(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】庇
(51)【国際特許分類】
E04F 10/08 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
E04F10/08
(21)【出願番号】P 2023015046
(22)【出願日】2023-02-03
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2022017950
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591181562
【氏名又は名称】アルフィン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 正
(72)【発明者】
【氏名】岸上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小林 大起
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-28222(JP,U)
【文献】特開2019-218747(JP,A)
【文献】特開2013-151849(JP,A)
【文献】特開2013-60802(JP,A)
【文献】特開2002-256668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 10/08
E04D 3/362
E04D 3/40
E04B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材が幅方向に連結されて構成される庇板を有し、前記庇板の各板材は、内部が中空であり、上面を構成する上板部と、下面を構成する下板部と、上板部と下板部との間に設けられる縦板部とを含む庇であって、
前記庇板を構成する複数の板材のうちの少なくとも一つの板材は、中間部分において左右に分離可能な第1板部及び第2板部よりなり、前記第1板部の上板部及び下板部の開放端部は、前記第2板部の上板部及び下板部の内側に篏合されかつ嵌合深さの調節が可能であり、前記第1板部の下板部の開放端部は、幅方向へ突出する底面部及びその先端に一体に設けられ前記縦板部との間で雨水の流路を構成する堰板部を含んでなる庇。
【請求項2】
複数の板材が幅方向に連結されて構成される庇板を有し、前記庇板の各板材は、内部が中空であり、上面を構成する上板部と、下面を構成する下板部と、上板部と下板部との間に設けられる縦板部とを含む庇であって、
前記庇板を構成する複数の板材のうちの少なくとも一つの板材は、中間部分において左右に分離可能な第1板部及び第2板部と、前記第1板部及び第2板部の間に介在する中間板部とからなり、
前記中間板部の上板部及び下板部の左右の一方の端部は、前記第1板部の上板部及び下板部の内側に篏合されかつ嵌合深さの調節が可能であり、他方の端部は、前記第2板部の上板部及び下板部の内側に篏合されかつ嵌合深さの調節が可能であり、
前記中間板部の下板部の左右両方の端部は、幅方向へ突出する底面部及びその先端に一体に設けられた前記縦板部との間で雨水の流路を構成する堰板部をそれぞれ含んでなる庇。
【請求項3】
前記庇板の後端部を保持する保持具をさらに備え、
前記保持具は、上下より挟んで保持する一対の保持板部を有し、前記各保持板部と前記庇板の後端部には、ボルトを一連に通すためのボルト挿通孔がそれぞれ設けられている請求項1または2に記載の庇。
【請求項4】
前記第2板部は、前記堰板部が突き当たるように設けられる第1ストッパーと、前記第1ストッパーの位置から所定の距離だけ離れた位置に前記堰板部が突き当たるように設けられる第2ストッパーとを備える請求項1に記載の庇。
【請求項5】
前記第1板部の上板部及び下板部は、前記第2板部の上板部及び下板部と同一平面上にある本体部と、前記第2板部の上板部及び下板部の内側へ進入可能な前記開放端部と、前記本体部と前記開放端部との間に位置し前記第2板部の上板部及び下板部の厚みに相当する段差を有する繋ぎ部とを含む請求項1に記載の庇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、庇板が前方へ張り出すように建物の外壁面に取り付けられる庇に関し、この発明は、特に、庇板が複数の板材を幅方向に連結して構成されている庇に関する。
【背景技術】
【0002】
その種の庇として、建物の外壁面に取り付けられた保持具によって庇板の後端部が片持ち状態で保持されるものがあり、庇板として、
図8及び
図13に示される構成の庇板2が用いられている。この庇板2は、両端に位置する2個の板材(以下「側板材」という。)22と、中間に位置する複数の板材(以下「中間板材」という。)21とを、側端面を互いに係合させて幅方向に連結したものである(例えば、特許文献1参照)。
なお、
図13において、28,29は中間板材21の両側端面及び側板材22の一側端面に形成された互いに係合可能な係合片である。また、23,24は各板材21,22の上面及び下面を構成する上板部及び下板部、25は上板部23と下板部24との間に設けられる縦板部である。
【0003】
図13に示す庇において、庇板2を保持するための保持具3は、背板部31と上下の保持板部32,33とを一体に備えている。背板部31は、建物の外壁面に複数本のアンカーボルト(図示せず)によって固定される。上下の保持板部32,33は平行であり、背板部31の前面より突出する。庇板2の後端部は、上下の保持板部32,33間の溝内に、後端面が背板部31の前面に突き当たるまで差し込まれて挟持される。
【0004】
庇を建物の外壁面に取り付けるには、まず、保持具3を複数のアンカーボルトにより建物の外壁面に水平に取り付ける。
つぎに、
図8に示されるように、保持具3の上下の保持板部32,33間の溝内へ庇板2を構成する側板材22及び中間板材21の後端部を順次差し込む。同図には、中間板材21を矢印qで示す方向、すなわち、後方へ摺動させて組み付けている状態が示されている。
上側の保持板部32に形成されたボルト挿通孔36、庇板2を構成する各板材21,22に形成されたボルト挿通孔26、及び下側の保持板部33に形成されたボルト挿通孔37にボルト13を一連に通し、ボルト13の先端部にナットをねじ込むことで各板材21,22が上下の保持板部32,33間で挟持される。なお、図示例の庇は、ボルト挿通孔26,36,37が、1枚の中間板材21に対して2箇所設けられたものであるが、1箇所だけ設けられたものであってもよい。
【0005】
中間板材21及び側板材22は、アルミニウムの押出成形により製作されている。押出成形のための金型は、同じものが繰り返し使われるため、表面が摩耗し、成形品の外形、大きさなどが微妙に変化し、定期的に新たな金型と交換する。したがって、金型の交換前と交換後とでは、成形品の外形や大きさなどに差異(以下、この差異を「誤差」という。)が生じる。また、製造ロットが異なると、金型が異なることに起因して成形品に同様の誤差が生じる。これらの板材の誤差に起因して、保持板部32,33に対する中間板材21の取付位置がずれ、誤差の累積により位置ずれ量が次第に大きなものとなる。
中間板材21や側板材22の連結作業が異なる作業者により行われたり、作業途中で作業者が交代したりすると、板材間の連結状態も同じではなく、これによっても中間板材21が微妙に位置ずれする。
【0006】
特に、板材21,22が多数枚連結された、幅方向に長い庇では、上記した誤差の累積により中間板材21の位置ずれは大きなものとなり、保持具の上下の保持板部32,33のボルト挿通孔36,37と庇板2のボルト挿通孔26とが上下一列に揃わなくなる。このため、ボルト13を上下の保持板部32,33のボルト挿通孔36,37と庇板2のボルト挿通孔26とに一連に通すことが困難となり、庇の施工に支障が生じる。
【0007】
上記の課題を解決するために、出願人は、
図14(1)(2)に示すように、複数の中間板材21のうちのいずれかの中間板材21に加工を施し、幅方向の中央部分を一定幅(例えば10mm程度)だけ切除した幅調整用の中間板材101を製作して用いることとした。この中間板材101は、左右に分割された板材102L,102R間に隙間sを有し、この隙間sを大小調整することで、累積した誤差をこの中間板材101において吸収するものである。
左右の板材102L,102R間の隙間sに雨水が浸入するため、隙間sは上下の塞ぎ板120,121によって塞がれる。各塞ぎ板120,121は複数のネジ122により各板材102L,102Rに止着され、これにより板材102L,102R間が繋がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した誤差の吸収方法では、隙間sを塞ぎ板材102L,102Rを連結するために、上下の塞ぎ板120,121、複数のネジ122などの部品が必要である上に、庇施工時、塞ぎ板120,121をネジ固定するなどの作業が必要であり、庇の施工に余分な手数がかかる。さらに、塞ぎ板120,121によってその厚み分だけ上下各面が突出する。このため、庇の保持具3に被せられる上カバー5及び下カバー6に切り欠き110,111を形成する必要がある。その上、切り欠き110,111と塞ぎ板120,121との間に生じる隙間tをシールする必要があり、このため、庇の施工にさらなる手数がかかる。
また、庇を上下各方から見たとき、塞ぎ板120,121やネジ122の頭部が目立ち、庇の美観を低下させるという問題もある。
【0010】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、誤差の累積による板材の位置ずれを是正するための庇板の幅調整が簡単に行える庇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明による庇は、複数の板材が幅方向に連結されて構成される庇板を有する。庇板の各板材は、内部が中空であり、上面を構成する上板部と、下面を構成する下板部と、上板部と下板部との間に設けられる縦板部とを含む。庇板を構成する複数の板材のうちの少なくとも一つの板材は、中間部分において左右に分離可能な第1板部及び第2板部よりなる。第1板部の上板部及び下板部の開放端部は、第2板部の上板部及び下板部の内側に篏合されかつ嵌合深さの調節が可能である。第1板部の下板部の開放端部は、幅方向へ突出する底面部及びその先端に一体に設けられ前記縦板部との間で雨水の流路を構成する堰板部を含む。
【0012】
上記した第1の発明の庇において、少なくとも一つの板材は第1板材及び第2板材よりなり、第1板部の上板部及び下板部の開放端部は第2板部の上板部及び下板部の内側に篏合するので、その篏合深さを調整することで、誤差の累積による板材の位置ずれを是正できる。第1板部の上板部と第2板部の上板部とが篏合する部分には隙間があり、その隙間から雨水が内部に浸入するが、雨水は底面部上に溜まり、堰板部により堰き止められるので、第1板部の下板部と第2板部の下板部とが篏合する部分の隙間から雨水が庇板の下面に漏れ出ることがない。
【0013】
第2の発明による庇は、複数の板材が幅方向に連結されて構成される庇板を有し、前記庇板の各板材は、内部が中空であり、上面を構成する上板部と、下面を構成する下板部と、上板部と下板部との間に設けられる縦板部とを含む。前記庇板を構成する複数の板材のうちの少なくとも一つの板材は、中間部分において左右に分離可能な第1板部及び第2板部と、前記第1板部及び第2板部の間に介在する中間板部とからなる。前記中間板部の上板部及び下板部の左右の一方の端部は、前記第1板部の上板部及び下板部の内側に篏合されかつ嵌合深さの調節が可能であり、他方の端部は、前記第2板部の上板部及び下板部の内側に篏合されかつ嵌合深さの調節が可能であり、前記中間板部の下板部の左右両方の端部は、幅方向へ突出する底面部及びその先端に一体に設けられた前記縦板部との間で雨水の流路を構成する堰板部をそれぞれ含む。
【0014】
上記した第2の発明の庇においては、少なくとも一つの板材は、第1板部及び第2板部と、第1板部及び第2板部の間に介在する中間板部とからなり、中間板部の上板部及び下板部の左右両方の端部は、第1板部及び第2板部の上板部及び下板部の内側にそれぞれ篏合するので、その篏合深さを調整することで、誤差の累積による板材の位置ずれを是正できる。中間板部の上板部と第1板部の上板部とが篏合する部分、中間板部の上板部と第2板部の上板部とが篏合する部分には隙間があり、その隙間から雨水が内部に浸入するが、雨水は中間板部の底面部上に溜まり、縦板部により堰き止められるので、中間板部の上板部と第1板部の上板部とが篏合する部分、中間板部の上板部と第2板部の上板部とが篏合する部分の隙間から雨水が庇板の下面に漏れ出ることがない。
【0015】
第1の発明及び第2の発明において、好ましい実施態様においては、保持具は、庇板の後端部を上下より挟んで保持する一対の保持板部を有し、各保持板部と庇板の後端部にはボルトを一連に通すためのボルト挿通孔がそれぞれ設けられている。
【0016】
この実施態様において、誤差の累積により板材が位置ずれして保持板部のボルト挿通孔と庇板の後端部のボルト挿通孔とが位置ずれしても、第1の発明においては第1板部の上板部及び下板部の開放端部と第2板部の上板部及び下板部との篏合深さを調整することで、また、第2の発明においては中間板部の上板部及び下板部の左右両方の端部と、第1板部及び第2板部の上板部及び下板部との嵌合深さを調整することで、誤差の累積による板材の位置ずれが是正されるため、ボルト挿通孔は一列に揃えられ、ボルトを一連に通すことができる。
【0017】
第1の発明の好ましい実施態様においては、第2板部は、堰板部が突き当たるように設けられる第1ストッパーと、第1ストッパーから所定の距離だけ離れた位置に堰板部が突き当たるように設けられる第2ストッパーとを備える。
【0018】
この実施態様によると、庇板の幅調整に際して、第1板部の開放端部の第2板部への篏合深さを変えるとき、篏合深さが浅い位置で第1板部の堰板部が第2板部の第1ストッパーに突き当たるもので、第1板部の開放端部の第2板部との篏合が外れて、第1板部と第2板部とが分離することがない。
また、篏合深さが深い位置で第1板部の堰板部が第2板部の第2ストッパーに突き当たるもので、第1板部の開放端部が第2板部の内部の奥深くに入り込むことがなく、庇板の幅調整を最適な範囲で行える。
【0019】
第1の発明の好ましい実施態様においては、第1板部の上板部及び下板部は、第2板部の上板部及び下板部と同一平面上にある本体部と、第2板部の上板部及び下板部の内側へ進入可能な開放端部と、本体部と開放端部との間に位置し前記第2板部の上板部及び下板部の厚みに相当する段差を有する繋ぎ部とを含む。
【0020】
この実施態様によると、第1板部の本体部と開放端部との間の繋ぎ部は第2板部の上板部及び下板部の厚みに相当する段差を有するので、第1板部の開放端部を第2板部の内側へ篏合したとき、第1板部の上下各面と第2板部の上下各面との間に突出する部分が生じず、庇板の上面及び下面の見映えを低下させない。
【発明の効果】
【0021】
この発明によると、誤差の累積による板材の位置ずれを是正するための庇板の幅調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】第1板部の開放端部の第2板部との篏合が浅い状態を示す正面図である。
【
図5】第1板部の開放端部の第2板部との篏合が深い状態を示す正面図である。
【
図6】中間板材に幅調整用の中間板材の第1板部を連結する手順を示す正面図である。
【
図7】中間板材に幅調整用の中間板材の第2板部を連結する手順を示す正面図である。
【
図8】保持具に庇板を組付ける手順を示す斜視図である。
【
図9】幅調整機構の他の実施形態の構成を示す正面図である。
【
図10】中間板部の端部と第1板部及び第2板部との篏合が浅い状態を示す正面図である。
【
図11】中間板部の端部と第1板部及び第2板部との篏合が深い状態を示す正面図である。
【
図13】従来の庇の庇板の構成を示す正面図である。
【
図14】課題解決のために加工された中間板材の構成を示し、(1)は正面図、(2)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び
図2は、この発明の庇の一実施形態を示すもので、
図1は庇の外観を、
図2は庇の構造を、それぞれ示している。
庇1は、建物の外壁面9から前方へ張り出すように設置されるもので、庇板2と、庇板2の後端部を全幅にわたって片持ち状態で保持する保持具3と、庇板2の前端縁に全幅にわたって装着される前縁板4と、保持具3の上下各面に被せられる上カバー5及び下カバー6とを含む。なお、本実施形態による庇は、後述するように保持具3により庇板2を建物の外壁面に片持ち状態で保持するものであるが、この形態に限定されず、例えば、庇板2を建物の外壁面や地面に立設したポール等に設けられる固定用基材から吊り下げるものであってもよく、庇板2を任意の箇所に固定できるものであればよい。
【0024】
庇板2、保持具3、前縁板4、上カバー5、及び下カバー6は、アルミニウムの押出型材を用いて構成される。なお、
図1において、10は保持具3の両端の開放部分を塞ぐ端板である。
【0025】
保持具3は、建物の外壁面9に複数のアンカーボルト11によって取り付けられる。この実施例では、庇板2は前側へ低く傾いた状態で後端部が保持具3に保持されているが、後側へ低く傾いた状態で庇板2の後端部を保持するように構成することもできる。
なお、以下の説明では、庇板2の中間板材21及び側板材22,22の長さ方向であって、
図1において庇板2が建物の外壁面9から張り出す方向を「前後方向」、前後方向及び上下方向と直交する方向を「幅方向」または「左右」という。
【0026】
庇板2は、複数の板材から構成される。板材は、
図1に示すように、側端面を隣の板材を突き合わせて幅方向に連結される複数の中間板材21と、両端位置の中間板材21の外側端面にそれぞれ連結される側板材22,22である。各中間板材21は、
図13の従来例に示したものと同様、両側端に第1、第2の各係合片28,29を備える。また、各側板材22は、一方の側端面に中間板材21の第1の係合片28と係合する第2の係合片29、または中間板材21の第2の係合片29と係合する第1の係合片28のいずれかを備える。
図8で説明したように、第1、第2の各係合片28,29は、隣合う板材の一方を他方に対して前後方向へ摺動可能に係合する。
【0027】
各中間板材21及び各側板材22は、内部が中空であり、上面を構成する上板部23と、下面を構成する下板部24と、上板部23と下板部24との間に設けられる縦板部25とを一体に備える。縦板部25は上板部23と下板部24との間隔を保ち、中間に位置する縦板部25は補強材(リブ)として機能する。各縦板部25は、上板部23と下板部24との前後方向の全長にわたって延在している。
【0028】
保持具3は、
図2に示されるように、建物の外壁面9に背面を密接させて固定される背板部31と、背板部31の前面より突出し庇板2の後端部を上下から挟んで保持する一対の保持板部32,33とを有する。上側の保持板部32と下側の保持板部33とは平行であり、この実施例では、下側の保持板部33は上側の保持板部32より前方へ突き出ている。
【0029】
上下の保持板部32,33間は、庇板2の各中間板材21及び各側板材22の後端部が挿入することが可能な溝を構成する。溝は、前面が全幅にわたって開放されており、庇板2を構成する全ての板材21,22の後端部を前方より差し込むことが可能である。上下の保持板部32,33は背板部31と一体のものであるが、上下方向に押圧力を作用させたとき、わずかに撓む。この可撓性を有することで、上下の保持板部32,33は、後述するボルト13及びナット14によって対向する方向へ押圧されたとき、溝が閉じる方向へわずかに撓み、これにより庇板2の後端部がしっかり挟持される。
【0030】
背板部31には、上側の保持板部32の上方位置と、上下の保持板部32,33間とに、アンカーボルト11が挿入される複数のボルト挿通孔34,35が、それぞれが間隔をあけて横一列に設けられている。
【0031】
上下の保持板部32,33の同じ位置には、ボルト挿通孔36,37がそれぞれ設けられる。各中間板材21及び各側板材22の上板部23及び下板部24には、保持板部32,33の各ボルト挿通孔36,37と対応する後端部位置に、ボルト挿通孔26,27がそれぞれ設けられている。保持板部32,33のボルト挿通孔36,37と庇板2のボルト挿通孔26,27とは上下に連通し、これら連通する孔にボルト13が一連に通される。ボルト13の先端は下側の保持板部33の下方へ突出し、その突出端部にナット14がねじ込まれて締め付けられる。これにより庇板2の後端部は上下の保持板部32,33間に挟さまれてしっかり保持される。
【0032】
保持具3の背板部31の上端部には、上方へ突出する第1の突壁部38aが、下側の保持板部33の下面には下方へ突出する第2の突壁部38bが、それぞれ全幅にわたり形成されている。第1の突壁部38aには上カバー5の上端部の下面に突設された係合突起50が係合する。第2の突壁部38bには下カバー6の後端縁が係合する。下カバー6の前端縁は下側の保持板部33の前端縁に係合する。第1の突壁部38aと建物の外壁面9との間にはコーキング材91が充填され、その上方を上カバー5が覆っている。
【0033】
上カバー5の前端部には庇板2の後端部の上面に突き当てられる第1の固定部51が、上カバー5の後端部には建物の外壁面9に突き当てられる第2の固定部52が、それぞれ設けられている。第1、第2の各固定部51,52は、いずれもがシール材53,54を挟んだ状態でネジ止めされる。
【0034】
庇板2を構成する複数の中間板材21のうちの少なくとも一つの中間板材21は、
図3に示す幅調整用の中間板材(以下「幅調整用板材」と略す。)70に置き換えられて保持具3に組み付けられる。幅調整用板材70は、中間部分において左右に分離可能な第1板部71及び第2板部72よりなる。左右の分離位置は、中央位置が望ましいが、右寄り又は左寄りの位置であってもよい。図中、右側に位置する第1板部71の上板部73及び下板部74の開放端部76は、図中、左側に位置する第2板部の上板部73及び下板部74の内側に篏合されている。
【0035】
ここで、「第1板部71の上板部73及び下板部74の開放端部76」とは、上板部73の開放端73T及び下板部74の開放端74Tとを含む幅方向の領域を指す。
図4は、第1板部71の開放端部76の第2板部72との篏合が最も浅い状態を示す。また、
図5は、第1板部71の開放端部76の第2板材72との篏合が最も深い状態を示す。
幅調整用板材70の幅dは、第1板部71の開放端部76の第2板部72に対する篏合深さに応じて調整が可能であり、この実施例では、
図4に示す篏合深さと
図5に示す篏合深さの範囲内で調整される。第1板部71と第2板部72とで幅調整機構7が構成される。
【0036】
第1板部71及び第2板部72は、内部が中空であり、上面を構成する上板部73と、下面を構成する下板部74と、上板部73と下板部74との間に設けられる縦板部78とを一体に備える。第1板部71は第2の係合片29を、第2板部72は第1の係合片28を、それぞれ備えている。これら第1,第2の各係合片28,29は中間板材21のものと同様の構成のものである。
第1板部71の上板部73及び下板部74は、第2板部72の上板部73及び下板部74と同一平面上に位置する本体部75と、第2板部72の上板部73及び下板部74の内側へ進入(嵌合)することが可能な開放端部76と、本体部75と開放端部76との間に位置し第2板部72の上板部73及び下板部74の厚みに相当する段差を有する繋ぎ部77とを含む。
【0037】
第1板部71の下板部74の開放端74Tは、上板部73の開放端73Tより一定幅だけ、図中、左方向へ突き出た位置にあり、下板部74の開放端部76は、幅方向へ突出する底面部74aと、底面部74aの先端に上向きに一体形成された堰板部79とを含む。堰板部79は、底面部74aに対して直角をなし、上端が第2板部72の上板部73の近くまで延びている。
【0038】
堰板部79は、第1板部71の上板部73と第2板部72の上板部73とが篏合する部分の隙間から内部に浸入した雨水を堰き止め、第1板部71の下板部74と第2板部72の下板部74とが篏合する部分の隙間より漏れ出るのを防止する。堰板部79と縦板部78Aとの間は雨水の流路を構成しており、底面部74aに溜まった雨水はこの流路を流れて庇板2が傾斜する方向へ導かれる。なお、第1板部71の上板部73と第2板部72の上板部73とが篏合する部分の隙間及び第1板部71の下板部74と第2板部72の下板部74とが篏合する部分の隙間にはシールを施す必要はないが、少なくとも一方の隙間にシールを施してもよい。
【0039】
第2板部72の上板部73には、第1板部71の開放端部76の第2板部72との篏合が浅い状態(
図4に示す状態)のときに堰板部79が突き当たる第1ストッパー8が形成されている。第1ストッパー8は、第2板部72の上板部73の下面に下方に向けて突設されており、下端部は第1板部71の堰板部79と重なる位置まで達している。なお、第1ストッパー8はこの実施形態に限定されず、種々の形態のものを実施できる。また、第1ストッパー8は必ずしも必要不可欠のものではない。
【0040】
第2板部72には、第1ストッパーの位置から所定の距離だけ離れた位置に第2ストッパー80が設けられている。第2ストッパー80は、第1板部71の開放端部76の第2板部72との篏合が深い状態(
図5に示す状態)のときに堰板部79が突き当たる。この実施例では、第2板部72の縦板部78Bが第2ストッパー80を兼ねているが、これに限らず、第2板部72の上板部73の下面に第1ストッパー8と同様の構成の第2ストッパー80を形成してもよい。
【0041】
図4に示す篏合状態のとき、幅調整用板材70の幅dは最大幅D1となる。
図5に示す篏合状態のとき、幅調整用板材70の幅dは最小幅D2となる。幅調整用板材70の幅dは、D2≦d≦D1の範囲において調整が可能である。この実施例では、1個の幅調整用板材70により幅調整機構7を構成しているが、これに限らず、複数個の幅調整用板材70により幅調整機構7を構成することもできる。
【0042】
庇を建物の外壁面9に取り付けるには、まず、建物の外壁面9の庇設置箇所に複数のアンカーボルト11を取り付ける。その後、各アンカーボルト11を保持具3の背板部31に設けられたボルト挿通孔33,34に通すようにして保持具3を外壁面9上に位置決めし、各アンカーボルト11にナット12をねじ込むことにより保持具3を固定する。
【0043】
つぎに、保持具3の上下の保持板部32,33間の溝内へ、庇板2を構成する側板材22及び中間板材21の各後端部を、例えば
図8に示すように、左端から順次差し込みつつ連結し、保持具3に組付けてゆく。例えば、保持具3に既に組付けられた中間板材21につぎの中間板材21を連結する場合、既設の中間板材21の第2の係合片29に、連結すべき中間板材21の第1の係合片28を係合させた後、その中間板材21を後方へ摺動させ、保持具3の保持板部32,33間に差し込む。
【0044】
続いて、保持具3の上側の保持板部32のボルト挿通孔36へボルト13を挿入し、中間板材21のボルト挿通孔26,27及び下側の保持板部33のボルト挿通孔37にボルト13を一連に通した後、ボルト13の先端部にナット14を締め付ける。
同様の組付作業を繰り返すことで、所定数の中間板材21が次々に連結されて保持具3に組付けられてゆく。
【0045】
保持具3のボルト挿通孔36,37に対する中間板材21のボルト挿通孔26の位置ずれが次第に大きくなると、ボルト13をボルト挿通孔36,37,26,27に一連に差し込むことが困難となるため、幅調整用板材70による庇板2の幅調整が行われる。
【0046】
連結すべき中間板材21,21間に幅調整用板材70を介装するために、まず、一方の中間板材21に幅調整用板材70の第2板部72を
図6(1)~(3)に示す手順で連結する。
図6(1)において、中間板材21の下方に幅調整用板材70の第2板部72を位置させ、中間板材21の第2の係合片29に幅調整用板材70の第2板部72の第1の係合片28を位置合わせする。その後、第2板部72を上方へ移動させ(
図6(2))、第1の係合片28を中間板材21の第2の係合片29に係合させた後(
図6(3))、第2板部72を摺動させ、中間板材21に前後を揃えて連結を完了する。そして、幅調整板材70の第2板部72を一体に備えた中間板材21を、保持具3に組付けられた既設の中間板材21に連結して保持具3に組付ける。
【0047】
つぎに、連結すべき中間板材21,21の他方に幅調整用板材70の第1板部71を
図7(1)~(3)に示す手順で連結する。
図7(1)において、中間板材21の上方に幅調整用板材70の第1板部71を位置させ(
図7(1))、中間板材21の第1の係合片28に幅調整用板材70の第1板部71の第2の係合片29を位置合わせする。その後、第1板部71を下方へ移動させ(
図7(2))、第2の係合片29を中間板材21の第1の係合片28に係合させた後(
図7(3))、第1板部71を摺動させ、中間板材21に前後を揃えて連結を完了する。
【0048】
つぎに、中間板材21と一体の幅調整用板材70の第1板部71の開放端部76を、既設の幅調整用板材70の第2板部72の上板部73及び下板部74の内側に篏合した後、その篏合深さを調整することにより、第1板部71と一体の中間板材21のボルト挿通孔26,27が保持具3の保持板部32,33のボルト挿通孔36,37と揃う位置に中間板材21に位置決めする。
【0049】
篏合深さを変えるとき、第1板部71と第2板部72との篏合が浅い位置で第1板部71の堰板部79が第2板部72の第1ストッパー8に突き当たるので、第1板部71の開放端部76が第2板部72の上板部73及び下板部74から脱落して第1板部71と第2板部72とが分離することがない。
また、第1板部71と第2板部72との篏合が深い位置で第1板部71の堰板部79が第2板部72の第2ストッパー80に突き当たるので、第1板部71の開放端部76が第2板部72の内部の奥深くまで入り込むことがない。
【0050】
幅調整用板材70において、第1板部71の開放端部76は第2板部72の上板部73及び下板部74の内側へ篏合するので、その篏合深さを調整することができる。
したがって、誤差の累積により保持具3の保持板部32,33のボルト挿通孔36,37と中間板材21の後端部のボルト挿通孔26,27とが位置ずれしても、幅調整用板材70の第1板部71の開放端部76の第2板部72の上板部73及び下板部74との篏合深さを調整することで、中間板材21の位置ずれが是正される。これにより保持具3のボルト挿通孔36,37と中間板材21のボルト挿通孔26,27とは上下一列に揃えられ、ボルト13を一連に通すことができる。このように、余分な部品を用いることなく誤差の吸収が可能である。
なお、幅調整用板材70は、第1板部71及び第2板部72が中間板材21と係合しかつ前縁板4により前後方向の移動が阻止されることで定位するが、幅調整用板材70の第1板部71の後端部にボルト挿通孔を形成して、保持具3のボルト挿通孔36,37との間にボルトを通して保持具3に固定するようにしてもよい。また、側板材22及び中間板材21は右端から順次連結して組み立てることもでき、この場合は、幅調整用板材70の第2板部72の後端部にボルト挿通孔を形成する。
【0051】
第1板部71の上板部73の開放端部76と第2板部72の上板部73とが篏合する部分に隙間があり、その隙間から雨水が幅調整用板材70の内部に浸入するが、雨水は底面部74a上に溜まり、溜まった雨水は堰板部79により堰き止められる。このため、雨水が第1板部71の下板部74と第2板部72の下板部74とが篏合する部分の隙間より幅調整用板材70の下面の漏れ出ることがなく、堰板部79と縦板部78Aとの間の流路を流れて庇板2が傾斜する方向へ導かれる。
【0052】
また、従来技術においては、庇を上下各方から見たとき、塞ぎ板120,121やネジ122の頭部が目立ち、庇の美観を低下させていた。しかし、本発明においては第1板部71の本体部75と開放端部76との間の繋ぎ部77は第2板部72の上板部73及び下板部74の厚みに相当する段差を有するので、第1板部71の上下各面と第2板部72の上下各面との間に突出する部分が生じず、庇板2の上面及び下面の見映えを低下させない。
【0053】
図9~
図12に本発明の他の実施形態を示す。なお、以下の説明では、
図1の実施形態と異なる点のみを説明し、
図1の実施形態と同様の構成には、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0054】
図9の実施形態においては、
図1の実施形態と幅調整用板材90の構成が異なっている。本実施形態において、幅調整用板材90は、第1板部71及び第2板部72と、第1板部71及び第2板部72の間に介在する中間板部91とからなる。第1板部71、第2板部72、中間板部91は左右に分離可能である。中間板部91の左右の位置は中央位置が望ましいが、右寄り又は左寄りの位置であってもよい。中間板部91は、内部が中空であり、上面を構成する上板部93と、下面を構成する下板部94と、上板部93と下板部94との間に設けられる縦板部98とを含む。
図9中、中間板部91の上板部93及び下板部94の右側の端部96は、右側に位置する第1板部71の上板部73及び下板部74の内側に篏合されかつ嵌合深さの調節が可能である。中間板部91の上板部93及び下板部94の左側の端部96は、左側に位置する第2板部72の上板部73及び下板部74の内側に篏合されてかつ嵌合深さの調節が可能である。
【0055】
ここで、「中間板部91の上板部93及び下板部94の(右側または左側の)端部96」とは、上板部93の開放端93T及び下板部94の開放端94Tとを含む幅方向の領域を指す。
図10は、中間板部91の端部96と第1板部71及び第2板部72との篏合が最も浅い状態を示す。また、
図11は、中間板部91の端部96と第1板部71及び第2板部72との篏合が最も深い状態を示す。
幅調整用板材90の幅dは、中間板部91の端部96の第1板部71に対する篏合深さ、中間板部91の端部96の第2板部72に対する篏合深さに応じて調整が可能であり、この実施例では、
図10に示す篏合深さと
図11に示す篏合深さの範囲内で調整される。中間板部91、第1板部71及び第2板部72により幅調整機構9が構成される。
【0056】
第1板部71は、内部が中空であり、上面を構成する上板部73と、下面を構成する下板部74と、上板部73と下板部74との間に設けられる縦板部78とを一体に備える。縦板部78は、第1板部71の幅方向中央位置に間隔を開けて2つ並んで形成されている。第1板部71は右側に第2の係合片29を備えている。第2の係合片29は中間板材21のものと同様の構成のものである。上板部73及び下板部74は、最も左側の縦板部78から幅方向左側に突出している。本実施形態では、上板部73及び下板部74の幅方向の突出長さL1は、中間板部91の幅方向の長さL2の半分の長さに設定されている。突出長さL1はこの長さに限定されず、後述する中間板部91の鍔部97と上板部93の開放端93Tとの間の空間を第1板部71の上板部73が覆うことができる長さ以上であって、中間板部91の幅方向の長さL2以下の長さであれば、任意の長さを設定できる。
【0057】
第2板部72は、内部が中空であり、上面を構成する上板部73と、下面を構成する下板部74と、上板部73と下板部74との間に設けられる縦板部78とを一体に備える。縦板部78は、第2板部72の幅方向中央位置に間隔を開けて2つ並んで形成されている。第2板部72は左側に第1の係合片28を備えている。第1の係合片28は中間板材21のものと同様の構成のものである。第2板部72の上板部73及び下板部74は、最も右側の縦板部78から幅方向右側に突出している。本実施形態では、上板部73及び下板部74の幅方向の突出長さL1は、中間板部91の幅方向の長さL2の半分の長さに設定されている。突出長さL1はこの長さに限定されず、後述する中間板部91の鍔部97と上板部93の開放端93Tとの間の空間を第2板部72の上板部73が覆うことができる長さ以上であって、中間板部91の幅方向の長さL2以下の長さであれば、任意の長さを設定できる。
【0058】
中間板部91の右側において、中間板部91の下板部94の開放端94Tは、上板部93の開放端93Tより一定幅だけ、図中、右方向へ突き出た位置にある。下板部94の端部96は、幅方向へ突出する底面部94aと、底面部94aの先端よりわずかに左側の位置に上向きに一体形成された堰板部99とを含む。堰板部99は、底面部94aに対して直角をなし、上端に左右に延びる鍔部97が形成されている。鍔部97の上面と上板部93との上面とは高さが揃っている。中間板部91の右側の端部96が第1板部71の内側に嵌合するときに、鍔部97の上面及び上板部93との上面は、第1板部71の上板部93の内側に当接し、鍔部97と上板部93の開放端93Tとの間の空間が第1板部71の上板部73により覆われる。中間板部91の左側において、中間板部91の下板部94の開放端94Tは、上板部93の開放端93Tより一定幅だけ、図中、左方向へ突き出た位置にある。下板部94の端部96は、幅方向へ突出する底面部94aと、底面部94aの先端よりわずかに右側の位置に上向きに一体形成された堰板部99とを含む。堰板部99は、底面部94aに対して直角をなし、上端に左右に延びる鍔部97が形成されている。鍔部97の上面と上板部93との上面とは高さが揃っている。中間板部91の左側の端部96が第2板部72の内側に嵌合するときに、鍔部97の上面及び上板部93との上面は、第2板部72の上板部73の内側に当接し、鍔部97と上板部93の開放端93Tとの間の空間が第2板部72の上板部73により覆われる。左右において、右側の鍔部97の右端97Tは下板部94の右側の開放端94Tと位置が揃い、左側の鍔部97の左端97Tは下板部94の左側の開放端94Tと位置が揃っている。
【0059】
堰板部99は、中間板部91の上板部93と第1板部71の上板部73とが篏合する部分の隙間から内部に浸入した雨水を堰き止め、中間板部91の下板部94と第1板部71の下板部74とが篏合する部分の隙間より漏れ出るのを防止する。堰板部99と縦板部98と底面部94aとにより雨水の流路を構成しており、底面部94aに溜まった雨水はこの流路を流れて庇板2が傾斜する方向へ導かれる。
【0060】
なお、中間板部91の上板部93と第1板部71の上板部73とが篏合する部分の隙間、中間板部91の下板部94と第1板部71の下板部74とが篏合する部分の隙間にはシールを施す必要はないが、少なくとも一方の隙間にシールを施してもよい。中間板部91の上板部93と第2板部72の上板部73とが篏合する部分の隙間、中間板部91の下板部94と第2板部72の下板部74とが篏合する部分の隙間にはシールを施す必要はないが、少なくとも一方の隙間にシールを施してもよい。
【0061】
また、中間板部91の上板部93の左右両側の開放端93Tの外側(上側)の面に突条93aを設け、第1板部71及び第2板部72の上板部73の端部の内側(下側)の面に突条73aを設け、突条93a、73a同士を互いに係止させてもよい。
図12(A)には、中間板部91の上板部93の左側の開放端93Tの突条93a及び第2板部72の上板部73の端部の突条73aが示されており、
図12(C)には、中間板部91の上板部93の左側の開放端93Tの突条93a及び第1板部71の上板部73の端部の突条73aが示されている。さらに、中間板部91の下板部94の外側(下面)であって、上下方向において中間板部91の上板部93のそれぞれの突条93aに対応する位置に突条94bを設け、第1板部71及び第2板部72の下板部74の端部の内側(上側)の面に突条74bを設けてもよい。そして、突条94b、74b同士を互いに係止させてもよい。
図12(B)には、中間板部91の下板部94の外側の左側の突条94b及び第2板部72の下板部74の端部の内側の突条74bが示されており、
図12(D)には、中間板部91の下板部94の外側の右側の突条94b及び第1板部71の下板部74の端部の内側の突条74bが示されている。これらの突条93a、73a、94b、74bにより、中間板部91と第1板部71、第2板部72との嵌合が外れるのが防がれる。
【0062】
図10に示す篏合状態のとき、幅調整用板材90の幅dは最大幅D1となる。中間板部91の上板部93の両側の開放端93Tは、第1板部71の上板部93の端部及び第2板部72の上板部93の端部と上下方向において重なる位置にある。このとき、中間板部91の突条93aと第1板部71及び第2板部72の上板部73の突条73aとが互いに係止し、中間板部91の突条94bと第1板部71及び第2板部72の下板部74の突条74bとが互いに係止する。
【0063】
図11に示す篏合状態のとき、幅調整用板材90の幅dは最小幅D2となる。第1板部71及び第2板部72の上板部73の開放端73T同士、第1板部71及び第2板部72の下板部74の開放端74T同士は互いに突き当たる。中間板部91の下板部94の右側の開放端94Tは第1板部71の左側の縦板部78に突き当たり、中間板部91の下板部94の左側の開放端94Tは第2板部72の右側の縦板部78に突き当たっている。また、中間板部91の右側の鍔部97の右端97Tが第1板部71の左側の縦板部78に突き当たり、中間板部91の左側の鍔部97の左端97Tが第2板部72の右側の縦板部78に突き当たっている。
【0064】
幅調整用板材90の幅dは、D2≦d≦D1の範囲において調整が可能である。この実施形態では、1個の幅調整用板材90により幅調整機構9を構成しているが、これに限らず、複数個の幅調整用板材90により幅調整機構9を構成することもできる。
【0065】
庇を建物の外壁面9に取り付ける手順について説明する。
図1に示す実施形態と同様の手順により、保持具3を固定し、庇板2を構成する側板材22及び中間板材21を保持具3に組付ける。
図6(1)~(3)に示す手順と同様に、連結すべき中間板材21,21間に幅調整用板材90を介装するために、一方の中間板材21に幅調整用板材90の第2板部72を連結する。
図7(1)~(3)に示す手順と同様に、連結すべき中間板材21,21の他方に幅調整用板材90の第1板部71を連結する。つぎに、中間板部91を介して第1板部71及び第2板部72を連結する。第1板部71及び第2板部72、中間板部91が連結された状態において、中間板部91の左側の端部96は、既設の幅調整用板材90の第2板部72の上板部73及び下板部74の内側に篏合し、中間板部91の右側の端部96は第1板部71の上板部73及び下板部74の内側に篏合する。
【0066】
図9は、保持具3の保持板部32,33に対する中間板材21の取付位置がずれていないとき、すなわち、誤差の累積による中間板材21の位置ずれ量がゼロのときの幅調整用板材9の幅dの調整状態を示しており、第1板部71が連結された中間板材21のボルト挿通孔26,27の位置と保持具3の保持板部32,33のボルト挿通孔36,37の位置とが揃うように、中間板部91と第1板部71との嵌合深さ、中間板部91と第2板部72との嵌合深さが調整されている。この状態のとき、第1板部71及び第2板部72の上板部73の開放端73Tの間に所定の間隔が形成され、第1板部71及び第2板部72の下板部74の開放端74Tの間に所定の間隔が形成される。なお、
図9に示す状態においては、中間板部91の右側の下板部94の開放端94Tが第1板部71の縦板部78に突き当たっているが、かならずしも突き当たっている必要はなく、中間板部91の右側の下板部94の開放端94Tが第1板部71の縦板部78よりも左側に位置していてもよい。また、中間板部91の左側の下板部94の開放端94Tは、第2板部72の縦板部78に突き当たっていてもよく、第2板部72の縦板部78よりも右側に位置していてもよい。
【0067】
誤差の累積によって中間板材21が位置ずれする場合、第1板部71または第2板部72と一体の中間板材21のボルト挿通孔26,27の位置と保持具3の保持板部32,33のボルト挿通孔36,37の位置とを揃えるために、幅調整用板材90の幅dを
図9に示す状態よりも短くまたは長く調整する。中間板材21の位置ずれ量がマイナスのときは、幅調整用板材90の幅dを
図9に示す状態よりも長くする必要があり、中間板部91の端部96と第1板部71との嵌合深さ、中間板部91の端部96と第2板部72との篏合深さの少なくとも一方を浅くする。この状態のとき、第1板部71及び第2板部72の上板部73の開放端73Tの間の間隔は
図9に示す状態のときよりも長くなり、第1板部71及び第2板部72の下板部74の開放端74Tの間の間隔は
図9に示す状態のときよりも長くなる。
図10は、中間板部91の端部96と第1板部71及び第2板部72との篏合深さを最も浅くした場合の幅調整板材90の幅dの調整状態を示している。このとき、中間板部91の上板部93の突条93aと第1板部71及び第2板部72の上板部73の突条73aとが係止し、中間板部91の下板部94の突条94bと第1板部71及び第2板部72の下板部74の突条74bとが係止している。
【0068】
中間板材21の位置ずれ量がプラスのときは、幅調整用板材90の幅dを
図9に示す状態よりも短くする必要があり、中間板部91の端部96と第1板部71との嵌合深さ、中間板部91の端部96と第2板部72との篏合深さの少なくとも一方を深くする。この状態のとき、第1板部71及び第2板部72の上板部73の開放端73Tの間の間隔は
図9に示す状態のときよりも短くなり、第1板部71及び第2板部72の下板部74の開放端74Tの間の間隔は
図9に示す状態のときよりも短くなる。
図11は、中間板部91の端部96と第1板部71及び第2板部72との篏合深さを最も深くした場合の幅調整板材90の幅dの調整状態を示している。このとき、第1板部71及び第2板部72の上板部73の開放端73T同士、第1板部71及び第2板部72の下板部74の開放端74T同士が互いに突き当たる。また、中間板部91の右側の鍔部97の右端97Tが第1板部71の左側の縦板部78に突き当たり、中間板部91の左側の鍔部97の左端97Tが第2板部72の右側の縦板部78に突き当たる。
【0069】
上記の構成によれば、第1板部71と第2板部72との間に介在する中間板部91を備えているため、第1板部71と中間板部91との間、第2板部72と中間板部91との間で嵌合深さを調整することができ、誤差の累積による板材の位置ずれを是正できる。
【0070】
中間板部91の上板部93と第1板部71の上板部93とが篏合する部分、中間板部91の上板部93と第2板部72の上板部93とが篏合する部分には隙間があり、その隙間から雨水が幅調整用板材90の内部に浸入するが、雨水は底面部94a上に溜まり、堰板部99により堰き止められる。このため、雨水がこの隙間より幅調整用板材90の下面の漏れ出ることがなく、堰板部99と縦板部98との間の流路を流れて庇板2が傾斜する方向へ導かれる。
【0071】
また、中間板部91と、第1板部71及び第2板部72の嵌合を浅くしていくと、中間板部91の上板部93の突条93aと第1板部71及び第2板部72の上板部73の突条73aとが係止し、中間板部91の下板部94の突条94bと第1板部71及び第2板部72の下板部74の突条74bとが係止する。これにより、中間板部91の端部96が第2板部72及び第1板部71から脱落して中間板部91と第2板部72及び第1板部71とが分離することがない。
【0072】
また、中間板部91及び第1板部71の嵌合を深くしていき、中間板部91及び第2板部72との篏合を深くしていくと、第1板部71の上板部73の開放端73Tと第2板部72の上板部73の開放端73Tとが突き当たり、第1板部71の下板部74の開放端74Tと第2板部72の下板部74の開放端74Tとが突き当たる。また、中間板部91の右側の鍔部97の右端97Tが第1板部71の左側の縦板部78に突き当たり、中間板部91の左側の鍔部97の左端97Tが第2板部72の右側の縦板部78に突き当たる。このため、中間板部91が第1板部71及び第2板部72の内部まで入り込むことがない。
【0073】
その他の構成及び効果については、
図1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
図9に示す実施形態においては、幅調整用板材90は中間板部91を一つ備えているが、中間板部91を複数備えていてもよい。この場合、隣り合う中間板部91の間に第3板部を設けて、第3板部の両側に近接する中間板部91の端部96が第3板部に嵌合してもよい。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 庇
2 庇板
3 保持具
8 第1ストッパー
13 ボルト
14 ナット
21 中間板材
22 側板材
23 上板部
24 下板部
25 縦板部
26,27 ボルト挿通孔
31 背板部
32,33 保持板部
36,37 ボルト挿通孔
70、90 幅調整用の中間板材(幅調整用板材)
71 第1板部
72 第2板部
73、93 上板部
74、94 下板部
74a 底面部
75 本体部
76 開放端部
77 繋ぎ部
78、98 縦板部
79、99 堰板部
80 第2ストッパー
91 中間板部
96 端部