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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】位置制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 3/00 20060101AFI20240220BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240220BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240220BHJP
【FI】
G05D3/00 Z
G05D3/00 A
G05D3/00 B
G03B17/56 A
G03B15/00 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021513582
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014579
(87)【国際公開番号】W WO2020209128
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019074074
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395018251
【氏名又は名称】マッスル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164013
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 隆一
(72)【発明者】
【氏名】玉井 博文
(72)【発明者】
【氏名】北島 知子
(72)【発明者】
【氏名】奥 博司
(72)【発明者】
【氏名】蘭 豊礼
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-299600(JP,A)
【文献】特表平09-500337(JP,A)
【文献】特開2009-150056(JP,A)
【文献】特表2014-504397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 3/00
G03B 17/56
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象物を移動空間内における任意の位置に移動させる位置制御装置であって、
前記制御対象物に接続される複数の索体と、
前記各索体が連結されており、前記各索体に張力を作用させつつ、前記各索体の引き取り量および引き出し量を変化させる複数の索体操作部と、
前記各索体の引き取り量および引き出し量を変化させるように前記各索体操作部を制御することにより、前記移動空間内における前記制御対象物の位置を制御する制御部と、
を備え、
前記移動空間内における任意の方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向および前記第2方向に直交する方向を第3方向として、
前記複数の索体は、前記各索体に作用する張力の前記第1方向成分、前記第2方向成分、および前記第3方向成分により、前記制御対象物に対して、前記第1方向の正逆方向への保持力、前記第2方向の正逆方向への保持力、および前記第3方向の正逆方向への保持力が作用するように配置されており、
前記索体操作部は、
前記索体を巻き取って収容する巻取部と、
前記巻取部による前記索体の巻き取りと繰り出しを案内する案内部と、を有し、
前記索体操作部の位置は、前記案内部が配置される位置であるとし、
前記巻取部および前記案内部は、離隔して配置されており、
少なくとも前記案内部を支持する支持部を有し、
前記巻取部から供給された前記索体が前記案内部を介して前記制御対象物に接続され、
同一の前記支持部には、複数の前記案内部が設けられており、
前記同一の支持部に設けられている前記複数の案内部は、一方の前記案内部に対して、他方の前記案内部が、相対的に前記支持部の軸方向に交差する方向にずらして配置されている、
位置制御装置。
【請求項2】
前記複数の索体は、前記制御対象物における複数の位置に接続されており、
前記制御部が前記各索体の引き取り量および引き出し量を変化させるように前記各索体操作部を制御することにより、前記制御対象物の姿勢を制御する、
請求項1に記載の位置制御装置。
【請求項3】
前記制御対象物を移動させる一方向を進退方向とし、
前記進退方向における、前記制御対象物の一方の端部を第1端部とし、
前記進退方向における、前記制御対象物の他方の端部を第2端部とし、
前記複数の索体のうち、前記制御対象物の前記第1端部側に接続される前記索体を第1索体とし、
前記複数の索体のうち、前記制御対象物の前記第2端部側に接続される前記索体を第2索体とし、
前記複数の索体操作部のうち、前記第2端部よりも前記第1端部に近い位置に配置される前記索体操作部を第1索体操作部とし、
前記複数の索体操作部のうち、前記第1端部よりも前記第2端部に近い位置に配置される前記索体操作部を第2索体操作部として、
前記第1索体は、前記第1索体操作部に連結されており、
前記第2索体は、前記第2索体操作部に連結されている、
請求項1または請求項2に記載の位置制御装置。
【請求項4】
前記制御対象物を移動させる一方向を進退方向とし、
前記進退方向における、前記制御対象物の一方の端部を第1端部とし、
前記進退方向における、前記制御対象物の他方の端部を第2端部とし、
前記複数の索体のうち、前記制御対象物の前記第1端部側に接続される前記索体を第1索体とし、
前記複数の索体のうち、前記制御対象物の前記第2端部側に接続される前記索体を第2索体とし、
前記複数の索体操作部のうち、前記第2端部よりも前記第1端部に近い位置に配置される前記索体操作部を第1索体操作部とし、
前記複数の索体操作部のうち、前記第1端部よりも前記第2端部に近い位置に配置される前記索体操作部を第2索体操作部として、
前記第1索体は、前記第2索体操作部に連結されており、
前記第2索体は、前記第1索体操作部に連結されている、
請求項1または請求項2に記載の位置制御装置。
【請求項5】
前記進退方向における、前記第1索体操作部から前記第2索体操作部までの距離は、前記制御対象物の前記第1端部から前記第2端部までの距離よりも大きい、
請求項3または請求項4に記載の位置制御装置。
【請求項6】
前記第1索体操作部および前記第2索体操作部が配列された列を有する、
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の位置制御装置。
【請求項7】
前記第1索体操作部および前記第2索体操作部がそれぞれ1体ずつ配列された列が、前記移動空間の外部において相互に離隔するように3列配置されている、
請求項6に記載の位置制御装置。
【請求項8】
前記第1索体操作部および前記第2索体操作部がそれぞれ1体ずつ配列された列が、前記移動空間の外部において相互に離隔するように4列配置されている、
請求項6に記載の位置制御装置。
【請求項9】
前記移動空間は、
前記複数の索体操作部の位置を頂点とする空間である、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の位置制御装置。
【請求項10】
前記索体操作部は、
前記巻取部および前記案内部の間に配置されて前記索体を案内する索体案内部をさらに有し、
前記複数の巻取部は、前記支持部の一方の端部付近に配置されている、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の位置制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動空間内において制御対象物を任意の位置に移動させる位置制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば立体物を造形する3Dプリンタでは、プリントヘッドをXYZ軸方向に移動させる機構として、リニアガイドなどの直動システムを複数使用した移動機構や、パラレルリンク方式の移動機構が用いられている。
【0003】
しかしながら、プリントヘッドを移動させる空間内に障害物があると、プリントヘッド若しくは移動機構が干渉するため、3次元で造形できる形状に制約が生じる。
【0004】
また、プリントヘッドの位置制御を精密に行うにはプリンタヘッドを取付けるステージの剛性が必要である。しかしながら、造形物を大型化しようとすると移動機構部の重量が増加してステージの位置が不安定になるなどの問題があり、3Dプリンタを大型の造形物に対応させることは困難である。
【0005】
一方、撮影機材等を3次元方向に移動させる移動機構として、複数のワイヤで撮影機材を吊り下げる移動機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。この移動機構によれば、各ワイヤの長さを調節することにより、撮影機材等を3次元方向に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-503368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の移動機構では、撮影機材はワイヤによって吊り下げられた状態で不安定であり、撮影機材が高い剛性をもって支持されているとは言えない。このため、例えば、特許文献1記載の移動機構を3Dプリンタのプリントヘッドの移動機構に適用すると、3Dプリンタを大型化することは可能であるが、プリンタヘッドの位置制御を精密に行うことは困難である。
【0008】
本発明は、制御対象物の移動空間を広くすることができるとともに、制御対象物の位置制御を精密に行うことができる位置制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の位置制御装置は、
制御対象物を移動空間内における任意の位置に移動させる位置制御装置であって、
前記制御対象物に接続される複数の索体と、
前記各索体が連結されており、前記各索体に張力を作用させつつ、前記各索体の引き取り量および引き出し量を変化させる複数の索体操作部と、
前記各索体の引き取り量および引き出し量を変化させるように前記各索体操作部を制御することにより、前記移動空間内における前記制御対象物の位置を制御する制御部と、
を備え、
前記移動空間内における任意の方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向および前記第2方向に直交する方向を第3方向として、
前記複数の索体は、前記各索体に作用する張力の前記第1方向成分、前記第2方向成分、および前記第3方向成分により、前記制御対象物に対して、前記第1方向の正逆方向への保持力、前記第2方向の正逆方向への保持力、および前記第3方向の正逆方向への保持力が作用するように配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の位置制御装置によれば、制御対象物の移動空間を広くすることができるとともに、制御対象物の位置制御を精密に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る位置制御装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図2は、3Dプリンティング制御システムの構成を示す概略図である。
図3図3は、位置制御装置をY1方向に見た側面図である。
図4図4は、位置制御装置をZ2方向に見た側面図である。
図5図5は、位置制御装置の動作の一例を示す側面図である。
図6図6は、位置制御装置の動作の一例を示す側面図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る位置制御装置の全体構成を示す斜視図である。
図8図8は、位置制御装置をY1方向に見た側面図である。
図9図9は、位置制御装置をZ2方向に見た側面図である。
図10図10は、本発明の第3実施形態に係る位置制御装置の全体構成を示す斜視図である。
図11図11は、位置制御装置をY1方向に見た側面図である。
図12図12は、位置制御装置をZ2方向に見た側面図である。
図13図13は、本発明の第4実施形態に係る位置制御装置をY1方向に見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態にかかる位置制御装置は、
制御対象物を移動空間内における任意の位置に移動させる位置制御装置であって、
前記制御対象物に接続される複数の索体と、
前記各索体が連結されており、前記各索体に張力を作用させつつ、前記各索体の引き取り量および引き出し量を変化させる複数の索体操作部と、
前記各索体の引き取り量および引き出し量を変化させるように前記各索体操作部を制御することにより、前記移動空間内における前記制御対象物の位置を制御する制御部と、
を備え、
前記移動空間内における任意の方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向および前記第2方向に直交する方向を第3方向として、
前記複数の索体は、前記各索体に作用する張力の前記第1方向成分、前記第2方向成分、および前記第3方向成分により、前記制御対象物に対して、前記第1方向の正逆方向への保持力、前記第2方向の正逆方向への保持力、および前記第3方向の正逆方向への保持力が作用するように配置されている、位置制御装置である(第1の構成)。
【0013】
上記構成によれば、制御対象物は、複数の索体によって移動空間内の任意の位置に移動される。このため、制御対象物の移動空間を広くすることができる。また、複数の索体により、制御対象物に対して、第1方向の正逆方向への保持力、第2方向の正逆方向への保持力、および第3方向の正逆方向への保持力が作用している。このため、制御対象物の位置を安定させることができ、制御対象物の位置制御を精密に行うことができる。
【0014】
上記第1の構成において、
前記複数の索体は、前記制御対象物における複数の位置に接続されており、
前記制御部が前記各索体の引き取り量および引き出し量を変化させるように前記各索体操作部を制御することにより、前記制御対象物の姿勢を制御してもよい(第2の構成)。
【0015】
上記構成によれば、第1方向の正逆方向への保持力、第2方向の正逆方向への保持力、および第3方向の正逆方向への保持力を作用させた状態で制御対象物の姿勢制御を行うため、制御対象物の姿勢を安定させることができるとともに、制御対象物の姿勢制御を精密に行うことができる。
【0016】
上記第1または第2の構成において、
前記制御対象物を移動させる一方向を進退方向とし、
前記進退方向における、前記制御対象物の一方の端部を第1端部とし、
前記進退方向における、前記制御対象物の他方の端部を第2端部とし、
前記複数の索体のうち、前記制御対象物の前記第1端部側に接続される前記索体を第1索体とし、
前記複数の索体のうち、前記制御対象物の前記第2端部側に接続される前記索体を第2索体とし、
前記複数の索体操作部のうち、前記第2端部よりも前記第1端部に近い位置に配置される前記索体操作部を第1索体操作部とし、
前記複数の索体操作部のうち、前記第1端部よりも前記第2端部に近い位置に配置される前記索体操作部を第2索体操作部として、
前記第1索体は、前記第1索体操作部に連結されており、
前記第2索体は、前記第2索体操作部に連結されていてもよい(第3の構成)。
【0017】
上記構成によれば、制御対象物の第1接続部および第2接続部にそれぞれ第1索体および第2索体が接続されるため、制御対象物の位置および姿勢を安定させることができるとともに、制御対象物の位置制御および姿勢制御を精密に行うことができる。
【0018】
上記第1または第2の構成において、
前記制御対象物を移動させる一方向を進退方向とし、
前記進退方向における、前記制御対象物の一方の端部を第1端部とし、
前記進退方向における、前記制御対象物の他方の端部を第2端部とし、
前記複数の索体のうち、前記制御対象物の前記第1端部側に接続される前記索体を第1索体とし、
前記複数の索体のうち、前記制御対象物の前記第2端部側に接続される前記索体を第2索体とし、
前記複数の索体操作部のうち、前記第2端部よりも前記第1端部に近い位置に配置される前記索体操作部を第1索体操作部とし、
前記複数の索体操作部のうち、前記第1端部よりも前記第2端部に近い位置に配置される前記索体操作部を第2索体操作部として、
前記第1索体は、前記第2索体操作部に連結されており、
前記第2索体は、前記第1索体操作部に連結されていてもよい(第4の構成)。
【0019】
上記構成によれば、第1索体は、第2索体操作部に連結されており、第2索体は、第1索体操作部に連結されているため、制御対象物の位置および姿勢を安定させることができるとともに、制御対象物の位置制御および姿勢制御を精密に行うことができる。また、索体と制御対象物のなす角度を小さくできるため、制御対象物の移動空間を広くすることができるとともに、移動空間内の障害物等に索体および制御対象物を干渉させにくくすることができる。
【0020】
上記第3または第4の構成において、
前記進退方向における、前記第1索体操作部から前記第2索体操作部までの距離は、前記制御対象物の前記第1端部から前記第2端部までの距離よりも大きくしてもよい(第5の構成)。
【0021】
上記構成によれば、第1索体操作部から第2索体操作部までの距離は、制御対象物の第1端部から第2端部までの距離よりも大きい。このため、制御対象物の移動空間を大きくすることができる。
【0022】
上記第3から第5の構成において、
前記第1索体操作部および前記第2索体操作部が配列された列を有してもよい(第6の構成)。
【0023】
上記構成によれば、第1索体操作部および第2索体操作部が配列された列を有する。このため、第1索体操作部および第2索体操作部の配列が容易になるとともに、制御対象物の移動空間を広くすることができる。
【0024】
上記第6の構成において、
前記第1索体操作部および前記第2索体操作部がそれぞれ1体ずつ配列された列が、前記移動空間の外部において相互に離隔するように3列配置されていてもよい(第7の構成)。
【0025】
上記構成によれば、6軸の索体によって制御対象物の位置および姿勢を制御するため、制御対象物の位置および姿勢を安定させることができるとともに、制御対象物の位置制御および姿勢制御を精密に行うことができる。
【0026】
上記第6の構成において、
前記第1索体操作部および前記第2索体操作部がそれぞれ1体ずつ配列された列が、前記移動空間の外部において相互に離隔するように4列配置されていてもよい(第8の構成)。
【0027】
上記構成によれば、8軸の索体によって制御対象物の位置および姿勢を制御するため、制御対象物の位置および姿勢を安定させることができるとともに、制御対象物の位置制御および姿勢制御を精密に行うことができる。
【0028】
上記第1から第8の構成において、
前記移動空間は、
前記複数の索体操作部の位置を頂点とする空間としてもよい(第9の構成)。
【0029】
上記構成によれば、移動空間は複数の索体操作部の位置を頂点とする空間であるため、複数の索体により、制御対象物に対して、第1方向の正逆方向への保持力、第2方向の正逆方向への保持力、および第3方向の正逆方向への保持力が作用する。これにより、制御対象物の位置を安定させることができ、制御対象物の位置制御を精密に行うことができる。
【0030】
上記第1から第9の構成において、
前記索体操作部は、
前記索体を巻き取って収容する巻取部と、
前記巻取部による前記索体の巻き取りと繰り出しを案内する案内部と、を有し、
前記索体操作部の位置は、前記案内部が配置される位置であるとしてもよい(第10の構成)。
【0031】
上記構成によれば、索体操作部の位置は、案内部が配置される位置であるとしたため、索体操作部の構成の自由度を高めるとともに、巻取部と案内部の配置の自由度を高めることができる。
【0032】
上記第10の構成において、
前記巻取部および前記案内部は、離隔して配置されており、
少なくとも前記案内部を支持する支持部を有し、
前記巻取部から供給された前記索体が前記案内部を介して前記制御対象物に接続されてもよい(第11の構成)。
【0033】
上記構成によれば、索体操作部を構成する巻取部と案内部を離隔して配置できるため、索体操作部の構成の自由度を高めるとともに、巻取部と案内部の配置の自由度を高めることができる。また、制御対象物の移動空間を広くすることができる。
【0034】
上記第11の構成において、
同一の前記支持部に設けられている前記案内部は、
前記支持部の軸方向に交差する方向にずらして配置されていてもよい(第12の構成)。
【0035】
上記構成によれば、同一の支持部に設けられた案内部から案内されている索体同士の干渉を抑制することができる。
【0036】
上記第11または第12の構成において、
前記索体操作部は、
前記巻取部および前記案内部の間に配置されて前記索体を案内する索体案内部をさらに有し、
前記複数の巻取部は、前記支持部の一方の端部付近に配置されていてもよい(第13の構成)。
【0037】
上記構成によれば、索体操作部のうち重量物である巻取部を、支持部の一方の端部付近に配置するため、位置制御装置の設置が容易になる。
【0038】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る位置制御装置100について詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0039】
[全体構成]
まず、位置制御装置100の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る位置制御装置100の全体構成を示す斜視図である。位置制御装置100は、索体操作部50(511~514、521~524)を頂点とする移動空間ARを構成している。位置制御装置100は、制御対象物10を移動空間AR内における任意の位置に移動させることが可能である。本実施形態では、位置制御装置100を3Dプリンティングシステム(3Dプリンタ)に適用している。本実施形態の3Dプリンティングシステムは、FDM(Fused Deposition Modeling)方式である。FDM方式の3Dプリンティングシステムは、3Dデータに基づいてノズル15から熱可塑性樹脂を造形台PTに対して吐出し、立体造形物を一層ずつ積層して形成する。造形台PTは、例えば、鉛直方向に立てられた壁面である。
【0040】
以下の図では、移動空間AR内における一方向をX1方向とし、X1方向と逆の方向をX2方向とする。例えば、X1方向を鉛直上方とするとX2方向は鉛直下方である。X1方向は、本発明の第1方向に相当する。また、X1方向およびX2方向は、本発明の第1方向の正逆方向に相当する。
【0041】
X1方向に直交する一方向をY1方向とし、Y1方向と逆の方向をY2方向とする。例えば、Y1方向およびY2方向は、水平方向である。Y1方向は、本発明の第2方向に相当する。また、Y1方向およびY2方向は、本発明の第2方向の正逆方向に相当する。
【0042】
X1方向およびY1方向に直交する一方向をZ1方向とし、Z1方向と逆の方向をZ2方向とする。Z1方向は、本発明の第3方向に相当する。また、Z1方向およびZ2方向は、本発明の第3方向の正逆方向に相当する。
【0043】
位置制御装置100は、制御対象物10を移動空間AR内における任意の方向および位置に移動させることが可能である。制御対象物10を進退させる一方向であるZ1方向およびZ2方向は、本発明の進退方向に相当する。
【0044】
位置制御装置100は、制御対象物10、索体30(311~314、321~324)、索体操作部50(511~514、521~524)、支持部70(71~74)、および制御部90(図2参照)を備えている。
【0045】
制御対象物10は、移動空間AR内において任意の方向および位置に移動される部分である。制御対象物10は、Z1方向(Z2方向)に延びる形状を有している。Z1方向(Z2方向)における一方の端部を第1端部11とし、他方の端部を第2端部12とする。本実施形態の制御対象物10は、3Dプリンティングシステムのプリンタヘッドであり、第1端部11には、熱可塑性樹脂を吐出するノズル15が設けられている。
【0046】
索体30(311~314、321~324)は、制御対象物10に接続される部材である。各索体30(311~314、321~324)の長さを相互に同調させながら変化させることにより、制御対象物10を移動空間AR内において任意の方向および位置に移動させる。索体30は、所定の張力を負担することが可能であって柔軟性を有する部材であればよく、例えばワイヤ状、紐状、ベルト状の部材を用いることができる。索体30の素材は限定されず、例えば、素材は金属、合成樹脂などであってもよい。本実施形態では、索体30として、金属ワイヤを用いている。なお、以下の図では、索体311~314を一点鎖線で示し、索体321~324を実線で示している。
【0047】
本実施形態における索体30(311~314、321~324)は、制御対象物10の第1端部11側および第2端部12側に配分されて制御対象物10に接続されている。第1端部11側に接続される4本の索体30(311~314)を第1索体31とし、第2端部12側に接続される4本の索体30(321~324)を第2索体32とする。以下では、索体311~314および索体321~324を個別に区別しない場合は、索体30、あるいは第1索体31、第2索体32という場合がある。
【0048】
本実施形態では、第1索体31(311~314)と第2索体32(321~324)を制御対象物10の異なる位置に接続したため、各索体30の長さを同調して変化させることにより、制御対象物10の位置だけでなく、姿勢を変化させることができる。
【0049】
また、第1索体31(311~314)のうち、索体311、312と索体313、314は、第1端部11側の異なる位置に接続されており、第2索体32(321~324)のうち、索体321、322と索体323、324は、第2端部12側の異なる位置に接続されている。このため、各索体30の長さを同調して変化させることにより、制御対象物10の姿勢を制御対象物10の軸回りにも変化させることができる。
【0050】
なお、索体30(311~314、321~324)を制御対象物10に接続する位置によっては、制御対象物10の一部が移動空間ARから突出する場合がある。しかしながら、制御対象物10の一部が移動空間ARから突出した場合であっても、制御対象物10と索体30(311~314、321~324)の接続部の少なくとも一部は、移動空間ARの内部に存在しており、制御対象物10は実質的に移動空間ARの内部に存在している。このため、制御対象物10が移動空間AR内における任意の位置に移動する状態とは、制御対象物10の一部が移動空間ARから突出する状態も含めるものとする。
【0051】
索体操作部50(511~514、521~524)は、索体30(311~314、321~324)が連結されており、各索体30に張力を作用させつつ、各索体30の引き取り量および引き出し量を変化させる部分である。位置制御装置100は、索体操作部50(511~514、521~524)を頂点とする移動空間ARを構成している。本実施形態では、索体操作部50(511~514、521~524)により、略直方体の移動空間ARが構成されている。
【0052】
索体操作部50(511~514、521~524)は、例えば巻取部55、駆動部(図示せず)、および案内部57を有している。巻取部55は、索体30を巻き取って収容するスプールを有している。駆動部は、スプールを正逆方向に回転させて索体30の巻き取りと繰り出しを行うように巻取部55を駆動させる。案内部57は、索体30の巻き取りと繰り出しを円滑に行うようにするために設けられている。案内部57は、例えば支持部70(71~74)に設けられた索体30の出口であり、案内部57は、例えば滑車を有している。巻取部55から供給された索体30は、案内部57を介して制御対象物10に接続される。
【0053】
以下で説明する索体操作部50(511~514、521~524)の位置は、索体30の出口である案内部57が配置される位置であるものとする。巻取部55、駆動部、および案内部57は、一体化されていなくてもよく、例えば、巻取部55および駆動部を近接して配置し、案内部57は巻取部55から離隔して配置することも可能である。この場合も、索体操作部50(511~514、521~524)の位置は、案内部57が配置される位置であるものとする。なお、各索体操作部50(511~514、521~524)に複数の案内部57が設けられている場合は、複数の案内部57のうち、制御対象物10に最も近い案内部57の位置を各索体操作部50(511~514、521~524)が配置される位置とする。
【0054】
また、本実施形態では、索体操作部50(511~514、521~524)は、支持部70(71~74)の内部に配置されているが、これに限定されない。例えば、巻取部55、駆動部、および案内部57を支持部70(71~74)の外部に配置してもよい。あるいは、巻取部55および駆動部を案内部57から離隔させて配置し、案内部57のみを支持部70(71~74)に配置して、索体30を案内部57から出して制御対象物10に接続するようにしてもよい。巻取部55および駆動部は、支持部70(71~74)上に配置してもよく、支持部70(71~74)から離れた位置に配置してもよい。
【0055】
索体操作部50(511~514、521~524)は、第1索体操作部51および第2索体操作部52を有している。第1索体操作部51は、索体操作部511~514を含んでおり、制御対象物10の第2端部12よりも第1端部11に近い位置に配置されている。第2索体操作部52は、索体操作部521~524を含んでおり、制御対象物10の第1端部11よりも第2端部12に近い位置に配置されている。第1索体操作部51(511~514)には、第1索体31(311~314)が連結されている。第2索体操作部52(521~524)には、第2索体32(321~324)が連結されている。
【0056】
制御対象物10を進退させる一方向であるZ1方向およびZ2方向において、第1索体操作部51(511~514)から第2索体操作部52(521~524)までの距離L1は、制御対象物10の第1端部11から第2端部12までの距離L2よりも大きくされている。このため、制御対象物10の移動空間ARを大きくすることができる。
【0057】
支持部70(71~74)は、索体操作部50(511~514、521~524)を支持する部分である。本実施形態では、巻取部55および案内部57が一体化されているため、支持部70(71~74)に巻取部55および案内部57が設けられているが、巻取部55および案内部57が一体化されていない場合は、支持部70(71~74)に案内部57のみを設けてもよい。
【0058】
支持部70(71~74)は、移動空間ARの外部において相互に離隔するように造形台PTに配置されており、Z1方向に延びている。各支持部70(71~74)には、第1索体操作部51(511~514)および第2索体操作部52(521~524)がそれぞれ1体ずつ配置されている。このため、第1索体操作部および第2索体操作部がZ1方向に配列された列が、移動空間ARの外部において相互に離隔するように4列配置されていることとなる。
【0059】
図2は、3Dプリンティング制御システム110の構成を示す概略図である。3Dプリンティング制御システム110は、3Dプリンティングシステムの動作を制御するシステムである。図2では、3Dプリンティング制御システム110のうち、主に索体操作部50(511~514、521~524)の動作を制御するための構成を示している。3Dプリンティング制御システム110は、制御部90、および索体操作部50(511~514、521~524)を備えている。
【0060】
制御部90は、メモリ91、および索体操作制御部93を備えている。
【0061】
メモリ91は、各索体操作部50の動作に関するデータを記憶している。メモリ91には、3DデータDE1、および索体操作データDE2が保存されている。3DデータDE1には、3Dプリンティングシステムで形成する立体造形物の座標情報が記憶されている。索体操作データDE2には、3DデータDE1に基づいて各索体操作部50の動作を制御するためのデータが記憶されている。
【0062】
索体操作制御部93は、メモリ91に記憶されている3DデータDE1および索体操作データDE2を参照して、索体操作部50(511~514、521~524)の動作を制御する。索体操作部50(511~514、521~524)の動作の制御では、索体操作制御部93は、各索体30(311~314、321~324)に張力を作用させつつ、各索体30(311~314、321~324)の引き取り量および引き出し量を同調させながら変化させるように各索体操作部50(511~514、521~524)を制御する。これにより、各索体30(311~314、321~324)に張力を作用させた状態を保ちつつ、移動空間AR内における制御対象物10の位置、および姿勢が制御される。なお、索体操作制御部93は、制御対象物10が円滑に移動できるように各索体操作部50(511~514、521~524)に対応するカム曲線に基づいて動作を制御することが好ましい。
【0063】
図3は、位置制御装置100をY1方向に見た側面図である。図4は、位置制御装置100をZ2方向に見た側面図である。図5および図6は、位置制御装置の動作の一例を示す側面図である。
【0064】
図3および図4に示すように、制御対象物10が移動空間AR内の任意の位置へ移動、または位置が保持されている状態において、各索体30(311~314、321~324)には張力が作用している。各索体30(311~314、321~324)に作用する張力は、索体操作部50(511~514、521~524)によって付与されている。索体操作部50(511~514、521~524)は、移動空間ARの各頂点に位置しているため、制御対象物10には、X1方向およびX2方向への保持力、Y1方向およびY2方向への保持力、およびZ1方向およびZ2方向への保持力が作用する。以下、各索体30(311~314、321~324)に作用する張力について具体的に説明する。
【0065】
図3では、索体311、314、321および324が見えている。索体311、314、321および324には、それぞれ張力T11、T14、T21、およびT24が作用している。このうち、例えば索体311に作用する張力T11をX1方向、X2方向、Z1方向およびZ2方向の成分に分解すると、X1方向成分T11X1とZ2方向成分T11Z2に分解できる。同様に、張力T14、T21、およびT24は、それぞれX2方向成分T14X2とZ2方向成分T14Z2、X1方向成分T21X1とZ1方向成分T21Z1、X2方向成分T24X2とZ1方向成分T24Z1に分解できる。
【0066】
また、図4では、索体321、322、323および324が見えている。索体321、322、323および324には、それぞれ張力T21、T22、T23、およびT24が作用している。このうち、例えば索体321に作用する張力T21をX1方向、X2方向、Y1方向およびY2方向の成分に分解すると、X1方向成分T21X1とY2方向成分T21Y2に分解できる。同様に、張力T22、T23、およびT24は、それぞれX1方向成分T22X1とY1方向成分T22Y1、X2方向成分T23X2とY1方向成分T23Y1、X2方向成分T24X2とY2方向成分T24Y2に分解できる。
【0067】
また、図3および図4では見えていないが、索体312、313にも張力T12およびT13が作用しており、張力T12およびT13についても、X1方向、X2方向、Y1方向、およびZ1方向の成分に分解することができる。
【0068】
図5および図6では、移動空間AR内における制御対象物10の位置および姿勢が、図3および図4の状態から変化している。図5は、図3の状態から制御対象物10をX1方向に移動させた状態を示している。また、図6は、図3の状態から制御対象物10の姿勢を変化させた状態を示している。図6に示すように、制御対象物1の姿勢を変化させることにより、例えば、造形台PTが傾斜面を有する場合に、傾斜面に対してプリンタヘッドのノズル15を垂直にすることができる。
【0069】
図5および図6に示すように、制御対象物10の位置および姿勢を変化させても、制御対象物10には、X1方向およびX2方向への保持力、Y1方向およびY2方向への保持力、およびZ1方向およびZ2方向への保持力が作用する。
【0070】
このように、制御対象物10には、各索体30(311~314、321~324)に作用する張力により、X1方向およびX2方向への保持力、Y1方向およびY2方向への保持力、およびZ1方向およびZ2方向への保持力が作用する。このため、制御対象物10の位置を安定させることができ、鉛直方向に立てられた造形台PTに対して立体物を造形することができる。また、各索体30(311~314、321~324)に作用する張力を保ちつつ、各索体30(311~314、321~324)の引き取り量および引き出し量を同調させながら変化させることにより、制御対象物10(プリンタヘッドのノズル15)の位置がずれにくくなり(剛性が高くなり)、制御対象物10の位置制御を精密に行うことができる。
【0071】
[実施形態2]
実施形態2の位置制御装置100Aでは、第1索体操作部51(511~514)には、第2索体32(321~324)が連結されており、第2索体操作部52(521~524)には、第1索体31(311~314)が連結されている点で実施形態1の位置制御装置100とは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0072】
図7は、本発明の第2実施形態に係る位置制御装置100Aの全体構成を示す斜視図である。図7に示すように、第1索体操作部51(511~514)は、制御対象物10の第2端部12よりも第1端部11に近い位置に配置されている。第2索体操作部52(521~524)は、制御対象物10の第1端部11よりも第2端部12に近い位置に配置されている。第1索体操作部51(511~514)には、第2索体32(321~324)が連結されており、第2索体操作部52(521~524)には、第1索体31(311~314)が連結されている。
【0073】
図8は、位置制御装置100AをY1方向に見た側面図である。図9は、位置制御装置100AをZ2方向に見た側面図である。図8に示すように、位置制御装置100AをY1方向に見ると、第1索体31(311~314)と第2索体32(321~324)が交差するように見える。
【0074】
図8および図9に示すように、制御対象物10が移動空間AR内の任意の位置へ移動、または位置が保持されている状態において、各索体30(311~314、321~324)には張力が作用している。実施形態1と同様に、制御対象物10に作用する張力は、X1方向、X2方向、Y1方向およびY2方向、Z1方向およびZ2方向の成分に分解することができる。
【0075】
制御対象物10には、各索体30(311~314、321~324)に作用する張力により、X1方向およびX2方向への保持力、Y1方向およびY2方向への保持力、およびZ1方向およびZ2方向への保持力が作用する。このため、制御対象物10の位置を安定させることができ、鉛直方向に立てられた造形台PTに対して立体物を造形することができる。また、各索体30(311~314、321~324)に作用する張力を保ちつつ、各索体30(311~314、321~324)の引き取り量および引き出し量を同調させながら変化させることにより、制御対象物10(プリンタヘッドのノズル15)の位置がずれにくくなり(剛性が高くなり)、制御対象物10の位置制御を精密に行うことができる。
【0076】
また、図8に示すように、各索体30(311~314、321~324)と制御対象物10のなす角度(例えば角度α)を実施形態1よりも小さくできるため、制御対象物10の移動空間ARを広くすることができるとともに、移動空間AR内の障害物等に各索体30(311~314、321~324)および制御対象物10を干渉させにくくすることができる。
【0077】
また、図9に示すように、同一の支持部70(71~74)に設けられている索体操作部50(511~514、521~524)は、支持部70(71~74)の軸方向に交差する方向にずらして配置されている。具体的には、例えば、支持部71に設けられている索体操作部511と索体操作部521のそれぞれの案内部57は、支持部71の軸方向に交差する方向(支持部71の円周方向)にずらして配置されている。このため、同一の支持部70(71~74)に設けられた索体操作部50(511~514、521~524)に連結されている索体30(311~314、321~324)同士の干渉を抑制することができる。
【0078】
[実施形態3]
実施形態3の位置制御装置100Bは、支持部70(71~73)が3基であり、索体30(311~313、321~323)、索体操作部50(511~513、521~523)が設けられている点で、実施形態1の位置制御装置100とは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0079】
図10は、本発明の第3実施形態に係る位置制御装置100Bの全体構成を示す斜視図である。図10に示すように、第1索体操作部51(511~513)は、制御対象物10の第2端部12よりも第1端部11に近い位置に配置されている。第2索体操作部52(521~523)は、制御対象物10の第1端部11よりも第2端部12に近い位置に配置されている。第1索体操作部51(511~513)には、第1索体31(311~313)が連結されており、第2索体操作部52(521~524)には、第2索体32(321~323)が連結されている。
【0080】
支持部70(71~73)は、移動空間ARの外部において相互に離隔するように造形台PTに配置されており、Z1方向に延びている。各支持部70(71~73)には、第1索体操作部51(511~513)および第2索体操作部52(521~523)がそれぞれ1体ずつ配置されている。このため、第1索体操作部および第2索体操作部がZ1方向に配列された列が、移動空間ARの外部において相互に離隔するように3列配置されていることとなる。
【0081】
図11は、位置制御装置100BをY1方向に見た側面図である。図12は、位置制御装置100BをZ2方向に見た側面図である。
【0082】
図11および図12に示すように、制御対象物10が移動空間AR内の任意の位置へ移動、または位置が保持されている状態において、各索体30(311~313、321~323)には張力が作用している。実施形態1と同様に、制御対象物10に作用する張力は、X1方向、X2方向、Y1方向およびY2方向、Z1方向およびZ2方向の成分に分解することができる。
【0083】
制御対象物10には、各索体30(311~313、321~323)に作用する張力により、X1方向およびX2方向への保持力、Y1方向およびY2方向への保持力、およびZ1方向およびZ2方向への保持力が作用する。このため、制御対象物10の位置を安定させることができ、鉛直方向に立てられた造形台PTに対して立体物を造形することができる。また、各索体30(311~313、321~323)に作用する張力を保ちつつ、各索体30(311~313、321~323)の引き取り量および引き出し量を同調させながら変化させることにより、制御対象物10(プリンタヘッドのノズル15)の位置がずれにくくなり(剛性が高くなり)、制御対象物10の位置制御を精密に行うことができる。
【0084】
[実施形態4]
実施形態4の位置制御装置100Cは、巻取部55Cと案内部57の間に索体案内部59が配置されている点で、実施形態1の位置制御装置100とは異なる。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0085】
図13は、本発明の第4実施形態に係る位置制御装置100CをY1方向に見た側面図である。位置制御装置100Cは、制御対象物10、索体30(311~314、321~324)、索体操作部50C(511C~514C、521C~524C)、および支持部70C(71C~74C)等を備えている。位置制御装置100Cが設置される基台BCは、水平方向に配置されている。造形台PTCは、基台BCの上方において水平方向に配置されている。
【0086】
索体操作部50C(511C~514C、521C~524C)は、巻取部55C、駆動部(図示せず)、案内部57、および索体案内部59を有している。本実施形態では、巻取部55Cと案内部57が離隔して配置されている。索体案内部59は、巻取部55Cおよび案内部57の間に配置されている。索体案内部59は、巻取部55Cから供給された索体30を案内部57まで案内する。索体操作部50C(511C~514C、521C~524C)の各案内部57により、略直方体の移動空間ARが構成されている。
【0087】
支持部70C(71C~74C)は、索体操作部50C(511C~514C、521C~524C)を支持する部分である。支持部70C(71C~74C)は、移動空間ARの外部において相互に離隔するように基台BCに配置されており、Z1方向に延びている。
【0088】
本実施形態では、支持部70C(71C~74C)には、案内部57および索体案内部59が設けられている。複数の巻取部55Cは、支持部70C(71C~74C)の基台BC側の端部付近に配置されている。巻取部55Cを駆動させる駆動部(図示せず)も巻取部55Cに近接して配置されている。
【0089】
上記のように、索体操作部50C(511C~514C、521C~524C)のうち重量物である巻取部55Cを、支持部70C(71C~74C)の基台BC側の端部付近に配置することにより、位置制御装置100Cの設置が容易になる。重量物である駆動部の電源(図示せず)についても、巻取部55Cに近接して配置するようにしてもよい。
【0090】
なお、本実施形態では、索体案内部59および索体30(311~314、321~324)は、支持部70C(71C~74C)の内部に配置されているが、これに限定されない。索体案内部59および索体30(311~314、321~324)を支持部70C(71C~74C)の外部に配置してもよい。また、支持部70C(71C~74C)を基台BCに配置したが、支持部70C(71C~74C)を地面に立設させ、巻取部55Cや駆動部を地面上に配置するようにしてもよい。
【0091】
[変形例]
本発明に係る位置制御装置は、上記説明した本実施形態に限定されない。従来のプリンティングシステムの場合、造形できる形状、大きさは3Dプリンタの大きさの制約を受け、投影面積、高さ共に大きなものを造型ができなかった。また3Dプリンタ自体の大型化も困難であった。本発明によれば、索体の長さ、および索体操作部の配置ならびに索体操作部の容量を変更することで立体造形物の大型化並びに装置の大型化を容易に図ることができる。また、本発明では、プリントヘッド部を支える構成が索体のみのため装置の大型化を行っても軽量化が可能である。さらに、索体を制御することによりプリントヘッド部の移動を行っているので造形面の周囲に障害物のある場合や周囲に既存の造形物がある場合もこれらに干渉せずに新たな造形を行うことができる。
【0092】
位置制御装置が適用される3Dプリンティングシステムは、造形台に立体造形物を形成することに限定されず、例えば、建築物などへの応用も可能である。例えば既存建築物の壁面や家具などの障害物のある室内への装飾物の造形、並びに吐出物を樹脂からコンクリートなどの建築用材料に置き換えることで建築物自体を製作することも可能である。
【0093】
本実施形態では、位置制御装置をFDM方式の3Dプリンティングシステムに適用したが、造形方式は限定されない。例えば、光造形方式など他の造形方式の3Dプリンティングシステムに適用することも可能である。また、索体の本数は、移動空間内の任意の位置に制御対象物を移動可能であれば本数は限定されない。
【0094】
位置制御装置は、立体造形物の作成だけでなく、制御対象物に塗装用スプレーノズルやカメラなどの装置、機構を設けることで幅広く技術の応用が可能となる。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
100 位置制御装置
10 制御対象物
30 索体
50 索体操作部
70 支持部
90 制御部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13