去するステップは、前記フレームセットに含まれている単一のフレームのそれぞれに対して最大のピークを示す第1のサンプラインデックスを取り出すステップと、前記最大のピークを示す第1のサンプラインデックスのうち、最も多い最大のピークに対応するサンプラインデックスを動きプロファイルを生成するための基準を示す第2のサンプラインデックスとして決めるステップと、前記第1のサンプラインデックスと第2のサンプラインデックスとの差分を用いて、前記ターゲットの動きに基づく動きプロファイルを生成するステップと、前記動きプロファイルを用いて、前記フレームセットに含まれている単一のフレームを整列するステップと、を含むターゲットの生体情報の決定方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、基底帯域信号を送信した後、送信した基底帯域信号が物体に反射されて戻ってくる基底帯域信号に基づいてドップラを測定するドップラレーダにおいて、前記ドップラレーダは、前記基底帯域信号として、多重キャリアを含む基底帯域信号を用い、前記ドップラレーダは、受信した基底帯域信号をフーリエ変換を用いてN個の周波数信号に変換し、変換されたN個の周波数のうち、任意のM個の周波数信号を選び、選ばれたM個の周波数信号のそれぞれにキャリブレーション定数を乗算して出力されるM個の周波数信号のそれぞれの位相値を取り出し、取り出されたM個の位相値のそれぞれに距離変換定数を乗算して出力されるM個の距離情報のそれぞれにフィルタを適用して出力される値を加算してドップラ測定値を出力する信号処理部を備える多重キャリアドップラレーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-1948386号公報
【文献】韓国公開特許第10-2018-0010713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためのものであって、ランダムノイズが比較的に周期性を有する生体信号領域に混ざっているとき、ランダムノイズを効果的に除去することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、マイクロ波レーダを用いて非接触式にて生体信号を測定する正確度を改善することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために、生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去方法において、(a)IF信号生成器の電圧制御発振部(VCO)において外部から印加された電圧V(t)にて所定の周期の発振周波数を生成して、単一の送信アンテナを介して動的ターゲットの主な部位に送出し、前記動的ターゲットから反射された信号と動的ターゲットの周りにおいて生じた各種の信号をn個の受信アンテナにおいて受信するステップと、(b)前記IF信号生成器は、受信されたn個の信号からそれぞれドップラIF信号を生成するステップと、(c)アナログ/デジタル変換器は、前記IF信号生成器から入力された複数のドップラIF信号をそれぞれのデジタルデータに変換するステップと、(d)前記アナログ/デジタル変換器において単位時間の間に収集されたデジタル信号を高速フーリエ変換器においてサンプリング時間間隔にてシンボルを有するデータ列として構成し、このデータ列を複数のインデックス(Index)の周波数成分シンボル列(symbol set)に切り換えるステップと、(e)前記信号演算器の演算部において周波数成分シンボル列に切り換えられたインデックスシンボルを各インデックス列に加算して、n個の受信アンテナの数で割った値を演算するステップと、(f)前記演算部において演算された値に対して共通して生じる周期的な信号と共通的ではない非周期的な信号とのスペクトル成分の偏差を所定の基準のしきい(Threshold)値に応じて分類して周期的な信号のみをフィルタリングするステップと、を含んでなる、生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去方法を提供するところに特徴がある。
【0012】
また、本発明は、生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置において、電圧制御発振部(Voltage Controlled Oscillator;VCO)において外部から印加された電圧V(t)にて所定の周期の発振周波数を生成して単一の送信アンテナTxから送出し、所定の距離の動的ターゲットを有するレーダ信号収集領域から反射された反射波を複数の受信アンテナRx-1~Rx-nにおいてそれぞれ受信し、受信されたn個の信号からドップラIF信号を生成するIF信号生成器と、前記IF信号生成器において生成されたn個のアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器と、前記アナログ/デジタル変換器において単位時間の間に収集されたデジタル信号を高速フーリエ変換器においてサンプリング時間間隔にてシンボルを有するデータ列として構成し、構成されたデータ列をインデックス(Index)の周波数成分シンボル列(symbol set)に切り換えた後、演算部においてインデックスシンボルを各インデックス列に加算して、n個の受信アンテナRxの数で割った値を求める信号演算器と、前記信号演算器において求めた値に対して共通して生じる周期的な信号と共通的ではない非周期的な信号とのスペクトル成分の偏差を所定の基準のしきい(Threshold)値に応じて分類してフィルタリングするデジタルフィルタリング信号処理器と、を備える、生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置を提供するところに特徴がある。
【0013】
さらに、本発明において、前記受信アンテナRx-1~Rx-nは、動的ターゲットとそれ以外の領域から同時に信号を受信できる位置及び方向に並べられてもよい。
【0014】
さらにまた、本発明において、前記デジタルフィルタリング信号処理器は、基準しきい値にてフィルタリングするために所定の帯域のバンドパスフィルタ(BPF)や高域パスフィルタ(HPF)または低域パスフィルタ(LPF)のいずれか一つが適用されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、単一の送信部と複数の受信部とからなる非接触式生体信号測定用のドップラレーダを用いて、生体信号領域に含まれているランダムノイズが比較的に周期性を有する生体信号領域に混ざっているとき、ランダムノイズを効果的に減衰しかつ除去することにより、生体信号をセンシングする正確度を向上させることができるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】通常の生体信号を測定するレーダの概念を示すブロック図である。
【
図2】生体信号であって、心拍スペクトルとランダムノイズが混ざった心拍スペクトルをそれぞれ示すグラフである。
【
図3】本発明に係る実施形態であり、生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置を示すブロック図である。
【
図4】本発明に係る生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置を示す構成図である。
【
図5】本発明に係る生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明に係る生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去のためのフーリエ変換を通して複数インデックスの周波数成分シンボル列を示す表である。
【
図7】本発明に係る生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置において、マイクロ波ドップラレーダの各受信部のフーリエ変換の結果スペクトルを示すグラフである。。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去装置に関する実施形態について詳述する。
【0018】
図3及び
図4中、マイクロ波(Microwave)ドップラレーダ1の中間周波数(IF:Intermediate Frequency)信号生成器10は、電圧制御発振部(Voltage Controlled Oscillator;VCO)11において生じた発振周波数と受信された周波数との差分から生じるIF信号を生成するものである。IF信号生成器10には、電圧制御発振部11から出力された所定の周期の発振周波数を外部に送出する送信アンテナが組み込まれる。そして、IF信号生成器10には、送信アンテナから送出された信号が所定の距離の動的ターゲット、例えば、人体から反射された信号と人体の周りのレーダ信号収集領域から信号を受信する受信アンテナが組み込まれる。ここで、送信アンテナTxは、単一個から構成され、受信アンテナRx-1~Rx-nは、複数から構成される。受信アンテナRx-1~Rx-nは、動的ターゲットとそれ以外の領域から同時に信号を受信できるように適切な位置及び方向に並べられることが好ましい。
【0019】
そして、IF信号生成器10には、各受信アンテナRx-1~Rx-nのそれぞれにミキサM1~Mnが結合される。ミキサM1~Mnは、電圧制御発振部11から出力された発振周波数と各受信アンテナRx-1~Rx-nにおいて受信されたn個の信号から生じる差分にてドップラIF信号を生成する。
【0020】
IF信号生成器10は、信号が送受信可能なドップラレーダトランシーバ(Tranceiver)と同じ構造であり、かつ、単一の送信アンテナTxと複数の受信アンテナRx-1~Rx-nが配備される。したがって、IF信号生成器10は、電圧制御発振部11において外部から印加された電圧V(t)にて所定の周期の発振周波数を生成して単一の送信アンテナTxから送出し、所定の距離の動的ターゲットを有するレーダ信号収集領域から反射された反射波を複数の受信アンテナRx-1~Rx-nにおいてそれぞれ受信し、受信されたn個の信号からドップラIF信号を生成する。
【0021】
アナログ/デジタル変換器(Analog/Digital Converter)20は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するものであり、IF信号生成器10において生成されたn個のアナログ信号をデジタル信号にそれぞれ変換して出力する。このとき、デジタル信号を周波数シンボルに切り換えるために、高速フーリエ変換を行わなければならないため、単位時間の間に収集されたデジタル信号のデータを用いてサンプリング時間間隔にてデータ列を構成する。
【0022】
信号演算器30は、高速フーリエ変換器(Fast Fourier Transformer;FFT)と演算部32を備える。高速フーリエ変換器31は、アナログ/デジタル変換器20において単位時間の間に収集されたデジタル信号のデータ列を周波数成分のシンボルに変換し、これは、n個のスペクトルインデックスデータ列として構成する。そして、演算部32は、構成されたスペクトルインデックスシンボルを各インデックス列に加算して、n個の受信アンテナRx-1~Rx-nの数で割った値を求める。
【0023】
デジタルフィルタリング信号処理器40は、信号演算器30において単位時間の間に求められた値に対して共通して生じる周期的な信号と共通的ではない非周期的な信号とのスペクトル成分の偏差を所定の基準のしきい(Threshold)値に応じて分類してフィルタリングするものである。すなわち、デジタルフィルタリング信号処理器40は、単位時間の間に共通して生じる周期性を有する信号の演算結果は所定の大きさの値に保持されるものの、共通的ではない非周期性を有する信号は格段に低い値に下がってしまうため、周期的な信号と非周期的な信号とのスペクトル成分の偏差を大きくした後、適切な基準しきい値に応じて分類してフィルタリングして信号を処理する。基準しきい値にてフィルタリングするためのフィルタは、所定の帯域のバンドパスフィルタ(BPF)や高域パスフィルタ(HPF)または低域パスフィルタ(LPF)などが適宜に選択できる筈である。
【0024】
このような構成を有する本発明に係る生体信号測定用のレーダにおけるレーダ収集信号のランダムノイズの除去方法について説明する。
【0025】
まず、
図5中、IF信号生成器10の電圧制御発振部11において外部から印加された電圧V(t)にて所定の周期の発振周波数を生成して、送信アンテナTxを介して動的ターゲットの主な部位に送出される(S1)。さらに、送信アンテナTxから送出される信号は、動的ターゲットである生体信号を最も上手く収集できる人体の部位に向かって送出することが好ましい。
【0026】
動的ターゲットから反射された信号と動的ターゲットの周りの各種の信号は、n個の受信アンテナRx-1~Rx-nにおいて受信される(S2)。このとき、n個の受信アンテナRx-1~Rx-nは、生体信号を最も多く含む信号を受け取る受信アンテナRx-1と、生体信号とともに、人体の他の動きや周りにおいて生じた効果音などが含まれている信号を受け取る複数の受信アンテナRx-2~Rx-nと、を備える。
【0027】
複数の受信アンテナRx-1~Rx-nにおいて受信されたn個の信号は、IF信号生成器10においてそれぞれドップラIF信号として生成される(S3)。そして、アナログ/デジタル変換器20は、IF信号生成器10において生成された後に入力された複数のドップラIF信号をそれぞれのデジタルデータに変換する(S4)。デジタルデータは、複数の受信アンテナRx-1~Rx-nにおいて信号を受信する間に時間的に持続的に繰り返しが行われるため、リアルタイムにて単位時間別にデータを連続して収集することができる筈である。
【0028】
アナログ/デジタル変換器20において単位時間の間に収集されたデジタル信号を信号演算器30の高速フーリエ変換器31においてサンプリング時間間隔にてシンボルを有するデータ列として生成し、このデータ列は、複数のインデックス(Index)の周波数成分シンボル列(symbol set)に切り換えられる(S5)。
【0029】
一方、ドップラIF信号のスペクトル変換は、次の過程により行われる。すなわち、周波数成分のスペクトル変換においては、所定の時間の間に収集された時間領域の信号を、周期性を見出して周波数成分に変換する。したがって、高速フーリエ変換のために所定の時間の間に収集された時間領域のデジタルサンプリングデータを必要とする。さらに、サンプリング時間間隔のシンボルは、時間領域においてデジタル信号にサンプリングされたオリジナルの信号成分のシンボルである。例えば、30秒間の時間領域の信号データを取り集めてフーリエ変換を行うと、30秒の間に周期性が現れたすべての信号の周波数成分のスペクトルが表わされる。このとき、スペクトルグラフ上の横軸が周波数軸となり、これがスペクトルインデックスである。
【0030】
複数のインデックスは、
図6の表において、複数の受信信号は高速フーリエ変換器31を経由しながらImの周波数成分シンボル列に切り換えられる。そして、演算部32は、複数の受信アンテナRx-1~Rx-nからそれぞれ取得されたインデックスシンボルを各インデックスI(1),I(2),I(3),...I(m)列に加算して、受信アンテナRx-1~Rx-nの数であるnで割った値を演算する(S6)。
【0031】
ここで、n個の受信アンテナRx-1~Rx-n信号は、n個のスペクトルインデックスデータとして表わされ、演算は、各アンテナの同じスペクトル成分であるインデックス列へと進む。なお、I(1),I(2),…I(m)と表わされたものは、実際の周波数(Hz)成分であり、このシンボルデータは、スペクトルの強さを示す。
【0032】
さらに、
図7のスペクトルグラフにおいて、共通して生じる周期的な信号は、所定の値を保持するものの、共通的ではない非周期的な信号は格段に低い値に下がってしまうため、周期的な信号と非周期的な信号とのスペクトル偏差を作り出すことが可能になる。すなわち、周波数ドメインインデックスI(m)列のI(1)=a1+b1+c1…(n)1、I(2)=a2+b2+c2…(n)2、I(3)=a3+b3+c3…(n)3、I(m)=a(m)+b(m)+c(m)…(n)(m)などといったように計算するが、受信アンテナRx-1~Rx-nの数がn個であれば、各インデックスの演算結果は、I(1)/n,I(2)/n,I(3)/n,…I(m)/nといったように計算される。
【0033】
そして、デジタルフィルタリング信号処理器40は、演算部32において演算された値に対して共通して生じる周期的な信号と共通的ではない非周期的な信号とのスペクトル成分の偏差を所定の基準のしきい(Threshold)値に応じて分類して周期的な信号のみをフィルタリングする(S7)。このとき、しきい値を基準として分類すれば、基準点以上の高い値のみを残すことができ、これは、通常、時間的に周期的な成分を有している生体信号である可能性が高くなる。
【0034】
このような方法を用いて、各受信アンテナRx-1~Rx-nにおいて受信されたデータのうち、共通して受信された部分を取り、共通していない部分をランダムノイズとみなしてフィルタリングして除去することができる。
【0035】
このように、単一の送受信部からなる生体信号測定用のドップラレーダを用いて生体信号を測定する従来の方法に比べて、本発明は、単一の送信部と複数の受信部とからなる生体信号測定用のドップラレーダを用いて、生体信号領域に含まれているランダムノイズを効果的に除去することにより、非接触方式において生体信号をセンシングする正確度を改善することができるというメリットがある。
【0036】
以上の説明において、本発明については、特定の実施形態と関連付けて図示及び説明したが、特許請求の範囲によって示された発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内において種々の改造及び変化を行うことが可能であるということは、この技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも理解できる筈である。