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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ジェミニウイルス抵抗性植物
(51)【国際特許分類】
   A01H 5/00 20180101AFI20240220BHJP
   A01H 6/00 20180101ALI20240220BHJP
   A01H 6/34 20180101ALI20240220BHJP
   A01H 6/54 20180101ALI20240220BHJP
   A01H 6/60 20180101ALI20240220BHJP
   A01H 6/82 20180101ALI20240220BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240220BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
A01H5/00 A
A01H6/00
A01H6/34
A01H6/54
A01H6/60
A01H6/82 ZNA
C07K14/415
C12N5/04
C12N5/10
C12Q1/02
C12N15/29
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020531535
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086688
(87)【国際公開番号】W WO2019122374
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】17209603.4
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508186875
【氏名又は名称】キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】プリンス, マリヌス ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン エンケヴォルト, レオノラ ジョアナ ゲルトゥルーダ
(72)【発明者】
【氏名】バーズルイス, ハンス ピーター
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/045206(WO,A1)
【文献】Database UniProt[online], Accession No. A0A068TUH6, 2014-10-01 uploaded, [retrieved on 2022-11-16], <https://rest.uniprot.org/unisave/A0A068TUH6?format=txt&versions=1>, Definition: RecName: SubName: Full=Coffea canephora DH200=94 genomic scaffold, scaffold_4 {ECO:0000313|EMBL:CDO99955.1}
【文献】Database UniProt[online], Accession No. A0A1U8GLY1, 2017-05-10 uploaded, [retrieved on 2022-11-16], < https://rest.uniprot.org/unisave/A0A1U8GLY1?format=txt&versions=1>, Definition: RecName: SubName: Full=protein PELOTA 1 {ECO:0000313|RefSeq:XP_016572281.1}
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 5/00
A01H 6/00
A01H 6/34
A01H 6/54
A01H 6/60
A01H 6/82
C07K 14/415
C12N 5/04
C12N 5/10
C12Q 1/02
C12N 15/29
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物であって、
前記野生型タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも80%の配列同一性を有するdTPタンパク質であり、
前記野生型タンパク質の発現が低下していないがその他の点では同一の対照植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバーに対する抵抗性が増加しており、
トウガラシ属(Capsicum)、キャッサバ(Manihot esculenta)、ワタ属(Gossypium)、ウリ科(Cucurbitaceae)、ナス(Solanum melongena)、オクラ(Abelmoschus esculentus)、及びマメ科(Fabaceae)からなる群から選択される、植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項2】
前記dTPタンパク質が配列番号1及び配列番号11~16のいずれか1つの配列を有する、請求項1に記載の植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項3】
前記野生型タンパク質が、前記植物細胞、植物組織、又は植物において発現していない、請求項1又は2に記載の植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項4】
ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバー及び少なくとも1つの一分節型メンバーに対する抵抗性が増加している、請求項1~3のいずれか一項に記載の植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項5】
ジェミニウイルス科がベゴモウイルス(Begomovirus)の属である、請求項1~のいずれか一項に記載の植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項6】
前記植物がトウガラシ属の植物である、請求項1~のいずれか一項に記載の植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項7】
前記植物がトウガラシ(Capsicum annuum)である、請求項に記載の植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項8】
野生型タンパク質の発現の低下が、ペッパー黄化葉巻インドネシアウイルス(Pepper Yellow Leaf Curl Indonesia Virus)及び/又はペッパー葉巻ウイルス(Pepper Leaf Curl Virus)に対する抵抗性を増加させる、請求項1~のいずれか一項に記載の植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項9】
前記植物細胞、植物組織、又は植物が、配列番号3又は配列番号5を有する改変型タンパク質をさらに発現する、請求項1~のいずれか一項に記載の植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項10】
前記改変型タンパク質が、配列番号4又は配列番号6を有する配列を含む核酸によってコードされている、請求項に記載の植物細胞、植物組織、又は植物。
【請求項11】
配列番号3又は配列番号5の配列を有する、改変型タンパク質。
【請求項12】
植物細胞、植物組織、又は植物におけるジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバーに対する増加した抵抗性について植物細胞、植物組織、又は植物をスクリーニングするための方法であって、
i)植物細胞、植物組織、又は植物を用意するステップ;及び
ii)野生型タンパク質の発現の低下についてスクリーニングするステップであり、前記野生型タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも80%の配列同一性を有するdTPタンパク質である、ステップ
を含み、
前記植物細胞、植物組織、又は植物がトウガラシ属(Capsicum)、キャッサバ(Manihot esculenta)、ワタ属(Gossypium)、ウリ科(Cucurbitaceae)、ナス(Solanum melongena)、オクラ(Abelmoschus esculentus)、及びマメ科(Fabaceae)からなる群から選択される、方法。
【請求項13】
前記dTPタンパク質が配列番号1及び配列番号11~16のいずれか1つの配列を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
iii)ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバーに対する増加した抵抗性について前記植物細胞、植物組織、又は植物をスクリーニングするステップをさらに含む、請求項1又は13に記載の方法。
【請求項15】
ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバーに対する抵抗性が増加している植物細胞、植物組織、又は植物を作製するための方法であって、
i)野生型タンパク質を発現する植物細胞、植物組織、又は植物を用意するステップであって、前記野生型タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも80%の配列同一性を有するdTPタンパク質であり、前記植物細胞、植物組織又は植物が、トウガラシ属(Capsicum)、キャッサバ(Manihot esculenta)、ワタ属(Gossypium)、ウリ科(Cucurbitaceae)、ナス(Solanum melongena)、オクラ(Abelmoschus esculentus)、及びマメ科(Fabaceae)からなる群から選択されるものであるステップ;並びに
ii)a)浸透性交雑及び
b)前記野生型タンパク質をコードする配列の少なくとも1つのヌクレオチドの改変又は欠失のうちの少なくとも1つにより、前記野生型タンパク質の発現を低下させるステップを含み、
作製された植物細胞、植物組織、又は植物において、前記野生型タンパク質の発現が低下していないがその他の点では同一の対照植物細胞、植物組織、又は植物と比較して前記抵抗性が増加されている、方法。
【請求項16】
前記dTPタンパク質が配列番号1及び配列番号11~16のいずれか1つの配列を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
作製された植物細胞、植物組織、又は植物において、前記野生型タンパク質が発現していない、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記植物を再生させるステップをさらに含む、請求項1517のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記植物細胞、植物組織、又は植物が、双子葉類である、請求項1218のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ジェミニウイルス科がベゴモウイルスの属である、請求項1218のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育種及び分子生物学の分野に関する。本発明は、ジェミニウイルス科(Geminiviridae)に対する抵抗性を与える変異を有する植物に関する。
【背景技術】
【0002】
虫媒伝染性ウイルスは、作物植物の最も有害で経済的に重大な病気のいくつかを引き起こす。独特な双子の正二十面体ウイルス粒子を有する一本鎖DNAウイルスの群であるジェミニウイルスは、これらの病気の多くの原因である。
【0003】
ジェミニウイルスは、以下の特性を共有するウイルスの生物学的及び遺伝学的に多様な科(ジェミニウイルス科)を構成する:大きさが約18×30ナノメートルである双子の準正二十面体ウイルス粒子(ビリオン)、及び約2.9~5.2キロベース(kb)の小さい環状一本鎖DNAゲノム。ゲノム構造、系統的関係、媒介昆虫、及び宿主範囲に基づいて、以下の7つの属が認められている:ベゴモウイルス属(Begomovirus)、マストレウイルス属(Mastrevirus)、クルトウイルス属(Curtovirus)、トポクウイルス属(Topocuvirus)、ベクルトウイルス属(Becurtovirus)、ツルンクルトウイルス属(Turncurtovirus)、及びエラグロウイルス属(Eragrovirus)。ジェミニウイルスは、複合病に存在する場合が多く、個々の植物は、複数のウイルスに感染し得る。ジェミニウイルスゲノムは、高率の変異、組換え、及び再集合を起こして、ウイルス多様性を増加させることができる。それらのゲノムは、ウイルス複製、移動、伝染、及び病原性に関与する5~7個のタンパク質をコードする1つ(一分節)又は2つ(二分節)のDNA成分からなる。
【0004】
天然では、ジェミニウイルスは、ヨコバイ、ツノゼミ、及びコナジラミの様々な種を含む師部摂食昆虫によって伝搬される。ジェミニウイルスに感染した植物は、単子葉植物における発育阻害;歪んだ生長;及び葉の線条と条線、並びに双子葉植物における葉の縮れ、巻き、歪み、金光色と緑黄色のモザイク/斑点、葉脈間黄化、黄斑、及び葉脈膨張、紫化、及び黄化を含む幅広い症状を示す。
【0005】
特に重要なのは、ベゴモウイルス属である、コナジラミ(タバココナジラミ(Bemisia tabaci))により伝搬されるジェミニウイルスである。これは、植物ウイルスの(種の数に関して)最も大きい属であり、いくつかは、世界中の野菜及び繊維作物における多くの壊滅的な病気の原因である。ベゴモウイルスの管理は難しく、それの媒介コナジラミ集団が膨大な数に達し得るからである。それゆえに、ベゴモウイルス抵抗性作物を育種することは、そのウイルスによって負わされる収量損失を低下させるための魅力的で、環境と調和したストラテジーを提供する。ベゴモウイルスは、A成分が5つ若しくは6つのタンパク質をコードし、B成分が2つのタンパク質をコードし、各成分が、サイズが2.5~2.8kbである二分節ゲノム(南米起源のほとんど)か、又はサテライトDNA成分有り若しくは無しの、6つのタンパク質をコードする一分節ゲノムかのいずれかを有する。
【0006】
ベゴモウイルスの例は、栽培トマトの最も壊滅的なウイルスの一つである、トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)である。トマトPelo遺伝子の発現をサイレンシングすることが、トランスジェニック植物にTYLCVに対する抵抗性を与えることが、以前、当技術分野において示されている(国際公開第2014/045206号;Lapidotら、A Novel Route Controlling Begomovirus Resistance by the Messenger RNA Surveillance Factor Pelota,PLoS Genetics(2015)11(10):e1005538)。しかしながら、トマトにおいてPelo遺伝子の発現をサイレンシングすることはまた、全収量の低下及び果実サイズの低下も生じる(Lapidot Mら、上記)。加えて、トマトPelo遺伝子のサイレンシングは、ジェミニウイルス科の一分節型メンバーに対する抵抗性を与え得るが、二分節型ジェミニウイルス科メンバーに対して少しの抵抗性も与えない(Hutton及びScott、2015;http://swfrec.ifas.ufl.edu/docs/pdf/veg-hort/tomato-institute/presentations/ti2015/ti2015_Hutton.pdf)。したがって、トマトにおいてPelo遺伝子をサイレンシングすることの使用は、限定されるように思われる。
【0007】
ジェミニウイルス感染はまた、ペッパーにも出現しており、アジアにおいてペッパー栽培の深刻な問題を引き起こしている。ペッパー黄化葉巻ウイルス(Pepper Yellow Leaf Curl Virus)(PYLCV)(De Barroら(2008) A virus and its vector, pepper yellow leaf curl virus and Bemisia tabaci, two new invaders of Indonesia. Biological Invasions 10巻(4)、p411~433)及びチリ葉巻ウイルス(Chilli Leaf Curl Virus)(ChiLCV)の大発生は、作物を壊滅させており、一方、メキシコ及び米国南部において、ウアステコ葉脈黄化ウイルス(huasteco yellow vein virus)(PHYVV)とペッパーゴールデンモザイクウイルス(Pepper Golden mosaic virus)(PepGMV)(Renteria-Canettら、2011)でのペッパー混合感染が出現している。これまで、ペッパー遺伝資源において適した抵抗源は同定されていない。
【0008】
したがって、ジェミニウイルスは、特に熱帯地方及び亜熱帯地方において、壊滅的病原体として出現しており、莫大な経済的損失をもたらし、作物生産を脅かしている。再出現した、及び新しく出現したジェミニウイルスにより引き起こされるエピデミックは、以前にはこれらのウイルスが存在しなかった地域においてさえも頻繁になりつつある。そのウイルスの伝播は、植物材料の世界的移動及び媒介コナジラミの流布によりさらに拡大することが予想される。特に、ジェミニウイルスに対して抵抗性を示すペッパー植物が強く必要とされている。加えて、そのような抵抗性植物を作製する効果的な方法が必要とされている。
【0009】
〔発明の概要〕
第1の態様において、本発明は、野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物であって、前記野生型タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、好ましくは、前記野生型タンパク質が、前記植物細胞、植物組織、又は植物に発現していない、植物細胞、植物組織、又は植物に関する。
【0010】
好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、前記野生型タンパク質の発現が低下していないがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバーに対する抵抗性が増加している。
【0011】
好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバー及び少なくとも1つの一分節型メンバーに対する抵抗性が増加している。
好ましくは、本明細書に定義されているような植物細胞、植物組織、又は植物はさらに、配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有する改変型タンパク質を発現し、
a)前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ若しくは複数のアミノ酸残基の改変を含み;又は
b)前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質であり、
前記改変型タンパク質の発現が、前記改変を含まず、又は前記切り詰めを含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較してジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させる。
【0012】
好ましくは、発芽能は、前記改変を含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物の発芽能と類似したままである。
【0013】
好ましい実施形態において、改変は、少なくとも1個、2個、又は3個のアミノ酸残基の欠失であり、好ましくは前記改変は、配列番号1の位置71、72、又は73における少なくとも1個のアミノ酸残基の欠失である。
【0014】
好ましくは、改変は、配列番号1の位置71、72、及び73におけるアミノ酸残基の欠失である。
【0015】
好ましくは、配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含む改変型タンパク質は、配列番号1の位置1~66及び位置78~378に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0016】
さらなる実施形態において、配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含む改変型タンパク質は、配列番号4と少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む核酸によってコードされる。
【0017】
好ましくは、ジェミニウイルスは、ベゴモウイルスの属である。
【0018】
好ましい実施形態において、本明細書に定義されているような植物細胞、植物組織、又は植物は、双子葉植物であり、好ましくはトウガラシ属(Capsicum)、トマト(Solanum lycopersicum)、キャッサバ(Manihot esculenta)、ワタ属(Gossypium)、ウリ科(Cucurbitaceae)(例えば、ペポカボチャ(Cucurbita pepo)、ニホンカボチャ(Cucurbita moschata)、メロン(Cucumis melo)、及びキュウリ(Cucumis sativus))、ナス(Solanum melongena)、オクラ(Abelmoschus esculentus)、及びマメ科(Fabaceae)からなる群から選択される。
【0019】
好ましくは、植物は、トウガラシ属、好ましくは、トウガラシ(Capsicum annuum)であり、前記改変は、ペッパー黄化葉巻インドネシアウイルス(Pepper Yellow Leaf Curl Indonesia Virus)及び/又はペッパー葉巻ウイルスに対する抵抗性を増加させる。
第2の態様において、本発明は、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも75%の配列同一性を有する改変型タンパク質であって、
i)前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ若しくは複数のアミノ酸残基の改変を含み、好ましくは、前記タンパク質が配列番号3の配列を有し;又は
ii)前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質であり、好ましくは、前記タンパク質が配列番号5の配列を有する、
改変型タンパク質に関する。
【0020】
第3の態様において、本発明は、本明細書に定義されているようなタンパク質をコードする配列を含む核酸に関する。
【0021】
第4の態様において、本発明は、本明細書に定義されているような核酸を含む核酸構築物であって、前記核酸が、好ましくは、植物細胞における発現のためのプロモーターと作動可能に連結されている、核酸構築物に関する。
第5の態様において、本発明は、
i)植物細胞、植物組織、又は植物を用意するステップ;
ii)野生型タンパク質の発現を低下させるステップであって、前記タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、好ましくは前記野生型タンパク質が発現しない、ステップ;
iii)前記野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物を選択するステップであって、好ましくは、前記野生型タンパク質が発現していない、ステップ;及び
iv)前記選択された植物を再生するステップ
を含む、ジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加している植物細胞、植物組織、又は植物を作製するための方法に関する。
【0022】
好ましくは、ステップii)は、野生型タンパク質をコードする遺伝子を改変し、配列番号1の位置67~77に対応する1つ若しくは複数のアミノ酸残基の改変を含む改変型タンパク質をコードする遺伝子、又は配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である改変型タンパク質をコードする遺伝子を結果として生じることにより実施される。
【0023】
本発明の好ましい方法において、植物は、双子葉類であり、好ましくはトウガラシ属、トマト、キャッサバ、ワタ属、ウリ科、ナス、オクラ、及びマメ科からなる群から選択される。
【0024】
さらなる好ましい方法において、ジェミニウイルス科はベゴモウイルスの属である。
【0025】
第6の態様において、本発明は、本明細書に定義されているような本発明の方法によって取得可能な植物に関する。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、植物細胞、植物組織、又は植物においてジェミニウイルス科の少なくとも二分節型メンバーに対する抵抗性を増加させるための方法であって、
i)植物細胞、植物組織、又は植物を用意するステップ;
ii)野生型タンパク質の発現を低下させるステップであり、前記タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、好ましくは前記野生型タンパク質が発現しない、ステップ;及び
iii)任意選択で、ジェミニウイルス科の少なくとも二分節型メンバーに対する抵抗性の増加について前記植物細胞、植物組織、又は植物をスクリーニングするステップ
を含む方法に関する。
【0027】
定義
本発明の方法、組成物、使用、及び他の態様に関する様々な用語が、本明細書及び特許請求の範囲を通して用いられている。そのような用語は、他に指示がない限り、当技術分野におけるそれらの通常の意味を与えられるものとする。他の具体的に定義された用語は、本明細書に提供された定義と一致するように解釈されるべきである。本明細書に記載されたものと類似した又は等価の任意の方法及び材料を、本発明の試験のための実施に用いることができるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載されている。
【0028】
本発明の方法に用いられる通常の技術を行う方法は、当業者に明らかであろう。分子生物学、生化学、コンピュータ化学、細胞培養、組換えDNA、バイオインフォマティクス、ゲノミクス、シーケンシング、及び関連分野における通常の技術の実施は、当業者によく知られており、例えば、以下の参考文献に論じられている:Sambrookら、Molecular Cloning.A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York、1987及び定期的更新;並びにthe series Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego。
【0029】
単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに他に規定しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの細胞(a cell)」への言及は、2つ以上の細胞の組合せを含むなどである。このように、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0030】
用語「及び/又は」は、述べられた事例の1つ又は複数が、単独で、又は述べられた事例の全部に至るまでの、述べられた事例の少なくとも1つと組み合わせて、存在し得る状況を指す。
【0031】
本明細書に用いられる場合、用語「約」は、わずかな変動を記載及び説明するために用いられる。例えば、その用語は、±(+又は-)10%以下、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%、又は±0.05%以下を指し得る。追加として、量、比率、及び他の数値は、本明細書において範囲形式で提示される場合がある。そのような範囲形式は、便利さと簡潔さのために用いられ、範囲の限界として明確に特定された数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分的範囲もまた、あたかも各数値及び部分的範囲が明確に特定されているかのように、含まれることは、柔軟に理解されるべきである。例えば、約1~約200の範囲における比率は、約1及び約200の明確に列挙された限界を含むだけでなく、約2、約3、及び約4などの個々の比率、並びに約10~約50、約20~約100などの部分的範囲もまた含むことは理解されるべきである。
【0032】
用語「含むこと」は、包括的且つオープンエンドであって、排他的ではないと解釈される。具体的には、その用語及びそのバリエーションとしては、特定された特徴、ステップ、又は成分が挙げられることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、又は成分の存在を排除すると解釈されるべきではない。
【0033】
用語「タンパク質」又は「ポリペプチド」は、交換可能に用いられ、特定の作用様式にもサイズにも3次元構造にも起源にも関係なく、アミノ酸の鎖からなる分子を指す。したがって、タンパク質の「断片」又は「一部」は、まだなお「タンパク質」と呼ばれ得る。「単離されたタンパク質」は、もはやそれの天然の環境にはなく、例えば、インビトロに、又は組換え細菌若しくは植物宿主細胞内にあるタンパク質を指すように用いられる。
【0034】
「植物」は、植物全体か、又は植物の部分、例えば、植物から取得可能な細胞、組織、若しくは器官(例えば、花粉、種子、配偶子、根、葉、花、花蕾、葯、果実など)かのいずれか、加えて、これら及び自家受粉又は交配によるそのような植物に由来する子孫のいずれかの派生物を指す。
【0035】
「植物細胞(複数可)」としては、単離された、又は組織、器官、若しくは生物体内での、プロトプラスト、配偶子、懸濁培養物、マイクロスフェア、花粉粒子などが挙げられる。植物細胞は、例えば、カルスの部分又は成長点であり得る。
【0036】
植物を栽培するための「類似した条件」とは、とりわけ、類似した温度、湿度、栄養、及び光条件、並びに類似した灌水及び昼/夜のリズムの使用を意味する。
【0037】
用語「相同性」、「配列同一性」などは、本明細書で交換可能に用いられる。配列同一性は、本明細書では、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチド又はタンパク質)配列、又は2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列の間での、その配列を比較することにより決定される場合の関係として定義される。当技術分野において、「同一性」はまた、アミノ酸又は核酸配列間の配列関連性の、場合によっては、そのような配列の一続きの間での一致によって決定される場合の、程度を意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びそれの保存アミノ酸置換を、第2のポリペプチドの配列と比較することにより決定される。「同一性」及び「類似性」は、公知の方法により容易に計算することができる。
【0038】
「配列同一性」及び「配列類似性」は、2つのペプチド又は2つのヌクレオチド配列の、その2つの配列の長さに依存してグローバル又はローカルアラインメントアルゴリズムを用いるアラインメントにより、決定することができる。類似した長さの配列は、好ましくは、配列を全長に渡って最適にアラインメントするグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を用いてアラインメントされ、一方、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を用いてアラインメントされる。その後、配列は、それらが、(例えば、プログラムGA又はBESTFITによりデフォルトパラメータを用いて最適にアラインメントされた時)(下記で定義されているように)配列同一性の少なくともある特定の最小パーセンテージを共有する場合、「実質的に同一」又は「本質的に類似」と呼ばれ得る。GAPは、Needleman及びWunschのグローバルアラインメントアルゴリズムを用いて、2つの配列をそれらの全長(完全長)に渡って、一致の数を最大にし、ギャップの数を最小にしながら、アラインメントする。グローバルアラインメントは、2つの配列が類似した長さを有する場合に配列同一性を決定するために適切に用いられる。一般的に、GAPデフォルトパラメータが用いられ、ギャップ生成ペナルティ=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)、及びギャップ伸長ペナルティ=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)である。ヌクレオチドについて、用いられるデフォルトスコアリングマトリックスは、nwsgapdnaであり、タンパク質については、デフォルトスコアリングマトリックスBlosum62である(Henikoff & Henikoff、1992、PNAS 89、915~919)。パーセンテージ配列同一性についての配列アラインメント及びスコアは、Accelrys Inc.、9685 Scranton Road、San Diego、CA 92121-3752 USAから入手できるGCG Wisconsin Package、Version 10.3などのコンピュータプログラムを用いて、又はEmbossWIN version 2.10.0におけるプログラム「needle」(グローバルNeedleman Wunschアルゴリズムを用いる)若しくは「water」(ローカルSmith Watermanアルゴリズムを用いる)などのオープンソースソフトウェアを用いて、上記のGAPについて同じパラメータを用い、又はデフォルト設定を用い(「needle」と「water」の両方について、及びタンパク質アラインメントとDNAアラインメントの両方について、デフォルトギャップ開始ペナルティは10.0であり、デフォルトギャップ伸長ペナルティは0.5である;デフォルトスコアリングマトリックスは、タンパク質についてBlossum62、DNAについてDNAFullである)、決定され得る。配列が実質的に異なる全長を有する場合、Smith Watermanアルゴリズムを用いたものなどのローカルアラインメントが好ましい。
【0039】
或いは、パーセンテージ類似性又は同一性は、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを用いて、公開データベースに対して検索することにより決定され得る。したがって、本発明の核酸及びタンパク質配列をさらに、「クエリ配列」として用いて、例えば、他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するために、公開データベースに対して検索を実施することができる。そのような検索は、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403~10のBLASTn及びBLASTxプログラム(version 2.0)を用いて実施することができる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明のオキシドレダクターゼ核酸分子と相同的なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子と相同的なアミノ酸配列を得るために、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施することができる。比較のためのギャップドアラインメントを得るために、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389~3402に記載されているようにGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTx及びBLASTn)のデフォルトパラメータを用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/におけるNational Center for Biotechnology Informationのホームページを参照。
【0040】
用語「核酸構築物」及び「核酸ベクター」は、本明細書で交換可能に用いられ、本明細書では、組換えDNAテクノロジーの使用から生じる人工の核酸分子として定義される。したがって、核酸構築物は天然に存在する核酸分子(の部分)を含み得るが、用語「核酸構築物」及び「核酸ベクター」は、天然に存在する核酸分子を含まない。
【0041】
用語「遺伝子」は、適切な制御領域(例えば、プロモーター)と作動可能に連結した、細胞においてRNA分子(例えば、mRNA)へ転写される領域(転写領域)を含むDNA断片を意味する。遺伝子は、通常、プロモーター、5’リーダー配列、コード領域、及びポリアデニル化部位を含む3’非翻訳配列(3’末端)などのいくつかの作動可能に連結した断片を含む。「遺伝子の発現」は、適切な制御領域、特にプロモーターと作動可能に連結しているDNA領域が、生物学的活性がある、すなわち、生物学的活性のタンパク質又はペプチドへ転写される能力があるRNAへ転写される過程を指す。
【0042】
「プロモーター」は、1つ又は複数の核酸の転写を調節するように機能する核酸断片を指す。プロモーター断片は、遺伝子の転写開始部位の転写の方向に対して上流(5’)に位置し、DNA依存性RNAポリメラーゼへの結合部位、転写開始部位(複数可)の存在によって構造的に同定され、任意の他のDNA配列をさらに含むことができ、他のDNA配列としては、転写因子結合部位、抑制及び活性化タンパク質結合部位、並びにプロモーターからの転写の量を制御するように直接的又は間接的に作用することが当業者に知られた任意の他のヌクレオチド配列が挙げられるが、それらに限定されない。
【0043】
任意選択で、用語「プロモーター」はまた、5’UTR領域(5’非翻訳領域)も含み得る(例えば、プロモーターとしては、本明細書では、転写領域の翻訳開始コドンの上流に1つ又は複数の部分が挙げられ得、この領域が、転写及び/又は翻訳を制御することに役割を果たし得るからである)。「構成的」プロモーターは、たいていの組織において、たいていの生理的及び発生的条件下で、活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、(例えば、ある特定の化合物の外部適用により)生理的に、又は発生的に制御されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、特定の型の組織又は細胞においてのみ活性がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】dTP遺伝子のイントロン-エクソン境界である、内因性ヌクレオチド配列を、スプライス部位を変化させるように改変することができ、その結果として、オルタナティブアクセプター部位の使用を生じることを示す図である。上部パネルは、改変されていない野生型dTP遺伝子のイントロン-エクソン境界予測を示す。下部パネルは、エクソン4の上流の改変の例を示し、その改変が、結果として、エクソン4の5’末端における9個のヌクレオチドの欠失を生じる。
図2】ビートカーリートップウイルス罹病性を示す図である。BCTVに感染していないか又は感染しているかのいずれかである、Col-0及びSALK_124403.21.45x植物におけるBCTVの相対力価。T-DNA植物においてウイルス複製は起きていない。
図3】dTP補完によるビートカーリートップウイルス罹病性を示す図である。BCTVに感染していないか又は感染しているかのいずれかである、Col-0及びSALK_124403.21.45x植物におけるBCTVの相対力価。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物であって、前記野生型タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有する、植物細胞、植物組織、又は植物に関する。本発明者らは、そのような植物細胞、植物組織、又は植物が、前記野生型タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加していることを発見した。より詳細には、本発明者らは、本明細書でさらに詳述されているような改変型タンパク質をコードする核酸配列を生じる、この野生型タンパク質をコードする遺伝子を改変することが、ジェミニウイルス科の一分節型メンバーにも、二分節型にも対する抵抗性を提供することを発見した。加えて、本発明者らは、本明細書に定義されているような改変型タンパク質の発現が、植物の発芽能を維持することを発見した。したがって、本発明は、作物防御の重要な進歩を表している。
【0046】
このように、第1の態様において、本発明は、野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物であって、前記タンパク質が、配列番号1と少なくとも約75%の配列同一性を有する、植物細胞、植物組織、又は植物に関する。
【0047】
野生型タンパク質は、植物細胞、植物組織、又は植物に通常(すなわち、天然で)存在する遺伝子によりコードされ、例えばそれが天然に存在している場合の、特定の環境条件下で少なくとも特定の発生段階に発現するタンパク質として本明細書に定義される。このように、野生型タンパク質は、それの天然環境で自然に発現するタンパク質である。加えて、本明細書で理解されているような野生型タンパク質はまた、例えば、そのタンパク質をノックアウトすることにより、最初、遺伝的に不活性化されている、天然に存在するタンパク質であり得、その後、その同じタンパク質が植物細胞、植物組織、又は植物へ再導入される。したがって、そのような通常天然に存在するタンパク質は、それが以前、植物へ再導入された場合でさえも、野生型タンパク質と見なされる。
【0048】
好ましくは、野生型タンパク質は、配列番号1と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する。さらなる実施形態において、野生型タンパク質は、配列番号1を含み、又はそれからなる。好ましくは、野生型タンパク質は、配列番号1及び11~18からなる群から選択され、さらにより好ましくは、配列番号1及び11~16からなる群から選択される配列を含み、又はそれからなる。実施形態において、野生型タンパク質は、配列番号17ではなく、及び/又は配列番号18ではない。
【0049】
発現の低下は、好ましくは、対照植物における発現レベルと比較される。対照植物は、配列番号1と少なくとも約75%の配列同一性を有するタンパク質の発現が低下するように改変されていないがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物として定義され、例えば、その植物細胞、植物組織、又は植物は、そのタンパク質、好ましくは本明細書に定義されているような野生型タンパク質の野生型発現レベルを有する。加えて、対照植物はまた、本明細書に定義されているような改変型タンパク質を発現しない。
【0050】
好ましくは、対照植物は、植物細胞、植物組織、又は植物に通常存在する野生型タンパク質をコードする遺伝子を含む。好ましくは、対照の植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属、好ましくは、トウガラシ(C.annuum)、アヒ・アマリージョ(C.baccatum)、C.シネンゼ(C.chinense)、キダチトウガラシ(C.frutescens)、又はロコト(C.pubescens)である。好ましくは、対照の植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ(C.annuum)、好ましくは、トウガラシ(C.annuum)品種Maor植物である。植物は、トウガラシ(C.annuum)品種Maor M2植物であり得る。
【0051】
実施形態において、発現は、対照植物と比較して、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は約100%低下している。
【0052】
本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現の低下は、当業者に知られた任意の通常の手段によって達成され得る。野生型タンパク質の発現を低下させる(例えば、ノックダウンする)ための非限定的例としては、ゲノム制御配列のsiRNA、エピジェネティックサイレンシング、改変、及び/又は野生型タンパク質をコードする内因性配列の少なくとも1つのアレル、好ましくは2つのアレルの少なくとも1個のヌクレオチドの改変若しくは欠失が挙げられる。好ましくは、野生型タンパク質をコードする配列は、配列番号2と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する。
【0053】
好ましい実施形態において、野生型タンパク質は発現せず、すなわち、その発現はノックアウトされている。結果として、野生型タンパク質は、植物細胞においてもはや検出されない。野生型タンパク質の発現の代わりに、変化した、非機能的な及び/又は切り詰められたタンパク質が発現することができる。野生型タンパク質の発現をノックアウトすることは、当業者に知られた任意の通常の手段により達成され得る。そのような通常の手段としては、野生型タンパク質をコードする全ての内因性配列の少なくとも1個のヌクレオチドの改変又は欠失が挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、野生型タンパク質をコードする配列は、配列番号2と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する。或いは、又は加えて、野生型タンパク質の欠如は、1つ又は複数の制御配列を改変し、又は(部分的に)欠失させることにより達成され得る。
【0054】
コード配列及び/又は制御配列を改変し、又は欠失させる非限定的例は、CRISPR-Cas又はCRISPR-Cpf1などのCRISPRテクノロジーの使用である。
【0055】
野生型タンパク質の発現は、ゲノム制御配列の改変により低下し、又はノックアウトされ得る。非限定的例として、野生型タンパク質の発現は、配列番号8と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する配列の遺伝子改変により、低下し、又はノックアウトされ得る。
【0056】
遺伝子改変は、変異、例えば、非限定的に、1つ又は複数の塩基対の挿入、欠失、又は置換のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも1~500個、1~400、1~300個、1~250個、1~200個、1~150個、1~100個、1~50個、1~25個、1~20個、1~15個、又は少なくとも1~10個の塩基対の挿入、欠失、又は置換のうちの少なくとも1つであり得る。
【0057】
さらなる実施形態において、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、野生型タンパク質の発現が低下しており、前記野生型タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、前記植物細胞、植物組織、又は植物がジェミニウイルス科に対する(ウイルス)抵抗性が増加しており、好ましくは、ジェミニウイルス科がベゴモウイルス属である。
【0058】
好ましくは、ジェミニウイルス科は、少なくとも1つ又は複数の一分節型メンバーを含む。好ましくは、ジェミニウイルス科は、少なくとも1つ又は複数の二分節型メンバーを含む。好ましくは、ジェミニウイルス科は、少なくとも1つ又は複数の一分節型及び二分節型メンバーを含む。
【0059】
好ましい実施形態において、本発明は、野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物であって、前記野生型タンパク質が配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、前記植物細胞、植物組織、又は植物が、前記野生型タンパク質の発現が低下していないがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバーに対する抵抗性が増加している、植物細胞、植物組織、又は植物に関する。好ましくは、前記植物細胞、植物組織、又は植物は、ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバー及び少なくとも1つの一分節型メンバーに対する抵抗性が増加している。好ましくは、野生型タンパク質は、前記植物細胞、植物組織、又は植物において発現していない。
【0060】
好ましくは、ジェミニウイルス科の一分節型及び/又は二分節型メンバーが、本明細書に特定されているような植物に感染する能力があるウイルスである。
【0061】
好ましくは、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、野生型タンパク質を発現しない。
【0062】
好ましくは、ジェミニウイルス科は、一分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つ又は複数のメンバーを含む。好ましくは、ジェミニウイルス科は、二分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つ又は複数のメンバーを含む。好ましくは、ジェミニウイルス科は、一分節型及び二分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つ又は複数のメンバーを含む。
【0063】
実施形態において、一分節型及び/又は二分節型ベゴモウイルスは、本明細書で特定されているような植物に感染する能力があるウイルスである。
【0064】
一実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属、好ましくはトウガラシ(Capsicum annuum)であり、又はそれから取得可能であり、前記植物細胞、植物組織、又は植物が、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性が増加している。その抵抗性は、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型ベゴモウイルスの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のメンバーについて増加し得る。
【0065】
さらなる実施形態において、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属、好ましくはトウガラシ(Capsicum annuum)であり、又はそれから取得可能であり、前記植物細胞、植物組織、又は植物が、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性が増加しており、前記植物細胞、植物組織、又は植物がまた、トウガラシ属植物に感染する能力がある二分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性も増加している。その抵抗性は、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型ベゴモウイルスの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10のメンバーについて、及び/又はトウガラシ属植物に感染する能力がある二分節型ベゴモウイルスの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10のメンバーについて増加し得る。
【0066】
一実施形態において、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属、好ましくはトウガラシ(Capsicum annuum)であり、又はそれから取得可能であり、前記植物細胞、植物組織、又は植物が、トウガラシ属植物に感染する能力がある二分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性が増加している。その抵抗性は、トウガラシ属植物に感染する能力がある二分節型ベゴモウイルスの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のメンバーについて増加し得る。
【0067】
一実施形態において、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型及び/又は二分節型ベゴモウイルスのメンバーは、ペッパー黄化葉巻ウイルス、ペッパー葉巻ウイルス、ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス、ペッパーゴールデンモザイクウイルス、ペッパー黄化葉巻インドネシアウイルス、チリ葉巻ウイルス、シナロアトマト葉巻ベゴモウイルス(Sinaloa tomato leaf curl begomovirus)、ペッパー葉巻ラホールウイルス(Pepper leaf curl Lahore virus)、カーリートップウイルス(Curly top virus)、ペッパーマイルドティグレウイルス(Pepper mild tigre virus)、ペッパー葉巻バングラデシュウイルス(pepper leaf curl Bangladesh virus)、ペッパー葉捲ウイルス(Pepper leafroll virus)、ペッパー葉脈黄化マリウイルス(Pepper yellow vein Mali virus)、ペッパーテキサスベゴモウイルス(Pepper Texas begomovirus)、ペッパーゴールデンモザイクベゴモウイルス(Pepper golden mosaic begomovirus);ペッパーウアステコベゴモウイルス(pepper huasteco begomovirus);ペッパーウアステコビジェミニウイルス(pepper huasteco bigeminivirus)、ペッパーウアステコウイルス(pepper huasteco virus)、ペッパーウアステコ葉脈黄化ベゴモウイルス(Pepper huasteco yellow vein begomovirus)、ペッパー葉巻バングラデシュベゴモウイルス(Pepper leaf curl Bangladesh begomovirus)、ペッパー葉巻ベゴモウイルス(pepper leaf curl begomovirus)、ペッパーマイルドティグレベゴモウイルス(pepper mild tigre begomovirus)、ペッパーマイルドティグレビジェミニウイルス(pepper mild tigre bigeminivirus)、及びペッパーマイルドティグレジェミニウイルス(pepper mild tigre geminivirus)からなる群から選択される。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明の植物細胞、植物組織、又は植物は、ペッパー黄化葉巻ウイルス、ペッパー葉巻ウイルス、ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス、ペッパーゴールデンモザイクウイルス、及び/又はペッパー黄化葉巻インドネシアウイルスのうちの少なくとも1つに対する抵抗性が増加している。
【0069】
好ましくは、本発明の植物細胞、植物組織、又は植物は、ペッパー黄化葉巻ウイルス、ペッパー葉巻ウイルス、ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス、及びペッパーゴールデンモザイクウイルスのうちの少なくとも1つに対する抵抗性が増加している。
【0070】
好ましくは、本発明の植物細胞、植物組織、又は植物は、ペッパー黄化葉巻ウイルス及びペッパー葉巻ウイルスのうちの少なくとも1つに対する抵抗性が増加している。
【0071】
好ましくは、本発明の植物細胞、植物組織、又は植物は、ペッパー葉巻ウイルス、好ましくはM156株(PLCV M156)、黄化葉巻インドネシアウイルス(PepYLCIV)、ウアステコ葉脈黄化ウイルス(PHYVV)、ペッパーゴールデンモザイクウイルス、及びビートカーリートップウイルス(Beet curly top virus)(BCTV)のうちの少なくとも1つに対する抵抗性が増加している。
【0072】
好ましい実施形態において、本発明は、野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物であって、前記タンパク質が配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、好ましくは前記野生型タンパク質が発現せず、前記植物細胞、植物組織、又は植物が改変型タンパク質を発現する、植物細胞、植物組織、又は植物に関する。改変型タンパク質は、好ましくは、配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する配列を有する。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明は、野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物であって、前記タンパク質が配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、好ましくは前記野生型タンパク質が発現せず、並びに、前記植物細胞、植物組織、又は植物が、配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有するタンパク質を発現し、及び前記タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含む、植物細胞、植物組織、又は植物に関する。実施形態において、改変型タンパク質の発現が、前記改変を含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させる。
【0074】
本明細書に定義されているような改変型タンパク質の発現は、内因性プロモーター、例えば、非限定的に、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現を調節するプロモーターにより調節され得る。好ましくは、プロモーターは、配列番号8と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する。
【0075】
好ましくは、改変を含むタンパク質は、配列番号1と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有し、好ましくは、改変型タンパク質は、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は約99%の配列同一性を有する。好ましくは、前記タンパク質は、配列番号1と約99.2%の配列同一性を有する。好ましくは、配列番号1はNCBIアクセッション番号XP_016572281.1に対応する。
【0076】
好ましい実施形態において、本発明は、野生型タンパク質の発現が低下している植物細胞、植物組織、又は植物であって、前記タンパク質が配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、好ましくは前記野生型タンパク質が発現しない、植物細胞、植物組織、又は植物に関する。
【0077】
植物、植物組織、又は植物細胞は、好ましくは、切り詰め型タンパク質である改変型タンパク質を発現する。切り詰め型タンパク質は、野生型タンパク質のN末端配列、好ましくは、少なくとも10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、又は350個のN末端アミノ酸を含み、又はそれからなり得る。好ましくは、植物、植物組織、又は植物細胞は、配列番号1と少なくとも約75%の配列同一性を有する改変型タンパク質を発現し、前記タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である。好ましくは、植物、植物組織、又は植物細胞は、配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有する改変型タンパク質を発現し、前記タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である。実施形態において、切り詰め型タンパク質の発現は、前記切り詰めを含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させる。
【0078】
好ましくは、切り詰め型タンパク質は、配列番号1の位置1~66及び位置78~298に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有し、前記タンパク質が、299~378、300~378、301~378、302~378、303~378、304~378、305~378、306~378、307~378、308~378、309~378、310~378、311~378、312~378、313~378、314~378、315~378、316~378、317~378、318~378、319~378、及び320~378からなる群から選択される配列番号1の位置に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である。好ましくは、切り詰め型タンパク質は、配列番号1の位置1~66及び位置78~304に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有し、前記タンパク質が、305~378、306~378、307~378、308~378、309~378、310~378、311~378、312~378、及び313~378からなる群から選択される配列番号1の位置に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である。
【0079】
好ましくは、切り詰めは、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、又は319からなる群から選択される配列番号1の位置に対応するアミノ酸残基から、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、及び378からなる群から選択される配列番号1の位置に対応するアミノ酸残基を含むそれまでの欠如である。
【0080】
好ましくは、切り詰めは、切り詰め型タンパク質をコードするDNA分子における停止コドンの存在による。好ましくは、配列番号2と、位置1~915(好ましくは、位置1~924)に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するDNA分子において停止コドンがあり、停止コドンが、916~918、919~921、922~924、925~927、928~930、931~933、及び934~936からなる群から選択される位置に対応する位置に存在する。好ましくは、停止コドンは、配列番号2の位置925~927に対応する位置に存在する。
【0081】
好ましくは、切り詰め型タンパク質は、配列番号1の位置1~308に対応する位置に渡って計算した場合、配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0082】
好ましくは、改変型タンパク質は、本明細書に定義されているような切り詰めのみを含む。
【0083】
好ましい実施形態において、改変を含まず、及び/又は切り詰めを含まない、タンパク質は、野生型タンパク質の同じアミノ酸配列を含み、又はそれからなる。したがって、野生型タンパク質は、本明細書に定義されているような改変を含まないタンパク質と同じタンパク質であり得る。したがって、好ましい実施形態において、本発明は、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有する改変型タンパク質を発現する植物細胞、植物組織、又は植物であって、前記タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ若しくは複数のアミノ酸残基の改変を含み;又は前記改変型タンパク質が配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質であり、前記改変又は切り詰めが、前記改変を含まず又は前記切り詰めを含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させ、前記改変を含まず又は前記切り詰めを含まない前記タンパク質が、前記タンパク質の野生型バージョンである、植物細胞、植物組織、又は植物に関する。好ましくは、改変型タンパク質を発現する植物細胞、植物組織、又は植物は、前記タンパク質の野生型バージョンを発現しない。
【0084】
本明細書に定義されているような植物細胞、植物組織、又は植物は、改変型タンパク質を含み得、前記改変型タンパク質が、i)配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ若しくは複数のアミノ酸残基の改変を含み、又はii)前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置1~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有する切り詰め型タンパク質であり、前記切り詰め型タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する。
【0085】
或いは、本明細書に定義されているような植物細胞、植物組織、又は植物は、少なくとも2つの異なる改変型タンパク質を含み得、i)1つの改変型タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、前記改変型タンパク質が配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含み、及びii)第2の改変型タンパク質が、配列番号1の位置1~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも75%の配列同一性を有する切り詰め型タンパク質であり、前記切り詰め型タンパク質が配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する。
【0086】
改変型タンパク質は、本明細書において、
i)配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有するタンパク質であって、前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含む、タンパク質;並びに
ii)配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有する切り詰め型タンパク質であって、前記切り詰め型タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する、切り詰め型タンパク質
のうちの少なくとも1つとして理解され、ただし、前記改変を含むタンパク質のみ、又は前記切り詰めを含むタンパク質のみが意図されることが、文章に明らかに示されている場合を除く。
【0087】
実施形態において、改変型タンパク質を含む植物細胞、植物組織、又は植物は、前記改変型タンパク質を発現しない同じ植物細胞、植物組織、又は植物、例えば、その他の点では同一の植物と比較して、ジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加している。好ましくは、前記改変型タンパク質を発現する植物細胞、植物組織、又は植物は、その他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と同じ条件下で生育する。
【0088】
実施形態において、前記タンパク質は、配列番号1の位置68~76、69~75、70~74、好ましくは位置71~73における1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含む。好ましくは、改変型タンパク質は、配列番号1の位置68~76、69~75、70~74、好ましくは位置71~73における1つ又は複数のアミノ酸残基の改変のみを含む。1つ又は複数のアミノ酸改変は、改変型タンパク質が配列番号1の位置67~77に対応する残基における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸改変を含み得ることと本明細書では理解される。したがって、配列番号1の位置67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、及び77のうちの少なくとも1つにおいて改変がある。
【0089】
改変は、前記領域における1つ又は複数のアミノ酸残基の、異なる天然に存在し、又は天然に存在しないアミノ酸残基での置換であり得る。したがって、1個のアミノ酸残基が、1個の他の天然に存在し、又は天然に存在しないアミノ酸残基で置換され得る。或いは、又は加えて、配列番号1の位置67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、及び/又は77に対応する位置の少なくとも1つにおける、少なくとも1個のアミノ酸残基が、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の天然に存在し、又は天然に存在しないアミノ酸残基によって置換され得る。加えて、改変は、前記領域におけるアミノ酸残基の欠失であり得る。例えば、配列番号1の位置71におけるアミノ酸の改変が、位置71におけるアミノ酸残基の欠失であり得る。
【0090】
植物細胞、植物組織、又は植物が、ジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加しているかどうかは、当業者に知られた任意の通常の方法を用いて容易に決定することができる。
【0091】
非限定的例として、ジェミニウイルス科の1つ又は複数のメンバーに対する抵抗性の増加は、対照植物を、野生型タンパク質の発現が低下している植物と、前記対照植物においてある特定の期間後、病気の少なくとも1つの徴候が観察され得るように選択された調節条件下で、比較することにより決定することができ、前記野生型タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有する。そのような調節条件としては、例えば、本明細書に定義されているようなジェミニウイルス科の1つ又は複数のメンバーなどの、感染及び/又は外寄生する能力がある1つ又は複数のジェミニウイルス科ウイルスでの植物の感染又は外寄生が挙げられる。
【0092】
さらなる非限定的例として、ジェミニウイルス科の1つ又は複数のメンバーに対する抵抗性の増加は、対照植物を、本明細書に定義されているような改変型タンパク質を与えられた植物と、前記対照植物においてある特定の期間後、病気の少なくとも1つの徴候が観察され得るように選択された調節条件下で、比較することにより決定することができる。そのような調節条件としては、例えば、本明細書に定義されているようなジェミニウイルス科の1つ又は複数のメンバーなどの、感染及び/又は外寄生する能力がある1つ又は複数のジェミニウイルス科ウイルスでの植物の感染又は外寄生が挙げられる。
【0093】
実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下している植物は、ジェミニウイルス科の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、又は全部のメンバーに対する抵抗性が増加している。好ましくは、前記植物は、ジェミニウイルス科の1つ又は複数の二分節型メンバーに対する抵抗性が増加している。
【0094】
さらなる実施形態において、改変型タンパク質を発現する植物は、ジェミニウイルス科の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、又は全部のメンバーに対する抵抗性が増加している。好ましくは、前記植物は、ジェミニウイルス科の1つ又は複数の二分節型メンバーに対する抵抗性が増加している。
【0095】
選択された調節条件下で、対照植物は、好ましくは、病気の少なくとも1つの徴候(すなわち、1つの症状)を示す。病気の症状は、当業者によく知られている。そのような症状には、ある特定の期間後の、発育阻害、歪んだ生長、葉の縮れ、巻き、歪み、金光と緑黄モザイク/斑点、葉脈間黄化、変色(例えば、黄斑)、葉脈膨張、紫化、及び/又は黄化が挙げられるが、それらに限定されない。病気の症状としては、少なくとも葉の巻き及び/又は変色が挙げられ得る。対照植物は、ある特定の期間後、病気の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの徴候を示し得る。或いは、対照植物は、ある特定の期間後、病気の1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、5つ以下、6つ以下、7つ以下、又は8つ以下の徴候を示す場合がある。
【0096】
本明細書で用いられる場合のある特定の期間は、好ましくは、対照植物において病気の少なくとも1つ、2つ、又は3つの徴候を観察する前の任意の期間であり、この期間は、実験設定に依存し得る。そのような期間は、当業者により容易に決定することができる。好ましくは、病気の少なくとも1つ、2つ、又は3つの徴候を観察する前のそのような期間は、少なくとも約20日間、30日間、35日間、40日間、45日間、50日間、60日間、又は約70日間である。好ましくは、症状を観察する前の期間は、約2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、又は6ヶ月間である。
【0097】
好ましくは、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下している植物は、本明細書に定義されているようなある特定の期間後、対照植物と比較して病気のより少ない、及び/又は低下した徴候を示すだろう。
【0098】
好ましくは、本明細書に定義されているような改変型タンパク質を含む植物は、本明細書に定義されているようなある特定の期間後、対照植物と比較して病気のより少ない、及び/又は低下した徴候を示すだろう。
【0099】
非限定的例として、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに含む植物は、対照植物と比較して、低下した、発育阻害、歪んだ生長、葉の縮れ、巻き、歪み、金光と緑黄モザイク/斑点、葉脈間黄化、変色(例えば、黄斑)、葉脈膨張、紫化、及び黄化のうちの少なくとも1つを示し得る。病気の症状としては、少なくとも葉の巻き及び/又は変色が挙げられ得る。或いは、又は加えて、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに含む植物は、本明細書に定義されているような病気の1つ又は複数の徴候を、対照植物と類似した又は同じ重症度で示すことがあるが、その病気の1つ又は複数の徴候は、対照植物と比較して、より後の時点におけるものであり、例えば、病気の1つ又は複数の症状の遅延があるだろう。非限定的例として、対照植物と比較して、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、又は8週間の遅延があり得る。当業者は、例えば、本明細書の下記で詳述された実施例セクションに用いられた調節条件などの適切な条件を選択する方法を知っている。
【0100】
ジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加している場合、その植物がジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーの感染に曝された時、植物は、好ましくは、正常な生長及び/又は正常な発育を維持する能力があり、その感染は、そうでなければ、その植物の生長の低下及び/又は発育の低下を生じていたであろう。したがって、ジェミニウイルス科に対する抵抗性の増加は、植物を比較することにより決定することができる。非限定的例として、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物は、1つの対照植物と比較することができる。或いは、又は加えて、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の郡は、対照植物の群と比較され得る。各群は、例えば、少なくとも2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、25個、50個、又は100個の個々の植物を含み得る。
【0101】
当業者は、ジェミニウイルス科に対する抵抗性の増加を決定するための適切な条件を選択する方法、及び感染の徴候を測定する方法をよくわかっている。非限定的例として、ジェミニウイルス科のメンバーに対する抵抗性は、例えば、変色及び/又は葉の巻きについて、目視検査により測定することができる。
【0102】
実施形態において、ジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性は、ジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーの感染後、好ましくは本明細書に定義されているような条件下で、変色した葉の数を数えることにより決定される。本明細書に定義されているような対照植物と比較して、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物において、変色した葉の数はより少なく、又は(ウイルス起因性の)変色した葉は存在しない。
【0103】
当業者は、ウイルス感染後の葉の変色を評価する方法を知っている。非限定的例として、変色の量は、目視検査により、又は変色を示す葉を数えることにより、決定することができる。非限定的例として、葉が少なくとも1個の(ウイルス起因性の)変色斑点を有するならば、葉は、変色したとして数えられる。或いは、葉が少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、又は7個のウイルス起因性変色斑点を有するならば、葉は変色を示している。変色斑点の直径は、好ましくは、少なくとも10mm、25mm、50mm、1cm、又は少なくとも5cmであり得る。別の実施形態において、変色斑点の表面は、少なくとも10mm、25mm、50mm、1cm、又は少なくとも5cmである。
【0104】
感染した対照植物は、少なくとも1枚の葉のウイルス起因性変色を有し得る。或いは、感染した対照植物は、少なくとも1枚、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚、9枚、又は10枚の変色した葉を有する。本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物は、好ましくは、(ウイルス起因性の)変色した葉を少しも示さない。或いは、前記野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、前記改変型タンパク質をさらに発現する植物は、感染した対照植物の葉の数と比較して、より少ない変色した葉を有し得る。好ましくは、(ウイルス起因性の)変色した葉の数は、感染した対照植物の変色した葉の数の80%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、又は1%未満である。
【0105】
或いは、又は加えて、対照植物の葉は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の葉と比較して、1枚の葉あたりより多い変色斑点を有する。対照植物の全ての葉の変色の程度は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の全ての葉の変色と比較することができる。全ての植物葉の変色の程度は、目視検査により、又は本明細書の上記で定義されているような変色斑点の数を数え、斑点の数を植物あたりの葉の数で割ることにより、決定することができる。
【0106】
代替として、又は追加として、ジェミニウイルス科のメンバーに対する抵抗性は、葉の巻きについての目視検査により測定することができる。実施形態において、ジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性は、ジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーの感染後、好ましくは本明細書に定義されているような条件下で、巻かれた葉の数を数えることにより決定される。本明細書に定義されているような対照植物と比較して、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物において、巻かれた葉の数はより少なく、又は(ウイルス起因性の)巻かれた葉は存在しない。
【0107】
当業者は、ウイルス感染後の葉の巻きを評価する方法を知っている。非限定的例として、巻きの程度は、巻かれた葉の数を数えることにより決定することができる。感染した対照植物は、少なくとも1つの葉のウイルス起因性巻きを有し得る。或いは、感染した対照植物は、少なくとも1枚、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚、9枚、又は10枚の巻かれた葉を有する。本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物は、好ましくは、(ウイルス起因性の)巻かれた葉を少しも示さない。或いは、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、前記改変型タンパク質をさらに発現する植物は、感染した対照植物の葉の数と比較して、より少ない巻かれた葉を有し得る。好ましくは、(ウイルス起因性の)巻かれた葉の数は、感染した対照植物の変色した葉の80%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満、又は1%未満である。
【0108】
抵抗性植物のパーセンテージは、病気をもたない植物の数を数えることにより決定することができる。実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、前記改変型タンパク質をさらに発現する、病気をもたない植物の数が決定される。好ましくは、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、前記改変型タンパク質をさらに発現する植物が、ジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーに曝露され、病気をもたない植物の数は、ジェミニウイルス科のメンバーでの曝露前の植物の数の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は約100%である。さらなる実施形態において、ジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性は、実施例2により記載されているように、ジェミニウイルス科の(1つ又は複数の)メンバーのPCRに基づいた検出により決定することができる。
【0109】
実施形態において、ジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーの相対力価は、外寄生された罹病性植物において決定することができる。加えて、ジェミニウイルス科の同じ少なくとも1つのメンバーの相対力価は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する、外寄生された植物において決定することができる。罹病性植物から得られた力価は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で、前記改変型タンパク質をさらに発現する植物から得られた力価と比較することができる。好ましい実施形態において、罹病性植物から得られた力価は、100%に設定され、好ましくは、抵抗性植物から得られた力価は、罹病性植物から得られた力価と比較して高くとも(せいぜい)約50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%、又は約0.1%である。
【0110】
相対力価は、当技術分野において知られた任意の通常の方法を用いて決定することができ、その方法としては、qPCRに基づいた検出が挙げられるが、それに限定されない。
【0111】
実施形態において、ジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性は、Scottら(Introgression of resistance to whitefly-transmitted geminiviruses from Lycopersicon chilense to tomato(1996)、357~367ページ、Gerling,D.及びR.T.Mayer(編)、Bemisia 1995:Taxonomy,biology,damage control,and management.Intercept Ltd.、Andover、Hants、UK)、及び/又はLapidotら(「Development of a Scale for Evaluation of Tomato yellow leaf curl virus Resistance Level in Tomato Plants」、Phytopathology(2006)96(12):1404~8により記載されているように決定することができる。抵抗性は、病気重症度を0~4の病気重症度指数スケールで評価することにより測定することができる。例えば、病気重症度が0と採点されたならば、その植物は、抵抗性であると見なされる。スケールは、表1に提示されているように分類される。
【0112】
【表1】

好ましい実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、対照植物の少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%が3~4と採点される同じ条件下で生育した場合、0~2、好ましくは0~1と採点される。
【0113】
好ましい実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、対照植物の少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%が4と採点される同じ条件下で生育した場合、3と採点される。
【0114】
好ましい実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、対照植物の少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%が4と採点される同じ条件下で生育した場合、2と採点される。
【0115】
好ましい実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、対照植物の少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%が4と採点される同じ条件下で生育した場合、1と採点される。
【0116】
好ましい実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、対照植物の少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%が4と採点される同じ条件下で生育した場合、0と採点される。
【0117】
好ましい実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の多くとも約0%、1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、又は多くとも約60%が、対照植物の少なくとも約90%、95%、又は100%が3又は4と採点される同じ条件下で生育した場合、3又は4と採点される。
【0118】
別の実施形態において、対照植物の少なくとも約90%、95%、又は100%が3又は4と採点され、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で前記改変型タンパク質をさらに発現する植物の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%が、0又は1と採点される同じ条件下で生育した場合、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の多くとも約0%、1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、又は多くとも約60%が、3又は4と採点される。
【0119】
さらに別の実施形態において、ジェミニウイルス科の少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性は、例えば、参照により本明細書に組み入れられているObaiahら、(2013)Screening of some blackgram(Vignamungo(L.)Hepper)genotypes for resistance to yellow mosaic virus.Current Biotica 7(1&2):96~100ページ)に記載されているように、病気重症度を1~9のスケール(「9」と分類された植物は十分に罹病性が高く、「1」に分類された植物は無症状である)で評価することにより決定される。好ましい実施形態において、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、対照植物の少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%が6~9、好ましくは7~9又は8~9と採点される同じ条件下で生育した場合、1~3、好ましくは1~2と採点される。
【0120】
さらなる実施形態において、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに含み、及び発芽能が、前記改変を含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物の発芽能と類似したままである、植物細胞、植物組織、又は植物である。好ましくは、前記改変型タンパク質は、本明細書に定義されているような配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変である。
【0121】
用語「発芽能」又は「発芽率」は、本明細書で交換可能に用いることができ、所定の期間中、発芽する可能性が高い、特定の植物種、品種、又は種ロットの種子の数として本明細書に定義される。それは、発芽の時間経過の尺度であり、通常、パーセンテージとして表され、例えば、85%発芽率は、与えられた発芽期間中に適切な条件下で100個の種子のうち約85個がおそらく発芽するだろうことを示す。本発明の関連において用いられる場合、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の発芽能は、好ましくは、対照植物、例えば、前記改変を含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物の発芽能と類似したままである。類似した発芽能は、好ましくは、対照植物の発芽パーセンテージと比較して、約0.1%以下、0.5%以下、1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、10%以下、15%以下、又は20%以下だけ異なる発芽パーセンテージとして本明細書で理解される。好ましくは、対照植物の種子、及び本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の種子は、同じ条件下で保存される。好ましくは、対照植物の種子、及び本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現する植物の種子を、与えられた同じ条件及び/又は同じ発芽期間の下で発芽させる。
【0122】
さらなる実施形態において、本発明は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下し、任意選択で本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに含む植物細胞、植物組織、又は植物であって、少なくとも1つの改変が、配列番号1の位置67~77に対応する位置における1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失である、植物細胞、植物組織、又は植物に関する。さらなる実施形態において、改変型タンパク質は、配列番号1の位置68~76、69~75、70~74、好ましくは、位置71~73に対応する位置における1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失を含む。1つ又は複数のアミノ酸欠失は、前記改変型タンパク質が配列番号1の位置67~77に対応する残基の1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸欠失を含み得ると、本明細書で理解される。
【0123】
好ましい実施形態において、改変は、本明細書に示された位置における少なくとも1個、2個、又は3個のアミノ酸残基の欠失である。好ましくは、改変は、配列番号1の位置71、72、又は73に対応する少なくとも1個のアミノ酸残基の欠失である。より好ましくは、改変は、配列番号1の位置71、72、又は73に対応する少なくとも2個のアミノ酸残基の欠失、すなわち、位置71と72;72と73;又は71と73に対応する残基の欠失である。さらにより好ましくは、改変は、配列番号1の位置71、72、及び73に対応する3個のアミノ酸残基の欠失である。
【0124】
さらなる実施形態において、改変型タンパク質は、配列番号1の位置1~66に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。加えて、又は或いは、本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、配列番号1の位置78~378に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0125】
さらに別の実施形態において、本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、配列番号4と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む核酸によってコードされる。したがって、本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、好ましくは、配列番号4と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む核酸から発現する。
【0126】
実施形態において、前記改変を含まない前記タンパク質は、配列番号2と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。改変を含まない前記タンパク質は、野生型タンパク質であり得るため、改変を含まない前記タンパク質のヌクレオチド配列は、cDNAへ変換されている内因性mRNA配列と対応し得る。
【0127】
実施形態において、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をコードする核酸は、配列番号2と少なくとも約75%、80%、81.5%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.2%の配列同一性を有する配列を含む。加えて、又は或いは、前記改変を含まない前記タンパク質をコードする核酸は、配列番号4と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、又は98%の配列同一性を有する配列を含む。さらなる実施形態において、前記改変型タンパク質は切り詰め型タンパク質であり、前記切り詰め型タンパク質が、配列番号1の位置1~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0128】
さらに別の実施形態において、本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、切り詰め型タンパク質であり、配列番号5と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む核酸によってコードされる。したがって、本明細書に定義されているような切り詰め型タンパク質は、好ましくは、配列番号6と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む核酸から発現する。
【0129】
さらなる実施形態において、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下しており、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質を含み、前記改変型タンパク質がジェミニウイルス科に対する(ウイルス)抵抗性を増加させ、好ましくは、ジェミニウイルス科がベゴモウイルス属である。
【0130】
一実施形態において、改変型タンパク質は、一分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つ又は複数のメンバーに対する抵抗性を増加させる。さらなる実施形態において、改変型タンパク質は、一分節型及び二分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つ又は複数のメンバーに対する抵抗性を増加させる。好ましくは、本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、ベゴモウイルスの少なくとも1つ又は複数の二分節型メンバーに対する抵抗性を増加させる。実施形態において、一分節型及び/又は二分節型ベゴモウイルスは、本明細書に特定されているような植物に感染する能力があるウイルスである。好ましくは、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、本発明の改変型タンパク質をホモ接合性にコードする。
【0131】
一実施形態において、改変型タンパク質は、一分節型ジェミニウイルス科の少なくとも1つ又は複数のメンバーに対する抵抗性を増加させる。
【0132】
好ましくは、本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、ジェミニウイルス科の少なくとも1つ又は複数の二分節型メンバーに対する抵抗性を増加させる。さらなる実施形態において、改変型タンパク質は、一分節型及び二分節型ジェミニウイルス科の少なくとも1つ又は複数のメンバーに対する抵抗性を増加させる。実施形態において、ジェミニウイルス科の一分節型及び/又は二分節型メンバーは、本明細書に特定されているような植物に感染する能力があるウイルスである。
【0133】
好ましくは、本明細書に定義されているような改変型タンパク質を発現する植物細胞、植物組織、又は植物は、双子葉作物である。用語「双子葉類の」及び「双子葉類」は、本明細書で交換可能に用いられる。好ましくは、双子葉作物は、トウガラシ属、トマト、ダイズ(Glycine max)、キャッサバ、ワタ属、ウリ科、ナス、オクラ、マメ科、及びアラビドプシス属(Arabidopsis)からなる群から選択される。
【0134】
本発明は、いかなる特定の植物細胞、植物組織、又は植物にも限定されない。本発明は、他の植物細胞、植物組織、又は植物に同等に適用され、すなわち、本明細書で詳述されているような「トウガラシ属」へのいかなる言及も、任意の他の双子葉作物へ同等に適用され、好ましくは、ダイズ、トマト、キャッサバ、ワタ属、ウリ科、ナス、オクラ、マメ科、及びアラビドプシス属のうちの少なくとも1つにも適用されると、本明細書では理解される。好ましくは、本明細書で詳述されているような「トウガラシ属」へのいかなる言及も、ダイズ、キャッサバ、ワタ属、及びウリ科のうちの少なくとも1つに同等に適用される。好ましくは、本明細書で詳述されているような「トウガラシ属」へのいかなる言及も、少なくともキャッサバ及びワタ属に同等に適用される。いくつかの実施形態において、本明細書で詳述されているような「トウガラシ属」への言及は、トマト及びアラビドプシス属に適用されない。
【0135】
本明細書に定義されているような本発明がトマトに適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号18と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有し、本発明がキャッサバに適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号12と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有し、本発明がワタ属に適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号13及び14のうちの少なくとも1つと少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有し、本発明がシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号17と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有し、本発明がウリ科に適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号11と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有し、本発明がダイズに適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号15及び16のうちの少なくとも1つと少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有すると、本明細書で理解されるものとする。
【0136】
本明細書に定義されているような本発明がトマトに適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号26と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する配列によりコードされ、本発明がキャッサバに適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号20と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する配列によりコードされ、本発明がワタ属に適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号21及び22のうちの少なくとも1つと少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する配列によりコードされ、本発明がシロイヌナズナに適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号25と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する配列によりコードされ、本発明がウリ科に適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号19と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する配列によりコードされ、本発明がダイズに適用される場合、野生型タンパク質は、好ましくは、配列番号23及び24のうちの少なくとも1つと少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する配列によりコードされると、さらに本明細書で理解されるものとする。
【0137】
一実施形態において、植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属植物であり、又はそれから取得可能であり、好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属植物細胞、植物組織、又は植物である。好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ(C.annuum)、アヒ・アマリージョ、C.シネンゼ、キダチトウガラシ、又はロコトであり、又はそれから取得可能である。より好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ(C.annuum)であり、又はそれから取得可能である。
【0138】
同様に、一実施形態において、植物細胞、植物組織、又は植物は、ワタ属植物であり、又はそれから取得可能であり、好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、ワタ属植物細胞、植物組織、又は植物である。好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、ケブカワタ(G.hirsutum)、カイトウメン(G.barbadense)、ナンキンワタ(G.arboretum)、又はレバントワタ(G.herbaceum)であり、又はそれから取得可能である。好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、ケブカワタ(G.hirsutum)であり、又はそれから取得可能である。
【0139】
一実施形態において、植物細胞、植物組織、又は植物は、ウリ科植物であり、又はそれから取得可能であり、好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、ウリ科植物細胞、植物組織、又は植物である。好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、ペポカボチャ、ニホンカボチャ、メロン、又はキュウリであり、又はそれから取得可能である。より好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、ペポカボチャであり、又はそれから取得可能である。
【0140】
一実施形態において、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属、好ましくはトウガラシ(Capsicum annuum)である(又はそれから取得可能である)。好ましくは、植物は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下しており、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現し、前記改変型タンパク質が、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性を増加させる。前記改変型タンパク質は、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型ベゴモウイルスの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のメンバーに対する抵抗性を増加させ得る。
【0141】
さらなる実施形態において、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属、好ましくはトウガラシ(Capsicum annuum)であり(又はそれから取得可能であり)、前記植物が、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現が低下しており、任意選択で、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をさらに発現し、及び前記改変型タンパク質が、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性を増加させ、前記改変型タンパク質がまた、トウガラシ属植物に感染する能力がある二分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性を増加させる。前記改変型タンパク質は、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型ベゴモウイルスの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10のメンバー及び/又はトウガラシ属植物に感染する能力がある二分節型ベゴモウイルスの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10のメンバーに対する抵抗性を増加させ得る。
【0142】
一実施形態において、本発明による植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属、好ましくはトウガラシ(Capsicum annuum)であり、又はそれから取得可能であり、前記改変型タンパク質が、トウガラシ属植物に感染する能力がある二分節型ベゴモウイルスの少なくとも1つのメンバーに対する抵抗性を増加させる。前記改変型タンパク質は、トウガラシ属植物に感染する能力がある二分節型ベゴモウイルスの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のメンバーに対する抵抗性を増加させ得る。
【0143】
一実施形態において、トウガラシ属植物に感染する能力がある一分節型及び/又は二分節型ベゴモウイルスのメンバーは、ペッパー黄化葉巻ウイルス、ペッパー葉巻ウイルス、ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス、ペッパーゴールデンモザイクウイルス、ペッパー黄化葉巻インドネシアウイルス、チリ葉巻ウイルス、シナロアトマト葉巻ベゴモウイルス、ペッパー葉巻ラホールウイルス、カーリートップウイルス、ペッパーマイルドティグレウイルス、ペッパー葉巻バングラデシュウイルス、ペッパー葉捲ウイルス、ペッパー葉脈黄化マリウイルス、ペッパーテキサスベゴモウイルス、ペッパーゴールデンモザイクベゴモウイルス;ペッパーウアステコベゴモウイルス;ペッパーウアステコビジェミニウイルス、ペッパーウアステコウイルス、ペッパーウアステコ葉脈黄化ベゴモウイルス、ペッパー葉巻バングラデシュベゴモウイルス、ペッパー葉巻ベゴモウイルス、ペッパーマイルドティグレベゴモウイルス、ペッパーマイルドティグレビジェミニウイルス、及びペッパーマイルドティグレジェミニウイルスからなる群から選択される。
【0144】
好ましい実施形態において、本発明の植物細胞、植物組織、又は植物は、ペッパー黄化葉巻ウイルス、ペッパー葉巻ウイルス、ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス、ペッパーゴールデンモザイクウイルス、及び/又はペッパー黄化葉巻インドネシアウイルスのうちの少なくとも1つに対する抵抗性が増加している。
【0145】
好ましくは、前記改変型タンパク質は、ペッパー黄化葉巻ウイルス、ペッパー葉巻ウイルス、ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス、及びペッパーゴールデンモザイクウイルスのうちの少なくとも1つに対する抵抗性を増加させる。
【0146】
好ましい実施形態において、本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、ペッパー黄化葉巻ウイルス、ペッパー葉巻ウイルス、ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス、ペッパーゴールデンモザイクウイルス、及び/又はペッパー黄化葉巻インドネシアウイルスのうちの少なくとも1つに対する抵抗性を増加させる。より好ましい実施形態において、前記改変型タンパク質は、ペッパー黄化葉巻ウイルス、ペッパー葉巻ウイルス、ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス、及びペッパーゴールデンモザイクウイルスのうちの少なくとも1つに対する抵抗性を増加させる。さらにより好ましい実施形態において、前記改変型タンパク質は、ペッパー黄化葉巻ウイルス及び/又はペッパー葉巻ウイルスに対する抵抗性を増加させる。
【0147】
好ましくは、本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、ペッパー葉巻ウイルス、好ましくはM156株(PLCV M156)、黄化葉巻インドネシアウイルス(PepYLCIV)、ウアステコ葉脈黄化ウイルス(PHYVV)、ペッパーゴールデンモザイクウイルス、及びビートカーリートップウイルス(BCTV)のうちの少なくとも1つに対する抵抗性を増加させる。
【0148】
第2の態様において、本発明は、本明細書に定義されているような改変型タンパク質に関する。
【0149】
一実施形態において、改変型タンパク質は、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%の配列同一性を有し、本明細書に定義されているような、配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含む。
【0150】
好ましくは、改変型タンパク質は、配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有し、前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含む。好ましくは、改変型タンパク質は、本明細書に定義されているような植物細胞、植物組織、又は植物に発現している場合、前記改変を含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させる。
【0151】
好ましくは、改変型タンパク質は、UniProt配列A0A068TUH6を含まず、又はそれからならない。加えて、又は或いは、改変型タンパク質は、国際公開第2014/045206号に開示されているような配列番号9も10も含まず、又はそれらからならない。
【0152】
好ましくは、改変型タンパク質は、配列番号3と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含み、又はそれからなる。本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、単離されたタンパク質であり得、又は前記タンパク質は、細胞、例えば、本明細書に定義されているような植物細胞に存在し得る。好ましくは、改変型タンパク質は、トウガラシ属細胞に存在する。本明細書に定義されているような改変型タンパク質は、前記細胞に存在する核酸から発現し得る。好ましくは、核酸は、前記細胞のゲノムへ、例えば安定的に組み込まれて、存在する。
【0153】
さらなる実施形態において、改変型タンパク質は切り詰め型タンパク質である。好ましくは、改変型タンパク質は、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約60%、70%、75%、80%、81%、又は81.5%の配列同一性を有する。好ましくは、改変型タンパク質は、配列番号1の位置1~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有し、前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である。
【0154】
好ましくは、改変型タンパク質は、本明細書に定義されているような植物細胞、植物組織、又は植物に発現している場合、前記切り詰めを含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させる。好ましくは、改変型タンパク質は、配列番号5と少なくとも約75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0155】
好ましくは、前記タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、又はそれからなる。
【0156】
第3の態様において、本発明は、本発明の第2の態様の改変型タンパク質をコードする配列を含む核酸に関する。
【0157】
好ましくは、前記核酸は、配列番号4と少なくとも約75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。或いは、前記核酸は、配列番号6と少なくとも約75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0158】
好ましくは、本明細書に定義されているような改変型タンパク質を発現する核酸は、本明細書に定義された植物細胞、植物組織、又は植物に存在する。核酸は、植物細胞へ、例えば、プラスミドの一過性トランスフェクションにより、一過性に導入することができる。或いは、又は加えて、核酸は、植物細胞のゲノムに安定的に存在し得る。非限定的例として、核酸は、植物細胞のゲノムへ安定的に組み込まれ得る。或いは、又は加えて、核酸は、改変された内因性核酸、すなわち、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をコードするように改変された内因性核酸であり得る。好ましくは、内因性核酸は、コードされたタンパク質が配列番号1の位置69~77に対応するアミノ酸残基において改変されているように、1つ又は複数の位置において改変されている。好ましくは、配列番号2と少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する内因性コード配列が、配列番号4又は配列番号6と少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有するコード配列へ改変され、好ましくは、配列番号4又は配列番号6を有する配列へ改変される。
【0159】
好ましくは、前記改変型コード配列から発現したタンパク質は、配列番号3と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する。或いは、前記改変型配列から発現したタンパク質は、配列番号5と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有し得る。
【0160】
さらなる実施形態において、本発明は、配列番号7と少なくとも約75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸であって、前記配列が、配列番号7の位置5972又は5973に対応する位置に改変を有し、結果として、エクソン4の前に機能障害性アクセプタースプライス部位を生じる、核酸に関する。配列番号7は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質についてのコード配列を含むゲノム配列である。好ましくは、位置5973におけるグアノシンがアデノシンへ改変されている。好ましくは、前記改変型配列から発現したタンパク質は、本明細書に定義されているような1つ又は複数のアミノ酸の改変(例えば、欠失)を含むタンパク質である。好ましくは、前記改変型配列から発現したタンパク質は、配列番号3と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する。
【0161】
加えて、本発明は、配列番号7と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は約99.5%の配列同一性を有する核酸であって、前記配列が、本明細書に定義されているような初期停止コドンを含む、核酸に関する。前記配列から発現した改変型タンパク質は、好ましくは、本明細書に定義されているような切り詰め型タンパク質である。好ましくは、前記配列から発現したタンパク質は、配列番号5と少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する。
【0162】
第4の態様において、本発明は、本明細書に定義されているような核酸を含む核酸構築物に関する。好ましくは、核酸は、細胞における発現のための転写制御エレメントと作動可能に連結されている。好ましくは、転写制御エレメントは、プロモーターエレメントである。したがって、一実施形態において、核酸構築物は、細菌細胞又は植物細胞などの細胞における発現のためのプロモーターと作動可能に連結されている、本明細書に定義されているような核酸を含む。好ましくは、本発明による核酸は、植物細胞における発現のためのプロモーターと作動可能に連結されている。用語「作動可能に連結される」は、ポリヌクレオチドエレメントの機能的関係での連結を指す。核酸は、それが別の核酸配列との機能的関係へ置かれた場合、「作動可能に連結されている」。例として、プロモーター、又はもっと正確に述べれば、転写制御配列が、それがコード配列の転写に影響するならば、そのコード配列と作動可能に連結されている。作動可能に連結されるとは、連結されることになっているDNA配列が近接していることを意味し得る。
【0163】
本発明の関連において、本明細書に定義されているような核酸は、好ましくは、プロモーターエレメントと機能的関係で連結されている。植物細胞における発現のためのプロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、又は組織特異的プロモーターであり得る。好ましくは、プロモーターは構成的プロモーターである。植物細胞における発現のためのプロモーターは、植物又は植物細胞において活性があるプロモーターとして本明細書で理解され、すなわち、プロモーターは、植物又は植物細胞内で転写を駆動する一般的な能力を有する。
【0164】
本明細書に定義されているような改変型タンパク質の発現は、内因性プロモーターによって調節され得、その内因性プロモーターは、例えば、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現を調節するプロモーターであるが、それに限定されない。好ましくは、プロモーターは、配列番号8と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する。
【0165】
第5の態様において、本発明は、ジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加している植物細胞、植物組織、又は植物を作製するための方法に関する。好ましくは、方法は、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現を低下させるステップを含む。好ましくは、方法は、本明細書に定義されているような改変型タンパク質の発現を導入するステップを含む。
実施形態において、方法は、
i)植物細胞、植物組織、又は植物を用意するステップ;及び
ii)野生型タンパク質の発現を低下させるステップであって、前記タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有する、ステップ
を含む。好ましくは、方法は、野生型タンパク質の発現をノックアウトするステップを含む。
【0166】
好ましくは、方法は、一分節型及び/又は二分節型ジェミニウイルス科メンバー、好ましくは、ベゴモウイルス属の一分節型及び/又は二分節型メンバーの少なくとも1つ又は複数に対する抵抗性が増加している、植物細胞、植物組織、又は植物を作製する。
【0167】
植物細胞、植物組織、又は植物は、当業者に知られた任意の方法を用いて用意することができる。用意される植物細胞、植物組織、又は植物は、野生型細胞、組織、又は植物であり得る。或いは、植物細胞、植物組織、又は植物は、栽培品種であり得、若しくはそれに由来し得、及び/又は遺伝子改変された細胞、組織、又は植物であり得、若しくはそれに由来し得る。好ましくは、用意される植物細胞、植物組織、又は植物は、本明細書に定義されているような細胞、組織、又は植物である。好ましくは、植物は双子葉類であり、好ましくはトウガラシ属、トマト、キャッサバ、ワタ属、ウリ科、ナス、オクラ、及びマメ科からなる群から選択される。好ましくは、植物細胞、植物組織、又は植物は、トウガラシ属植物由来である(又はそれから取得可能である)。
【0168】
本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現を低下させ、又は無効にする(ノックアウトする)ステップは、当技術分野において知られた任意の通常の方法を用いて達成することができ、その方法としては、siRNA、エピジェネティックサイレンシング、及び/又はゲノム変異を導入することが挙げられるが、それらに限定されない。変異は、例えば、野生型タンパク質のコード領域及び/又は野生型タンパク質の発現を調節する制御エレメントに導入され得る。変異としては、1つ又は複数のヌクレオチドの変化又は欠失が挙げられ得る。野生型タンパク質の発現を無効にする変異は、野生型タンパク質のコード配列の少なくとも約50%、75%、又は100%の欠失を構成し得る。本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現をノックアウトすることは、CRISPR-テクノロジー、例えば、CRISPR-Cas又はCRISPR-Cpf1を用いることなどの、当技術分野において知られたゲノム編集ツールを用いて達成することができる。
【0169】
実施形態において、方法は、本明細書に定義されているような改変型タンパク質の発現を導入するステップをさらに含む。好ましくは、改変型タンパク質は、配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有し、
a)前記タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の変異を含み;又は
b)前記タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である。
【0170】
実施形態において、改変型タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、前記タンパク質の発現を導入するように植物へ導入することができる。本明細書に定義されているような改変型タンパク質を発現するヌクレオチド配列は、当技術分野において知られた任意の通常の方法を用いて植物細胞へ導入することができる。非限定的例として、これは、植物組織のアグロバクテリウム形質転換、微粒子銃、エレクトロポレーション、トランスフェクション、又は当業者に知られた多くの方法のいずれか一つなどの直接的形質転換方法によって起こり得る。同様に、本明細書に定義されているような改変型タンパク質の発現を導入することは、前記改変型タンパク質の浸透性交雑によって実施することができる。そのような育種技術は当業者によく知られている。植物への直接的形質転換は、当業者に知られた多くの技術の一つによって起こり得、選択された様式は、本発明の実施に必須ではない。当業者に利用可能な、発現ベクターを植物組織へ導入するための方法は様々であり、選択された植物に依存する。幅広い種類の植物種を形質転換するための手順はよく知られており、文献を通して記載されている。
【0171】
一実施形態において、本発明による方法は、配列番号1と少なくとも75%の配列同一性を有し、配列番号1の位置68~76、69~75、70~74、好ましくは、位置71~73に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含む、改変型タンパク質の発現を導入する。1つ又は複数のアミノ酸改変は、改変型タンパク質が配列番号1の位置67~77に対応する残基に1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸改変を含み得ることを意味する。好ましい実施形態において、本発明による方法は、関心対象となるタンパク質における1つ又は複数のアミノ酸の欠失である改変を含むタンパク質の発現を導入する。さらなる実施形態において、方法は、配列番号1の位置68~76、69~75、70~74、好ましくは、位置71~73における1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失を含むタンパク質を導入するステップを含む。1つ又は複数のアミノ酸欠失は、その改変されたタンパク質が、配列番号1と比較して、位置67~77に対応する残基において1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸欠失を含み得ると、本明細書で理解される。好ましい実施形態において、改変は、少なくとも1個、2個、又は3個のアミノ酸残基の欠失である。好ましくは、改変は、配列番号1の位置71、72、又は73における少なくとも1個のアミノ酸残基の欠失である。より好ましくは、改変は、配列番号1の位置71、72、又は73における少なくとも2個のアミノ酸残基の欠失である。さらにより好ましくは、改変は、配列番号1の位置71、72、又は73における少なくとも3個のアミノ酸残基の欠失である。
【0172】
実施形態において、本発明による方法は、改変型タンパク質の発現を導入するステップであって、前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である、ステップを含む。
【0173】
或いは、又は加えて、改変型タンパク質の発現は、野生型タンパク質をコードする内因性コードヌクレオチド配列を改変することにより導入される。好ましくは、内因性コード配列は、配列番号2と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有する。好ましくは、内因性ヌクレオチド配列は、植物細胞のゲノムに存在するコード配列である。ゲノム配列は、配列番号7と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は約100%の配列同一性を有し得、本明細書に定義されているような改変型タンパク質を発現するように改変することができる。
【0174】
一実施形態において、内因性コード配列は、本明細書に定義されているような改変型タンパク質、例えば、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有するタンパク質であって、前記タンパク質が配列番号1の位置67~77に対応する1つ又は複数のアミノ酸残基の改変を含み、前記改変が、前記改変を含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較して、ジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させる、タンパク質を発現するように改変される。
【0175】
内因性配列の改変は、少なくとも1個のヌクレオチドの欠失及び/又は改変であり得る。例えば、内因性コード配列は、配列番号2の位置201~231に対応する少なくとも1つの位置において、改変され得る。或いは、又は加えて、少なくとも2個又は3個のヌクレオチドが、配列番号2の位置201~231に対応する位置において改変され得る。非限定的例として、少なくとも3個のヌクレオチドが欠失し、又は3個のヌクレオチドのサブセットが欠失する。例えば、少なくとも3個のヌクレオチドが、201~203、204~206、207~209、210~212、213~215、216~218、219~221、222~224、225~227、及び228~231からなる群から選択される配列番号2の位置に対応する位置において欠失し得る。
【0176】
或いは、又は加えて、内因性ゲノムヌクレオチド配列は、スプライス部位を変化させるように、すなわち、ドナー及び/又はアクセプター部位の配列を変化させるように、改変することができる。好ましくは、スプライス部位の改変は、結果として、本明細書に定義されているような改変型タンパク質の発現を生じる。非限定的例として、アクセプター部位における変異があり得、好ましくは改変は、エクソン1、2、3、4、4、5、6の上流、好ましくはエクソン4の上流のアクセプター部位にある。
【0177】
好ましくは、ドナー及び/又はアクセプター部位の変異は、オルタナティブドナー又はアクセプター部位の使用を生じる。非限定的例として、エクソン4の上流のアクセプター部位の変異は、(図1に例示されているような)エクソン4のコード配列におけるアクセプター部位の使用を生じ得る。エクソン4の上流のアクセプター部位の変異は、好ましくは、エクソン4の5’末端における9個のヌクレオチドの欠失を生じる。
【0178】
ドナー又はアクセプター部位の変異は、前記ドナー又はアクセプター部位内の、ヌクレオチドの欠失又はヌクレオチドの改変であり得る。非限定的例として、変異は、一つのヌクレオチドから別のヌクレオチドへの改変、例えば、GからAへの移行であり得る。
【0179】
1つ又は複数の内因性ヌクレオチドの改変又は欠失は、当技術分野において知られた任意の通常の手段を用いて行うことができる。非限定的例として、改変又は欠失は、CRISPR-テクノロジーを用いて、例えば、CRISPR-Cas9又はCRISPR-Cpf1を用いて、実施することができる。
【0180】
実施形態において、内因性配列は、本明細書に定義されているような改変型タンパク質、例えば、配列番号1の位置1~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有するタンパク質であって、前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質であり、前記改変が、前記切り詰めを含まない前記タンパク質を発現するがその他の点では同一の植物細胞、植物組織、又は植物と比較した場合、ジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させる、タンパク質を発現するように改変される。
【0181】
停止コドンを生じる変異は、当業者に知られた任意の通常の方法を用いて導入することができる。非限定的例として、変異は、ランダム変異誘発を用いて導入することができる。或いは、変異は、CRISPR-テクノロジーなどのゲノム編集ツールを用いて導入することができる。
【0182】
本明細書に定義されているようなジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加している植物細胞、植物組織、又は植物を作製するための方法は、iii)前記改変型タンパク質を発現する植物細胞、植物組織、又は植物を選択するステップをさらに含み得る。
【0183】
改変型タンパク質の発現は、当業者に知られた任意の通常の方法を用いて決定することができる。そのような方法としては、転写産物(例えば、mRNA)を検出すること、又は前記タンパク質を検出することが挙げられる。転写産物を検出するための非限定的例としては、例えば、PCR、q-PCR、及びノーザンブロッティングが挙げられる。改変型タンパク質の存在を検出するための非限定的例としては、例えば、ウェスタンブロッティングが挙げられる。方法は、前記植物組織又は植物細胞を植物へ再生させるステップをさらに含み得る。
【0184】
方法は、例えば、本明細書に定義されているような改変型タンパク質を発現する植物細胞、植物組織、又は植物の子孫を産生するステップをさらに含み得る。方法は、本明細書に定義されているような改変型タンパク質を発現している植物から種子を産生するさらなるステップを含み得る。方法は、例えば、前記種子を、ジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加している植物へ生育させるステップをさらに含み得る。
【0185】
方法は、例えば、ジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加していることについて植物、植物組織、又は植物細胞を試験するステップをさらに含み得る。ジェミニウイルス科に対する抵抗性を試験するための方法としては、葉の古典的接種により、又はジェミニウイルス科を有するコナジラミにより植物に外寄生させ、例えば、外寄生から3~8週間後、病気症状について植物を検査することが挙げられるが、それに限定されない。本明細書に記載された本発明の追加の態様は、本明細書に定義されているようなジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加している植物によって産生された種子に関する。
【0186】
本明細書に記載された本発明の追加の態様は、本明細書に定義されているような本発明のタンパク質、本明細書に定義されているような本発明の核酸、及び/又は本明細書に定義されているような本発明の構築物を含む、前記種子から生育した、又は前記植物細胞から再生した植物に関する。
【0187】
本明細書に記載された本発明の追加の態様は、本明細書に特定されているようなジェミニウイルス科に対する抵抗性が増加している、すなわち、本明細書に定義されているような本発明のタンパク質、本明細書に定義されているような本発明の核酸、及び/又は本明細書に定義されているような本発明の構築物を含む前記植物の子孫であって、前記子孫が、自殖又は育種及び選択によって取得することができ、前記選択された子孫が、親植物のジェミニウイルス科に対する増加した抵抗性を保持し、及び/又は本明細書に記載されているような改変型タンパク質の発現を保持する、前記植物の子孫に関する。
【0188】
本発明のさらなる態様は、本明細書に定義されているような本発明のタンパク質、本明細書に定義されているような本発明の核酸、及び/又は本明細書に定義されているような本発明の構築物を含む、本明細書に詳述されているような方法により取得された、又は取得可能な植物に関する。
【0189】
さらなる態様において、本発明は、植物細胞、植物組織、又は植物においてジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させるための方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
i)植物細胞、植物組織、又は植物を用意するステップ;
ii)野生型タンパク質の発現を低下させるステップであり、前記タンパク質が、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも約75%の配列同一性を有し、好ましくは、前記野生型タンパク質が発現しない、ステップ。
【0190】
好ましくは、抵抗性は、ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバーに対して増加している。好ましくは、抵抗性は、ジェミニウイルス科の少なくとも1つの二分節型メンバー及び少なくとも1つの一分節型メンバーに対して増加している。
【0191】
方法は、
iii)配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有する改変型タンパク質の発現を導入するステップであって、好ましくは、
a)前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ若しくは複数のアミノ酸残基の改変を含み;又は
b)前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である、
ステップ、
iii)前記改変型タンパク質を発現する植物細胞、植物組織、又は植物を選択するステップ;及び
iv)前記選択された植物を再生させるステップ
をさらに含み得、好ましくは、前記改変型タンパク質の発現が、前記野生型タンパク質をコードする内因性ヌクレオチド配列を改変することにより導入される。
【0192】
好ましくは、ジェミニウイルス科に対する抵抗性は、本明細書に定義されているような対照植物と比較して増加している。
【0193】
好ましくは、ジェミニウイルス科は、ジェミニウイルス科の少なくとも二分節型メンバーである。好ましくは、ジェミニウイルス科は、ジェミニウイルス科の二分節型メンバーである。
【0194】
方法は、ジェミニウイルス科に対する抵抗性の増加について前記植物細胞、植物組織、又は植物をスクリーニングするステップをさらに含み得る。植物細胞、植物組織、又は植物をスクリーニングするために、非限定的に下記の実施例セクションに記載された方法など、当技術分野において知られた任意のスクリーニング方法を用いることができる。
【0195】
本発明はさらに、植物細胞、植物組織、又は植物においてジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させるためのベクターの使用であって、前記ベクターが、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現を低下させ、又はノックアウトする、ベクターの使用に関する。好ましくは、野生型タンパク質は、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも75%の配列同一性を有する。
【0196】
好ましくは、ベクターは、野生型タンパク質の転写産物をターゲットする1つ若しくは複数のsiRNA及び/又は1つ若しくは複数のmiRNAを含み、又はコードする。
【0197】
好ましくは、ベクターは、本明細書に定義されているような核酸をさらに含み、前記核酸が、本明細書に定義されているような改変型タンパク質をコードする配列を含む。ベクターは、好ましくは、改変型タンパク質の発現を調節するための制御エレメントを含む。
【0198】
好ましくは、ジェミニウイルス科に対する抵抗性は、本明細書に定義されているような対照植物と比較して増加している。
【0199】
好ましくは、ジェミニウイルス科は、ジェミニウイルス科の少なくとも二分節型メンバーである。好ましくは、ジェミニウイルス科は、ジェミニウイルス科の二分節型メンバーである。
【0200】
或いは、又は加えて、ベクターは、gRNA - CRISPR-CAS複合体をコードし得、前記複合体が、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現を低下させ、又はノックアウトする。
【0201】
本発明はさらに、植物細胞、植物組織、又は植物においてジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させるためのgRNA - CRISPR-CAS複合体の使用であって、前記複合体が、本明細書に定義されているような野生型タンパク質の発現を低下させ、又はノックアウトする、使用に関する。好ましくは、野生型タンパク質は、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも75%の配列同一性を有する。
【0202】
好ましくは、gRNA - CRISPR-CAS複合体におけるgRNAは、CRISPR-CASを、本明細書に定義されているような野生型タンパク質をコードする遺伝子、好ましくは内因性遺伝子へ導く。好ましくは、野生型タンパク質は、配列番号1とその完全長に渡って少なくとも75%の配列同一性を有する。
【0203】
好ましくは、ジェミニウイルス科に対する抵抗性は、本明細書に定義されているような対照植物と比較して増加している。
【0204】
好ましくは、ジェミニウイルス科は、ジェミニウイルス科の少なくとも二分節型メンバーである。好ましくは、ジェミニウイルス科は、ジェミニウイルス科の二分節型メンバーである。
【0205】
本発明はさらに、植物細胞、植物組織、又は植物においてジェミニウイルス科に対する抵抗性を増加させるための本明細書に定義されているような改変型タンパク質の使用に関する。好ましくは、改変型タンパク質は、配列番号1の位置1~66及び位置78~308に対応する位置に渡って計算した場合、少なくとも約75%の配列同一性を有し、好ましくは、
a)前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置67~77に対応する1つ若しくは複数のアミノ酸残基の改変を含み;又は
b)前記改変型タンパク質が、配列番号1の位置309~378に対応する欠失を有する切り詰め型タンパク質である。
【0206】
好ましくは、ジェミニウイルス科に対する抵抗性は、本明細書に定義されているような対照植物と比較して増加している。
【0207】
好ましくは、ジェミニウイルス科は、ジェミニウイルス科の少なくとも二分節型メンバーである。好ましくは、ジェミニウイルス科は、ジェミニウイルス科の二分節型メンバーである。
【0208】
本発明はまた、本発明の方法によって取得される、又は取得可能な植物に由来した植物部分及び植物産物であって、本明細書に定義されているような本発明のタンパク質、本明細書に定義されているような本発明の核酸、及び/又は本明細書に定義されているような本発明の構築物を含む植物部分及び植物産物に関する。そのような部分及び/又は産物は、種子若しくは果実及び/又はそれに由来した産物であり得る。そのような部分、産物、及び/又はそれらに由来した産物はまた、非増殖性材料であってもよい。
【実施例
【0209】
方法
変異を、ランダム変異誘発を用いて導入した。dTP遺伝子(配列番号1)において改変を有するMaor M1ペッパー植物を同定し、これらの植物について、2つの改変がさらに確認された。理論によって縛られるつもりはないが、配列番号3によって表されるような改変は、結果として、スプライス部位バリエーションを生じ、一方、配列番号5によって表されるような改変は、停止コドンを導入する。配列番号3及び配列番号5によって表されるような改変を有する植物の確認されたM1苗条を、種子収穫へと繁殖させた。M1植物を、報告された改変の存在について(サンガーシーケンシングにより)確認した。これらの変異体植物のM2種子を収穫し、生育させた。ホモ接合性M2植物を、種子繁殖のために選択し、それらの種子から、M3植物を生育させた。
【0210】
ペッパー葉巻ウイルスM156株は、一分節型ウイルスである。黄化葉巻インドネシアウイルス(PepYLCIV)は二分節型ウイルスである。ウアステコ葉脈黄化ウイルスは二分節型ウイルスであり、ペッパーゴールデンモザイクウイルス(PGMV)は二分節型ウイルスである。
【0211】
実施例1
ホモ接合性dTP変異について選択されたペッパー種子(トウガラシ(Capsicum annuum);栽培品種Maor)を、ポット用土壌を含むトレイに播種し、ロックウールブロックへ植え替えた。並行して、未変異型罹病性Maor対照及び追加の罹病性ペッパー植物(市販品種)を生育させた。全ての植物を制御温室で生育させた。3週間後、植物にペッパー葉巻ウイルスM156株(PLCV M156)を、葉への古典的接種を用いて週に1度、3回、外寄生させた。ウイルス症状の存在についての最終評価を、最後の感染から3週間後、実施した。症状を、新しく出現した葉において、ウイルス症状の存在対抵抗性(症状の非存在)という2つのクラスで採点した(結果は表2に提示されている)。
【0212】
【表2】
【0213】
実施例2
ホモ接合性dTP変異について選択されたペッパー種子(トウガラシ(Capsicum annuum);栽培品種Maor)を、200ウェル細胞トレイ(26×26mm)に播種し、50ウェル細胞トレイ(50×50mm)に植え替えた。植物を、昆虫が存在しない隔離された制御温室で生育させた。12週間後、茎が2番目の本葉と3番目の本葉の間で切断された試験植物上に、数枚の葉と共に成長点を接ぎ木した。試験植物を、前もって、ペッパー黄化葉巻インドネシアウイルス(PepYLCIV)に外寄生させた。接ぎ木の成功から2ヶ月後、症状を評価した。症状を、新しく出現した葉において、ウイルス症状の存在対非存在という2つのクラスで目視検査により採点し、その結果は表3に提示されている。
【0214】
【表3】
【0215】
さらに、ウイルス力価を、PCRに基づいた検出方法により決定した。PepYLCIVの相対力価を、PepYLCIVに特異的なqPCRプライマーを用いて決定した。変異体植物の罹病性野生型MaorバックグラウンドにおけるPepYLCIVのレベルを100%に設定し、続いて、配列番号3又は配列番号5を発現する外寄生された植物のウイルス力価と比較した。その結果は表4に提示されている。
【0216】
【表4】
【0217】
実施例3
配列番号3及び配列番号5の改変の発芽への効果を分析した。M2段階において、dTP遺伝子における任意の改変は、メンデル形式で分離することが予想される(すなわち、全ての植物の25%が、変異体アレルをホモ接合性状態で有することが予想される)。しかしながら、配列番号5により表されているような改変を有する植物について、偏った分離が観察された:発芽した植物の15.7%だけが、配列番号5によって表されているような改変についてホモ接合性であった。ホモ接合性変異体M2植物を生育させ、自家受粉したM3種子を取得した。これらのM3種子の播種は、非常にわずかな発芽実生(約4%)を生じた。対照的に、配列番号3を有する植物についてのM2段階における分離は正常であり、27.5%のホモ接合性変異体アレルが観察された。M3種子発芽パーセンテージは48%であった。したがって、ジェミニウイルス抵抗性を与えるアレルを同定したが、それは、極めて低い発芽パーセンテージによって阻まれている。その結果は表5に要約されている。
【0218】
【表5】
【0219】
実施例4
ホモ接合性dTP変異について選択されたペッパー種子(トウガラシ(Capsicum annuum);栽培品種Maor)を、ポット用土壌を含むトレイに播種し、土壌へ植え替えた。並行して、未変異型Maorを対照として生育させた。全ての植物を制御温室で生育させた。12週間後、二分節型ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス(PHYVV)を有するコナジラミによって外寄生させた。ウイルスを有するコナジラミによる外寄生は、Huttonら(Hortscience 47(3):324~327 2012)に記載されている。簡単に述べれば、子葉期から3週間経過した実生(2~3枚の葉)を、栽培箱において、ウイルスを有するコナジラミに2週間、曝露した。接種後、コナジラミを、殺虫性石鹸及びAdmire(イミダクロプリド)で植物を処理することにより死滅させ、植物を、圃場/温室へ植え替えた。ウイルス症状の存在についての最終評価を、最後の感染から40日後に実施した。植物を、3つのクラス、抵抗性(R)、中間(I)、又は罹病性(S)で採点した。無症状の植物の試料を、PHYVVの存在について、通常のPCRを用いてさらに評価した。結果は表6に提示されている。
【0220】
【表6】
【0221】
実施例5
ホモ接合性dTP変異について選択されたペッパー種子(トウガラシ(Capsicum annuum);栽培品種Maor)を、ポット用土壌を含むトレイに播種し、ポット用土壌を含むポットへ植え替えた。並行して、未変異型罹病性対照Maor、追加の罹病性対照Monet及びYolo Wonder並びに抵抗性対照を生育させた。全ての植物を非制御温室で生育させた。実施例4に記載されているように、植物を、二分節型ペッパーウアステコ葉脈黄化ウイルス(PHYVV)及びペッパーゴールデンモザイクウイルス(PGMV)を有するコナジラミによって外寄生させた。ウイルス症状の存在についての最終評価を、最後の感染から40日後に実施した。植物を4つのクラスで採点した。
【0222】
【表7】
【0223】
実施例6
未変異型及びdTP変異体バリアントの発芽パーセンテージを試験するために、変異体植物(配列番号4又は配列番号6についてホモ接合性)を、未変異誘発型Maor植物と交雑させる。対応するF1(ヘテロ接合性)を、その後、自家受粉させて、F2種子を取得し、そのF2種子は、配列番号3又は配列番号5を含む意図されたバリアントとして分離する。40個の分離したF2種子を播種し、発芽パーセンテージを決定する。発芽実生由来のDNAを抽出し、ホモ接合性dTP変異とヘテロ接合性WTとホモ接合性WTとの間の比を、標準ジェノタイピング技術を用いて決定する。1:2:1の正常な分離が予想される配列番号4を含む植物と比較して、配列番号6を含む種子に由来した発芽F2植物において偏った分離を観察することができ、ホモ接合性変異体アレルの代わりにdTPの野生型アレルのヘテロ接合性の方が好まれるように分離が偏っており、配列番号5によって表されるようなタンパク質を発現する切り詰め型植物が、望ましくない多面効果を生じ、その結果として、発芽パーセンテージの減少を生じることを示している。これらの望ましくない効果は、配列番号3についてホモ接合性の変異体植物においては観察されないだろう。
【0224】
実施例7
アラビドプシス属において、dTP遺伝子の発現異常又はそのタンパク質の変化が、ジェミニウイルスに対する抵抗性の増加をもたらすかどうかを試験するために、以下の実験を実行した。dTP遺伝子にT-DNA挿入を有するシロイヌナズナの種子(AT4G27650)を、Nottingham Arabidopsis Stock Centre(NASC)から入手した。以下の2つのSALK T-DNA挿入系統を入手した:SALK_121667.17.55x及びSALK_124403.21.45x。dTP遺伝子におけるT-DNA挿入についてホモ接合性の植物を選択し、ポット用土壌中、3週間、生育させた。その後、植物に、バイナリープラスミドからビートカーリートップウイルス(BCTV)を発現するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を感染させた。アグロバクテリウムを一晩、増殖させ、小口径(22~25)シリンジを用いて各アラビドプシス植物の数枚の葉の葉柄にアプライした。この一分節型ジェミニウイルスは、アラビドプシス属を含む、広範囲の(作物)植物に感染することが示されている。病気症状(葉の巻き)は、感染後10日以内に生じたが、野生型(Col-0)及びT-DNAアラビドプシス植物におけるウイルス力価を決定するために、感染した及び感染していない植物材料から単離されたDNAにQPCRを実施した。BTCVを検出するために以下のプライマーを用いた:BCTV1:CTACACGAAGATGGGCAACCT(配列番号9)及びBCTV2:TGACGTCGGAGCTGGATTTAG(配列番号10)(Lunaら、2017 Journal of General Virology 2017;98:2607~2614に記載されている)。図2は、野生型アラビドプシス(Col-0)におけるBCTV感染が、ウイルス複製及び病気を生じることを示している。対照的に、dTP遺伝子におけるT-DNA挿入系統のBCTV感染は、ウイルス複製も病気も引き起こさなかった。
【0225】
その後の実験は、他の作物植物種由来の相同タンパク質がジェミニウイルスに対する抵抗性において類似した機能をもつことを証明することを目的とした。この目的を達成するために、作物相同体を同定した(表8)。
【0226】
【表8】
【0227】
同定の後、これらの相同性遺伝子をクローニングし、アラビドプシスT-DNA系統へ形質転換した。コード配列の発現を35Sプロモーターによって駆動させた。dTPの作物相同体を過剰発現するトランスジェニックアラビドプシス系統を、BCTV感染に供し、35S:GUS構築物を発現するdTPにおけるT-DNA挿入系統と比較した。図3は、その補完系統の相対ウイルス力価を示す。BCTVに対する罹病性を示す系統は、これらの系統において発現させた特定の作物相同体が、dTP機能を補完することができ、したがって、それを改変して、ジェミニウイルスに対して抵抗性である植物を作出し得ることを示す。特に、図3は、キャッサバ、ズッキーニ、ペッパー、アラビドプシス、及びワタ由来のdTPについての補完を示す。明らかに、T-DNA植物においてウイルス複製は起きていない。dTPの作物相同体で補完されたT-DNA系統は、罹病性の増加を示し、これらの遺伝子/タンパク質がそれらのそれぞれの作物植物において類似した機能をもつことを示している。
【0228】
【表9】
図1
図2
図3
【配列表】
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