(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】環状具
(51)【国際特許分類】
B42F 3/04 20060101AFI20240220BHJP
F16B 45/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B42F3/04 B
F16B45/00 A
(21)【出願番号】P 2023100059
(22)【出願日】2023-06-19
【審査請求日】2024-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523233134
【氏名又は名称】田村 公佑
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 公佑
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-021607(JP,A)
【文献】特開2021-108645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0320798(US,A1)
【文献】特開2020-156251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 3/04
F16B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の貫通穴に取り付けて使用される環状具であって、
両端が自由端の帯状部材が窪みを有する環をなす形態を有し、
一端側の端部である内端部を含む内片と他端側の端部である外端部を含む外片が、前記窪みにおいて少なくとも一部が互いに内外重なって重ね部が形成され、
前記内端部が、前記外片の少なくとも一部と接触しており、
両側方において相対する第1円弧部及び第2円弧部が、互いに近接する内側方向に押されると、前記内端部が前記外片を離れて開口し、押されなくなると元の初期状態に戻る
ことを特徴とする、環状具。
【請求項2】
前記内端部は、前記外端部と接触している
ことを特徴とする、請求項1に記載の環状具。
【請求項3】
前記内片は、前記内端部と前記第1円弧部を連結する内連結部を含み、
前記内連結部は、内側に凹入する円弧形状である
ことを特徴とする、請求項1に記載の環状具。
【請求項4】
前記内端部は、前記第1円弧部及び前記第2円弧部が互いに近接する内側方向に押されると、前記第2円弧部の仮想内周円内に入ってくるように構成される
ことを特徴とする、請求項3に記載の環状具。
【請求項5】
前記外片は、前記外端部と前記第2円弧部を連結する外連結部を含み、
前記内端部は、前記外連結部の少なくとも一部と接触している
ことを特徴とする、請求項1または3に記載の環状具。
【請求項6】
前記内連結部は、仮想外周円が前記第2円弧部の仮想内周円と外接するように形成される
ことを特徴とする、請求項3に記載の環状具。
【請求項7】
前記内端部は、先端に向かって厚み及び奥行幅の一方または双方が漸次低減するテーパ形状である
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の環状具。
【請求項8】
前記重ね部において、前記内片の内端部側と前記外片の外端部側が咬合している
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の環状具。
【請求項9】
前記重ね部において、前記外片の外端部側の断面が外側に凸の円弧形状であり、
前記内端部が、前記外片の円弧部分の内部に収まっている
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の環状具。
【請求項10】
前記第1円弧部の仮想内周円及び前記第2円弧部の仮想内周円の直径は、10.25mmより大きい
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の環状具。
【請求項11】
前記第1円弧部の内周面と第2円弧部の内周面との間の最大内周横幅は、20.5mmより大きい
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の環状具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状具に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の貫通穴に取り付けて使用される器具として、例えば、綴じ具がある。従来、例えば、「両端部に係止部を有する合成樹脂製のカードリングにおいて、リングが2つのリング構成部(11)(12)からなり、これらのリング構成部(11)(12)を、一端で軸着して回動自在とし、リングの両端部(14)(15)の一方又は両方に少なくとも1個の突起を設け、この突起に係合する孔部を他方の端部に形成し、突起が孔部に係合することによって、両端部(14)(15)が相互に係止されうることを特徴とするカードリング」が提案されている(特許文献1の請求項1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記カードリングは、両端部の係止を解除すれば、対象物を綴じたり、外したりして、使用することができる。
【0005】
しかし、上記カードリングから綴じた対象物を抜き取るためには、両手でカードリングの両端部を持って相互係止を解除しなければならず、必ずしも便利とは言えない。すなわち、上記カードリングは、操作の際に対象物と器具を持ち替えなければならない点、不便である。
【0006】
また、上記カードリングは、2つのリング構成部からなり、これらを軸部材で連結しているため、部品点数が多くなる。
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決するためのものであり、簡素な構成で簡便に操作できる環状具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、対象物の貫通穴に取り付けて使用される環状具であって、両端が自由端の帯状部材が窪みを有する環をなす形態を有し、一端側の端部である内端部を含む内片と他端側の端部である外端部を含む外片が、前記窪みにおいて少なくとも一部が互いに内外重なって重ね部が形成され、前記内端部が、前記外片の少なくとも一部と接触しており、両側方において相対する第1円弧部及び第2円弧部が、互いに近接する内側方向に押されると、前記内端部が前記外片を離れて開口し、押されなくなると元の初期状態に戻る。
【0009】
好ましくは、前記内端部は、前記外端部と接触している。
【0010】
好ましくは、前記内片は、前記内端部と前記第1円弧部を連結する内連結部を含み、前記内連結部は、内側に凹入する円弧形状である。
【0011】
好ましくは、前記内端部は、前記第1円弧部及び前記第2円弧部が互いに近接する内側方向に押されると、前記第2円弧部の仮想内周円内に入ってくるように構成される。
【0012】
好ましくは、前記外片は、前記外端部と前記第2円弧部を連結する外連結部を含み、前記内端部は、前記外連結部の少なくとも一部と接触している。
【0013】
好ましくは、前記内連結部は、仮想外周円が前記第2円弧部の仮想内周円と外接するように形成される。
【0014】
好ましくは、前記内端部は、先端に向かって厚み及び奥行幅の一方または双方が漸次低減するテーパ形状である。
【0015】
好ましくは、前記重ね部において、前記内片の内端部側と前記外片の外端部側が咬合している。
【0016】
好ましくは、前記重ね部において、前記外片の外端部側の断面が外側に凸の円弧形状であり、前記内端部が、前記外片の円弧部分の内部に収まっている。
【0017】
好ましくは、前記第1円弧部の仮想内周円及び前記第2円弧部の仮想内周円の直径は、10.25mmより大きい。
【0018】
好ましくは、前記第1円弧部の内周面と第2円弧部の内周面との間の最大内周横幅は、20.5mmより大きい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡素な構成で簡便に操作できる環状具を提供することができる。
【0020】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る環状具の一例を示す斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る環状具の一例を示す正面図である。
【
図3】実施形態2に係る環状具の一例を示す正面図である。
【
図4】
図3の環状具の開口状態の一例を示す図である。
【
図5】実施例1に係る綴じ具を説明するための図である。
【
図6】実施例1に係る綴じ具を説明するための図である。
【
図7】実施例1に係る綴じ具を説明するための図である。
【
図8】実施例1に係る綴じ具を説明するための図である。
【
図9】実施例1に係る綴じ具を説明するための図である。
【
図10】変形例1に係る綴じ具を説明するための図である。
【
図11】変形例2に係る綴じ具を説明するための図である。
【
図12】変形例3に係る綴じ具を説明するための図である。
【
図13】実施例2に係る環状具の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の例について、図面を参照して説明する。なお、下記実施形態(及び実施例、変形例)において共通する構成要素については、前出の符号と同様な符号を付し説明を省略することがある。また、構成要素等の形状、位置関係等に言及する場合は、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0023】
図1は、本発明に係る環状具の一例を示す斜視図である。
【0024】
本発明の環状具1は、対象物の貫通穴に取り付けて使用される器具である。一例として、環状具1は、文房具で、例えば紙類に開けたパンチ穴に通して書類やカード等をまとめるために用いられる綴じ具である。環状具1は、これに限らず、留め具、フック、固定具等でもよい。
【0025】
環状具1は、両端が自由端の帯状部材が窪みを有する環をなす形態を有し、内側に空間(以下「内部空間」という)Uを包含している。言い換えれば、環状具1は、外周に一箇所窪みを有する概ね丸みのある形状である。このような形状は、別の表現としては、豆形状あるいはそら豆形状であるとも言える。環状具1は、一例として断面形状が均一である。環状具1は、一箇所または複数箇所の断面形状が、他の箇所と異なってもよい。環状具1は、好ましくは、断面形状が、奥行幅が厚みより大きい扁平な形状である。
【0026】
環状具1は、一端側の端部である内端部2を含む内片Mと他端側の外端部3を含む外片Nが、窪みVにおいて、少なくとも一部が互いに内外重なって重ね部Wが形成される。内端部2は、外片Nの少なくとも一部と接触している。接触部分同士は、好ましくは、互いに押圧している、または互いに密着している。
【0027】
環状具1は、両側方において相対する一対の円弧部である第1円弧部4と第2円弧部5が、互いに近接する内側方向(内部空間U方向)に押されると、内端部2が外片Nを離れて開口し、押されなくなると元の状態である初期状態に戻る。環状具1は、このように、押されて変形しても初期状態に戻る弾性を有する。
【0028】
本発明の環状具1は、このように、開閉部である重ね部Wを構成する部分同士が付勢され接触するだけであって、突起と孔部のような篏合構造を有しない。このように構成することで、環状具1は、一方の手で操作し、他方の手で対象物を把持できるので、対象物と器具を持ち替えずに簡便に操作できる。
【0029】
本発明の環状具1は、重ね部Wが窪みVに設けられるため、両側方の第1円弧部4及び第2円弧部5を内側に押すと、第2円弧部5に続く外片Nが、第1円弧部4に続く内片Mを、これに交差するように内側に押すので、小さい力及び短い移動で対象物が通る十分な開口を得ることができる(
図4を参照)。
【0030】
環状具1は、窪みVにおいて内片Mと外片Nが重なる位置や長さ、即ち重ね部Wの位置や長さは、特に限定されず、環状具1や対象物の大きさ、材質等に合わせて設定できる。
【0031】
環状具1は、上記のように形作られ付勢されて弾性を備えればよく、素材や製造方法は特に限定されない。一例として、弾性を有する樹脂や金属製の帯状部材を熱や圧力を加えながら曲げることで形作ることができる。一例として、金型を用いて樹脂素材で射出成形することで形作ることができる。その他の素材や製造手段が用いられてもよく、例えば、草木等に由来する自然素材(木質系や紙系等)で形作る、3Dプリンタ等で造形する、金属素材を切削や圧延して形作る等でもよい。
【0032】
環状具1は、このように、扁平な断面で弾性を持つ材を弱軸周りに窪みを有する環状に曲げたような形状をし、重ね部Wを窪みVに配置することで、重ね部Wから離れた部分を挟むように押すだけで、重ね部Wに直接触れることなく器具を開閉できる。
【0033】
そのため、環状具1は、操作する指が邪魔になって対象物を取外しにくいというおそれもないので、非常に便利である。
【0034】
また、環状具1は、複数の部材を組み合わせるのではなく、1部材で構成されるため、部品点数が少なく軽い。また、簡素な構成であるため、加工性がよく、大量生産が容易で、製造コストを低減できる。また自然素材で製造すれば、環境負荷を下げることができる。
【0035】
<実施形態1>
図2は、実施形態1に係る環状具の一例を示す正面図である。図中のXは左右方向(横方向、水平方向)、Yは上下方向(縦方向、鉛直方向)、Zは奥行方向を示す(以下各図において同じ)。なお、図示の破線以下の部分を窪みVとする(以下各図において同じ)。ここでは、一例として、重ね部Wが第2円弧部5に近位な位置に設けられる例を説明する。
【0036】
本実施形態の環状具1は、好ましくは、図示のように、最大横幅Dが最大縦幅Eより大きく、長尺な形状である。環状具1は、図示のように窪みVを上方にすると、第1円弧部4が右側に、第2円弧部5が左側に位置する。
【0037】
環状具1は、ここでは、一端の自由端から他端の自由端に向けて、一連に、順に、内端部2、内連結部6、第1円弧部4、底部8、第2円弧部5、外端部3を有し、隣接の部分同士が隙間なく連続する。すなわち、ここでは、内片Mは内端部2と内連結部6を含み、外片Nは外端部3を含む。
【0038】
なお、これらの部分は、環状具1を説明するために便宜的に区分けしたもので、これらをより細かく数の多い部分に、またはこれらをより大きく数の少ない部分に区分けしてもよいことは言うまでもない(以下各実施形態及び実施例、変形例において同じ)。
【0039】
内端部2は、ここでは外端部3と内外重なり、接している。対象物を綴じるときは、対象物の貫通穴がある端部を、内連結部6に押し当てる。すると、内連結部6とともに内端部2が内側に下がるので、外端部3を対象物の貫通穴に通すようにして、対象物を押し当てながら滑り込ませることができる。対象物を取り外すときは、第1円弧部4及び第2円弧部5を内側に押すと、内端部2が外端部3を離れて開口するので、対象物の端部を引く抜くことができる。
【0040】
このように、環状具1は、開閉操作が非常に簡便であるので、手指の不自由な人にも便利である。また、環状具1は、本体を押したときのみ開くので、対象物の着脱時に誤って落としても書類等の対象物が散らばるリスクが低い。
【0041】
内端部2及び外端部3は、好ましくは、面取りされている。より具体的には、内端部2は、先端に向かって厚みを漸次低減するように所定角度で面取りされて内側に傾斜面を有する。外端部3は、先端に向かって厚みを漸次低減するように所定角度で面取りされて、外側に傾斜面を有する。このように構成することで、重ね部Wが対象物の貫通穴に引っかかることを防ぐことができる。
【0042】
内端部2は、対象物の貫通穴により引っかかりにくくするために、好ましくは、第2円弧部5の仮想内周円O2よりも外側に配置される。
【0043】
第1円弧部4と第2円弧部5は、外側に凸の円弧形状で、窪みVの両側方に位置し、左右側方で相対している。第1円弧部4及び第2円弧部5は、その仮想内周円O1及び仮想内周円O2の半径が同大でもよいし、異なってもよい。第1円弧部4及び第2円弧部5は、仮想内周円O1及び仮想内周円O2の円心が上下方向の同位置にあってもよいし、異なってもよい。
【0044】
内連結部6は、内端部2と第1円弧部4の間の部分であり、両者を連結する部分であるとも言える。内連結部6は、内側に凹入する円弧形状である。内端部2は、内連結部6を設けることで、第1円弧部4の仮想内周円O1の円心よりも、第2円弧部5の仮想内周円O2の円心に近い位置に配置できる。
【0045】
環状具1は、内連結部6が直線状ではなく内側に凹入する円弧形状であるため、右下がり形状の外端部3が押されると、摺動しながら内連結部6の左下がりの基端側(第1円弧部4側)を交差するように押すので、小さい力及び短い移動で対象物が通る十分な開口を得ることができる。
【0046】
内端部2は、好ましくは、第1円弧部4及び第2円弧部5が内側方向に押されると、第2円弧部5の仮想内周円O2内に入ってくるように構成される。このように構成することで、対象物を取り外す際に、内端部2が対象物の端部近くまで来るので、取外しやすくなる。
【0047】
底部8は、第1円弧部4と第2円弧部5の間の部分であり、両者を連結する部分であるとも言える。底部8は、図示のように直線状でもよいし、外側に凸の円弧形状でもよい。底部8を直線状に形成すれば、机等の載置面において環状具1が自立するので、対象物の着脱作業がより容易になる。底部8は、円弧形状の場合は、仮想内周円の半径が第1円弧部4及び第2円弧部5の仮想内周円の半径よりも大きい緩やかな円弧に形成される。
【0048】
<実施形態2>
図3及び
図4は、実施形態2に係る環状具の一例を示す図で、
図2は初期状態(定常状態)を示す正面図、
図3はその開口状態の一例(出口開口状態)を示す図である。ここでは、一例として、重ね部Wが中央近辺に設けられる例を説明する。上記と同様な構成の説明は、適宜省略する。
【0049】
環状具1は、ここでは、一端の自由端から他端の自由端に向けて、一連に、順に、内端部2、内連結部6、第1円弧部4、底部8、第2円弧部5、外連結部7、外端部3を有し、隣接の部分同士が隙間なく連続する。すなわち、ここでは、内片Mは内端部2と内連結部6を含み、外片Nは外端部3と外連結部7を含む。
【0050】
外連結部7は、外端部3と第2円弧部5の間の部分であり、両者を連結する部分であるとも言える。外連結部7は、外端部3に続く先端側が、内連結部6の円弧形状に沿うように内側に凸の円弧状に形成され、内連結部6と内外重なる。この内外重なる部分は、接触してもよいし、近接するものの接触しなくてもよい。
【0051】
外端部3は、ここでは、外連結部7を設けることで、第2円弧部5の仮想内周円O2の円心よりも、第1円弧部4の仮想内周円O1の円心に近い位置に配置できる。
【0052】
外連結部7は、基端側(第2円弧部5側)の少なくとも一部が、内端部2と内外重なり接触する。接触部分同士は、好ましくは、互いに押圧している、または互いに密着している。この基端側の部分は、内端部2の形状に対応する形状に形成される。
【0053】
外連結部7の先端側に続く外端部3は、内連結部6と内外重なる。この内外重なる部分は、接触してもよいし、近接するものの接触しなくてもよい。
【0054】
図3の初期状態において、例えば、親指と人差し指で両側方の第1円弧部4及び第2円弧部5を摘まむように内側方向に押すと、
図4に示すように、初期状態では外連結部7と接触していた内端部2が、外連結部7を離れて、両者間に開口(以下「出口」ともいう)Q1が開く。
【0055】
より具体的には、第1円弧部4及び第2円弧部5を摘まむように押すと、内端部2及び内連結部6が左方に移動し、外端部3及び外連結部7が右方に移動して、外端部3が内連結部6の基端側を交差するように押すので、内端部2が十分な距離押し下げられて出口Q1が開口する。
【0056】
また、ここでは、実施形態1よりも、外端部3が内連結部6の基端側により近い位置にあるため、出口Q1が開口するまでの時間がより短く、摘まむと出口Q1が即座に開く。このように、本実施形態では、外片Nのより少ない移動で、内端部2が即座に十分な距離押し下げられて出口Q1が開放される。
【0057】
なお、図示しないが、対象物を綴じるときは、対象物の貫通穴がある端部を内連結部6に押し当てると、内連結部6が内側に下がるように移動し外端部3を離れて、両者間に対象物を綴じるための入口が開口する。また、内端部2も内側に下がるように移動して外連結部7を離れて、出口Q1が開口する。この入口から出口までの通路を通るようにし、対象物の貫通穴の縁が入口に差し掛かる際に外端部3が貫通穴に入り込むすようにして、対象物を押し当てながら滑り込ませて綴じることができる。
【0058】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限らない。例えば、重ね部Wは第1円弧部4及び第2円弧部5の中央に設けられてもよい。内端部2と外端部3がその中央で重なり接触してもよい。第1円弧部4及び第2円弧部5が、均一な円弧ではなく、中心角が異なる複数の円弧が滑らかに連なるようなものでもよい。底部8以外に直線状の部分を含んでもよい。
【0059】
<実施例1>
図5~9は、実施例1に係る綴じ具を説明するための図で、
図5は対象物である紙面のパンチ穴を説明するための図、
図6は使用状態を説明するための図、
図7の上図は平面図、
図7の下図は正面図、
図8は側面図、
図9は
図7のAA線断面図である。ここでは、実施形態2の一実施例として説明するが、実施例1の構成要素はその趣旨に反しない限り、実施形態1に適用されてもよいことは言うまでもない。
【0060】
実施例1の環状具1は、パンチ穴を開けた書類等をまとめる手段としての綴じ具である。以下、詳細に説明する。
【0061】
図5に示すように、通常、書類は、書類を構成する各紙面Pの端部P2にパンチ穴P1を開けて、このパンチ穴P1に綴じ具を通してまとめる。パンチ穴P1は、通常、ISO規格(ISO 838)による穴あけ器を用いてあけられる。このISO規格では、パンチ穴P1は、直径が5.5mm~6.5mmの範囲、位置が紙の一番近い端(以下「紙端」ともいう)から11mm~13mmの範囲と定められている。すなわち、パンチ穴P1は、通常、図示の紙端からパンチ穴P1の円心までの距離S1が11mm~13mmとなる位置に開けられる。そうすると、紙端からパンチ穴の縁までの最短距離S2は、7.75mm~10.25mmとなる。
【0062】
図6に示すように、紙面Pは、使用状態では、パンチ穴P1が環状具1と篏合した状態で、環状具1に沿って動く。本例の環状具1は、第1円弧部4の仮想内周円O1及び第2円弧部5の仮想内周円O2の直径が10.25mmより大きい。これにより、仮想内周円O1及び仮想内周円O2の直径が紙面Pの最短距離S2より大きくなるので、書類を捲る際に紙端が第1円弧部4及び第2円弧部5の内周面に当たることがなく、スムーズに捲れる。
【0063】
第1円弧部4の仮想内周円O1及び第2円弧部5の仮想内周円O2の直径は、一例として、10.3mm~20.0mmの範囲内にあり、例えば10.5mm程度である。このように構成することで、端部P2をスムーズに回動させるとともに、器具全体を小型化できる。
【0064】
本例の環状具1は、第1円弧部4の内周面と第2円弧部5の内周面との間の最大内周横幅D1が20.5mmより大きい。これにより、最大内周横幅D1が紙面Pの最短距離S2の2倍より大きくなるので、書類を捲って見開き状態にする際に左右ページの紙端が互いに干渉することなく、スムーズに捲れる。また、裏に折り返すときもスムーズに操作できる。
【0065】
最大内周横幅D1は、一例として、21mm~40mmの範囲内にあり、例えば26.5mm程度である。これにより、スムーズに見開きに捲れるとともに、器具全体を小型化できる。
【0066】
本例の環状具1は、略長円形状の一方の長辺の中央部が内側に窪んで窪みVが形成され、重ね部Wが配置されるような形状である。
【0067】
本例の環状具1は、仮想内周円O1と仮想内周円O2が同大に第1円弧部4及び第2円弧部5が形成され、円弧形状の中心角が、90°以上で、好ましくは135°以上である。
【0068】
本例の環状具1は、第1円弧部4及び第2円弧部5が押されると、内端部2の先端と第2円弧部の仮想内周円O2の中心を連結する直線が鉛直方向に対して略30°程度の角度をなすように構成される。これにより、端部P2を回動させて抜き取るのに十分な角度を確保できる。
【0069】
本例の環状具1は、材質は、プラスチックまたは金属であり、左右側方を押して開口させるために必要な力が200~300g程度に設定される。
【0070】
図7に示すように、本例の環状具1は、外端部3が左右端の中心線Cの右側にあり、第2円弧部5の仮想内周円O2の円心よりも、第1円弧部4の仮想内周円O1の円心に近い位置にある。一方、内端部2は中心線Cの左側にあり、第1円弧部4の仮想内周円O1の円心よりも、第2円弧部5の仮想内周円O2の円心に近い位置にある。
【0071】
本例の環状具1は、中心線Cの右側部分(第1円弧部4側の部分)の最上端位置Iから外端部3の先端に相当する位置Kまでの部分の長さが10mm以上となるように構成される。これにより、紙面Pを綴じる際に押し当てるのに必要な長さを確保できる。
【0072】
本例の環状具1は、内連結部6が、その仮想外周円O3が第1円弧部4の仮想内周円O1と外接するように構成される。これにより、押されると、内端部2が確実に第2円弧部5の仮想内周円O2内に入ってくる。本例の内連結部6は、好ましくは、さらに、仮想外周円O3が第2円弧部5の仮想内周円O2と外接するように構成される。これにより、全体をバランスよく構成することができる。
【0073】
図8に示すように、本例の環状具1は、奥行幅Fが均一である。奥行幅Fは、パンチ穴P1の直径より小さく、例えば、3.5mm~4.0mm程度である。
【0074】
図9に示すように、本例の環状具1は、断面が矩形であり、両端部以外は厚みが均一である。厚みGは、重ね部Wの厚みがパンチ穴P1の直径より小さくなるように形成され、例えば、2mm以下である。
【0075】
<変形例1>
図10は、変形例1に係る綴じ具を説明するための模式図で、(a)重ね部を見下げるようにして観察した斜視図、(b)重ね部とパンチ穴との篏合状態の一断面を示すものである。
【0076】
本例の内端部2は、先端に向かって厚み及び奥行幅の一方または双方が漸次低減するテーパ形状である。例えば、図示のように、内端部2は、先端に向かって厚みを漸次低減し、且つ先端に向かって奥行幅が漸次低減するテーパ形状である。
【0077】
内端部2を、厚みを低減するテーパ形状とすることで、外片Nと重ねた際の全体の厚みを減らすことができる。さらに、内端部2を、奥行幅を低減するテーパ形状とすることで、
図10(b)に示すように、外片Nとパンチ穴P1との間にできる円弧状の隙間を潜り抜けられるようにすることができる。これにより、紙面Pが第2円弧部5側から重ね部Wを通る際に重ね部Wに引っかかることを抑制できる。言い換えれば、内端部2が外片Nとパンチ穴P1の間でできる隙間に挿入できるようにすることで、紙面を捲る際にパンチ穴P1により引っかかりにくくすることができる。
【0078】
<変形例2>
図11は、変形例2に係る綴じ具を説明するための模式図で、重ね部を見下げるようにして観察した図である。
【0079】
本例の重ね部Wでは、内片Mの内端部側と外片Nの外端部側が咬合している。すなわち、図示のように、内端部2と外端部3が、肉厚の一部を切り欠いて、内外重なり接している。
【0080】
より具体的には、本例の重ね部Wは、内端部2と外端部3が、肉厚の一部を切り欠いて内外重なり、さらに、内片Mと外片Nの間に内側及び外側において90度以上のV字溝が形成される。図示のように、内端部2の先端面21及び外端部3の先端面31が、所定角度で面取りされて傾斜面となっている。また、この傾斜面と相対するように、外連結部7の先端面71及び内連結部6の先端面61も所定角度で面取りされて、内角度α1及び外角度α2が形成される。内角度α1は好ましくは90度以上で、外角度α2も好ましくは90度以上である。
【0081】
これにより、重ね部Wの厚みが他の部分の厚みの同等以下になり得るので、紙面Pを捲る際に、どの方向から捲ってもパンチ穴P1により引っかかりにくくなる。また、パンチ穴P1の縁が内端部2と外片Nとの間の隙間に挟まることを防ぐことができる。
【0082】
<変形例3>
図12は、変形例3に係る綴じ具を説明するための模式図で、重ね部とパンチ穴との篏合状態の一断面を示すものある。
【0083】
本例の重ね部Wは、外片Nの外端部側の断面が外側に凸の円弧形状であり、少なくとも内端部2が、外片Nの円弧部分の内部に収まっている。例えば、図示のように、内端部2の断面が外片Nに対応した円弧形状であって断面積がより小さい円弧形状に形成され、外片Nと内外重なり接する。外片Nと重なる内片M全体がこのように構成されてもよい。このように、本例では、内端部2が外片Nに外包されるので、外片Nとパンチ穴P1との間にできる円弧状の隙間を潜り抜けることができ、紙面を捲る際にパンチ穴P1により引っかかりにくくなる。また、パンチ穴P1の縁が内端部2と外片Nとの間の隙間に挟まることを防ぐことができる。
【0084】
環状具1は、以上に記載のように、書類を綴じる綴じ具として適用できる。環状具1を用いれば、書類を前後関係の順序を保って綴じられる。また、スキャンや差し替えのためにどの位置からでも素早く紙面を着脱できる。また、狭いスペースでも綴じた書類(A3サイズなど)に手書きで書き入れしやすいよう紙面を180°回転して裏側に回しておくこともできる。
【0085】
環状具1は、全体として断面が扁平な形状であるため、パンチ穴P1との接触箇所が2箇所となり、パンチ穴の破れと広がりのリスクが下がる。また、円形ではないため、落としても転がって遠くに行って無くなるおそれがない。また、平坦な底部8にステッカーを貼ったり着色したりすれば書類を識別する印としても機能する。
【0086】
<実施例2>
図13は、実施例2に係る環状具の一例を示す図である。
【0087】
環状具1は、文房具以外にも、対象物の貫通穴と篏合して、着脱可能に対象物を保持する器具として使用できる。例えば、一時的に対象物を保持する留め具やフック、固定具等としてもよいし、留め具やフック、固定具等とともに使用する器具としてもよいし、あるいはこれら以外の用途に使用されてもよい。
【0088】
本例の環状具1は、図示のように、吸盤91とともに使用される。例えば、吸盤91を底部8に着脱可能に、または着脱不能に取り付け、この吸盤91を用いて台所の壁面に吸着させて、調理用具や食器具を保持する用途に使用される。
【0089】
なお、図示しないが、本例の環状具1は、他の対象物を吊り下げて保持するものでもよく、吊り下げる用途に広く使用できる。また、吊り下げる用途以外に使用されてもよいことは言うまでもない。
【0090】
以上、本発明に係る環状具の実施形態及び実施例、変形例について説明したが、これらは本発明の一例に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。本発明には、以上の各実施形態やその変形例を組み合わせた形態や、さらに様々な変形例が含まれる。請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…環状具、2…内端部、3…外端部、4…第1円弧部、5…第2円弧部、6…内連結部、7…外連結部、8…底部、D1…最大内周横幅、M…内片、N…外片、V…窪み、W…重ね部、P…紙面、P1…パンチ穴。
【要約】
【課題】 簡素な構成で簡便に操作できる環状具を提供する。
【解決手段】 対象物の貫通穴に取り付けて使用される環状具であって、両端が自由端の帯状部材が窪みを有する環をなす形態を有し、一端側の端部である内端部を含む内片と他端側の端部である外端部を含む外片が、前記窪みにおいて少なくとも一部が互いに内外重なって重ね部が形成され、前記内端部が、前記外片の少なくとも一部と接触しており、両側方において相対する第1円弧部及び第2円弧部が、互いに近接する内側方向に押されると、前記内端部が前記外片を離れて開口し、押されなくなると元の初期状態に戻る、環状具。
【選択図】
図1