(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】LED装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20240220BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20240220BHJP
H05B 45/52 20200101ALI20240220BHJP
H05B 45/48 20200101ALI20240220BHJP
H05B 45/54 20200101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L33/00 J
H01L33/62
H05B45/52
H05B45/48
H05B45/54
(21)【出願番号】P 2022064713
(22)【出願日】2022-04-08
【審査請求日】2022-09-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315018554
【氏名又は名称】株式会社スリーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 邦善
(72)【発明者】
【氏名】島崎 宗久
(72)【発明者】
【氏名】相澤 裕豪
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-210836(JP,A)
【文献】特開2007-165161(JP,A)
【文献】特開2013-004559(JP,A)
【文献】特開2012-169625(JP,A)
【文献】特開2014-187409(JP,A)
【文献】特開2005-072432(JP,A)
【文献】特開2008-305941(JP,A)
【文献】特開2002-091381(JP,A)
【文献】特開2015-056379(JP,A)
【文献】特開2013-021117(JP,A)
【文献】特表2003-513453(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034680(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101018437(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H05B 39/00 - 39/10
H05B 45/00 - 45/59
H05B 47/00 - 47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1LED素子と第2LED素子と第3LED素子とを直列接続した第1直列発光回路、及び前記第1直列発光回路に並列に配置され、第4LED素子と第5LED素子と第6LED素子とを直列接続した第2直列発光回路から構成される発光部と、
前記第1LED素子と前記第2LED素子との間と、前記第4LED素子と前記第5LED素子との間とに、接続された第1配線と、
前記第2LED素子と前記第3LED素子との間と、前記第5LED素子と前記第6LED素子との間とに、接続された第2配線と、
前記第1配線と前記第2配線との間に配置された第1ツェナーダイオードと、
前記第1LED素子のアノード電極と前記第4LED素子のアノード電極とが接続されたプラス電源線と、
前記第3LED素子のカソード電極と前記第6LED素子のカソード電極とが接続されたマイナス電源線と、
前記プラス電源線と前記マイナス電源線との間に配置されたサージ保護素子と、
前記サージ保護素子と前記第1直列発光回路との間の、前記マイナス電源線に配置された逆電流防止用ダイオードと、を備え、
前記第1LED素子、前記第2LED素子、前記第3LED素子、前記第4LED素子、前記第5LED素子及び前記第6LED素子、前記第1ツェナーダイオード、前記サージ保護素子並びに前記逆電流防止用ダイオードは、回路基板に載置されフッ素コーティングされており、
前記回路基板は、複数の光学ユニットの下方に配置される、LED装置。
【請求項2】
前記サージ保護素子と前記第1直列発光回路との間の、前記マイナス
電源線に配置された逆電流防止用ダイオードを備える、
請求項1に記載のLED装置。
【請求項3】
前記プラス電源線と前記第1配線との間に配置された第2ツェナーダイオードと、
前記マイナス電源線と前記第2配線との間に配置された第3ツェナーダイオードと、
を備える
請求項1に記載のLED装置。
【請求項4】
前記第1LED素子、前記第2LED素子、前記第3LED素子、前記第4LED素子、前記第5LED素子及び前記第6LED素子は、同一の定電流回路から出力される定電流により発光する、請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載のLED装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列及び並列に接続された複数のLED(Light Emitting Diode)素子と、複数のLED素子に電気的に接続されたツェナーダイオードとを備えるLED装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED装置は、表示装置のバックライト及び照明機器等に広く用いられるようになってきている。球技場、スキー場又はゴルフ場などでは、広範囲を照明するために複数のLEDがマトリクス状に配置されることが多い。例えば、特許文献1及び特許文献2では、直列に配置されたLED素子を複数並列に配置したマトリクス状のLED装置を開示している。
【0003】
一般にLED素子は、サージ電圧、静電気放電等のノイズによって故障を起こしやすい。すなわち、LED素子は逆耐圧が小さいという性質がある。その対策としてLED素子に並列にツェナーダイオードを配した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-5185号公報
【文献】特開2015-19090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のLED素子の1つのLED素子が故障すると、直列に配置された複数のLED素子が発光しなくなったりして、LED装置として役に立たなくなることがある。また、複数のLED素子の1つのLED素子が故障しても、直列接続された複数のLED素子が発光するためには、すべてのLED素子に対してツェナーダイオードを並列接続しなければならない。それでは、ツェナーダイオードを配置するLED素子の基板サイズの大型化や、ツェナーダイオードの実装工程の追加などの問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決するため、LED素子の基板サイズの大型化を防ぐとともに、複数のLED素子の1つのLED素子が故障しても他のLED素子が発光し続けるLED装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のLED装置は、第1LED素子と第2LED素子と第3LED素子とを直列接続した第1直列発光回路、及び第1直列発光回路に並列に配置され、第4LED素子と第5LED素子と第6LED素子とを直列接続した第2直列発光回路から構成される発光部を有する。またLED装置は、第1LED素子と第2LED素子との間と第4LED素子と第5LED素子との間とに接続された第1配線と、第2LED素子と第3LED素子との間と第5LED素子と第6LED素子との間とに接続された第2配線と、第1配線と第2配線との間に配置された第1ツェナーダイオードと、を備える。
【0008】
本実施形態のLED装置は、さらに第1LED素子のアノード電極と第4LED素子のアノード電極とが接続されたプラス電源線と、第3LED素子のカソード電極と第6LED素子のカソード電極とが接続されたマイナス電源線と、プラス電源線とマイナス電極線との間に配置されたサージ保護素子と、を備えることが好ましい。
また、サージ保護素子と第1直列発光回路との間の、マイナス電極線に逆電流防止用ダイオードが配置されることが好ましい。
さらに、プラス電源線と第1配線との間に配置された第2ツェナーダイオードと、マイナス電源線と第2配線との間に配置された第3ツェナーダイオードと、を備えることが好ましい。
【0009】
本実施形態のLED装置は、第1LED素子、第2LED素子、第3LED素子、第4LED素子、第5LED素子及び第6LED素子並びに第1ツェナーダイオードは、回路基板に載置され、回路基板はフッ素コーティングされていることが好ましい。
その回路基板には、第1LED素子のアノード電極と第4LED素子のアノード電極とが接続されたプラス電源線と、第3LED素子のカソード電極と第6LED素子のカソード電極とが接続されたマイナス電源線と、プラス電源線とマイナス電極線との間に配置されたサージ保護素子と、サージ保護素子と第1直列発光回路との間の、マイナス電極線に配置された逆電流防止用ダイオードと、を備えてもよい。そして回路基板は、複数の光学ユニットの下方に配置されることが好ましい。
本実施形態のLED装置は、第1LED素子、第2LED素子、第3LED素子、第4LED素子、第5LED素子及び第6LED素子は、同一の定電流回路から出力される定電流により発光することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のLED装置は、小型化が容易にできるととともに、複数のLED素子の1つのLED素子が故障しても直列接続された複数のLED素子が発光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】マトリクス状に配置されたLED素子を有する発光回路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るLED装置について説明する。以下の実施形態において、本装置は、陸上競技場、球技場、サッカー場もしくはゴルフ場といった大型競技施設で用いられる高出力タイプの装置として説明する。なお、説明に用いる各図はこれら発明を理解できる程度に概略的に示してあり、大きさ、角度又は厚み等は誇張して描いている。また説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の実施形態中で述べる形状、寸法、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。
【0013】
<LED装置の概略>
図1に示すように、LED装置1は、LED素子を複数配置した基板を内蔵した放熱板12と、基板の出射側に配置された複数の光学ユニット2(2-11から2-67)と、これら光学ユニット2の出射側に配置され、放熱板12を保護する保護ガード13と、を備える。保護ガード13は、LED素子が出射した光を出射することで、この出射面が装置1の発光面となる。
【0014】
図1中の左上から右上にかけて、光学ユニット2-11から2-16がLED装置1に配置される。その一段下側(-Y軸側)には光学ユニット2-21から2-26がLED装置1に配置される。一番下側には光学ユニット2-71から2-76がLED装置1に配置される。1つの光学ユニット2には例えば4つのLED素子8(
図2を参照)が配置される。つまり、LED装置1は168個のLED素子8を備えている。これら光学ユニット2はすべて同じ仕様であってもよいし、異なる仕様であってもよい。
【0015】
なお、LED装置1は正面側(+Z軸側)から見ると、正方形状であるが長方形状であっても円形状であってもよい。光学ユニット2は、LED装置1の放熱板12の形状に合わせて適宜配置される。
図1では光学ユニット2が7×6のマトリクス状に配置されているが、これに限らず、10×10、3×20等のマトリクス状に配置されてもよい。以下の説明では、LED装置1が168個のLED素子8を備えていることを前提に説明する。
【0016】
図2は、LED装置1の部分断面図であり、光学ユニット2-41及び2-51の断面図である。LED装置1は、LED素子8、LED素子8を載せた回路基板6、放熱板12、保護ガード13等から構成されている。LED素子8からの光の光軸Lは、Z軸方向と平行である。
【0017】
放熱板12は、アルミダイカスト等の金属製で、正方形もしくは円形の深皿状であり、正面側(+Z軸側)に内側表面12cを有している。そして、放熱板12は、背面側(-Z軸側)には複数のヒートシンク12hを有している。ヒートシンク12hは、回路基板6を介してLED素子8の発光に伴って生じた熱もしくはダイオードの熱を外部に放熱する。
【0018】
また、放熱板12は、その内側表面12cに密着するように回路基板6が設けられている。回路基板6には、複数のLED素子8が半田付けされており、回路基板6を介してLED素子8に電源が供給され、複数のLED素子8が点灯する構成になっている。また図示されていないが、後述するダイオードもしくはツェナーダイオード等も回路基板6に取り付けられている。複数のLED素子8及びツェナーダイオードが配置された回路基板6の正面側(+Z軸側)6cは、フッ素樹脂でフッ素コーティングされている。これにより回路基板6は、風雨による湿気から保護され、LED素子8及びツェナーダイオード等の電子部品の腐食損傷を防止している。
【0019】
また、回路基板6の上側(+Z軸側)には、後述する複数の光学ユニット2が配置される。
図2では、同じ仕様の光学ユニット2-41及び2-51が内側表面12cに嵌め込まれるように配置されている。そして、複数の光学ユニット2の上側(+Z軸側)には、保護ガード13が配置される。保護ガード13は、LED素子8からの出射光を出射するため、透明ガラス又は透明プラスチック(ポリカーボネートもしくはアクリル(PMMA)等)で形成されており、LED装置1の内部の保護・防水を行っている。
【0020】
<発光回路の概略>
次に
図3を使って発光回路を説明する。発光回路は、整流部30と、定電流部40とLED発光部50とからなる。発光回路は、
図1に示された168個のLED素子8を発光させる。
【0021】
整流部30はブリッジダイオードBD及び抵抗Rを有している。整流部30は電源ラインPLに供給される100Vの交流電圧を直流電圧に整流する。定電流部40は、定電流ダイオードCD及びツェナーダイオードCZをそれぞれ並列に接続した構成である。定電流ダイオードCDへ過渡的に印加されるサージ電圧をツェナーダイオードCZ及び定電流ダイオードCDの直列回路により、LED発光部50へ流れる電流を所定の定電流以下に規制する。定電流ダイオードCDは、LED発光部50において要求される明るさに応じて定電流値を選択され、選択された定電流値に応じて最高電圧を選択されている。
【0022】
定電流ダイオードCDは、順方向に電圧を印加される半導体素子であるため、LED素子8と同様にサージ電圧に弱い性質があり、最大電圧を超えるサージ電圧が印加されると、正常な半導体機能が損なわれることがある。また、3個の定電流ダイオードCDは、それぞれツェナーダイオードCZをそれぞれ並列に接続して、定電流ダイオードCDへ過渡的に印加されるサージ電圧をツェナーダイオードCZへバイパスしている。それぞれのツェナーダイオードCZは、サージ電圧をバイパスさせることにより、ブリッジダイオードBDで整流された電圧が、3個の定電流ダイオードCDのうちの1個に集中しないようにしている。許容消費電力もしくは耐圧等に応じて、定電流ダイオードCDが1個、ツェナーダイオードCZが1個のみで対応することが可能である。
【0023】
LED発光部50は、
図1に示された複数の光学ユニット2に対応して設けられた168個のLED素子8が、14×12のマトリクス状に配置されている。配線C1から配線C12には、それぞれ直列に14個のLED素子8が接続されている。本実施形態では1つの配線CにLED素子8が接続された回路を直列発光回路と呼ぶことがある。配線V+側に、各LED素子8のアノード電極が、配線V-側に各LED素子8のカソード電極が接続される。配線C1及びC2のV+側に接続される4個のLED素子8は、光学ユニット2-11に対応するLED素子であり、V-側に接続される4個のLED素子8は、光学ユニット2-71に対応するLED素子である。また配線C11及びC12のV+側に接続される4個のLED素子8は、光学ユニット2-16に対応するLED素子であり、V-側に接続される4個のLED素子8は、光学ユニット2-76に対応するLED素子である。
【0024】
配線C1から配線C12に直列に接続された14個のLED素子8にそれぞれ、配線L1からL13が接続されている。そして配線C13には、 配線C1から配線C12に並列するツェナーダイオード7が接続されている。LED素子8の順電流増加に応じて順電圧も増加するという特性を利用し、各配線C1、C2、……C12ごとに接続されている12個のLED素子8に対してそれぞれツェナーダイオード7が並列接続されている。例えば、配線C1と配線L1及び配線L2と接続されるLED素子8は、並列にツェナーダイオード7が接続されている。配線C2と配線L1及び配線L2と接続されるLED素子8も、同様である。
【0025】
なお、ツェナーダイオード7は、LED素子8のアノード電極側にツェナーダイオード7のカソード電極側を接続し、LED素子8のカソード電極側にツェナーダイオード7のアノード電極側が接続されている。また、ツェナーダイオード7のツェナー電圧は、LED素子8の設計上の最大許容電流時の順電圧と同じ値、もしくは所定量だけ小さい値とすることが好ましい。
【0026】
マトリクス状に配置された168個のLED素子8のうち、配線C2上の1つのLED素子8が断線故障した場合であっても、その故障したLED素子8の後段の正常なLED素子8に、配線C1又は配線C3からの接続経路で電流が供給されるので、後段の正常なLED素子8は発光する。このため、故障したLED素子8のみが発光せず、他のLED素子8は発光するので、LED装置1の輝度低下は微小である。
【0027】
また、各行ごとにツェナーダイオード2が並列接続されているので、例えば、1つのLED素子8が断線故障して他の正常なLED素子8に流れる電流が、LED素子8の最大許容電流を超えるときには、その最大許容電流を超える電流がツェナーダイオード2に流れるようになり、これにより、残った正常なLED素子8に流れる電流値を最大許容電流値以内に維持することができ、正常なLED素子8が保護される。
【0028】
また、LED発光部50はサージ保護素子としてツェナーダイオードTVSを有しており、ツェナーダイオードTVSのカソード電極が配線V+(プラス電源線)にアノード電極が配線V-(マイナス電源線)に接続されている。ツェナーダイオードTVSは、静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)対策用であり、定電流部40が存在していても、サージ電流が生じてしまう場合を想定し、ESD対策用のツェナーダイオードTVSが接続されて、LED素子8へ過渡的に印加されるサージ電流をツェナーダイオードTVSへバイパスさせて、168個のLED素子8を保護している。
【0029】
また、LED発光部50は逆電流防止用のダイオードBP1及びBP2を有している。ダイオードBP1及びBP2は、ツェナーダイオードTVSと配線C1との間で配線V-に接続されている。ダイオードBP1及びBP2は、電源ラインPLに高周波ノイズが入力された場合等に生じる逆電流が、マトリクス状に配置されたLED素子8に入力されることを防止する。本実施形態ではダイオードBP1及びBP2が並列に2つ配置されているが、並列に3つ以上配置されてもよく、ダイオードBP1のみが配置されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 … LED装置
2(2-11~2-76) … 光学ユニット
6 … 回路基板
7 … ツェナーダイオード、 8 … LED素子
12 … 放熱板、 13 … 保護ガード
30 … 整流部、 40 … 定電流部、 50 … LED発光部
C1―C13 …配線、 L1―L13 … 配線
V+ … プラス電源線、 V- … マイナス電源線
TVS … サージ保護素子(ツェナーダイオード)
BP1、BP2 … ダイオード