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特許7440151ポリオレフィン系合成繊維用処理剤、ポリオレフィン系合成繊維用処理剤組成物、ポリオレフィン系合成繊維、及び不織布
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系合成繊維用処理剤、ポリオレフィン系合成繊維用処理剤組成物、ポリオレフィン系合成繊維、及び不織布
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/17 20060101AFI20240220BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20240220BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20240220BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20240220BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20240220BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20240220BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20240220BHJP
   D06M 15/647 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
D06M13/17
D04H3/16
D06M13/188
D06M13/224
D06M13/256
D06M13/292
D06M15/53
D06M15/647
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023139075
(22)【出願日】2023-08-29
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】有村 優
(72)【発明者】
【氏名】井手 菜摘
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-107131(JP,A)
【文献】特開2001-089969(JP,A)
【文献】特開2022-045722(JP,A)
【文献】特開2022-102613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M、D04H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)を含むポリオキシアルキレン誘導体(A)、及びアニオン界面活性剤(B)を含有するとともに、
ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)から選ばれる少なくとも一つを含有することを特徴とするポリオレフィン系合成繊維用処理剤。
一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1):下記一般式(1)で示される化合物であり、Rの炭素数が異なる3種類以上の一価ポリオキシアルキレン誘導体を含むもの。
【化1】
(化1において、
:炭素数22以上50以下の炭化水素基、又は炭素数22以上50以下のアシル基。
O:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基(当該アルキレンオキシ基は1種単独又は2種以上とすることができる。)。
n:5以上100以下の整数
前記化1中のR の炭素数が異なる一価ポリオキシアルキレン誘導体の存在比率が、最も存在比率の大きい一価ポリオキシアルキレン誘導体の炭素数をαとした場合、炭素数(α-4)以上(α+4)以下の合計存在比率が97質量%以下である。
【請求項2】
前記一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)が1.03以上1.50以下である請求項1に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレン誘導体(A)、前記アニオン界面活性剤(B)、前記ポリエーテル変性シリコーン(C)、及び前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリオキシアルキレン誘導体(A)を10質量%以上60質量%以下、前記アニオン界面活性剤(B)を30質量%以上70質量%以下、前記ポリエーテル変性シリコーン(C)を0質量%以上20質量%以下、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)を0質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項1に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレン誘導体(A)、前記アニオン界面活性剤(B)、前記ポリエーテル変性シリコーン(C)、及び前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリオキシアルキレン誘導体(A)及び前記アニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計が60質量%以上である請求項1に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤と、溶媒を含むことを特徴とするポリオレフィン系合成繊維用処理剤組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とするポリオレフィン系合成繊維。
【請求項7】
請求項に記載のポリオレフィン系合成繊維によって作製されたことを特徴とする不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系合成繊維用処理剤、ポリオレフィン系合成繊維用処理剤組成物、ポリオレフィン系合成繊維、及び不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不織布の原料繊維として、合成繊維が用いられている。例えば、不織布は、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂で構成された合成繊維を用いて製造される。不織布に対して処理剤を塗布することにより、親水性等の機能が付与される。親水性等の機能が付与された不織布は、衛材分野、医療分野、土木分野等、幅広い分野で活用されている。
【0003】
特許文献1には、ポリオレフィンで構成された合成繊維を用いて製造された不織布が開示されている。合成繊維には処理剤として親水化処理剤が付着されており、衛生材料の表面材等に用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-201670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、処理剤としてのポリオレフィン系合成繊維用処理剤には、ポリオレフィン系合成繊維に塗布した際に、素早く繊維に浸透する性質、すなわち浸透性のさらなる向上が求められている。また、ポリオレフィン系合成繊維用処理剤は、水系媒体に分散させて乳化物の形態で用いられる。そのため、乳化物の形態を安定して維持する性質、すなわち乳化安定性のさらなる向上も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様1のポリオレフィン系合成繊維用処理剤は、下記の一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)を含むポリオキシアルキレン誘導体(A)、及びアニオン界面活性剤(B)を含有するとともに、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)から選ばれる少なくとも一つを含有することを要旨とする。
【0007】
一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1):下記一般式(1)で示される化合物であり、Rの炭素数が異なる3種類以上の一価ポリオキシアルキレン誘導体を含むもの。
【0008】
【化1】
【0009】
(化1において、
:炭素数22以上50以下の炭化水素基、又は炭素数22以上50以下のアシル基。
【0010】
O:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基(当該アルキレンオキシ基は1種単独又は2種以上とすることができる。)。
n:5以上100以下の整数
【0011】
前記化1中のR の炭素数が異なる一価ポリオキシアルキレン誘導体の存在比率が、最も存在比率の大きい一価ポリオキシアルキレン誘導体の炭素数をαとした場合、炭素数(α-4)以上(α+4)以下の合計存在比率が97質量%以下である。)
態様は、態様1に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤において、前記一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)が1.03以上1.50以下である。
【0012】
態様は、態様1又は2に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤において、前記ポリオキシアルキレン誘導体(A)、前記アニオン界面活性剤(B)、前記ポリエーテル変性シリコーン(C)、及び前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリオキシアルキレン誘導体(A)を10質量%以上60質量%以下、前記アニオン界面活性剤(B)を30質量%以上70質量%以下、前記ポリエーテル変性シリコーン(C)を0質量%以上20質量%以下、前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)を0質量%以上30質量%以下の割合で含有する。
【0013】
態様は、態様1~のいずれか一態様に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤において、前記ポリオキシアルキレン誘導体(A)、前記アニオン界面活性剤(B)、前記ポリエーテル変性シリコーン(C)、及び前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリオキシアルキレン誘導体(A)及び前記アニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計が60質量%以上である。
【0014】
態様のポリオレフィン系合成繊維用処理剤組成物は、態様1~のいずれか一態様に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤と、溶媒を含むことを要旨とする。
態様のポリオレフィン系合成繊維は、態様1~のいずれか一態様に記載のポリオレフィン系合成繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【0015】
態様の不織布は、態様に記載のポリオレフィン系合成繊維によって作製されたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリオレフィン系合成繊維用処理剤によると、ポリオレフィン系合成繊維に対する浸透性を向上させることができるとともに、乳化安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、本発明のポリオレフィン系合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態の処理剤は、下記の一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)を含むポリオキシアルキレン誘導体(A)、及びアニオン界面活性剤(B)を含有するとともに、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)から選ばれる少なくとも一つを含有する。
【0019】
一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1):下記一般式(1)で示される化合物であり、Rの炭素数が異なる3種類以上の一価ポリオキシアルキレン誘導体を含むもの。
【0020】
【化2】
【0021】
(化2において、
:炭素数16以上60以下の炭化水素基、又は炭素数16以上60以下のアシル基。
【0022】
O:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基(当該アルキレンオキシ基は1種単独又は2種以上とすることができる。)。
n:5以上100以下の整数。)
処理剤が、上記ポリオキシアルキレン誘導体(A)、及びアニオン界面活性剤(B)を含有するとともに、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)から選ばれる少なくとも一つを含有することによって、ポリオレフィン系合成繊維に対する浸透性を向上させることができる。また、乳化安定性を向上させることができる。
【0023】
<ポリオキシアルキレン誘導体(A)>
上記一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)において、Rとしての炭素数16以上60以下の炭化水素基は、特に制限されず、飽和炭化水素基であっても、不飽和炭化水素基であってもよい。直鎖状であっても、分岐鎖を有していてもよい。
【0024】
炭素数16以上60以下の炭化水素基としては、例えば、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基、ノナトリアコンチル基、テトラコンチル基、ヘンテトラコンチル基、ドテトラコンチル基、トリテトラコンチル基、テトラテトラコンチル基、ペンタテトラコンチル基、ヘキサテトラコンチル基、ヘプタテトラコンチル基、オクタテトラコンチル基、ノナテトラコンチル基、ペンタコンチル基、ヘキサコンチル基等が挙げられる。
【0025】
上記一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)において、Rとしての炭素数16以上60以下のアシル基は、特に制限されず、飽和アシル基であっても、不飽和アシル基であってもよい。直鎖状であっても、分岐鎖を有していてもよい。
【0026】
炭素数16以上60以下のアシル基としては、例えば、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、ノナデカノイル基、イコサノイル基、ヘンイコサノイル基、ドコサノイル基、トリコサノイル基、テトラコサノイル基、ペンタコサノイル基、ヘキサコサノイル基、ヘプタコサノイル基、オクタコサノイル基、ノナコサノイル基、トリアコンタノイル基、ヘントリアコンタノイル基、ドトリアコンタノイル基、トリトリアコンタノイル基、テトラトリアコンタノイル基、ペンタトリアコンタノイル基、ヘキサトリアコンタノイル基、ヘプタトリアコンタノイル基、オクタトリアコンタノイル基、ノナトリアコンタノイル基、テトラコンタノイル基、ヘンテトラコンタノイル基、ドテトラコンタノイル基、トリテトラコンタノイル基、テトラテトラコンタノイル基、ペンタテトラコンタノイル基、ヘキサテトラコンタノイル基、ヘプタテトラコンタノイル基、オクタテトラコンタノイル基、ノナテトラコンタノイル基、ペンタコンタノイル基、ヘキサコンタノイル基等が挙げられる。
【0027】
の炭素数は、22以上50以下であることが好ましい。Rの炭素数が、22以上50以下であることによって、処理剤が付着した不織布の耐久親水性を向上させることができる。
【0028】
上記一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)は、化2で示される化合物であり、Rの炭素数が異なる45種類以下の一価ポリオキシアルキレン誘導体を含むものであることが好ましい。
【0029】
上記一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)において、化2中のRの炭素数が異なる一価ポリオキシアルキレン誘導体の存在比率は、最も存在比率の大きい一価ポリオキシアルキレン誘導体の炭素数をαとした場合、炭素数(α-4)以上(α+4)以下の合計存在比率が97質量%以下であることが好ましい。炭素数(α-4)以上(α+4)以下の合計存在比率が97質量%以下であることによって、ポリオレフィン系合成繊維に対する処理剤の浸透性をより向上させることができる。また、処理剤の乳化安定性をより向上させることもできる。
【0030】
上記一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)において、AOとしての炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基は、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。
【0031】
アルキレンオキシ基は、1種単独又は2種以上とすることができる。
当該アルキレンオキシ基が複数存在する場合、重合配列は、特に限定されず、ランダム付加物であっても、ブロック付加物であってもよい。
【0032】
上記一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.03以上1.50以下であることが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が、1.03以上1.50以下であることによって、ポリオレフィン系合成繊維に対する処理剤の浸透性をより向上させることができる。また、処理剤の乳化安定性をより向上させることもできる。分子量分布(Mw/Mn)の測定方法については後述する。
【0033】
<アニオン界面活性剤(B)>
アニオン界面活性剤(B)としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤(B)としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ニ級アルキルスルホン酸(C13~15)塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩、(10)脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののカルボン酸エステル塩等が挙げられる。
【0034】
アニオン界面活性剤(B)の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0035】
上記アニオン界面活性剤(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<ポリエーテル変性シリコーン(C)>
上記ポリエーテル変性シリコーン(C)は、公知のものを適宜採用できる。ポリエーテル変性シリコーン(C)としては、例えば、ABn型ポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端型ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル基とアルキル基の両方が側鎖、又は、末端に導入されたアルキルポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの、両末端型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの等が挙げられる。
【0036】
ポリエーテル変性シリコーン(C)は、動粘度等によって規定される市販品を適宜採用してもよい。動粘度は、適宜設定されるが、25℃における動粘度が100cst(mm/s)以上10000cst(mm/s)以下であることが好ましく、500cst(mm/s)以上7000cst(mm/s)以下であることがより好ましい。
【0037】
ポリエーテル変性シリコーン(C)の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1000以上100000以下であることが好ましく、3000以上60000以下であることがより好ましい。
【0038】
ポリエーテル変性シリコーン(C)の質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、「GPC法」ともいう。)により求められる。GPC法の詳細については後述する。
【0039】
上記ポリエーテル変性シリコーン(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)>
上記ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)は、脂肪族モノカルボン酸と、ポリグリセリンのエステルであることが好ましい。
【0040】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数が16以上18以下であることが好ましい。炭素数が16以上18以下である脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等が挙げられる。
【0041】
エステル1分子中の脂肪族モノカルボン酸のモル数は、1以上4以下であることが好ましい。
ポリグリセリンとしては、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン等が挙げられる。
【0042】
エステル1分子中のポリグリセリンのモル数は、1であることが好ましい。
ポリグリセリンの縮合度は、2以上8以下であることが好ましい。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
<各成分の含有割合>
処理剤における上記各成分の含有割合は、特に制限されない。
ポリオキシアルキレン誘導体(A)、アニオン界面活性剤(B)、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)の含有割合の合計を100質量%とする。ポリオキシアルキレン誘導体(A)を10質量%以上60質量%以下、アニオン界面活性剤(B)を30質量%以上70質量%以下の割合で含有することが好ましい。また、ポリエーテル変性シリコーン(C)を0質量%以上20質量%以下、ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)を0質量%以上30質量%以下の割合で含有することが好ましい。
【0044】
各成分の含有割合が上記数値範囲であることによって、ポリオレフィン系合成繊維に対する処理剤の浸透性をより向上させることができる。また、処理剤の乳化安定性をより向上させることもできる。さらに、処理剤が付着した不織布の初期親水性を向上させることができる。処理剤が付着した不織布の濡れ戻り防止性を向上させることもできる。
【0045】
ポリオキシアルキレン誘導体(A)、アニオン界面活性剤(B)、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)の含有割合の合計を100質量%とすると、ポリオキシアルキレン誘導体(A)及びアニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計が60質量%以上であることが好ましい。各成分の含有割合が上記数値範囲であることによって、処理剤の乳化安定性をより向上させることができる。
【0046】
<その他成分(E)>
本実施形態の処理剤は、その他成分(E)を含有してもよい。その他成分(E)としては、例えば、炭素数18以上26以下で分布を持つ平均炭素数22のポリエチレン、炭素数14以上58以下で分布を持つ平均炭素数30のポリエチレン、炭素数30のポリエチレン、クエン酸、オリーブオイルRR(サミット製油株式会社製)、シアバターRF(高級アルコール工業株式会社製)、ライスオイル(築野食品工業株式会社製)、エコファーム キューカンバーE(一丸ファルコス株式会社製)、モモ葉抽出液LA(丸善製薬株式会社製)、精製ヤシ油(S)(日清オイリオグループ株式会社)、アロエ抽出液BG-50(香栄興業株式会社製)、ホホバオイル(サミット製油株式会社製)等が挙げられる。
【0047】
上記その他成分(E)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤におけるその他成分(E)の含有割合は、特に制限されない。その他成分(E)の含有割合は、その他成分(E)を含む処理剤の全質量を100質量%とすると、15質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
<第2実施形態>
以下、本発明のポリオレフィン系合成繊維用処理剤組成物(以下、組成物ともいう。)を具体化した第2実施形態について説明する。
【0049】
本実施形態の組成物は、上記処理剤と、溶媒を含む。組成物は、処理剤と溶媒を混合することによって、乳化物として使用する。
溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水が挙げられる。水の具体例としては、イオン交換水が挙げられる。また、水に加えて、有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコールや、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。
【0050】
上記溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<第3実施形態>
以下、本発明のポリオレフィン系合成繊維を具体化した第3実施形態について説明する。
【0051】
本実施形態のポリオレフィン系合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している。
ここで、ポリオレフィン系合成繊維とは、オレフィンやアルケンをモノマーとして合成された合成繊維を意味するものとする。以下、ポリオレフィン系合成繊維を単に合成繊維ともいう。
【0052】
合成繊維の具体例としては、例えば、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリブテン系繊維が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。さらにポリプロピレン系繊維としては、種々のモノマーを共重合した改質ポリプロピレン繊維、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合ポリプロピレン繊維等が適用されてもよい。
【0053】
また、芯鞘構造の複合繊維であって、芯、鞘部のいずれか又は両方がポリオレフィン系繊維である複合繊維、例えば鞘部がポリエチレン繊維であるポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維であってもよい。
【0054】
処理剤を合成繊維に付着される方法は特に制限されず、公知の方法、例えば、浸漬法、スプレー法等によって付着させることができる。合成繊維を用いて不織布を作製した後、不織布に対して、処理剤を付着させることが好ましい。
【0055】
処理剤の付着量は、処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に対し0.1質量%以上2質量%以下となるように付着させることが好ましく、0.3質量%以上1.2質量%以下となるように付着させることがより好ましい。
【0056】
<第4実施形態>
以下、本発明の不織布を具体化した第4実施形態について説明する。本実施形態の不織布は、第3実施形態の合成繊維によって作製されている。
【0057】
不織布の作製方法は、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。不織布の作製方法としては、例えば、処理剤を付着させる前の合成繊維を用いて、エアレイド法、スパンボンド法、抄紙法、カード法等によってウェブを形成する。さらに、得られたウェブをケミカルボンド、エアスルー、ニードルパンチ、スパンレース等によって繊維同士を結合させて不織布を作製する。得られた不織布に処理剤を付着させることによって、処理剤が付着した不織布を得ることができる。
【0058】
<作用及び効果>
上記実施形態の作用について説明する。
一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)は、化2で示される化合物であり、Rの炭素数が異なる3種類以上の一価ポリオキシアルキレン誘導体を含んでいる。また、Rは、炭素数16以上60以下の炭化水素基、又は炭素数16以上60以下のアシル基である。Rが、炭素数16以上60以下の炭化水素基、又は炭素数16以上60以下のアシル基であることによって、一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)のアルキル鎖が、所定の長さを有した状態になる。また、Rの炭素数が異なる3種類以上の一価ポリオキシアルキレン誘導体を含んでいることによって、一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)のアルキル鎖の長さが、分布を有した状態になる。
【0059】
一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)アルキル鎖の長さが、所定の長さを有するとともに、分布を有していることによって、ポリオキシアルキレン誘導体(A)を含有する処理剤の親水性を好適なものとすることができる。処理剤の親水性を好適なものとすることによって、処理剤の乳化安定性を向上させることができるとともに、ポリオレフィン系合成繊維に対する浸透性を向上させることができる。
【0060】
また、処理剤が、アニオン界面活性剤(B)を含有することによって、処理剤の乳化安定性と、ポリオレフィン系合成繊維に対する浸透性をより向上させることができる。
また、処理剤が、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)から選ばれる少なくとも一つを含有することによって、乳化安定性をより向上させることができるとともに、初期親水性や耐久親水性を向上させることができる。
【0061】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)処理剤が、一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)を含むポリオキシアルキレン誘導体(A)、及びアニオン界面活性剤(B)を含有する。また、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)から選ばれる少なくとも一つを含有する。したがって、ポリオレフィン系合成繊維に対する浸透性を向上させることができる。また、乳化安定性を向上させることができる。
【0062】
(2)一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)において、化2中のRの炭素数が22以上50以下である。したがって、Rの炭素数が、22以上50以下であることによって、処理剤が付着した不織布の耐久親水性を向上させることができる。
【0063】
(3)一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)において、最も存在比率の大きい一価ポリオキシアルキレン誘導体の炭素数をαとする。その場合、化2中のRの炭素数が異なる一価ポリオキシアルキレン誘導体の存在比率において、炭素数(α-4)以上(α+4)以下の合計存在比率が97質量%以下である。したがって、ポリオレフィン系合成繊維に対する処理剤の浸透性をより向上させることができる。また、処理剤の乳化安定性をより向上させることもできる。
【0064】
(4)一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)が1.03以上1.50以下である。したがって、ポリオレフィン系合成繊維に対する処理剤の浸透性をより向上させることができる。また、処理剤の乳化安定性をより向上させることもできる。
【0065】
(5)ポリオキシアルキレン誘導体(A)、アニオン界面活性剤(B)、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)の含有割合の合計を100質量%とする。処理剤は、ポリオキシアルキレン誘導体(A)を10質量%以上60質量%以下、アニオン界面活性剤(B)を30質量%以上70質量%以下の割合で含有する。また、ポリエーテル変性シリコーン(C)を0質量%以上20質量%以下、ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)を0質量%以上30質量%以下の割合で含有する。したがって、ポリオレフィン系合成繊維に対する処理剤の浸透性をより向上させることができる。また、処理剤の乳化安定性をより向上させることもできる。さらに、処理剤が付着した不織布の初期親水性を向上させることができる。処理剤が付着した不織布の濡れ戻り防止性を向上させることもできる。
【0066】
(6)ポリオキシアルキレン誘導体(A)、アニオン界面活性剤(B)、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)の含有割合の合計を100質量%とする。ポリオキシアルキレン誘導体(A)及びアニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計が60質量%以上である。したがって、処理剤の乳化安定性をより向上させることができる。
【0067】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0068】
処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤(シリコーン系化合物)等の通常処理剤に用いられる成分を含有してもよい。
【実施例
【0069】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例、参考例、及び比較例において、%は質量%を意味し、部は質量部を意味する。
【0070】
試験区分1(ポリオレフィン系合成繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるポリオキシアルキレン誘導体(A)32%、アニオン界面活性剤(B)54%、ポリエーテル変性シリコーン(C)13%、その他成分(E)1%となるように各成分をビーカーに加えた。これらを撹拌してよく混合した。撹拌を続けながら固形分濃度が5%となるようにイオン交換水を徐々に添加して、実施例1のポリオレフィン系合成繊維用処理剤の5%水性液を調製した。
【0071】
(実施例2~31、38~49、51、参考例32~37、50、及び比較例1~8)
実施例2~31、38~49、51、参考例32~37、50、及び比較例1~8の各ポリオレフィン系合成繊維用処理剤は、表1~4に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0072】
なお、各例の処理剤中におけるポリオキシアルキレン誘導体(A)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(B)の種類と含有量、ポリエーテル変性シリコーン(C)の種類と含有量、ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)の種類と含有量、その他成分(E)の種類と含有量は、表1~4の「ポリオキシアルキレン誘導体(A)」欄、「アニオン界面活性剤(B)」欄、「ポリエーテル変性シリコーン(C)」欄、「ポリグリセリン脂肪酸エステル(D)」欄、及び「その他化合物(E)」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
表1~4に記載する各成分の詳細は以下のとおりである。
(ポリオキシアルキレン誘導体(A))
表1~4に記載する一価ポリオキシアルキレン誘導体A1-1~A1-13、A-14~A-19の詳細は以下のとおりである。
【0078】
A1-1~A1-13、A-14~A-18について、Rの種類、炭素数の分布、22以上の炭素数を有するものの数を、表5の「R」欄に示す。最も存在比率の大きい一価ポリオキシアルキレン誘導体の炭素数(α)を表5の「α」欄に示す。炭素数(α-4)以上(α+4)以下の合計存在比率を表5の「合計存在比率」欄に示す。AOの種類、付加形態、n数の平均値を、表5の「AO」欄に示す。一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)を表5の「分子量分布」欄に示す。
【0079】
A-19の詳細は以下のとおりである。
A-19:ソルビタンモノステアラート1モルに対し、エチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
【0080】
【表5】
【0081】
なお、表5におけるEO基、PO基はそれぞれ、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基を意味する。
一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)の測定方法について説明する。一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、GPC法に基づき、以下の測定条件で測定した。
【0082】
装置:東ソー社製HLC-8320GPC
カラム:TSK gel Super H4000
:TSK gel Super H3000
:TSK gel Super H2000(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
検出装置:示差屈折率検出器
試料溶液:0.25質量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液流速:0.5mL/分
溶液注入量:10μL
標準試料:ポリスチレン(東ソー社製TSK STANDARD POLYSTYRENE)
標準試料を用いて検量線を作成し、各実施例、参考例、及び比較例の処理剤に配合されるポリオキシアルキレン誘導体の混合物の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)を求めた。その数値を用いて、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0083】
(アニオン界面活性剤(B))
表1~4に記載するアニオン界面活性剤B-1~B-8の詳細を表6に示す。
【0084】
【表6】
【0085】
表6において、アニオン界面活性剤(B)の酸価は、公知の方法によって測定することができる。
(ポリエーテル変性シリコーン(C))
表1~4に記載するポリエーテル変性シリコーンC-1~C-6の詳細を表7に示す。
【0086】
C-1~C-6について、末端基の種類を「末端」欄に示す。ポリエーテル変性シリコーンの質量平均分子量からアルキレンオキサイドを除いた部分の質量比率を「Si%」欄に示す。アルキレンオキサイドに占めるエチレンオキサイドのモル比率を「EO%(モル比)」欄に示す。アルキレンオキサイドの付加形態を「付加形態」欄に示す。ポリエーテル変性シリコーンの動粘度を「動粘度」欄に示す。ポリエーテル変性シリコーンの質量平均分子量を「質量平均分子量」欄に示す。
【0087】
【表7】
【0088】
なお、表7におけるEO、POはそれぞれ、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを意味する。
ポリエーテル変性シリコーン(C)の質量平均分子量(Mw)の測定方法について説明する。
【0089】
ポリエーテル変性シリコーンの質量平均分子量(Mw)は、一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)と同じ測定条件で測定した。標準試料を用いて検量線を作成し、各ポリエーテル変性シリコーンの質量平均分子量(Mw)を求めた。
【0090】
(ポリグリセリン脂肪酸エステル(D))
表1~4に記載するポリグリセリン脂肪酸エステルD-1~D-52の詳細を表8に示す。D-1~D-52について、脂肪族モノカルボン酸の名称、炭素数、エステル1分子中のモル数を「脂肪族カルボン酸」欄に示す。ポリグリセリンの名称、縮合度、エステル1分子中のモル数を「ポリグリセリン」欄に示す。
【0091】
【表8】
【0092】
(その他成分(E))
表1~4に記載するその他成分E-1~E-12の詳細を表9に示す。
【0093】
【表9】
【0094】
試験区分2(ポリオレフィン系合成繊維、及び不織布の製造)
試験区分1で調製したポリオレフィン系合成繊維用処理剤を用いて、ポリオレフィン系合成繊維、及び不織布を製造した。
【0095】
まず、試験区分1で調製したポリオレフィン系合成繊維用処理剤の5%水性液を、硬水で希釈して、濃度0.25%の水性液とした。この水性液を用いて、浴温25℃の処理浴を用意した。
【0096】
また、ポリオレフィン系合成繊維としてポリプロピレン繊維を用いて作製したスパンボンド不織布(目付け20g/m)を用意した。
上記処理浴に、上記のスパンボンド不織布を5分間浸漬して取り出し、ポリプロピレンスパンボンド不織布2gに対して水性液の付着量が4gになるようにマングルにて絞り率を調整して絞った。その後、80℃で30分間送風乾燥して評価用の不織布(以下、評価用不織布ともいう。)を作製した。
【0097】
ポリオレフィン系合成繊維に対する処理剤の付着量は、ポリプロピレンスパンボンド不織布1gに対して0.5%であった。なお、ポリオレフィン系合成繊維に対する処理剤の付着量は、不織布を、ソックスレー抽出機を用いてメタノール/キシレン(50/50容量比)混合溶剤で抽出することによって測定した。
【0098】
試験区分3(評価)
実施例1~31、38~49、51、参考例32~37、50、及び比較例1~8に記載の各処理剤について、乳液の評価として、不織布に対する浸透性と乳化安定性を評価した。また、不織布の評価として、評価用不織布の初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を、表1~4の「乳液評価項目」欄、「不織布評価項目」欄にそれぞれ示す。
【0099】
(浸透性)
各実施例、参考例、及び比較例の処理剤を約75℃に加温した。加温した各処理剤を、約75℃に加温したイオン交換水に撹拌下で加えて、処理剤の0.35%水溶液を調製した。次に、処理剤が付与されていないポリプロピレンスパンボンド不織布を、20℃で相対湿度60%の恒温室内にて24時間調湿した。調湿した不織布上に、各処理剤の0.35%水溶液を5μL滴下した。処理剤が不織布に浸透する状態を目視で観察した。処理剤が完全に浸透するまでの時間を測定して、下記の評価基準で評価した。なお、浸透性は、濡れ性ともいうものとする。
【0100】
・浸透性の評価基準
◎(良好):160秒未満で浸透した場合
○(可):160秒以上、且つ180秒未満で浸透した場合
×(不可):180秒以上で浸透した場合
(乳化安定性)
各実施例、参考例、及び比較例の処理剤を、イオン交換水を用いて希釈し、不揮発分の濃度が1.0%の希釈液(エマルジョン)を調製した。20℃で温調し、24時間後の希釈液を目視で観察して、分離の有無を確認した。また、希釈液を用いて、20℃で相対湿度60%の恒温条件下、波長750nmでの光透過性(%)を測定した。測定装置は島津製作所社製の分光光度計UV-1800 SPECTROPHOTOMETERを使用した。下記の評価基準で評価した。
【0101】
・乳化安定性の評価基準
◎(良好):分離がなく、且つ、光透過率が85%以上である場合
○(可):分離がなく、且つ、光透過率が50%以上85%未満である場合
×(不可):分離がある、もしくは、光透過率が50%未満である場合
(初期親水性)
評価用不織布を、10cm×15cmの小片に裁断した後、20℃で60%の恒温室内にて24時間調湿した。市販のトイレットペーパーを10枚重ねて吸収体とした。この吸収体の上に、調湿後の評価用不織布を配置した。45°傾斜板上に吸収体と評価用不織布を設置した後、不織布の上方1cmの高さより、37℃の生理食塩水0.05gを滴下した。評価用不織布の表面において、滴下点から吸収終了までの生理食塩水が流れる長さである流長を測定した。同じ試験を5回行い、その平均値を45°傾斜流長とした。下記の評価基準で評価した。
【0102】
・初期親水性の評価基準
◎(良好):45°傾斜流長が、30mm未満である場合
○(可):45°傾斜流長が、30mm以上、且つ50mm未満である場合
×(不可):45°傾斜流長が、50mm以上である場合
(耐久親水性)
評価用不織布を、10cm×25cmの小片に裁断した後、20℃で60%の恒温室内にて24時間調湿した。市販のトイレットペーパーを10枚重ねて吸収体とした。この吸収体の上に、調湿後の評価用不織布を配置した。評価用不織布の上にさらに直径2cmの穴を等間隔に20箇所開けた414gのステンレス板を載置した。評価用不織布の上方1cmの高さより、20箇所の穴に対して、37℃の生理食塩水0.05gを滴下した。生理食塩水が10秒以内に吸収された穴の数を計測した。3分経過後、同様に生理食塩水を滴下し、10秒以内に吸収された穴の数を計測した。同様の操作を繰り返し行った。5回目の滴下後に、10秒以内に吸収された穴の数を計測して、下記の評価基準で評価した。
【0103】
・耐久親水性の評価基準
◎(良好):5回目の滴下後に10秒以内に吸収された穴の数が18個以上
○(可):5回目の滴下後に10秒以内に吸収された穴の数が12個以上18個未満
×(不可):5回目の滴下後に10秒以内に吸収された穴の数が12個未満
(濡れ戻り防止性)
評価用不織布を、10cm×10cmの小片に裁断した後、20℃で60%の恒温室内にて24時間調湿した。市販されている紙おむつの最外部の不織布素材から10cm×10cmの不織布片を切除した。その切除部に前記の調湿された10cm×10cmの小片を取り付けて、濡れ戻り防止性評価試料とした。
【0104】
取り付けた小片が上向きになるように濡れ戻り防止性評価試料を水平に置き、該小片の中央に両端が開放された内径6cmの円筒を垂直に立てた。この円筒に水80mlを注入し、5分間静置して、紙おむつ内部に水を吸収させた。
【0105】
次に、円筒を取り外した後、小片上に10cm×10cmの濾紙を15枚重ねて載せた。更にその上に10cm×10cmで5.0kgの錘板を載せて、2分間荷重した。その後、15枚重ねた濾紙の総質量を測量し、その質量の増加率を算出して、下記の評価基準で評価した。
【0106】
・濡れ戻り防止性の評価基準
◎(良好):質量増加率が1%未満である場合
○(可):質量増加率が1%以上、且つ2%未満である場合
×(不可):質量増加率が2%以上である場合
表1~4の結果から、本発明によれば、ポリオレフィン系合成繊維に対する処理剤の浸透性を向上させることができる。また、処理剤の乳化安定性を向上させることができる。また、処理剤が付着した不織布の初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性を向上させることもできる。
【要約】
【課題】ポリオレフィン系合成繊維に対する浸透性を向上させるとともに、乳化安定性を向上させる。
【解決手段】ポリオレフィン系合成繊維用処理剤は、下記の一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1)を含むポリオキシアルキレン誘導体(A)、及びアニオン界面活性剤(B)を含有するとともに、ポリエーテル変性シリコーン(C)、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(D)から選ばれる少なくとも一つを含有する。
一価ポリオキシアルキレン誘導体(A1):下記一般式(1)で示される化合物であり、Rの炭素数が異なる3種類以上の一価ポリオキシアルキレン誘導体を含むもの。
【選択図】なし