(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法
(51)【国際特許分類】
E04G 3/30 20060101AFI20240220BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240220BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20240220BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
E04G3/30 303N
E04G23/02 C
E01D22/00 A
E01D21/00 A
(21)【出願番号】P 2020113320
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】595135671
【氏名又は名称】第一建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227146
【氏名又は名称】日綜産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】春日 秀文
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 暁伸
(72)【発明者】
【氏名】吉村 公一
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-31876(JP,A)
【文献】特開2004-100192(JP,A)
【文献】特開2013-104182(JP,A)
【文献】特開昭61-122367(JP,A)
【文献】実開平1-105142(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/30
E04G 23/02
E01D 22/00
E01D 21/00
E04G 3/24
E04G 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部若しくは外壁部に障害突出物を有する高架橋に高架橋用移動式足場装置を設置し、この高架橋用移動式足場装置を高架橋の橋軸方向にスライド移動させて高架橋の底壁部若しくは外壁部を順次補修するために用いられる高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法であって、
前記高架橋の底壁部若しくは外壁部に設置されるスライド用レールと、このスライド用レールに装着されてスライド用レールに沿ってスライド移動するレール移動装置と、このレール移動装置に吊設されてレール移動装置とともに前記スライド用レールに沿ってスライド移動する作業用足場とから成る前記高架橋用移動式足場装置を使用し、
前記作業用足場のスライド移動方向前側端部に設けられている延長足場上で前記障害突出物を越えたスライド前方側の前記底壁部若しくは前記外壁部に延長用レールを設置する第一工程と、
前記延長用レールに、前記スライド用レールから取り外したレール移動装置を装着して、この延長用レールに装着されたレール移動装置でも前記延長足場よりもスライド移動方向後側の前記作業用足場を吊設する第二工程と、
前記延長用レールに沿って前記レール移動装置とともに前記作業用足場を前記障害突出物を越えた橋軸方向前方側へとスライド移動させる第三工程とを有し、
この第一工程と第二工程と第三工程とを、前記作業用足場のスライド移動方向の後側端部が前記障害突出物を越えた橋軸方向前方側に至るまで順次繰り返すことを特徴とする高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法。
【請求項2】
前記レール移動装置は、前記スライド用レールに複数装着されていて、この複数のレール移動装置に前記作業用足場が吊設されており、
前記第二工程は、前記障害突出物と最も接近している前記レール移動装置を前記スライド用レールから取り外し、この取り外したレール移動装置を前記延長足場上若しくは前記作業用足場上で前記延長用レールに装着して、この延長用レールに装着されたレール移動装置でも前記作業用足場を吊設するようにし、
前記スライド用レールに残存するレール移動装置は、前記第三工程を経て前記障害突出物に最も接近したものを順次スライド用レールから取り外して前記延長用レールに装着し、
スライド移動開始前に前記障害突出物と最も離間していた前記レール移動装置を前記スライド用レールから取り外して前記延長用レールに装着するまで、前記第一工程と前記第二工程と前記第三工程とを繰り返すことを特徴とする請求項1記載の高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法。
【請求項3】
前記スライド用レールは、所定長のものが複数継ぎ足されることによって長尺レールに形成されるものが採用され、
前記作業用足場の高架橋橋軸方向へのスライド移動により前記レール移動装置が通り過ぎたスライド用レールを前記底壁部若しくは前記外壁部から取外し、
この取り外したスライド用レールを、前記延長足場上で前記障害突出物を越えたスライド前方側の前記底壁部若しくは前記外壁部に前記延長用レールとして設置することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法。
【請求項4】
前記第一工程は、前記作業用足場のスライド移動方向前側若しくは前記延長足場を仮吊装置で前記底壁部若しくは前記外壁部に吊設してから、延長足場上で前記障害突出物を越えたスライド前方側の前記底壁部若しくは前記外壁部に延長用レールを設置するようにし、
前記第二工程は、作業用足場のスライド移動方向前側若しくは前記延長足場が前記仮吊装置で吊設された状態で、前記延長用レールに前記スライド用レールから取り外したレール移動装置を装着して、この延長用レールに装着されたレール移動装置でも前記作業用足場を吊設するようにしたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道などの高架橋の補修作業に用いられる高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道などの高架橋の壁面の補修作業には、従来から高架橋に沿って橋軸方向にスライド移動可能な移動式足場装置が用いられている。
【0003】
この移動式足場装置について簡単に説明すると、高架橋に設置されるスライド用レールと、このスライド用レールに沿ってスライド移動するレール移動装置と、このレール移動装置に吊設されて前記高架橋の下方に配設され、レール移動装置により高架橋の橋軸方向に移動させて高架橋の下側壁面に対し補修作業を行う作業用足場とを備えていて、作業用足場上に搭乗した作業者が、移動式足場装置を高架橋の橋軸方向に移動させながら高架橋の下側壁面等に対して補修作業を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような移動式足場装置は、高架橋の底壁部の下側壁面や外壁部の外側壁面に電源ボックスや電化柱などが突出状態に配設されていると、これらが障害物となって足場装置を移動できなくなってしまう。
【0006】
そのため、従来の移動式足場装置では、足場が障害物付近に達したら一度補修作業を中断して足場装置を撤去し、障害物を越えた位置に再度移動式足場を設置し直して補修作業を再開しなければならず、非常に作業能率が悪かった。
【0007】
本発明は、このような問題点に注目し、これを解決しようとするもので、高架橋の底壁部や外壁部に電源ボックスや電化柱などの障害突出物が存在しても、これらの障害突出物を乗り越えるようにスライド移動して高架橋の底壁部や外壁部に補修作業を連続的に行うことができる高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
底壁部2若しくは外壁部4に障害突出物20を有する高架橋1に高架橋用移動式足場装置Sを設置し、この高架橋用移動式足場装置Sを高架橋1の橋軸方向にスライド移動させて高架橋1の底壁部2若しくは外壁部4を順次補修するために用いられる高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法であって、
前記高架橋1の底壁部2若しくは外壁部4に設置されるスライド用レール6と、このスライド用レール6に装着されてスライド用レール6に沿ってスライド移動するレール移動装置7と、このレール移動装置7に吊設されてレール移動装置7とともに前記スライド用レール6に沿ってスライド移動する作業用足場8とから成る前記高架橋用移動式足場装置Sを使用し、
前記作業用足場8のスライド移動方向前側端部に設けられている延長足場19上で前記障害突出物20を越えたスライド前方側の前記底壁部2若しくは前記外壁部4に延長用レール6Aを設置する第一工程と、
前記延長用レール6Aに、前記スライド用レール6から取り外したレール移動装置7を装着して、この延長用レール6Aに装着されたレール移動装置7でも前記延長足場19よりもスライド移動方向後側の前記作業用足場8を吊設する第二工程と、
前記延長用レール6Aに沿って前記レール移動装置7とともに前記作業用足場8を前記障害突出物20を越えた橋軸方向前方側へとスライド移動させる第三工程とを有し、
この第一工程と第二工程と第三工程とを、前記作業用足場8のスライド移動方向の後側端部が前記障害突出物20を越えた橋軸方向前方側に至るまで順次繰り返すことを特徴とする高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法に係るものである。
【0010】
また、前記レール移動装置7は、前記スライド用レール6に複数装着されていて、この複数のレール移動装置7に前記作業用足場8が吊設されており、
前記第二工程は、前記障害突出物20と最も接近している前記レール移動装置7を前記スライド用レール6から取り外し、この取り外したレール移動装置7を前記延長足場19上若しくは前記作業用足場8上で前記延長用レール6Aに装着して、この延長用レール6Aに装着されたレール移動装置7でも前記作業用足場8を吊設するようにし、
前記スライド用レール6に残存するレール移動装置7は、前記第三工程を経て前記障害突出物20に最も接近したものを順次スライド用レール6から取り外して前記延長用レール6Aに装着し、
スライド移動開始前に前記障害突出物20と最も離間していた前記レール移動装置7を前記スライド用レール6から取り外して前記延長用レール6Aに装着するまで、前記第一工程と前記第二工程と前記第三工程とを繰り返すことを特徴とする請求項1記載の高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法に係るものである。
【0011】
また、前記スライド用レール6は、所定長のものが複数継ぎ足されることによって長尺レールに形成されるものが採用され、
前記作業用足場8の高架橋1橋軸方向へのスライド移動により前記レール移動装置7が通り過ぎたスライド用レール6を前記底壁部2若しくは前記外壁部4から取外し、
この取り外したスライド用レール6を、前記延長足場19上で前記障害突出物20を越えたスライド前方側の前記底壁部2若しくは前記外壁部4に前記延長用レール6Aとして設置することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法に係るものである。
【0012】
また、前記第一工程は、前記作業用足場8のスライド移動方向前側若しくは前記延長足場19を仮吊装置21で前記底壁部2若しくは前記外壁部4に吊設してから、延長足場19上で前記障害突出物20を越えたスライド前方側の前記底壁部2若しくは前記外壁部4に延長用レール6Aを設置するようにし、
前記第二工程は、作業用足場8のスライド移動方向前側若しくは前記延長足場19が前記仮吊装置21で吊設された状態で、前記延長用レール6Aに前記スライド用レール6から取り外したレール移動装置7を装着して、この延長用レール6Aに装着されたレール移動装置7でも前記作業用足場8を吊設するようにしたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成したから、高架橋用移動式足場装置が障害突出物に至る度に一々撤去して設置し直すような煩わしい作業を伴うことなく、障害突出物を乗り越えるようにスライド移動して高架橋の底壁部や外壁部に補修作業を連続的に行うことができる極めて実用性に優れた高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法となる。
【0014】
また、請求項2記載の発明においては、前記作用効果を確実に発揮する一層実用性に優れた高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法となる。
【0015】
また、請求項3記載の発明においては、作業用足場(レール移動装置)が通り過ぎて不要となったスライド用レールを取り外して延長用レールとして再利用するので、スライド用レール及び延長用レールとして機能するレール材の現場への持ち込み量を減量でき、それだけ作業を低コスト化できる一層実用性に優れた高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法となる。
【0016】
また、請求項4記載の発明においては、仮吊装置で吊設することにより延長足場上で延長用レールを設置する作業も、延長用レールにスライド用レールから取り外したレール移動装置を装着して、この延長用レールに装着されたレール移動装置で作業用足場を吊設する作業も安全に行うことができる一層実用性に優れた高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施例の高架橋用移動式足場を高架橋に設置した状態を示す説明側面図である。
【
図2】
図1を、高架橋用移動式足場のスライド移動方向後側から見た説明図である。
【
図3】
図1に続いて、吊装置が通り過ぎたスライド用レールを順次取外しながら底壁作業用足場を橋軸方向にスライド移動させて、障害突出物を越えたスライド前方側の底壁部に延長足場を仮吊装置で吊設した状態を示す説明側面図である。
【
図4】
図3に続いて、取り外したスライド用レールを、延長用レールとして障害突出物を越えたスライド前方側の底壁部に設置した状態を示す説明側面図である。
【
図5】
図4に続いて、延長用レールにスライド用レールから取り外した吊装置を装着して、この延長用レールに装着された吊装置でも延長足場よりもスライド移動方向後側の作業用足場を吊設した状態を示す説明側面図である。
【
図6】
図5に続いて、底壁作業用足場をスライド移動させ、延長用レールを継足し設置するとともに、延長足場よりもスライド移動方向後側の作業用足場を仮吊装置で吊設した状態を示す説明側面図である。
【
図7】
図6に続いて、延長用レールにスライド用レールから取り外した吊装置を装着して、この延長用レールに装着された吊装置でも延長足場よりもスライド移動方向後側の作業用足場を吊設した状態を示す説明側面図である。
【
図8】足場姿勢保持用ガイドが障害突出物を避けて移動する様子を示す説明側面図である。
【
図9】
図7に続いて、外壁作業用足場が障害突出物を避けてスライド移動する様子を示す説明側面図である。
【
図10】
図9を、高架橋用移動式足場のスライド移動方向後側から見た説明図である。
【
図12】
図9に続いて、外壁作業用足場が障害突出物を越えた位置に至った状態を示す説明側面図である。
【
図13】
図12を、高架橋用移動式足場のスライド移動方向後側から見た説明図である。
【
図14】本実施例の高架橋用移動式足場のスライド用レールとレール移動装置との関係,足場姿勢保持用ガイド並びに足場スライド停止手段を示す説明斜視図である。
【
図15】本実施例の高架橋用移動式足場の接離スライド機構並びに外壁足場位置決め手段を示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の最適な実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0019】
本発明は、高架橋1の底壁部2若しくは外壁部4に設置されるスライド用レール6と、このスライド用レール6に装着されてスライド用レール6に沿ってスライド移動するレール移動装置7と、このレール移動装置7に吊設されてレール移動装置7とともに前記スライド用レール6に沿ってスライド移動する作業用足場8とから成る前記高架橋用移動式足場装置Sを使用し、この高架橋用移動式足場装置Sを前記スライド用レール6に沿って高架橋1の橋軸方向にスライド移動させて高架橋1の底壁部2若しくは外壁部4を順次補修する。
【0020】
また、高架橋1の底壁部2若しくは外壁部4に障害突出物20があるところでは、以下の第一工程、第二工程、第三工程を順次行う。
【0021】
具体的には、前記第一工程として、前記作業用足場8のスライド移動方向前側端部に設けられている延長足場19上で前記障害突出物20を越えたスライド前方側の前記底壁部2若しくは前記外壁部4に延長用レール6Aを設置する。
【0022】
次いで、前記第二工程として、前記延長用レール6Aに、前記スライド用レール6から取り外したレール移動装置7を装着して、この延長用レール6Aに装着されたレール移動装置7でも前記延長足場19よりもスライド移動方向後側の前記作業用足場8を吊設する。
【0023】
次いで、前記第三工程として、前記延長用レール6Aに沿って前記レール移動装置7とともに前記作業用足場8を前記障害突出物20を越えた橋軸方向前方側へとスライド移動させる。
【0024】
次いで、この第一工程,第二工程,第三工程を、前記作業用足場8のスライド移動方向の後側端部が前記障害突出物20を越えた橋軸方向前方側に至るまで順次繰り返す。
【0025】
このように、障害突出物20を乗り越えるように高架橋用移動式足場Sを移動させることができ、高架橋1の底壁部2や外壁部4に障害突出物20も含めて補修作業を連続的に行うことができる。
【実施例】
【0026】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0027】
本実施例は、底壁部2若しくは外壁部4に障害突出物20を有する高架橋1に高架橋用移動式足場装置Sを設置し、この高架橋用移動式足場装置Sを高架橋1の橋軸方向にスライド移動させて高架橋1の底壁部2若しくは外壁部4を順次補修するために用いられる高架橋用移動式足場装置のスライド移動工法に係るものである。
【0028】
先ず、本実施例で使用する高架橋用移動式足場装置Sについて説明すると、前記高架橋1の底壁部2に設置される(図示していないが外壁部4に設置される構成が採用されていても良い。)スライド用レール6と、このスライド用レール6に装着されてスライド用レール6に沿ってスライド移動するレール移動装置7と、このレール移動装置7に吊設されてレール移動装置7とともに前記スライド用レール6に沿ってスライド移動する作業用足場8とから構成されている。
【0029】
スライド用レール6は、
図11,
図14に示すようなH型鋼6が採用されている。
【0030】
レール移動装置7は、吊装置7が採用され、この吊装置7に前記作業用足場8が吊設されていて、前記スライド用レール6に沿ったこの吊装置7の走行移動走行移動により前記作業用足場8が後述する外壁作業用足場9とともに高架橋1の橋軸方向にスライド移動し得るように構成されている。
【0031】
また、この吊装置7についてさらに説明すると、
図11,
図14に示すように、前記H型鋼6に沿ってスライド走行移動可能な既存のギヤードトロリ7Aとプレントロリ7Bが採用され、このトロリ7に備わる吊チェーン31に作業用足場8が吊設されており、これらのうちのギヤードトロリ7Aの駆動用チェーン32を作業用足場8上の作業者が手動で操作することにより、この作業用足場8とともに後述する外壁作業用足場9が高架橋1の橋軸方向にスライド移動するように構成されている。
【0032】
作業用足場8は、QuikDeck(登録商標)と称される既存の吊り足場が採用されていて、前記高架橋1の橋軸方向に沿った前後方向に長さを有する平面視長方形状の作業床22の周囲に落下防止柵23が立設される形態に構成されており(以下、本実施例では、橋軸方向と平行な方向を作業用足場8の前後方向、橋軸方向と直交する方向を作業用足場8の左右方向と定めて説明する。)、複数の前記吊装置7の吊チェーン31に連結されて前記高架橋1の底壁部2の下方に吊り下げ状態に配設され、吊装置7により高架橋1の橋軸方向に移動させてこの底壁部2の下側壁面3に対し補修作業を行えるように構成、すなわち底壁作業用足場8として機能するように構成されている。
【0033】
また、この底壁作業用足場8は、前記高架橋1の橋脚11より前記外壁部4側に存して底壁部2の下方に配設される左右幅(橋軸方向と直交する方向の幅)を有する形状に形成されていて、この底壁作業用足場8が橋脚11に接触することなく前記スライド用レール6に沿って高架橋1の橋軸方向にスライド移動し得るように構成されている。
【0034】
また、この底壁作業用足場8には、前記高架橋1の外壁部4の外方に配設され、前記吊装置7により底壁作業用足場8とともに高架橋1の橋軸方向に移動させてこの外壁部4の外側壁面5に対し補修作業を行う外壁作業用足場9が立設状態に設けられている。
【0035】
さらに具体的には、前記底壁作業用足場8は、前記高架橋1の外壁部4側に配設される端部であって、前後方向の中ほどより後側をこの外壁部4より外方へ突出状態に延設してこの延設足場部分が連絡用足場12として構成されており、この連絡用足場12上に前記外壁作業用足場9が設けられて、外壁作業用足場9が外壁部4より外方へ突出状態に配設されているとともに、この連絡用足場12を介して作業者が底壁作業用足場8と外壁作業用足場9とを往来し得るように構成されている。尚、QuikDeck(登録商標)を底壁作業用足場8として採用している本実施例によれば、この連絡用足場12の構築も容易に行われる。
【0036】
また、本実施例の外壁作業用足場9は、上下二段に足場板24が配された縦長の枠状足場体に構成されているとともに、高架橋1に対して設置された際に前記外壁部4の高さと同等な高さ寸法を有する形状に形成されている。
【0037】
図中符号27は、外壁作業用足場9の中ほどより下方位置の前後二箇所と前後の前記走行用レール13の内側(高架橋1の橋脚11に近い側)位置との間に架設状態に設けられて外壁作業用足場9の立設状態を補強支持する支持桟、28は、支持桟27の両端部を外壁作業用足場9と走行用レール13とに連結するための連結具(自在型クランプ)である。
【0038】
このように外壁部4より外方へ配設される外壁作業用足場9を底壁作業用足場8(に連設する連絡用足場12)上に有することから、底壁作業用足場8は、外壁部4側に配設される側が重く、従って底壁作業用足場8には、その作業床22の外壁部4側が下方へ落ち込もうとする荷重が加わることになるが、本実施例では、前記底壁部2の下側壁面3の橋脚11寄り位置に下方から突き当たってこの下側壁面3に沿って走行可能な棒状の足場姿勢保持用ガイド17が、底壁作業用足場8の橋脚11配設側に設けられている(
図2,
図10,
図13,
図14参照)。
【0039】
また、この足場姿勢保持用ガイド17についてさらに詳しく説明すると、
図8,
図14に示すように、底壁作業用足場8の前記橋脚11に臨設する側の端部に、この底壁作業用足場8の前後方向に間隔を置いた数箇所に立設状態に設けられており、この足場保持用ガイド17のそれぞれの上端部には、前記底壁部2の下側壁面3の橋脚11寄り位置に下方から突き当たってこの下側壁面3に沿って走行可能な突き当りローラ25が設けられている。図中符号36は隣接する足場姿勢保持用ガイド17間に着脱自在に介在されて足場姿勢保持用ガイド17の隣接間隔を適正に保持するための介在桟である。
【0040】
また、この足場姿勢保持用ガイド17は、操作ハンドル26の正・逆回転操作により伸縮調整可能に構成されていて、底壁部2の下側壁面3に障害突出物20が存在している箇所では、前記介在桟36を取外しこの足場姿勢保持用ガイド17を短く縮めることによって障害突出物20を避けて移動し得るように構成されている(
図8参照)。
【0041】
図中符号33は足場姿勢保持用ガイド17の補強桟である。
【0042】
また、前記外壁作業用足場9には、上部に前記高架橋1の外壁部4に沿ってスライド移動可能な外壁足場用ガイド16が設けられている(
図2,
図10,
図13参照)。
【0043】
この外壁足場用ガイド16は、詳しく図示していないが、前記外壁部4の上端部に被嵌装着されて走行可能となる構成のものが採用されているとともに、後述する接離スライド機構10を介した外壁作業用足場9のスライド移動に対応して伸縮調整可能な構成が採用されている。
【0044】
また、本実施例の前記外壁作業用足場9は、前記高架橋1外壁部4の外側壁面5に対して接近・離反方向にスライド移動可能な接離スライド機構10を介して前記底壁作業用足場8に設けられている。
【0045】
具体的には、前記接離スライド機構10は、前記高架橋1の橋軸方向と直交する底壁作業用足場8の左右方向にレール長を有する二本の走行用レール13が前記連絡用足場12上の前後に平行に設置され、この二本の走行用レール13に沿って走行可能な車輪14が前記外壁作業用足場9下部の前後左右四箇所に設けられていて、この四箇所の車輪14を介して外壁作業用足場9が前記高架橋1の外壁部4の外側壁面5に対し安定的に接近・離反スライド移動するように構成されている(
図15参照)。
【0046】
また、この外壁作業用足場9の前記外壁部4に対する接離スライド移動を阻止して位置決め保持する外壁足場位置決め手段15を備えている。
【0047】
この外壁足場位置決め手段15について具体的に説明すると、前記外壁作業用足場9下部の前記四箇所の車輪14に対応する前後左右四箇所に、前記走行用レール13を跨ぐようにして配設される略コ字状の脚枠34が垂設され、この脚枠34には、締緩操作により走行用レール13に対し螺動接離する締付ボルト35が螺着されていて、この締付ボルト35を締付操作により走行用レール13に圧接させると、外壁作業用足場9の前記外壁部4に対する接離スライド移動が阻止されて外壁作業用足場9が位置決め状態となり、締付ボルト35を緩めて走行用レール13から離間させると、外壁作業用足場9が前記接離スライド機構10を介して前記外壁部4に対し接離スライド移動可能となるように構成されている。
【0048】
本実施例の高架橋用移動式足場装置Sは、前記底壁作業用足場8の前記スライド用レール6に対するスライド移動を阻止して位置決め保持する足場スライド停止手段18を備えている。
【0049】
具体的には、本実施例では、前記吊装置7を前記スライド用レール6に複数個(図面は左右のスライド用レール6に夫々五個ずつ)装着するが、隣接する吊装置7間には、間隔保持桟29が着脱自在に架設されていて、この間隔保持桟29によって複数の吊装置7の隣接間隔が適正間隔に保持されるように構成されており、この間隔保持桟29に前記足場スライド手段18が設けられている。
【0050】
この足場スライド停止手段18は、前記間隔保持桟29の上部に圧接部18が突設されているとともに、この圧接部18は、回転ハンドル30の正・逆回転操作により突没制御可能に構成されていて、この圧接部18を前記スライド用レール6に圧接させることで底壁作業用足場8の前記スライド用レール6に対するスライド移動が阻止されて位置決め保持され、圧接部18のスライド用レール6への圧接状態を解除することで底壁作業用足場8がスライド用レール6に対しスライド移動可能となるように構成されている。
【0051】
また、本実施例の前記底壁作業用足場8は、前記スライド用レール6に沿ったスライド移動方向前側の端部に、このスライド移動方向前側の障害物20を越えた前方の前記底壁部2若しくは外壁部4に延長用レール6Aを設置する作業,設置した前記延長用レール6Aに前記吊装置7を付け替える作業,若しくは設置した前記延長用レール6に前記吊装置7を付け替える間底壁作業用足場8を仮吊設するための仮吊装置21を前記底壁部2に設置する作業を行うための延長足場19が延設されている。
【0052】
この延長足場19は、底壁作業用足場8に予め設けてあっても良いし、底壁作業用足場8の前側が障害突出物20付近に至ったところで、底壁作業用足場8のスライド移動方向前側に構築するようにしても良く、この延長足場19構築作業も、QuikDeck(登録商標)を底壁作業用足場8として採用している本実施例によれば容易に行われる。
【0053】
また、この延長足場19は、
図3に示すように、底壁作業用足場8の最もスライド移動方向前側を吊設している吊装置7が障害突出物20に近接するスライド用レール6の端部に至った際に、障害突出物20を越えたスライド前方側に至り、この延長足場19上で障害突出物20を越えたスライド前方側の前記底壁部2に延長用レール6Aを設置することが可能な延設長を有するものに設定構成されている。
【0054】
次に、上述のように構成した本実施例の高架橋用移動式足場Sのスライド移動工法を説明する。尚、図面は新幹線の高架橋1を示しており、この高架橋1には、橋軸方向に間隔を置いて電化柱が設けられている。また、この電化柱は、底壁部2の下側壁面3から外壁部4の外側壁面5にかけて外方へ突出状態に設けられており、本実施例では、この電化柱を障害突出物20として説明する。
【0055】
先ず、高架橋1底壁部2の、橋脚11より外壁部4側の内外(左右)二箇所に間隔を置いて、例えばアンカーを使用するなどして前記スライド用レール6を互いに平行関係にして設置する(
図2参照)。
【0056】
また、スライド用レール6は、所定長のものが複数継ぎ足されることによって長尺レールに形成されるものが採用されている。
【0057】
次いで、左右のスライド用レール6に夫々五個ずつ前記吊装置7としてのトロリ7を装着し、この合計十個のトロリ7で前記底壁作業用足場8を安定的に吊設して、このトロリ7とともにスライド用レール6に沿って底壁作業用足場8をスライド移動可能に設置する(
図1参照)。
【0058】
また、合計十個のトロリ7のうちのいくつかはギヤードトロリ7Aとし、残りをプレントロリ7Bとして、ギヤードトロリ7Aの駆動用チェーン32を底壁作業用足場8上の作業者が手動で操作することにより、この作業用足場8とともに後述する外壁作業用足場9を高架橋1の橋軸方向にスライド移動させることができるようにし、高架橋用移動式足場装置Sを高架橋1の橋軸方向にスライド移動させて高架橋1の底壁部2並びに外壁部4を順次補修していく。
【0059】
底壁作業用足場8の最もスライド移動前方側を吊設している吊装置7が障害突出物20(電化柱)に近接するスライド用レール6の端部に至り、これ以上スライド移動できない状況となったら、以下の第一工程と、第二工程と、第三工程を順次繰り返し行う。
【0060】
第一工程について説明すると、前記底壁作業用足場8のスライド移動方向前側端部に設けられている延長足場19上で前記障害突出物20を越えたスライド前方側の前記底壁部2に延長用レール6Aを設置する。
【0061】
具体的には、底壁作業用足場8の最もスライド移動前方側を吊設している吊装置7がスライド移動できないスライド用レール6の端部に至ったら、障害突出物20を越えたスライド前方側に至っている延長足場19部分をレバーブロック(登録商標)21を採用した仮吊装置21で吊設して延長足場19の安定化を図り、それからこの延長足場19上で作業者が障害突出物20を越えたスライド前方側の前記底壁部2に延長用レール6Aを設置する。
【0062】
また、この延長用レール6Aは、底壁作業用足場8の高架橋1橋軸方向へのスライド移動により前記吊装置7が通り過ぎたスライド用レール6を前記底壁部2から取外し(
図3参照)、この取り外したスライド用レール6を延長用レール6Aとして再利用する(
図4参照)。尚、延長用レール6Aは、スライド用レール6の再利用でなく新規のレール材を設置していくようにしても良い。また、本実施例は、底壁作業用足場8(と外壁作業用足場9)のスライド移動と同時に吊装置7が通り過ぎたスライド用レール6を回収していく工法を示しているが、このような移動途中での回収を行わずに、作業終了後底壁作業用足場8を作業開始位置まで戻り動させる際に延長用レール6A(スライド用レール6)を回収するようにしても良い。
【0063】
第二工程について説明すると、前記障害突出物20と最も接近している吊装置7を前記スライド用レール6から取り外し、(この際前記間隔保持桟29も取外し、)この取り外した吊装置7を前記延長用レール6Aに装着して、この延長用レール6Aに装着された吊装置7でも前記延長足場19よりもスライド移動方向後側の前記作業用足場8を吊設する(
図5参照)。
【0064】
第三工程について説明すると、最初にスライド用レール6から取り外した吊装置7の次に障害突出物20と接近していた吊装置7が、障害突出物20(電化柱)に近接するスライド用レール6の端部に至るまで、前記延長用レール6Aとスライド用レール6に沿って前記吊装置7とともに前記作業用足場8を前記障害突出物20を越えた橋軸方向前方側へとスライド移動させる。
【0065】
この第三工程が終了したら、続いて前記第一工程を行い、第一工程が終了したら、例えば、障害突出物20を越えたスライド前方側に至っている底壁作業用足場8部分をレバーブロック(登録商標)21を採用した仮吊装置21で吊設して底壁作業用足場8の安定化を図り、それから前記第二工程、すなわち前記障害突出物20と最も接近している吊装置7を前記スライド用レール6から取り外し、この取り外した吊装置7を前記延長用レール6Aに装着して、この延長用レール6Aに装着された吊装置7でも前記延長足場19よりもスライド移動方向後側の前記作業用足場8を吊設し(
図7参照)、その後前記第三工程を行う。
【0066】
次いで、この第一工程と第二工程と第三工程とを、前記作業用足場8のスライド移動方向の後側端部が前記障害突出物20を越えた橋軸方向前方側に至るまで、言い換えると、スライド移動開始前に前記障害突出物20と最も離間していた前記吊装置7を前記スライド用レール6から取り外して前記延長用レール6Aに装着するまで順次繰り返す。
【0067】
また、途中、外壁作業用足場9が障害突出物20(電化柱)に接触してしまう場合には、前記外壁足場位置決め手段15(連結具28の支持桟27の締め付け固定)を解除し、前記接離スライド機構10を介して外壁作業用足場9を前記外壁部4の外側壁面5より離反する方向にスライド移動させ障害突出物20を避けた状態で橋軸方向にスライド移動させる(
図9~
図11参照)。
【0068】
この際、前記外壁足場位置決め手段15で外壁作業用足場9を位置決めしておくことにより、この外壁作業用足場9で障害突出物20を補修することもできる。
【0069】
外壁作業用足場9が障害突出物20を越えたら、前記接離スライド機構10を介して外壁作業用足場9を前記外壁部4の外側壁面5に接近する方向にスライド移動させる(
図11,
図12参照)。
【0070】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0071】
1 高架橋
2 底壁部
4 外壁部
6 スライド用レール
6A 延長用レール
7 レール移動装置
8 作業用足場
19 延長足場
20 障害突出物
21 仮吊装置
S 高架橋用移動式足場装置