(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】船舶の操縦支援装置
(51)【国際特許分類】
B63H 25/38 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B63H25/38 Z
(21)【出願番号】P 2023009185
(22)【出願日】2023-01-25
【審査請求日】2023-01-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592134848
【氏名又は名称】株式会社鷹取製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】藤山 幸二郎
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-005494(JP,U)
【文献】特開昭54-093589(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098595(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101746498(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0113734(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0135649(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/38 - 25/42
B63B 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船の船底の下方に設けられ、所定の駆動源を介して回転可能なプロペラと、前記船底に形成された軸孔に挿通され、その一端側が同船底の外側に延び出して配置されると共に、回転可能に構成された舵軸と、前記舵軸の前記一端側に取り付けられ、前記プロペラが回転して生じた水流の流れを変えて、船の進行方向を変化又は調整する所定の舵とを備える船に対して、後付け可能に構成された船舶の操縦支援装置であって、
前記軸孔に挿通可能に構成された
筒状の第1の舵軸と、
前記第1の舵軸の貫通孔の内部に回転自在に挿通されると共に、前記第1の舵軸の一端側及び他端側よりも外側に延び出す長さに形成された第2の舵軸と、
前記第1の舵軸の一端側に固定された第1のラダーと、
前記第2の舵軸の一端側に固定され、前記第1のラダーと重ね合った状態で、1つの舵板を形成する第2のラダーと、
前記第1の舵軸の外周面かつ他端側に配置され、同第1の舵軸に固定された状態と、同第1の舵軸
との固定が解除された状態とが切り替え可能なフランジ部と、
前記フランジ部が前記第1の舵軸に固定された状態で、同第1の舵軸の軸心を中心として、同フランジ部、同第1の舵軸及び前記第2の舵軸を一体的に回転せしめるフランジ部駆動源と、
前記フランジ部に取り付けられ、前記フランジ部
と前記第1の舵軸
との固定が解除された状態で、前記第1の舵軸及び前記第1のラダー
からなる組を、
前記第2の舵軸及び前記第2のラダーからなる組とは、独立して回転せしめる第1のアクチュエータと、
前記フランジ部に取り付けられ、前記フランジ部
と前記第1の舵軸
との固定が解除された状態で、前記第2の舵軸及び前記第2のラダー
からなる組を、
前記第1の舵軸及び前記第1のラダーからなる組とは、独立して回転せしめる第2のアクチュエータを備える
船舶の操縦支援装置。
【請求項2】
前記第1のラダーは、一端側に向けて厚みが小さくなる第1の羽根部と、前記第1の羽根部の他端側に設けられた複数の第1の管部を有し、
前記第2のラダーは、一端側に向けて厚みが小さくなる第2の羽根部と、前記第2の羽根部の他端側に設けられた複数の第2の管部を有し、
前記第1の羽根部の一端側及び前記第2の羽根部の一端側を揃えて、同第1の羽根部と同第2の羽根部を重ね合わせた状態で、前記舵板が構成されると共に、前記第1の管部及び前記第2の管部が一列に並んで管部貫通孔が形成され、
前記第1の舵軸は、前記管部貫通孔の一部に挿通され、
前記第2の舵軸は、前記管部貫通孔の全部に挿通された
請求項1に記載の船舶の操縦支援装置。
【請求項3】
前記第1の舵軸の外周面に固定された第1のギアと、
前記第2の舵軸の外周面に固定された第2のギアを有し、
前記第1のアクチュエータは、歯車構造で前記第1のギアと噛み合った第1の出力ギアに動力伝達し、同第1の出力ギアを回転させ、
前記第2のアクチュエータは、歯車構造で前記第2のギアと噛み合った第2の出力ギアに動力伝達し、同第2の出力ギアを回転させる
請求項1又は請求項2に記載の船舶の操縦支援装置。
【請求項4】
前記第1の舵軸の外周面に固定されると共に、前記フランジ部の近傍に設けられ、同第1
の舵軸の長手方向と略平行な貫通孔である第1のピン孔が形成されたクランプ部を備え、
前記フランジ部には、前記第1
の舵軸の長手方向と略平行な貫通孔であると共に、前記フランジ部が
前記第1の舵軸に固定された状態で、前記第1のピン孔と連通する第2のピン孔が形成され、
連通した前記第1のピン孔及び前記第2のピン孔に挿脱可能に構成され、その挿脱により、前記フランジ部が前記第1の舵軸に固定された状態と、同フランジ部
と同第1の舵軸
との固定が解除された状態とを切り替えるピン部材を有する
請求項1又は請求項2に記載の船舶の操縦支援装置。
【請求項5】
前記フランジ部は、同フランジ部が前記第1の舵軸に固定された状態で、前記プロペラの軸心の方向と略平行な向きに突出した凸部が形成され、
前記凸部の突出した方向を基準として、前記第1の舵軸及び前記第1のラダーと、前記第2の舵軸及び前記第2のラダーの、それぞれの回転角度が制御可能である
請求項1又は請求項2に記載の船舶の操縦支援装置。
【請求項6】
風の風速及び向きを計測する風向風速計側手段と、
前記船の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記船の移動方向と移動量を計測する加速度測定手段と、
前記風速及び向きの情報と、前記位置情報と、前記移動方向及び前記移動量に基づき、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを制御するCPUを備える
請求項1又は請求項2に記載の船舶の操縦支援装置。
【請求項7】
前記第1の羽根部の他端の端面には、前記第2の管部の外周面に沿って回動する第1のスクレーパー部が設けられ、
前記第2の羽根部の他端の端面には、前記第1の管部の外周面に沿って回動する第2のスクレーパー部が設けられた
請求項2に記載の船舶の操縦支援装置。
【請求項8】
前記船は、総トン数が20トン未満である
請求項1又は請求項2に記載の船舶の操縦支援装置。
【請求項9】
360度の範囲の任意の方向にスティックを傾けて、前記船の移動方向及び移動速度を入力可能な操作部を備える
請求項1又は請求項2に記載の船舶の操縦支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の操縦支援装置に関する。詳しくは、プロペラと舵を介して操舵する小型船舶に、容易に後付けすることができ、既設の舵と取り換えることで、船の移動方向を自由度高く制御可能となる船舶の操縦支援装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、漁船やプレジャーボート等の用途で小型船舶が広く用いられている。小型船舶とは、総トン数20トン未満の船舶であり、例えば、全長が20m以下とサイズが小さく、1人でも操縦が可能なため、特に漁業用の船として古くから重宝されている。
【0003】
また、小型船舶の推進機関の設置方法には幾つかの方式があり、船内機船と呼ばれる方式では、エンジンで駆動するプロペラを、シャフトを介して船底の下方に配置し、プロペラと独立した舵をプロペラの後方に設けて、プロペラで押し出された水流の向きを変えて船を操舵する(例えば、非特許文献1及び被特許文献2参照)。
【0004】
また、プロペラは、これを構成する複数の羽根が回転して推力を生じるが、プロペラ自体の向きは、一般的に、船の前後方向に沿って水流を生じるように、シャフトを介して固定されている。
【0005】
また、小型船舶における舵は、例えば、平面視した際に、一端が尖り他端が丸くなった略水滴状の板を、舵軸に固定して構成されている。また、舵軸は、船底に形成した筒状の貫通孔に挿通されている。
【0006】
そして、この舵軸を、手動又は油圧シリンダー等の駆動源に接続して自動で回転させ、略水滴状の板の向き(回転角度)を変え、船の移動方向を制御している。
【0007】
このような小型船舶は、主に、1軸のプロペラと、プロペラを駆動するエンジン及び1枚板からなる舵から構成されている。そのため、駆動機構が、簡易な構造であり、頑丈であることから、年数の古い船であっても、整備や保守を行うことで長期間使用されている。
【0008】
また、こうした小型船舶は、船の中では安価な部類に入るため、漁業用の船舶の全体数のうち、かなりの割合を占めている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】藤田一人"小型船舶操縦士免許取得の無料講座へようこそ!藤田海事代理士 北海道札幌市"、[online]運行(一般)、船体・設備・装備品、機関の装備の方法による小型船の分類[令和5年1月18日検索]、インターネット<URL:http://support.fujita-kaijidairisi.com/index.php?%E8%88%B9%E4%BD%93%E3%83%BB%E8%A8%AD%E5%82%99%E3%83%BB%E8%A3%85%E5%82%99%E5%93%81>
【文献】愛知海ナビボート免許センター"ホームページ"、[online]スマホ学習(2級小型)、第3編-1運行、第1章操縦、1-1小型船舶 操舵の仕組み、2船内機船[令和5年1月18日検索]、インターネット<URL:https://www.j-mate.net/2kyu-study-3/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、船内機船の小型船舶では、上述したように、向きが固定されたプロペラに対して、舵を回転させて船の移動方向を制御するため、主に舵の動きに追従して、船の移動方向が決定される。
【0011】
そのため、船の移動方向は、舵の動きの制約を受けることになり、1つの舵の動きのみでは、船の制御動作に限界があった。より詳細には、回転や横方向への移動、斜め方向への移動、エンジンを駆動したまま、一定の位置に留まる動作等、複雑な移動や停止を行うことが難しかった。
【0012】
特に、船が低速で航行する際には、舵の効きが悪くなるため、より一層、複雑な移動を行うことが困難となる。また、水上では、船体に風の影響を受けるため、風速や風向も考慮して、船を操舵する必要がある。
【0013】
即ち、例えば、作業者が1人で漁を行う場合、作業者は、漁場での網の設置や回収等、漁の作業に集中したいが、漁船の自由な動きが制限されているため、操船作業に手を取られてしまう問題があった。
【0014】
また、一方で、大型の船舶や高価なプレジャーボート等であれば、複数の船外機や、船体の前後にプロペラを有した構造であるため、回転や横向きの移動等、複雑な移動が可能となる。
【0015】
しかし、比較的安価な小型船舶に対して、新たにプロペラを追加することや、複数の船外機を設けることは現実的でない。また、船体が小型であるため、プロペラ等の設置個所が確保できないことや、船底に新たに孔を設けることができない等の不都合があった。
【0016】
このように、1軸のプロペラと舵で、その移動方向を制御する小型船舶に対しては、船体の構造になるべく手を加えることなく、複雑な動きを可能にしたいという要望があるものの、容易かつ安価にこれを実現する手段がなかった。
【0017】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、プロペラと舵を介して操舵する小型船舶に、容易に後付けすることができ、既設の舵と取り換えることで、船の移動方向を自由度高く制御可能となる船舶の操縦支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の船舶の操縦支援装置は、船の船底の下方に設けられ、所定の駆動源を介して回転可能なプロペラと、前記船底に形成された軸孔に挿通され、その一端側が同船底の外側に延び出して配置されると共に、回転可能に構成された舵軸と、前記舵軸の前記一端側に取り付けられ、前記プロペラが回転して生じた水流の流れを変えて、船の進行方向を変化又は調整する所定の舵とを備える船に対して、後付け可能に構成された船舶の操縦支援装置であって、前記軸孔に挿通可能に構成された略筒状の第1の舵軸と、前記第1の舵軸の貫通孔の内部に回転自在に挿通されると共に、前記第1の舵軸の一端側及び他端側よりも外側に延び出す長さに形成された第2の舵軸と、前記第1の舵軸の一端側に固定された第1のラダーと、前記第2の舵軸の一端側に固定され、前記第1のラダーと重ね合った状態で、1つの舵板を形成する第2のラダーと、前記第1の舵軸の外周面かつ他端側に配置され、同第1の舵軸に固定された状態と、同第1の舵軸から分離した状態とが切り替え可能なフランジ部と、前記フランジ部が前記第1の舵軸に固定された状態で、同第1の舵軸の軸心を中心として、同フランジ部、同第1の舵軸及び前記第2の舵軸を一体的に回転せしめるフランジ部駆動源と、前記フランジ部に取り付けられ、前記フランジ部が前記第1の舵軸から分離した状態で、前記第1の舵軸及び前記第1のラダーを、独立して回転せしめる第1のアクチュエータと、前記フランジ部に取り付けられ、前記フランジ部が前記第1の舵軸から分離した状態で、前記第2の舵軸及び前記第2のラダーを、独立して回転せしめる第2のアクチュエータとを備える。
【0019】
ここで、軸孔に挿通可能に構成された略筒状の第1の舵軸と、第1の舵軸の一端側に固定された第1のラダーと、フランジ部が第1の舵軸から分離した状態で、第1の舵軸及び第1のラダーを、独立して回転せしめる第1のアクチュエータによって、第2のラダーとは別に独立した舵として、第1のラダーを回転させてプロペラが生じた水流の流れを変え、船の移動方向を制御することができる。
【0020】
また、第2の舵軸が、第1の舵軸の貫通孔の内部に回転自在に挿通されると共に、第1の舵軸の一端側及び他端側よりも外側に延び出す長さに形成され、第2のラダーが、第2の舵軸の一端側に固定されたことによって、第1の舵軸の長さよりも第2の舵軸の長さが長くなり、第2の舵軸を第1の舵軸の内側に挿通させた状態で、第2の舵軸と第2のラダーからなる舵を構築することが可能となる。
【0021】
また、第1の舵軸の貫通孔の内部に回転自在に挿通されると共に、第1の舵軸の一端側及び他端側よりも外側に延び出す長さに形成された第2の舵軸と、第2の舵軸の一端側に固定された第2のラダーと、フランジ部が第1の舵軸から分離した状態で、第2の舵軸及び第2のラダーを、独立して回転せしめる第2のアクチュエータによって、第1のラダーとは別に独立した舵として、第2のラダーを回転させてプロペラが生じた水流の流れを変え、船の移動方向を制御することができる。
【0022】
また、軸孔に挿通可能に構成された略筒状の第1の舵軸と、第1の舵軸の一端側に固定された第1のラダーと、フランジ部が第1の舵軸から分離した状態で、第1の舵軸及び第1のラダーを、独立して回転せしめる第1のアクチュエータと、第1の舵軸の貫通孔の内部に回転自在に挿通されると共に、第1の舵軸の一端側及び他端側よりも外側に延び出す長さに形成された第2の舵軸と、第2の舵軸の一端側に固定された第2のラダーと、フランジ部が第1の舵軸から分離した状態で、第2の舵軸及び第2のラダーを、独立して回転せしめる第2のアクチュエータによって、それぞれ独立して回転させることが可能な2つのラダーの動きを組み合わせて、複雑な船の動きを実現することが可能となる。即ち、プロペラが生じた水流の流れに対して、第1のラダーと、第2のラダーのそれぞれの回転角度を調節することで、水流の流れをより精密に制御することができる。この結果、1つのラダーのみでの水流の制御では得られなかった推進力を船体に作用させることができ、回転や横方向及び斜め方向への移動又はエンジンを駆動したまま一定の位置に留まる等、船の移動方向を自由度高く制御可能となる。
【0023】
また、第1の舵軸が略筒状であり、第2の舵軸が第1の舵軸の貫通孔の内部に回転自在に挿通されると共に、第1の舵軸の一端側及び他端側よりも外側に延び出す長さに形成されたことによって、第1の舵軸の内側に、第2の舵軸を挿通して、同じ軸心を中心として、それぞれの舵軸を回転させることができる。このことによれば、第1の舵軸の直径方向において、第1の舵軸と第2の舵軸が占める領域が、第1の舵軸の1本分の範囲内に収まるものとなり、コンパクトな構造で、2つのラダーの回転を実現することができる。
【0024】
また、フランジ部が、第1の舵軸の外周面かつ他端側に配置され、第1の舵軸に固定された状態と、第1の舵軸から分離した状態とが切り替え可能であり、第2のラダーが、第2の舵軸の一端側に固定され、第1のラダーと重ね合った状態で、1つの舵板を形成し、フランジ部駆動源が、フランジ部が第1の舵軸に固定された状態で、第1の舵軸の軸心を中心として、フランジ部、第1の舵軸及び第2の舵軸を一体的に回転せしめることによって、第1のラダー及び第2のラダーからなる舵板を、1つの舵として回転させ、プロペラが生じた水流の流れを変え、船の移動方向を制御することができる。即ち、2つのラダーを個別に回転させることによる水流の制御だけでなく、2つのラダーを一体化させた、1つの大きな舵としても、水流の制御を行うことが可能となる。この際、フランジ部が、フランジ部駆動源と、第1の舵軸を接続し、フランジ部駆動源により、フランジ部、第1の舵軸及び第2の舵軸を一体的に回転させて、舵板の回転角度を制御することができる。
【0025】
また、フランジ部が、第1の舵軸に固定された状態と、第1の舵軸から分離した状態とが切り替え可能であり、フランジ部駆動源が、フランジ部が第1の舵軸に固定された状態で、第1の舵軸の軸心を中心として、フランジ部、第1の舵軸及び第2の舵軸を一体的に回転せしめることによって、フランジ部と第1の舵軸との間の固定と分離の切り替えにより、第1のラダーと第2のラダーを1つの舵板として回転させるか又は2つのラダーを独立して回転させるかを変更することができる。即ち、フランジ部が第1の舵軸に固定された状態では、フランジ部、第1の舵軸及び第2の舵軸は、1つの舵板として、一体的に回転するものとなる。また、フランジ部が第1の舵軸から分離した状態では、第1の舵軸と、第2の舵軸は独立して回転させることが可能となる。
【0026】
また、第1の舵軸が、軸孔に挿通可能に構成されたことによって、船に元々形成された軸孔を利用できるため、船の船体に新たな加工等を施すことなく、第1の舵軸を船底に取り付けることができる。また、第1の舵軸及び第2の舵軸を、既設の舵と取り換え、比較的簡単な作業で、船に装置を取り付けることができるため、既存の船に対して、容易に後付けすることが可能となる。
【0027】
また、フランジ部が、第1の舵軸の外周面に配置されたことによって、フランジ部を軸孔に引っ掛けて、第1の舵軸が軸孔から抜け落ちることを抑止できる。
【0028】
また、第1のラダーが、一端側に向けて厚みが小さくなる第1の羽根部と、第1の羽根部の他端側に設けられた複数の第1の管部を有し、第2のラダーが、一端側に向けて厚みが小さくなる第2の羽根部と、第2の羽根部の他端側に設けられた複数の第2の管部を有する場合には、第1のラダー及び第2のラダーが、羽根部と複数の管部で構築され、管部側を軸心として羽根部の回転角度を変え、羽根部の部分で、プロペラが生じた水流の流れを変えることができる。
【0029】
また、第1の羽根部の一端側及び第2の羽根部の一端側を揃えて、第1の羽根部と第2の羽根部を重ね合わせた状態で、舵板が構成される場合には、第1の羽根部と第2の羽根部を重ね合わせて一体化して、1つの大きな舵板を構築して、この舵板でプロペラが生じた水流の流れを変えることができる。
【0030】
また、第1の羽根部の一端側及び第2の羽根部の一端側を揃えて、第1の羽根部と第2の羽根部を重ね合わせた状態で、舵板が構成されると共に、第1の管部及び第2の管部が一列に並んで管部貫通孔が形成され、第1の舵軸は、管部貫通孔の一部に挿通され、第2の舵軸は、管部貫通孔の全部に挿通された場合には、管部貫通孔に、第1の舵軸と第2の舵軸の両方を挿入して、各舵軸を、第1の管部又は第2の管部のそれぞれと固定し、第1の羽根部と、第2の羽根部のそれぞれの回転の中心軸とすることができる。また、第1の舵軸が管部貫通孔の一部に挿通され、第2の舵軸が、管部貫通孔の全部に挿通されたことで、複数の第1の管部のうちの一部を第1の舵軸に固定して、かつ、複数の第2の管部のうちの一部を第2の舵軸に固定することが可能となる。即ち、第2の舵軸は、第1の舵軸の貫通孔に挿通され、その一部が第1の舵軸の一端よりも外側に延び出しているため、第1の舵軸が管部貫通孔の一部に挿通されることで、管部貫通孔の内周面には、第1の舵軸の外周面とのみ対向する領域と、第2の舵軸の外周面とのみ対向する領域ができ、各領域に対応する位置で、それぞれの舵軸と管部を固定することができる。
【0031】
また、第1の舵軸の外周面に固定された第1のギアと、第2の舵軸の外周面に固定された第2のギアとを有し、第1のアクチュエータは、歯車構造で第1のギアと噛み合った第1の出力ギアに動力伝達し、第1の出力ギアを回転させ、第2のアクチュエータは、歯車構造で第2のギアと噛み合った第2の出力ギアに動力伝達し、第2の出力ギアを回転させる場合には、第1のギア及び第1の出力ギアと、第2のギア及び第2の出力ギアの、それぞれの歯車構造の噛み合いにより、第1の舵軸と、第2の舵軸のそれぞれを回転させることができる。
【0032】
また、第1の舵軸の外周面に固定されると共に、フランジ部の近傍に設けられ、第1舵軸の長手方向と略平行な貫通孔である第1のピン孔が形成されたクランプ部を備え、フランジ部には、第1舵軸の長手方向と略平行な貫通孔であると共に、フランジ部が第1の舵軸に固定された状態で、前記第1のピン孔と連通する第2のピン孔が形成され、連通した第1のピン孔及び第2のピン孔に挿脱可能に構成され、その挿脱により、フランジ部が第1の舵軸に固定された状態と、フランジ部が第1の舵軸から分離した状態とを切り替えるピン部材を有する場合には、第1のピン孔、第2のピン孔及びピン部材からなる、比較的簡易な構成で、フランジ部と第1の舵軸との間の固定又は分離を切り替えることができる。また、ピン部材を、第1のピン孔及び第2のピン孔に対して、挿通させるか又は抜き出す動作により、フランジ部と第1の舵軸との間の固定と分離を切り替え可能となる。
【0033】
また、フランジ部は、フランジ部が第1の舵軸に固定された状態で、プロペラの軸心の方向と略平行な向きに突出した凸部が形成され、凸部の突出した方向を基準として、第1の舵軸及び第1のラダーと、第2の舵軸及び第2のラダーの、それぞれの回転角度が制御可能である場合には、凸部の突出した方向を、それぞれのラダーが回転する前の起点の角度(例えば、0度)として、この起点の角度からの角度の変位量をもって、それぞれの舵軸を中心とした、各ラダーの回転動作を厳密に制御可能となる。また、第1のラダーと第2のラダーを重ねて1つの舵板として使用する際には、凸部の突出した方向に向かうように各ラダーの回転角度を調整することで、1つの舵板が回転する前の起点の位置で、第1のラダーと第2のラダーを一体化させることができる。
【0034】
また、風の風速及び向きを計測する風向風速計側手段と、船の位置情報を取得する位置情報取得手段と、船の移動方向と移動量を計測する加速度測定手段と、風速及び向きの情報と、位置情報と、移動方向及び移動量に基づき、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータを制御するCPUとを備える場合には、風の風速及び向きの情報と、船の位置情報と、移動方向及び移動量に基づいて、船の移動方向を制御することが可能となる。即ち、これらの情報に基づいて、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータの動作を制御して、第1のラダー及び第2のラダーの回転角度を調整し、所望の方向に船が移動するような推力を得ることができる。また、停船時又はごく低速での航行時には、これらの情報に基づいて、風の正面に船の船首を向けるように、船体の向きを制御することも可能となる。この結果、船体への風の影響を抑え、船が風で流されにくくすることができる。
【0035】
また、第1の羽根部の他端の端面には、第2の管部の外周面に沿って回動する第1のスクレーパー部が設けられ、第2の羽根部の他端の端面には、第1の管部の外周面に沿って回動する第2のスクレーパー部が設けられた場合には、第1の管部と第2の管部の結合箇所や、各管部の外周面に付着する貝等の海洋付着物を、第1のスクレーパー部及び第2のスクレーパー部で除去することができる。これにより、第1のラダー及び第2のラダーの保守が容易となる。
【0036】
また、船は、総トン数が20トン未満である場合には、小型船舶に対して、船舶の操縦支援装置を導入することができる。
【0037】
また、360度の範囲の任意の方向にスティックを傾けて、船の移動方向及び移動速度を入力可能な操作部を備える場合には、スティックを所望の方向に傾ける簡単な操作で、船の移動方向を入力して、船の移動を制御することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る船舶の操縦支援装置は、プロペラと舵を介して操舵する小型船舶に、容易に後付けすることができ、既設の舵と取り換えることで、船の移動方向を自由度高く制御可能なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】(a)は、本発明に係る船舶の操縦支援装置の一例である操縦支援装置を取り付けた船を示す概略斜視図であり、(b)は、
図1(a)に示す図の概略側面断面図である。
【
図2】ラダーユニット、接続ユニット及び駆動ユニットの概略構造を示す概略斜視図である。
【
図3】(a)は、ラダーユニットの全体構造を斜め上方から見た概略斜視図であり、(b)は、ラダーユニットの全体構造を斜め下方から見た概略斜視図である。
【
図4】接続ユニットの構造を示す概略斜視図である。
【
図5】アクチュエータユニットの取付構造を示す分解斜視図である。
【
図6】アクチュエータユニットの内部構造を示す概略斜視断面図である。
【
図7】アクチュエータ本体の筐体の内部構造を示す概略平面図である。
【
図8】アクチュエータユニットの内部構造を示す概略正面断面図である。
【
図9】(a)~(d)は、ラダーユニットの組立ての流れを示す工程図である。
【
図10】(a)~(d)は、船へのラダーユニットの取り付けの流れを示す工程図である。
【
図11】(a)~(d)は、アウターシャフトへのT型プレートの取り付けの流れを示す工程図である。
【
図12】(a)~(d)は、上部ギア、下部ギア及びアクチュエータユニットの取り付けの流れを示す工程図である。
【
図13】(a)~(c)は、船舶の操縦支援装置を取り付けた船における、2つのスプリットラダーの動きと船の動きを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
本発明を適用した船舶の操縦支援装置の一例である操縦支援装置について説明する。なお、以下の事例では、操縦支援装置を船1に取り付けた構造(
図1(a)参照)を元に説明を行う。
【0041】
また、以下の説明では、
図1(b)を基準として、船1における船尾から見た船首の方向を、前又は前方と称し、船首から見た船尾の方向を、後ろ又は後方と称する。また、船1のプロペラ10から見た船体の方向を、上又は上方と称し、船体から見たプロペラ10の方向を、下又は下方と称する。また、前後を結ぶ方向を、前後方向と称し、上下を結ぶ方向を、上下方向又は鉛直方向と称する。
【0042】
また、以下の説明では、
図13(a)を基準として、船体の中心から見て紙面の上方を、右又は右方と称し、船体の中心から見て紙面の下方を、左又は左方と称する。また、左右を結ぶ方向を、左右方向と称する。また、前後方向又は左右方向を、水平方向と称する場合がある。
【0043】
ここで、船1は、総トン数が20トン未満の小型船舶に分類される船である。また、船1は、推進機関が船内機船の方式で設置された船であり、1つのプロペラ10がシャフト11を介して船底の下方に設置されている(
図1(b)参照)。なお、ここでいう船1が、本願請求項における船に相当する部分である。
【0044】
なお、説明の便宜上、船1の全体の構造は簡略化した内容で図示している。また、
図1(b)では、船体とシャフト11の接続箇所は省略して図示している。なお、ここでいうプロペラ10が、本願請求項におけるプロペラに相当する部材である。
【0045】
また、船1は、船尾側の船底に、船体を上下方向に貫通した軸孔12が形成されている(
図1(b)参照)。この軸孔12は、操縦支援装置を船1に後付けする前に、元々、船1が備えていた舵(図示省略)をプロペラ10の後方に配置するための孔部である。なお、ここでいう軸孔12が、本願請求項における軸孔に相当する部分である。
【0046】
また軸孔12に対応する船体側には、船1の既設の舵のシャフトを保護する保護筒部13が形成されている。また、軸孔12及び保護筒部13は一体化した構造となっており、既設の舵又は後述するシャフト部20を挿通させる部分となる。なお、ここでいう既設の舵が、本願請求項における所定の舵に相当する部材である。
【0047】
本発明の実施の形態である操縦支援装置は、船1の既設の舵に代えて、後述するラダーユニット2を取り付けて、プロペラ10が生じる水流を精密に制御して、船1における複雑な移動を可能とする装置である。
【0048】
ここで、操縦支援装置は、ラダーユニット2と、接続ユニット3と、駆動ユニット4と、制御ユニット(図示省略)を有している(
図1(a)、
図1(b)及び
図2参照)。
【0049】
また、ラダーユニット2は、図示しないエンジンを駆動源として回転するプロペラ10が生じた水流の向きを調整して、船1を所望の方向に移動させるための推進力を生じさせ、その移動方向を制御する部分である。
【0050】
また、接続ユニット3は、ラダーユニット2と駆動ユニット4との間を接続するための各種の接続機構から構成された部分である。
【0051】
また、駆動ユニット4は、ラダーユニット2を駆動させるための各種の駆動機構から構成された部分である。
【0052】
また、制御ユニットは、駆動ユニット4を介してラダーユニット2を駆動させる際に、その駆動の制御を行う部分である。また、制御ユニットは、後述する各種センサー又は計測機器等が収集した情報の情報処理を行い、ラダーユニット2の駆動を制御する部分である。
【0053】
[ラダーユニット]
図2に示すように、ラダーユニット2は、シャフト部20と、ラダー部21を有している。
【0054】
また、シャフト部20は、筒状のアウターシャフト200と、筒状のインナーシャフト201で構成されている(
図3(a)及び
図3(b)参照)。また、ラダー部21は、2つのスプリットラダー210及びスプリットラダー211で構成されている。
【0055】
ここで、アウターシャフト200は、その下端部側がスプリットラダー210に固定され、1本の舵の回転軸となる部材である。また、インナーシャフト201は、その下端部側がスプリットラダー211に固定され、1本の舵の回転軸となる部材である。即ち、これらの2本の舵が、それぞれ独立して回転する舵となる。
【0056】
なお、ここでいうアウターシャフト200が、本願請求項における第1の舵軸に相当する部材である。また、ここでいうインナーシャフト201が、本願請求項における第2の舵軸に相当する部材である。また、ここでいうスプリットラダー210及びスプリットラダー211がそれぞれ、本願請求項における第1のラダー及び第2のラダーに相当する部材である。
【0057】
また、スプリットラダー210及びスプリットラダー211は、この2つの部材が重なった状態で、1本の舵となる結合ラダー212を構成する(
図3(a)及び
図3(b)参照)。
【0058】
この結合ラダー212は、1本の大きな舵として回転し、プロペラ10が生じた水流の向きを調整する部材となる。なお、ここでいう結合ラダー212が、本願請求項における舵板に相当する部材である。
【0059】
また、
図3(a)に示すように、筒状のアウターシャフト200の外周径は、筒状のインナーシャフト201の外周径よりも大きく形成されている。また、アウターシャフト200の貫通孔の内側に、インナーシャフト201が回転自在に挿通されている。このためアウターシャフト200と、インナーシャフト201は、共通する軸心を有する位置関係にある。
【0060】
なお、結合ラダー212として機能する際には、アウターシャフト200と、インナーシャフト201は、1つの回転軸として一体的に回転するが、詳細については後述する。
【0061】
また、インナーシャフト201の長さは、アウターシャフト200の長さよりも長く形成されている。そのため、アウターシャフト200の貫通孔の内側にインナーシャフト201を挿通させると、アウターシャフト200の上端及び下端の両方から、インナーシャフト201が延び出した構造となる。
【0062】
また、アウターシャフト200の下端から延び出したインナーシャフト201の下端部側の長さは、後述するスプリットラダー211における管部216との固定に必要な長さで設定されている。なお、ラダーユニット2の詳細な組み立て構造は後述する。
【0063】
また、スプリットラダー210は、1枚の羽根部213と、複数の管部214を有している(
図3(a)及び
図3(b)参照)。また、スプリットラダー211は、スプリットラダー210と同様の構造であり、1枚の羽根部215と、複数の管部216を有している。本実施の形態では、管部214と管部216は、いずれも4つずつ設けられた構造となっている。
【0064】
なお、ここでいう羽根部213及び管部214が、本願請求項における第1の羽根部及び第1の管部に相当する部材である。また、ここでいう羽根部215及び管部216が、本願請求項における第2の羽根部及び第2の管部に相当する部材である。
【0065】
また、羽根部213は、アウターシャフト200を回転軸として回転し、プロペラ10が生じた水流の向きを調整する部材である。また、羽根部215は、インナーシャフト201を回転軸として回転し、プロペラ10が生じた水流の向きを調整する部材である。
【0066】
また、複数の管部214は、4つのうち上部側の2つに、アウターシャフト200及びインナーシャフト201が挿通され、アウターシャフト200の下端部側を固定する部分となる。即ち、複数の管部214の上部側の一部及び固定具を介して、アウターシャフト200の下端部側と羽根部213が固定される。
【0067】
また、複数の管部214は、4つのうち下部側の2つに、アウターシャフト200の下端から延び出したインナーシャフト201が挿通されている。
【0068】
また、複数の管部216は、4つのうちの上部側の2つに、アウターシャフト200及びインナーシャフト201が挿通され、下部側の2つに、インナーシャフト201のみが挿通され、インナーシャフト201の下端部側を固定する部分となる。即ち、複数の管部216の下部側の一部及び固定具を介して、インナーシャフト201の下端部側と羽根部215が固定される。
【0069】
ここで、管部214及び管部216の数は、それぞれ4つずつに限定されるものではなく、適宜設定することができる。また、管部214のうち、アウターシャフト200と固定する管部214の数と、管部216のうち、インナーシャフト201と固定する管部216の数も、それぞれ2つずつに限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0070】
また、必ずしも、スプリットラダー210に複数の管部214が形成される必要はなく、アウターシャフト200の下端部側と羽根部213が固定可能であれば、種々の固定構造が採用しうる。但し、アウターシャフト200を管部214に挿通させて固定することで、安定した固定構造となるため、スプリットラダー210に複数の管部214が形成されることが好ましい。
【0071】
また、必ずしも、スプリットラダー211に複数の管部216が形成される必要はなく、インナーシャフト201の下端部側と羽根部215が固定可能であれば、種々の固定構造が採用しうる。但し、インナーシャフト201を管部216に挿通させて固定することで、安定した固定構造となるため、スプリットラダー211に複数の管部216が形成されることが好ましい。
【0072】
また、複数の管部214と、複数の管部216は、それぞれの全ての管部が、上下方向に沿って一列に並び、隣接して配置された構造となっている(
図3(a)及び
図3(b)参照)。
【0073】
これにより、複数の管部214の貫通孔と複数の管部216の貫通孔が連通して、1つの大きな管部貫通孔217を形成する。なお、ここでいう管部貫通孔217が、本願請求項における管部貫通孔に相当する部分である。
【0074】
即ち、この管部貫通孔217に対して、アウターシャフト200及びインナーシャフト201が挿通され、上述したように、管部214又は管部216と固定された構造となる。
【0075】
また、ラダーユニット2が、1つの舵である結合ラダー212として機能する場合には、管部貫通孔217に挿通されたアウターシャフト200及びインナーシャフト201が、一体となって結合ラダー212の回転軸となる。
【0076】
また、
図3(b)に示すように、ラダーユニット2は、管部貫通孔217の下端の位置に、インナーシャフト201の下方への抜け落ちを防止するための、抜け止めキャップ22が取り付けられている。
【0077】
また、スプリットラダー210は、羽根部213のアウターシャフト200側の端面に、板状のスクレーパー23が取り付けられている(
図3(a)参照)。このスクレーパー23は、近傍の管部216の外周面や、管部214及び管部216の結合部分に付着する貝等の海洋付着物を除去する部材である。
【0078】
このスクレーパー23は、管部216の数と同じく4つ設けられている。また、スプリットラダー201には、羽根部215の端面に、スクレーパー23と同様の部材であるスクレーパー24が4つ設けられている(
図3(b)参照)。
【0079】
なお、ここでいうスクレーパー23及びスクレーパー24が、本願請求項における第1のスクレーパー部及び第2のスクレーパー部に相当する部材である。
【0080】
[接続ユニット]
図4及び
図5に示すように、接続ユニット3は、T型プレート30と、取付スタンド31、取付スタンド32及びピン33を有している。なお、ここでいうT型プレート30が、本願請求項におけるフランジ部に相当する部材である。また、ピン33が、本願請求項におけるピン部材に相当する部材である。
【0081】
また、
図5は、各部材の構造と形状を明確にするために、T型プレート30、取付スタンド31、取付スタンド32、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42を分離した状態で示している。
【0082】
ここで、T型プレート30は、外形が略T字状の板部材であり、後述する油圧シリンダー40と、アウターシャフト200を接続する部材であり、かつ、シャフト部20が軸孔12から下方に抜け落ちないようにするための部材である。また、T型プレート30は、ピン33を介して、アウターシャフト200に固定された状態と、分離した状態を切り替え可能に構成されている。
【0083】
また、T型プレート30には、ピン33を挿通可能な上部ピン孔302が形成されている。この上部ピン孔302は、後述する下部ピン孔342と連通して、ピン33を挿脱可能な孔部を形成する。なお、T型プレート30のアウターシャフト200への詳細な取り付け構造と、ピン33による切り替えについては後述する。また、ここでいう上部ピン孔302が、本願請求項における第2のピン孔に相当する部分である。
【0084】
また、取付スタンド31は、後述するアクチュエータユニット41をT型プレート30に取り付けるための部材である。また、取付スタンド32は、後述するアクチュエータユニット42をT型プレート30に取り付けるための部材である。
【0085】
また、T型プレート30は、突出片300と、2つの取付片301を有している(
図4及び
図5参照)。突出片300は、スプリットラダー210とスプリットラダー211が、それぞれ独立して回転する際に、その回転角度の基準位置(ホームポジション)を示す部材である。なお、ここでいう突出片300が、本願請求項における凸部に相当する部分である。
【0086】
即ち、2つのラダーが独立して回転する際には、突出片300の突出した方向が、水平方向の回転における0度の位置となる。制御ユニットは、この基準位置からの回転角度の変位量に基づき、スプリットラダー210とスプリットラダー211のそれぞれの駆動を制御するよう構成されている。
【0087】
また、突出片300が突出した方向は、プロペラ10の軸心の方向と略平行な方向である。また、さらに言えば、突出片300が突出した方向は、船1における前方から後方に向かう方向である。
【0088】
また、2つの取付片301は、図示しない固定具を介して、取付スタンド31の下端部及び取付スタンド32の下端部のそれぞれを固定する部分である(
図4及び
図5参照)。
【0089】
また、取付スタンド31は、一対の縦板310から構成され、縦板310の上部には、アクチュエータユニット41を乗せて固定するための載置部311が形成されている(
図5参照)。
【0090】
また、取付スタンド32は、取付スタンド31とほぼ同様の構造を有しており、一対の縦板320から構成され、縦板320の上部には、アクチュエータユニット42を乗せて固定するための載置部321が形成されている(
図5参照)。
【0091】
また、縦板320の長さは、縦板310の長さよりも長く形成されている。これにより、鉛直方向において、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42の高さ位置を異ならせて配置可能となる。
【0092】
ここで、必ずしも、T型プレート30は、その外形が略T字状に形成される必要はなく、また、突出片300と2つの取付片301を有する構成に限定されるものではない。T型プレート30は、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42が取り付け可能に構成されていれば、その形状は適宜変更することができる。また、突出片300の代わりに、一定の方向を示す部材や目印が設けられた構造も採用しうる。
【0093】
また、取付スタンド31及び取付スタンド32の形状と構造は、特に限定されるものではなく、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42の高さ位置を異ならせて、これらをT型プレートに固定可能であれば、適宜変更することができる。
【0094】
[駆動ユニット]
図4に示すように、駆動ユニット4は、油圧シリンダー40と、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42を有している。なお、ここでいう油圧シリンダー40が、本願請求項におけるフランジ部駆動源に相当する部材である。また、ここでいうアクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42がそれぞれ、本願請求項における第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータに相当する部材である。
【0095】
ここで、油圧シリンダー40は、アウターシャフト200に固定された状態のT型プレート30を水平方向に沿って回転させる駆動源である。
【0096】
即ち、スプリットラダー210とスプリットラダー211が一体化して結合ラダー212として機能する際に、油圧シリンダー40がT型プレート30を回動させ、これに伴い、アウターシャフト200及びインナーシャフト201が一体的に回転し、結合ラダー212が回転するよう構成されている。
【0097】
また、油圧シリンダー40は、船1の既設のエンジン等に接続されて駆動するよう構成されている。例えば、油圧シリンダー40と、プロペラ10を共通のエンジンに接続して駆動させる態様が採用しうる。
【0098】
ここで、必ずしも、油圧シリンダー40が、船1の既設のエンジン等に接続されて駆動するよう構成される必要はない。例えば、別途の駆動源に接続する態様又は油圧シリンダー40専用の駆動源を設ける態様も採用することができる。
【0099】
また、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42はそれぞれ、スプリットラダー210及びスプリットラダー211を独立して回転させるための駆動源である。また、アクチュエータユニット41と、アクチュエータユニット42は同一の構造を有しており、各ユニットからは同じトルクが生じるよう構成されている。
【0100】
また、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42は、図示しないDC電源に接続されて駆動するよう構成されている。
【0101】
また、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42は、いずれも制御ユニットにより、その駆動が制御されている。
【0102】
ここで、必ずしも、アクチュエータユニット41と、アクチュエータユニット42が同一の構造を有する必要はない。スプリットラダー210及びスプリットラダー211を独立して回転させることが可能となっていれば、アクチュエータユニット41と、アクチュエータユニット42が、異なる構造を有するものであってもよい。
【0103】
また、必ずしも、アクチュエータユニット41と、アクチュエータユニット42から同じトルクが生じる必要はなく、異なるトルクを生じる2つのアクチュエータユニットを用いることもできる。但し、スプリットラダー210及びスプリットラダー211を回転させる際の制御が行い易くなることから、アクチュエータユニット41と、アクチュエータユニット42から同じトルクが生じることが好ましい。
【0104】
また、アクチュエータユニット41は、その下端部側に出力ギア410が設けられている。また、アクチュエータユニット42も同様に、その下端部側に出力ギア420が設けられている(
図4及び
図5参照)。
【0105】
この出力ギア410は、アクチュエータユニット41から生じたトルクを、アウターシャフト200の回転の動力として伝達するギア部材である。また、出力ギア420は、アクチュエータユニット42から生じたトルクを、インナーシャフト201の回転の動力として伝達するギア部材である。
【0106】
また、インナーシャフト201は、その上端部側の外周面に上部ギア50が取り付けられている。また、アウターシャフト200は、その上端部側の外周面に下部ギア51が取り付けられている(
図4及び
図5参照)。
【0107】
この上部ギア50は、出力ギア420を介して伝達された動力を、インナーシャフト201の回転力へと変換するギア部材である。また、下部ギア51は、出力ギア410を介して伝達された動力を、アウターシャフト200の回転力へと変換するギア部材である。
【0108】
なお、ここでいう出力ギア410及び出力ギア420がそれぞれ、本願請求項における第1の出力ギア及び第2の出力ギアに相当する部材である。また、ここでいう上部ギア50及び下部ギア51がそれぞれ、本願請求項における第2のギア及び第1のギアに相当する部材である。
【0109】
この出力ギア410と、アウターシャフト200の下部ギア51は、鉛直方向において同じ高さ位置にあり、歯車構造で噛み合った状態で配置されている。また出力ギア420と、インナーシャフト201の上部ギア50は、鉛直方向において同じ高さ位置にあり、歯車構造で噛み合った状態で配置されている(
図4参照)。
【0110】
続いて、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42の構造を説明する。なお、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42の内部構造は共通しているため、以下では、アクチュエータユニット42の部材を中心に説明を行い、アクチュエータユニット41の内部構造の説明は省略する。
【0111】
まず、アクチュエータユニット42は、アクチュエータ本体6を有している(
図6及び
図7参照)。
【0112】
また、アクチュエータ本体6は、筐体60と、モーター61と、ベルト伝達部62と、ウォーム減速機63を有している(
図7参照)。また、アクチュエータ本体6は、サーボドライバー64と、オペレータ部65を有している。
【0113】
また、筐体60は、モーター61、ベルト伝達部62、ウォーム減速機63、サーボドライバー64、オペレータ部65等のアクチュエータ本体6を構成する主な部材を、その内部に収容する外装部材である。なお、
図7においては、筐体60の内部構造を示すために、筐体60の天板を除いた状態を図示している。
【0114】
また、モーター61は、後述するアクチュエータシャフト68を介して、出力ギア420を回転させるトルクを生じさせるための、アクチュエータユニット42における駆動源である。モーター61は、直流駆動のDCモーターの1つであるブラシレスモーターで構成されている。また、モーター61は、回転軸(図示省略)を有している。
【0115】
また、ベルト伝達部62は、モーター61から出力された動力を、ウォーム減速機63に伝達するための動力伝達機構である。また、ベルト伝達部62は、モーター61から出力された動力の回転速度を減じることでトルクを大きくして、ウォーム減速機63に伝達する減速機構でもある。ベルト伝達部62のような動力機構は、一般的にベルトドライブとも称される。
【0116】
ベルト伝達部62は、小径プーリー620と、大径プーリー621と、ベルト622を有している(
図7参照)。小径プーリー620は、モーター61の回転軸に取り付けられ、回転軸と一体的に回転する部材である。また、大径プーリー621は、後述するウォーム減速機63のウォーム部630に取り付けられ、ウォーム部630と一体的に回転する部材である。
【0117】
また、ベルト622は、小径プーリー620及び大径プーリー621に張設されたベルト部材である。小径プーリー620及び大径プーリー621の外周面に形成された凹凸と、ベルト622の内周面に形成された凹凸が嵌合して、小径プーリー620、大径プーリー621及びベルト622が一体的に回転する構成となっている。
【0118】
また、小径プーリー620の径の大きさと、大径プーリー621の径の大きさは、その比率が、小径プーリー620:大径プーリー621=1:2の比率となっている。また、小径プーリー620と大径大径プーリー621の径の大きさの比率に応じて、モーター61の回転速度を減速させることができる。
【0119】
即ち、小径プーリー620及び大径プーリー621の径の大きさの比率から、ベルト伝達部62において、1:2の減速比を得ることができる。このベルト伝達部62における減速比と、ウォーム減速機63から得られる減速比に応じて、アクチュエータユニット42から出力されるトルクが規定される。
【0120】
ここで、必ずしも、小径プーリー620の径の大きさと、大径プーリー621の径の大きさは、その比率が、小径プーリー620:大径プーリー621=1:2の比率に限定されるものではない。但し、ベルト伝達部62で減速比を得るために、小径プーリー620の径よりも大径プーリー621の径の大きさが大きくなることが好ましい。また、ベルト伝達機構62のサイズが大きくなって、アクチュエータ本体6のサイズが大きくなることを避ける観点から、径の大きさにおいて、小径プーリー620:大径プーリー621=1:2以下となることが好ましい。また、ベルト伝達機構のサイズを小型にしながら、ベルト伝達部62で高い減速比を得ることを両立させる観点から、径の大きさにおいて、小径プーリー620:大径プーリー621=1:2となることがさらに好ましい。
【0121】
また、アクチュエータ本体6が小型にできれば、モーター61の出力の値は限定されるものではない。例えば、本発明では、出力50~100Wのモーターを用いることができる。
【0122】
また、ウォーム減速機63は、ベルト伝達部62から伝達された動力の回転速度を更に減じることでトルクを大きくして、アクチュエータシャフト68に伝達する減速機である。また、ウォーム減速機63は、1:50の減速比を有している。
【0123】
また、ウォーム減速機63は、ウォーム部630と、ウォームギア631を有している(
図7参照)。ウォーム部630及びウォームギア631には、歯車部が各々に設けられている。また、ウォーム部630に対して、ウォームギア631が直交して配置され、各歯車部の噛み合いにより動力伝達を行う部材である。
【0124】
また、ウォームギア631の周辺構造を説明する。ウォームギア631の上方かつ筐体60の内部には、コネクタホルダー66が設けられている(
図6及び
図8参照)。コネクタホルダー66は、電源基盤及び各基盤との配線を収納する部材である。
【0125】
また、ウォームギア631は、ジョイントプーリー67を介して、アクチュエータシャフト68に接続されている(
図6及び
図8参照)。また、アクチュエータシャフト68は出力ギア420に接続されている。このアクチュエータシャフト68は、ウォームギア631の回転駆動を出力ギア420に動力伝達する部材である。
【0126】
即ち、ウォームギア631及びアクチュエータシャフト68は、ジョイントプーリー67を介して一体的に回転するように構成されている。なお、ウォーム減速機63の構造は、既知の波動歯車減速機が採用可能であり、その詳細な構造の説明は省略する。
【0127】
このアクチュエータユニット42では、モーター61から出力された動力は、ベルト伝達部62により回転速度を減じることでトルクを大きくして、ウォーム減速機63に伝達される。また、ウォーム減速機63は、ベルト伝達部62から伝達された動力の回転速度を更に減じることでトルクを大きくして、アクチュエータシャフト68に伝達し、アクチュエータシャフト68が出力ギア420と一体的に回転するよう構成されている。
【0128】
また、上述したように、回転する出力ギア420は、インナーシャフト201の上端部側に固定された上部ギア50と歯車構造で嵌合して、上部ギア50(インナーシャフト201)を回転させるよう構成されている。
【0129】
なお、アクチュエータユニット41もその駆動により、出力ギア410を回転させ、アウターシャフト200に固定された下部ギア51を回転させるよう構成されている。
【0130】
ここで、必ずしも、ウォーム減速機63が、1:50の減速比を有するものに限定されるものではなく、適宜変更した減速比を有するウォーム減速機を用いることが可能である。
【0131】
また、筐体60の中において、平面視した状態で、モーター61の回転軸とベルト622がなす角度と、ベルト622とウォーム部630がなす角度は、それぞれ略90度となるように配置されている。また、ウォームギア631は、回転軸、ベルト622及びウォーム部630に囲まれて配置されている。
【0132】
これにより、小さな筐体60の限られた範囲の中に、モーター61、ベルト伝達部62及びウォーム減速機63のそれぞれの部材をコンパクトに収めることが可能となる。
【0133】
[モーターの制御機構]
また、モーター61は、制御ユニットに接続され、その駆動が制御されている。即ち、制御ユニットがモーター61の駆動を制御することで、スプリットラダー211の回転動作の制御がなされている。なお、この点は、アクチュエータユニット41に含まれるモーターでも同様である。即ち、以下に示すモーターの制御機構は、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42で共通した内容である。
【0134】
また、モーター61の駆動を制御するシステムは、アブソリュートエンコーダ(図示省略)とも接続されている。アブソリュートエンコーダは、モーター61に取り付けられ、モーター61における、回転した位置情報の検出、及び、その回転動作に対する位置制御を行う部材である。
【0135】
より詳細には、モーター61は、コントローラ及びサーボドライバー64で構成された制御システムにより、その駆動が制御されている。コントローラは、サーボドライバー64に対して動作の指令信号を出力する指令部である。
【0136】
また、サーボドライバー64は、コントローラからの指令信号に追従するように、モーター61に対してパルス信号を出力し又はその出力の制御を行う制御部である。
【0137】
また、オペレータ部65は、モーター61のサーボドライバー64、ウォーム減速機63の設定を手動で変更するための操作部である。作業者が各部材の設定条件を変更したい場合に、オペレータ部65を操作して、作業を行うことができる。また、オペレータ部65は、操作用ボタンや表記器等を有している(符号省略)。
【0138】
また、サーボドライバー64は、下位CPU及び上位CPUを有している(図示省略)。下位CPUは、モーター61にパルス信号を送信する部材である。また、下位CPUは、モーター64のアブソリュートエンコーダから、モーター64の回転位置の位置情報を取得して、その回転位置の情報と、その回転位置の位置情報が、上位CPUから指示された回転情報と一致しているか否かの判断結果の情報を上位CPUに伝達する部材である。
【0139】
また、上位CPUは、下位CPUを制御する部材である。上位CPUは、モーター61の回転速度及び回転位置を決定して、下位CPUに回転情報として送信する部材である。また、上位CPUは、アクチュエータユニット42の外部からの通信制御が可能に構成されている。
【0140】
また、上位CPUは、下位CPUから、モーター61の回転位置の位置情報と、その回転位置の位置情報が、上位CPUから指示された回転情報と一致しているか否かの判断結果の情報を取得する部材である。
【0141】
さらに、上位CPUは、下位CPUから取得した情報に基づき、モーター61の回転位置の位置情報が指示した回転位置(理論値の位置情報)と一致しない場合に、回転の修正制御を決定する部材である。即ち、上位CPUは、モーター61の回転を自立制御可能に構成されている。
【0142】
また、上位CPUは、上述したように、モーター61に対してパルス信号を送信する下位CPUを制御する部材であり、モーター61が回転した位置情報が、下位CPUに指示した回転情報(理論値)と一致しない場合に、下位CPUから出力するパルス信号を修正して、モーター61の回転動作を修正する機能を有している。
【0143】
ここで、従前のアクチュエータでは、サーボドライバー(ドライバー用CPU)の中には、下位CPUだけを有しており、上位CPUに該当する部材は含まれていない。
【0144】
そのため、従前のアクチュエータで、本発明のアクチュエータユニット42のように、サーボドライバーに上位CPUを備え、アクチュエータ単体で自立制御を可能にするには、追加で、メイン制御ボードを増設する必要が生じる。こうしたメイン制御ボード(例えば、一般的には幅120mm、長さ120mm、高さ18mmの大きさ)を増設すると、筐体60又はアクチュエータ本体6が大型になってしまう。
【0145】
従って、本発明のアクチュエータユニット42では、サーボドライバー64が、下位CPU及び上位CPUを有することで、アクチュエータユニット42を、より一層小型化することが可能となる。
【0146】
[制御ユニット]
続いて、さらに、制御ユニットの構成について説明する。
本発明の実施の形態である操縦支援装置は、上述したコントローラ及びサーボドライバー64で構成された制御システムに加えて、制御用CPU、3軸加速度センサー、GPS(Global Positioning System)及び風速風向計を有している(図示省略)。
【0147】
ここで、制御用CPUは、制御システムを構成する各種機器及びセンサー等を制御する部材である。制御CPUは、図示しない配線構造を介して、コントローラ及びサーボドライバー64、3軸加速度センサー、GPS、風速風向計及び後述するジョイスティックに接続され、測定機器やセンサー等の計測情報を取得し、情報処理を行うと共に、各機器への制御信号の発信するように構成されている。
【0148】
また、3軸加速度センサーは、3軸(X軸、Y軸及びZ軸)の加速度センサーであり、船1の移動方向、移動速度及び移動時間の情報を取得するセンサーである。この3軸加速度センサーでは、X軸方向及びY軸方向について、船1の加速度を測定して、加速度を積分することで、船1の移動速度や、船1の変位量(船1の移動量)の情報を取得することができる。
【0149】
また、GPSは、船1の位置情報を取得するための位置情報の測位システムである。また、風速風向計は、風の速度(風速)と、風の向き(風向き)を計測する計測機器である。
【0150】
また、風速風向計は、船1の停船時には、船1の船体上で吹く風についての風速及び風向きを測定する。また、船1の走行時には、走行中の船1の船上で感じる風についての風速及び風向き(相対風向風速)を測定する。
【0151】
また、制御システムは、操作部としてのジョイスティックを有している(図示省略)。ジョイスティックは、各種計測機器の測定結果や海図等を表示する表示部等と共に、船1の操舵部に設けられている。
【0152】
このジョイスティックは、船1の移動方向及び移動速度を指示する入力部であり、360度の任意の方向に傾けて、船1の移動方向を入力可能に構成されている。また、ジョイスティックを傾けた量に応じて、船1の移動速度を調整することができる。また、ジョイスティックの初期位置は、360度のいずれの方向にも本体が傾かず、鉛直方向に直立した状態となっている。
【0153】
また、ジョイスティックが、初期位置にあり、かつ、プロペラ10を回転させるエンジンが駆動している状態では、船1を、そのままの位置(一定の位置)に留まるように、即ち、ヘリコプター等でいうところのホバリングした状態となるように、船1の移動が制御されるように構成されている。
【0154】
本発明の実施の形態である操縦支援装置では、船の移動制御は、一例として、主に以下の流れに基づき行われる。
(1)操作者が、表示部で船1の位置と海図等を見ながら、船1を移動させたい方向に向けてジョイスティックを傾ける。
(2)3軸加速度センサー、GPS、及び、風向風速計により、船1の移動速度、移動量、位置情報、風速と風向きの、それぞれの情報を取得する。また、ジョイスティックの傾きの情報を取得する。
(3)制御用CPUが上記(2)の各種情報に基づき、モーター61(及びアクチュエータユニット41のモーター)の駆動を制御し、アウターシャフト200及びインナーシャフト201の回転角度を調整して、スプリットラダー210及びスプリットラダー211を回転させる。スプリットラダー210及びスプリットラダー211の回転角度により、回転するプロペラ10から生じた水流の向きを調整して、操作者がジョイスティックを傾けた方向に向けて、船1が移動するような推進力を生じさせる。なお、制御用CPUは、スプリットラダー210及びスプリットラダー211が独立して回転する際の回転角度を制御するだけでなく、スプリットラダー210及びスプリットラダー211が重なり、1本の結合ラダー212として一体的に回転する際の回転角度も制御する。
(4)制御用CPUは、上記(2)の各種情報を、一定間隔で取得し、都度のタイミングで収集した情報に基づき、船1の位置情報にてフィードバックしながら、上記(2)と(3)を繰り返し行い、船1に働く推進力を調整しながら、操作者がジョイスティックを傾けた方向に向けて、船1を移動させる。
【0155】
また、船1の停船中で、その場の位置に船1を留めたい場合には、ジョイスティックを傾けず初期位置のままにしておくことで、船1が所在する位置の位置情報に船1が向かうように、上記(1)~(4)と同様の移動制御を行い、船1を、そのままの位置に留まらせることができる。
【0156】
なお、船1をそのままの位置に留まらせる場合、例えば、風や潮の影響で船1が移動する場合があるため、船1は、上記(1)~(4)の移動制御で小刻みに移動しながら、一定範囲の位置に留まるように移動するものとなる。
【0157】
続いて、ラダーユニット2の組立ての流れと、接続ユニット3を介した、ラダーユニット2と駆動ユニット4の接続の流れについて説明する。
【0158】
[ラダーユニットの組立て]
まず、スプリットラダー210と、スプリットラダー211を重ね合わせる。ここでは、複数の管部214と、複数の管部216とが、上下方向に沿って一列に並ぶようにする。また、羽根部213と羽根部215を重ね合わせる(
図9(a)参照)。
【0159】
次に、複数の管部214と複数の管部216が一列に並んで形成された管部貫通孔217に対して、その上方から、アウターシャフト200の下端部側を挿入する(
図9(b)参照)。
【0160】
ここで、アウターシャフト200の下端部を、4つの管部214のうち、上から1番目と2番目の管部214の位置まで挿入し、2つの管部214の位置で、その外周面側から、ボルト止め(図示省略)をして、アウターシャフト200の下端部を固定する(
図9(b)及び
図9(c)参照)。
【0161】
続いて、管部214に固定したアウターシャフト200の貫通孔に対して、その上方から、インナーシャフト201を挿入する(
図9(c)参照)。
【0162】
インナーシャフト201の下端部を、スプリットラダー211の下端部まで挿入し、4つの管部216のうち、下から1番目と2番目の管部216の位置で、各管部216の外周面側から、ボルト止め(図示省略)をして、インナーシャフト201の下端部を固定する(
図9(d)参照)。
【0163】
このように管部貫通孔217に対して、アウターシャフト200と、インナーシャフト201が挿通され、それぞれが固定されることで、スプリットラダー210と、スプリットラダー211の、それぞれの回転軸となる。
【0164】
また、インナーシャフト201を固定した後、管部貫通孔217の下端に、抜け止めキャップ22を取り付けて、管部貫通孔217からのインナーシャフト201の抜け落ちを防止する(
図9(d)参照)。
【0165】
以上の流れで、スプリットラダー210、スプリットラダー211、アウターシャフト200及びインナーシャフト201を組み合わせたラダーユニット2が構築される。
【0166】
[ラダーユニットと駆動ユニットの接続]
続いて、船1に対するラダーユニット2の取付けと、駆動ユニット4の接続の流れを説明する。上述した流れで構築したラダーユニット2を、船1の船底側から取付けていく(
図10(a)参照)。
【0167】
ここでは、船1では船尾側に形成された軸孔12及び保護筒部13(
図1(a)及び
図1(b)参照)から、船1が元々備えていた舵と、舵のシャフト(既設の舵とそのシャフト)が取り外された状態となっている。
【0168】
そして、船1の船底側から軸孔12(
図10では図示省略)に対して、ラダーユニット2におけるシャフト部20の上部側を挿入していく(
図10(b)参照)。
【0169】
また、軸孔12及び保護筒部13の下側から、シャフト部20を挿入して、ラダーユニット2におけるラダー部21が所定の高さ位置まで来たところで(
図10(c)参照)、保護筒部13の上端から突出したラダー部21の上端部に対して、T型プレート30を取り付ける(
図10(d)参照)。
【0170】
なお、ここでのラダー部21の所定の高さ位置とは、船1の下方側に配置されたプロペラ10にラダー部21が対向する高さ位置である。この高さ位置でラダー部21を位置決めすることで、回転するプロペラ10が生じた水流を、ラダー部21の側に充分に作用させることができる。
【0171】
続いて、T型プレート30の取り付けの流れを説明する。まず、保護筒部13の上端から延び出したアウターシャフト200の上部側の外周面に、下段クランプ34を取り付けて固定する(
図11(a)参照)。
【0172】
この下段クランプ34は、ピン33を介して、T型プレート30をアウターシャフト200に固定するための部材である。また、下段クランプ34は、鉛直方向におけるT型プレート30の高さ位置を規定する部材でもある。なお、ここでいう下段クランプ34が、本願請求項におけるクランプ部に相当する部材である。
【0173】
また、下段クランプ34は、2つの半円状の分割クランプ340及び分割クランプ341で構成されている(
図11(a)参照)。
【0174】
2つの分割クランプ340及び分割クランプ341は、各部材の内周面をアウターシャフトの外周面に当接させた状態で、円状の部材にして、分割クランプ340及び分割クランプ341の当接箇所(本実施の形態では2カ所)をボルト等の締結具で固定して、アウターシャフト200の外周面に固定する。
【0175】
このように、下段クランプ34は、分割された2つの分割クランプ340及び分割クランプ341を組み合わせて、アウターシャフト200の外周面に取り付ける構造となっているため、鉛直方向において所望の高さ位置に、下段クランプ34を容易に取り付けることができる。
【0176】
また、分割クランプ341の方には、鉛直方向に貫通した下部ピン孔342が形成されている(
図11(a)参照)。下部ピン孔342は、T型プレート30側に形成された上部ピン孔302と連通して、ピン33を挿脱可能な孔部を形成する。なお、ここでいう下部ピン孔342が、本願請求項における第1のピン孔に相当する部分である。
【0177】
次に、下部クランプ34をアウターシャフト200の外周面に固定した後、下部クランプ34の上部に、T型プレート30を置く(
図11(b)参照)。この際、水平方向における上部ピン孔302の位置と、下部ピン孔342の位置を合わせておく。
【0178】
続いて、T型プレート30の上部、かつ、アウターシャフト200の外周面に、上段クランプ35を取り付けて固定する(
図11(c)参照)。この上段クランプ35は、鉛直方向において、下段クランプ34との間にT型プレート30を挟んだ状態で配置し、T型プレート30の高さ位置を規定する部材である。
【0179】
また、上段クランプ35は、下段クランプ34と同様に、2つの半円状の分割クランプ350及び分割クランプ351で構成されている。
【0180】
2つの分割クランプ350及び分割クランプ351は、各部材の内周面をアウターシャフトの外周面に当接させた状態で、円状の部材にして、分割クランプ350及び分割クランプ351の当接箇所(本実施の形態では2カ所)をボルト等の締結具で固定して、アウターシャフト200の外周面に固定する。
【0181】
次に、T型プレート30の上方から、上部ピン孔302及び下部ピン孔342に対して、ピン33を挿入する(
図11(d)参照)。ピン33は、頭部にフランジ部が形成され(符号省略)、上部ピン孔302の上端縁に、ピン33のフランジ部が引っかかり、ピン33は、上部ピン孔302及び下部ピン孔342から抜け落ちることなく、挿入された状態が維持される。
【0182】
また、ピン33は、作業者が手動で、上部ピン孔302及び下部ピン孔342に対して挿脱できるように構成されている。
【0183】
このように、ピン33が、上部ピン孔302及び下部ピン孔342に挿入されることで、T型プレート30が、下段クランプ34と一体化し、T型プレート30は、アウターシャフト200に固定された状態となる。
【0184】
一方、ピン33が、上部ピン孔302及び下部ピン孔342から抜き出されることで、T型プレート30が、下段クランプ34と分離し、T型プレート30は、アウターシャフト200から分離した状態となる。
【0185】
ここで、必ずしも、ピン33は、作業者が手動で挿脱する態様だけでなく、電動で挿脱する態様も採用することができる。即ち、例えば、電磁ソレノイドを用いて、ピンが孔部に挿入され又は抜き出される構造とすることも可能である。
【0186】
続いて、上段クランプ35の上方、かつ、アウターシャフト200の外周面に、下段ギア51を取り付けて固定する(
図12(a)参照)。
【0187】
この下段ギア51及びアウターシャフト200は、両部材の当接する箇所にキー溝が形成され、このキー溝にキーを配置して(図示省略)、両部材を一体化している。
【0188】
また、下段ギア51の上方、かつ、インナーシャフト201の上端部の外周面に、上段ギア50を取り付けて固定する(
図12(b)参照)。
【0189】
この上段ギア50及びインナーシャフト201は、下段ギア51と同様に、両部材の当接する箇所にキー溝が形成され、このキー溝にキーを配置して(図示省略)、両部材を一体化している。
【0190】
さらに、T型プレート30の2つの取付片301に対して、取付スタンド31及び取付スタンド32のそれぞれを取り付けて固定する(
図12(c)参照)。
【0191】
また、取付スタンド31の載置部311(
図12(c)参照)にアクチュエータユニット41を乗せて、これを固定する(
図12(d)参照)。また、取付スタンド32の載置部321にアクチュエータユニット42を乗せて、これを固定する。
【0192】
この際、アクチュエータユニット41の出力ギア410と、アウターシャフト200に固定された下段ギア51が歯車構造で噛み合うように配置される。また、アクチュエータユニット42の出力ギア420と、インナーシャフト201に固定された上段ギア50が歯車構造で噛み合うように配置される。
【0193】
また、図示しないが、T型プレート30の突出片の先端部に油圧シリンダー40が取り付けられる。
【0194】
以上で説明した流れで、ラダーユニット2の組立てと、接続ユニット3を介した、ラダーユニット2と駆動ユニット4の接続が行われる。
【0195】
本発明の実施の形態である操縦支援装置では、ピン33を上部ピン孔302及び下部ピン孔342に挿入されると、T型プレート30がアウターシャフト200に固定された状態となる。この状態では、油圧シリンダー40を駆動源として、T型プレートが回動し、1本の結合ラダー212として用いることができる。
【0196】
この際、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42は、上述したように、ウォーム減速機73を有して構成され、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット42が駆動しない際には、出力ギア410及び出力ギア420は、その回転が規制される。
【0197】
即ち、各アクチュエータユニットの停止時には、出力ギア410及び出力ギア420は動かず、仮に、上部ギア50や下部ギア51に何らかの力が作用しても、出力ギア410及び出力ギア420と歯車構造で噛み合った上部ギア50及び下部ギア51の回転も規制され、ロックがかかった状態となる。
【0198】
そして、水平方向において、油圧シリンダー40がT型プレート30を回動させると、T型プレート30と固定されたアウターシャフト200が、T型プレート30と一体となって回転する。また、出力ギア410及び下部ギア51と、出力ギア420及び上部ギア50は、それぞれロックがかかっているため、インナーシャフト201もアウターシャフト201と一体となって回転する。より詳細には、ギア同士でロックがかかったことで、インナーシャフトが、アウターシャフトの動きに追従し、一体的に回転するものとなる。
【0199】
そのため、結合ラダー212が回転する際には、アウターシャフト200とインナーシャフト201が一体的に回転軸として機能するものとなる。
【0200】
また、本発明の実施の形態である操縦支援装置では、ピン33を上部ピン孔302及び下部ピン孔342から抜き出されると、T型プレート30は、アウターシャフト200から分離した状態となる。この状態では、アクチュエータユニット41と、アクチュエータユニット42を駆動源として、アウターシャフト200と、インナーシャフトが回動して、スプリットラダー210と、スプリットラダー211が独立して回転する2つの舵として用いることができる。
【0201】
この際、スプリットラダー210と、スプリットラダー211は、T型プレート30の突出片300の突出した方向を、回転角度の基準位置(ホームポジション)として、制御ユニットにより、回転動作が制御される。
【0202】
また、本発明の実施の形態では、スプリットラダー210と、スプリットラダー211のそれぞれの回転角度は、0度~130度の範囲で回動可能に構成されている。また、ここでの0度が、T型プレート30の突出片300の突出した方向と一致する方向である。
【0203】
ここで、必ずしも、スプリットラダー210と、スプリットラダー211のそれぞれの回転角度は、0度~130度の範囲に設定される必要はなく、回転角度の範囲は適宜設定することが可能である。
【0204】
続いて、本発明の実施の形態である操縦支援装置を取り付けた船1における、2つのスプリットラダー210及びスプリットラダー211の動きと、これによる船1の動きの事例を説明する。
【0205】
図13(a)~
図13(c)は、船1、プロペラ10、スプリットラダー210及びスプリットラダー211の位置関係を模式的に示した概略平面図である。
【0206】
通常、船1を前方に直進させる際又は船1を、前進させながら右斜め方向又は左斜め方向に移動させる際には、油圧シリンダー40を介して、結合ラダー212として、船1の移動方向を調整する。即ち、1本の舵として結合ラダー212を回転させて、船1の移動方向を制御する。
【0207】
また、船1を前方に直進させる際には、結合ラダー212の先端は、船1の後方側(
図13の各図における右側方向)に向けられている(図示省略)。また、この向きが回転角度の基準位置(ホームポジション)となる。
【0208】
また、船1を、前進させながら右斜め方向又は左斜め方向に移動させる際には、シャフト部20を回転軸として結合ラダー212を回転させることで、船1の移動方向を制御する(図示省略)。
【0209】
また、船1を横方向に移動させる際には、スプリットラダー210及びスプリットラダー211を、それぞれ独立して回転可能な状態とし、2本の舵で船1を移動させる。
【0210】
より詳細には、スプリットラダー210及びスプリットラダー211を回転させ、各ラダーを、例えば、
図13(a)に示す向きに向けると、回転するプロペラ10が生じる水流が、スプリットラダー210及びスプリットラダー211の影響を受け、符号F1で示す方向の推力が船1に働く。
【0211】
この符号F1の方向の推力により、船1の船尾は、符号Gの位置を重心点として、
図13(a)における時計回りの方向に回転するように動く。
【0212】
なお、
図13(a)の状態では、スプリットラダー210の角度を調整することで、横方向の推力を調整でき、スプリットラダー211の角度を調整することで、前方方向に向かう推力を抑制することができる。
【0213】
その後、制御ユニットが、アクチュエータユニット41及びアクチュエータユニット41を制御して、スプリットラダー210及びスプリットラダー211を回転させ、各ラダーを、
図13(b)に示す向きに向けると、回転するプロペラ10が生じる水流が、スプリットラダー210及びスプリットラダー211の影響を受け、符号F12示す方向の推力が船1に働く。
【0214】
この符号F2の方向の推力により、船1の船尾は、符号Gの位置を重心点として、
図13(b)における反時計回りの方向に回転するように動く。
【0215】
なお、
図13(b)の状態では、スプリットラダー211の角度を調整することで、横方向の推力を調整でき、スプリットラダー210の角度を調整することで、前方方向に向かう推力を抑制することができる。
【0216】
そして、制御ユニットにより、スプリットラダー210及びスプリットラダー211の回転角度を、
図13(a)と
図13(b)の向きに繰り返し切り替えることで、符号F1の方向の推力と、符号F2の方向の推力を、繰り返し船1に作用させ、船1は船尾側を左右に振りながら、船1の全体としては横方向に移動させることができる。
【0217】
このように、2つのスプリットラダー210及びスプリットラダー211の回転角度を細かく制御することで、船1を横方向に移動させることができる。また、スプリットラダー210及びスプリットラダー211の回転角度を調整することで、船1を所望の方向に回転させることもできる。
【0218】
また、スプリットラダー210及びスプリットラダー211を回転させ、各ラダーを、
図13(c)に示す向きに向け、各ラダーの角度を調整することで、回転するプロペラ10から生じる水流による前方方向に向かう推力を調整して、船1を一定の位置に留まらせることができる。ここでの調整も制御ユニットにより、駆動が制御される。
【0219】
また、スプリットラダー210及びスプリットラダー211の回転角度を調整することで、ごく低速で船1を前進させることができる。さらに、
図13(c)の状態から、スプリットラダー210及びスプリットラダー211の回転角度を、プロペラ10の側に傾けると、プロペラ10の回転の向きを変えることなく、2つの舵の水流制御により、船1の向きはそのままで後方にバックさせることもできる。
【0220】
ここで、従前の船では、例えば、漁船が漁場に着き、作業を行う際には、エンジンを停止して船を止めると、風や潮の影響で船が流されてしまうため、プロペラとエンジンを繋ぐクラッチを完全に繋がっていない状態(半クラッチ)として、船を低速で動かしながら作業を行う必要があった。
【0221】
これに対して、本発明の実施の形態である操縦支援装置を用いることで、船1では、プロペラ10を回転させたまま、クラッチを切ることなく、船1を一定の位置に留まらせたり、ごく低速で船1を移動させたりすることができる。
【0222】
また、さらに、船1では、停船時又はごく低速での航行時に、制御ユニットが、風向風速計の計測結果に沿って、3軸加速度センサーの測定値を一致させる制御を繰り返すことで、風の正面に船1の船首を向けるように、船体の向きを制御することも可能となる。この結果、船体への風の影響を抑え、船が風で流されにくくすることができる。
【0223】
以上で説明した本発明の実施の形態である操縦支援装置では、2つのスプリットラダー210及びスプリットラダー211の駆動を独立して制御することで、船1の移動方向を自由度高く制御することができる。
【0224】
また、本発明の実施の形態である操縦支援装置は、取り付け対象となる船1が、元々備えていた舵を取り外して、その舵用の軸孔12に、ラダーユニット2及び駆動ユニット3を容易に後付けすることができる。
【0225】
また、本発明の実施の形態である操縦支援装置は、制御ユニットを介して、船1の移動方向を厳密に制御することができる。また、制御ユニットを介して、船1を回転させる動作、横方向への移動、斜め方向への移動及びエンジンを駆動したまま、一定の位置に留まる動作等、複雑な移動を行わせることができる。
【0226】
以上のとおり、本発明を適用した船舶の操縦支援装置は、手プロペラと舵を介して操舵する小型船舶に、容易に後付けすることができ、既設の舵と取り換えることで、船の移動方向を自由度高く制御可能となっている。
【符号の説明】
【0227】
1 船
10 プロペラ
11 シャフト
12 軸孔
13 保護筒部
2 ラダーユニット
20 シャフト部
200 アウターシャフト
201 インナーシャフト
21 ラダー部
210 スプリットラダー
211 スプリットラダー
212 結合ラダー
213 羽根部
214 管部
215 羽根部
216 管部
217 管部貫通孔
22 抜け止めキャップ
23 スクレーパー
24 スクレーパー
3 接続ユニット
30 T型プレート
300 突出片
301 取付片
31 取付スタンド
310 縦板
311 載置部
32 取付スタンド
320 縦板
321 載置部
33 ピン
34 下段クランプ
340 分割クランプ
341 分割クランプ
342 下部ピン孔
35 上段クランプ
350 分割クランプ
351 分割クランプ
4 駆動ユニット
40 油圧シリンダー
41 アクチュエータユニット
410 出力ギア
42 アクチュエータユニット
420 出力ギア
50 上部ギア
51 下部ギア
6 アクチュエータ本体
60 筐体
61 モーター
62 ベルト伝達部
620 小径プーリー
621 大径プーリー
622 ベルト
63 ウォーム減速機
630 ウォーム部
631 ウォームギア
64 サーボドライバー
65 オペレータ部
66 コネクタホルダー
67 ジョイントプーリー
68 アクチュエータシャフト
【要約】
【課題】プロペラと舵を介して操舵する小型船舶に、容易に後付けすることができ、既設の舵と取り換えることで、船の移動方向を自由度高く制御可能となる船舶の操縦支援装置を提供する。
【解決手段】船舶の操縦支援装置の一例である操縦支援装置は、船1の既設の舵に代えて、ラダーユニット2を取り付けて、プロペラ10が生じる水流を精密に制御して、船1において複雑な移動を可能とする装置である。操縦支援装置は、ラダーユニット2と、接続ユニット3と、駆動ユニット4と、制御ユニットを有している。また、ラダーユニット2は、シャフト部20と、ラダー部21を有している。また、シャフト部20は、筒状のアウターシャフト200と、筒状のインナーシャフト201で構成されている。また、ラダー部21は、2つのスプリットラダー210及びスプリットラダー211で構成されている
【選択図】
図2