(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】火災受信機及び火災報知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G08B17/00 E
G08B17/00 C
(21)【出願番号】P 2018247581
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-10-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】村尾 修一
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-012095(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123378(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00
23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知器及び前記感知器の発報に連動して制御される被制御機器が接続される火災受信機であって、
他の火災受信機とLANにより接続するための通信インターフェースと、
第1条件と、第2条件と、前記第1条件及び前記第2条件が成立したときに連動する連動先の被制御機器とが対応づけられたデータを記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記第1条件には、自機と前記他の火災受信機のうちいずれかの火災受信機である第1火災受信機に接続された前記感知器を特定する情報が設定されており、
前記第2条件には、自機と前記他の火災受信機のうち前記第1火災受信機とは異なる第2火災受信機に接続された前記感知器を特定する情報が設定されており、
前記連動先の被制御機器には、自機に接続された前記被制御機器を特定する情報が設定されており、
前記制御部は、自機に接続された前記感知器の発報があると、発報した前記感知器が前記第1条件又は前記第2条件に設定されていれば、前記感知器が設定された前記第1条件又は前記第2条件が成立したことを示す情報を、前記通信インターフェースを介して前記LANに送出し、
前記第1条件又は前記第2条件が成立したことを示す情報を、前記通信インターフェースを介して受信し、
前記第1条件と前記第2条件の両方が成立した場合に、成立した前記第1条件及び前記第2条件に対応づけられた前記連動先の被制御機器を動作させる
火災受信機。
【請求項2】
前記記憶部は、自機に接続された感知器と被制御機器の少なくともいずれかと、他の火災受信機に接続された感知器と被制御機器の少なくともいずれかと、をグループとして識別するための共通ゾーンの情報を、前記第1条件、前記第2条件及び前記連動先の被制御機器と対応づけて記憶し、
前記制御部は、自機に接続された前記感知器のうち前記共通ゾーンが設定された感知器から発報があると、発報した前記感知器が設定された前記第1条件と前記第2条件の一方が成立したことを示す情報とともに、当該第1条件と第2条件の一方に対応づけられた前記共通ゾーンの情報を、前記LANに送出する
請求項1記載の火災受信機。
【請求項3】
感知器及び前記感知器の発報に連動して制御される被制御機器が接続される火災受信機が、複数設けられており、複数の前記火災受信機がLANにより接続された火災報知システムであって、
前記複数の火災受信機は、それぞれ、第1条件
に設定された自機に接続された感知器を特定する情報と、第2条件
に設定された自機に接続された感知器を特定する情報と、前記第1条件及び前記第2条件が成立したときに連動する連動先
に設定された自機に接続された被制御機器
を特定する情報とが対応づけられたデータを記憶しており、
前記複数の火災受信機は、
自機に接続された前記感知器の発報があると、発報した前記感知器が前記第1条件又は前記第2条件に設定されていれば、前記感知器が設定された前記第1条件又は前記第2条件が成立したことを示す情報を、前記LANに送出し、
前記第1条件又は前記第2条件が成立したことを示す情報を、前記LANを介して受信し、
前記第1条件と前記第2条件の両方が成立した場合に、成立した前記第1条件及び前記第2条件に対応づけられた前記連動先の被制御機器を動作させる
火災報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LANに接続される火災受信機及びこの火災受信機を備えた火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LANにより複数の火災受信機を接続した火災報知システムがある。各火災受信機には、火災を感知する感知器と、感知器の発報に連動する地区音響や防排煙機器などの被制御機器が接続されている。そして、火災報知システムでは、LANにより接続された複数の火災受信機の間で、火災感知情報を共有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムでは、感知器の発報に応じて被制御機器が動作する感知器と被制御機器との連動は、火災受信機単位で行われていた。すなわち、異なる火災受信機間で、感知器と被制御機器とが連動することができなかった。
【0005】
ここで、複数の火災受信機を有する分散型の火災報知システムが設置される建物は、大型化又は複雑化している。建物が大型化又は複雑化すると、排煙口、排煙ファン及び防火戸などの一連で動作すべき被制御機器が、異なる火災受信機に接続されることもある。また、建物が複雑化して、一の火災受信機に接続された感知器と、他の火災受信機に接続された被制御機器とが物理的に近い位置に設置されることがある。そのような場合には、一の火災受信機に接続された一部の感知器と、他の火災受信機に接続された一部の被制御機器との連動が望まれることもある。しかし従来の火災報知システムでは、感知器の発報に対する被制御機器の連動は、火災受信機単位で行うようになっているため、異なる火災受信機間での感知器の発報に対する被制御機器の連動ができなかった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を背景としてなされたものであり、異なる火災受信機間での感知器の発報に対する被制御機器の連動が行える火災受信機及び火災報知システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る火災受信機は、感知器及び前記感知器の発報に連動して制御される被制御機器が接続される火災受信機であって、他の火災受信機とLANにより接続するための通信インターフェースと、第1条件と、第2条件と、前記第1条件及び前記第2条件が成立したときに連動する連動先の被制御機器とが対応づけられたデータを記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記第1条件には、自機と前記他の火災受信機のうちいずれかの火災受信機である第1火災受信機に接続された前記感知器を特定する情報が設定されており、前記第2条件には、自機と前記他の火災受信機のうち前記第1火災受信機とは異なる第2火災受信機に接続された前記感知器を特定する情報が設定されており、前記連動先の被制御機器には、自機に接続された前記被制御機器を特定する情報が設定されており、前記制御部は、自機に接続された前記感知器の発報があると、発報した前記感知器が前記第1条件又は前記第2条件に設定されていれば、前記感知器が設定された前記第1条件又は前記第2条件が成立したことを示す情報を、前記通信インターフェースを介して前記LANに送出し、前記第1条件又は前記第2条件が成立したことを示す情報を、前記通信インターフェースを介して受信し、前記第1条件と前記第2条件の両方が成立した場合に、成立した前記第1条件及び前記第2条件に対応づけられた前記連動先の被制御機器を動作させるものである。
また、本発明に係る火災報知システムは、感知器及び前記感知器の発報に連動して制御される被制御機器が接続される火災受信機が、複数設けられており、複数の前記火災受信機がLANにより接続された火災報知システムであって、前記複数の火災受信機は、それぞれ、第1条件に設定された自機に接続された感知器を特定する情報と、第2条件に設定された自機に接続された感知器を特定する情報と、前記第1条件及び前記第2条件が成立したときに連動する連動先に設定された自機に接続された被制御機器を特定する情報とが対応づけられたデータを記憶しており、前記複数の火災受信機は、自機に接続された前記感知器の発報があると、発報した前記感知器が前記第1条件又は前記第2条件に設定されていれば、前記感知器が設定された前記第1条件又は前記第2条件が成立したことを示す情報を、前記LANに送出し、前記第1条件又は前記第2条件が成立したことを示す情報を、前記LANを介して受信し、前記第1条件と前記第2条件の両方が成立した場合に、成立した前記第1条件及び前記第2条件に対応づけられた前記連動先の被制御機器を動作させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異なる火災受信機間での感知器の発報に対する被制御機器の連動を行うことができる。また、火災受信機は、第1条件と第2条件の双方が成立した場合に、自機に接続された被制御機器を連動させるので、大型化あるいは複雑化した建物においても柔軟な連動動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る火災報知システム100のシステム系統図である。
【
図2】実施の形態1に係る火災受信機10の機能ブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る火災受信機10及び主中継器20が有するゾーン設定テーブルの一例を説明する図である。
【
図4】火災報知システム100に設定される第1共通ゾーンAND-IPによる連動設定例を説明する図である。
【
図5】火災報知システム100に設定される第2共通ゾーンIPによる連動設定例を説明する図である。
【
図6】火災受信機10及び主中継器20に記憶される第1共通ゾーンAND-IPの連動設定例を説明する図である。
【
図7】実施の形態1に係る火災受信機10及び主中継器20の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る火災受信機及び火災報知システムを、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る火災報知システム100のシステム系統図である。
図1に示すように、分散型の火災報知システム100は、ホスト機器としての火災受信機10及び主中継器20が、LAN(Local Area Network)1を介して接続されている。
図1には複数の主中継器20が例示されているが、LAN1に接続される主中継器20は1台であってもよい。LAN1は、火災受信機10と主中継器20との間で情報を共有するための通信ネットワークである。火災受信機10と複数の主中継器20のそれぞれには、個別のノード番号が付与されており、火災報知システム100において一意に識別される。火災受信機10及び複数の主中継器20のそれぞれには、信号線3を介して、感知器Sと、感知器Sの発報に連動して制御される被制御機器とが接続されている。本実施の形態では、感知器S及び被制御機器を、端末機器と総称する場合がある。被制御機器は、例えば、警報装置、防排煙装置、及び信号中継器のうちいずれかを含む。
図1の例では、被制御機器として、地区音響装置Bと、防排煙装置ERとを示している。感知器Sは、赤外線放射、紫外線放射、又は燃焼ガス等の火災に起因する物理現象を検出するセンサを有し、火災に起因する物理現象に応じた検出値を出力する。警報装置は、例えば、地区音響装置Bやスピーカなどの音響警報を出力する装置、又はフラッシュライト等の視覚的な警報を出力する光警報装置である。防排煙装置ERは、例えば、防火扉、シャッター等である。
【0012】
火災受信機10及び主中継器20は、信号線3を介して、それぞれに接続された端末機器を監視制御する。また、火災受信機10と主中継器20との間で、LAN1を介して、端末機器から収集した火災情報の送受信が行われる。これにより、火災受信機10と主中継器20との間で火災情報を共有される。火災報知システム100は、例えば、複数のフロアを有する建物に設置される。より具体的には、火災受信機10は1階に配置され、複数の主中継器20のそれぞれは2階以上の各フロアに分散配置され、配置されたフロアの監視区域を監視する。そして、端末機器は、接続された火災受信機10又は主中継器20と同じフロアに設置される。なお、ここで説明した分散型の火災報知システム100の設置例は一例であり、火災受信機10及び複数の主中継器20を異なる建物に分散配置してもよい。主中継器20は、自機に接続された感知器の発報に基づいて被制御機器を制御するという点において、火災受信機10と同じ機能を有し、本発明の火災受信機に相当する。火災受信機10及び主中継器20には、#1~#4のノード番号が付与されている。
【0013】
火災受信機10及び主中継器20のそれぞれに接続された端末機器には、個別の端末アドレスADが付与されている。火災受信機10と複数の主中継器20は、それぞれ自機に接続された端末機器を、端末アドレスADによって一意に識別する。
図1では、例えば#4の主中継器20には、AD1、AD2、AD15、AD16のアドレスが付与された感知器Sと、AD3、AD17のアドレスが付与された地区音響装置Bと、AD45のアドレスが付与された防排煙装置ERが接続されている。
【0014】
また、#1~#4の火災受信機10又は主中継器20に接続された端末機器は、グループ化されている。1台の火災受信機10又は主中継器20に接続された複数の端末機器は、グループ単位で連動する。このグループを、ゾーンZと称する。例えば#4の主中継器20に接続された端末機器に着目すると、ゾーンZ1にAD1、AD2、AD3の端末機器が設定され、ゾーンZ7にAD15、AD16、AD17の端末機器が設定され、ゾーンZ12にAD1及びAD45の端末機器が設定されている。例えば、#4の主中継器20に接続されたAD1の感知器Sが発報すると、#4の主中継器20は、AD1の感知器Sと同じくゾーンZ12に設定されたAD45の防排煙装置ERを動作させる。また、AD1の感知器Sは、ゾーンZ1にも属するので、AD1の感知器Sが発報すると、#4の主中継器20は、AD1の感知器Sと同じくゾーンZ1に設定されたAD3の地区音響装置Bを動作させる。このように、感知器Sの発報に連動して、感知器Sと同じ火災受信機10又は主中継器20に接続された被制御機器が動作する。
【0015】
また、火災受信機10と複数の主中継器20のうちいずれか2以上に接続された端末機器を連動させるグループとして、第1共通ゾーンAND-IPと、第2共通ゾーンIPと、とがある。
図1の例では、第1共通ゾーンAND-IP1に、#4の主中継器20に接続されたAD1の感知器S及びAD45の防排煙装置ERと、#3の主中継器20に接続されたAD1の感知器S及びAD45の防排煙装置ERと、#1の火災受信機10に接続されたAD1及びAD2の感知器S並びにAD3の地区音響装置Bとが設定されている。また、第2共通ゾーンIP2に、#4の主中継器20に接続されたAD15及びAD16の感知器S並びにAD17の地区音響装置Bと、#3の主中継器20に接続されたAD15及びAD16の感知器S並びにAD17の地区音響装置Bとが設定されている。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る火災受信機10の機能ブロック図である。火災受信機10は、表示部11と、操作部12と、通信インターフェース13と、端末インターフェース14と、制御部15と、記憶部16とを備える。表示部11は、例えば液晶ディスプレイを備え、感知器Sの発報に関する情報及び被制御機器の動作に関する情報を表示する。操作部12は、火災受信機10に対する使用者の操作入力を受け付ける操作ボタン、キーボード、タッチパネルなどを有する。通信インターフェース13は、主中継器20とLAN1を介して通信するための通信インターフェース回路である。通信インターフェース13は、制御部15から出力された火災情報を、LAN1で使用される通信プロトコルに従って変換する。ここで、通信インターフェース13は、LAN1に接続される主中継器20のLANアドレスを記憶するメモリを有する。通信インターフェース13は、通信プロトコルに従って変換された火災情報を、出力先の主中継器20のLANアドレスに対して出力する。端末インターフェース14は、信号線3を介して接続される端末機器との間で信号を送受信するための通信インターフェース回路である。
【0017】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ及び入出力ポートを備え、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することで、火災受信機10全体を制御する。記憶部16は、後述するゾーン設定テーブル及び連動に関するデータを記憶するメモリである。
【0018】
主中継器20は、
図2で示した火災受信機10の構成のうちの表示部11を備えていないという点において火災受信機10と異なる。しかし、それ以外の構成については、
図2で示した火災受信機10と同様の構成を有する。
【0019】
図3は、実施の形態1に係る火災受信機10及び主中継器20が有するゾーン設定テーブルの一例を説明する図である。
図3では、
図1の#4の主中継器20が有するゾーン設定テーブルを例示している。ゾーン設定テーブルは、記憶部16に記憶される。ゾーン設定テーブルは、#4の主中継器20に接続された端末機器の端末アドレスADと、ゾーンZ、第1共通ゾーンAND-IP及び第2共通ゾーンIPとを対応づけたテーブルである。例えばAD1の感知器Sには、
図1に示したように、ゾーンZ1及びZ12と第1共通ゾーンAND-IP1が設定されている。
【0020】
ゾーン設定テーブルは、操作部12によって入力されて記憶部16に記憶される。あるいは、主中継器20に接続されたパソコンなどの外部端末からゾーン設定テーブルが転送され、記憶部16に記憶される。
【0021】
図3では、#4の主中継器20のゾーン設定テーブルを例示したが、#3及び#2の主中継器20並びに#1の火災受信機10も、
図3で示したようなゾーン設定テーブルをそれぞれの記憶部16にて記憶している。
【0022】
図4は、火災報知システム100に設定される第1共通ゾーンAND-IPによる連動設定例を説明する図である。本実施の形態の火災報知システム100に設定される第1共通ゾーンAND-IPでは、第1条件と、第2条件と、連動先とが対応づけられていて、第1条件と第2条件の双方が成立した場合、すなわちAND条件が成立した場合に、連動先の被制御機器が動作する。第1条件及び第2条件には、例えば感知器Sを特定する情報が設定され、その感知器Sが発報すると条件成立となる。感知器Sのほかにセンサを特定する情報を第1条件及び第2条件に設定してもよく、この場合には例えばセンサからの出力値が閾値を超えた場合に条件成立となる。
【0023】
次に、第1共通ゾーンAND-IPの設定の具体例を説明する。
図4に示すように、第1共通ゾーンAND-IP1には、第1条件として、#4の主中継器20に接続された感知器SのAD1と、#1の火災受信機10に接続された感知器SのAD1と、が設定されている。第2条件として、#3の主中継器20に接続された感知器SのAD1と、#1の火災受信機10に接続された感知器SのAD2が設定されている。連動先として、#4の主中継器20に接続された防排煙装置ERのAD45と、#3の主中継器20に接続された防排煙装置ERのAD5と、#1の火災受信機10に接続された地区音響装置BのAD3とが設定されている。
【0024】
火災報知システム100において、
図4の第1共通ゾーンAND-IP1のように、第1条件に複数の端末機器のアドレスが設定されている場合には、いずれか1台の端末機器からの発報があると(すなわちOR条件)、第1条件が成立したことになる。また、第2条件に複数の端末機器のアドレスが設定されている場合には、いずれか1台の端末機器からの発報があると(すなわちOR条件)、第2条件が成立したことになる。なお、第1条件及び第2条件に設定される端末機器の数は何台でもよい。また、本実施の形態では、第1条件、第2条件及び連動先の端末機器を特定する情報として、アドレスを使用するが、端末機器を特定できる情報であればアドレス以外の情報を使用してもよい。
【0025】
図5は、火災報知システム100に設定される第2共通ゾーンIPによる連動設定例を説明する図である。本実施の形態の火災報知システム100に設定される第2共通ゾーンIPでは、第1条件と連動先とが対応づけられていて、第1条件が成立した場合に連動先の被制御機器が動作する。第1条件には、例えば感知器Sを特定する情報が設定され、その感知器Sが発報すると条件成立となる。感知器Sのほかにセンサを特定する情報を第1条件に設定してもよく、この場合には例えばセンサからの出力値が閾値を超えると条件成立となる。第1条件に設定される端末機器の数は何台でもよい。また、本実施の形態では、第1条件及び連動先の端末機器を特定する情報としてアドレスを使用するが、端末機器を特定できる情報であればアドレス以外の情報を使用してもよい。
【0026】
次に、第2共通ゾーンIPの設定の具体例を説明する。
図5に示す第2共通ゾーンIP1には、第1条件として、#4の主中継器20、#3の主中継器20、#1の火災受信機10のそれぞれに接続された感知器SのAD1と、#1の火災受信機10に接続された感知器SのAD2とが設定されている。連動先として、#4の主中継器20に接続された防排煙装置ERのAD45と、#3の主中継器20に接続された防排煙装置ERのAD45と、#1の火災受信機10に接続された地区音響装置BのAD3とが設定されている。
【0027】
図4及び
図5に示す連動設定は、火災報知システム100に接続されるパソコン又は専用端末などの外部端末によって、設定される。外部端末において、第1共通ゾーンAND-IPの第1条件、第2条件及び連動先が設定され、火災受信機10及び主中継器20のそれぞれには、外部端末にて設定された情報のうち自機に関する情報のみが転送される。また、外部端末において、第2共通ゾーンIPの第1条件及び連動先が設定され、火災受信機10及び主中継器20のそれぞれには、外部端末にて設定された情報のうち自機に関する情報のみが転送される。火災受信機10及び主中継器20に転送された情報は、各機器の記憶部16に記憶される。
【0028】
図6は、火災受信機10及び主中継器20に記憶される第1共通ゾーンAND-IPの連動設定例を説明する図である。
図6では、
図4に示した第1共通ゾーンAND-IP1が設定される場合に、#4の主中継器20、#3の主中継器20及び#1の火災受信機10のそれぞれに設定されるデータを示している。
【0029】
#4の主中継器20には、第1条件として自機に接続された感知器SのAD1が設定され、第2条件としては自機に接続されたいずれの感知器Sも設定されていない。また、連動先として、自機に接続された防排煙装置ERのAD45が設定されている。
【0030】
#3の主中継器20には、第1条件としては自機に接続されたいずれの感知器Sも設定されていない。第2条件として、自機に接続された感知器SのAD1が設定され、連動先として防排煙装置ERのAD45が設定されている。
【0031】
#1の火災受信機10には、第1条件として自機に接続された感知器SのAD1が設定され、第2条件として自機に接続された感知器SのAD2が設定され、連動先として自機に接続された地区音響装置BのAD3が設定される。#1の火災受信機10に着目すると、第1条件と第2条件は、いずれも自機に接続された感知器Sである。
図6に示す#1の火災受信機10は、自機に接続された端末機器間でも連動することができる設定になっている。
【0032】
図4と
図6との対比で示されるように、#1の火災受信機10及び#3、4の主中継器20は、火災報知システム100に設定される第1共通ゾーンAND-IPの連動設定のうち、自機に接続される端末機器のデータのみを記憶する。
【0033】
なお、
図1に示したように、#3の主中継器20及び#4の主中継器20には、第2共通ゾーンIP2が設定されている。
図6には示していないが、#3の主中継器20及び#4の主中継器20には、第2共通ゾーンIP2における第1条件及び連動先のデータも記憶される。また、
図4及び
図5に示した火災報知システム100全体の第1共通ゾーンAND-IP及び第2共通ゾーンIPの連動設定の情報を、火災受信機10と複数の主中継器20のうちの1台、例えば火災受信機10の記憶部16が記憶してもよい。
【0034】
図7は、実施の形態1に係る火災受信機10及び主中継器20の動作例を説明する図である。
図7では、
図4及び
図6で示した第1共通ゾーンAND-IP1の連動動作例を説明する。まず、#4の主中継器20に接続された、AD1の感知器Sが発報したとする。そうすると、#4の主中継器20は、第1条件に対応づけられたAD1の発報情報を取得する(S1)。#4の主中継器20は、自機に接続された感知器SのAD1が、第1共通ゾーンAND-IP1の第1条件として設定されていることから(
図6参照)、第1共通ゾーンAND-IP1の第1条件が成立したことを示す情報を、通信インターフェース13を介してLAN1に送出する(S2)。
【0035】
LAN1に接続された#3の主中継器20及び#1の火災受信機10は、第1共通ゾーンAND-IP1の第1条件が成立したという情報を受信し(S3、S4)、第1条件が成立したことを自機の記憶部16に記憶する(S5、S6)。また、#4の主中継器20は、自機が送出した情報をLAN1を介して取得し、あるいはステップS2の情報の送出に伴って、第1共通ゾーンAND-IP1の第1条件が成立したという情報を自機の記憶部16に記憶する(S7)。
【0036】
このように、#1の火災受信機10に接続された感知器Sであって第1条件に関連付けられたAD1の感知器S(
図6参照)が発報せずとも、#4の主中継器20から第1条件の成立が出力されたことで、#1の火災受信機10においても第1条件の成立となる。また、#3の主中継器20には、第1条件に対応づけられた感知器Sがないが、#4の主中継器20において第1条件の成立が出力されたことにより、#3の主中継器20においても第1条件の成立となる。
【0037】
次に、#1の火災受信機10に接続された、AD2の感知器Sが発報したとする。そうすると、#1の火災受信機10は、第2条件に対応づけられたAD2の発報情報を取得する(S8)。#1の火災受信機10は、自機に接続された感知器SのAD2が、第1共通ゾーンAND-IP1の第2条件として設定されていることから(
図6参照)、第1共通ゾーンAND-IPの第2条件が成立したことを示す情報を、通信インターフェース13を介してLAN1に送出する(S9)。
【0038】
LAN1に接続された#3の主中継器20及び#4の主中継器20は、第1共通ゾーンAND-IPの第2条件が成立したという情報を受信し(S10、S11)、第2条件が成立したことを自機の記憶部16に記憶する(S13、S14)。また、#1の火災受信機10は、自機が送出した情報をLAN1を介して取得し、あるいはステップS9の情報の送出に伴って、第1共通ゾーンAND-IP1の第2条件が成立したという情報を自機の記憶部16に記憶する(S12)。
【0039】
このように、#3の主中継器20に接続された感知器Sであって第2条件に関連づけられたAD1の感知器S(
図6参照)が発報せずとも、#1の火災受信機10から第2条件の成立が出力されたことで、#3の主中継器20においても第2条件の成立となる。また、#4の主中継器20には、第2条件に対応づけられた感知器Sがないが、#1の火災受信機10において第2条件の成立が出力されたことにより、#4の主中継器20においても第2条件の成立となる。
【0040】
第1共通ゾーンAND-IP1において、第1条件及び第2条件が成立したため、#1の火災受信機10、#3の主中継器20及び#4の主中継器20は、自機に接続された連動先の被制御機器を動作させる。このように、火災受信機10と主中継器20との間で、あるいは主中継器20と他の主中継器20との間で、感知器Sの発報に対する被制御機器の連動を行うことができる。
【0041】
なお、
図4、
図6及び
図7では、火災受信機10と主中継器20のそれぞれにおいて、第1条件と第2条件の一方又は両方に自機に接続された端末機器が設定されている例を示した。しかし、第1条件と第2条件の両方に、自機に接続された端末機器が設定されていなくてもよい。すなわち、第1条件と第2条件の両方を、
図6における「設定なし」の状態とし、自機以外の火災受信機10又は主中継器20に接続された端末機器からの発報に基づいて、第1条件と第2条件の両方が成立するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施の形態の第1共通ゾーンAND-IPによる連動動作が設定された火災受信機10及び主中継器20では、第1条件と第2条件の双方が成立した場合に、連動先の被制御機器を動作させるようにした。そして、第1条件と第2条件の少なくとも一方は、自機以外の火災受信機10又は主中継器20に接続された端末機器からの発報によって条件が成立する。このため、大型化あるいは複雑化した建物に、火災受信機10と複数の主中継器20とが分散配置されている場合でも、感知器Sの発報と被制御機器の動作とを、自由度高く連動させることができる。
【0043】
また、第1共通ゾーンAND-IPが設定されて連動を行う火災受信機10と主中継器20との間でLAN1を介して送受信される情報は、第1共通ゾーンAND-IPを特定する情報と、この第1共通ゾーンAND-IPに対応づけられた第1条件又は第2条件の成立を示す情報のみである。したがって、火災受信機10と複数の主中継器20のうちのいずれかに接続された感知器Sあるいは被制御機器が増設あるいは取り外された場合には、その感知器Sあるいは被制御機器が接続された火災受信機10又は主中継器20の連動設定のみを編集すればよい。例えば、#3の主中継器20に接続される感知器Sを増設し、この感知器Sを第1共通ゾーンAND-IP1の第1条件として設定する場合には、#3の主中継器20の記憶部16の情報を更新すればよい。このため、火災受信機10あるいは主中継器20を設置した後に、端末機器の設置状態に変更が生じた場合でも、第1共通ゾーンAND-IPの設定に係る作業者の負担増加を抑制できる。また、第1共通ゾーンAND-IPの仕様変更が必要になった場合でも、対象となる火災受信機10と主中継器20のみの連動設定を編集すればよいので、タイムリーに仕様変更を行える。
【符号の説明】
【0044】
1 LAN、3 信号線、10 火災受信機、11 表示部、12 操作部、13 通信インターフェース、14 端末インターフェース、15 制御部、16 記憶部、20 主中継器、100 分散型火災報知システム、AD 端末アドレス、B 地区音響装置、ER 防排煙装置、S 感知器。