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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】印刷に好適な樹脂組成物および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/62 20200101AFI20240220BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240220BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20240220BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240220BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240220BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20240220BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240220BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240220BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240220BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K6/62
B29C64/112
B29C64/124
B29C64/153
B29C64/314
B29C64/35
B33Y10/00
B33Y40/20
B33Y70/00
C08F2/44 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021525371
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019069338
(87)【国際公開番号】W WO2020016343
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】1811896.8
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521026725
【氏名又は名称】モンタンユニヴァーシタット レオーベン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリーシャー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エドラー、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン、デララ ガブリエラ
(72)【発明者】
【氏名】オーステライヒャー、アンドレアス ベルンハルド
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-178205(JP,A)
【文献】国際公開第2017/223084(WO,A1)
【文献】特開2015-086162(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154428(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/061687(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/194618(WO,A1)
【文献】特開昭50-027836(JP,A)
【文献】特開平10-060114(JP,A)
【文献】国際公開第2018/049302(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/62
C08F 2/44
B29C 64/112
B29C 64/124
B29C 64/153
B29C 64/314
B29C 64/35
B33Y 10/00
B33Y 40/20
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、
少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、
ラジカル捕捉剤及びリン含有化合物を含み前記リン含有化合物がホスホン酸及び/又はリン酸及び/又はそのエステルを含む、少なくとも1つの安定化剤と、少なくとも1つの光開始剤と、を備える、樹脂組成物を提供する段階と、
前記樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射し、前記樹脂組成物の前記少なくとも一部の重合を引き起こしてポリマーを得て、前記ポリマーが歯科用製品の形態である、段階と、を含む、印刷方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの化合物C1が、
少なくとも1つの末端アルキン官能基と、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキル基、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキル基、飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキル基、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキル基、直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリル基、オリゴマーまたはポリマーから選択される少なくとも1つと、および/または、
プロパルギル、ブチニル、およびペンチニルからなる群から選択される少なくとも1つの末端アルキン官能基を有するか、および/または、
少なくとも1つの末端アルキン官能基と、カーボネート、カルバメート、エーテル、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基とを有するか、および/または、
プロパルギルカーボネート、プロパルギルカルバメート、プロパルギルエーテル、プロパルギルエステル、ブチニルカーボネート、ブチニルカルバメート、ブチニルエーテル、ブチニルエステル、ペンチニルカーボネート、ペンチニルカルバメート、ペンチニルエーテル、およびペンチニルエステルからなる群から選択される官能基を有する化合物であるか、および/または、
1つの末端アルキン官能基、もしくは少なくとも2つの末端アルキン官能基を有する、という特徴のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの化合物C2が、以下の一般式(XIII)により表され、
【化1】
式中、
zは2から1000の整数を表し、
Zは、各出現において互いから独立して、水素またはチオール保護基を表し、
Lは、各出現において互いから独立して、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキレン基、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキレン基、飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキレン基、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキレン基、置換または非置換のアリーレン基、置換または非置換のヘテロアリーレン基、直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキレン基、直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリレン基、またはケイ素含有二価基からなる群から選択される単結合または二価基を表し、
Xは、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキル基、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキル基、飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキル基、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のヘテロアリール基、直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキル基、直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリル基、またはケイ素含有z価基からなる群から選択されるz価基を表す、
請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの化合物C3が、
ビニル官能基、アリル官能基、アクリレート官能基、およびメタクリレート官能基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するか、および/または、
少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を有する、という特徴のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能基を有する化合物C3a、および少なくとも1つのアリル官能基を有する化合物C3bを含む、少なくとも2つの化合物C3を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの安定化剤が、少なくとも1つの錯化剤をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、
前記少なくとも1つの光開始剤は、紫外線活性光開始剤および/または可視光活性光開始剤を含むか、および/または、
前記樹脂組成物は0.001~10重量%の少なくとも1つの安定化剤を含むか、および/または、
前記樹脂組成物は顔料、無機充填剤、有機充填剤、分散剤、レベリング剤、スリップ剤、光吸収体、レオロジー改質剤、および消泡添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含むか、および/または、
前記樹脂組成物は、実質的に溶媒を含まない、という特徴のうちの少なくとも1つを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記樹脂組成物を加熱する段階、および/または、
前記樹脂組成物の少なくとも一部を照射している間および/または照射した後に、前記ポリマーを後硬化する段階、および/または、
前記ポリマーを洗浄する段階のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記ポリマーを洗浄する段階をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の印刷方法であって、前記洗浄する段階は、前記ポリマーを、アルカリ化合物、界面活性剤、および適切な溶媒を含む洗浄組成物と接触させることを含む、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に印刷に好適な樹脂組成物、当該樹脂組成物の成分を含むキット、印刷方法、当該印刷方法によって得られるポリマー、当該ポリマーを含む、またはそれから形成される物品、その使用、および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷方法は、多様な目的のために機能し得る。依然として広く使用されている従来の二次元印刷方法に加え、過去数年間にわたり三次元印刷方法への関心が次第に高まっている。当初は、例えば設計目的でプロトタイプを製造するために開発されたが、三次元(3D)印刷方法は今では、例えば、自動車産業において、装飾品の製造のため、およびエンドユーザ向け機器において、市場にもたらされる高度先進の複雑な幾何構造を製造するためにますます活用されている(Wendel et al.,Macromol.Mater.Eng.293(2008)799-809)。
【0003】
既知の3D印刷方法の中でも、光造形法(SLA)は、他の技法ではほとんど達成することができない非常に高い精細度を達成するため、非常に有望な手法を象徴する。液体樹脂の光重合に基づくこの技法は、高い嵌合精度および高い表面品質を必要とする製造業(中でも、自動車、航空、および医療分野)用の目的に合わせて成形された物品の製造において大きな潜在性を有する。しかしながら、光造形法においてこれまで使用されてきた材料は、必要とされる熱機械的特性を満たさないことが多く、技術的に関連するプラスチック材料と比較して脆いことが多い(Ligon-Auer et al.,Polym.Chem.7(2016)257)。そのため、それらはプロトタイプ作製において適用され得るが、製造された成形物品の完全に動作可能な部品としての適用は限定される。さらに、市販の樹脂組成物は主に(メタ)アクリレートモノマーに基づいており、それらの細胞傷害性に起因して、組織と接触する医療用デバイスの製造には好適ではない(Husar et.al,J.Polym.Sci.A Polym.Chem.49(2011)4927)。
【0004】
そのため、光造形法に好適な市販の印刷用樹脂の選択肢は依然として限定されており、その結果、新しい材料および組成物の開発の必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を鑑みて、本発明は、これまで入手可能な印刷用樹脂の上記の問題および欠点、特に、熱機械的特性、および医療用または生物医学用機器における使用のための好適性に関するそれらの欠点を克服することを目的とする。そのため、本発明の目的は、特に光造形法による印刷に好適であり得る樹脂組成物、かつ、延性、低収縮性、熱の下での寸法安定性、および/または医療もしくは生物医学用途における生体適合性などの熱機械的特性に関する製造業の要件を満たす目的に合わせて成形された物品を提供し得る新規の樹脂組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、印刷構造体の劣化のリスクを伴わずに非硬化UV樹脂の残留物を完全に除去することによって、3D印刷構造体を洗浄するための手順を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、これらの目的を解決するために研究に励み、3種類のモノマー、すなわち、末端アルキン官能基を有する化合物と、少なくとも2つのチオール官能基を有する化合物と、炭素-炭素二重結合を有する化合物とを含む樹脂組成物、すなわち、チオール-イン-アルケン系が、光開始剤の存在下で高いモノマー転化率(>90%)下において照射すると印刷プロセス中にチオール-イン-アルケン反応において重合され得、その結果、得られるポリマーが、高い延性、熱の下での非常に良好な寸法安定性、およびさらには形状記憶挙動、ならびに抗菌(ナノ)コーティングを塗布する可能性をさらに提供する優れた生体適合性および生分解性(必要に応じて)などの、独自の熱機械的特性を呈し得る、均一性が高い三次元ネットワークを形成し得ることを見出した。特に、本発明者らは、本明細書に記載されるように、チオール-イン-アルケン系と組み合わせて、チオール-イン反応における場合のような段階的成長重合から得られる、低収縮応力(より脆さが少ないポリマー物品をもたらす)などの有利な特徴、およびラジカルアルケン重合における場合のような鎖成長重合から得られる、調節可能なゲル化時間、特に、3D印刷に適切な十分に短時間のゲル化などの有利な特徴が実現され得ることを見出した。この点で注目すべきことは、低収縮応力および短時間のゲル化は典型的には競合する特性であることである。単なるチオール-イン系では、段階的成長メカニズムに起因してゲル点は重合反応の比較的後の段階で実現され、これは、収縮応力が実質的に軽減され得ることを可能にする(そのため、得られるポリマーは低収縮応力を呈し得る)が、非常に長い印刷時間ももたらす。一方、単なるラジカルアルケン重合では、例えば、純粋な(メタ)アクリレートを重合するとき、鎖成長重合メカニズムに起因してゲル点は非常に早く実現され、その結果、非常に速い印刷時間が実現され得るが、そのように形成されたネットワークにおいて非常に高い収縮応力が生成され、その結果、ポリマーは脆くなりやすい。本発明者らは、チオール-イン-アルケン系では、本明細書に記載されるように、両方のメカニズムを組み合わせることにより、調節可能なゲル化時間、ならびに(チオール-エン反応と比較して)優れた調節可能な機械的特性(例えば、加熱撓み温度(HDT)および弾性率、実施例2および9を参照されたい)も可能にし得ることを見出した。さらに、貯蔵安定性を高めるべく適切な粘度を維持するために、安定化剤(特に、特定の安定化剤の組み合わせ)が樹脂組成物に添加され得る。本発明者らは、アルカリ化合物、界面活性剤、および適切な溶媒を含有する洗浄用溶液を適用することにより、チオール-エン反応および/またはチオール-イン反応により得られた(印刷された)ポリマーから未反応の残留モノマーが効率的に除去され得ることをさらに見出した。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、アルカリ触媒チオール-エン反応および/またはチオール-イン反応に起因して、残留モノマーが沈殿している場合があり、そのため、形成された沈殿物が洗浄用溶液により除去され得ると想定する。洗浄用溶液の濾過(または別の方法での、例えば遠心分離またはデカンテーションによる、洗浄用溶液からの沈殿物の除去)に際し、それはさらなる洗浄段階において再使用され得る。
【0007】
したがって、本発明は、樹脂組成物であって、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、少なくとも1つの光開始剤と、少なくとも1つの安定化剤とを含む、樹脂組成物に関する。
【0008】
本明細書に記載の樹脂組成物は、印刷、より具体的には光造形法における使用に特に好適である。
【0009】
したがって、本発明はさらに、本明細書に記載の樹脂組成物の使用、またはインクにおける使用に関する。
【0010】
本明細書に記載の樹脂組成物の成分は、特に、空間的に離れた様式で、例えばキットにおいて、特に、パーツキットにおいて提供され得る。一方で少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する化合物C1および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する化合物C3、ならびに他方で少なくとも2つのチオール官能基を有する化合物C2が、印刷の直前まで組み合わされない別個の組成物中に提供される(例えば、パーツキットにおいて空間的に離れた様式で)場合には、安定化剤は不要であり得る(が、それにもかかわらず、例えば少量で含有され得る)。
【0011】
そのため、本発明はまた、キットであって、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、少なくとも1つの光開始剤と、任意で少なくとも1つの安定化剤とを含む、キットに関する。
【0012】
さらに、本発明は、インクとしての使用のため、またはインクにおける使用のための樹脂組成物を調製するための、本発明に記載のキットの使用に関する。
【0013】
前述のように、一方で少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する化合物C1および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する化合物C3、ならびに他方で少なくとも2つのチオール官能基を有する化合物C2が、印刷の直前まで組み合わされない別個の組成物中に提供される(例えば、パーツキットにおいて空間的に離れた様式で)場合には、安定化剤は不要であり得る(が、それにもかかわらず、例えば少量で含有され得る)。
【0014】
そのため、本発明はさらに、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3とを含む第1のインク部分を提供する段階と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2を含む第2のインク部分を提供する段階であって、第1のインク部分および第2のインク部分のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの光開始剤をさらに含む、提供する段階と、第1のインク部分および第2のインク部分から樹脂組成物を形成し、すぐ後に、樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射して、樹脂組成物の少なくとも一部の重合を引き起こして、ポリマーを得る段階と、を含む、印刷方法に関する。
【0015】
また、本発明はさらに、本明細書に記載の樹脂組成物を提供する段階と、樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射して、樹脂組成物の少なくとも一部の重合を引き起こして、ポリマーを得る段階とを含む、印刷方法に関する。
【0016】
さらに、本発明は、本明細書に記載の印刷方法により得ることができるポリマーに関する。
【0017】
また、本発明は、本明細書に記載のポリマーを含むか、またはそれから形成される物品に関する。
【0018】
本明細書に記載されるように得られるポリマーおよび物品は、様々な機器に使用され得る。
【0019】
したがって、本発明はさらに、医療または生物医学用途における、本明細書に記載のポリマーまたは物品の使用に関する。
【0020】
さらに、本発明は、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、ラジカル捕捉剤、リン含有化合物、および錯化剤からなる群から選択される少なくとも1つの安定化剤とを含む、組成物に関する。
【0021】
さらに、本発明は、樹脂組成物を提供する段階であって、樹脂組成物が、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2とを含む、提供する段階と、樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射して、樹脂組成物の少なくとも一部の重合を引き起こして、ポリマーを得る段階と、ポリマーを、アルカリ化合物、界面活性剤、および溶媒を含む洗浄組成物(例えば、洗浄用溶液)と接触させる段階とを含む、印刷方法に関する。
【0022】
本発明の実施形態の他の目的および付随する利点の多くは、以下の実施形態の詳細な説明を参照することにより、容易に認識され、より良好に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細、ならびにその他の特徴および利点を説明する。しかしながら、本発明は、以下の具体的な説明に限定されるものではなく、むしろ例示目的のみのためのものである。
【0024】
別途具体的な記述がない限り、1つの例示的な実施形態または例示的な態様に関連して説明される特徴は、任意の他の例示的な実施形態または例示的な態様と組み合わされ得、特に、樹脂組成物の任意の例示的な実施形態と共に記載される特徴は、キット、印刷方法、ポリマー、物品、組成物の任意の例示的な実施形態と、またはそれらの使用の任意の例示的な実施形態と組み合わされ得、またその逆も同様であることに留意されたい。
【0025】
単数の用語を言及するときに、「a」、「an」、または「the」などの不定冠詞または定冠詞が使用される場合、別途具体的な記述がない限り、その用語の複数形もまた含まれ、逆も同様である一方、本明細書で使用される単語「1つの」または数字「1」は、典型的には、「1つのみ」または「ちょうど1」を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「含む(comprising)」という表現は、「含む(comprising)」、「含む(including)」、または「含有する(containing)」の意味を含むだけでなく、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」も包含する。
【0027】
別途具体的な記述がない限り、本明細書で使用される、「少なくとも部分的に」、「少なくとも部分的な」、または「少なくとも一部」という表現は、その少なくとも5%、特にその少なくとも10%、特にその少なくとも15%、特にその少なくとも20%、特にその少なくとも25%、特にその少なくとも30%、特にその少なくとも35%、特にその少なくとも40%、特にその少なくとも45%、特にその少なくとも50%、特にその少なくとも55%、特にその少なくとも60%、特にその少なくとも65%、特にその少なくとも70%、特にその少なくとも75%、特にその少なくとも80%、特にその少なくとも85%、特にその少なくとも90%、特にその少なくとも95%、特にその少なくとも98%を意味し得、また、その少なくとも100%も意味し得る。
【0028】
第1の態様において、本発明は、樹脂組成物であって、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、少なくとも1つの光開始剤と、少なくとも1つの安定化剤とを含む、樹脂組成物に関する。
【0029】
本明細書で使用される用語「組成物」は、特に、組成物の成分(含有物)が互いと極めて近接しており、かつ/またはそれらの成分が、例えばミキサ、撹拌機を使用することによって、および/もしくは振とうによって互いに(密に)混合されており、それにより組成物を形成していることを意味し得る。特に、組成物の成分は、組成物内で全体にわたって均一に分配または分散され得る。組成物は特に、固体、半固体(ペースト状)、または液体、特に、液体溶液または半固体または液体懸濁液であり得る。
【0030】
樹脂組成物は特に、光反応性樹脂組成物であり得る。本明細書で使用される「光反応性」という用語は、特に、樹脂組成物、特にその成分の一部またはすべてが、エネルギー搬送活性ビーム、特に電磁放射線による照射に際して(化学的)反応を起こすことを意味し得る。
【0031】
樹脂組成物は、印刷(特に、光造形法による)、例えば、本発明による印刷方法において特に好適であり得る。したがって、樹脂組成物は、特に、インク(印刷用インク)として使用され得る、すなわち、樹脂組成物自体がインクとして直接使用され得る。同様に、樹脂組成物は、特に、インク(印刷用インク)において使用され、すなわち、典型的にインクに使用されるインクの成分または含有物として、適切な1または複数のさらなる成分または含有物と共に使用され得る。
【0032】
樹脂組成物は、少なくとも3つのモノマー、すなわち、少なくとも1つの化合物C1(「イン成分」または「インモノマー」とも呼ばれる)、少なくとも1つの化合物C2(「チオール成分」または「チオールモノマー」とも呼ばれる)、および少なくとも1つの化合物C3(「アルケン成分」または「アルケンモノマー」とも呼ばれる)を含む。明白であるように、樹脂組成物は、2つ以上の化合物C1(例えば、異なる化合物C1の混合物)、2つ以上の化合物C2(例えば、異なる化合物C2の混合物)、および/または2つ以上の化合物C3(例えば、異なる化合物C3の混合物)、ならびに以下に説明されるさらなる含有物または成分を含有し得る。
【0033】
化合物C1は、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する。
【0034】
本明細書で使用され、当業者により広く理解される「末端アルキン官能基」という用語は、炭素原子の1つが水素原子に結合している炭素-炭素三重結合を有する部分を表す。換言すると、末端アルキン官能基は、一般式「-C≡C-H」によって表され得る。末端アルキン官能基は、保護された形態で、例えば、シリル(例えば、トリメチルシリル(TMS))保護アルキン基として、および/または炭素-炭素三重結合の、例えばジコバルトオクタカルボニルとの錯体としても存在し得る。当業者には周知であるように、適切な脱保護(保護基の除去)は、その後、例えば印刷方法、または末端アルキン官能基がチオール-イン-アルケン反応に関与することが意図される任意の他の目的の使用における樹脂組成物の使用前に実行されるべきである。
【0035】
少なくとも1つの末端アルキン官能基以外は、化合物C1の構造は特に限定されておらず、分岐または直鎖の(炭素)部分を含んでもよく、これは様々な官能基、ならびにオリゴマー鎖またはポリマー鎖を含み得る。特に、少なくとも1つの化合物C1は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキル基;直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;置換または非置換のヘテロアリール基;直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキル基;直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリル基;オリゴマーまたはポリマーから選択される少なくとも1つの基または部分を含み得る。
【0036】
本明細書で使用される「直鎖」、「分岐」、「飽和」、「不飽和」、および「非置換」という用語の意味は、当業者に既知である、それぞれ十分に確立されたそれらの意味に対応する。本明細書で使用される「置換」という用語は、それぞれの基の1または複数、特に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の水素原子が置換基によって置換されていることを意味する。好適な置換基の例としては、ハロゲン原子、例えば、F、-Cl、-Br、-I、-OH、ヒドロキシアルキル基(エーテル)、-SH、チオアルキル基(チオエーテル)、=O、カルボキシル基(-COOH)ならびにその塩、エステル、およびアミド、NH、第2級アミン基、第3級アミン基、ニトリル基、およびニトロ基が挙げられる。2つ以上の置換基が存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよく、それらは互いに結合して環を形成してもよい。「ヘテロアルキル基」、「ヘテロシクロアルキル基」、または「ヘテロアリール基」という用語は、それぞれ、1または複数、特に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子が、O、N、またはSなどのヘテロ原子、特にOおよび/またはSによって置換されているアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基をそれぞれ表す。2個以上のヘテロ原子が基に含有されている場合、これらのヘテロ原子は同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
アルキル基の好適な例としては、C~C20アルキル基、特にC~C10アルキル基、特にC~Cアルキル基、特にC~Cアルキル基が挙げられる。
【0038】
シクロアルキル基の好適な例としては、C~C20シクロアルキル基、特にC~C15シクロアルキル基、特にC~C10シクロアルキル基、特にC~Cシクロアルキル基が挙げられる。
【0039】
アリール基の好適な例としては、C~C20アリール基、特にC~C16アリール基、特にC~C14アリール基、特にC~C10アリール基が挙げられる。特に、アリール基はフェニル基であり得る。
【0040】
本明細書で使用される「アラルキル基」は、脂肪族および芳香族部分を有する基を表し、脂肪族部分は末端アルキン官能基または任意の他の官能基、例えばエーテル、カーボネート、カルバメート、もしくはエステル官能基に結合し、芳香族部分および/または脂肪族部分は任意でヘテロ原子を含み得る。換言すれば、「アラルキル基」は、置換基としてアリール基(またはヘテロアリール基)を有するアルキルまたはシクロアルキル基(またはヘテロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル基)を表す。アラルキル基の好適な脂肪族および芳香族部分は、上に定義されるように、アルキル、シクロアルキル、およびアリール基(またはそれぞれ、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロアリール基)に対応する。
【0041】
本明細書で使用される「アルカリル基」は、脂肪族および芳香族部分を有する基を表し、脂肪族部分は末端アルキン官能基または任意の他の官能基、例えばエーテル、カーボネート、カルバメート、もしくはエステル官能基に結合し、脂肪族部分および/または芳香族部分は任意でヘテロ原子を含み得る。換言すれば、「アルカリル基」は、置換基としてアルキルまたはシクロアルキル基(またはヘテロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル基)を有するアリール基(またはヘテロアリール基)を表す。アルカリル基の好適な脂肪族および芳香族部分は、上に定義されるように、アルキル、シクロアルキル、およびアリール基(またはそれぞれ、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロアリール基)に対応する。
【0042】
一実施形態では、化合物C1の末端アルキン官能基は、プロパルギル、ブチニル、およびペンチニルからなる群から選択されるいずれか1つである。プロパルギルは一般式「-CH-C≡C-H」で表され得、ブチニルは一般式「-CH-CH-C≡C-H」または「-C(CH)H-C≡C-H」で表され得、ペンチニルは一般式「-CH-CH-CH-C≡C-H」、「-C(CH)H-CH-C≡C-H」、「-CH-C(CH)H-C≡C-H」、または「C(CH-C≡C-H」で表され得る。その直鎖(非分岐)基、すなわち、「-CH-C≡C-H」、「-CH-CH-C≡C-H」、および「-CH-CH-CH-C≡C-H」が好ましい場合がある。プロパルギル、ブチニル、およびペンチニルからなる群から選択されるいずれか1つの化合物C1の末端アルキン官能基は、本発明の目的のために非常に適切であることが証明されている。
【0043】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C1は、少なくとも1つの末端アルキン官能基と、カーボネート、カルバメート、エーテル、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基とを有し得る。
【0044】
本明細書で使用される「カーボネート」、「カルバメート」、「エーテル」、および「エステル」という用語は、一般に受け入れられているそれらの意味に対応する。カーボネートは一般式「-O(C)O-」で表され得、カルバメートは一般式「-(NR)(CO)O-」または「―O(CO)(NR)-」(式中、上記のように、Rは、互いから独立して、特に水素原子、アルキル基、または任意の他の部分を表し得る)で表され得、エーテルは一般式「-O-」で表され得、エステルは一般式「-(CO)O-」または「-O(CO)-」で表され得る。
【0045】
これらの官能基は、医療用または生物医学用デバイスとして使用される場合など、人体または動物の体において、例えば印刷方法により、チオール-イン-アルケン反応の後に得られた生成物(例えば、ポリマー、または当該ポリマーを含むかもしくはそれから形成された物品)の生理学的特性の適切な調整を提供し得る。例えば、エーテル官能基は生理学的環境において加水分解性をほとんど有さず、結果的に、少なくとも1つの化合物C1がエーテル官能基を含む樹脂組成物から得られた生成物は実質的に非生分解性であり、したがって、義歯などの歯科用製品に特に好適である。一方、カルバメート官能基、特に、カーボネート官能基およびエステル官能基は生理学的環境下においてより容易に加水分解(例えば酵素的に)することができ、結果的に、少なくとも1つの化合物C1がカルバメート官能基、カーボネート官能基、および/またはエステル官能基を含む樹脂組成物から得られた生成物は実質的に生分解性であり、したがって、徐々に分解されて、天然の生理学的材料により取って代わられることが意図されることが多い、インプラント、代用骨、および/または代用組織として特に好適である。例えば、特定の持続的な機械的サポートが所望される場合に、生成物が少なくとも部分的生分解性であり、かつ少なくとも部分的に非生分解性であること、あるいは、インプラント、代用骨、および/または代用組織として生成物を使用する場合に特に有利となり得る、生成物の一部が比較的速く生分解する一方で、生成物の一部は比較的ゆっくりと生分解することもまた有利となり得る。そのため、特定の必要性に応じて、エーテル、カルバメート、カーボネート、および/またはエステル官能基の組み合わせもまた適切であり得る。生理学的条件下で加水分解性/切断可能性がより高いまたはより低い他の官能基は、化合物C1に含有され得るが、化合物C2および/または化合物C3にも含有され得る。
【0046】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C1は、プロパルギルカーボネート、プロパルギルカルバメート、プロパルギルエーテル、プロパルギルエステル、ブチニルカーボネート、ブチニルカルバメート、ブチニルエーテル、ブチニルエステル、ペンチニルカーボネート、ペンチニルカルバメート、ペンチニルエーテル、およびペンチニルエステルからなる群から選択される官能基を有する化合物を含み得る。
【0047】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C1は、1つの末端アルキン官能基を有する。単官能性アルキンモノマーは、典型的には、粘度が比較的低い液体である。そのような単官能性アルキンモノマーは樹脂組成物に含有され、樹脂組成物もまた典型的には、粘度が比較的低い液体である。そのような低粘性の液体は、高粘性のインクはインクジェットノズルからの排出が困難であり得るインクジェット印刷方法用のインクとして特に好適である。インモノマーにおける炭素-炭素三重結合の存在に起因して、1つの単官能性アルキンモノマーは、チオール-イン-アルケン反応において2つのチオール官能基と反応することができ、その結果、インモノマーにおいて1つのみの官能アルキン基しか存在しない場合であっても重合反応を進めることができる(終端しない)ことに留意されたい。
【0048】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C1は、少なくとも2つの末端アルキン官能基、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上の末端アルキン官能基を有する。そのような化合物C1は、樹脂組成物の低い粘度が必要とされない場合、および/または、多様な架橋を有する特定の強いポリマーネットワークが所望される場合に特に有利であり得る。
【0049】
少なくとも1つの化合物C1の適切な例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化1】
さらに、ジ(ブト-3-イン-1-イル)カーボネート、ジ(プロパ-2-イン-1-イル)カーボネート、ジ(ブト-3-イン-1-イル)(2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイル)ジカルバメートは、少なくとも1つの化合物C1のさらなる適切な例を表す。
【0050】
本明細書に定義される化合物C1は、市販の出発材料を使用して、十分に確立された有機合成方法によって調製することができる。
【0051】
例えば、少なくとも1つの末端アルキン官能基と少なくとも1つのカーボネート官能基とを有する化合物は、具体的な例として以下に示されるように調製することができる。これらの具体的な例は例示目的のみのためのものであり、決して限定するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。
【化2】
【0052】
上記の2段階の方法に対する代替的な手法として、少なくとも1つの末端アルキン官能基と少なくとも1つのカーボネート官能基とを有する化合物を合成するための以下の1段階の方法が下に示される。
【化3】
【0053】
さらなる例として、少なくとも1つの末端アルキン官能基と少なくとも1つのエーテル官能基とを有する化合物は、以下に示されるように、ウィリアムソンのエーテル合成によって調製することができる。
【化4】
【0054】
依然としてさらなる例として、少なくとも1つの末端アルキン官能基と少なくとも1つのエステル官能基とを有する化合物は、具体的な例として下に示されるように調製することができる。ショッテン・バウマンのエステル化合成による、少なくとも1つの末端アルキン官能基と少なくとも1つのエステル官能基とを有する化合物を合成するための1つの手法は、以下に示される。
【化5】
【0055】
上記の方法の代替的な手法として、シュテークリヒエステル化合成による、少なくとも1つの末端アルキン官能基と少なくとも1つのエステル官能基とを有する化合物を合成するための以下の方法は、下に示される。
【化6】
【0056】
さらなる例として、少なくとも1つの末端アルキン官能基と少なくとも1つのエステル官能基とを有する化合物は、以下に示されるようにフィッシャー・スペイアのエステル化合成によって調製することができる。
【化7】
化合物C2は、少なくとも2つのチオール官能基を有する。
【0057】
本明細書で使用され、当業者により広く理解される「チオール官能基」という用語は、一般式「-SH」で表される官能基を表し、これは、例えば、一般式「-SZ」で表される保護形態でも存在し得、式中、「Z」は、「-SH」の保護基、すなわちチオール保護基を表す。
【0058】
一実施形態では、チオール官能基のうちの少なくとも1つは、チオール保護基を含む。換言すれば、チオール官能基のうちの少なくとも1つが保護形態で存在し得るか、またはチオール官能基のうちの少なくとも1つが一般式「-SZ」で表され得、式中、「Z」は、「-SH」の保護基、すなわちチオール保護基を表す。チオール保護基は、特に、アシル基、シリル基、およびシロキシル基からなる群から選択され得る。アシルチオール保護基の場合、チオール官能基は特にチオエステルを表す。シリルチオール保護基の場合、チオール官能基は特にシリルチオエーテルを表す。シロキシルチオール保護基の場合、チオール官能基は特にシリルチオエステルを表す。
【0059】
アシルチオール保護基の好適な例としては、ホルミルおよびアセチルが挙げられる。シリルチオール保護基の好適な例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ヘキシルシリル、トリヘキシルシリル、およびトリプロピルシリルが挙げられる。シロキシルチオール保護基の好適な例としては、トリメチルシロキシル、トリエチルシロキシル、tert-ブチルジメチルシロキシル、tert-ヘキシルシロキシル、トリヘキシルシロキシル、およびトリプロピルシロキシルが挙げられる。
【0060】
当業者には周知であるように、適切な脱保護(保護基の除去)は、その後、例えば印刷方法、またはチオール官能基がチオール-イン-アルケン反応に関与することが意図される任意の他の目的の使用における樹脂組成物の使用前に実行されるべきである。例えば、シリルチオール保護基(シリルチオエーテル)の場合、脱保護は、光酸、すなわち、電磁放射線を照射すると酸を生成する化合物との反応によって実行され得る。同様に、アシルまたはシロキシルチオール保護基(チオエステルまたはシリルチオエステル)の場合、脱保護は、光塩基、すなわち、電磁放射線を照射すると塩基を生成する化合物との反応によって実行され得る。
【0061】
したがって、樹脂組成物は、少なくとも1つの光酸および/または少なくとも1つの光塩基をさらに含み得る。特に、シリルチオール保護基(シリルチオエーテル)の場合には樹脂組成物は少なくとも1つの光酸をさらに含み得、アシルまたはシロキシルチオール保護基(チオエステルまたはシリルチオエステル)の場合には樹脂組成物は少なくとも1つの光塩基をさらに含み得る。
【0062】
光酸(光酸発生剤、PAG)の好適な例としては、
-イオン性光酸発生剤、特に、
・対イオンとしてBF 、SbF 、AsF 、B(C 、またはPF などのハロゲン化錯体を含有するオニウム塩、例えば、アリルジアゾニウム、ジアリールヨードニウム(例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なCyracure UVI-6976、Lamberti SpAから入手可能なEsacure 1064、CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTDから入手可能なQL Cure 211)、トリアリールスルホニウム(例えば、IGM Resins B.V.から入手可能なOmnicat 440、BASF SEから入手可能なIrgacure 250、Rhodiaから入手可能なRhodorsil 207)、トリアリールセレノニウムまたはトリアリールホスホニウム塩のオニウム塩、
・対イオンとしてBF 、SbF 、AsF 、B(C 、またはPF などのハロゲン化錯体を含有する鉄アレーン錯体(例えば、BASF SEから入手可能なIrgacure 261)、
・対イオンとしてBF 、SbF 、AsF 、B(C 、またはPF などのハロゲン化錯体を含有するジアルキルフェナシルスルホニウム塩、
-非イオン性光酸発生剤、特に、
・カルボン酸の2-ニトロベンジルエステル、
・スルホン酸の2-ニトロベンジルエステル、
・UV照射するとスルフィン酸を生成するスルホン化合物、
・トリアリールホスフェート、
・N-ヒドロキシイミドスルホネート(例えば、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドパーフルオロ-1-ブタンスルホネート)、
・フェノールのスルホン酸エステル、
・ジアゾナフトキノン、
・イミノスルホネート、
・トリクロロメチル-1,3,5-トリアジン(例えば、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン)、および/または上記のうちのいずれか1つの混合物が挙げられる。
【0063】
光塩基(光塩基発生剤、PBG)の好適な例としては、
-カルバメート(例えば、m-ニトロフェニル、3,5-ジメトキシベンジル、1-メチル-1-(3,5-ジメトキシフェニル)エチル、α-メチルニトロピペロニル、o-ニトロベンジル、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジル、フェニル(o-ニトロフェニル)メチル、2-(2-ニトロフェニル)エチル、6-ニトロベラトリル、4-メトキシフェナシル)、3'5'-ジメトキシベンゾインカルバメート)、
-o-アシルオキシム、
-アンモニウム塩、
-スルホアミド、
-ホルムアミド、
-ニフェジピン、
-アミネイミド、
-α-アミノケトン
-カルバモイルオキシウム、および/または上記のうちのいずれか1つの混合物が挙げられる。
【0064】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C2は、以下の一般式(XIII)で表され得る。
【化8】
式中、
zは2~1000の整数を表し、
Zは、各出現において互いから独立して、水素またはチオール保護基を表し、
Lは、各出現において互いから独立して、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキレン基;直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキレン基;飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキレン基;飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキレン基;置換または非置換のアリーレン基;置換または非置換のヘテロアリーレン基;直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキレン基;直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリレン基;またはケイ素含有二価基からなる群から選択される単結合または二価基を表し、
Xは、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキル基;直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;置換または非置換のヘテロアリール基;直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキル基;直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリル基;ケイ素含有z価基からなる群から選択されるz価基を表す。
【0065】
一般式(XIII)において、zは、特に、2~1000の整数を表し得、範囲の下限は、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50であり、かつ/または範囲の上限は、例えば1000、900、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300,275、250、225、200、190、180、170、160、150、140、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、38、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3であり、これらは範囲の上限値および下限値の任意の単一の組み合わせを含む。
【0066】
「直鎖」、「分岐」、「飽和」、「不飽和」、「非置換」、および「置換」という用語の定義は、特に、上記の定義に対応し得る。同様に、「アルキレン基」、「ヘテロアルキレン基」、「シクロアルキレン基」、「ヘテロシクロアルキレン基」、「アリーレン基」、「ヘテロアリーレン基」、「アラルキレン基」、および「アルカリーレン基」という用語の定義および/または好適な例はそれぞれ、特に、それらの接尾辞「~エン」によっても示されるように、Lで表される基が二価(divalent)(二価(bivalent))基である点を除いて、「アルキル基」、「ヘテロアルキル基」、「シクロアルキル基」、「ヘテロシクロアルキル基」、「アリール基」、「ヘテロアリール基」、「アラルキル基」、および「アルカリル基」という用語の上記の定義および/または好適な例にそれぞれ対応し得る。同様に、Xで表される「アルキル基」、「ヘテロアルキル基」、「シクロアルキル基」、「ヘテロシクロアルキル基」、「アリール基」、「ヘテロアリール基」、「アラルキル基」、および「アルカリル基」という用語の定義および/または好適な例は、特に、Xで表される基がz価基である点を除いて、上記の定義に対応し得る。
【0067】
「ケイ素含有二価基」および/または「ケイ素含有z価基」は、特に、1または複数のケイ素(Si)原子と、任意でさらに、1または複数の例えばC、O、N、P、および/またはH原子とを含有する基を含み得る。その好適な例としては、Si原子、-[(Si-アルキル)]-(例えば、-[(Si-CH]-)、-[(Si-O)]-、および-[(Si-N)]-)が挙げられる。
【0068】
一実施形態では、Zは、各出現において互いから独立して、水素、またはアシル基、シリル基、およびシロキサル基からなる群から選択されるチオール保護基を表し得る。
【0069】
一実施形態では、Lは、各出現において互いから独立して、1~18個の炭素原子を有し、任意で1または複数ヒドロキシル基で置換されている直鎖または分岐、飽和または不飽和、アルキレン基;-(CO)O-;-O(CO)-;1~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和、二価アルキルエステル基;1~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアシレン基;1~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐、置換または非置換のアルコキシレン基;3~12個の炭素原子を有する飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキレン基;6~16個の炭素原子を有する置換または非置換のアリーレン基;または2~20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素、リン、置換または非置換のイミン基、-(CO)-、-O(CO)-、-(CO)O-、-O(CO)O-、-(NR10)(CO)O-、および/またはO(CO)NR10)-(R10は上で定義されるとおりである)のうちの1または複数が点在する直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキレン基からなる群から選択される単結合または二価基を表し得る。
【0070】
一実施形態では、Xは、1~18個の炭素原子を有し、任意で1または複数のヒドロキシル基で置換されている直鎖または分岐、飽和または不飽和のアルキル基;1~18個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和のz価アルキルエステル基;1~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアシル基;1~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐、置換または非置換のアルコキシ基;3~12個の炭素原子を有する飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキル基;6~16個の炭素原子を有する置換または非置換のアリーレン基;Si原子、-[(Si-アルキル)]-(例えば、-[(Si-CH]-)、-[(Si-O)]-、または-[(Si-N)]-のいずれか1つの直鎖もしくは分岐、または環状の基であって、-L-SHでz回置換されている、基;または2~20個の炭素原子を有し、酸素、硫黄、窒素、リン、置換または非置換のイミン基、-(CO)-、-O(CO)-、-(CO)O-、-O(CO)O-、-(NR10)(CO)O-、および/またはO(CO)NR10)-(R10は、各出現において互いから独立して、水素原子;直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキル基;直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;置換または非置換のヘテロアリール基、直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキル基;直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリル基を表す)のうちの1または複数が点在する直鎖または分岐、飽和または不飽和のアルキル基からなる群から選択されz価基を表し得る。
【0071】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C2は、少なくとも2つのチオール官能基と、シラン(Si原子)、シロキサン(-Si-O-)、カーボネート、カルバメート、エーテル、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの、特に少なくとも2つの官能基、特に、カーボネート、カルバメート、エーテル、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基とを有し得る。特に、チオール官能基の数、ならびにカーボネート、カルバメート、エーテル、およびエステルからなる群から選択される官能基の数は、少なくとも1つの化合物C2において同じであっても異なっていてもよい。例えば、チオール官能基の数、ならびに/またはカーボネート、カルバメート、エーテル、およびエステルからなる群から選択される官能基の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50以上であってもよく、かつ/または1000、900、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、275、250、225、200、190、180、170、160、150、140、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、38、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3以下であってもよい。
【0072】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C2がカルバメート官能基、カーボネート官能基、および/またはエステル官能基を含むことが有利であり得る。この方策をとることにより、樹脂組成物の重合から得られるポリマーおよび/または物品は実質的に生分解性であり得、したがって、特に、徐々に分解されて天然の生理学的材料によって取って代わられることが意図されることが多いインプラント、代用骨、および/または代用組織として好適であり得る。
【0073】
少なくとも1つの化合物C2の適切な例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化9】
トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(TMPMP)
【化10】
ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PETMP)
【表1】
【表2】
少なくとも1つの化合物C2のさらなる適切な例は、開示内容が参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2013/052328 A1号の23および24頁に示されている。
【0074】
化合物C3は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する。一実施形態では、炭素-炭素二重結合の炭素原子のうちの一方は水素原子に結合する。一実施形態では、化合物C3は、少なくとも1つの末端アルケン官能基(または少なくとも1つの末端炭素-炭素二重結合)を有する。
【0075】
一実施形態では、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3は、ビニル官能基、アリル官能基、アクリレート官能基、およびメタクリレート官能基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有し得る。換言すれば、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合は、特に、ビニル官能基、アリル官能基、アクリレート官能基、および/またはメタクリレート官能基の一部であり得る。これらの官能基はアルケンモノマーを提供し、これは、特定の効率的で速い様式で、かつ非常に高いモノマー転化率の下でチオール-イン-アルケン反応を起こし得、その結果、得られるポリマーはいかなる残留モノマーも実質的に含まず、それにより、残ったモノマーにより引き起こされる、細胞傷害性の問題などのあらゆる負の効果を強く低減または実質的に回避し得る。特に、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3は、アリル官能基、アクリレート官能基、およびメタクリレート官能基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有し得る。
【0076】
本明細書で使用される「ビニル」、「アリル」、「アクリレート」、および「メタクリレート」という用語は、一般に受け入れられているそれらの意味に対応する。ビニルは一般式「HC=CH-」で表され得、アリルは一般式「HC=CH-CH-」で表され得、アクリレートは一般式「HC=CH-C(=O)-」で表され得、メタクリレートは一般式「HC=C(CH)-C(=O)-」で表され得る。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを包含し得る。
【0077】
一実施形態では、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3は、少なくとも1つのビニル官能基および/またはアリル官能基を有し得る。その好適な例としては、ジアリルピロカーボネート;ジアリル(2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイル)ジカルバメート;アリルアセテート;アリルベンジルエーテル;アリルブチルエーテル;アリルシアノアセテート;アリルエーテル;アリルエチルエーテル;アリルメチルカーボネート;2-アリルオキシベンゾアルデヒド;2-アリルオキシエタノール;4-アリルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン;3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオール;アリルフェニルエーテル;アリルホスホン酸モノアンモニウム塩;2,2'-ジアリルビスフェノール;2,2'-ジアリルビスフェノールAジアセテートエーテル;ジアリルカーボネート;ジアリルマレエート;ジエチルアリルマロネート;5-メチル-5-アリルオキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン;ペンタエリトリトールアリルエーテル;2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン;1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン;トリメチロールプロパンアリルエーテル;トリメチロールプロパンジアリルエーテル;1,4-ブタンジオールジビニルエーテル;1,4-ブタンジオールビニルエーテル;ブチルビニルエーテル;tert-ブチルビニルエーテル;2-クロロエチルビニルエーテル;1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル;1,4-シクロヘキサンジメタノールビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル;ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル;ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル;オルトギ酸ジエチルビニル;ドデシルビニルエーテル;エチレングリコールビニルエーテル;2-エチルヘキシルビニルエーテル;エチルビニルエーテル;イソブチルビニルエーテル;フェニルビニルエーテル;プロピルビニルエーテル;ビニルアセテート;ビニルベンゾエート;ビニルシンナメート;ビニルデカノエート;ビニルネオデカノエート;ビニルネオノナノエート;ビニルピバレート;ビニルプロピオネート;ビニルステアレート;ヘキサンジオールジビニルエステル;ヘキサンジオールジビニルカーボネート;ブタンジオールジビニルカーボネート;N-ビニル-ピロリドン;N-ビニル-カプロラクタム;N-ビニル-イミダゾール;N-ビニル-N-メチルアセトアミド;1,4-ブタンジオールジビニルエーテル;ジエチレングリコールジビニルエーテル;トリエチレングリコールジビニルエーテル;1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル;ヒドロキシブチルビニルエーテル;1,4-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル;1,2,4-トリビニルシクロヘキサン;およびジアリル(2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイル)ジカルバメートが挙げられる。
【0078】
一実施形態では、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能基を有し得る。その好適な例としては、1,4-ブタンジオールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジメタクリレート;イソブチルメタクリレート;1,3-ブチレングリコールジアクリレート;ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート;ヘキサンジオールジアクリレート;エトキシ(3)シクロヘキサノールジメタノールジアクリレート;2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート;ジペンタエリトリトールペンタアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;エトキシ(3)シクロヘキサノールジメタノールジアクリレート;2-フェノキシエチルアクリレート;プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;プロポキシル化(3)シクロヘキサノールジメタノールジアクリレート;環状トリメチロールプロパンフォルマル(formal)アクリレート;エトキシル化(5)ペンタエリトリトールテトラアクリレート;エトキシ(3)ヘキサンジオールジアクリレート;エトキシ(3)フェノキシエチルアクリレート;エトキシ(6)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシ(5)ヘキサンジオールジアクリレート;プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化(3)ヘキサンジオールジアクリレート;プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート;プロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート;2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート;イソデシルアクリレート;オクチル/デシルアクリレート;ラウリルアクリレート;トリデシルアクリレート;カプロラクトンアクリレート;ジエチレングリコールブチルエーテルアクリレート;イソボルニルアクリレート;テトラヒドロフルフリルアクリレート;環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート;イソフォリルアクリレート;2-フェノキシエチルアクリレート;エトキシル化(4)フェノールアクリレート;エトキシル化(4)ノニルフェノールアクリレート;ヘキサンジオールジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;ジオキサングリコールジアクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化グリセロールトリアクリレート;トリス(2-ヒドロキシルエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;ジペンタエリトリトールペンタ/ヘキサアクリレート;アルコキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート;ジ(トリメチロール)プロパンテトラアクリレート;エポキシアクリレート;ウレタンアクリレート;ポリエステルアクリレート;4-アセトキシフェネチルアクリレート;-アクリルロイルモルホリン;(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート;ベンジル2-プロピルアクリレート;ブチルアクリレート;tert-ブチルアクリレート;2-カルボキシエチルアクリレート;2-カルボキシエチルアクリレート;2-クロロエチルアクリレート;2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート;ジ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート;2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート;3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート;ジペンタエリトリトールペンタ-/ヘキサ-アクリレート;エチルアクリレート;エチル2-(ブロモメチル)アクリレート;エチルシス-(β-シアノ)アクリレート;エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルアクリレート;エチレングリコールメチルエーテルアクリレート;エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート;エチル2-エチルアクリレート;2-エチルヘキシルアクリレート;エチル2-プロピルアクリレート;エチル2-(トリメチルシリルメチル)アクリレート;ヘキシルアクリレート;4-ヒドロキシブチルアクリレート;2-ヒドロキシエチルアクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート;ヒドロキシプロピルアクリレート;イソボルニルアクリレート;イソブチルアクリレート;イソデシルアクリレート;イソオクチルアクリレート;ラウリルアクリレート;メチル2-アセトアミドアクリレート;メチルアクリレート;メチル2-(ブロモメチル)アクリレート;メチル2-(クロロメチル)アクリレート;メチル3-ヒドロキシ-2-メチレンブチレート;メチル2-(トリフルオロメチル)アクリレート;オクタデシルアクリレート;ペンタブロモベンジルアクリレート;ペンタブロモフェニルアクリレート;ペンタフルオロフェニルアクリレート;ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート;ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート;N-プロピルアクリルアミド;大豆油エポキシ化アクリレート;テトラヒドロフルフリルアクリレート;2-テトラヒドロピラニルアクリレート;3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート;3,5,5-トリメチルヘキシルアクリレート;10-ウンデセニルアクリレート;ウレタンアクリレートメタクリレート;アリルメタクリレート;2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチルメタクリレート;ベンジルメタクリレート;ビス(2-メタクリロイル)オキシエチルジスルフィド;ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、9H-カルバゾール-9-エチルメタクリレート;シクロヘキシルメタクリレート;1,10-デカメチレングリコールジメタクリレート;2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート;ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート;ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート;2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート;2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート;2-エトキシエチルメタクリレート;エチレングリコールジシクロペンテニルエーテルメタクリレート;エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート;エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート;2-エチルヘキシルメタクリレート;エチルメタクリレート;フルフリルメタクリレート;グリシジルメタクリレート;グリコシルオキシエチルメタクリレート;ヘキシルメタクリレート;ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレート;ヒドロキシプロピルメタクリレート;2-ヒドロキシプロピル2-(メタアクリロイルオキシ)エチルフタレート;2-ヒドロキシ-3-{3-[2,4,6,8-テトラメチル-4,6,8-トリス(プロピルグリシジルエーテル)-2-シクロテトラシロキサニル]プロポキシ}プロピルメタクリレート;イソボルニルメタクリレート;イソブチルメタクリレート;2-イソシアネートエチルメタクリレート;イソデシルメタクリレート;ラウリルメタクリレート;メチルメタクリレート;2-(メチルチオ)エチルメタクリレート;モノ-2-(メタアクリルオイルオキシ)エチルマレエート;モノ-2-(メタアクリルオイルオキシ)エチルスクシネート;2-N-モルホリノエチルメタクリレート;1-ナフチルメタクリレート;1,4-フェニレンジメタクリレート、フェニルメタクリレート;リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル;1-ピレンメチルメタクリレート;二無水ピロメリット酸ジメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート;トリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート;3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ウレタンアクリレートメタクリレート;ウレタンエポキシメタクリレート;ビニルメタクリレート;およびウレタンジメタクリレートが挙げられる。
【0079】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C3は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合と、カーボネート、カルバメート、エーテル、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有し得る。 これらの官能基は、化合物C1の文脈において上で与えられた説明と同様に、チオール-イン-アルケン反応の後に得られた生成物(例えば、ポリマー、または当該ポリマーを含むかもしくはそれから形成された物品)の生理学的特性の適切な調整を提供し得る。
【0080】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C3は、少なくとも2つの炭素-炭素二重結合、特に、少なくとも2つの末端アルケン官能基、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上の炭素-炭素二重結合(特に、末端アルケン官能基、特に、アリル官能基、アクリレート官能基、およびメタクリレート官能基からなる群から選択される官能基)を有する。
【0081】
一実施形態では、末端アルキン官能基の数対チオール官能基の数対炭素-炭素二重結合(特に、末端アルケン官能基)の数の比率は、形成されたポリマー中の残留(チオール-イン-アルケン反応の完了後)反応性基の数および残留(チオール-イン-アルケン反応の完了後)モノマーの数が最小化されるように調節され得、これは、ポリマー(またはモノマーを含むかそれから形成された物品)が医療用または生物医学用機器において使用される場合に特に有利であり得る。
【0082】
一実施形態では、末端アルキン官能基の数対チオール官能基の数対炭素-炭素二重結合(特に、末端アルケン官能基)の数の比率は、一部のチオール官能基がチオール-イン-アルケン反応の完了後に形成されたポリマー中に、特に、ポリマーの表面上またはポリマーを含むかもしくはそれから形成された物品の表面上に残留し得るように調節され得る。これにより、表面修飾ポリマーまたは物品を得ることができる。特に、そのような残ったまたは残留チオール官能基は、ポリマーまたは物品を、有機充填剤(例えば、ヘパリン)などの添加剤、および/または抗菌剤、例えば第4級アミンなどのコーティング剤とカップリングさせることができるアンカーまたはドッキング部位(結合部位)として機能し得る。残ったまたは残留チオール官能基と添加剤またはコーティング剤との結合(カップリング)は、例えば、典型的には塩基性条件下で触媒される、チオール-エン反応、例えば、チオール-マイケル付加によって実行され得る。残ったまたは残留チオール官能基とコーティング剤との結合(カップリング)にはまた、特に、タンパク質またはペプチドがポリマーまたは物品とカップリングされる場合、ジスルフィド結合(ジスルフィド架橋)の形成が関与し得る。これにより、ポリマーまたは物品に追加の生理学的に有益な特性、例えば、ヘパリンの場合には抗凝血特性が付与され得、かつ/または、ポリマーまたは物品の表面の少なくとも一部が、(ナノ)コーティング、特に抗菌コーティングを備え得る。
【0083】
少なくとも1つの化合物C1は、5~80重量%、特に10~75重量%、特に15~70重量%、特に20~65重量%、例えば、20~60重量%、25~55重量%、30~50重量%、35~45重量%、または35~40重量%の量で樹脂組成物中に含有され得る。
【0084】
少なくとも1つの化合物C2は、5~80重量%、特に10~75重量%、特に15~70重量%、特に20~65重量%、例えば、20~60重量%、25~55重量%、30~50重量%、35~45重量%、または35~40重量%の量で樹脂組成物中に含有され得る。
【0085】
少なくとも1つの化合物C3は、10~90重量%、特に15~85重量%、特に20~80重量%、特に25~70重量%、例えば、20~60重量%、25~55重量%、30~50重量%、35~45重量%、または35~40重量%の量で樹脂組成物中に含有されれ得る。
【0086】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C3は、少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの化合物C2よりも多い量で含有されている。
【0087】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C1、少なくとも1つの化合物C2、および少なくとも1つの化合物C3の合計を100重量%と見なした場合、少なくとも1つの化合物C1/少なくとも1つの化合物C2/少なくとも1つの化合物C3の比率は、5~40/5~60/10~90重量%、特に、10~30/10~50/20~80重量%であり得る。
【0088】
一実施形態では、末端アルキン官能基(特に、化合物C1から)の数対チオール官能基(特に、化合物C2から)の数対炭素-炭素二重結合(特に、化合物C3から)の数の比率は、例えば、約1:3:3、1:2:4、1:2:12、2:3:3、または2:2:4であり得る。
【0089】
本発明者らは、少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの化合物C3と比較して少なくとも1つの化合物C2(チオール基を含む)の比率を増大させることにより(すなわち、他の2つの化合物C1およびC3と比較して、比較的多い量のチオール基含有化合物C2を使用した場合)、得られるポリマーのネットワーク密度が減少する一方、ポリマーの均一性およびその生分解性が高まることを見出した。
【0090】
樹脂組成物は、少なくとも1つの光開始剤をさらに含む。樹脂組成物中の少なくとも1つの光開始剤の存在により、チオール-イン-アルケン反応におけるイン成分、チオール成分、およびアルケン成分間の反応の開始が促進され得る。そのため、少なくとも1つの光開始剤の存在により、重合速度(速さ)が増加し得、かつ/または硬化時間が低減され得る。結果として、少なくとも1つの光開始剤の存在におより、樹脂組成物が印刷方法、特に、典型的に印刷対象が層ごとに形成され、次の層を形成する前に前の層が実質的に硬質化または硬化されている必要がある三次元印刷方法のためのインクとして、またはインク中で使用される場合に特に有利となる。さらに、光開始剤を使用することにより、特に、重合を開始/促進されることが想定される樹脂組成物のまたは樹脂組成物内の特定の位置または領域に関して、例えば、適切なエネルギー搬送活性ビームをその特定の位置または領域に向けることによって、所望に応じてチオール-イン-アルケン反応を選択的に制御することができ、それにより、印刷方法の結果として高い精細度での特定の構造の形成が可能となる。
【0091】
本明細書で使用される「光開始剤」という用語は特に、エネルギー搬送活性ビーム(電磁放射線など)により、例えば、それを照射すると活性化され得る化合物を表す。エネルギー搬送ビームによって活性化されると、光開始剤は、特に、そのラジカルへと転化され得る。そのため、光開始剤は、特に、ラジカル発生光開始剤であり得る。
【0092】
光開始剤は、特に、タイプI光開始剤またはタイプII光開始剤であり得る。
【0093】
光開始剤は、特に、紫外線活性光開始剤および/または可視光活性光開始剤であり得る。換言すれば、光開始剤は、特に、紫外線波長領域(例えば、10~380nm、特に200~380nmの波長範囲)にある電磁放射線によって、および/または可視光の波長領域(例えば、380~780nmの波長範囲)にある電磁放射線によって活性化され得る化合物であり得る。
【0094】
光開始剤は、電磁放射線により活性化されることによって、樹脂組成物中のイン成分、チオール成分、およびアルケン成分間のチオール-イン-アルケン反応を開始させることができる限り、特に限定されない。
【0095】
一実施形態では、光開始剤は、キノン化合物、カンファキノン、アジド化合物、アゾ化合物、特に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化化合物、特に過酸化ベンゾイル、ジスルフィド化合物、ビス-イミダゾール化合物、ハロゲン化アルキル、アルキルチオシアネート、ホスフィンオキシド化合物、置換または非置換のチオキサントン、置換または非置換のベンゾフェノン、またはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つ化合物であり得る。「置換」という用語は、特に、置換基が光開始剤の反応性を実質的にに低減しない限り、上で定義されるようなものに対応し得る。当業者には周知であるように、これらの化合物は、活性エネルギーによって活性化されると、非共有の価電子または少なくとも1つの非共有の電子対を有するラジカルおよび/または部分を形成し得る。
【0096】
光開始剤の好適な例としては、チオキサンテン-9-オン、2-クロロ;9H-チオキサンテン-2-カルボン酸、9-オキソ-、エチルエステル;2,4,6-トリメチルベンゾフェノン;2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン;2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート;1-[4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン;酸化硫化エルビウム;2-エチルアントラキノン;ベンゾイルギ酸エチル;2-ヒドロキシ-[4'-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]-2-メチルプロパン;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン;1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン;ベンゾイルギ酸メチル;4-(4-メチルフェニルチオ)-ベンゾフェノン;1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム;4-フェニルベンゾフェノン;ホスフィンオキシド、トリフェニル-;ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、a-[2-(4-クロロベンゾイル)ベンゾイル]-w-[[2-(4-クロロベンゾイル)ベンゾイル]オキシ]-;4,4'-ビス(メチルエチルアミノ)ベンゾフェノン;ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート;d,l-カンファキノン;1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン;9,10-ジブトキシアントラセン;2,2-ジエトキシアセトフェノン;2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン;2,3-ジヒドロキシ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェニル-1H-インデン;アントラキノン,2-エチル-;1H-アゼピン-1-プロパン酸、ヘキサヒドロ-、2,2-ビス[[(1-オキソ-2-プロペニル]オキシ)メチル]ブチルエステル;ベンゾフェノン,4,4'-ビス(ジエチルアミノ)-;ビス(エタ(5)-シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-[ピロール-1-イル]-フェニル)チタニウム;2,2-ビス-(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2-ビイミダゾリル;ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド;ベンゾフェノン;ベンゾフェノン,2-メチル-;ベンゾフェノン,3-メチル-;ベンゾフェノン,4-メチル-;エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート;2-イソプロピルチオキサントン;4-イソプロピルチオキサントン;メチル-2-ベンゾイルベンゾエート;{a-2-(フェニルカルボニル)ベンゾイルポリ(オキシエチレン)-ポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]-ポリ(オキシエチレン)}2-(フェニルカルボニル)ベンゾエート;{a-4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルポリ(オキシエチレン)-ポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]-ポリ(オキシエチレン)}4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート;1,3-ジ({a-2-フェニルカルボニルベンゾイルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({a-2-(フェニルカルボニル)ベンゾイルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパン;1,3-({-4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({-4-(ジメチルアミノ)ベンゾイルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパン;1,3-ジ({a-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル]オキシ}アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)])オキシ]-2,2-ビス({a-[1-メチルエチレン]})オキシメチル)プロパン;ポリ{1-[4-(フェニルカルボニル)-4'-(メチルジフェニルスルフィド)]エチレン};ポリ{1-[4-(フェニルカルボニル)フェニル]エチレン;1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン;ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;ポリマーベンゾフェノン誘導体;ポリマーチオキサントン誘導体;ポリマーアミノベンゾエート;オキシ-フェニル酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル;オキシ-フェニル酢酸2-[2-オキソ-2-フェニルーアセトキシ-エトキシ]-エチル;ベンゾイルベンゾエート、分岐ポリオールを有するエステル;1-(4-[(4-ベンゾイルフェニル)チオ]フェニル-2-メチル-2-[(4-メチルフェニル)スルフォニル]-1-プロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4-モルホリノブチロフェノン;カルボキシメトキシベンゾフェノンおよびポリテトラメチレングリコール250のジエステル;カルボキシメトキシ-ベンゾフェノンおよびポリエチレングリコール200のジエステル;(ジメチルアミノ)ベンゾエート、分岐ポリオールを有するエステル;2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート;2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチル-2-プロパノン;(メチルアミノ)ジエタン-2,1-ジイルビス(4-ジメチルアミノアミノベンゾエート);2-(4-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン;オリゴ-[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-((4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン];9-オキソ-9H-チオキサンテン-カルボキシレート、分岐ポリオールを有するエステル;およびフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、Ivocerin、テトラアシルゲルマニウム化合物が挙げられる。
【0097】
光開始剤の特に好適な例は、Irgacure TPO-LおよびIrgacure 819の混合物を表す。さらに、Ivocerinは、その生体適合性の高の観点から特に有利であり得る。
【0098】
光開始剤のさらなる適切な例は、国際公開第2013/052328 A1号の17~19頁、および国際公開第2012/126695 A1号の13頁に開示され、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
少なくとも1つの光開始剤の含有量は、特に、樹脂組成物の全重量に対して、0.1~20重量%、例えば、0.2~15重量%、特に0.5~12.5重量%、特に1~10重量%、特に2~8重量%であり得る。
【0100】
樹脂組成物は、少なくとも1つの安定化剤、特に、特定の安定化剤の組み合わせをさらに含む。樹脂組成物中の少なくとも1つの安定化剤の存在により、樹脂組成物の貯蔵安定性が改善される。少なくとも1つの安定化剤(またはいくつかの安定化剤の組み合わせ)により、特に、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する化合物C1および/または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有化合物C3の、少なくとも2つのチオール官能基を有する化合物C2との早期反応(特に、早期の開始および/または伝播)が回避または少なくとも低減され得る。
【0101】
一実施形態では少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤を含む。本明細書で使用される「ラジカル捕捉剤」という用語は、特に、ラジカル(非共有の電子対を有する化合物など)との反応を起こし、それにより、そのラジカルを除去または捕捉し得る化合物を表し得る。特に、ラジカル捕捉剤は、フェノール系ラジカル捕捉剤またはフェノール系抗酸化剤を含み得る。ラジカル捕捉剤の好適な例としては、ヒドロキノン、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)、t-ブチルカテコール、ピロガロールまたはそのエーテル、アントラリン、オキシヒドロキノン、没食子酸プロピル、没食子酸ラウリル、ブチルヒドロキシトルエン(BHT、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソールおよび/または3-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)、および/またはジ-もしくはトリヒドロキシベンゾアルデヒド、特に、2,4-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(2,4-DHB)、3,4-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(3,4-DHB)、3,5-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(3,5-DHB)、2,5-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(2,5-DHB)、2,3-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(2,3-DHB)、および/または2,3,4-トリヒドロキシベンゾアルデヒド(2,3,4-THB)が挙げられる。ラジカル捕捉剤の特定の好適な例としては、ピロガロール、アントラリン、オキシヒドロキノン、没食子酸プロピル、BHT、および上で例示されたジ-またはトリヒドロキシベンゾアルデヒドが挙げられる。
【0102】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのリン含有化合物、特に、少なくとも1つのホスホン酸および/または少なくとも1つのリン酸および/またはそれらの誘導体(特に、エステル)を含む。そのような安定化剤化合物は、(早期の)チオールのマイケル付加反応を抑制するのに特に好適であり得る。ホスホン酸の好適な例としては、アルキルホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリールホスフィン酸、例えばフェニルホスフィン酸およびベンジルホスフィン酸、ならびに重合可能な置換基を保有するホスホン酸が挙げられる。リン酸および/またはそれらの誘導体の好適な例としては、ヒドロキシ基の一部(特に、すべてではなく一部のみ)がエステル化されているリン酸、例えば、以下の構造式で表される、「Miramer A99」として市販されているリン酸2‐ヒドロキシエチルメタクリレートエステルが挙げられる。
【化11】
【0103】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つの錯化剤(キレート剤)を含む。本明細書で使用される「錯化剤」または「キレート剤」という用語は、特に、錯体においてリガンドとして作用することにより、別の化合物(すなわち、錯化化合物)を遮断またはブロックし得る化合物を表し得る。特に、錯化剤は、少なくとも1つの芳香族アゾ化合物、より具体的には、アゾ基に対するオルト位にヒドロキシ基を有する少なくとも1つの芳香族アゾ化合物を含み得る。その好適な例としては、スーダン2、スーダンオレンジ、4-フェニルアゾフェノール、2,2-ジヒドロキシアゾベンゼン、トロパエポリン(Tropaepolin)O、およびチアゾリルアゾレゾルシノールが挙げられる。さらなる好適な錯化剤としては、シュウ酸アンモニウム(AO)および/またはエチレンビス(ジフェニルホスフィン)(EBP)が挙げられる。
【0104】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤、少なくとも1つのリン含有化合物、特に少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体を含む。
【0105】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に、少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤と、少なくとも1つの錯化剤、特に、少なくとも1つの芳香族アゾ化合物とを含む。
【0106】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤、少なくとも1つのリン含有化合物、特に少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体と、少なくとも1つの錯化剤、特に少なくとも1つの芳香族アゾ化合物とを含む。
【0107】
少なくとも1つの安定化剤の含有量(または安定化剤の全含有量)は、特に、樹脂組成物の全重量に対して、0.001~10重量%、例えば、0.01~7.5重量%、特に0.1~6重量%、特に0.5~5重量%、特に2~4重量%であり得る。例えば、少なくとも1つのラジカル捕捉剤および/または少なくとも1つのリン含有化合物は、樹脂組成物の全重量に対して、0.1~10重量%、例えば、0.2~7.5重量%、特に0.5~6重量%、特に1~5重量%、特に2~4重量%の量で含まれ得る一方、少なくとも1つの錯化剤は、樹脂組成物の全重量に対して、0.001~5重量%、例えば、0.01~2.5重量%、特に0.1~2重量%、特に0.25~1.5重量%、特に0.5~1重量%の量で含まれ得る。
【0108】
一実施形態では、樹脂組成物は、顔料、無機充填剤、有機充填剤、分散剤、レベリング剤、スリップ剤、光吸収体、レオロジー改質剤、および消泡添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含み得る。
【0109】
顔料、無機充填剤、および/または有機充填剤などの添加剤の存在により、チオール-イン-アルケン反応によって得られる生成物、例えば、樹脂組成物を利用する印刷方法の生成物には、所望される追加の特定の目的に合わせて作られた有利な特性が備えられ得る。樹脂組成物中の分散剤、レベリング剤、スリップ剤、および/または光吸収体の存在は、チオール-イン-アルケン反応の効率を改善する、ならびに/または樹脂組成物の、および形成されるポリマーネットワークの均一性を高めるのに特に有用であり得る。中でも、レベリング剤およびスリップ剤は、光造形法プロセスにおける膜形成に影響を及ぼし得る。
【0110】
顔料は、有機顔料または無機顔料であり得る。顔料は特に限定されず、樹脂組成物におけるイン成分、アルケン成分、およびチオール成分間のチオール-イン-アルケン反応を実質的に損なわない限り、例えば印刷に通例使用される任意の顔料が使用され得る。顔料の好適な例は、例えば、国際公開第2008/074548号の段落[0128]~[0138]、米国特許第6,045,607号の14欄39行目~15欄46行目、国際公開第2005/049744号の12~16頁に開示され、これらはさらに追加の参照を提供し、これらのすべての開示は参照により本明細書に組み込まれる。顔料は、樹脂組成物における分散性を改善すべく表面処理されてもよい。
【0111】
無機充填剤は、樹脂組成物におけるイン成分、アルケン成分、およびチオール成分間のチオール-イン-アルケン反応を実質的に損なわない限り、特に限定されない。特に、無機充填剤は、例えば印刷方法によりチオール-イン-アルケン反応後に得られる生成物が、インプラント、代用骨、および/または歯科用製品、例えば義歯として使用される場合に特に好適である、カルシウムカーボネート、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、リン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウム、および/またはヒドロキシアパタイトのいずれか1つ(または組み合わせ)であり得る。無機充填剤のさらなる適切な例は、国際公開第2013/052328 A1号の24~27頁に開示され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
有機充填剤は、樹脂組成物におけるイン成分、アルケン成分、およびチオール成分間のチオール-イン-アルケン反応を実質的に損なわない限り、特に限定されない。特に、有機充填剤は、例えば印刷方法により得られる、チオール-イン-アルケン反応後に得られる生成物がインプラント、代用骨、および/または歯科用製品、例えば義歯として使用される場合に特に好適である、ヘパリン、コラーゲン、および/または、ゼラチンであり得る。さらに、有機充填剤は、生理学的活性化合物、例えば、タンパク質、酵素、ペプチド、抗体、および薬などを含み得る。有機充填剤のさらなる適切な例は、国際公開第2013/052328 A1号の24~27頁、および国際公開第2012/103445 A2号の段落を跨ぐ7~8頁に開示され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
分散剤は、樹脂組成物におけるイン成分、アルケン成分、およびチオール成分間のチオール-イン-アルケン反応を実質的に損なわない限り、特に限定されない。分散剤の好適な例としては、Disper Byk 102、Disper Byk 106、Disper Byk 110、Disper Byk 162、Disper Byk 182、Disper Byk 2000、Disper Byk 2008、Disper Byk 2025、Disper Byk 2164、およびDisper Byk 2205が挙げられる。
【0114】
レベリング剤は、樹脂組成物におけるイン成分、アルケン成分、およびチオール成分間のチオール-イン-アルケン反応を実質的に損なわない限り、特に限定されない。レベリング剤の好適な例としては、Byk-302、Byk-350、Byk-399、Byk-381、およびByk-3550が挙げられる。
【0115】
スリップ剤は、樹脂組成物におけるイン成分、アルケン成分、およびチオール成分間のチオール-イン-アルケン反応を実質的に損なわない限り、特に限定されない。スリップ剤の好適な例としては、Byk-307、Byk-377、Ceraflour 991、およびCeraflour 925が挙げられる。
【0116】
光吸収体は、樹脂組成物におけるイン成分、アルケン成分、およびチオール成分間のチオール-イン-アルケン反応を実質的に損なわない限り、特に限定されない。特に、光吸収体は、紫外線および/または可視光吸収体であり得る。光吸収体の好適な例としては、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル;ブチルメトキシジベンゾイルメタン;ベンジリデンカンファスルホン酸;オクチルトリアゾン;フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸;オクトクリレン;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸;3-ベンジリデン-ボルナン-2-オン;4-tert-ブチル-4'-メトキシ-ジベンゾイル-メタン;2-[-4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸へキシルエステル;ジオクチルブタアミドトリアゾン;2-エチルヘキシル-2-ヒドロキシベンゾエート;および4-メチルベンジリデンカンファが挙げられる。
【0117】
レオロジー改質剤は、樹脂組成物におけるイン成分、アルケン成分、およびチオール成分間のチオール-イン-アルケン反応を実質的に損なわない限り、特に限定されない。レオロジー改質剤の好適な例としては、Tixogel-EZ 100;Viscobyk-4010;Rheocin;およびRheotix-240が挙げられる。
【0118】
消泡添加剤は、樹脂組成物におけるイン成分、アルケン成分、およびチオール成分間のチオール-イン-アルケン反応を実質的に損なわない限り、特に限定されない。消泡添加剤の好適な例は、Byk-088;Byk-1790;Byk-1794;およびByk-1794が挙げられる。
【0119】
顔料、無機充填剤、有機充填剤、分散剤、レベリング剤、スリップ剤、光吸収体、レオロジー改質剤、および消泡添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤の含有量、特に、その全含有量は、樹脂組成物の全重量に対して、0.1~70重量%、例えば、0.2~60重量%、特に0.5~50重量%、特に1~40重量%、特に2~30重量%であり得る。
【0120】
さらなる成分または含有物は、樹脂組成物中に含有され得る。
【0121】
例えば、特にイン、チオール、および/またはアルケンモノマーと共重合し得、かつそれにより、樹脂組成物の成分の一部またはすべての重合により得られる(コ)ポリマーにさらなる特定の特性を付与し得る、上記のイン、チオール、およびアルケンモノマー以外のさらなるモノマーは、樹脂組成物中に含有され得る。
【0122】
また、分散剤および/または湿潤剤が樹脂組成物中に含有され得る。
【0123】
特に、樹脂組成物は、分散剤および/または湿潤剤として好適な界面活性剤、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、および/または両性イオン性界面活性剤をさらに含有し得る。
【0124】
アニオン界面活性剤の好適な例としては、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、および/またはスルホネート基、例えば、アミノ酸誘導体、脂肪アルコールエーテルスルフェート、脂肪アルコールスルフェート、石鹸(例えば、ナトリウム石鹸および/またはカリウム石鹸)、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルスルフェート、オレフィンスルフェート、および/またはアルキルホスフェートを含む界面活性剤が挙げられる。
【0125】
カチオン界面活性剤の好適な例としては、第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウム化合物、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、N,N-ジアルキルイミダゾリン化合物、ジメチルジステアリルアンモニウム化合物、N-アルキルピリジン化合物、および/または塩化アンモニウムが挙げられる。
【0126】
非イオン界面活性剤の好適な例としては、エトキシレート、例えばアルコールのエトキシル化付加生成物、例えばポリオキシアルキレンポリオール、アミン、脂肪酸、アルキルフェノール、エタノールアミド、ポリシロキサン、および/または脂肪酸エステル、アルキルもしくはポリグリコールエーテル、例えば脂肪アルコールポリグリコールエーテルもしくは脂肪酸アミド、アルキルグリコシド、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート、および/またはトリアルキルアミンオキシド;ポリアルキレングリコールおよび/もしくはアミノポリアルキレングリコールを含むポリ(メタ)アクリル酸のエステルおよび/またはアミドが挙げられ、これらはすべて、一方の側でアルキル基により終端され得る。
【0127】
両性イオン性界面活性剤の好適な例としては、両性電解質(amphoteric electrolyte)(両性電解質(ampholyte)とも呼ばれる)、例えばアミノカルボン酸および/またはベンタインが挙げられる。
【0128】
追加の成分または含有物、特に分散剤および界面活性剤のさらなる適切な例は、国際公開第2013/087427 A1号の34~37頁に開示され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
樹脂組成物は、固体、半固体(ペースト状)、または液体であり得る。そのため、インモノマー、チオールモノマー、および/またはアルケンモノマーは典型的には液体であり、樹脂組成物は、特に、溶液、エマルション、または分散液(特に、固体-液体分散液、例えば懸濁液)であり得る。
【0130】
樹脂組成物は、特に、実質的に溶媒を含まなくてもよく、例えば、実質的に水を含まなくてもよい。本明細書で使用される「実質的に溶媒を含まない」という用語は、特に、樹脂組成物が、15重量%より多い、特に10重量%より多い、特に5重量%より多い、特に2重量%より多い、特に1重量%より多い溶媒を含まないことを表し得る。
【0131】
したがって、樹脂組成物は、特に、溶媒、例えば、極性溶媒または無極性溶媒、例えば、水、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、グリコール、1-プロパノール、2-プロパノール(IPA)、プロピレングリコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、およびブチレングリコールなど)、エーテル溶媒(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、およびテトラヒドロフラン(THF)など)、エステル溶媒(例えば酢酸エチルなど)、カーボネート溶媒(例えば、炭酸ジメチルおよび炭酸ジエチルなど)、ハロゲン化アルカン溶媒(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、および1,2-ジクロロエタンなど)、ニトリル溶媒(例えばアセトニトリルなど)、アルデヒドまたはケトン溶媒(例えばアセトンなど)、アミド溶媒(例えばジメチルホルムアミド(DMF)など)、スルホキシド溶媒(例えばジメチルスルホキシド(DMSO)など)、酸溶媒(例えばギ酸および酢酸など)、炭化水素溶媒(例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、およびオクタンなど)、または芳香族溶媒(例えばベンゼンおよびトルエンなど)を実質的に含有しない場合がある。
【0132】
一実施形態では、樹脂組成物は、少量の溶媒、例えば、上に列挙される溶媒のいずれか1つを含み得る。例えば、樹脂組成物は、最大で15重量%、特に最大で10重量%の溶媒を含み得る。これにより、樹脂組成物の粘度は適切に調節されて、特に、さもなければ粘度が非常に高くなる場合には下げられ得、これは、樹脂組成物の印刷可能性に関して有利となり得る。
【0133】
一実施形態では、樹脂組成物は実質的に溶媒を含まず、特に、実質的に水を含まず、樹脂組成物の少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3は、アリル官能基、アクリレート官能基、およびメタクリレート官能基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する。これにより、特定の有利な樹脂組成物を得ることができる。
【0134】
一実施形態では、少なくとも1つの化合物C1および少なくとも1つの化合物C3は、1つの(単一の)化合物を形成し得る。換言すれば、樹脂組成物は、少なくとも1つの末端アルキン官能基と少なくとも1つの炭素-炭素二重結合とを有する少なくとも1つの化合物C4を含み得る。一実施形態では、少なくとも1つの化合物C4は、少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの化合物C3に加えて含まれ得、例えば、樹脂組成物は、少なくとも1つの化合物C4、少なくとも1つの化合物C2、および少なくとも1つの化合物C3を含み得る。別の実施形態では、少なくとも1つの化合物C4は、少なくとも1つの化合物C1および少なくとも1つの化合物C3の代わりに含まれ得、例えば、樹脂組成物は、少なくとも1つの化合物C4および少なくとも1つの化合物C2を含み得る。化合物C4の少なくとも1つの末端アルキン官能基および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合は、特に、上記に示されるものであり得る。さらに、少なくとも1つの化合物C4を含む樹脂組成物は、上に詳細に記載されるように、さらなる含有物または成分をさらに含み得る。少なくとも1つの化合物C4を含むことにより、樹脂組成物は、例えば、高い反応(重合)速度(高い硬化速さ)、残留モノマーの特に低い含有量、得られるポリマーの特に低い収縮性、および得られるポリマーの優れた機械的特性(例えば、弾性率)などの特に有利な特性を示し得る。例えば、少なくとも1つの化合物C4は、少なくとも1つの末端アルキン官能基および少なくとも1つのアリル官能基を有し得る。
【0135】
第2の態様において、以下にさらに詳細に記載されるように、本発明は、例えば印刷方法に好適であり得るインクとしての、またはインクにおける、本明細書に記載の樹脂組成物の使用に関する。特に、樹脂組成物は、インク(印刷用インク)として使用され得、すなわち、樹脂組成物自体がインクとして直接使用され得る。代替的には、樹脂組成物は、インク(印刷用インク)において、すなわち、典型的にインクに使用される1または複数の適切なさらなる成分または含有物と共にインクの成分または含有物として使用され得る。
【0136】
第3の態様において、本発明は、キットであって、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、少なくとも1つの光開始剤と、任意で少なくとも1つの安定化剤とを含む、キットに関する。
【0137】
少なくとも1つの化合物C1、少なくとも1つの化合物C2、少なくとも1つの化合物C3、少なくとも1つの光開始剤、ならびに任意の少なくとも1つの安定化剤は、特に、本発明に係る樹脂組成物に関して上で詳細に定義されているものであり得る。
【0138】
成分は、特に、キット、特にパーツキットにおいて空間的に離れた様式で提供され得る。特に、一方では成分C1およびC3、他方では成分C2は、キットの別個の区画に提供され得る。これは、成分C1および/またはC3、ならびに/または少なくとも1つの成分C2が、暗所で(例えば、光非透過材料によってパッケージ化されるとき)および/または低温で(例えば、10℃より高くない、特に5℃より高くない、例えば0℃より高くない温度で)貯蔵されている場合でさえも、それ(ら)が他方の成分と/互いに(早期に)反応する傾向がある程度に反応性である場合に有利となり得る。さらに、一方で少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する化合物C1および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する化合物C3、ならびに他方で少なくとも2つのチオール官能基を有する化合物C2が、印刷の直前まで組み合わされない別個の組成物中に提供される(例えば、パーツキットにおいて空間的に離れた様式で)場合には、安定化剤は不要であり得る(が、それにもかかわらず、例えば少量で含有され得る)。
【0139】
樹脂組成物に関して上で詳細に記載されるように、さらなる含有物または成分、特に、光酸;光塩基;顔料、無機充填剤、有機充填剤、分散剤、レベリング剤、スリップ剤、光吸収体、レオロジー改質剤、および消泡添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤;イン、チオール、およびアルケンモノマー以外のさらなるモノマー;界面活性剤、分散剤、湿潤剤、および/または捕捉剤は、互いから独立して、化合物C1およびC3の区画ならびに/または化合物C2の区画、ならびにキットの任意の追加の区画のいずれか1つに含有され得る。
【0140】
特に、キットは、2、3、4、5、または複数の成分のシステム、例えば、2K系、3K系、4K系、および5K系などであり得る。
【0141】
使用前に、例えば、印刷方法において、キットの別個の区画に含有された成分が混合される。混合は、手動で、または適切なデバイスもしくは分配器によって(半)自動的に実行され得る。キットの別個の区画に含有される成分は、例えば印刷方法において、使用前に、特に、48時間以下、24時間以下、12時間以下、6時間以下、4時間以下、3時間以下、2時間以下、90分間以下、60分間以下、45分間以下、30分間以下、25分間以下、20分間以下、15分間以下、10分間以下、7.5分間以下、5分間以下、4分間以下、3分間以下、2分間以下、90秒間以下、60秒間以下、45秒間以下、30秒間以下、25秒間以下、20秒間以下、15秒間以下、10秒間以下、7.5秒間以下、5秒間以下、4秒間以下、3秒間以下、2秒間以下、1秒間以下、混合され得る。
【0142】
第4の態様において、以下にさらに詳細に記載されるように、本発明は、樹脂組成物、特に、例えば印刷方法に好適であり得るインクとしての、またはインクにおける使用のために好適な、本明細書に記載の樹脂組成物を調製するための本明細書に記載のキットの使用に関する。樹脂組成物を調製するために、キットの別個の区画に含有される成分は混合され得る。混合は、手動で、または適切なデバイスもしくは分配器によって(半)自動的に実行され得る。
【0143】
第5の態様において、本発明は、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3とを含む第1のインク部分を提供する(例えば、印刷する)段階と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2を含む第2のインク部分を提供する(例えば、印刷する)段階であって、第1のインク部分および第2のインク部分のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの光開始剤をさらに含む、提供する段階と、第1のインク部分および第2のインク部分から樹脂組成物を形成し(例えば、第1のインク部分および第2のインク部分を混合することによって)、すぐ後に、樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射して、樹脂組成物の少なくとも一部の重合を引き起こして、ポリマーを得る段階と、を含む、印刷方法に関する。
【0144】
少なくとも1つの化合物C1、少なくとも1つの化合物C2、少なくとも1つの化合物C3、および少なくとも1つの光開始剤は、特に、本発明に係る樹脂組成物に関して上で詳細に定義されているものであり得る。
【0145】
本明細書で使用される「すぐ」という用語は、特に、その間に顕著な重合反応、特に、チオール-イン-アルケン反応が生じない期間を表し得、この期間は、当業者には明らかであろうように、個々の成分の反応性に応じて大きく変動し得る。そのため、「すぐ」という用語は、例えば、48時間以下、24時間以下、12時間以下、6時間以下、4時間以下、3時間以下、2時間以下、90分間以下、60分間以下、45分間以下、30分間以下、25分間以下、20分間以下、15分間以下、10分間以下、7.5分間以下、5分間以下、4分間以下、3分間以下、2分間以下、90秒間以下、60秒間以下、45秒間以下、30秒間以下、25秒間以下、20秒間以下、15秒間以下、10秒間以下、7.5秒間以下、5秒間以下、4秒間以下、3秒間以下、2秒間以下、1秒間以下を意味し得る。
【0146】
一実施形態では、第1のインク部分および第2のインク部分の少なくとも1つは、本発明に係る樹脂組成物に関して上で詳細に定義されるように、少なくとも1つの安定化剤、特に、少なくとも1つの安定化剤または安定化剤の組み合わせ(この場合、1または複数の種類の安定化剤が第1のインク部分に含有され得、1または複数の(他の)種類の安定剤が第2のインク部分に含有され得る)をさらに含み得る。一方で少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する化合物C1および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する化合物C3、および他方で少なくとも2つのチオール官能基を有する化合物C2が、印刷の直前まで組み合わされない別個のインク部分に提供される場合に、安定化剤は不要であり得るが、それにもかかわらず、重合反応、特にチオール-イン-アルケン反応を適切に制御または調節するために安定化剤の使用が有利であり得る。このため、少なくとも1つの安定化剤は、長時間にわたって貯蔵されるように構成された樹脂組成物中に含有され得るため、少量で含有されることが十分であり得る。
【0147】
一実施形態では、本方法は、特に、第1のインク部分および/または第2のインク部分を提供する(例えば、印刷する)前に(before)(前に(prior to))および/または提供する際に(間に)、第1のインク部分および/または第2のインク部分を加熱する段階をさらに含む。これは、例えば、第1のインク部分および/または第2のインク部分の粘度が高い場合に有利であり得、その結果、第1のインク部分および/または第2のインク部分の粘度が加熱により低下し、それにより印刷プロセスが促進され得る。第1のインク部分および/または第2のインク部分の高い粘度は、例えば、少なくとも1つの化合物C1が、モノマーが互いに様々な相互作用(例えば、水素結合)を呈する少なくとも2つの末端アルキン官能基を有する場合、ならびに/または第1のインク部分および/もしくは第2のインク部分が大量の充填剤もしくは任意の他の粘度を増大させる化合物を含む場合に生じ得る。
【0148】
一実施形態では、第1のインク部分および/または第2のインク部分は、40℃~120℃、例えば、50℃~100℃の範囲内の温度まで加熱され得る。
【0149】
第6の態様において、本発明は、本明細書に記載の樹脂組成物を提供する(例えば、印刷する)段階と、樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射して、樹脂組成物の少なくとも一部の重合を引き起こして、ポリマーを得る段階とを含む、印刷方法に関する。
【0150】
一実施形態では、本方法は、特に、樹脂組成物を提供する前に(before)(前に(prior to))および/または提供する(例えば、印刷する)際に(間に)、樹脂組成物を加熱する段階をさらに含む。これは、例えば、樹脂組成物の粘度が高い場合に有利であり得、その結果、樹脂組成物の粘度が加熱により低下し、それにより印刷プロセスが促進され得る。樹脂組成物の高い粘度は、例えば、少なくとも1つの化合物C1が、モノマーが互いに様々な相互作用(例えば、水素結合)を呈する少なくとも2つの末端アルキン官能基を有する場合、ならびに/または樹脂組成物が大量の充填剤もしくは任意の他の粘度を増大させる化合物を含む場合に生じ得る。
【0151】
一実施形態では、樹脂組成物は、40℃~120℃、例えば、50℃~100℃の範囲内の温度まで加熱され得る。
【0152】
一実施形態では、印刷方法は、三次元印刷方法であり得る。
【0153】
本明細書で使用される「三次元印刷方法」という用語は、特に、印刷方法の生成物が、3方向(例えば、長さ、幅、および高さ)に延在することを表す。そのため、三次元印刷方法の生成物は、特に、三次元物体であり得る。
【0154】
三次元印刷方法は、特に、光造形法(SLA)、二光子吸収(TPA)重合、デジタルライトプロセッシング(DLP)、反応性レーザ焼結(RLS)、ソリッドグラウンド硬化(SGC)、マルチジェットモデリング(MJM)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであり得る。その高い精細度の観点から、光造形法(SLA)が好ましい場合がある。
【0155】
樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射する段階(照射段階または硬化段階とも呼ばれ得る)において、樹脂組成物の照射された部分においてチオール-イン-アルケン反応が引き起こされ得、その結果、照射された部分においてイン成分、チオール成分、およびアルケン成分が架橋(重合)反応を起こし、結果的に、樹脂組成物の照射された部分においてポリマーが形成される。
【0156】
特に、得られるポリマーの所望のパターンまたは構造を形成するように、照射は制御された様式で、特にコンピュータシステムによって制御されて実行され得る。
【0157】
「樹脂組成物の少なくとも一部」という用語は、特に、樹脂組成物の100%がエネルギー源に曝されていないことを意味し得る。特に、「樹脂組成物の少なくとも一部」という用語は、樹脂組成物の少なくとも5%、特に少なくとも10%、特に少なくとも15%、特に少なくとも20%、特に少なくとも25%、特に少なくとも30%、特に少なくとも35%、特に少なくとも40%、特に少なくとも45%、特に少なくとも50%、特に少なくとも55%、特に少なくとも60%、特に少なくとも65%、特に少なくとも70%、特に少なくとも75%、特に少なくとも80%がエネルギー源に曝されることを意味してもよいし、特に、樹脂組成物の95%以下、特に90%以下、特に85%以下、特に80%以下、特に75%以下、特に70%以下、特に65%以下、特に60%以下、特に55%以下、特に50%以下、特に45%以下、特に40%以下、特に35%以下、特に30%以下、特に25%以下、特に20%以下がエネルギー源に曝されることを意味してもよい。
【0158】
不活性ガス雰囲気下(例えば、N、CO下、または希ガス、特にAr、大気下)で照射段階を実行することが有利であり得る一方、周囲ガス雰囲気下、例えば空気下、またはさらには(実質的に)純粋な酸素下でこの段階を実行することも可能である。
【0159】
照射段階の持続時間は特に限定されず、特に、印刷方法の種類および樹脂組成物の成分(特にそれらの反応性)に応じて、当業者によって適切に選択され得る。例えば、照射に好適な時間(持続時間)は、1ミリ秒~1時間、特に、1秒~1分間であり得る。
【0160】
照射の大きさは特に限定されず、特に、印刷方法の種類、樹脂組成物の成分、および段階の持続時間に応じて、当業者によって適切に選択され得る。例えば、大きさは、0.0001~20W/cm、特に、0.01~5W/cmであり得る。
【0161】
一実施形態では、本方法は、樹脂組成物の少なくとも一部を照射している間および/または照射した後に、ポリマーを後硬化する段階をさらに含み得る。そのため、照射段階は、後硬化段階を含み得るか、または後硬化段階が続き得、最初に形成されたポリマーにはさらにまたは再び活性エネルギーが提供される。例えば、光造形法の場合、後硬化段階において(最初に)形成されたポリマーには、紫外線がさらにまたは再び照射され得る。後硬化は、特に、例えば30~80℃の範囲内の高温で実行され得る。
【0162】
一実施形態では、エネルギー搬送活性ビームは、特に、電磁放射線(特に活性放射線)を含み得る。
【0163】
特に、エネルギー搬送活性ビームは、紫外線照射(例えば10~380nm、特に200~380nm、特に250~380nmの波長を有する)およ可視光照射(例えば380~780nmの波長を有する)からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0164】
一実施形態では、印刷方法は、溶媒を用いない印刷方法であり得る。特に、本発明に係る溶媒樹脂組成物に関して上で詳細に記載される溶媒は、好ましくは、印刷方法において使用されない。
【0165】
一実施形態では、本方法は、ポリマーを洗浄する段階、特に、ポリマーから未反応の残留モノマー(例えば、少なくとも1つの化合物C1、化合物C2、および化合物C3)を除去する段階をさらに含み得る。
【0166】
一実施形態では、洗浄する段階は、ポリマーを、アルカリ化合物、界面活性剤、および適切な溶媒を含む洗浄組成物と接触させることを含む。この方策をとることにより、アルカリ触媒チオール-エン反応および/またはチオール-イン反応に起因して残留モノマーは沈殿され得、そのように形成された沈殿物が洗浄組成物(例えば、洗浄用溶液)によって除去され得る。
【0167】
(任意の)洗浄段階について、特に洗浄組成物についてのさらなる詳細は、その開示が第5および第6の態様の印刷方法とも組み合わされ得る本発明の第11の態様に関して以下にさらに詳細に説明される。
【0168】
第7の態様において、本発明は、本明細書に記載の印刷方法により得ることができるポリマーに関する。ポリマーは、樹脂組成物の成分のみによって定義されなくてもよく、印刷方法によって得られた特定のパターンおよび/または(三次元)構造によって定義されてもよい。ポリマーの化学構造は、特に樹脂組成物の成分に依存し得るが、ポリマー内の架橋度に影響を及ぼし得る印刷方法の特定の条件にもまた依存し得る。一方で、ポリマーの幾何学構造は、特に印刷方法の特定の条件、例えば、印刷方法によってポリマーに付与された特定のパターンおよび/または(三次元)構造に依存し得るが、樹脂組成物の成分にもまた依存し得る。
【0169】
第8の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリマーを含むか、またはそれから形成される物品に関する。物品は、再成形などの任意のさらなる修飾を含むかまたは含まないポリマーからなってもよいし、物品は、特定の目的に応じて所望されるようにさらなる成分または含有物に加えてポリマーを含んでもよい。例えば、物品は、ポリマーと、ナノコーティングなどのコーティングとを含み得る。物品はまた、ポリマーから形成されてもよい。
【0170】
一実施形態では、物品は、医療用または生物医学用デバイスであり得る。医療用および/または生物医学用デバイスは、特に、インプラント、代用骨、代用組織、および歯科用製品からなる群から選択され得る。
【0171】
医療用および/または生物医学用デバイスは典型的には使用の際に人体または動物の体に曝されるため、物品は好ましくは生体適合性であるべきである。特に、物品は、物品と接触する人体または動物の体の部分の生理学的機能または特性を実質的に乱す/付与してはならない。さらに、物品は、物品と接触する人体または動物の体の部分に対して、いかなる有害な化合物またはいかなる別様に有害な化合物も放出してはならない。ポリマー、および結果的に物品も、チオール-イン-アルケン反応の結果として得られるため、ポリマーは非常に低い残留モノマー含有量、高い化学的安定性、および低い収縮性を有し、その結果、ポリマーおよび物品は、高度に生体適合性であるだけでなく、医療用および/または生物医学用デバイスとしても特に好適である。
【0172】
一実施形態では、物品(およびポリマー)は、実質的に生分解性であり得る。これは、例えば、化合物C1、C2、およびC3のうちの少なくとも1つ(例えば、少なくともC1、少なくともC2、少なくともC3、少なくともC1およびC2、少なくともC1およびC3、少なくともC2およびC3、またはC1、C2、およびC3のいずれか1つ)が含み、カルバメート官能基、カーボネート官能基、および/またはエステル官能基、または任意の他の加水分解性官能基、特にエステル官能基を含む場合に実現され得る。追加的に、または代替的に、物品(およびポリマー)の実質的な生分解性は、例えば、他の2つの化合物C1およびC3と比較して、比較的大量のチオール基含有化合物C2を使用することによって実現され得る。
【0173】
代替的な実施形態では、物品(およびポリマー)は、実質的に非生分解性であり得る。
【0174】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、別途具体的な記述がない限り、特に、少なくとも50%、特に少なくとも60%、特に少なくとも70%、特に少なくとも75%、特に少なくとも80%、特に少なくとも85%、特に少なくとも90%、特に少なくとも92.5%、特に少なくとも95%、特に少なくとも96%、特に少なくとも97%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%、特に最大で100%を表し得る。
【0175】
例えば、特定の持続的な機械的サポートが所望される場合に、生成物(例えば、ポリマーおよび/または物品)が少なくとも部分的生分解性であり、かつ少なくとも部分的に非生分解性であること、あるいは、インプラント、代用骨、および/または代用組織として生成物を使用する場合に特に有利となり得る、生成物の一部が比較的速く生分解する一方で、生成物の一部は比較的ゆっくりと生分解することもまた有利となり得る。そのような生成物は、特に、エーテル官能基、カルバメート官能基、および/またはカーボネート官能基の組み合わせ、特に、エーテル官能基とカルバメート官能基との組み合わせ、エーテル官能基とカーボネート官能基との組み合わせ、カルバメート官能基とカーボネート官能基との組み合わせ、およびエーテル官能基と、カルバメート官能基と、カーボネート官能基との組み合わせを含む樹脂組成物に由来し得る。
【0176】
一実施形態では、物品の表面の少なくとも一部は、コーティングによって、特にナノコーティングまたは単分子コーティングによって改質される。
【0177】
「物品の表面の少なくとも一部」という用語は、特に、物品の表面の少なくとも5%、特に少なくとも10%、特に少なくとも15%、特に少なくとも20%、特に少なくとも25%、特に少なくとも30%、特に少なくとも35%、特に少なくとも40%、特に少なくとも45%、特に少なくとも50%、特に少なくとも55%、特に少なくとも60%、特に少なくとも65%、特に少なくとも70%、特に少なくとも75%、特に少なくとも80%、特に少なくとも85%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%、特に100%がコーティングされているか、コーティングによって改質されていることを意味し得る。
【0178】
一実施形態では、コーティングは、抗菌コーティングであり得る。これにより、物品は、物品が医療用および/または生物医学用デバイスとして構成されている場合に特に有利になり得る、抗菌特性を備え得る。抗菌コーティング用の材料の好適な例としては、例えば、チオールのマイケル付加反応によって物品の表面上の(残った)チオール官能基に効率的に結合され(取り付けられ)得る第4級アミンが挙げられる。上記のように、樹脂組成物中のモノマーの比率は、チオール-イン-アルケン反応の完了後に形成されたポリマーにおいて、特にポリマーの、またはポリマーを含むかそれから形成される物品の表面上に一部のチオール官能基が残ったままになり得るように調節され得、この残留チオール官能基は、ポリマーまたは物品を第4級アミンなどのコーティング材料とカップリングすることができる結合部位として機能し得る。これにより、表面修飾またはコーティングされた、特に抗菌コーティングされたポリマーまたは物品を得ることができる。
【0179】
一実施形態では、物品は形状記憶物品であり、すなわち、形状記憶挙動を呈する。特に、物品は、本明細書に記載の樹脂組成物から得ることができる形状記憶ポリマーを含み得るかまたはそれからなり得る。
【0180】
本明細書で使用される「形状記憶」という用語は、温度変化などの外部の刺激(トリガ)によって誘発されて変形状態(一時的形状)から少なくとも部分的にその元の(永久)形状に戻るポリマーまたは物品の能力を表す。
【0181】
第9の態様において、本発明は、医療または生物医学用途における、本発明に係るポリマーまたは物品の使用に関する。
【0182】
特に、医療用途は、移植、骨代用または置換、組織代用または置換、および歯科用途からなる群から選択されるいずれか1つを含む。
【0183】
第10の態様において、本発明は、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、ラジカル捕捉剤、リン含有化合物、および錯化剤からなる群から選択される少なくとも1つの安定化剤とを含む、組成物に関する。
【0184】
少なくとも1つの化合物C1、少なくとも1つの化合物C2、少なくとも1つの化合物C3、ならびに少なくとも1つの安定化剤、特にラジカル捕捉剤、リン含有化合物、および錯化剤は、本発明に係る樹脂組成物に関して上で詳細に定義されているものであり得る。
【0185】
一実施形態では、組成物は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも2つの化合物C3を含み、特に、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能基(すなわち、アクリレートおよび/またはメタクリレート官能基)を有する化合物C3aと、アリルエーテルなどの少なくとも1つのアリル官能基を有する化合物C3bとを含む。そのため、組成物は、少なくとも1つ(メタ)アクリレート官能基を有する少なくとも1つの化合物C3aと、少なくとも1つのアリル官能基(特に、アリルエーテル)を有する少なくとも1つの化合物C3bと、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、ラジカル捕捉剤、リン含有化合物、および錯化剤からなる群から選択される少なくとも1つの安定化剤とを含み得る。
【0186】
本発明者らは、特定の安定化剤、すなわち、ラジカル捕捉剤、リン含有化合物、および/または錯化剤がまた、チオールモノマーと、インモノマーおよびアルケンモノマーのうちの少なくとも1つとを含む組成物を安定化させ(特に、その貯蔵安定性を高め)ることができることを見出した。少なくとも1つの安定化剤(またはいくつかの安定化剤の組み合わせ)により、特に、少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する化合物C1および/または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有化合物C3の、少なくとも2つのチオール官能基を有する化合物C2との早期反応(特に、早期の開始および/または伝播)が回避または少なくとも低減され得る。
【0187】
一実施形態では少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤を含む。本明細書で使用される「ラジカル捕捉剤」という用語は、特に、ラジカル(非共有の電子対を有する化合物など)との反応を起こし、それにより、そのラジカルを除去または捕捉し得る化合物を表し得る。特に、ラジカル捕捉剤は、フェノール系ラジカル捕捉剤またはフェノール系抗酸化剤を含み得る。ラジカル捕捉剤の好適な例としては、ヒドロキノン、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)、t-ブチルカテコール、ピロガロールまたはそのエーテル、アントラリン、オキシヒドロキノン、没食子酸プロピル、没食子酸ラウリル、ブチルヒドロキシトルエン(BHT、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソールおよび/または3-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)、および/またはジ-もしくはトリヒドロキシベンゾアルデヒド、特に、2,4-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(2,4-DHB)、3,4-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(3,4-DHB)、3,5-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(3,5-DHB)、2,5-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(2,5-DHB)、2,3-ジヒドロキシベンゾアルデヒド(2,3-DHB)、および/または2,3,4-トリヒドロキシベンゾアルデヒド(2,3,4-THB)が挙げられる。ラジカル捕捉剤の特定の好適な例としては、ピロガロール、アントラリン、オキシヒドロキノン、没食子酸プロピル、BHT、および上で例示されたジ-またはトリヒドロキシベンゾアルデヒドが挙げられる。
【0188】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのリン含有化合物、特に、少なくとも1つのホスホン酸および/または少なくとも1つのリン酸および/またはそれらの誘導体(特に、エステル)を含む。そのような安定化剤化合物は、(早期の)チオールのマイケル付加反応を抑制するのに特に好適であり得る。ホスホン酸の好適な例としては、アルキルホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリールホスフィン酸、例えばフェニルホスフィン酸およびベンジルホスフィン酸、ならびに重合可能な置換基を保有するホスホン酸が挙げられる。リン酸および/またはそれらの誘導体の好適な例としては、ヒドロキシ基の一部(特に、すべてではなく一部のみ)がエステル化されているリン酸、例えば、以下の構造式で表される、「Miramer A99」として市販されているリン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステルが挙げられる。
【化12】
【0189】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つの錯化剤(キレート剤)を含む。本明細書で使用される「錯化剤」または「キレート剤」という用語は、特に、錯体においてリガンドとして作用することにより、別の化合物(すなわち、錯化化合物)を遮断またはブロックし得る化合物を表し得る。特に、錯化剤は、少なくとも1つの芳香族アゾ化合物、より具体的には、アゾ基に対するオルト位にヒドロキシ基を有する少なくとも1つの芳香族アゾ化合物を含み得る。その好適な例としては、スーダン2、スーダンオレンジ、4-フェニルアゾフェノール、2,2-ジヒドロキシアゾベンゼン、トロパエポリン(Tropaepolin)O、およびチアゾリルアゾレゾルシノールが挙げられる。さらなる好適な錯化剤としては、シュウ酸アンモニウム(AO)および/またはエチレンビス(ジフェニルホスフィン)(EBP)が挙げられる。
【0190】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤、少なくとも1つのリン含有化合物、特に少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体を含む。
【0191】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に、少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤と、少なくとも1つの錯化剤、特に、少なくとも1つの芳香族アゾ化合物とを含む。
【0192】
一実施形態では、少なくとも1つの安定化剤は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤、少なくとも1つのリン含有化合物、特に少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体と、少なくとも1つの錯化剤、特に少なくとも1つの芳香族アゾ化合物とを含む。
【0193】
少なくとも1つの安定化剤の含有量(または安定化剤の全含有量)は、特に、樹脂組成物の全重量に対して、0.001~10重量%、例えば、0.01~7.5重量%、特に0.1~6重量%、特に0.5~5重量%、特に2~4重量%であり得る。例えば、少なくとも1つのラジカル捕捉剤および/または少なくとも1つのリン含有化合物は、樹脂組成物の全重量に対して、0.1~10重量%、例えば、0.2~7.5重量%、特に0.5~6重量%、特に1~5重量%、特に2~4重量%の量で含まれ得る一方、少なくとも1つの錯化剤は、樹脂組成物の全重量に対して、0.001~5重量%、例えば、0.01~2.5重量%、特に0.1~2重量%、特に0.25~1.5重量%、特に0.5~1重量%の量で含まれ得る。
【0194】
第11の態様において、本発明は、樹脂組成物を提供する段階であって、樹脂組成物が、(i)少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2とを含む、提供する段階と、樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射して、樹脂組成物の少なくとも一部の重合を引き起こして、ポリマーを得る段階と、ポリマーを、アルカリ化合物、界面活性剤、および溶媒を含む洗浄組成物と接触させる段階とを含む、印刷方法に関する。
【0195】
少なくとも1つの化合物C1、少なくとも1つの化合物C2、および少なくとも1つの化合物C3は、特に、本発明に係る樹脂組成物に関して上で詳細に定義されているものであり得る。さらに、樹脂組成物は、(樹脂)組成物に関して上で詳細に記載されるさらなる含有物または成分、特に、本明細書に例示されるように、少なくとも1つの光開始剤、少なくとも1つの安定化剤、例えばラジカル捕捉剤、リン含有化合物、および錯化剤;光酸;光塩基;顔料、無機充填剤、有機充填剤、分散剤、レベリング剤、スリップ剤、光吸収体、レオロジー改質剤、および消泡添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤;イン、チオール、および/またはアルケンモノマー以外のさらなるモノマー;界面活性剤;分散剤;湿潤剤;および/または捕捉剤を含み得る。
【0196】
また、樹脂組成物を提供する段階および/または樹脂組成物の少なくとも一部をエネルギー搬送活性ビームで照射する段階、ならびに印刷技法は、第5および第6の態様の印刷方法に関して上で詳細に記載されるように実行され得る。同様、第5および第6の態様の印刷方法に関して上で例示される追加の処理段階、例えば加熱段階および/または後硬化段階は、第11の態様の印刷方法において実装され得る。
【0197】
第11の態様に係る印刷方法は、特に、ポリマーを、アルカリ化合物、界面活性剤、および溶媒を含む洗浄組成物と接触させる段階によって特徴付けられる。この方策をとることにより、アルカリ触媒チオール-エン反応および/またはチオール-イン反応に起因して残留モノマーは沈殿され得、そのように形成された沈殿物が洗浄組成物(例えば、洗浄用溶液)によって除去され得る。そのため、未反応の残留モノマー(例えば、少なくとも1つの化合物C1、化合物C2、および化合物C3)がポリマーから除去され得、結果として、ポリマーが洗浄され得る。
【0198】
その後、沈殿物は洗浄用溶液から、例えば、洗浄用溶液の濾過、遠心分離、および/またはデカンテーションによって除去され得、その結果、洗浄用溶液はさらなる洗浄段階において再使用され得る。そのため、一実施形態では、本方法は、ポリマーを洗浄組成物と接触させる段階の後に、洗浄組成物から固体(例えば、沈殿物)を除去する段階をさらに含み得る。特に、洗浄組成物から固体を除去する段階は、洗浄組成物の濾過、遠心分離、および/またはデカンテーションのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0199】
ポリマーを洗浄組成物と接触させる段階は、ポリマーを洗浄組成物ですすぐまたはパージすることおよび/またはポリマーを洗浄組成物のナカイに浸または浸漬させることを含み得る。
【0200】
一実施形態では、ポリマーを洗浄組成物と接触させる段階は、20℃~60℃の温度で、かつ/または超音波の適用の際に実行される。特に、ポリマーを洗浄組成物と接触させる段階は、20℃~60℃、例えば25℃~50℃、特に30℃~40℃の(高)温度で実行され得る。代替的に、または追加的に、ポリマーを洗浄組成物と接触させる段階は、超音波(ultrasonic)(超音波(ultrasound))の適用の際に実行され得る。この目的で、例えば、好ましくは温度制御または加熱機器を備える超音波浴が使用され得る。この/これらの方策をとることにより、洗浄段階の効率が高まり得、洗浄段階は、短期間の内に実現され得る。
【0201】
洗浄組成物は、特に、洗浄用溶液、すなわち透明な溶液であり得るが、洗浄分散液または洗浄懸濁液であり得る一方、(透明な)洗浄用溶液が好ましい。
【0202】
洗浄組成物は、アルカリ化合物と、界面活性剤(以下、「洗浄組成物界面活性剤」とも呼ばれ得る)と、溶媒(以下、「洗浄組成物溶媒」とも呼ばれ得る)とを含む。さらなる含有物が洗浄組成物中に含まれ得る(がその必要はない)。
【0203】
本明細書で使用される「アルカリ化合物」という用語は、特に、アルカリまたは塩基特性を有する化合物、すなわち、アルカリ化合物を含有する組成物(例えば溶液)のpH値を高めることができる場合がある化合物を表し得る。特に、アルカリ化合物は、周囲の媒体からプロトン(H)もしくはヒドロニウムイオン(H)を捕捉することができ、かつ/または周囲の媒体に水酸化イオン(OH)を放出することができる場合がある。
【0204】
一実施形態では、アルカリ化合物は、無機および/または有機化合物を含み得る。好適な例としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、アンモニア、アンモニウム誘導体、エタノールアミンなどの有機アミン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0205】
一実施形態では、洗浄組成物界面活性剤は、アニオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、一価カチオン界面活性剤などのカチオン界面活性剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0206】
一実施形態では、洗浄組成物溶媒は、極性溶媒および/または無極性溶媒を含む。 好適な例としては、水、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、グリコール、1-プロパノール、2-プロパノール(IPA)、プロピレングリコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、およびブチレングリコールなど)、エーテル溶媒(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、およびテトラヒドロフラン(THF)など)、エステル溶媒(例えば酢酸エチルなど)、カーボネート溶媒(例えば、炭酸ジメチルおよび炭酸ジエチルなど)、ハロゲン化アルカン溶媒(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、および1,2-ジクロロエタンなど)、ニトリル溶媒(例えばアセトニトリルなど)、アルデヒドまたはケトン溶媒(例えばアセトンなど)、アミド溶媒(例えばジメチルホルムアミド(DMF)など)、スルホキシド溶媒(例えばジメチルスルホキシド(DMSO)など)、酸溶媒(例えばギ酸および酢酸など)、炭化水素溶媒(例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、およびオクタンなど)、ならびに/または芳香族溶媒(例えばベンゼンおよびトルエンなど)が挙げられる。
【0207】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明され、これらは具体的な実施形態を例示する目的のみのためのものであり、決して発明の範囲を限定するものとして解釈するものではない。
【0208】
実施例
実施例1
様々な3D印刷構造体の靱性を、ISO規格179-1:2010に従ってCharpy衝撃試験により決定した。使用した樹脂は、チオールモノマー(例えば、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、PETMP)、およびアルキンモノマー(例えば、1,4-ブタンジオールジブト-1-イニルエーテル、Bbut;ジ(ブト-3-イン-1-イル)カーボネート、DBC(登録商標))、および/またはアリルモノマー(ジアリル(2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイル)ジカルバメート)、および/またはメタクリレート(例えば、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、BMA;イソブチルメタクリレート、IsobutylMA;7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルビス(2-メタクリレート)、UDMA)、および/またはアクリレート(1,4-ブタンジオールジアクリレート、BA)を含む。配合物に、3重量%のIrgacure TPO-L(IrgTPOL)、0.5重量%のピロガロール、2重量%のMiramerA99、0.05重量%のスーダンオレンジを添加した。印刷サンプルを405nmで100℃で後硬化した。参照材料として、BMAおよびBAそれぞれ、ならびに3重量%のIrgTPOLを含むPETMP/アルケン配合物を使用した。モノマーの官能基の比率は、表1において括弧の中に列挙されている。
【0209】
表1は、試験した混合物の衝撃強度の得られた値を示す。
[表1]
【表3】
【表4】
【表5】
試験した本発明に係る樹脂組成物は、比較例よりも著しく高い衝撃強度を有する。アルキンおよび/またはアルケンおよびチオールの(メタ)アクリレートへの添加は、より小さい収縮応力、およびより均一なネットワーク構造をもたらし、それにより、(メタ)アクリレートからなる硬化樹脂と比較してより高い靱性を有するフォトポリマーが得られる。
【0210】
実施例2
ISO 75-1:1993およびISO 75-2:1993に従って、様々な3D印刷構造体の加熱撓み温度(HDT)を決定した(貫層方向の位置において方法Bにより試験した)。使用した樹脂は、チオールモノマー(例えば、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、PETMP)、および/またはアルキンモノマー(例えば、1,4-ブタンジオールジブト-1-イニルエーテル、Bbut;ジ(ブト-3-イン-1-イル)カーボネート、DBC(登録商標);ジ(プロパ-2-イン-1-イル)カーボネート、DPC;ジ(ブト-3-イン-1-イル)(2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイル)ジカルバメート)、および/またはアリルモノマー(ジアリル(2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイル)ジカルバメート)、および/またはメタクリレート(例えば、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、BMA;イソブチルメタクリレート、IsobutylMA;7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルビス(2-メタクリレート)、UDMA;ネオペンチルグリコールジメタクリレート、NPGDMA;トリメチロールプロパントリメタクリレート、TMPTMA)、および/またはアクリレート(1,4-ブタンジオールジアクリレート、BA)、および/またはビニルエーテル(1,4-ビス(ビニルオキシ)ブタン、BuVE)を含む。配合物に、3重量%のIrgacure TPO-L(IrgTPOL)、0.5重量%のピロガロール、2重量%のMiramerA99、0.05重量%のスーダンオレンジを添加した。印刷サンプルを405nmで100℃で後硬化した。さらなる参照材料として、BMAおよびBAそれぞれ、ならびにまた、3重量%のIrgTPOLを含むチオール-エンおよびチオール-イン配合物(PETMP/Bbut、PETMP/BuVE)を使用した。
【0211】
表2は、試験した試料の得られたHDTを示す。
[表2]
【表6】
アルキンおよび/またはアルケンおよびチオールの(メタ)アクリレートへの添加は、フォトポリマーのHDTの低下をもたらすが、HDTは、同等のチオール-イン系およびチオール-エン系より高い。アルキンモノマー含有混合物は、アルケンモノマーを含む混合物よりも高いHDTを提供する。
【0212】
実施例3
メタクリレートモノマー(グリセリルジメタクリレート、GMA)、アルキンモノマー(ジ(プロパ-2-イン-1-イル)カーボネート、DPC)、およびチオールモノマー(ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、PETMP)を含有する配合物の安定性に対する、0.5重量%のピロガロール(PY)、または/および2重量%のMiramer A99(MA99)、または/および0.05重量%の芳香族アゾ化合物の効果を、レオロジー測定により調べた。配合物を70℃で3日間貯蔵した。粘度の増加を24時間ごとに監視した。
【0213】
粘度を測定するために、Anton Paar GmbHのMC 200コーン・プレート型粘度計(コーンユニットMK 22/50mm、1°)を使用した。まず、剪断速度を段階的な勾配で変化させ、その後、300s-1の一定の剪断速度で30秒ごとに粘度を決定した。測定を25℃で実行した。特許請求される配合物の開始粘度は、79mPa*sである。
【0214】
粘度測定の結果を表3に示す。
[表3]
【表7】
測定は、試験した安定化剤の添加により、粘度の増加が著しく低減され得ることを示す。オルト-ヒドロキシ基を含むアゾ化合物が最も高い安定化効果を提供することを強調すべきである。
【0215】
実施例4
U-2OS骨肉腫細胞を用いて様々な3D印刷構造体の表面への細胞の結合を決定した。(無毒の)陰性対照として細胞培養プレートを使用した。空気大気+5%のCO中、37±1℃で、175cmの培養フラスコ(Costar Corning)内で、McCoy's 5A培地(Thermo Fisher Scientific)、10%のウシ胎児血清(Gibco)、2mMのL-グルタミン、1%のペニシリン/ストレプトマイシン中で細胞を培養し、所定の間隔で継代培養した。3*10個のU-2OS細胞をウェルあたり500μLで12ウェルプレートに、および同じ大きさの様々な3D印刷構造体の表面上に播種した。
【0216】
37±1℃で24時間の後、細胞を1μg/mLのヘキスト33342で15分間染色した。反転した明視野顕微鏡および共焦点顕微鏡で画像を撮った。その後、サンプルを別のウェルに移し、トリプシン処理により細胞を表面から取り除いた。細胞培養培地の添加によりトリプシン処理を停止し、CASY Cell Counter and Analyser System Modell TT(Innovatis)内で50mLの細胞懸濁液を計数した。
【0217】
細胞培養プレート上で成長した対照における全細胞数は450,679だった。
【0218】
表4は、サンプル表面上の決定した細胞数を示す。
[表4]
【表8】
試料上のU-2OS骨肉腫細胞の成長は、参照材料上よりも著しく高い。高含量のチオールおよびアルキンまたはアルキンを含む配合物において、特に良好な結果が達成された。これは、(メタ)アクリレートモノマーのより高い転化率、およびしたがって、3D印刷材料中の遊離細胞傷害性(メタ)アクリレートモノマーの含有量が少ないことに起因し得る。
【0219】
実施例5
MRC-5細胞を使用して、ISO規格10993-5:2009に従って3D印刷構造体の細胞傷害性を評価した。37±1℃および5%のCOで、175cmの培養フラスコ(Costar Corning)内で、Minimal Essential Medium(MEM、Life technologies)およびアール塩、10%のウシ胎児血清(Gibco)、2mMのL-グルタミン、1%のペニシリン/ストレプトマイシン中でMRC-5細胞を培養した。この細胞株は、14週齢の雄の胎児の正常な肺組織に由来した。ISO10993-1ガイドラインに従って、37℃で24時間、細胞培養培地中で印刷サンプルを抽出した。サブコンフルエントな培養物を得るために、サンプルの溶出液に曝す24時間前に、ウェルおよび培養物あたり8000個のMRC-5細胞を播種した。(有毒な)陽性対照として、トリトンX100をMRC-5細胞に10分間添加した。(無毒の)陰性対照として、細胞培養培地を使用した。
【0220】
インキュベーションの完了後、細胞生存率の指標としてデヒドロゲナーゼの活性度を算出した。そのためのCellTiter 96(登録商標)水性非放射性細胞増殖アッセイ(Promega)を使用した。このアッセイにおけるテトラゾリウム化合物は細胞デヒドロゲナーゼによって、組織培養培地中で可溶性であるホルマザン生成物へと生体内還元され、吸光度読み取りにより定量化される。37±1℃および5%のCOで2時間、細胞インキュベータ内でプレートをインキュベートした。プレートリーダ(SPECTRA MAX plus 384、Molecular Devices)。で吸光度を490nmで読み取った
【0221】
陰性対照に対して30%超のMRC-5細胞からの酵素含有量の低下を細胞傷害性として評価した(ISO 10993-5:2009に従う)。
【0222】
様々な混合物から得られた結果を表5に示す。
[表5]
【表9】
異なる配合物が、陽性対照と比較して70%超のタンパク質活性度を示す。高含量のチオールおよびアルキンまたはアルキンを含む配合物において、特に良好な結果が達成された。これは、(メタ)アクリレートモノマーのより高い転化率、およびしたがって、3D印刷材料中の細胞傷害性(メタ)アクリレートモノマーの含有量が少ないことに起因し得る。
【0223】
実施例6
塩基性条件下でチオールのマイケル付加反応を使用して、選択された組成物を抗菌性アクリレートモノマー(N,N-ジメチル-N-(4-メチレンヘキシ-5-エン-1-イル)ヘキサデカン-1-アミニウム、DMHA)で修飾した。したがって、室温で24時間、DMHAの飽和エタノール溶液中で3D印刷構造体をインキュベートした。20mLの溶液に0.2mLのトリメチルアミンを添加した。その後、サンプルをエタノールで洗浄し、50℃で6時間乾燥させた。
【0224】
2つの異なる細菌株(黄色ブドウ球菌ATCC 6538および大腸菌NCTC 10538)を使用して表面改質3D印刷構造体の抗菌効果を調査した。この目的のために、0.4mLの病原菌懸濁液を試験試料上へとピペッティングした。ゼロ時間(陰性対照)を決定するために1つの試験サンプルの植え付けのすぐ後に使用した。他のサンプルは、37℃で24時間の接触時間の後に使用した。回転式振とう機で、ガラス玉を用いて10mlのSCDLP培地中、150rpmで2分間、サンプルを振とうさせることによって、試料から試験細菌の回収を実行した。溶出液を希釈することによって試験試料の細菌数の決定を実行した。その後、溶液を1mLの計数寒天の上に注いだ。
【0225】
表6は、黄色ブドウ球菌および大腸菌の細菌数に対する修飾の効果を示す。
[表6]
【表10】
すべての修飾したサンプルは、黄色ブドウ球菌および大腸菌それぞれに対する顕著な抗菌活性を示す。
【0226】
実施例7
チオールモノマー(ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート))と、末端C=C二重結合を含有するモノマーまたは末端アルキン基を含有するモノマーのいずれかとを含有する配合物の安定性に対する、0.5重量%のピロガロール(PY)、および/または2重量%のMiramer A99(MA99)および/または0.05重量%の芳香族アゾ化合物の効果を、レオロジー測定によって調べた。配合物を50℃で7日間貯蔵した。1日目、3日目、および7日目に粘度の増加を監視した。
【0227】
粘度を測定するために、Anton Paar GmbHのMC 200コーン・プレート型粘度計(コーンユニットMK 22/50mm、1°)を使用した。まず、剪断速度を段階的な勾配で変化させ、その後、300s-1の一定の剪断速度で30秒ごとに粘度を決定した。測定を25℃で実行した。粘度測定の結果を表7に示す。
[表7]
【表11】
【表12】
【表13】
測定は、試験した安定化剤の添加により、粘度の増加が著しく低減され得ることを示す。
【0228】
実施例8
チオールモノマー(ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)[PETMP])と、末端C=C二重結合を含有するモノマー(1,4-ブタンジオールジメタクリレート[BMA]、もしくは1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H-トリオン)、および/または末端アルキン基を含有するモノマー(ジ(プロパ-2-イン-1-イル)カーボネート[DPC])とを含有する配合物の安定性に対する、0.5重量%のラジカル捕捉剤(ピロガロール[Py]または没食子酸プロピル[PYG]または2,4-ジヒドロキシベンゾアルデヒド[2,4-DHB]または3,4-ジヒドロキシベンゾアルデヒド[3,4-DHB]または3,5-ジヒドロキシベンゾアルデヒド[3,5-DHB]または2,5-ジヒドロキシベンゾアルデヒド[2,5-DHB]または2,3-ジヒドロキシベンゾアルデヒド[2,3-DHB]または2,3,4-トリヒドロキシベンゾアルデヒド[2,3,4-THB])、および/または2重量%のMiramer A99(MA99)、および/または0.05重量%の錯化剤(スーダンIIまたはシュウ酸アンモニウム[AO]またはエチレンビス(ジフェニルホスフィン)[EBP])の効果を、レオロジー測定によって調べた。配合物を50℃で42日間貯蔵した。42日後に粘度の増加を監視した。
【0229】
粘度を測定するために、Anton Paar GmbHのMC 200コーン・プレート型粘度計(コーンユニットMK 22/50mm、1°)を使用した。まず、剪断速度を段階的な勾配で変化させ、その後、300s-1の一定の剪断速度で30秒ごとに粘度を決定した。測定を25℃で実行した。粘度測定の結果を表8に示す。
[表8]
【表14】
【表15】
測定は、試験した安定化剤の添加により、粘度の増加が著しく低減され得ることを示す。
【0230】
実施例9
フォトポリマーの加水分解劣化挙動の評価のために、3D印刷試料を用意した(4×4×1mm)。使用した樹脂は、チオールモノマー(例えば、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、PETMP)、アルキンモノマー(例えば、1,4-ブタンジオールジブト-1-イニルエーテル、Bbut)、およびメタクリレート(例えば、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、BMA)からなる。配合物に、3重量%のIrgacure TPO-L(IrgTPOL)、0.5重量%のピロガロール、2重量%のMiramerA99、0.05重量%のスーダンオレンジを添加した。印刷サンプルを405nmで100℃で後硬化した。参照材料として、3重量%のIrgTPOLと共に、BMAおよびBAそれぞれを使用した。
【0231】
モノマーの官能基の比率は、表9において括弧の中に列挙されている。
【0232】
連続振とう下で、45℃の1M NaOH中にサンプルを浸した。試験期間にわたって、サンプルの乾燥重量を監視した。
【0233】
表9は、3日後、5日後、および7日後の重量損失を示す。
[表9]
【表16】
実施例10
NIR光源およびCaFビームスプリッタを使用して、Bruker Vertex 80 FTIR分光計と連結されたAnton Paar MCR 302 WESPレオメータで偏光流性測定を実施した。IRビームをサンプルを通してガイドし、これを外部ミラーを用いてレオロジーによって分析した。レオメータは、P-PTD200/GLペルチェガラスプレートおよびPP25測定システムを備え、これは、IRビームを外部MCT検出器内に反射させる。チオール/イン/エン材料のガラス表面への良好な接着に起因して、測定設定の保護のためにサンプルとガラスプレートとの間にPEテープを設置した。
【0234】
本発明に係る樹脂は、チオールモノマー(ペンタエリトリトール-テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PETMP))と、アルケンモノマー(ウレタンジメタクリレート(UDMA))と、アルキンモノマー(ジ(ブト-3-イン-1-イル)カーボネート(DBC(登録商標))とを含む一方、比較例に係る樹脂は、チオールモノマーPETMPと、アルケンモノマーUDMAまたはアルキンモノマーDBC(登録商標)のいずれかとを含む。
【0235】
配合物に、3重量%のIrgacure TPO-L(IrgTPOL)および0.2重量%の没食子酸ラウリルを添加した。すべての測定について、約150μlの樹脂配合物を使用し、測定を200μmの測定ギャップで20℃で実行した。1%の歪みおよび1Hzの周波数の振動モードでレオロジー測定を実施した。均一な照射(300秒、320~500nm、サンプルの表面上15W cm-2)を確実にするために、広帯域Hgランプおよび二重導波管を有するExfo Omnicure S 2000を使用して、ガラスプレートの裏側から材料を硬化した。光重合中、最初の1分間は5Hzの周波数、その後、最後の4分間は1Hzの周波数のUV照射で貯蔵および損失弾性率を記録した。約0.26秒ごとにIR測定値を記録し、UV照射の5秒前に測定開始した。それぞれのNIRシグナル(メタクリレートの場合6164cm-1)の減少を追跡することによってメタクリレートの転化率を評価した。
【0236】
-40~120℃の温度範囲内で2K 分-1の加熱速度で、DMA/SDTA861(Mettler Toledo)を使用して、張力モードで3D印刷樹脂の熱機械的特性を測定した。動作周波数を1Hzで決定した。ポリマーサンプルの比較のため、室温(20℃)で貯蔵弾性率を評価した。
【0237】
表10は、RT-NIR偏光流性およびDMA測定の結果を示す。
[表10]
【表17】
【表18】
メタクリレートへのチオールおよびアルキンの添加により、ゲル化時間を調整することができる。本発明に係る試験された樹脂組成物(チオール/アルキン/メタクリレート、例えば、M10)は、純粋なメタクリレート(M15)の重合よりも著しく高いメタクリレート転化率(87.9%対70.4%)を提供する。アルキンおよびチオールの添加(例えば、M10)は、純粋なメタクリレート(M15)の重合と比較して、より小さい収縮応力(通常の力FNに比例する)をもたらす(16.5N対18.1N)。チオール、アルキン、およびメタクリレートを含む硬化した配合物(例えば、M7)は、アルキン含まない対応するサンプル(例えば、それぞれM5およびM9)と比較してより高い弾性率もたらす。
【0238】
実施例11
洗浄効率、およびしたがって印刷構造体からの残留非硬化UV樹脂の除去の評価のために、以下の試験を実行した。
【0239】
印刷した試料を用意した(20×10×2mm)。使用した樹脂は、ペンタエリトリトール-テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PETMP)、1,4-ブタンジオールジブト-1-イニルエーテル(Bbut)、および1,4-ブタンジオールジメタクリレート(BMA)を含有する。配合物に、3重量%のIrgacure TPO-L(IrgTPOL)、0.5重量%のピロガロール、2重量%のMiramerA99、および0.05重量%のスーダンIIを添加した。
【0240】
印刷段階の後、ガラスバイアルを使用して、印刷構造体を洗浄用溶液内に浸した。洗浄用溶液は、40重量%のConcentryl(登録商標)(Becker Chemie GmbHから入手可能)、30重量%の水、および30重量%の2-プロパノールを含有していた。
【0241】
続く段階において、50℃の水温の超音波浴(Bandelin sonorox digitec)にバイアルを5分間移した。その後、印刷部分おび洗浄用溶液の両方の点検によって、洗浄手順を評価した。
【0242】
5分間浸した後、印刷構造体には残留物は残らず、洗浄用溶液は、固体ポリマ―粒子をバイアルの下部に含む透明な明るい液体となった。
【0243】
本発明は具体的な実施形態おび実施例よって詳細に説明されたが、本発明はこれらに限定されるのではなく、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および修正が可能である。
[項目1]
樹脂組成物であって、
少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1と、
少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、
少なくとも1つの光開始剤と、
少なくとも1つの安定化剤とを含む、
樹脂組成物。
[項目2]
少なくとも1つの化合物C1が、少なくとも1つの末端アルキン官能基と、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキル基;直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;置換または非置換のヘテロアリール基;直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキル基;直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリル基;オリゴマーまたはポリマーから選択される少なくとも1つの官能基と、を有する、項目1に記載の樹脂組成物。
[項目3]
少なくとも1つの化合物C1が、プロパルギル、ブチニル、およびペンチニルからなる群から選択される少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する、項目1または2に記載の樹脂組成物。
[項目4]
少なくとも1つの化合物C1が、少なくとも1つの末端アルキン官能基と、カーボネート、カルバメート、エーテル、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの官能基とを有する、項目1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目5]
少なくとも1つの化合物C1が、プロパルギルカーボネート、プロパルギルカルバメート、プロパルギルエーテル、プロパルギルエステル、ブチニルカーボネート、ブチニルカルバメート、ブチニルエーテル、ブチニルエステル、ペンチニルカーボネート、ペンチニルカルバメート、ペンチニルエーテル、およびペンチニルエステルからなる群から選択される官能基を有する化合物を含む、項目1から4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目6]
少なくとも1つの化合物C1が、1つの末端アルキン官能基を有する、項目1から5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目7]
少なくとも1つの化合物C1が、少なくとも2つの末端アルキン官能基を有する、項目1から5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目8]
チオール官能基のうちの少なくとも1つがチオール保護基を含む、項目1から7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目9]
チオール保護基が、アシル基、シリル基、およびシロキシル基からなる群から選択される、項目8に記載の樹脂組成物。
[項目10]
樹脂組成物が、少なくとも1つの光酸および/または少なくとも1つの光塩基をさらに含む、項目8または9に記載の樹脂組成物。
[項目11]
少なくとも1つの化合物C2が、以下の一般式(XIII)により表され、
[化13]
式中、
zは2から1000の整数を表し、
Zは、各出現において互いから独立して、水素またはチオール保護基を表し、
Lは、各出現において互いから独立して、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキレン基;直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキレン基;飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキレン基;飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキレン基;置換または非置換のアリーレン基;置換または非置換のヘテロアリーレン基;直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキレン基;直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリレン基;またはケイ素含有二価基からなる群から選択される単結合または二価基を表し、
Xは、直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のアルキル基;直鎖または分岐、飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のシクロアルキル基;飽和または不飽和、置換または非置換のヘテロシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;置換または非置換のヘテロアリール基;直鎖または分岐、置換または非置換のアラルキル基;直鎖または分岐、置換または非置換のアルカリル基;またはケイ素含有z価基からなる群から選択されるz価基を表す、
項目1から10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目12]
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3が、ビニル官能基、アリル官能基、アクリレート官能基、およびメタクリレート官能基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する、項目1から11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目13]
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3が、少なくとも1つのビニル官能基および/またはアリル官能基を有する、項目12に記載の樹脂組成物。
[項目14]
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3が、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能基を有する、項目12または13に記載の樹脂組成物。
[項目15]
少なくとも1つの化合物C3が、少なくとも2つの炭素-炭素二重結合、特に、ビニル官能基、アリル官能基、アクリレート官能基、およびメタクリレート官能基からなる群から選択される少なくとも2つの官能基を有する、項目1から14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目16]
樹脂組成物が、5~80重量%の少なくとも1つの化合物C1を含む、項目1から15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目17]
樹脂組成物が、5~80重量%の少なくとも1つの化合物C2を含む、項目1から16のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目18]
樹脂組成物が、10~90重量%の少なくとも1つの化合物C3を含む、項目1から17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目19]
光開始剤が、紫外線活性光開始剤および/または可視光活性光開始剤である、項目1から18のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目20]
樹脂組成物が、0.1~20重量%の少なくとも1つの光開始剤を含む、項目1から19のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目21]
少なくとも1つの安定化剤が、少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤を含む、項目1から20のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目22]
少なくとも1つの安定化剤が、少なくとも1つのリン含有化合物、特に、少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体を含む、項目1から21のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目23]
少なくとも1つの安定化剤が、少なくとも1つの錯化剤、特に少なくとも1つの芳香族アゾ化合物、より具体的にはアゾ基に対するオルト位にヒドロキシ基を有する少なくとも1つの芳香族アゾ化合物を含む、項目1から22のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目24]
少なくとも1つの安定化剤が、
少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤と、
少なくとも1つのリン含有化合物、特に少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体とを含む、
項目1から23のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目25]
少なくとも1つの安定化剤が、
少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤と、
少なくとも1つの錯化剤、特に少なくとも1つの芳香族アゾ化合物と、を含む、
項目1から23のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目26]
少なくとも1つの安定化剤が、
少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤と、
少なくとも1つのリン含有化合物、特に、少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体と、
少なくとも1つの錯化剤、特に少なくとも1つの芳香族アゾ化合物と、を含む、
項目1から25のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目27]
樹脂組成物が、0.001~10重量%の少なくとも1つの安定化剤を含む、項目1から26のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目28]
樹脂組成物が、顔料、無機充填剤、有機充填剤、分散剤、レベリング剤、スリップ剤、光吸収体、レオロジー改質剤、および消泡添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、項目1から27のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目29]
樹脂組成物が、0.1~70重量%の少なくとも1つの添加剤を含む、項目28に記載の樹脂組成物。
[項目30]
樹脂組成物が、実質的に溶媒を含まず、特に、実質的に水を含まない、項目1から29のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目31]
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3が、アリル官能基、アクリレート官能基、およびメタクリレート官能基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有し、
樹脂組成物が、実質的に溶媒を含まず、特に、実質的に水を含まない、
項目1から30のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目32]
少なくとも1つの化合物C1および少なくとも1つの化合物C3が、少なくとも1つの末端アルキン官能基と少なくとも1つの炭素-炭素二重結合とを有する1つの化合物C4を形成する、項目1から31のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[項目33]
項目1から32のいずれか一項に記載の樹脂組成物の、インクとしての使用。
[項目34]
少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1と、
少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、
少なくとも1つの光開始剤と、
任意で少なくとも1つの安定化剤とを含む、
キット、特に、パーツキット。
[項目35]
インクとしての使用、またはインクにおける使用のための樹脂組成物を調製するための、項目34に記載のキットの使用。
[項目36]
少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3とを含む第1のインク部分を提供する段階と、
少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2を含む第2のインク部分を提供する段階であって、
第1のインク部分および第2のインク部分のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの光開始剤をさらに含む、提供する段階と、
第1のインク部分および第2のインク部分から樹脂組成物を形成し、すぐ後に、樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射して、樹脂組成物の少なくとも一部の重合を引き起こして、ポリマーを得る段階と、を含む、
印刷方法。
[項目37]
第1のインク部分と第2のインク部分のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの安定化剤をさらに含む、項目36に記載の印刷方法。
[項目38]
印刷方法が、
特に第1のインク部分および/または第2のインク部分を提供する前および/または提供する際に、第1のインク部分および/または第2のインク部分を加熱する段階をさらに含む、項目36または37に記載の印刷方法。
[項目39]
項目1から32のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供する段階と、
樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射して、樹脂組成物の少なくとも一部の重合を引き起こして、ポリマーを得る段階とを含む、印刷方法。
[項目40]
印刷方法が、
特に、樹脂組成物を提供する前および/または提供する際に、樹脂組成物を加熱する段階をさらに含む、項目39に記載の印刷方法。
[項目41]
印刷方法が、三次元印刷方法である、項目36から40のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目42]
三次元印刷方法が、光造形法(SLA)、二光子吸収(TPA)重合、デジタルライトプロセッシング(DLP)、反応性レーザ焼結(RLS)、ソリッドグラウンド硬化(SGC)、マルチジェットモデリング(MJM)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つである、項目41に記載の印刷方法。
[項目43]
樹脂組成物の少なくとも一部を照射している間および/または照射した後に、ポリマーを後硬化する段階をさらに含む、項目36から42のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目44]
エネルギー搬送活性ビームが、特に紫外線照射および可視光照射からなる群から選択される電磁放射線を含む、項目36から43のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目45]
印刷方法が、溶媒を用いない印刷方法である、項目36から44のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目46]
ポリマーを洗浄する段階をさらに含む、項目36から45のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目47]
洗浄する段階が、ポリマーを、アルカリ化合物、界面活性剤、および適切な溶媒を含む洗浄組成物と接触させることを含む、項目46に記載の印刷方法。
[項目48]
項目36から47のいずれか一項に記載の印刷方法によって得ることができる、ポリマー。
[項目49]
項目48に記載のポリマーを含む、またはそれから形成される、物品。
[項目50]
物品が、特にインプラント、代用骨、代用組織、および歯科用製品からなる群から選択される、医療用または生物医学用デバイスである、項目49に記載の物品。
[項目51]
物品の表面が、コーティング、特に抗菌コーティングにより改質されている、項目49または50に記載の物品。
[項目52]
物品が、形状記憶物品である、項目49から51のいずれか一項に記載の物品。
[項目53]
医療または生物医学用途における、項目48に記載のポリマーの、または項目49から52のいずれか一項に記載の物品の使用。
[項目54]
医療または生物医学用途が、移植、代用骨または置換、代用組織または置換、および歯科用途からなる群から選択されるいずれか1つを含む、項目53に記載の使用。
[項目55]
少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、
少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2と、
ラジカル捕捉剤、リン含有化合物、および錯化剤からなる群から選択される少なくとも1つの安定化剤とを備える、組成物。
[項目56]
少なくとも1つの安定化剤が、少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤を含む、項目55に記載の組成物。
[項目57]
少なくとも1つの安定化剤が、少なくとも1つのリン含有化合物、特に、少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体を含む、項目55または56に記載の組成物。
[項目58]
少なくとも1つの安定化剤が、少なくとも1つの錯化剤、特に少なくとも1つの芳香族アゾ化合物、より具体的にはアゾ基に対するオルト位にヒドロキシ基を有する少なくとも1つの芳香族アゾ化合物を含む、項目55から57のいずれか一項に記載の組成物。
[項目59]
少なくとも1つの安定化剤が、
少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤と、
少なくとも1つのリン含有化合物、特に少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体とを含む、
項目55から58のいずれか一項に記載の組成物。
[項目60]
少なくとも1つの安定化剤が、
少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤と、
少なくとも1つの錯化剤、特に少なくとも1つの芳香族アゾ化合物と、を含む、
項目55から58のいずれか一項に記載の組成物。
[項目61]
少なくとも1つの安定化剤が、
少なくとも1つのラジカル捕捉剤、特に少なくとも1つのフェノール系ラジカル捕捉剤と、
少なくとも1つのリン含有化合物、特に、少なくとも1つのホスホン酸、および/または少なくとも1つのリン酸、および/またはそれらの誘導体と、
少なくとも1つの錯化剤、特に少なくとも1つの芳香族アゾ化合物と、を含む、
項目55から60のいずれか一項に記載の組成物。
[項目62]
樹脂組成物を提供する段階であって、樹脂組成物が、
(i)少なくとも1つの末端アルキン官能基を有する少なくとも1つの化合物C1および/または少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つの化合物C3と、
(ii)少なくとも2つのチオール官能基を有する少なくとも1つの化合物C2とを含む、提供する段階と、
樹脂組成物の少なくとも一部にエネルギー搬送活性ビームを照射して、樹脂組成物の少なくとも一部の重合を引き起こして、ポリマーを得る段階と、
ポリマーを、アルカリ化合物、界面活性剤、および溶媒を含む洗浄組成物と接触させる段階とを含む、印刷方法。
[項目63]
ポリマーを洗浄組成物と接触させる段階が、20℃~60℃の温度で、かつ/または超音波の適用の際に実行される、項目62に記載の印刷方法。
[項目64]
アルカリ化合物が、無機アルカリ化合物および/または有機アルカリ化合物を含む、項目62または63に記載の印刷方法。
[項目65]
アルカリ化合物が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、アンモニア、アンモニウム誘導体、エタノールアミンなどの有機アミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目62から64のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目66]
界面活性剤が、アニオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、一価カチオン界面活性剤などのカチオン界面活性剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目62から65のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目67]
溶媒が、極性溶媒および/または無極性溶媒を含む、項目62から66のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目68]
溶媒が、水、アルコール、エーテル、エステル、カーボネート、ハロゲン化アルカン、ニトリル、アルデヒド、ケトン、アミド溶媒、スルホキシド、酸、炭化水素、芳香族溶媒、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目62から67のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目69]
印刷方法が、ポリマーを洗浄組成物と接触させる段階の後に、洗浄組成物から固体を除去する段階をさらに含む、項目62から68のいずれか一項に記載の印刷方法。
[項目70]
洗浄組成物から固体を除去する段階が、洗浄組成物の濾過、遠心分離、および/またはデカンテーションのうちの少なくとも1つを含む、項目69に記載の印刷方法。