(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】プレート積層型熱交換器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
(21)【出願番号】P 2021513731
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2020016982
(87)【国際公開番号】W WO2020209390
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019076034
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(72)【発明者】
【氏名】文後 卓也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】坂井 耐事
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/047825(WO,A1)
【文献】特表2006-517728(JP,A)
【文献】特開2014-033063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
23/34-23/36
23/373-23/427
23/44
23/467-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ多数の開口部(1a)と非開口部(1b)とが交互に二次元に並列して穿設された平坦な複数の金属製の第1パンチングプレート(2)と第2パンチングプレート(3)を有し、各パンチングプレート(2)(3)が互いに積層されると共に、隣接する各パンチングプレート(2)(3)の各開口部(1a)は互いに平面方向に位置ずれされたコア(4)と、
そのコア(4)の外周を被嵌し、内部に流通する流体のマニホールド部(5)を有するケーシング(6)と、を具備し、
それら各部品間が一体にろう付固定されて、ケーシング(6)の外面に熱交換対象物(7)が取付けられ、
流体(8)が第1パンチングプレート(2)、第2パンチングプレート(3)の各開口部(1a)内を厚み方向に蛇行しつつ全体として平面方向に流通する多数の流体の流路(9)を有するプレート積層型熱交換器において、
前記各流路(9)は、コア(4)の一端から他端に向け、互いに平行に形成され、
前記流路(9)と直交する方向の中間位置には、隣接する前記流路(9)に並列して、流体の流通を制限する制限部(10)が存在し、
前記制限部(10)には、前記第1パンチングプレート(2)と第2パンチングプレート(3)に多数の前記開口部(1a)と非開口部(1b)とが交互に二次元に並列して穿設されると共に、流体の流通方向の少なくとも一部が閉塞されて、前記流体(8)の流通を阻止する阻止部(11)が設けられたことを特徴とするプレート積層型熱交換器。
【請求項2】
それぞれ多数の開口部(1a)と非開口部(1b)とが交互に二次元に並列して穿設された平坦な複数の金属製の第1パンチングプレート(2)、第2パンチングプレート(3)を有し、両パンチングプレート(2)(3)が互いに接触して積層されると共に、隣接する両パンチングプレート(2)(3)の各開口部(1)は互いに平面方向に位置ずれされたコア(4)と、
そのコア(4)の外周を被嵌し、内部に流通する流体のマニホールド部(5)を有するケーシング(6)と、を具備し、
それら各部品間が一体にろう付固定されて、ケーシング(6)の外面に熱交換対象物(7)が取付けられ、
流体(8)が両パンチングプレート(2)(3)の各開口部(1)内を厚み方向に蛇行しつつ全体として平面方向に流通する多数の流体の流路(9)を有するプレート積層型熱交換器において、
前記各流路(9)は、コア(4)の一端から他端に向け、互いに平行に形成され、
前記流路(9)と直交する方向のコア(4)の中間位置には、隣接する前記流路(9)に並列して、流体の流通を制限する制限部(10)が存在し、
前記制限部(10)には、隣接する前記流路(9)と同様に、流体の第2流路(12)として並列され、その長さが隣接する流路の流路長より長く延長されて、その流路抵抗が隣接する前記流路(9)より大きく形成されたことを特徴とするプレート積層型熱交換器。
【請求項3】
前記第2流路(12)は、コア(4)の一端から他端に向けて折返されることにより、その流路長が隣接する流路(9)の流路長より長く延長されたことを特徴とする請求項2に記載のプレート積層型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の熱交換対象物と熱交換をするプレート積層型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の積層型ヒートシンクは、多数の孔が並列された第1のパンチングプレートと第2のパンチングプレートとを積層し、外周をケーシングで被嵌したものである。そして、ケーシングの表面に半導体素子等の発熱体を取付け、ケーシング内を流通する冷媒によりそれを冷却するものである。
ケーシングの表面に複数の発熱体を互いに離間して配置するとき、各発熱体を効率的に冷却するには、冷媒をそこに集中して流通させる必要がある。
そこで、発熱体の存在しない位置には冷媒が流通する孔を設けないことにより、発熱体部分にのみ冷媒を供給して、効率的な冷却が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、冷媒流通用の孔を有しない部分の剛性と、孔を有する部分との剛性に差が生じるので、孔を有しない部分と孔を有する部分との境界付近に、当該ヒートシンクの使用、停止に伴う冷熱サイクルによる熱応力が集中し、その付近のろう付部に疲労破壊による亀裂が生じる虞がある。
また、孔を有しない部分のろうが孔を有する部分に流出し、その孔を詰まらせる虞もある。
そこで、本発明はこのような問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、それぞれ多数の開口部1aと非開口部1bとが交互に二次元に並列して穿設された平坦な複数の金属製の第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3を有し、各パンチングプレート2,3が互いに積層されると共に、隣接する各パンチングプレート2,3の各開口部1aは互いに平面方向に位置ずれされたコア4と、
そのコア4の外周を被嵌し、内部に流通する流体のマニホールド部5を有するケーシング6と、を具備し、
それら各部品間が一体にろう付固定されて、ケーシング6の外面に熱交換対象物が取付けられ、
流体が第1パンチングプレート2、第2パンチングプレート3の各開口部1a内を厚み方向に蛇行しつつ全体として平面方向に流通する多数の流体の流路9を有するプレート積層型熱交換器において、
前記各流路9は、コア4の一端から他端に向け、互いに平行に形成され、
前記流路9と直交する方向の中間位置には、隣接する前記流路9に並列して、流体の流通を制限する制限部10が存在し、
前記制限部10には、前記第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3に多数の前記開口部1aと非開口部1bとが交互に二次元に並列して穿設されると共に、流体の流通方向の少なくとも一部が閉塞されて、前記流体の流通を阻止する阻止部11が設けられたことを特徴とするプレート積層型熱交換器である。
請求項2に記載の本発明は、それぞれ多数の開口部1aと非開口部1bとが交互に二次元に並列して穿設された平坦な複数の金属製の第1パンチングプレート2、第2パンチングプレート3を有し、両パンチングプレート2,3が互いに接触して積層されると共に、隣接する両パンチングプレート2,3の各開口部1は互いに平面方向に位置ずれされたコア4と、
そのコア4の外周を被嵌し、内部に流通する流体のマニホールド部5を有するケーシング6と、を具備し、
それら各部品間が一体にろう付固定されて、ケーシング6の外面に熱交換対象物が取付けられ、
流体が両パンチングプレート2,3の各開口部1内を厚み方向に蛇行しつつ全体として平面方向に流通する多数の流体の流路9を有するプレート積層型熱交換器において、
前記各流路9は、コア4の一端から他端に向け、互いに平行に形成され、
前記流路9と直交する方向のコア4の中間位置には、隣接する前記流路9に並列して、流体の流通を制限する制限部10が存在し、
前記制限部10には、隣接する前記流路9と同様に、流体の第2流路12として並列され、その長さが隣接する流路の流路長より長く延長されて、その流路抵抗が隣接する前記流路9より大きく形成されたことを特徴とするプレート積層型熱交換器である。
請求項3に記載の本発明は、前記第2流路12は、コア4の一端から他端に向けて折返されることにより、その流路長が隣接する流路9の流路長より長く延長されたことを特徴とする請求項2に記載のプレート積層型熱交換器である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、流体の各流路9と直交する方向の中間位置に、流路9に並列して、流体の流通を制限する制限部10が存在し、
その制限部10には、第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3に多数の開口部1aと非開口部1bとが交互に二次元に並列して穿設されると共に、流体の流通方向の少なくとも一部が閉塞されて、流体の流通を阻止する阻止部11が設けられたものである。
このように、制限部10に流体の流通を阻止する阻止部11を設けることにより、流体を他の必要な流路9に供給して、熱交換対象物と効果的に熱交換することができる。それと共に、制限部10に開口部1aを設けたことにより、他の部分との剛性差が低減されるので、冷熱サイクルによる亀裂の発生を防止することができる。さらには、制限部10における過剰なろうは、そこに存在する開口部1aに吸収されるので、制限部10から流路9へのろうの流出を防止することができる。
請求項2に記載の発明は、コア4の各流路9と直交する方向の中間位置には、隣接する流路9に並列して、流体の流通を制限する制限部10が存在し、
その制限部10は、隣接する前記流路9と同様に、流体の第2流路12として並列され、その長さが隣接する流路の流路長より長く延長されて、その流路抵抗が隣接する前記流路9より大きく形成されたものである。
このように、制限部10の流路抵抗を隣接する前記流路9より大きくしたことにより、流路9に十分な流体を供給しつつ制限部10にも流体を供給することが可能となるので、熱交換対象物をそれによる熱分布に応じて効果的に熱交換することができる。それと共に、制限部10を、隣接する前記流路9と同様に、流体の第2流路12として並列させたことにより、他の部分との剛性差が低減されるので、冷熱サイクルによる亀裂の発生を防止することができる。さらには、制限部10における過剰なろうは、そこに存在する開口部1aに吸収されるので、制限部10から流路9へのろうの流出を防止することができる。
請求項3に記載の発明は、上記構成において、その第2流路12が折返されて、隣接する流路9の流路長より長く延長されたものである。
このようにすることにより、流路長が長く、流通抵抗の大きな、第2流路を容易に形成し、各流路への流体の配分を調整できる。その調整により、各位置の発熱・吸熱量の大きさに応じた適切な熱交換を実現できる。即ち、比較的発熱・吸熱量の小さな部分に、それに応じた比較的少ない熱交換を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明のプレート積層型熱交換器の要部斜視図(A)、同コア4の平面図(B)。
図2は同熱交換器の分解斜視図。
図3は本発明の第2実施例のプレート積層型熱交換器の分解斜視図。
図4は本発明の第3実施例の平面図(A)、
図4(A)におけるB部拡大図(B)。
図5は同第3実施例の作用を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
【実施例1】
【0009】
図1、
図2は本発明の第1実施例のプレート積層型熱交換器であり、
図1(A)はそのコア4の要部斜視図、(B)はその全体的平面図(B)である。また、
図2は同実施例の分解斜視図である。
この熱交換器は、互いに開口部1aの位置の異なる第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3とを積層してコア4を構成し、コア4の外周をケーシング6で被嵌する。そして,ケーシング6の内部にマニホールド部5を形成し、各部品間を一体的にろう付固定して熱交換器を構成し、そのケーシング6の外面に発熱体7を取り付けるものである。
即ち、第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3は、夫々多数の開口部1aと非開口部1bとを交互に二次元に並列した金属板からなるものである。そして、第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3とは、互いに開口部1aが平面方向に位置ずれされたものである。そして、冷媒8が第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3との各開口部1a内を厚み方向に蛇行しつつ、全体として平面方向に流通する流路9を有する。その流路9は、コア4の一端から他端に向け互いに平行に形成される。そして、流路9と直交する方向の中間位置には、隣接する流路9に並列して冷媒8の流通を制限する制限部10が存在する。
この制限部10は、隣接する流路9と同様に、第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3が、多数の開口部1aと非開口部1bとを交互に穿設したものである。それと共に、この制限部10は冷媒8の流通方向の少なくとも一部が閉塞されて冷媒8の流通を阻止する阻止部11が設けられたものである。
この例では、
図1及び
図2に示す如く、各プレートの幅方向両端位置において阻止部11が形成され、それによって冷媒8の流通が阻止されている。
作用
図2において、コア4が収納されるケーシング6は,皿状に形成されたケーシング本体6aと、その開口を閉塞する端蓋6bとならなる。ケーシング本体6aには、一対のパイプ17が、幅方向に互いに離間して配置されている。そして、コア4をケーシング本体6aに収納したとき、その幅方向両端にマニホールド部5が形成される。そして、一方のパイプ17から流入した冷媒8は、コア4の幅方向に流通する。
このとき
図1(A)において、冷媒8は上下に交互に積層された第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3との間を上下方向に蛇行しながら、平面においては全体として直線方向に流通する。
この例では、
図2において端蓋6bの外面に、間隔をおいて配列された複数の発熱体7の中間部位置に、
図1における制限部10の阻止部11が配置される。この制限部10は、前述の如く、並列する他の流路9と同様に開口部1aと非開口部1bとが交互に形成されているものの、その両端部は阻止部11により閉塞されている。そのため、この制限部10には冷媒8が流通しない。その制限部10を除いた各流路9にのみ冷媒8が流通する。そして、制限部10に冷媒8が流通しない分だけ、他の流路9に冷媒8が分配される。それにより、発熱体7の存在する位置に冷媒8が効率的に分配され熱交換器を促進する。
それと共に、制限部10が存在する位置にも、多数の開口部1a,非開口部1bが形成されているため、制限部10の位置と他の位置とでは、その構造が略同一となり剛性も、略同一となる。そのため、各第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3とをろう付して熱交換器を形成するとき、ろう材の部分的な過多やろう詰まりを生じることがない。それと共に、熱交換器の稼働中の冷熱サイクルに伴う亀裂の発生を制限部10部分で生じることがない。
【実施例2】
【0010】
次に、
図3は本発明の第2実施例であり、この実施例が前記実施例と異なる点は、ケーシング6及びコア4の形状である。
コア4の上下両面には、天板プレート15と、底板プレート14とを有する。そして、各プレート間が一体にろう付固定されるものである。この例では、コア4を構成する各パンチングプレートに、マニホールド5が一体に形成されている。
そのコア4に形成された制限部10及び阻止部11は、前記実施例と同様である。
【実施例3】
【0011】
次に、
図4は本発明の第3実施例であり、(A)はそのコア4の平面図、(B)は要部平面図で(A)におけるB部拡大図であり、
図5はその作用を示す説明図である。
この例が
図1の例と異なる点は、両者の制限部10の構造の違いである。
図1では制限部10として、開口部1aが閉塞された阻止部11が流通方向の両端に存在した。これに対し、
図4の例では制限部10が第2流路12を形成して、そこに冷媒8が平面方向に折り返されて流通し、その長さが他の流路9より、長くなり流通抵抗が増すことになる。即ち、隣接する冷媒8の流路9に比べて流路が長くなる。
この例では、
図2における隣接する発熱体7の中間位置に、
図4に示す如く、第2流路12が配置されている。この第2流路12は、コア4の両端における折返し孔16で流路が折り返されてその長さが長くなる。
一例として、この例では他の流路9のそれに比べて3倍の長さとなる。その分だけ、冷媒8の流路抵抗が大きくなる。しかしながら、第2流路12においても、冷媒8が流通するので、
図2の隣接する発熱体7の縁部においても熱交換が促進される。それと共に、第1パンチングプレート2,第2パンチングプレート3には、夫々開口部1a,非開口部1bが形成され、制限部10においても略他の部分と同様の構成を有し、熱サイクルに対応できる。それと共に、各プレートのろう付時に目詰まりを生じることがない。
その他の実施例
上述の第3実施例では、制限部10において、第2流路12をコア4の両端における折返し孔16で折り返すことにより、その長さを流路9より長くしているが、折り返す代わりに、制限部10において、開口部1aおよび非開口部1bの流体の流通方向の長さを流路9の場合よりも短くしてそれらをより多数交互に穿設し、第2流路12を第1パンチングプレート2と第2パンチングプレート3との積層方向により多くの回数蛇行させるようにすることによって、その長さを流路9より長くしてもよい。
上記の各実施例におけるプレート積層型熱交換器は、発熱体(熱交換対象物)を冷媒(流体)により冷却するためのものであるが、その用途に限らず、流体である冷媒を温熱流体に替えて、本発明のプレート式熱交換器を、熱交換対象物を加熱する用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0012】
1a 開口部
1b 非開口部
2 第1パンチングプレート
3 第2パンチングプレート
4 コア
5 マニホールド部
6 ケーシング
6a ケーシング本体
6b 端蓋
7 発熱体
8 冷媒
9 流路
10 制限部
11 阻止部
12 第2流路
13 爪部
14 底板プレート
15 天板プレート
16 折返し孔
17 パイプ