(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】動作補助装置及び動作補助装置付き安全帯
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20240220BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A41D13/00 102
A62B35/00 A
(21)【出願番号】P 2022572227
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046277
(87)【国際公開番号】W WO2022138376
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2020217106
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】100120101
【氏名又は名称】畑▲崎▼ 昭
(72)【発明者】
【氏名】東谷 貴美
(72)【発明者】
【氏名】小山 鋼治
(72)【発明者】
【氏名】大柴 岳人
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181227(JP,A)
【文献】特開2020-014520(JP,A)
【文献】特許第6760602(JP,B2)
【文献】特開2019-206774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0128734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が上半身に着用する着用具と、
前記使用者の背部に配置される縦長の弾性体と、
前記弾性体の下部に連結されて前記弾性体の付勢力を前記使用者の下肢に伝達する下肢ベルトと、
前記着用具の前記使用者の上半身前方部から肩部頂部の間に一端が連結され、他端を前記使用者の背部上方で前記弾性体の上部と連結されるストラップと、
を有
し、
前記着用具は、前記使用者の肩部に掛けられる肩掛けベルトと、前記使用者の大腿部に巻回される腿部ベルトとを少なくとも含むフルハーネス型安全帯であり、
前記使用者の背部側で交差し且つ前記使用者の肩部から脇部を介して前記使用者の背面に引き回されることで、前記使用者の上半身にたすき掛けされるとともに、前記使用者の上半身にたすき掛けされたときに、前記使用者が着用する前記フルハーネス型安全帯の少なくとも肩部を、上側から被さるように前記使用者の上半身に圧接する圧接用ベルトを有し、
前記フルハーネス型安全帯は、前記使用者に当接される面とは反対側の面に、前記肩掛けベルトを挿通して保持するベルト保持部材を備えたパッドを有し、
前記圧接用ベルトは、前記パッド側から前記圧接用ベルト、前記肩掛けベルトとなるように積層された状態で、前記肩掛けベルトとともに前記ベルト保持部材に挿通して保持される、
ことを特徴とする動作補助装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の動作補助装置において、
前記ストラップは、前記フルハーネス型安全帯に結合されることを特徴とする動作補助装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の動作補助装置において、
前記ストラップは、前記フルハーネス型安全帯が有するハーネス構成部品に取り付けられることを特徴とする動作補助装置。
【請求項4】
請求項
3記載の動作補助装置において、
前記ハーネス構成部品は、ランヤードに連結されたフックが係止されるフック係止具であることを特徴とする動作補助装置。
【請求項5】
請求項
3に記載の動作補助装置において、
前記ハーネス構成部品は、前記使用者の肩部に当てられる肩パッドであることを特徴とする動作補助装置。
【請求項6】
請求項
3に記載の動作補助装置において、
前記ハーネス構成部品は、前記使用者が前記フルハーネス型安全帯を着用したときに、前記使用者の両肩部に巻き掛けられた前記肩掛けベルトを前記使用者の胸部で連結する胸部ベルトであることを特徴とする動作補助装置。
【請求項7】
請求項
3に記載の動作補助装置において、
前記ハーネス構成部品は、前記フルハーネス型安全帯を前記使用者が着用したときに前記肩掛けベルトの締め付け長さを調節する調節具であることを特徴とする動作補助装置。
【請求項8】
請求項
3から請求項
7のいずれか1項に記載の動作補助装置において、
前記ストラップは、前記ハーネス構成部品に着脱可能な取付具を介して前記ハーネス構成部品に取り付けられることを特徴とする動作補助装置。
【請求項9】
請求項
1に記載の動作補助装置において、
前記圧接用ベルトは、1本又は2本のベルトで、前記使用者の上半身への前記フルハーネス型安全帯の締め付け長さを調節することが可能であることを特徴とする動作補助装置。
【請求項10】
請求項
1に記載の動作補助装置において、
前記ストラップは、前記パッド側から前記圧接用ベルト、前記肩掛けベルト、前記ストラップとなるように積層された状態で、前記肩掛けベルト及び前記圧接用ベルトとともに前記ベルト保持部材に挿通して保持されることを特徴とする動作補助装置。
【請求項11】
請求項
1から請求項
10のいずれか1項に記載の動作補助装置において、
前記弾性体の下部と前記フルハーネス型安全帯とを連結して、前記弾性体の下部の浮き上がりを防止する連結体を有することを特徴とする動作補助装置。
【請求項12】
請求項1から請求項
11のいずれか1項に記載の動作補助装置において、
前記下肢ベルトは、前記下肢ベルトを前記使用者の膝部に装着する膝パッドを有することを特徴とする動作補助装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の動作補助装置を有する、
ことを特徴とする動作補助装置付き安全帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者(作業者)の動作を補助する動作補助装置及び動作補助装置付き安全帯に関する。
【背景技術】
【0002】
高所における作業現場では、使用者は安全帯を着用することが義務付けられている。安全帯には、例えば、胴ベルト型安全帯やハーネス型安全帯がある。胴ベルト型安全帯は、使用者の腰部に巻回される胴ベルトを有する安全帯や、胴ベルトの他に、胴ベルトに連結されて使用者の大腿部に巻回される腿ベルトを有する安全帯などがある。このような胴ベルト型安全帯は、容易に着用でき、また、身体の束縛感が少なく、便利である。
【0003】
一方、ハーネス型安全帯は、使用者の背中で交差して両肩に掛けられる肩掛けベルトと、腿ベルト又は/及び腰ベルトとを一体とした安全帯である。このハーネス型安全帯の中には、使用者の肩への負荷が集中することを軽減する目的で、ハーネス型安全帯の着用時に、使用者の背中から肩部を介して胸部に亘って接触するパッドや着用具を有するものもある。このようなハーネス型安全帯は、胴ベルト型安全帯に比べて着用するのに手間がかかるものの、胴ベルト型安全帯よりも落下阻止時の衝撃荷重が分散するため、胴ベルト型安全帯に比べて、使用者の身体に与える損傷を軽減させることができる。
【0004】
上述した作業現場では、前屈姿勢(しゃがんだ姿勢を含む)での長時間作業や重量のある資材を持ち上げる作業などがあり、使用者は腰を痛めやすい。そこで、使用者の腰の負担を低減するために、上着やハーネス型安全帯のベルト肩部に取り付けた環状部材と、ハーネス型安全帯のベルト臀部に着脱されるベースとの間に、2つの人工筋肉部などの弾性体を使用者の背中側でV字形状となるように連結し、使用者が前屈動作を行ったときに適度な反力を生じさせて、使用者の腰への負担を低減する動作補助装置が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の発明では、人工筋肉部の上端部を第一連結部を介してベルトと結合しているため、人工筋肉部により発生される弾性力を第一連結部が直接的に受ける。よって、第一連結部は人工筋肉部により発生される弾性力に耐えられる強度を有する必要がある。その結果、第一連結部を金具等で構成することや、連結手段としてのみの利用となり、部品点数が増加する課題がある。また、着用される安全帯のベルトが使用者の身体にフィットしていないと、使用者が上半身を動かしたときに、着用される安全帯のベルトがずれてしまい、使用者が前屈動作を行ったときに、上記弾性体がうまく機能しない恐れがあるが、これら課題に対する解決策は記載されていない。また、使用者が前屈動作を行ったときに、2つの人工筋肉部を有効に作用させることができないが、これら課題に対する解決策は記載されていない。このような理由から、特許文献1の動作補助装置では、弾性体が使用者の前屈動作に適度な反力を与えることが難しく、使用者の補助を適切に行うことができない。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用者が前屈動作など、直立姿勢とは異なる姿勢に変化させたときに、着用される安全帯のベルトなどの着用具のずれを抑止して弾性体による適度な反力を発生させることで、使用者の腰への負担を低減する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するに当たり、本発明の動作補助装置の一態様は、使用者が上半身に着用する着用具と、前記使用者の背部に配置される縦長の弾性体と、前記弾性体の下部に連結されて前記弾性体の付勢力を前記使用者の下肢に伝達する下肢ベルトと、前記着用具の前記使用者の上半身前方部から肩部頂部の間に一端が連結され、他端を前記使用者の背部上方で前記弾性体の上部と連結されるストラップと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記着用具は、前記使用者の肩部に掛けられる肩掛けベルトと、前記使用者の大腿部に巻回される腿部ベルトとを少なくとも含むフルハーネス型安全帯である。
【0010】
また、前記ストラップは、前記フルハーネス型安全帯に結合されることが好ましい。
【0011】
また、前記ストラップは、前記フルハーネス型安全帯が有するハーネス構成部品に取り付けられるものである。この場合、前記ハーネス構成部品は、ランヤードに連結されたフックが係止されるフック係止具であることが好ましい。又は、前記ハーネス構成部品は、前記使用者の肩部に当てられる肩パッドであることが好ましい。
【0012】
また、前記ハーネス構成部品は、前記使用者が前記フルハーネス型安全帯を着用したときに、前記使用者の両肩部に巻き掛けられた前記肩掛けベルトを前記使用者の胸部で連結する胸部ベルトであることが好ましい。さらには、前記ハーネス構成部品は、前記フルハーネス型安全帯を前記使用者が着用したときに前記肩掛けベルトの締め付け長さを調節する調節具である。
【0013】
また、前記ストラップは、前記ハーネス構成部品に着脱可能な取付具を介して前記ハーネス構成部品に取り付けられるものである。
【0014】
また、前記使用者の背部側で交差し且つ前記使用者の肩部から脇部を介して前記使用者の背面に引き回されることで、前記使用者の上半身にたすき掛けされるとともに、前記使用者の上半身にたすき掛けされたときに、前記使用者が着用する前記フルハーネス型安全帯の少なくとも肩部を、上側から被さるように前記使用者の上半身に圧接する圧接用ベルトを有するものである。
【0015】
また、前記圧接用ベルトは、1本又は2本のベルトで、前記使用者の上半身への前記フルハーネス型安全帯の締め付け長さを調節することが可能であることが好ましい。
【0016】
また、前記フルハーネス型安全帯は、前記使用者に当接される面とは反対側の面に、前記肩掛けベルトを挿通して保持するベルト保持部材を備えたパッドを有し、前記圧接用ベルトは、前記パッド側から前記圧接用ベルト、前記肩掛けベルトとなるように積層された状態で、前記肩掛けベルトとともに前記ベルト保持部材に挿通して保持されるものである。
【0017】
ここで、前記ストラップは、前記パッド側から前記圧接用ベルト、前記肩掛けベルト、前記ストラップとなるように積層された状態で、前記肩掛けベルト及び前記圧接用ベルトとともに前記ベルト保持部材に挿通して保持されることが好ましい。
【0018】
また、弾性体の下部と前記フルハーネス型安全帯とを連結して、前記弾性体の下部の浮き上がりを防止する連結体を有するものである。
【0019】
また、下肢ベルトは、前記下肢ベルトを前記使用者の膝部に装着する膝パッドを有するものである。
【0020】
また、本発明における動作補助装置付き安全帯の一態様は、使用者の肩部に掛けられる肩掛けベルトと、前記使用者の大腿部に巻回される腿部ベルトとを少なくとも含むフルハーネス型安全帯と、前記使用者の背部に配置される縦長の弾性体と、前記弾性体の下部に連結されて前記弾性体の付勢力を前記使用者の下肢に伝達する下肢ベルトと、前記フルハーネス型安全帯における前記使用者の上半身前方部から肩部頂部の間に一端が連結され、他端を前記使用者の背部上方で前記弾性体の上部と連結されるストラップと、を有する動作補助装置と、を有するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、使用者が前屈動作を行ったときに、着用される安全帯のベルトなどの着用具のずれを抑止しながらも弾性体による適度な反力を発生させ、使用者の腰への負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】動作補助装置付き安全帯の一例を示す図である。
【
図4】動作補助装置の肩掛けベルトをハーネス型安全帯のパッドに装着する手順を示す図である。
【
図5】ストラップをハーネス型安全帯の肩掛け部に装着する手順を示す図である。
【
図6】
図6(a)は動作補助装置付き安全帯を着用したときの使用者の前面側の構成を示す図、
図6(b)は動作補助装置付き安全帯を着用したときの使用者の背面側の構成を示す図である。
【
図7】
図7(a)は直立姿勢の使用者と動作補助装置との位置関係を示す図、
図7(b)は前屈姿勢の使用者と動作補助装置との位置関係を示す図である。
【
図8】しゃがんだ姿勢の使用者と動作補助装置との位置関係を示す図である。
【
図9】連結環及びハーネス型安全帯の連結ベルトを連結体により連結した動作補助装置の一例を示す図である。
【
図10】使用者に着用可能な動作補助装置の一例を示す図である。
【
図11】パッドの下方に補助パッドを設けた動作補助装置付き安全帯の一例を示す図である。
【
図12】
図11に示す動作補助装置付き安全帯に用いられる動作補助装置の一例を示す図である。
【
図13】動作補助装置付き安全帯を着用したとき使用者の背面側の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施した動作補助装置付き安全帯1の構成について、図面を用いて説明する。
図1から
図3に示すように、動作補助装置付き安全帯は、フルハーネス型安全帯10と、動作補助装置60とを含む。なお、
図1においては、ハーネス型安全帯及び動作補助装置の各構成部材に対する符号のみを付し、ハーネス型安全帯及び動作補助装置そのものに対する符号は省略している。
【0024】
フルハーネス型安全帯10は、パッド15、肩掛けベルト16,17、腿部ベルト18,19及び連結ベルト20を含む。パッド15は、フルハーネス型安全帯10の着用時に、人体の背中部分から両肩部に掛けて接触して、フルハーネス型安全帯10を着用した使用者の肩部への荷重集中を分散する。図示は省略するが、パッド15は、例えば、緩衝材をパッド外生地とパッド内生地とで挟み込んだ三層構造で、外周全体に縁取りテープが縫製される。パッド内生地は、フルハーネス型安全帯10を使用者が着用したときに、使用者の背部に当接される。
【0025】
パッド15は、パッド本体25、肩掛け部26,27及び突出部28,29を有する。肩掛け部26,27は、フルハーネス型安全帯10の着用時に、使用者の背中から一方の肩部及び胸部にかけて使用者に接触される。なお、パッド15としては、肩掛けベルト16,17に取り付けられる肩パッドでもよい。
【0026】
肩掛け部26は、先端側に、ランヤード(命綱)に連結されたフック(図示省略)を係止するための係止具31を有する。係止具31は、断面が矩形状の筒部材で、対峙する2つの側面の下端部の各々に外方に向けて突出する突出片を有する部材である。また、係止具31は、合成樹脂製の部材である。係止具31は、パッド15の生成時に、対峙する2つの側面の下端部の各々に設けた突出片をパッド外生地と縁取りテープとの間に挟持した状態で縫着される。これにより、係止具31と肩掛け部26との間で、肩掛けベルト16が挿通されることを可能とする。
【0027】
肩掛け部26は、係止具31が設けられた位置からパッド本体25側に所定間隔を空けた位置に、ベルトカバー32を有する。ベルトカバー32は、パッド15の生成時に、肩掛け部26の延在方向(長手方向)に直交する、つまり、ベルトカバー32は、肩掛け部26の幅方向における両端縁を、パッド外生地と縁取りテープとの間に挟持した状態で縫着される。これにより、ベルトカバー32と肩掛け部26との間で、肩掛けベルト16が挿通されることを可能とする。
【0028】
肩掛け部27は、肩掛け部26と同様に、先端側に、ランヤード(命綱)に連結されたフック(図示省略)を係止する係止具36を有する。なお、係止具36は、肩掛け部26に縫い付けられる係止具31と同一形状で、また、係止具31と同一の素材、すなわち合成樹脂製の部材である。係止具36は、パッド15の生成時に、対峙する2つの側面の下端部の各々に設けた突出片をパッド外生地と縁取りテープとの間に挟持した状態で縫着される。これにより、係止具36と肩掛け部27との間で、肩掛けベルト17が挿通されることを可能とする。
【0029】
肩掛け部27は、係止具36が設けられた位置からパッド本体25側に所定間隔を空けた位置に、ベルトカバー37を有する。ベルトカバー37は、パッド15の生成時に、肩掛け部27の延在方向(長手方向)に直交する、つまり、肩掛け部27の幅方向における両端縁を、パッド外生地と縁取りテープとの間に挟持した状態で縫製される。これにより、ベルトカバー37と肩掛け部27との間で、肩掛けベルト17が挿通されることを可能とする。
【0030】
突出部28は、根元部分に、ベルトループ39を有する。ベルトループ39は、突出部28の幅方向に延在する。ベルトループ39は、パッド15の生成時に、ベルトループ39の延在方向における両端部を、パッド外生地と縁取りテープとの間に挟持した状態で縫着される。これにより、ベルトループ39と突出部28との間で、連結ベルト20が挿通されることを可能とする。
【0031】
突出部29は、根元部分に、ベルトループ40を有する。ベルトループ40は、突出部29の幅方向に延在する。ベルトループ40は、パッド15の生成時に、ベルトループ40の延在方向における両端部を、パッド外生地と縁取りテープとの間に挟持した状態で縫着される。これにより、ベルトループ40と突出部29との間で、連結ベルト20が挿通されることを可能とする。
【0032】
パッド15は、パッド本体25の上端部から肩掛け部26,27にかけて、略U字形状又は略V字形状のベルトカバー41を有する。ベルトカバー41は、パッド15の生成時に、パッド外生地と縁取りテープとの間に挟持した状態で縫着される。これにより、ベルトカバー41とパッド本体25との間、ベルトカバー41と肩掛け部26,27との間で、肩掛けベルトが挿通されることを可能とする。なお、ベルトカバー41は、パッド本体25から肩掛け部26にかけて配置される一片の上端部を、ベルトカバー32から所定の間隔を空けて、縫着される。同様にして、ベルトカバー41は、パッド本体25から肩掛け部27にかけて配置される他片の上端部を、ベルトカバー32から所定の間隔を空けて、縫着される。
【0033】
ベルトカバー41の下端部と、ベルトループ39,40との間には、ベルトカバー42が設けられる。ベルトカバー42は、例えば合成樹脂製で、略X字形状の部材である。ベルトカバー42は、連結ベルト20のループ部20aにランヤードに連結されたフックが係止されたときに、パッド15に取り付けられる肩掛けベルト16,17や連結ベルト20を前記フックから保護して、フックが肩掛けベルト16,17や連結ベルト20に擦れることによる、肩掛けベルト16,17や連結ベルト20の破断を防止する。
【0034】
肩掛けベルト16は、連結ベルト20のループ部20a近傍に一端部を縫着される。肩掛けベルト16は、連結ベルト20に縫着される一端側から他端側に向けて、ベルトカバー41とパッド本体25との間、ベルトカバー32と肩掛け部26との間、係止具31と肩掛け部26との間の順で挿通された状態で保持される。肩掛けベルト16は、他端部を、連結ベルト20の一端部に保持されたベルト調節具46に留められる。
【0035】
肩掛けベルト16は、胸部ベルト50の一端部を縫着する。胸部ベルト50は、胸部ベルト50に縫着される一端部とは反対側となる他端部に、バックル52の雄部材52aを保持する。
【0036】
同様に、肩掛けベルト17は、連結ベルト20のループ部20a近傍に一端部を縫着される。肩掛けベルト17は、連結ベルト20に縫着される一端側から他端側に向けて、ベルトカバー41とパッド本体25との間、ベルトカバー37と肩掛け部27との間、係止具36と肩掛け部27との間の順で挿通された状態で保持される。肩掛けベルト17は、他端部を、連結ベルト20の他端部に保持されたベルト調節具48に留められる。
【0037】
肩掛けベルト17は、胸部ベルト51の一端部を縫着する。胸部ベルト51は、肩掛けベルト17に縫着される一端部とは反対側となる他端部に、バックル52の雌部材52bを保持する。ここで、胸部ベルト50に保持されるバックル52の雄部材52aは、胸部ベルト51に保持されるバックル52の雌部材52bに係合される。バックル52の雄部材52aがバックル52の雌部材52bに係合されることで、胸部ベルト50と胸部ベルト51とが連結されて、肩掛けベルト16,17及び肩掛けベルト16,17が取り付けられたパッド15の肩掛け部26,27が使用者の肩部から脱落することを防止する。
【0038】
なお、胸部ベルト50を肩掛けベルト16に、胸部ベルト51を肩掛けベルト17に各々縫着しているが、胸部ベルト50をパッド15の肩掛け部26に、胸部ベルト51をパッド15の肩掛け部27に各々縫着してもよい。
【0039】
腿部ベルト18は、フルハーネス型安全帯10の着用時に、使用者の大腿部の一方(例えば左足の大腿部)に巻回される。腿部ベルト18は、長手方向における一端部にベルト調節具43を有し、他端部がベルト調節具43に留められる。ベルト調節具43からの腿部ベルト18の引き出し量を変更することで、使用者の大腿部に巻回される腿部ベルト18の巻回量が調節される。
【0040】
腿部ベルト19は、フルハーネス型安全帯10の着用時に、使用者の大腿部の他方(例えば右足の大腿部)に巻回される。腿部ベルト19は、長手方向における一端部にベルト調節具44を有し、他端部がベルト調節具44に留められる。ベルト調節具44からの腿部ベルト19の引き出し量を変更することで、使用者の大腿部に巻回される腿部ベルト19の巻回量が調節される。なお、腿部ベルト18と腿部ベルト19とは、連結ベルト45により連結される。
【0041】
連結ベルト20は、長手方向における中点で折り曲げて交差させた後、交差させた両片が、交差部分から一定間隔を空けた位置で各々折り返される。
【0042】
連結ベルト20は、長手方向における中点で折り曲げ交差させることで、ループ部20aを形成する。なお、ループ部20aは、ランヤード(命綱)に連結されたフックを係止する。連結ベルト20は、交差部分近傍において、肩掛けベルト16,17の一端部を縫着する。
【0043】
連結ベルト20の一片20bの折り返し部分に腿部ベルト18が縫着される。そして、連結ベルト20の一片20bの先端部は、ベルト調節具46を保持する。ベルト調節具46は、肩掛けベルト16を取り付ける。さらに、連結ベルト20の一片20bは、ベルト調節具46から所定間隔開けた位置に、ループ部47を縫着する。ループ部47は、ランヤード(命綱)に連結されたフックを係止する。
【0044】
同様にして、連結ベルト20の他片20cの折り返し部分に腿部ベルト19が縫着される。そして、連結ベルト20の他片20cの先端部は、ベルト調節具48を保持する。ベルト調節具48は、肩掛けベルト17を取り付ける。さらに、連結ベルト20の他片20cは、ベルト調節具48から所定間隔開けた位置に、ループ部49を縫着する。ループ部49は、ランヤード(命綱)に連結されたフックを係止することができる。
【0045】
連結ベルト20は、肩掛けベルト16,17を縫着した状態で、肩掛けベルト16,17とともに、パッド15に取り付けられる。パッド15に取り付けられた状態では、連結ベルト20は、ループ部20aをパッド15のベルトカバー41とベルトカバー42との隙間から外方に突出される。また、連結ベルト20の一片20bがベルトループ39に挿通される。また、連結ベルト20の他片20cがベルトループ40に挿通される。
【0046】
図3に示すように、フルハーネス型安全帯10のパッド15を共用して表した動作補助装置60は、2本の圧接用ベルト61,62、ストラップ63,64、弾性体65,66、膝パッド67,68、下肢ベルト69を有する。なお、
図3においては、パッド15と、動作補助装置60との位置関係を示すため、フルハーネス型安全帯10の肩掛けベルト16,17、腿部ベルト18,19及び連結ベルト20を省略して示している。
【0047】
圧接用ベルト61,62は、フルハーネス型安全帯10のパッド15に装着される。
図4(a)に示すように、圧接用ベルト61は、一端部にベルト調節具70を保持した帯状のベルトである。同様に、圧接用ベルト62は、一端部にベルト調節具71を保持した帯状のベルトである。
【0048】
圧接用ベルト61,62は、以下のように、パッド15に取り付けられる。
図4(a)に示すように、圧接用ベルト61は、ベルト調節具71が取り付けられた一端部とは反対側の他端部を、係止具31とパッド15の肩掛け部26との間、ベルトカバー32とパッド15の肩掛け部26との間の順で挿通される。そして、圧接用ベルト61は、ベルトカバー42とパッド本体25との間、ベルトループ40とパッド15の突出部29との間の順で挿通される。
【0049】
図4(b)に示すように、圧接用ベルト62は、ベルト調節具71が取り付けられた一端部とは反対側の他端部を、係止具36とパッド15の肩掛け部27との間、ベルトカバー37とパッド15の肩掛け部27との間の順で挿通される。そして、圧接用ベルト62は、ベルトカバー42とパッド本体25との間、ベルトループ39とパッド15の突出部29との間の順で挿通される。
【0050】
図4(c)に示すように、圧接用ベルト61,62がパッド15に取り付けられた状態では、圧接用ベルト61,62は、パッド15の中央部分において交差した状態となる。詳細は図示を省略するが、圧接用ベルト61,62をパッド15に取り付けたとき、圧接用ベルト61,62のうち、パッド15に取り付けられた部分は、肩掛けベルト16,17及び連結ベルト20と、パッド15との間に位置する。つまり、動作補助装置付き安全帯1を着用したとき、圧接用ベルト61,62は、肩掛けベルト16,17の上方からパッド15を使用者の上半身に圧接するのではなく、パッド15を直接、使用者の上半身に圧接する。
【0051】
圧接用ベルト61,62をパッド15に取り付けた後、圧接用ベルト61の他端部は、圧接用ベルト62の一端部に保持したベルト調節具71に留められる。同様に、圧接用ベルト62の他端部は、圧接用ベルト61の一端部に保持したベルト調節具71に留められる。したがって、使用者が、動作補助装置60を有するフルハーネス型安全帯10を着用したときには、2本の圧接用ベルト61,62は、使用者の肩部から脇部に亘って巻回され、同時に使用者の背中で交差する、所謂、たすき掛けされた状態となる。このように圧接用ベルト61,62が使用者の上半身にたすき掛けされたときには、使用者が着用するフルハーネス型安全帯10の少なくとも肩部を、上側から被さるように使用者の上半身に圧接する。なお、動作補助装置60を有するフルハーネス型安全帯10を着用したときに、圧接用ベルト61が使用者の上半身に対して、たすき掛けできるのであれば、1本の肩掛けベルトを用いてもよい。
【0052】
ストラップ63は、パッド15の肩掛け部26に装着される。ストラップ63は、フルハーネス型安全帯10に動作補助装置60を取り付けたときに、弾性体65の一端部が取り付けられる。ストラップ63は、帯状ベルト75と、帯状ベルト75の一端側に取り付けられる2つのバックル76a,76bからなるベルト調節具76と、帯状ベルト75に挿通される三角形状の連結具77とを含む。ストラップ63は、例えば、帯状ベルト75を、ベルト調節具76を保持する一端部とは反対側の他端部から連結具77に挿通した状態で、パッド15の肩掛け部26に取り付けられる。なお、ストラップ63は、パッド15の肩掛け部26に縫着してもよいし、胸部ベルト50、ベルト調節具46に取り付けることも可能である。さらに、肩掛けベルト16,17にパッドを装着する場合には、パッドにストラップ63を取り付ければよい。
【0053】
図5(a)から
図5(d)に示すように、帯状ベルト75は、まず、パッド15のベルトカバー32とベルトカバー41との間の隙間から、ベルトカバー32とパッド15の肩掛け部26との間に挿通される。ベルトカバー32とパッド15の肩掛け部26との間に挿通された後、帯状ベルト75は、係止具31とパッド15の肩掛け部26との間に挿通される。係止具31とパッド15の肩掛け部26との間に挿通された帯状ベルト75は、折り返された後、係止具31の中空空間31aに挿通される。つまり、帯状ベルト75は、係止具31に挿通される。係止具31に挿通された帯状ベルト75は、再度、ベルトカバー32とパッド15の肩掛け部26との間に挿通される。
【0054】
ベルトカバー32とパッド15の肩掛け部26との間に挿通した後、帯状ベルト75は、パッド15のベルトカバー32とベルトカバー41との間の隙間から引き出される。引き出された帯状ベルト75の他端部は、帯状ベルト75の一端側に保持したベルト調節具76に留められる。そして、帯状ベルト75の他端部を引っ張り、係止具31に巻き掛けた帯状ベルト75の長さを調節する。これにより、帯状ベルト75は、ベルト調節具76に取り付けられた一端側とは反対側の端部が係止具31に巻き掛けられた状態で保持される。この状態では、パッド15の肩掛け部26とベルトカバー32との間で、パッド15の肩掛け部26側からベルトカバー32に向けて、圧接用ベルト61、肩掛けベルト16、ストラップ63の順で積層される。
【0055】
ストラップ64は、パッド15の肩掛け部27に装着される。ストラップ64は、フルハーネス型安全帯10に動作補助装置60を取り付けたときに、弾性体66の一端部が取り付けられる。なお、ストラップ64は、パッド15の肩掛け部27に縫着してもよいし、胸部ベルト51、ベルト調節具48に取り付けることも可能である。さらに、肩掛けベルト16,17にパッドを装着する場合には、パッドにストラップ63を取り付ければよい。
【0056】
ストラップ64は、ストラップ63と同一の構成で、帯状ベルト81と、帯状ベルト81の一端側に取り付けられる2つのバックル82a,82bからなるベルト調節具82と、帯状ベルト81に挿通される三角形状の連結具83を有する。なお、ストラップ64は、帯状ベルト81をパッド15のベルトカバー37とベルトカバー41との間の隙間84からベルトカバー37とパッド15の肩掛け部27との間、係止具36とパッドの肩掛け部27との間の順で挿通される。その語、帯状ベルト81は折り返され、係止具36に挿通されて、再度、ベルトカバー37とパッド15の肩掛け部27との間に挿通される。ベルトカバー37とパッド15の肩掛け部27との間に挿通した後、帯状ベルト81は、パッド15のベルトカバー37とベルトカバー41との間の隙間84から引き出される。引き出された帯状ベルト81の他端部は、帯状ベルト81の一端側に保持したベルト調節具82に留められる。これにより、帯状ベルト75は、ベルト調節具82に留められた一端側とは反対側の端部が係止具36に巻き掛けられた状態で保持される。この状態では、パッド15の肩掛け部27とベルトカバー37との間で、パッド15の肩掛け部27側からベルトカバー37に向けて、圧接用ベルト62、肩掛けベルト17、ストラップ64の順で積層される。
【0057】
ここで、使用者がフルハーネス型安全帯10を着用したとき、連結具77,83は、例えば、使用者の背部側で、且つ使用者の肩部頂部近傍に位置する。一方、使用者がフルハーネス型安全帯10を着用したとき、係止具31,36は、使用者の胸部から肩部頂部の間に位置する。したがって、使用者がフルハーネス型安全帯10を着用したとき、ストラップ63の帯状ベルト75及びストラップ64の帯状ベルト81は、使用者の胸部から肩部に掛けて巻き掛けられる。
【0058】
弾性体65,66は、例えば引張ばねや、人工筋肉などである。弾性体65,66として引張ばねや人工筋肉を用いた場合、弾性体の長さは、例えば200~400mmで、例えば10~30kgの力で引っ張ったときに、40~100mm程度伸縮するものが好ましい。また、人工筋肉を使用する場合には、内部圧力の変化が0.2~0.4MPaであることが好ましい。
【0059】
弾性体65は、伸縮方向における一端部がストラップ63の連結具77に取り付けられ、伸縮方向における他端部が下肢ベルト69に保持される連結環85に留められる。弾性体66は、伸縮方向における一端部がストラップ64の連結具83に留められ、伸縮方向における他端部が下肢ベルト69に保持される連結環85に留められる。
【0060】
膝パッド67は、例えば使用者の一方の膝部(例えば左膝部)に、全周に亘って巻回される。膝パッド67は、下肢ベルト69の一片69aが留められるベルト調節具86を有する。ベルト調節具86は、膝パッド67に縫着した帯状ベルト87に取り付けられる。なお、ベルト調節具86は、膝パッド67の後端上部に設けてもよい。膝パッド67は、膝部の後側から前側にかけて巻回され、膝パッド67の幅方向における上端部及び下端部の2か所で使用者の膝部に締め付ける。
【0061】
膝パッド68は、例えば使用者の他方の膝部(例えば右膝部)に、全周に亘って巻回される。膝パッド68は、下肢ベルト69の他片69bが留められるベルト調節具88を有する。ベルト調節具88は、膝パッド68に縫着した帯状ベルト89に取り付けられる。なお、ベルト調節具88は、膝パッド68の後端上部に設けてもよい。膝パッド68は、膝部の後側から前側にかけて巻回され、膝パッド68の幅方向における上端部及び下端部の2か所で使用者の膝部に締め付ける。
【0062】
なお、この実施の形態においては、使用者の膝部に巻回する膝パッド67,68を設けた場合を説明しているが、下肢ベルト69が連結される使用者の部位は、膝部に限定されるものではなく、例えば使用者の踵や、足首などの部位であってもよい。
【0063】
下肢ベルト69は、連結環85に挿通して折り返した状態で、折り返すことで生じる2片69a,69bをベルト調節具90に留められる。そして、下肢ベルト69は、一片69aの先端を膝パッド67に縫着される帯状ベルト87のベルト調節具86に、他片69bを膝パッド68に縫着される帯状ベルト89のベルト調節具88に各々留められる。ベルト調節具90は、下肢ベルト69の留め位置を変更、言い換えれば、連結環85からベルト調節具90間の長さを変更することで、連結環85からベルト調節具86,88までの距離を調節可能とする。なお、ベルト調節具90による調節ではなく、下肢ベルト69の一片69aにおけるベルト調節具86からの引き出し量、及び下肢ベルト69の他片69bにおけるベルト調節具88からの引き出し量の調節により、連結環85からベルト調節具86,88までの距離を調節してもよい。
【0064】
次に、動作補助装置付き安全帯1を着用する手順について説明する。まず、使用者は、腿部ベルト18に左脚部を、腿部ベルト19に右脚部を挿通させる。その状態で、使用者は、肩掛けベルト16と連結ベルト20の一片20bにより形成されるループ部分、及び、圧接用ベルト61のベルト調節具70に圧接用ベルト62を留めることで形成されるループ部分に、左腕を挿通し、使用者の左肩部に掛ける。肩掛けベルト16と連結ベルト20の一片20bにより形成されるループ部分を左肩部に掛けると、パッド15のパッド本体25及び肩掛け部26が、使用者の背中部から左肩部を介して使用者の上胸部まで当接される。
【0065】
同時に、使用者は、肩掛けベルト17と連結ベルト20の一片20bにより形成されるループ部分、及び、圧接用ベルト62のベルト調節具71に圧接用ベルト61を留めることで形成されるループ部分に使用者の右肩部に掛ける。肩掛けベルト17と連結ベルト20の他片20cにより形成されるループ部分を右肩部に掛けると、パッド15のパッド本体25及び肩掛け部27が、使用者の背中部から左肩部を介して使用者の上胸部まで当接される。
【0066】
この状態で、バックル52の雄部材52aとバックル52の雌部材52bとを係止させる。これにより、胸部ベルト33と胸部ベルト38とが連結される。また、膝パッド67を使用者の左膝部に、膝パッド68を使用者の右膝部に、各々巻回する。
【0067】
この状態で、肩掛けベルト16をベルト調節具46から引き出す。これにより、肩掛けベルト16の先端部におけるベルト調節具46からの引き出し量が増加し、肩掛けベルト16と連結ベルト20の一片20bにより形成されるループ部分の長さが短くなる。また、肩掛けベルト17をベルト調節具48から引き出す。これにより、肩掛けベルト17の先端部におけるベルト調節具48からの引き出し量が増加し、肩掛けベルト17と連結ベルト20の一片20bにより形成されるループ部分の長さが短くなる。このとき、圧接用ベルト61は肩掛けベルト16とパッド15との間に挟まれた状態でパッド15に保持され、圧接用ベルト62は肩掛けベルト17とパッド15との間に挟まれた状態でパッド15に保持されるので、肩掛けベルト16,17を使用者の上半身に締め付けるときに邪魔することがない。
【0068】
ここで、肩掛けベルト16,17を及び連結ベルト20を保持するパッド15が使用者の上半身に圧接された状態では、パッド15の肩掛け部26に保持される連結具77は、使用者の背面に位置する。同様にして、パッド15の肩掛け部27に保持される連結具83は、使用者の背面に位置する。
【0069】
そして、ベルト調節具43から腿部ベルト18の先端部を引き出し、腿部ベルト18を左大腿部に締め付ける。同時に、ベルト調節具44から腿部ベルト19の先端部を引き出し、腿部ベルト19を右大腿部に締め付ける。
【0070】
最後に、圧接用ベルト61のベルト調節具70から圧接用ベルト62の先端部を、圧接用ベルト62のベルト調節具71から圧接用ベルト61の先端部を各々引き出し、これら圧接用ベルト61,62を使用者の上半身に対して締め付ける。このとき、圧接用ベルト61,62は、パッド15を使用者の上半身に直接圧接することになるので、肩掛けベルト16,17の上方からパッド15を使用者の上半身に圧接した場合に比べて、より強くパッド15を使用者の上半身に圧接することができる。また、肩掛けベルト16,17の上方からパッド15を使用者の上半身に圧接する場合、肩掛けベルト16,17とパッド15との摩擦力が低いと、圧接用ベルト61,62を締め付けてパッド15を圧接しても、パッド15が肩掛けベルト16,17に対して滑る場合があり、結果的に使用者が姿勢を変化させたときに、使用者の上半身に対してパッド15がずれてしまう。したがって、圧接用ベルト61,62がパッド15を使用者の上半身に直接圧接することで、使用者が姿勢を変化させたときに、使用者の上半身に対してパッド15がずれてしまうことを防止できる。
【0071】
最後に、下肢ベルト69の一片69aの先端部をベルト調節具86から引き出し、又はベルト調節具86へと送り込み、連結環85からベルト調節具86までの長さを調節する。同時に、下肢ベルト69の他片69bの先端部をベルト調節具88から引き出し、又はベルト調節具88へと送り込み、連結環85からベルト調節具88までの長さを調節する。これにより、使用者が上半身を直立させた直立状態では、下肢ベルト69の両片69a,69bは、弾性体65,66によりテンションが掛けられた状態に保持される。
【0072】
なお、動作補助装置60を使用しない場合には、動作補助装置付き安全帯1から、弾性体65,66、膝パッド67,68及び下肢ベルト69を取り外した状態で、使用者は着用すればよい。
【0073】
使用者が直立姿勢から上半身を前方に屈めた前屈姿勢に態勢を変化させた場合を考える。下肢ベルト69の一片69aが膝パッド67に、下肢ベルト69の他片69bが膝パッド68に連結されている状態では、連結環85から膝パッド67の間に位置する下肢ベルト69の一片69a及び膝パッド67の帯状ベルト87の長さ、及び下肢ベルト69の他片69b及び膝パッド68の帯状ベルト89の長さは一定である。
【0074】
このとき、ストラップ63の帯状ベルト75及びストラップ64の帯状ベルト81は、使用者の胸部から肩部に掛けて巻き掛けられる。この状態では、ストラップ63の連結具77及びストラップ64の連結具83の位置は使用者の背部で、且つ使用者の肩部頂部近傍となる。
【0075】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、使用者が直立姿勢から前屈姿勢に姿勢を変化させると、使用者の臀部が使用者の後方(
図7(b)中F1方向)へと移動して下肢ベルト69を押圧する。使用者の臀部によって下肢ベルト69が押圧されることで、下肢ベルト69は弾性体65,66を
図7(b)中F2方向に引っ張る。弾性体65,66が下肢ベルト69に引っ張られることで、弾性体65,66には、元に戻ろうとする復帰力が作用する。したがって、パッド15に装着されたストラップ63,64には、弾性体65,66からの
図7(b)中F3方向の力が作用する。
【0076】
上述したように、パッド15は使用者の上半身に圧接されているので、パッド15に装着されたストラップ63,64及び連結具77,83は、使用者の背面側に移動することなく保持される。その結果、弾性体65はストラップ63の連結具77を、弾性体66はストラップ63の連結具83をそれぞれ支点として伸長する。弾性体65,66が伸長すると、弾性体65,66には、元の状態に戻ろうとする力(復帰力)が各々働く。
【0077】
このとき、弾性体65を引っ張る下肢ベルト69の力点P1に対して、弾性体65,66を保持するストラップ63の連結具77及びストラップ64の連結具83(支点P2)の位置は、使用者の背部で、且つ使用者の肩部頂部近傍である。支点の位置が使用者の肩部頂部に近接した位置にして、力点から支点までの間隔を長く、且つ、できるだけ直線的にすることで、力点に作用する力が小さくても弾性体65,66を確実に引っ張ることができ、弾性体65,66による復帰力を確実に発生させることができる。
【0078】
また、弾性体65,66の伸長により発生する復帰力を受けて、使用者は、前屈姿勢を保つことが容易になる。同時に、使用者が前屈姿勢から直立姿勢へと姿勢を変化させる場合、弾性体65,66の伸長により発生する復帰力を補助力として、姿勢を変化させやすくなる。また、低い位置にある物品を前屈姿勢で抱え上げる場合も、使用者は弾性体65,66の伸長により発生する復帰力によって、前屈姿勢から直立姿勢へと姿勢を変化させやすくなる。その結果、フルハーネス型安全帯10を装着して高所作業を行う使用者が高所における荷運びなどの作業時に、使用者の腰への負担を低減することができる。
【0079】
ここで、動作補助装置付き安全帯1において、ストラップ63の帯状ベルト75、ストラップ64の帯状ベルト81は、使用者の胸部から肩部に掛けて各々巻き掛けられる。この状態で、弾性体65,66が下肢ベルト69により引っ張られると、ストラップ63,64は、使用者の肩部を下方に押し下げる
図7(b)中F4方向の力が作用する。ここで、パッド15の肩掛け部26において、パッド15側から、圧接用ベルト61、肩掛けベルト16、ストラップ63(詳細には帯状ベルト75)の順で積層された状態で保持される。また、パッド15の肩掛け部27において、パッド15側から、圧接用ベルト62、肩掛けベルト17、ストラップ64(詳細には帯状ベルト81)の順で積層された状態で保持される。したがって、弾性体65がストラップ63の連結具77を、弾性体66がストラップ64の連結具83を各々引っ張るときに、最下層となる圧接用ベルト61,62による、パッド15の圧接力が増加する。その結果、パッド15が使用者の上半身に、より強く圧接され、使用者の上半身に対するパッド15のずれが防止される。これにより、使用者が前屈姿勢やしゃがんだ姿勢となるときに、弾性体65,66を確実に伸縮させることができる。
【0080】
ここで、弾性体65がストラップ63の連結具77を引っ張るときに、弾性体65により作用する力は、ストラップ63とパッド15との間に生じる摩擦力の影響を受けて低減された状態で係止具31に作用する。弾性体66がストラップ64の連結具83を引っ張るときも同様である。つまり、係止具31,36には、弾性体65,66が引っ張られたときに発生する復帰力が直接作用した場合よりも小さい力が作用する。したがって、係止具31,36として、金属製の部品ではなく、合成樹脂製の部品等の強度の低い部品を用いることが可能となる。同時に、係止具31,36をランヤードに連結されたフックを係止する部材としてだけでなく、ストラップ63,64を連結する部材としても利用することができる。
【0081】
さらに、ストラップ63の帯状ベルト75、及びストラップ64の帯状ベルト81は、使用者の上半身前面側に配置される部品に連結し、使用者の胸部から肩部に掛けて各々巻き掛けられるようにしたことで、金属製の部品など、強度の高い部品を使用者の背部に配置せずに済む。その結果、動作補助装置60の部品点数を削減し、動作補助装置60を軽量化できるので、使用者が誤って落下したときの危険性が低減される。
【0082】
また、
図8に示すように、使用者が直立姿勢からしゃがんだ姿勢に姿勢を変化させた場合も、直立姿勢から前屈姿勢に姿勢を変化させたときと同様に、姿勢を変化させたときに、弾性体65,66が下肢ベルト69によって引っ張られる。その結果、弾性体65,66によって、動作補助装置付き安全帯1を着用する使用者に対して、前屈姿勢から直立姿勢へと戻す力が作用する。したがって、使用者は、しゃがんだ姿勢を保つことが容易になり、また、しゃがんだ姿勢から直立姿勢へと容易に姿勢を変化させることが可能となり、腰への負担が軽減される。
【0083】
本発明は、使用者の背部に配置される縦長の弾性体65,66と、弾性体65,66の下部に連結されて弾性体65,66の付勢力を使用者の下肢に伝達する下肢ベルト69を有する動作補助装置60において、フルハーネス型安全帯10の使用者の胸部から肩部頂部の間に一端が連結され、他端を使用者の背部上方で弾性体65,66の上部と各々連結されるストラップ63,64を有する。
【0084】
この構成によれば、使用者が前屈姿勢やしゃがんだ姿勢となるときには、使用者が押圧する下肢ベルト69に力点があり、弾性体65,66によるストラップ63,64への連結位置が支点となる。支点の位置を使用者の肩部頂部に近接した位置にして、力点から支点までの間隔を長くすることで、力点に作用する力が小さくても弾性体65,66を確実に引っ張ることができ、弾性体65,66による復帰力を確実に発生させることができる。これにより、使用者の上半身には、弾性体65,66において発生する復帰力が作用して、使用者の上半身を支持する。したがって、使用者が長時間、前屈姿勢となる場合の腰の負担を低減できる。また、使用者が前屈姿勢から直立姿勢に戻るときの腰の負担を低減できる。
【0085】
また、前記使用者の肩部に掛けられる肩掛けベルト16,17を着用具とし、使用者の大腿部に巻回される腿部ベルト18,19とを少なくとも含むフルハーネス型安全帯10を採用している。つまり、フルハーネス型安全帯10を装着して高所作業を行う使用者が高所における荷運びなどの作業時に、使用者の腰への負担を低減することができる。
【0086】
また、ストラップ63,64は、フルハーネス型安全帯10に縫着される。この構成によれば、ストラップ63,64をフルハーネス型安全帯10の構成部品の一つとして、フルハーネス型安全帯10を縫着すればよいので、フルハーネス型安全帯10自体の構造を変更せずに、既存のフルハーネス型安全帯10に対してストラップ63,64を縫着すればよい。
【0087】
また、ストラップ63,64は、フルハーネス型安全帯10が有する係止具31,36に取り付けられる。これにより、フルハーネス型安全帯10を構成する既存部品に係止具31,36を取り付ければよいので、係止具31,36を取り付けるための部品を新たにフルハーネス型安全帯10に設ける必要はない。なお、ストラップ63,64を係止具31,36に取り付けるのではなく、フルハーネス型安全帯10のパッド15の肩掛け部26,27や、肩掛け部26及び肩掛け部27の間を連結する胸部ベルト33,38に取り付けることも可能である。さらに、フルハーネス型安全帯10の肩掛けベルト16,17の締め付け長さを調節するベルト調節具70,71に取り付けることも可能である。これら場合も、フルハーネス型安全帯10が有する係止具31,36に取り付けたときと同様の作用効果を得ることが可能である。
【0088】
また、ストラップ63は帯状ベルト75を介して係止具31に、ストラップ64は帯状ベルト81を介して係止具36に各々取り付けられる。この構成によれば、ストラップ63,64を既存のフルハーネス型安全帯10に着脱することが容易な構造となる。また、フルハーネス型安全帯10を着用した状態では、ストラップ63の帯状ベルト75、ストラップ64の帯状ベルト81は、使用者の胸部から肩部に掛けて各々巻き掛けられることになる。例えば弾性体65,66が下肢ベルト69により引っ張られると、ストラップ63,64は、使用者の肩部を下方に押し下げ、ストラップ63,64とパッド15との間に生じる摩擦力が大きくなる。その結果、弾性体65,66の復帰力は、ストラップ63,64とパッド15との間に生じる摩擦力の影響を受けて低減された状態で係止具31,36に作用する。したがって、係止具31,36として、低い強度(耐久性能)の部品を用いることが可能となる。
【0089】
また、使用者の背部側で交差し且つ使用者の肩部から脇部を介して使用者の背面に引き回されることで、使用者の上半身にたすき掛けされるとともに、使用者の上半身にたすき掛けされたときに、使用者が着用するフルハーネス型安全帯10の少なくとも肩部を、使用者の上半身に圧接する圧接用ベルト61,62を有する。
【0090】
この構成によれば、使用者の姿勢が変化したときに、使用者の上半身とフルハーネス型安全帯10のずれの発生を防止でき、弾性体65,66の伸長によって発生する復帰力を使用者に確実に伝達することができる。
【0091】
圧接用ベルト61,62は、1本又は2本のベルトで、前記使用者の上半身にたすき掛けされる長さを調節することが可能である。
【0092】
この構成によれば、使用者がフルハーネス型安全帯10と動作補助装置60とを装着したときに、使用者の体形に合わせて圧接用ベルト61,62の締め付け量を調節することが可能となる。
【0093】
また、フルハーネス型安全帯10は、肩掛けベルト16,17を挿通して保持するベルトカバー32,37,41を備えたパッド15を有し、圧接用ベルト61,62は、肩掛けベルト16,17とともにベルトカバー32,37,41に挿通された状態でパッド15に保持される。
【0094】
この構成によれば、圧接用ベルト61,62の締め付けることによって、パッド15を使用者の上半身に確実に圧接でき、また、使用者の上半身に対するパッド15の位置ずれの発生を確実に防止することができる。
【0095】
また、下肢ベルト69は、下肢ベルト69を使用者の膝部に装着する膝パッド67,68を有する。
【0096】
この構成によれば、使用者が前屈姿勢やしゃがんだ姿勢において、使用者の下肢と下肢ベルトとの間の装着時のずれが発生しにくく、大腿部に下肢ベルトを装着するよりも、確実に弾性体65,66を引っ張り、弾性体65,66に復帰力を発生させることができる。
【0097】
また、上記に記載した動作補助装置によれば、使用者の肩部に掛けられる肩掛けベルト16,17と、使用者の大腿部に巻回される腿部ベルト18,19とを少なくとも含むフルハーネス型安全帯10と、使用者の背部に配置される縦長の弾性体65,66と、弾性体65,66の下部に連結されて弾性体65,66の付勢力を使用者の下肢に伝達する下肢ベルト69と、フルハーネス型安全帯10における使用者の胸部から肩部頂部の間に一端が連結され、他端を使用者の背部上方で弾性体65,66の上部と連結されるストラップ63,64と、を有する動作補助装置60と、を有することを特徴とする。
【0098】
この構成によれば、使用者が前屈姿勢やしゃがんだ姿勢となるときには、使用者が押圧する下肢ベルト69に力点があり、弾性体65,66によるストラップ63,64への連結位置が支点となる。支点の位置を使用者の肩部頂部に近接した位置にして、力点から支点までの間隔を長くすることで、力点に作用する力が小さくても弾性体65,66を確実に引っ張ることができ、弾性体65,66による復帰力を確実に発生させることができる。これにより、使用者の上半身には、弾性体65,66において発生する復帰力が作用して、使用者の上半身を支持する。したがって、使用者が長時間、前屈姿勢となる場合の腰の負担を低減できる。また、使用者が前屈姿勢から直立姿勢に戻るときの腰の負担を低減できる。
【0099】
上記に説明した実施の形態では、動作補助装置付き安全帯1を着用した使用者が直立姿勢から前屈姿勢に姿勢を変化させると、弾性体65,66の下端部が連結される連結環85が使用者の背面から離れて(浮き上がって)しまう場合も想定される。
図9に示すように、連結環85及びフルハーネス型安全帯10の連結ベルト20の一片20bは、帯状体92により連結される。また、連結環85及びフルハーネス型安全帯10の連結ベルト20の他片20cは、帯状体93により連結される。これにより、連結環85の浮き上がりを防止して、前屈動作やしゃがむ動作を行うときに、弾性体65,66を確実に引っ張り、弾性体65,66に復帰力を発生させることができる。
【0100】
上記に説明した実施の形態では、ストラップ63の帯状ベルト75を、ベルトカバー32及びパッド15の肩掛け部26との間に挿通させているが、パッド15の中には、ベルトカバーを有していないパッドもある。このような場合には、例えばフルハーネス型安全帯10の肩掛けベルト16、動作補助装置60の圧接用ベルト61及びストラップ63の帯状ベルト75を結束部材により結束してもよい。同様にして、例えばフルハーネス型安全帯10の肩掛けベルト17、動作補助装置60の圧接用ベルト62及びストラップ64の帯状ベルト81を結束部材により結束してもよい。これにより、動作時に腕や指だけでなく、作業時に用いる工具などをベルトに引っ掛け、落下させるなどの事象の発生を防止することができる。
【0101】
上記に説明した実施の形態では、動作補助装置60をフルハーネス型安全帯10に装着した動作補助装置付き安全帯1を例示して説明している。しかしながら、動作補助装置60をフルハーネス型安全帯10に装着する必要はなく、動作補助装置60を使用者が着用するようにしてもよい。
図10に示すように、動作補助装置100は、例えば上述した圧接用ベルト61,62、弾性体65,66、膝パッド67,68及び下肢ベルト69から構成する。この動作補助装置100では、圧接用ベルト61及び圧接用ベルト62を交差させ、交差部分を縫着する。そして、圧接用ベルト61に連結具101を、圧接用ベルト62に連結具102を各々取り付ける。なお、連結具101,102を取り付ける位置は、使用者が圧接用ベルト61,62を上半身に締め付けたときに、使用者の背面側となる位置である。この場合も、上記に説明した実施の形態と同一の作用効果を得ることができる。
【0102】
上記に説明した実施の形態で説明した動作補助装置付き安全帯1では、使用者が圧接用ベルト61,62を上半身に締め付けると、圧接用ベルト61,62は、脇の下(又は腕の付け根)に各々食い込み、使用者が痛みを伴う場合がある。したがって、使用者が圧接用ベルト61,62を上半身に締め付けたときに、当該圧接用ベルト61,62が脇の下に各々食い込むことを防止することも可能である。
【0103】
以下、圧接用ベルトの脇の下への食い込みを防止することができるようにした動作補助装置付き安全帯110について、
図11及び
図12を用いて説明する。以下、上記に説明した実施の形態に示す動作補助装置付き安全帯1と同一の構成部分(フルハーネス型安全帯10)については、同一の符号を付して説明する。動作補助装置付き安全帯110は、フルハーネス型安全帯10と、動作補助装置111とから構成される。フルハーネス型安全帯10は、パッド15、肩掛けベルト16,17、腿部ベルト18,19及び連結ベルト20を含む。なお、フルハーネス型安全帯10の各部についての説明は、以下、省略する。
【0104】
フルハーネス型安全帯10のパッド15を共用して表した動作補助装置111は、圧接用ベルト121,122、補助パッド123、膝パッド124、ストラップ126,127及び連結ベルト128,129を含む。なお、
図12においては、パッド15と、動作補助装置111との位置関係を示すため、フルハーネス型安全帯10の肩掛けベルト16,17、腿部ベルト18,19及び連結ベルト20を省略して示している。
【0105】
圧接用ベルト121は、一端部にベルト調節具131を保持した帯状のベルトであり、圧接用ベルト122は、一端部にベルト調節具132を保持した帯状のベルトである。これら圧接用ベルト121,122は、フルハーネス型安全帯10のパッド15に装着される。
【0106】
図示は省略するが、例えば、圧接用ベルト121は、ベルト調節具131が取り付けられた一端部とは反対側の他端部を、係止具31とパッド15の肩掛け部26との間、ベルトカバー32とパッド15の肩掛け部26との間の順に通された後、パッド本体(符号省略)と、当該パッド本体に取り付けたベルトカバー(符号省略)との間に通される。この状態で、圧接用ベルト121の他端部は、補助パッド123に設けたベルト通し(ベルトループ)142,144に通される。補助パッド123に設けたベルト通し142,144に通された圧接用ベルト121の他端部は、折り返されて、圧接用ベルト122の一端部に保持したベルト調節具132に長さ調節可能に結合される。
【0107】
また、圧接用ベルト122は、ベルト調節具132が取り付けられた一端部とは反対側の他端部を、係止具36とパッド15の肩掛け部27との間、ベルトカバー37とパッド15の肩掛け部27との間に通された後、パッド本体(符号省略)と、当該パッド本体に取り付けたベルトカバー(符号省略)との間に通される。この状態で、圧接用ベルト122の他端部は、補助パッド123に設けたベルト通し(ベルトループ)141,143に通される。補助パッド123に設けたベルト通し141,143に通された圧接用ベルト122の他端部は、折り返されて、圧接用ベルト121の一端部に保持したベルト調節具131に長さ調節可能に結合される。
【0108】
したがって、使用者が、動作補助装置付き安全帯110を着用したときには、圧接用ベルト121,122は、使用者の肩部から脇部に亘って巻回され、同時に使用者の背中で交差する、所謂、たすき掛けされた状態となる。この場合も、使用者の上半身に対して、たすき掛けできるのであれば、2本の圧接用ベルト121,122ではなく、1本の圧接用ベルトを用いてもよい。
【0109】
補助パッド123は、パッド15の下方に配置される。ここで、補助パッド123は、パッド15の下端部に固定されていてもよいし、パッド15に対して着脱自在としてもよい。補助パッド123は、例えば台形形状で、上述したフルハーネス型安全帯10を使用者が装着したときに、使用者の腰部に沿って配置される。
【0110】
補助パッド123は、例えば、パッド15と同様の材質から構成される。補助パッド123には、例えば補助パッド123の表面の上端部及び下端部に、帯状ベルト136,137が、当該帯状ベルト136,137の延在方向が補助パッド123の左右方向と一致するように縫い付けられる。なお、帯状ベルト136,137は、各ベルトの延在方向における両端部の他、当該両端部から所定量、内側となる位置(すなわち、補助パッド123の左右方向における中心側)で補助パッド123に縫い付けられる。したがって、例えば、帯状ベルト136が補助パッド123に縫い付けられると、帯状ベルト136の両端部の縫い付け部位に隣接した位置に、上述した圧接用ベルト121,122などを通すことが可能なベルト通し141,142が形成される。同様にして、帯状ベルト137が補助パッド123に縫い付けられると、帯状ベルト137の両端部の縫い付け部位に隣接した位置に、上述した圧接用ベルト121,122などを通すことが可能なベルト通し143,144が形成される。
【0111】
膝パッド124は、例えば使用者の膝部の各々に、全周に亘って巻回される。なお、使用者の左膝部に装着される膝パッド124、使用者の右膝部に装着される膝パッド124の構成は、同一構成である。以下、必要に応じて使用者の左膝部に装着される膝パッドを膝パッド124aとし、使用者の右膝部に装着される膝パッドを膝パッド124bと呼称する場合がある。
【0112】
膝パッド124は、当該膝パッド124を使用者の膝部に装着したときに、使用者の膝裏部に沿う部分に、バックル151を有する。なお、バックル151は、例えばバックル雄部材152と、当該バックル雄部材152が係合するバックル雌部材153とから構成される。例えば、膝パッド124には、バックル雌部材153が固定用ベルト154を介して固定される。
【0113】
ここで、膝パッド124は、当該膝パッド124を使用者の膝部に装着したときに、使用者の膝裏部から、使用者の膝上部に、全周に亘って巻回される上部帯状部161,162と、使用者の膝裏部から、使用者の膝下部に、全周に亘って巻回される下部帯状部163,164と、を有する。図示は省略するが、膝パッド124は、当該膝パッド124の表生地が、例えば起毛した生地となっている。上述した2つの上部帯状部161,162及び2つの下部帯状部163,164のうち、上部帯状部162及び下部帯状部163は、その先端部の裏面側に雄型面ファスナー(不図示)が縫い付けられている。
【0114】
例えば2つの上部帯状部161,162は、膝パッド124を使用者の膝部に装着するときに、使用者の膝側から、上部帯状部161、上部帯状部162の順で重ね合わされ、その重ね合わせ時に、上部帯状部162の裏面に設けた雄型面ファスナー(不図示)が上部帯状部161の表生地に接合される。
【0115】
同様にして、2つの下部帯状部163,164は、膝パッド124を使用者の膝部に装着するときに、使用者の膝側から、下部帯状部164、下部帯状部163の順で重ね合わされ、その重ね合わせ時に、下部帯状部163の裏面に設けた雄型面ファスナー(不図示)が下部帯状部163の表生地に接合される。
【0116】
2つの上部帯状部161,162のうち、上部帯状部161には、バックル雄部材171が設けられ、上部帯状部162には、バックル雌部材172が設けられる。バックル雄部材171は、上部帯状部161に上部帯状部162が接合された状態で、バックル雌部材172に係合される。つまり、バックル雄部材171とバックル雌部材172とによりバックル(符号省略)が形成される。
【0117】
また、2つの下部帯状部163,164のうち、下部帯状部163には、バックル雌部材173が設けられ、下部帯状部164には、バックル雄部材174が設けられる。バックル雄部材174は、下部帯状部164に下部帯状部163が接合された状態で、バックル雌部材173に係合される。つまり、バックル雌部材173と、バックル雄部材174とによりバックル(符号省略)が形成される。
【0118】
ストラップ126は、パッド15の肩掛け部26に装着される。ストラップ126は、帯状ベルト181及びベルト調節具182を有する。帯状ベルト181の延在方向における一端部には、ベルト調節具182が取り付けられる。ストラップ126は、例えば、帯状ベルト181を、当該帯状ベルト181の延在方向においてベルト調節具182を保持する一端部とは反対側の他端部からベルトカバー32とパッド15の肩掛け部26との間に挿通され、係止具31に巻き掛けられた後、再度、ベルトカバー32とパッド15の肩掛け部26との間に挿通される。なお、ベルトカバー32とパッド15の肩掛け部26との間に挿通された他端部は、一端部に取り付けられたベルト調節具182に結合される。
【0119】
なお、ストラップ127は、ストラップ126と同様に、帯状ベルト183、ベルト調節具184を有する。ストラップ127は、パッド15の肩掛け部27に装着される。なお、ストラップ127をパッド15の肩掛け部27に装着する方法は、ストラップ126と同様であることから、ここでは、その詳細を省略する。
【0120】
連結ベルト128は、パッド15の肩掛け部26に装着されたストラップ126と膝パッド124bとを連結する部材である。連結ベルト128は、延在方向における一端部を、ストラップ126のベルト調節具182に結合される。また、連結ベルト128は、延在方向における他端部を、膝パッド124bのバックル雄部材152に長さ調節可能に結合される。
【0121】
連結ベルト128は、弾性体191と、当該弾性体191の延在方向における両端部に縫い付けられる帯状ベルト192,193とを有する。弾性体191は、例えば長尺状に形成したゴムシート(織りゴム)を複数枚(例えば6枚)積層したものである。なお、織りゴムは、ゴム糸と、ポリプロピレンやナイロンなどの合成繊維を用いた糸とを織り込んだものであり、その織り込みにおいては、ゴム糸を経糸としている。弾性体191は、当該弾性体の伸長方向における一端部において、その弾性体191を構成する複数枚のゴムシートと帯状ベルト192とを縫い付けることで帯状ベルト192を固定する。同時に、弾性体191は、当該弾性体191の伸長方向における他端部において、その弾性体191を構成する複数枚のゴムシートと帯状ベルト193とを縫い付けることで帯状ベルト193を固定する。ここで、帯状ベルト193は、請求項に記載の下肢ベルトに相当する。
【0122】
帯状ベルト192は、その帯状ベルト192の延在方向において、弾性体191に固定される一端部とは反対側となる他端部を、上記ストラップ126のベルト調節具182に長さ調節可能に結合される。また、帯状ベルト193は、帯状ベルト193の延在方向において、弾性体191に固定される一端部とは反対側となる他端部を、膝パッド124bのバックル151を構成するバックル雄部材152に長さ調節可能に結合される。
【0123】
帯状ベルト192は、使用者がフルハーネス型安全帯10を装着したときに、使用者の背中側において肩甲骨から腰部にかけて弾性体191が位置するように、ストラップ126と弾性体191との間の長さが調節できる長さを有する。また、帯状ベルト193は、フルハーネス型安全帯10を使用者が装着したときに、使用者の背中側において肩甲骨から腰部にかけて位置する弾性体191に張力が付与されるように、膝パッド124bと弾性体191との間の長さが調節できる長さを有する。
【0124】
連結ベルト129は、パッド15の肩掛け部27に装着されたストラップ127と膝パッド124aとを連結する部材である。連結ベルト129は、連結ベルト128と同様に、弾性体195と、当該弾性体195の延在方向における両端部に縫い付けられる帯状ベルト196,197とを有する。弾性体195は、弾性体191と同様に、例えば長尺状に形成したゴムシート(織りゴム)を複数枚(例えば6枚)積層したものである。弾性体195は、当該弾性体195の伸長方向における一端部において、弾性体195を構成する複数枚のゴムシートと帯状ベルト197とを縫い付けることで帯状ベルト197を固定する。同時に、弾性体195は、当該弾性体195の伸長方向における他端部において、弾性体195を構成する複数枚のゴムシートと帯状ベルト197とを縫い付けることで帯状ベルト197を固定する。ここで、帯状ベルト197は、請求項に記載の下肢ベルトに相当する。
【0125】
帯状ベルト196は、帯状ベルト196の延在方向において、弾性体195に固定される一端部とは反対側となる他端部を、上記ストラップ127のベルト調節具184に長さ調節可能に結合される。また、帯状ベルト197は、帯状ベルト197の延在方向において、弾性体195に固定される一端部とは反対側となる他端部を、膝パッド124aのバックル151を構成するバックル雄部材152に長さ調節可能に結合される。
【0126】
ここで、帯状ベルト196の長さは、帯状ベルト192の長さと同一、すなわち、フルハーネス型安全帯10を使用者が装着したときに、使用者の背中側において肩甲骨から腰部にかけて弾性体195が位置するように、ストラップ127と弾性体195との間の長さが調節できる長さを有する。また、帯状ベルト197の長さは、帯状ベルト193の長さと同一であり、フルハーネス型安全帯10を使用者が装着したときに、使用者の背中側において肩甲骨から腰部にかけて位置する弾性体195に張力が付与されるように、膝パッド124aと弾性体195との間の長さが調節できる長さを有する。
【0127】
上述した連結ベルト128,129のうち、連結ベルト128は、膝パッド124bに取り付けられ、連結ベルト129は、膝パッド124aに取り付けられる。したがって、フルハーネス型安全帯10を使用者が装着したときには、これら連結ベルト128,129が交差した状態となる。これら連結ベルト128,129には、当該連結ベルト128,129が交差する位置において、ベルト調節具198が取り付けられる。
【0128】
上述した動作補助装置付き安全帯110を作業者が装着するとき、圧接用ベルト121,122がベルト調節具131,132から引き出され、その結果、パッド15が作業者の肩部から背中部に圧接される。上述したように、圧接用ベルト121は、パッド15の下方に位置する補助パッド123のベルト通し142,144に通された後、折り返されて圧接用ベルト122のベルト調節具132に結合される。同様にして、圧接用ベルト122は、パッド15の下方に位置する補助パッド123のベルト通し141,143に通された後、折り返されて圧接用ベルト121のベルト調節具131に結合される。したがって、
図13に示すように、圧接用ベルト121がベルト調節具132から、圧接用ベルト122がベルト調節具131から各々引き出され、圧接用ベルト121,122が使用者の上半身に対して締め付けられた状態では、圧接用ベルト121は、使用者の右腰部から右脇腹部にかけて圧接し、同時に、圧接用ベルト122は、使用者の左腰部から左脇腹部にかけて圧接する。したがって、圧接用ベルト121,122が使用者の左脇の下及び右脇の下の各々に食い込むことが防止される。
【符号の説明】
【0129】
1…動作補助装置付き安全帯
10…フルハーネス型安全帯
15…パッド
31,36…係止具
63,64…ストラップ
32,37,41…ベルトカバー
60,100…動作補助装置
61,62…圧接用ベルト
65,66…弾性体
67,68…膝パッド
69…下肢ベルト
75,81…帯状ベルト
77,83,101,102…連結具