(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】カード管理システム、照合装置、端末装置、およびカード管理方法
(51)【国際特許分類】
G06K 7/08 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G06K7/08 040
(21)【出願番号】P 2022029496
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2022-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 博文
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】打出 義尚
【審判官】吉田 美彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-297692(JP,A)
【文献】特開2013-73293(JP,A)
【文献】特開2017-111634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K7/00-7/14
G06K19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに記録された記録情報の取得エラーが生じた場合に、前記カードに一意に付されたカード番号と、前記記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データとを
紐づけて管理する管理手段と、
前記固有データが前記管理手段に記録されたあと対象カードに記録された前記記録情報を電磁的方法により取得し、前記記録情報の取得エラーが生じた場合に、取得エラーに係る第1データを含む固有データを取得する取得手段と、
前記固有データが前記管理手段に記録されたあと前記取得手段で前記記録情報の取得エラーが生じた場合に、前記管理手段によって管理される前記固有データと、前記取得手段で取得された前記固有データとを照合し、前記対象カードのカード番号の特定を行う照合手段と、
を備えるカード管理システム。
【請求項2】
前記第1データは、前記カードから電磁的方法により得られる信号の波形を示す波形データと、
前記カードから電磁的方法により得られる信号を復号して得られる復号データと、
を含む、請求項1記載のカード管理システム。
【請求項3】
前記復号データは、前記カードから電磁的方法により得られる信号のうち復号することができなかった区間を無信号区間として含む、請求項2に記載のカード管理システム。
【請求項4】
前記管理手段によって管理される前記固有データは、前記カードの外観を示す第2データを更に含み、
前記取得手段によって取得される前記固有データは、前記対象カードの外観を示す第2データを更に含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカード管理システム。
【請求項5】
前記第2データは、前記カードから光学的方法によって得られる画像データである、請求項4に記載のカード管理システム。
【請求項6】
前記照合手段は、前記管理手段によって管理される前記固有データと、前記取得手段で取得された前記固有データとを照合する際に、冗長性を持たせた照合を行う、請求項1から5のいずれか一項に記載のカード管理システム。
【請求項7】
カードに記録された記録情報の取得エラーが生じた場合に、前記カードに一意に付されたカード番号と、前記記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データとを
紐づけて管理する管理手段と、
前記固有データが前記管理手段に記録されたあと対象カードに記録された前記記録情報を電磁的方法により取得する取得手段で取得エラーが生じた場合に、前記管理手段によって管理される前記固有データと、前記取得手段で取得された前記対象カードに記録された前記記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データとを照合し、前記対象カードのカード番号の特定を行う照合手段と、
を備える照合装置。
【請求項8】
対象カードに記録された記録情報を電磁的方法により取得し、取得エラーが生じた場合に、前記対象カードに記録された前記記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データを取得する取得手段と、
前記記録情報の取得エラーが生じた場合に、入力されたカード番号と、前記取得手段で取得された前記固有データとを、前記固有データを用いて前記対象カードのカード番号の特定を行う照合装置に送信する送信手段と、
を備える端末装置。
【請求項9】
対象カードに記録された記録情報の電磁的方法による取得エラーが生じた場合に、前記対象カードに一意に付されたカード番号と、前記記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データとを送信する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて送信された前記カード番号と前記固有データとを
紐づけて管理する第2ステップと、
前記第2ステップのあと、前記対象カードに記録された前記記録情報の電磁的方法による取得エラーが生じた場合に、前記対象カードに係る前記固有データを送信する第3ステップと、
前記第2ステップのあと、前記第2ステップにおいて管理される前記固有データと、前記第3ステップにおいて送信された前記固有データとを照合し、前記対象カードの前記カード番号の特定を行う第4ステップと、
を備えるカード管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード管理システム、照合装置、端末装置、およびカード管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小売店等において、磁気カードを利用した各種取引(支払い、ポイントサービス等)が提供されている。このような取引においては、顧客または小売店の従業員が磁気カードリーダ等を用いて磁気カードを操作し、磁気カードに付されたカード番号を読み取る場合がある。
【0003】
一方、磁気カードの磁気低下等の原因により、上記読み取り操作が失敗する場合がある。特許文献1には、読み取り操作の失敗に関連する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載されたカードリーダは、磁気カードの読み取りに失敗した際に、読み取り失敗を表すデータを上位装置に送信する。当該送信されたデータの統計を取ることにより、読み取り失敗の原因が磁気カードおよびカードリーダのいずれにあるのかを推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、磁気カードの読み取りに失敗した場合、顧客または小売店の従業員は、カードリーダによる読み取り操作を複数回繰り返す。しかしながら、読み取りの失敗が磁気の低下、傷、割れその他の磁気カードの物理的損傷にある場合、読み取り操作を複数回繰り返したとしても読み取りは成功しにくい。したがって、当該操作を繰り返したのちにカードリーダによる読み取りを諦め、従業員がPOS(Point of Sales)等の上位端末からカード番号を手動で入力する、または、磁気カードを利用した取引の提供を中止する等の処置が行われる場合がある。この場合、従業員の手間が増え、繁忙時間帯においてはレジ待ち列が長くなる等、店舗サービスを低下させる可能性があった。
【0007】
また、上記特許文献1に記載のカードリーダを用い、読み取り失敗の原因が磁気カードにあると推定できたとしても、磁気カードの読み取りは依然として困難なままである。したがって、顧客が磁気カードを新しいカードに交換するまでの間は、取引の度に上記読み取りの失敗および上記処置が繰り返され、従業員の手間を発生させる可能性があった。
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するカード管理システム、照合装置、端末装置、およびカード管理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によるカード管理システムは、カードに一意に付されたカード番号と、前記カードに記録された記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データとを対応付けて管理する管理手段と、対象カードに記録された前記記録情報を電磁的方法により取得し、前記記録情報の取得エラーが生じた場合に、取得エラーに係る第1データを含む固有データを取得する取得手段と、前記取得手段で前記記録情報の取得エラーが生じた場合に、前記管理手段によって管理される前記固有データと、前記取得手段で取得された前記固有データとを照合し、前記対象カードのカード番号の特定を行う照合手段と、を備える。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による照合装置は、カードに一意に付されたカード番号と、前記カードに記録された記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データとを対応付けて管理する管理手段と、対象カードに記録された前記記録情報を電磁的方法により取得する取得手段で取得エラーが生じた場合に、前記管理手段によって管理される前記固有データと、前記取得手段で取得された前記対象カードに記録された前記記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データとを照合し、前記対象カードのカード番号の特定を行う照合手段と、を備える。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による端末装置は、対象カードに記録された記録情報を電磁的方法により取得し、取得エラーが生じた場合に、前記対象カードに記録された前記記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データを取得する取得手段と、前記取得手段で取得された前記固有データを、前記固有データを用いて前記対象カードのカード番号の特定を行う照合装置に送信する送信手段と、を備える。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によるカード管理方法は、対象カードに記録された記録情報の電磁的方法による取得エラーが生じた場合に、前記対象カードに一意に付されたカード番号と、前記記録情報の取得エラーに係る第1データを含む固有データとを送信する第1ステップと、前記第1ステップにおいて送信された前記カード番号と前記固有データとを対応付けて管理する第2ステップと、前記対象カードに記録された前記記録情報の電磁的方法による取得エラーが生じた場合に、前記対象カードに係る前記固有データを送信する第3ステップと、前記第2ステップにおいて管理される前記固有データと、前記第3ステップにおいて送信された前記固有データとを照合し、前記対象カードの前記カード番号の特定を行う第4ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記態様によれば、読み取りが困難となったカードを用いた取引に要する手間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態によるカード管理システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2A】読み取り可能なカードに係る波形データおよび復号データの一例を示す図である。
【
図2B】読み取り困難なカードに係る波形データおよび復号データの一例を示す図である。
【
図3A】本発明の一実施形態による管理手段が管理する第1データの一例を示す図である。
【
図3B】本発明の一実施形態による管理手段が管理する第2データの一例を示す図である。
【
図4A】対象カードの固有データが照合装置に記録される前において、本発明の一実施形態によるカード管理システムが行う処理を示すフローチャートである。
【
図4B】対象カードの固有データが照合装置に記録された後において、本発明の一実施形態によるカード管理システムが行う処理を示すフローチャートである。
【
図5A】本発明の一実施形態による復号データが変動する例を示す図である。
【
図5B】本発明の一実施形態による波形データが変動する例を示す図である。
【
図5C】本発明の一実施形態による画像データが変動する例を示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態による復号データの変形例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるカード管理システムの最小構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態によるカード管理システム1を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるカード管理システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態によるカード管理システム1は、端末装置2および照合装置3を備える。端末装置2と照合装置3とは、有線または無線のネットワークNWを介して接続されている。
【0016】
本実施形態によるカード管理システム1は、例えば、小売店等におけるカード(磁気カード)Cを利用した各種取引に用いられる。カードCには、記録情報が記録されている。記録情報とは、カードCに一意に付されたカード番号に係る情報であり、例えば磁気情報である。顧客または従業員がカードCを端末装置2で操作することにより、カードCの記録情報(磁気情報)が読み取られる。読み取られた記録情報に対し、復号処理や誤り訂正処理等の処理が行われることにより、カードCのカード番号が特定される。カードCの記録情報が正常に取得されなかった場合には、照合装置3が、記録情報の取得エラーに係る情報を用いてカードCのカード番号を特定する。
【0017】
<端末装置2>
まず、端末装置2について説明する。
端末装置2は、例えば、小売店等に設置される装置である。本実施形態による端末装置2は、磁気カードリーダ210およびPOS220を備える。本実施形態による磁気カードリーダ210(取得手段)は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)211と、記録部212と、イメージスキャナ213と、磁気ヘッド214と、を備える。
【0018】
POS220は、カードCのカード番号に基づく各種取引(支払い等)を管理する。POS220は、カードCを用いた取引が始まった際に、磁気カードリーダ210に対し取引が始まった旨を通知する。本実施形態によるPOS220は、カードCの固有データD(詳細は後述)を照合装置3に送信する送信手段としても機能する。POS220は、ディスプレイを備えていてもよい。
【0019】
イメージスキャナ213は、カードCの外観を示す第2データD20を取得する。本実施形態による第2データD20は、カードCから光学的方法によって得られる画像データである。イメージスキャナ213は、カードCの画像データ(第2データD20)を、CPU211に出力する。
【0020】
磁気ヘッド214は、カードCの磁気ストライプC1に記録された磁気情報を、電磁的方法により波形データD11(波形D11a)として取得する。より具体的には、磁気ヘッド214と磁気ストライプC1とが摺動することにより、磁気ストライプC1の磁気に比例して振幅が変化するアナログ信号が得られる。磁気ヘッド214は、取得した波形データD11をCPU211に出力する。
【0021】
CPU211は、磁気ヘッド214から出力された波形データD11に対しAD(Analog Digital)変換を行う。CPU211は、AD変換された波形データD11を、記録部212に出力する。CPU211は、磁気ヘッド214から出力された波形データD11を復号し、復号データD12を生成する。復号データD12は、数字列である。CPU211は、生成した復号データD12を、記録部212に出力する。なお、カード管理システム1は、CPU211とは異なる手段を備え、当該異なる手段が波形データD11を復号し復号データD12を生成してもよい。CPU211は、生成した復号データD12が規定のデータフォーマットに即しているか否か判定する。既定のデータフォーマットは、例えば、JIS X6302-2によって定義されるデータフォーマットである。生成した復号データD12が既定のデータフォーマットに即している場合、CPU211は、復号データD12からカードCのカード番号を抽出する。CPU211は、抽出したカード番号を、POS220に出力する。CPU211は、イメージスキャナ213から出力された画像データを、記録部212に出力する。
【0022】
記録部212は、CPU211から出力された波形データD11、復号データD12、および画像データ(第2データD20)を、カードCの読み取りごとに記録する。
【0023】
<カードCを読み取ることで得られる情報>
カードC(磁気ストライプC1)が磁気の低下、傷、割れその他の物理的損傷を負っている場合、カードCを磁気ヘッド214で正常に読み取れない場合がある。
図2Aは、物理的損傷を負っていないカードCについて、磁気ヘッド214で読み取って得られた波形データD11(波形D11a)と、波形データD11をCPU211が復号して得られた復号データD12と、を示す図である。
図2Bは、物理的損傷を負っているカードCについて、磁気ヘッド214で読み取って得られた波形データD11と、波形データD11をCPU211が復号して得られた復号データD12と、を示す図である。
【0024】
図2Aに示すように、物理的損傷を負っていないカードCの場合には、磁気ヘッド214が取得した波形データD11の振幅が略一定であり、当該波形データD11を復号した復号データD12が正常データSと一致する。なお、「正常データS」とは、正常なカードCを正常に読み取りおよび復号した際に得られる復号データD12を意味している。また、図示の例においては、理解を容易とするための便宜上、正常データSとして1から9および0が巡回する数字列を示している。実際の正常データSは、カードCによって異なる。
【0025】
図2Bに示すように、物理的損傷を負っているカードCの場合には、磁気ヘッド214が取得した波形データD11の振幅が部分的に低下する。ここで、CPU211による復号が可能な信号レベル(振幅)には下限Lが存在する。言い換えれば、波形データD11のうち振幅が下限Lを下回る部分は、CPU211による復号がなされない。図示の例においては、波形データD11のうち「5678」に対応する部分の振幅が下限Lを下回り、当該部分が復号データD12から欠落している。
【0026】
<照合装置3および固有データD>
次に、照合装置3および固有データDについて説明する。
照合装置3は、例えばクラウド等である。
図1に示すように、照合装置3は、管理手段310および照合手段320を備える。
【0027】
管理手段310は、例えばデータベース等である。管理手段310は、カードCのカード番号と、カードCに記録された磁気情報の取得エラーに係る固有データDと、を対応付けて管理する。本実施形態による固有データDは、第1データD10および第2データD20を含む。
【0028】
図3Aに示すように、本実施形態による第1データD10は、波形データD11および復号データD12を含む。なお、波形データD11は、例えば、AD変換された波形D11aであってもよい。あるいは、波形データD11は、波形D11aの包絡線D11bであってもよい。波形データD11として包絡線D11bを用いる場合、照合装置3が包絡線D11bの生成を行ってもよい。波形データD11として、波形D11aおよび包絡線D11bの双方が用いられてもよい。
【0029】
第2データD20は、カードCの外観を示すデータである。
図3Bに示すように、本実施形態による第2データD20は、イメージスキャナ213によって取得される画像データである。本実施形態による第2データD20は、カードCのデザインD21、カードCに付された顧客のサインD22、カードCの傷D23が含まれる。なお、傷D23は、カードCの表面に形成された傷であってもよいし、カードCの割れであってもよい。
【0030】
照合手段320は、磁気カードリーダ210で記録情報の取得エラーが生じた場合に、照合装置3によって管理される上記固有データ(管理固有データ)Dと、磁気カードリーダ210で取得された固有データ(取得固有データ)Dとを照合し、カードCのカード番号の特定を行う。
【0031】
<カード管理システム1が行う処理>
次に、カード管理システム1が行う処理手順の一例を説明する。以降、カード管理システム1の処理の対象となるカードCを、特に、対象カードCと称する場合がある。
【0032】
まず、対象カードCの固有データDが照合装置3に記録される前における処理手順の一例を説明する。
図4Aは、対象カードCの固有データDが照合装置3に記録される前において、本実施形態によるカード管理システム1が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0033】
(ステップS101)POS220は、磁気カードリーダ210に対し、これから新しい取引が開始される旨を通知する。例えば、従業員がレジ操作を開始すると、POS220は磁気カードリーダ210に対して取引開始通知を行う。当該取引開始通知により、磁気カードリーダ210は、取引の区分を認識する。
【0034】
(ステップS102)磁気カードリーダ210は、対象カードCに記録された磁気情報(符号データ)を取得する。例えば、従業員または顧客が対象カードCの磁気ストライプC1を磁気ヘッド214と摺動させると、磁気ヘッド214は、対象カードCの磁気情報に応じた波形データD11(波形D11a)を取得する。磁気ヘッド214は、取得した波形データD11を、CPU211に出力する。CPU211は、磁気ヘッド214が出力した波形データD11に対しAD変換を行い、AD変換された波形データD11を記録部212に出力する。
【0035】
(ステップS103)イメージスキャナ213は、対象カードCの画像データを取得する。イメージスキャナ213は、取得した画像データをCPU211に出力する。CPU211は、イメージスキャナ213から取得した画像データを記録部212に出力する。なお、ステップS102の処理およびステップS103の処理は同時に行われてもよい。あるいは、ステップS102の処理とステップS103の処理とは異なるタイミングで行われてもよい。
【0036】
(ステップS104)CPU211は、磁気ヘッド214が出力した波形データD11を復号し、復号データD12を生成する。CPU211は、生成した復号データD12を記録部212に出力する。
【0037】
(ステップS105)記録部212は、CPU211が出力した波形データD11および復号データD12(第1データD10)と、画像データ(第2データD20)とを、読み取りごとに記録する。言い換えれば、記録部212は、第1データD10および第2データD20を含む固有データDを、読み取りごとに記録する。
【0038】
(ステップS106)CPU211は、生成した復号データD12が規定のデータフォーマットに即しているか否か判定する。CPU211が、既定のデータフォーマットに即していると判定した場合(ステップS106;YES)には、ステップS107の処理が行われ、既定のデータフォーマットに即していないと判定した場合(ステップS106;NO)には、ステップS109の処理が行われる。
【0039】
(ステップS107)CPU211は、復号データD12から対象カードCのカード番号を抽出する。CPU211は、抽出したカード番号をPOS220に出力する。POS220は、CPU211が出力したカード番号に基づき、各種取引処理(支払い処理、ポイントサービスの提供等)を行う。
【0040】
(ステップS108)記録部212は、記録していた固有データD(第1データD10および第2データD20)を破棄する。
【0041】
(ステップS109)CPU211は、POS220に対し、対象カードCの読み取りが不可だった旨(取得エラー)を通知する。
【0042】
(ステップS110)POS220は、顧客または従業員による読み取り終了指示があるか否かを判定する。読み取り終了指示がない場合(ステップS110;NO)には、ステップS102~ステップS106の処理が繰り返される。ステップS102~ステップS106の処理が繰り返されることで、記録部212には、読み取り回数分の固有データDが記録される。読み取り終了指示があった場合(ステップS110;YES)には、ステップS111の処理が行われる。
【0043】
(ステップS111)POS220は、顧客または従業員によるカード番号の手入力を待機する(ステップS111;NO)。顧客又は従業員によるカード番号の手入力があった場合(ステップS111;YES)には、ステップS112の処理が行われる。なお、カード番号の手入力を行わない場合には、取引を中止してもよい。
【0044】
(ステップS112)POS220は、磁気カードリーダ210に対し、固有データDの送信を指示する。磁気カードリーダ210は、記録部212に記録していた読み取り回数分の固有データD(第1データD10および第2データD20)を、POS220に出力する。POS220は、手入力されたカード番号と、CPU211が出力した読み取り回数分の固有データDとを、照合装置3に送信する。
【0045】
(ステップS113)照合装置3は、POS220が送信したカード番号と読み取り回数分の固有データDとを紐づけ、管理手段310に格納する。なお、管理手段310には、波形データD11として波形D11aが格納されてもよいし、包絡線D11bが格納されてもよい。あるいは、管理手段310には、波形D11aおよび包絡線D11bの双方を含む波形データD11が格納されてもよい。管理手段310に包絡線D11bを含む波形データD11が格納される場合、照合装置3が、波形D11aから包絡線D11bを生成してもよい。
【0046】
次に、対象カードCの固有データDが照合装置3に記録された後における処理手順の一例について説明する。
図4Bは、対象カードCの固有データDが照合装置3に記録された後において、本実施形態によるカード管理システム1が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0047】
(ステップS201)POS220は、ステップS101と同様に、磁気カードリーダ210に対し、これから新しい取引が開始される旨を通知する。
【0048】
(ステップS202)磁気カードリーダ210は、ステップS102と同様に、対象カードCに記録された磁気情報(符号データ)を取得する。磁気ヘッド214は、対象カードCに応じた波形データD11(波形D11a)を取得する。磁気ヘッド214は、取得した波形データD11を、CPU211に出力する。CPU211は、磁気ヘッド214が出力した波形データD11に対しAD変換を行い、AD変換された波形データD11を記録部212に出力する。
【0049】
(ステップS203)イメージスキャナ213は、ステップS103と同様に、対象カードCの画像データを取得する。イメージスキャナ213は、取得した画像データをCPU211に出力する。CPU211は、イメージスキャナ213から取得した画像データを記録部212に出力する。なお、ステップS202の処理およびステップS203の処理は同時に行われてもよい。あるいは、ステップS202の処理とステップS203の処理とは異なるタイミングで行われてもよい。
【0050】
(ステップS204)CPU211は、ステップS104と同様に、磁気ヘッド214が出力した波形データD11を復号し、復号データD12を生成する。CPU211は、生成した復号データD12を記録部212に出力する。
【0051】
(ステップS205)記録部212は、CPU211が出力した波形データD11および復号データD12(第1データD10)と、画像データ(第2データD20)とを、記録する。
【0052】
(ステップS206)CPU211は、ステップS106と同様に、生成した復号データD12が規定のデータフォーマットに即しているか否か判定する。CPU211が、既定のデータフォーマットに即していると判定した場合(ステップS206;YES)には、ステップS207の処理が行われ、既定のデータフォーマットに即していないと判定した場合(ステップS206;NO)には、ステップS209の処理が行われる。
【0053】
(ステップS207)CPU211は、ステップS107と同様に、復号データD12から対象カードCのカード番号を抽出する。CPU211は、抽出したカード番号をPOS220に出力する。POS220は、CPU211が出力したカード番号に基づき、各種取引処理(支払い処理、ポイントサービスの提供等)を行う。
【0054】
(ステップS208)記録部212は、ステップS108と同様に、記録していた固有データD(第1データD10および第2データD20)を破棄する。
【0055】
(ステップS209)磁気カードリーダ210は、記録部212に記録していた固有データD(第1データD10および第2データD20)を、POS220に出力する。POS220は、CPU211が出力した固有データDを、照合装置3に送信する。
【0056】
(ステップS210)照合手段320は、POS220から送信されてきた固有データD(取得固有データD)と、管理手段310に格納されている固有データD(管理固有データ)とを照合する。例えば、照合手段320は、取得固有データDと第1データD10(波形データD11および復号データD12)および第2データD20が合致する管理固有データDを照合する。または、照合手段320は、取得固有データDと第1データD10および第2データD20が近い(類似する)管理固有データDを照合する。
【0057】
(ステップS211)照合手段320は、照合手段320によって照合された管理固有データDに紐づけられたカード番号を特定する。照合装置3は、特定されたカード番号をPOS220に送信する。
【0058】
(ステップS212)POS220は、照合装置3が送信したカード番号を顧客に提示し、照合されたカード番号に間違いがないか承認を求める。POS220は、例えば、POS220が備えるディスプレイに、カード番号の承認画面を表示する。
【0059】
(ステップS213)POS220は、提示したカード番号が顧客に承認されたか否かを判定する。提示したカード番号が承認された場合(ステップS213;YES)には、POS220は、提示したカード番号に基づき、各種取引処理(支払い処理、ポイントサービスの提供等)を行う。提示したカード番号が承認されなかった(否認された)場合(ステップS214;NO)には、ステップS214の処理が行われる。
【0060】
(ステップS214)POS220は、否認されたカード番号を照合装置3に送信する。照合装置3は、否認されたカード番号を管理手段310に登録し、同一の取引内で再度同じカード番号を提示しないようにする。ステップS214の処理が行われたのち、ステップS210~ステップS213の処理が繰り返される。なお、ステップS210の処理が再度行われる際には、ステップS213で否認されたカード番号の一致率を下げたうえで照合が行われてもよい。また、一定回数の再照合が行われてもなおカード番号が否認される場合には、ステップS111およびステップS112と同様の処理により、管理手段310へのカード番号の再登録を行ってもよい。ステップS214の処理が行われたのち、ステップS202の処理が行われてもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によるカード管理システム1は、カードCに一意に付されたカード番号と、カードCに記録された記録情報(磁気情報)の取得エラーに係る第1データD10を含む固有データDとを対応付けて管理する管理手段310と、対象カードCに記録された記録情報を電磁的方法により取得し、記録情報の取得エラーが生じた場合に、取得エラーに係る第1データD10を含む固有データDを取得する磁気カードリーダ210と、磁気カードリーダ210で記録情報の取得エラーが生じた場合に、管理手段310によって管理される固有データDと、磁気カードリーダ210で取得された固有データDとを照合し、対象カードCのカード番号の特定を行う照合手段320と、を備える。
【0062】
この構成によれば、磁気の低下、傷、割れその他の物理的損傷により磁気カードリーダ210による読み取りが困難となったカードCを用いた取引に要する手間を削減することができる。より具体的には、取引の度に読み取りの失敗を繰り返したり、取引の度にカード番号の手入力を行ったりすることが防止される。
【0063】
<冗長性を持たせた照合>
なお、上述したステップS210において、照合手段320は、冗長性を持たせた照合を行ってもよい。以下、冗長性を持たせた照合の重要性について説明する。
【0064】
先述したように、波形データD11のうち、振幅が下限Lを下回る部分は、CPU211による復号がなされない(
図2B参照)。しかしながら、例えば磁気ヘッド214の出力がバラつくことにより、下限L付近では、同一のカードCであってもその復号結果(復号データD12)が変動する可能性がある。また、CPU211による復号感度や変換精度のバラつき、または磁気ヘッド214に対するカードCの操作速度のバラつき等の要因によっても、カードCの復号結果は変動し得る。より具体的には、
図5Aに示すように、復号データD12においては、数字(桁)の増加(符号D12a)、数字の消失(符号D12b)、または数字の変化(符号D12c)等の変動が生じる可能性がある。
【0065】
したがって、照合手段320が復号データD12の照合を行う際には、復号データD12が完全一致していることを照合の要件としないことが望ましい。例えば、復号データD12における数字の並び(配列順)が同一であることや、復号データD12を構成する数字列の一致率が一定値以上であること、またはこれらの双方を照合の要件とすることが望ましい。
【0066】
また、磁気ヘッド214に対するカードCの操作速度によって、波形データD11は変動し得る。より具体的には、
図5Bに示すように、磁気ヘッド214に対するカードCの操作速度を速くすると(符号D11f)、波形データD11の振幅は増大し、波形データD11の長さ(期間)は短くなる。一方で、磁気ヘッド214に対するカードCの操作速度を遅くすると(符号D11s)、波形データD11の振幅は減少し、波形データD11の長さ(期間)は長くなる。
【0067】
したがって、照合手段320が波形データD11の照合を行う際には、波形データD11が完全一致していることを照合の要件としないことが望ましい。例えば、照合手段320は、波形データD11を伸縮したうえで波形データD11の照合を行ったり、波形データD11の一致率が一定値以上であることを照合の要件としたり、あるいはこれらの双方を適用した照合を行ったりすることが望ましい。
【0068】
また、イメージスキャナ213に対するカードCの操作速度によって、第2データD20は変動し得る。より具体的には、
図5Cに示すように、イメージスキャナ213に対するカードCの操作速度を速くすると(符号D20f)、第2データD20はカードCの長辺方向に収縮する。一方で、イメージスキャナ213に対するカードCの操作速度を遅くすると(符号D20s)、第2データD20はカードCの長辺方向に伸長する。
【0069】
したがって、照合手段320が第2データD20の照合を行う際には、第2データD20が完全一致していることを照合の要件としないことが望ましい。例えば、照合手段320は、第2データD20を伸縮したうえで第2データD20の照合を行ったり、第2データD20の一致率が一定値以上であることを照合の要件としたり、あるいはこれらの双方を適用した照合を行ったりすることが望ましい。
【0070】
<変形例>
上記実施形態において、管理手段310は第1データD10および第2データD20の双方を管理していたが、管理手段310は第1データD10のみを管理していてもよい。この場合、照合手段320は、第1データD10のみを照合して対象カードCのカード番号を特定してもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、読み取りの度に生成される固有データDは記録部212に記録されていたが、読み取りの度に生成される固有データDはPOS220に記録されてもよい。この場合、POS220は、磁気カードリーダ210に対して取引開始通知をしなくてもよい。磁気カードリーダ210は、読み取りの度に固有データDをPOS220に出力してもよい。POS220は、顧客または従業員による読み取り終了指示があった場合、手入力されたカード番号と、POS220に記録されていた読み取り回数分の固有データDとを、照合装置3に送信してもよい。
【0072】
また、上記実施形態による復号データD12においては、カードCから得られた波形データD11のうち復号することができなかった区間は削除されていたが、復号データD12の構成はこれに限られない。
図6に示すように、復号データD12は、波形データD11のうち復号することができなかった区間を無信号区間NSとして含んで(保持して)いてもよい。言い換えれば、復号データD12は、波形データD11のうち復号することができなかった区間を時間測定した情報を含んでいてもよい。この構成によれば、より実態に近い復号データD12を生成することができ、照合手段320による照合の精度を高めることができる。
【0073】
<最小構成例>
ここで、カード管理システムの最小構成例を説明する。
図7は、本発明の一実施形態によるカード管理システムの最小構成例を示す図である。
図7に示すように、カード管理システム1Aは、管理手段310Aと、照合手段320Aと、取得手段210Aと、を備える。管理手段310Aは、カードCに一意に付されたカード番号と、カードCに記録された記録情報の取得エラーに係る第1データD10を含む固有データDとを対応付けて管理する。取得手段210Aは、対象カードCに記録された記録情報を電磁的方法により取得し、記録情報の取得エラーが生じた場合に、取得エラーに係る第1データD10を含む固有データDを取得する。照合手段320Aは、取得手段210Aで記録情報の取得エラーが生じた場合に、管理手段310Aによって管理される固有データDと、取得手段210Aで取得された固有データDとを照合し、対象カードCのカード番号の特定を行う。
【符号の説明】
【0074】
1、1A…カード管理システム 2…端末装置 3…照合装置 210…磁気カードリーダ(取得手段) 210A…取得手段 220…POS(送信手段) 310…管理手段 320…照合手段