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  • 特許-ガスケット及び封止構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ガスケット及び封止構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
F16J15/10 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018130969
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020008117
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 翼
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/185168(WO,A1)
【文献】特開2004-204941(JP,A)
【文献】特開平10-9395(JP,A)
【文献】特開2016-37974(JP,A)
【文献】特開2008-298246(JP,A)
【文献】特開2016-117831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成され、所定部材の環状の溝部に配置され、前記溝部に配置された状態で弾性変形することにより前記溝部を封止可能な基部と、
前記基部が前記溝部に配置される状態で前記溝部の側面側に突出し、前記基部の周方向に間隔を空けて複数配置され、前記溝部の側面に対向する支持面を有する突起部と
を備え、
前記突起部は、前記基部との接続部分における前記周方向の長さが、前記周方向に隣り合う前記突起部の対向する端部同士の前記周方向の間隔よりも長く、前記基部が前記溝部に配置される状態で全ての前記支持面が前記溝部の側面に平行に配置されるように形成され、
複数の前記突起部は、少なくとも1つが、前記支持面から前記溝部の側面側に向けて突出する小突起部を有し、
複数の前記突起部のうち前記小突起部を有しない前記突起部は、前記基部が弾性変形した状態で弾性変形して前記溝部の側面に前記支持面の全面が接触するように形成され、
複数の前記突起部のうち前記小突起部を有する前記突起部は、前記基部が弾性変形した状態で弾性変形して前記溝部の側面に前記小突起部が押し付けられ、前記支持面が前記溝部の側面に平行に配置されるように形成される
ガスケット。
【請求項2】
前記突起部は、周方向及び前記基部の高さ方向の少なくとも一方について、前記支持面の端辺側が丸みを帯びた形状を有する
請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記基部及び前記突起部は、ゴム材料を用いて形成され、ゴム硬度がHDA60以下である
請求項1又は請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
樹脂材料を用いて形成され、環状の溝部を有する所定部材と、
前記所定部材の前記溝部に配置される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガスケットと、
前記ガスケットを前記溝部に封止する封止部材と
を備える封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の冷却水タンク、インレットマニホールド、フィルターブラケット等を構成するハウジングには、当該ハウジング内部をシールするための環状のガスケットが配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-9395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のガスケットは、ハウジングに設けられた環状の溝部に配置される。このガスケットは、溝部内における倒れ防止のため、溝部の側面に向けた突起部が設けられる。一方、この突起部は、ガスケットの平面視において、周方向の中央部が溝部の側面側に突出するように湾曲した形状であるため、溝部の側面との接触面積が小さくなる。そのため、シール性向上の観点から改善が求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、シール性を向上することが可能なガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガスケットは、環状に形成され、所定部材の環状の溝部に配置される基部と、前記溝部の側面側に突出した状態で前記基部の周方向に間隔を空けて複数配置され、前記溝部の側面に対向しかつ前記周方向について前記溝部の側面の曲率に対応した曲率に形成された支持面を有する突起部とを備え、前記突起部は、前記周方向の長さが、前記周方向に隣り合う前記突起部の対向する端部同士の前記周方向の間隔よりも長い。
【0007】
上記のガスケットにおいて、前記突起部は、周方向及び前記基部の高さ方向の少なくとも一方について、前記支持面の端辺側が丸みを帯びた形状を有してもよい。
【0008】
上記のガスケットにおいて、前記基部及び前記突起部は、ゴム材料を用いて形成され、ゴム硬度がHDA60以下であってもよい。
【0009】
上記のガスケットにおいて、前記所定部材は、樹脂材料を用いて形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シール性を向上することが可能なガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ガスケットの一例を示す平面図である。
図2図2は、図1の一部を拡大して示す図である。
図3図3は、図1におけるA-A断面図である。
図4図4は、図1におけるB-B断面図である。
図5図5は、図1におけるC-C断面図である。
図6図6は、ガスケットを溝部に配置した状態の一例を示す平面図である。
図7図7は、ガスケットを溝部に配置して封止した状態の一例を示す断面図である。
図8図8は、ガスケットを溝部に配置して封止した状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るガスケットの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
図1は、ガスケット100の一例を示す平面図である。図2は、図1の一部を拡大して示す図である。図1に示すように、ガスケット100は、シリコンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料を用いて環状に形成される。ガスケット100は、外部から力を加えることにより、弾性変形可能に設けられる。ガスケット100は、例えばゴム硬度がHDA60(JIS K 7215 ショアA 準拠)以下となっている。
【0014】
ガスケット100は、例えば自動車等の冷却水タンク、インレットマニホールド、フィルターブラケット等を構成するハウジング(所定部材)200の環状の溝部50に配置される。ハウジング200は、例えば樹脂材料を用いて形成されるが、これに限定されず、金属等の他の材料を用いて形成されてもよい。溝部50は、側面60及び底面70を有する(図2等参照)。側面60は、ガスケット100の内周側に沿った内側面61と、ガスケット100の外周側に沿った外側面62とを有する。底面70は、平面状であり、ガスケット100を載置する。
【0015】
ガスケット100は、基部10と、突起部20とを備える。基部10は、ハウジング200の溝部50の形状に対応して環状に形成される。本実施形態では、例えば溝部50が円環状に形成される。そのため、ガスケット100は、溝部50の形状に対応して円環状に形成される。なお、溝部50の形状及びガスケット100の形状は、円環状に限定されず、他の形状であってもよい。
【0016】
以下、ガスケット100の構成を説明するにあたり、基部10が環状に延びる方向を基部10の周方向と表記する。また、ガスケット100が溝部50に配置された状態において、溝部50の底面70に垂直な方向を基部10の高さ方向と表記する。基部10の高さ方向については、ガスケット100から溝部50の底面70に向けた方向を下方と表記し、下方の反対方向を上方と表記する。
【0017】
突起部20は、溝部50の側面60側に突出した状態で配置される。突起部20は、基部10の周方向に間隔を空けて複数配置される。突起部20は、基部10の周方向の一周に亘って設けられる。突起部20は、例えば基部10の周方向に等ピッチで配置されるが、これに限定されず、少なくとも1箇所のピッチが他とは異なってもよい。
【0018】
突起部20は、側面60に対向する支持面20aを有する。図2に示すように、支持面20aは、周方向について、側面60の曲率に対応した曲率に形成される。例えば、本実施形態において、支持面20aは、側面60に平行に形成される。また、突起部20は、支持面20aの周方向の両端部において丸みを帯びた形状を有している。
【0019】
複数の突起部20のうち一部の突起部20には、小突起部20bが設けられる。本実施形態において、小突起部20bは、複数の突起部20のうち周方向に例えば4つおきに配置されるが、これに限定されない。なお、小突起部20bは、全部の突起部20に設けられてもよい。小突起部20bは、支持面20aから側面60側に向けて例えば半球状に突出した状態で設けられるが、これに限定されず、他の形状であってもよい。小突起部20bは、例えば周方向の中央部に配置される。小突起部20bは、1つの支持面20aに複数配置されてもよい。
【0020】
また、突起部20は、周方向の長さL1が、当該周方向に隣り合う突起部20の対向する端部同士(図1の端部20cと端部20d)の周方向の間隔L2よりも長い。この構成により、ガスケット100は、溝部50に配置した場合、突起部20より側面60との接触する部分の周方向の長さが、側面60と接触しない部分の周方向の長さよりも長くなる。
【0021】
突起部20は、内周側突起部21と、外周側突起部22とを有する。内周側突起部21は、基部10の内周側に配置される。内周側突起部21は、基部10の内周面11から溝部50の内側面61に突出している。内周側突起部21は、内側面61に対向する内周側支持面21aを有する。内周側支持面21aは、溝部50の内側面61の曲率に対応した曲率に形成される。本実施形態において、内周側支持面21aの曲率C1は、内側面61の曲率と同一に設定される。
【0022】
外周側突起部22は、基部10の外周側に配置される。外周側突起部22は、基部10の外周面12から溝部50の外側面62に突出している。外周側突起部22は、外側面62に対向する外周側支持面22aを有する。外周側支持面22aは、溝部50の外側面62の曲率に対応した曲率に形成される。本実施形態において、外周側支持面22aの曲率C2は、外側面62の曲率と同一に設定される。
【0023】
本実施形態では、溝部50の側面60において、内側面61と外側面62とがそれぞれ円筒状に形成される。内周側支持面21aは、内側面61と同一の曲率C1を有するように、例えば内側面61と同一径の円筒面の一部で構成される。同様に、外周側支持面22aは、外側面62と同一の曲率C2を有するように、例えば外側面62と同一径の円筒面の一部で構成される。
【0024】
また、本実施形態では、内周側突起部21と外周側突起部22とが周方向の同一範囲に配置される。また、周方向における内周側突起部21の長さと外周側突起部22の長さとが等しくなっている(それぞれ長さL1)。
【0025】
図3は、図1におけるA-A断面図である。図3に示すように、基部10は、周方向に垂直な平面による断面視において、八角形状である。基部10は、内周面11と外周面12とが平行である。基部10は、溝部50の底面70に接触する下面13と、ハウジング200を封止する封止部材300(図6図7等参照)に接触する上面14とを有する。基部10は、下面13と上面14とが平行である。
【0026】
図4は、図1におけるB-B断面図である。図4は、基部10のうち突起部20が配置される部分を示している。図4に示すように、突起部20は、支持面20a(内周側支持面21a、外周側支持面22a)の高さ方向の上端部及び下端部において丸みを帯びた形状を有している。
【0027】
図5は、図1におけるC-C断面図である。図5は、小突起部20bが設けられた突起部20の断面形状を示している。図5に示すように、小突起部20bは、例えば支持面20aのうち高さ方向の中央部に配置されるが、これに限定されず、他の位置に配置されてもよい。また、小突起部20bは、支持面20aの高さ方向に複数設けられてもよい。
【0028】
図6は、ガスケット100を溝部50に配置した状態の一例を示す平面図である。図7は、ガスケットを溝部に配置して封止した状態の一例を示す断面図である。ガスケット100を溝部50に配置した状態で、封止部材300によりハウジング200を封止することにより、ガスケット100が溝部50内で弾性変形する。本実施形態にでは、支持面20aが側面60の曲率に対応した曲率C1に形成されるため、ガスケット100を溝部50に配置する場合、ほぼ全面において側面60に接触した状態となる。したがって、封止部材300によりガスケット100を封止した場合、図6及び図7に示すように、支持面20aが側面60により安定して支持されるため、溝部50におけるガスケット100の倒れを抑制できる。また、支持面20aのほぼ全面が側面60に接触することにより、支持面20aと側面60との間の摩擦力が大きくなる。そのため、ガスケット100が溝部50から脱落することを抑制できる。
【0029】
また、本実施形態では、突起部20が、支持面20a(内周側支持面21a、外周側支持面22a)の高さ方向の上端部及び下端部において丸みを帯びた形状を有している。また、突起部20が、支持面20aの周方向の両端部において丸みを帯びた形状を有している。そのため、丸みを帯びた部分と側面60との間のスペースにより、突起部20において十分な変形が確保され、かつ安定したシール性が確保される。
【0030】
また、突起部20は、周方向の長さL1が、当該周方向に隣り合う突起部20の対向する端部同士の周方向の間隔L2よりも長い。この構成により、ガスケット100は、溝部50に配置して封止した場合、支持面20aと側面60との接触部分の周方向の長さが、側面60と接触しない部分の周方向の長さよりも長くなる。これにより、ガスケット100は、溝部50内に高い充填率で配置されるため、シール性向上を図ることができる。
【0031】
図8は、ガスケットを溝部に配置して封止した状態の一例を示す断面図である。図8は、小突起部20bが設けられた部分の断面を示している。支持面20aのほぼ中央部に小突起部20bが設けられることにより、図8に示すように、ガスケット100が溝部50から脱落することを抑制できる。また、小突起部20bが半球状であるため、半球状の小突起部20bの表面を効率良く溝部50の側面60に押し付けることができる。これにより、更に効果的にガスケット100の脱落を抑制できる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係るガスケット100は、環状に形成され、環状の溝部50に配置される基部10と、溝部50の側面60側に突出した状態で基部10の周方向に間隔を空けて複数配置され、溝部50の側面60に対向しかつ周方向について側面60の曲率に対応した曲率に形成された支持面20aを有する突起部20とを備え、突起部20は、周方向の長さL1が、周方向に隣り合う突起部20の対向する端部同士の周方向の間隔L2よりも長い。
【0033】
この構成により、ガスケット100は、溝部50に配置した場合、突起部20より側面60との接触する部分の周方向の長さが、側面60と接触しない部分の周方向の長さよりも長くなる。これにより、ガスケット100は、溝部50内に高い充填率で配置されるため、シール性向上を図ることができる。また、支持面20aのほぼ全面が側面60に接触することにより、支持面20aと側面60との間の摩擦力が大きくなる。そのため、ガスケット100が溝部50から脱落することを抑制できる。
【0034】
また、上記のガスケット100において、突起部20は、周方向及び高さ方向の少なくとも一方について、支持面20aの端辺側が丸みを帯びた形状を有する。これにより、ガスケット100を溝部50に配置した状態で封止する場合、丸みを帯びた部分と側面60との間のスペースにより、突起部20において十分な変形が確保され、かつ安定したシール性が確保される。
【0035】
また、本実施形態に係るガスケット100において、基部10及び突起部20は、ゴム材料を用いて形成され、ゴム硬度がHDA60以下である。この構成により、ハウジング200側に対する反力低減の要請に適応させることができる。
【0036】
また、本実施形態に係るガスケット100において、溝部50の側面60は、樹脂材料を用いて形成される。この構成により、樹脂材料を用いて形成される溝部50の側面60に対する反力低減の要請に適応させることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 基部
11 内周面
12 外周面
13 下面
14 上面
20 突起部
20a 支持面
20b 小突起部
21 内周側突起部
21a 内周側支持面
22 外周側突起部
22a 外周側支持面
50 溝部
60 側面
61 内側面
62 外側面
70 底面
100 ガスケット
200 ハウジング
300 封止部材
C1,C2 曲率
L1 長さ
L2 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8