(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20240220BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61B8/12
A61M25/00 520
(21)【出願番号】P 2020086021
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111523
【氏名又は名称】高橋 良文
(72)【発明者】
【氏名】浪間 聡志
(72)【発明者】
【氏名】大島 史義
(72)【発明者】
【氏名】久保 佑太
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-147673(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0022375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00- 8/15
A61M 25/00-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンを有するチューブの遠位端に設けられ、超音波の発信機能を有する発信部と、
前記チューブの遠位端に設けられ、超音波の受信機能を有する受信部と、
前記発信部と前記受信部のうち前記発信部のみを覆うように配された音響レンズとを、備えているカテーテル。
【請求項2】
前記
発信部は局所に集中して配置され、前記受信部が複数箇所に分散して配置されている請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記発信部と前記受信部は、いずれも、超音波の発信機能と超音波の受信機能の両機能を有する振動子を備えて構成され、
前記音響レンズは、前記発信部及び前記受信部に対し、複数の前記振動子のうち一部の前記振動子のみを選択的に覆う形態で相対変位することが可能である請求項1又は請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記発信部と前記受信部のうち少なくとも前記受信部は、前記ルーメンを包囲するように配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記ルーメンを挟むように配置された第1の前記発信部と第2の前記発信部と、を有し、
前記第1の発信部は第1の前記音響レンズに覆われ、
前記第2の発信部は第2の前記音響レンズに覆われている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記発信部は、超音波発信機能を有する複数の振動子を一列に並べた形態である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超音波を用いて生体組織の形態を検査する装置として、超音波振動子を同心円状に配した同心状アレイ振動子と、動径方向に開口した音響窓を有する超音波遮蔽板とを備えた超音波プローブが開示されている。同心状アレイ振動子から発信された超音波は、音響窓の音響レンズを通過することによって集束される。生体組織で反射した反射波は、同じ音響レンズを通過して同心状アレイ振動子で受信される。同心状アレイ振動子における受信情報に基づいて、生体組織の形態が画像化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、超音波の反射波の受信範囲がスリット状の音響窓の開口領域に限定されるため、反射した超音波の受信に基づいて得られる情報量が少ないという課題がある。特に生体組織の形状の把握において、照射された超音波が音響窓とは別方向に反射された場合、当該反射を生じた生体組織の部分は形状の把握ができないことになる。
【0005】
また上記装置とは別に、複数の送信部から超音波を発信して、収束させた超音波を照射するとの構造も考えられる。しかしながら、夫々の送信部から被照射体である生体組織に超音波を照射した場合、夫々の送信部から生体組織までの超音波が伝搬される距離の相違等により、生体組織に到達した夫々の超音波の位相にずれを生じ、到達した超音波の減衰や増幅が生じることになる。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、超音波の受信効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
(1)ルーメンを有するチューブの遠位端に設けられ、超音波の発信機能を有する発信部と、
前記チューブの遠位端に設けられ、超音波の受信機能を有する受信部と、
前記発信部と前記受信部のうち前記発信部のみを覆うように配された音響レンズとを、備えているカテーテル、
(2)前記発信部は局所に集中して配置され、前記受信部が複数箇所に分散して配置されている前記(1)に記載のカテーテル、
(3)前記発信部と前記受信部は、いずれも、超音波の発信機能と超音波の受信機能の両機能を有する振動子を備えて構成され、
前記音響レンズは、前記発信部及び前記受信部に対し、複数の前記振動子のうち一部の前記振動子のみを選択的に覆う形態で相対変位することが可能な前記(1)又は(2)に記載のカテーテル、
(4)前記発信部と前記受信部のうち少なくとも前記受信部は、前記ルーメンを包囲するように配置されている前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のカテーテル、
(5)前記ルーメンを挟むように配置された第1の前記発信部と第2の前記発信部と、を有し、前記第1の発信部は第1の前記音響レンズに覆われ、前記第2の発信部は第2の前記音響レンズに覆われている前記(1)乃至(4)のいずれかに記載のカテーテル、
(6)前記発信部は、超音波発信機能を有する複数の振動子を一列に並べた形態である前記(1)乃至(5)のいずれかに記載のカテーテル、である。
【発明の効果】
【0008】
発信部から発信された超音波ビームは、音響レンズを通過することによって集束され、生体組織で反射した反射波は、音響レンズを通過せずに受信部で受信される。受信部の位置や数の設定に際しては、音響レンズの位置や大きさ等の制約を受けないので、受信部の位置や数を適宜に設定し、超音波の受信効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態においては、前記発信部は局所に集中して配置され、前記受信部が複数箇所に分散して配置されていてもよい。また発信部には音響レンズが配置され、発信部で発信された超音波は、被照射体である生体組織に集束されて照射されることで、超音波のエネルギー密度を高めることが可能となる。この構成によれば、生体組織において、発信部から発信された超音波のエネルギーは、超音波が伝播される経路の距離の相違等による減衰や増幅を抑制することが可能となる。また生体組織で反射して多方向へ拡がった反射波を、複数の受信部によって受信することができるので、受信部の受信情報に基づいて得られる生体組織の画像の分解能を高めることができる。
【0011】
本実施の形態においては、前記発信部と前記受信部は、いずれも、超音波の発信機能と超音波の受信機能の両機能を有する振動子を備えて構成され、前記音響レンズは、前記発信部及び前記受信部に対し、複数の前記振動子のうち一部の前記振動子のみを選択的に覆う形態で相対変位することが可能であってもよい。この構成によれば、音響レンズを相対移動させることにより、1つの生体組織に対して複数の異なる位置から超音波を照射することができる。このようにすれば、生体組織の形態が複雑であっても、複数の受信部によって多面的な受信情報を取得することができる。これにより、受信部の受信情報に基づいて得られる生体組織の画像の分解能を高めることができる。
【0012】
本実施の形態においては、前記発信部と前記受信部のうち少なくとも前記受信部は、前記ルーメンを包囲するように配置されていてもよい。この構成によれば、ルーメンに挿通した医療デバイスの治療検査対象である生体組織に関して、多面的な受信情報を取得することができる。これにより、受信部の受信情報に基づいて得られる生体組織の画像の分解能を高めることが可能となる。
【0013】
本実施の形態においては、前記ルーメンを挟むように配置された第1の前記発信部と第2の前記発信部と、を有し、前記第1の発信部は第1の前記音響レンズに覆われ、前記第2の発信部は第2の前記音響レンズに覆われていてもよい。この構成によれば、ルーメンに挿通した医療デバイスの治療検査対象である生体組織に対し、正反対の2方向から2つの超音波を照射することができる。これにより、生体組織の形態が複雑であっても、多面的な受信情報を取得することが可能である。これにより、受信部の受信情報に基づいて得られる生体組織の画像の分解能を高めることができる。
【0014】
本実施の形態においては、前記発信部は、超音波発信機能を有する複数の振動子を一列に並べた形態であってもよい。この構成によれば、超音波発信のタイミングを複数の振動子間でずらすと、複数の超音波を集束して集束超音波を形成することができる。複数の超音波の集束位置は、超音波発信のタイミングを変えることによって任意に変更することができるので、生体組織に関して多くの情報を得ることができる。
【0015】
<実施の態様1>
以下、実施の態様1を
図1~
図3を参照して説明する。
図1はカテーテルA及び発信制御装置614、表示装置615を含むカテーテルシステム1の側断面図を示し、
図2はカテーテルAの正面視である正面図を示す。カテーテルシステム1は、本実施の形態に限定されず、他の実施の態様においても同様の構成となる。以下の説明において、前後の方向については、
図3における上方を、前方と定義する。カテーテルAにおける前端と遠位端は、同義で用いる。
【0016】
本実施の態様1のカテーテルAは、可撓性を有する1本のチューブ10と、チューブ10内に形成されたルーメン15と、8つの超音波センサ16と、1つの音響レンズ24とを有している。
図1に示すように、カテーテルシステム1は、カテーテルA、超音波センサ16を制御する発信制御装置614と、超音波センサ16から取得した情報を表示する表示装置615と、超音波センサ16と発信制御装置614とを接続する信号線616,617を内蔵するとともに、カテーテルAの体内への挿入操作を行い易くするためのコネクタ14、を有している。
【0017】
チューブ10は、長尺のインナチューブ11を、長尺のアウタチューブ20内に同軸状に、且つ径方向への相対変位を規制された状態で収容した形態である。インナチューブ11とアウタチューブ20は、例えばコネクタ14を回転操作させる等、カテーテルAの近位端における操作によって、同軸状態を保ったままで摺接しながら周方向へ相対回転し得るようになっている。ルーメン15の断面形状は円形であり、ルーメン15はインナチューブ11内に同心状に挿通されている。ルーメン15には、ガイドワイヤ等の医療デバイス(図示省略)が挿通されるようになっている。
【0018】
インナチューブ11を長さ方向と直角に切断したときの断面形状は、円形である。
図3に示すように、インナチューブ11の遠位端には、インナチューブ11と同心の円形をなす支持板部12が一体に形成されている。支持板部12の外周縁はインナチューブ11の内周に繋がっている。支持板部12の中心部には、支持板部12と同心の円形をなす貫通形態のガイド孔13が形成されている。ガイド孔13の内周面には、インナチューブ11内に形成されたルーメン15が貫通した形態で接続されている。
【0019】
支持板部12の前面、即ち支持板部12における遠位端側の面には、8つの超音波センサ16が取り付けられている。カテーテルAを遠位端側から長さ方向に見た正面視(
図2を参照)において、8つの超音波センサ16は、ガイド孔13を中心として、周方向に等角度ピッチを空けて同心状に配置されている。1つの超音波センサ16は、径方向に一列に並べて配置した複数の振動子17を備えて構成されている。複数の振動子17は、ガイド孔13を中心として放射状に並んでいる。各振動子17は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電体を用いた圧電素子からなる。振動子17は、PZTの他、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子体、CMUT等のMEMSデバイスを用いても良い。
【0020】
振動子17は、電圧の印加により超音波を発信する発信機能と、超音波を受けることにより電圧を発生させる受信機能とを兼ね備えている。したがって、全ての超音波センサ16は、超音波を発信する発信部18と、超音波を受信する受信部19とに機能を切り替えて使用することができる。
【0021】
受信部19として機能させる7つの超音波センサ16の振動子17は、生体組織(図示省略)で反射された超音波を受信する。発信部18が超音波を発信してから、受信部19の振動子17が反射波を受信するまでの時間は、発信部18から主に生体組織までの距離によって決定される。生体組織で反射した反射波の強さは、超音波の照射対象である生体組織の組成と形態によって異なる。超音波を受信した振動子17は、反射波の強さに応じた電圧を発生させる。振動子17が発生する電圧に基づいて、生体組織の超音波画像(図示省略)が得られる。
【0022】
アウタチューブ20を長さ方向と直角に切断したときの断面形状は、円形である。アウタチューブ20の遠位端には、円板形のプレート21が、アウタチューブ20と同心状に且つアウタチューブ20と一体回転し得るように固着されている。プレート21の板厚方向は、アウタチューブ20の長さ方向と平行である。プレート21は中心孔22を有する。中心孔22には円環形のガイドリング23が固着されている。ガイドリング23には、ルーメン15の遠位端が貫通した形態で接続されている。
【0023】
正面視において、プレート21は、支持板部12と同心状をなし、8つの超音波センサ16を前側、即ち遠位端側から覆うように配置されている。プレート21は例えばシリコン樹脂で形成されている。プレート21には音響レンズ24が形成されている。正面視において、音響レンズ24は、8つの超音波センサ16のうちいずれか1つの超音波センサ16のみを前方から覆う大きさの略楕円形をなして良い。音響レンズ24は、プレート21の前面の一部を曲面状に凹ませた凹レンズ状をなす。アウタチューブ20とインナチューブ11が同軸状に周方向へ相対回転すると、音響レンズ24と8つの超音波センサ16とが相対回転する。
【0024】
なお、音響レンズ24の形状は、プレート21の材質により決定される超音波の音速と、プレート21よりも前方における血液等の媒質内の音速との速度差によって決定される。プレート21内の超音波の音速が媒質内の音速よりも遅い場合は、音響レンズ24を凸レンズ形状とする。プレート21内の超音波の音速が媒質内の音速よりも速い場合は、音響レンズ24を凹レンズ形状とする。
【0025】
本実施の態様1のカテーテルAを用いて生体組織の形態を診断する際には、カテーテルAの近位端における操作によって、インナチューブ11とアウタチューブ20を相対回転させる。この操作により、8つ超音波センサ16のうち発信部18として機能させるべき1つの超音波センサ16を、音響レンズ24で覆う。音響レンズ24で覆われない7つの超音波センサ16は、受信部19として機能させる。カテーテルAの遠位端の前面においては、1つの発信部18と7つの受信部19が、周方向に等角度ピッチで並ぶ。
【0026】
発信部18を構成する複数の振動子17は、電圧を印加されることによって超音波を発信する。複数の振動子17から発信された複数の超音波は、音響レンズ24を通過し、カテーテルAの前方、即ち
図3における上方へ進む。音響レンズ24は、超音波の屈折性を利用することによって、複数の超音波を集束させる。集束された超音波は、指向性の高い1本の集束超音波を形成する。この集束超音波は、強いエネルギーを有するので、生体組織で反射した反射波は、強いエネルギーを有した状態で7つの受信部19で受信される。7つの受信部19で得られた超音波の受信情報に基づいて、超音波画像が生成される。
【0027】
超音波画像の分解能は、生体組織に照射される超音波のエネルギーが強いほど高くなる。本実施の態様1では、発信部18から発信された超音波を、音響レンズ24によって集束し、エネルギーの強い集束超音波を生体組織に照射している。また、超音波画像の分解能は、受信部19から得られる受信情報量が多いほど高くなる。受信情報は、受信部19の数が多いほど多くなり、受信部19が広範囲に配置されているほど多くなる。本実施の態様1では、7つの受信部19がルーメン15を包囲するように配置されているので、反射波の受信効率が高く、反射波の受信情報が多く得られる。したがって、本実施の態様1のカテーテルAを用いることによって、分解能の高い超音波画像を得ることができる。
【0028】
発信部18を構成する複数の振動子17の駆動方式は、発信電圧が複数の振動子17を構成する個々の振動子に、タイミングを少しずつずらされて印加されるフェイズドアレイ方式とすることが可能である。複数の振動子17がフェイズドアレイ方式で制御されることで、発信部18を構成する複数の振動子17から発信された超音波の二次波の進行方向は、複数の振動子17の配置される方向(本実施の態様においては径方向)に沿って調整することができる。かかる二次波が音響レンズ24を通過し集束されるため、発信部18から発信される超音波が音響レンズ24によって集束される位置は、各振動子17が超音波を発信するタイミングの違いに応じて調整されることができる。
【0029】
本実施の態様1のカテーテルAは、ルーメン15を有するチューブ10の遠位端に設けられ、超音波の発信機能を有する発信部18と、チューブ10の遠位端に設けられ、超音波の受信機能を有する受信部19と、発信部18と受信部19のうち発信部18のみを覆うように配された音響レンズ24とを備えている。発信部18から発信された超音波ビームは、音響レンズ24を通過することによって集束され、生体組織で反射した反射波は、音響レンズ24を通過せずに受信部19で受信される。受信部19の位置や数の設定に際しては、音響レンズ24の位置や大きさ等の制約を受けないので、受信部19の位置や数を適宜に設定し、超音波の受信効率を高めることができる。
【0030】
受信部19は、複数箇所に分散して配置されている。この構成によれば、生体組織で反射して多方向へ拡がった反射波を、複数の受信部19によって受信することができるので、受信部19の受信情報に基づいて得られる生体組織の画像の分解能を高めることができる。
【0031】
発信部18と受信部19は、いずれも、超音波の発信機能と超音波の受信機能の両機能を有する振動子17を備えて構成されている。音響レンズ24は、発信部18及び受信部19に対し、複数の振動子17のうち一部の振動子17のみを選択的に覆う形態で相対変位することが可能である。又は、音響レンズ24をカテーテルAに対して固定して設け、カテーテルAの長軸に対する周方向にカテーテルA全体を回転させることで、音響レンズ24の位置を体内で相対変位をさせるものであっても良い。音響レンズ24の位置を相対移動させることにより、1つの生体組織に対して複数の異なる位置から超音波を照射することができる。このようにすれば、生体組織の形態が複雑であっても、複数の受信部19によって多面的な受信情報を取得することができる。これにより、受信部19の受信情報に基づいて得られる生体組織の画像の分解能を高めることができる。
【0032】
カテーテルAは、チューブ10内に挿通されたルーメン15を有している。発信部18と受信部19は、ルーメン15を包囲するように配置されている。即ち、発信部18と受信部19のうち少なくとも受信部19は、ルーメン15を包囲するように配置されている。又は、発信部18と受信部19は、カテーテルA先端の横断面においてカテーテルAの外周面に沿って配置される。この構成によれば、ルーメン15に挿通した医療デバイスの治療検査対象である生体組織に関して、生体組織の全方位から情報を取得することができる。これにより、受信部19の受信情報に基づいて得られる生体組織の画像の分解能を高めることが可能となる。
【0033】
発信部18は、超音波発信機能を有する複数の振動子17を一列に並べた形態である。超音波発信のタイミングを複数の振動子17間でずらすと、複数の超音波を集束させて集束超音波を形成することができる。複数の超音波の集束位置は、超音波発信のタイミングを変えることによって任意に変更することができるので、生体組織に関して多くの情報を得ることができる。なお、
図2では発信部18と受信部19はカテーテルAの横断面において、複数の振動子17が径方向に並ぶように配置されることが図示されているが、複数の振動子17が周方向に並ぶように配置されるのであっても良い。
【0034】
<実施の態様2>
次に、実施の態様2を
図4を参照して説明する。本実施の態様2のカテーテルBは、発信部31A,31B、受信部32及び音響レンズ37A,37Bを上記実施の態様1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施の態様1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。カテーテルBにおける前端と遠位端は、同義で用いる。
【0035】
本実施の態様2のカテーテルBは、可撓性を有する1本のチューブ30と、チューブ30内に形成されたルーメン15と、8つの超音波センサ16と、第1と第2の2つの音響レンズ37A,37Bとを有している。チューブ30を構成するインナチューブ11と、インナチューブ11の遠位端に形成した支持板部12と、支持板部12の前面に取り付けた8つの超音波センサ16と、ルーメン15は、実施の態様1と同じものである。各超音波センサ16は、超音波を発信する第1及び第2の2つ発信部31A,31Bと、超音波を受信する受信部32とに切り替えて使用することができる。
【0036】
アウタチューブ33の遠位端には、中心孔35を有する円板形のプレート34が取り付けられている。プレート34の中心孔35に固着した円環形のガイドリング36には、ルーメン15の遠位端が貫通した形態で接続されている。プレート34は、8つの超音波センサ16を前側、即ち遠位端側から覆っている。
【0037】
プレート34には、正面視においてルーメン15を挟んで対をなすように配置された第1の音響レンズ37Aと第2の音響レンズ37Bが形成されている。アウタチューブ33とインナチューブ11を同軸状に周方向へ相対回転させると、一対の音響レンズ37A,37Bが8つの超音波センサ16に対して相対回転する。一対の音響レンズ37A,37Bは、8つの超音波センサ16のうち、第1及び第2の発信部31A,31Bとして機能させるべきいずれか2つの超音波センサ16のみを選択的に覆う。第1の音響レンズ37Aは第1の発信部31Aを覆い、第2の音響レンズ31は第2の発信部31Bを覆う。
【0038】
第1及び第2の発信部31A,31Bとして機能させる2つの超音波センサ16は、複数の振動子17から時間差で超音波を発信させるフェイズドアレイ方式で制御されても良い。2つの発信部31A,31Bを構成する複数の振動子17は、ルーメン15を挟んで一列に並ぶように配置されている。第1の発信部31Aと第2の発信部31Bから発信された夫々の二次波は、第1の音響レンズ37Aと第2の音響レンズ37Bを通過することによって集束され、ルーメン15の前方において、治療検査対象である生体組織(図示省略)に異なる角度で照射される。受信部32として機能させる6つの超音波センサ16の振動子17は、生体組織で反射した超音波を受信する。
【0039】
カテーテルBは、ルーメン15を挟んで対をなすように配置された第1の発信部31Aと第2の発信部31Bとを有する。第1の発信部31Aは第1の音響レンズ37Aに覆われ、第2の発信部31Bは第2の音響レンズ37Bに覆われている。この構成によれば、ルーメン15に挿通した医療デバイスの治療検査対象である生体組織に対し、正反対の2方向から2つの超音波を照射することができる。
【0040】
またルーメン15に挿通された医療デバイスに対し、一方方向から超音波が照射された場合、医療デバイスの陰になって超音波が照射されない領域が生じることになる。しかし、上記構成によれば、対向する2方向から超音波が照射されることにより医療デバイスの影となる領域を少なくすることが可能となる。これにより、生体組織の形態が複雑であっても、生体組織の多面的な受信情報を取得することが可能である。これにより、受信部32の受信情報に基づいて得られる生体組織の画像の分解能を高めることができる。また本実施の態様1では、生体組織は2方向から超音波を照射されることから、生体組織に到達した夫々の超音波の位相のずれによる減衰や増幅を抑制するために、夫々の発信部31A,31Bの発信タイミングを異ならせる、等の制御を行えば良い。
<実施の態様3>
次に、実施の態様3を
図5を参照して説明する。本実施の態様3のカテーテルCは、発信部45と受信部46と音響レンズ44を上記実施の態様1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施の態様1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0041】
本実施の態様3のカテーテルCは、可撓性を有する1本のチューブ40と、チューブ40内に形成されたルーメン15と、4つの超音波センサ16と、1つの音響レンズ44とを有している。チューブ40を構成するインナチューブ11と、インナチューブ11の遠位端に形成した支持板部12と、支持板部12の前面に取り付けた4つの超音波センサ16と、ルーメン15は、実施の態様1と同じものである。各超音波センサ16は、超音波を発信する発信部45と、超音波を受信する受信部46とに切り替えて使用することができる。
【0042】
アウタチューブ40の遠位端には、中心孔42を有する円板形のプレート41が取り付けられている。プレート41の中心孔42に固着した円環形のガイドリング43には、ルーメン15が貫通されている。プレート41は、4つの超音波センサ16を前側、即ち遠位端側から覆っている。
【0043】
プレート41には、正面視において略楕円形をなす1つの音響レンズ44が形成されている。正面視において、音響レンズ44の形成範囲内には、4つの超音波センサ16のうち周方向に隣り合う任意の2つの超音波センサ16と、ルーメン15とが含まれる。音響レンズ44には、ルーメン15を貫通した形態で接続させるための貫通孔47が形成されている。アウタチューブ40とインナチューブ11を同軸状に周方向へ相対回転させると、音響レンズ44が、ルーメン15を中心として4つの超音波センサ16に対して相対回転する。音響レンズ44は、4つの超音波センサ16のうち、発信部45として機能させるべきいずれか2つの超音波センサ16のみを選択的に覆う。
【0044】
発信部45として機能させる2つの超音波センサ16は、夫々、複数の振動子17から時間差で超音波を発信させるフェイズドアレイ方式で制御されて良い。2つの発信部45から発信された夫々の二次波は、音響レンズ44を通過することによって集束され、ルーメン15の前方において治療検査対象である生体組織に異なる角度で照射される。受信部46として機能させる2つの超音波センサ16の振動子は、生体組織で反射した超音波を受信する。
【0045】
<実施の態様4>
次に、実施の態様4を
図6を参照して説明する。本実施の態様4のカテーテルDは、発信部55と受信部56と音響レンズ58を上記実施の態様1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施の態様1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0046】
本実施の態様4のカテーテルDは、可撓性を有する1本のチューブ50と、チューブ50内に形成されたルーメン15と、7つの超音波センサ16と、1つの音響レンズ58とを有している。チューブ50は、インナチューブ51を、アウタチューブ52内に同軸状に、且つ径方向への相対変位を規制された状態で収容した形態である。インナチューブ51とアウタチューブ52は、カテーテルDの近位端(図示省略)における操作によって、同軸状態を保ったままで摺接しながら周方向へ相対回転し得るようになっている。
【0047】
インナチューブ51を長さ方向と直角に切断したときの断面形状は、円形である。インナチューブ51の遠位端には、インナチューブ51と同心の円形をなす支持板部53が一体に形成されている。支持板部53の外周縁はインナチューブ51の内周に繋がっている。支持板部53の中心から径方向へ偏心した位置には、支持板部53を貫通した形態の偏心孔54が形成されている。偏心孔54には、インナチューブ51内に挿通されたルーメン15が貫通した形態で接続されている。
【0048】
支持板部53の前面には、7つの超音波センサ16が取り付けられている。カテーテルDを遠位端側から長さ方向に見た正面視(
図6を参照)において、7つの超音波センサ16は、支持板部53と同心の周方向において45°の等角度ピッチで並ぶように配置されている。周方向において、7つの超音波センサ16が配置される領域は、偏心孔54及びルーメン15と干渉しない領域である。ルーメン15と7つの超音波センサ16は、周方向において45°の等角度ピッチで並んでいる。
【0049】
7つの超音波センサ16は、実施の態様1と同じものである。各超音波センサ16は、超音波を発信する発信部55と、超音波を受信する受信部56とに切り替えて使用することができる。1つの超音波センサ16は、径方向に一列に並べて配置した複数の振動子17を備えて構成されている。1つの超音波センサ16を構成する複数の振動子17は、支持板部53の中心から径方向に沿って一列に並んでいる。
【0050】
アウタチューブ52の遠位端には、プレート57が、アウタチューブ52と一体回転し得るように固着されている。プレート57は、アウタチューブ52の内周面のうち周方向における一部のみから、径方向内側へアウタチューブ52の長さ方向と直角に突出した形態である。プレート57の板厚方向は、アウタチューブ52の長さ方向と平行である。アウタチューブ52からのプレート57の突出寸法は、支持板部53の半径寸法よりも小さく、1つの超音波センサ16の半径方向の長さ寸法よりも大きい寸法である。プレート57の周方向における幅寸法は、1つの超音波センサ16の全体を覆うことが可能であり、且つ同時に2つの超音波センサ16を覆うことができない寸法に設定されている。
【0051】
プレート57には音響レンズ58が形成されている。正面視において、音響レンズ58は、7つの超音波センサ16のうちいずれか1つの超音波センサ16のみを前方から覆う大きさの略楕円形をなす。アウタチューブ52とインナチューブ51が同軸状に周方向へ相対回転すると、音響レンズ58が、7つの超音波センサ16及びルーメン15に対して周方向へ相対回転する。インナチューブ51に対するアウタチューブ52の回転範囲は、プレート57が、ルーメン15に挿通した医療デバイス(図示省略)と干渉しない範囲である。
【0052】
具体的には、アウタチューブ52を、インナチューブ51に対して
図6における時計回り方向へ回転させたときの最大回転範囲は、プレート57の径方向に延びる一対の側縁部のうち、時計回り方向前方の側縁部が医療デバイスに当たる位置までである。アウタチューブ52を、インナチューブ51に対して
図6における反時計回り方向へ回転させたときの最大回転範囲は、プレート57の径方向に延びる一対の側縁部のうち、反時計回り方向前方の側縁部が医療デバイスに当たる位置までである。
【0053】
本実施の態様4のカテーテルDを用いて生体組織(図示省略)の形態を診断する際には、カテーテルDの近位端における操作によって、インナチューブ51とアウタチューブ52を相対回転させる。この操作により、7つ超音波センサ16のうち発信部55として機能させるべき1つの超音波センサ16を、音響レンズ58で覆う。音響レンズ58で覆われない6つの超音波センサ16は、受信部56として機能させる。カテーテルDの遠位端の前面においては、1つの発信部55と6つの受信部56が、周方向に等角度ピッチで並ぶ。
【0054】
発信部55として機能させる超音波センサ16は、複数の振動子17から時間差で超音波を発信させるフェイズドアレイ方式で制御されて良い。発信部55として機能する複数の振動子17から発信された二次波は、音響レンズ58を通過することによって、ルーメン15の前方で集束され、治療検査対象である生体組織に照射される。受信部56として機能させる6つの超音波センサ16の振動子17は、生体組織で反射した超音波を受信する。
【0055】
<他の実施の態様>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施の態様に限定されるものではなく、例えば次のような実施の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施の態様1~4では、超音波センサはカテーテルの径方向に一列に複数の振動子17が配置される構造を示したが、複数の振動子がアレイ状に配置されるのであっても良く、カテーテル等の横断面全体に複数の振動子がアレイ状に配置されるのであっても良い。複数の振動子がアレイ状に配置されることにより、複数の振動子17から発信される二次波の進行方向は、上記の実施の態様1~4で説明をしたカテーテルA等の径方向だけでなく、周方向にも調整されることが可能となる。
上記実施の態様1~4では、超音波センサに対して音響レンズが相対的に可動である例を示したが、照射対象である生体組織に対して相対的に可動であれば超音波センサと音響レンズとは相対的に固定されるのであっても良い。例えば超音波センサと音響レンズとを含むカテーテルの先端部がカテーテルの基端部での操作によりカテーテルの長軸を中心として回転し、生体組織に対して相対的に可動とされる、等である。超音波センサと音響レンズとからなる発信部が生体組織に対して可動となることで、異なる角度から生体組織に対して超音波を照射することが可能となる。また集束して照射された超音波が、生体組織の形状に応じて種々の角度に反射された場合であっても、複数の受信部として機能する超音波センサが反射された超音波を受信するため、少ない超音波の照射回数で生体組織の形状を把握することが可能となる。
上記実施の態様1~4では、発信部が複数の振動子によって構成されているが、発信部は、1つの振動子だけで構成されていてもよい。
上記実施の態様1~4では、受信部が複数の振動子によって構成されているが、受信部は、1つの振動子だけで構成されていてもよい。
上記実施の態様1~4では、発信部を構成する振動子は、超音波の発信機能と超音波の受信機能の両機能を有するが、発信部を構成する振動子は、超音波の発信機能のみを有し、超音波の受信機能を有しないものであってもよい。
上記実施の態様1~4では、受信部を構成する振動子は、超音波の発信機能と超音波の受信機能の両機能を有するが、受信を構成する振動子は、超音波の受信機能のみを有し、超音波の発信機能を有しないものであってもよい。
上記実施の態様1~4では、複数の受信部が反射波を受信するようになっているが、受信部の数は、1つだけであってもよい。この場合、1つの受信部を構成する複数の振動子が、径方向と周方向の両方向へ広範囲に亘って並ぶように配置されていれば、反射波の受信効率が向上する。
上記実施の態様1~4では、1つの超音波センサを構成する複数の振動子が径方向に並ぶように配置されているが、1つの超音波センサを構成する複数の振動子は、周方向に並ぶように配置されていてもよい。
上記実施の態様1~4では、複数の超音波センサが周方向に並ぶように配置されているが、複数の超音波センサは、径方向に並ぶように配置されていてもよい。この場合、1つの超音波センサを構成する複数の振動子は、周方向に並ぶように配置されてもよく、径方向に並ぶように配置されていてもよい。
上記実施の態様1~4では、1本のカテーテルに1本のルーメンが挿通されているが、1本のカテーテルに複数本のルーメンが挿通されていてもよい。
【0056】
上記実施の態様1~3では、インナチューブがアウタチューブの内周に摺接しながら回転するが、インナチューブは、ルーメンの外周に摺接しながらアウタチューブに対して相対回転するようにしてもよい。この場合、支持板部は、インナチューブの外周面から径方向へフランジ状に突出した形態となる。
上記実施の態様1~3では、インナチューブをアウタチューブの内周に摺接する形態とした上で、インナチューブに超音波センサを設け、アウタチューブに音響レンズを設けたが、インナチューブをルーメンの外周に摺接する形態とした上で、アウタチューブに超音波センサを設け、インナチューブに音響レンズを設けてもよい。
上記実施の態様1,2では、複数の受信部の全てがルーメンを包囲するように配置されているが、複数の受信部のうち一部の受信部のみがルーメンを包囲していてもよい。
上記実施の態様1,2では、1つのカテーテルに8つの超音波センサを設けたが、1つのカテーテルに設ける超音波センサの数は、7つ以下でもよく、9つ以上でもよい。
【0057】
上記実施の態様1では、1つの音響レンズが1つの超音波センサを覆うが、複数の音響レンズが複数の超音波センサを個別に覆うようにしてもよい。この場合、音響レンズで覆われて発信部として機能する複数の超音波センサは、周方向に隣り合うように配置されていてもよく、周方向において受信部として機能する超音波センサを挟むように配置されていてもよい。
上記実施の態様3では、1本のカテーテルに4つの超音波センサを設けたが、1本のカテーテルに設ける超音波センサの数は、3つ以下でもよく、5つ以上でもよい。
上記実施の態様3では、1つの音響レンズが2つの超音波センサを覆うが、1つの音響レンズが覆う超音波センサの数は、1つでもよく、3つ以上でもよい。
上記実施の態様3では、1つの音響レンズで覆われる2つの超音波センサは、周方向に隣り合うように配置されているが、1つの音響レンズで覆われて発信部として機能する2つの超音波センサは、周方向において受信部として機能する超音波センサを挟むように配置されていてもよい。
上記実施の態様4では、1つのカテーテルに7つの超音波センサを設けたが、1つのカテーテルに設ける超音波センサの数は、6つ以下でもよく、8つ以上でもよい。
上記実施の態様4では、音響レンズが1つの超音波センサを覆うが、音響レンズが覆う超音波センサの数は、複数であってもよい。この場合、音響レンズで覆われて発信部として機能する複数の超音波センサは、周方向に隣り合うように配置されていてもよく、周方向において受信部として機能する超音波センサを挟むように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
A,B,C,D…カテーテル
10、30、40、50…チューブ
15…ルーメン
17…振動子
18、45、55…発信部
19、32、46、56…受信部
24、44、58…音響レンズ
31A…第1の発信部
31B…第2の発信部
37A…第1の音響レンズ
37B…第2の音響レンズ