(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】板金加工見積作成支援装置及び板金加工見積作成支援方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20240220BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20240220BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20240220BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240220BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/12
G06F30/27
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2019140158
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】503306102
【氏名又は名称】トルンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】三浦 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ マール
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英雄
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032623(JP,A)
【文献】特開平05-165842(JP,A)
【文献】米国特許第06502084(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 30/12
G06F 30/27
G06Q 50/04
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金加工に関する既存図面データと、前記既存図面データによる板金加工の見積に関する見積データとが関連付けられて記憶されたデータベースと、
板金加工に関する新規図面データの入力を受け付ける新規図面データ入力受付部と、
前記データベースに記憶された前記既存図面データから、予め機械学習により生成された類似判定モデルにより、前記新規図面データ入力受付部により受け付けられた入力に係る前記新規図面データに類似する
1以上の前記既存図面データを検索
し、該検索された1以上の既存図面データをディスプレイに表示する検索部と、
前記検索部により検索され
前記ディスプレイに表示された前記
1以上の既存図面データ
のうち一つの前記既存図面データを選択する入力を受け付ける選択入力受付部と、
前記選択入力受付部により受け付けられた入力により選択された前記
一つの既存図面データに関連付けられて前記データベースに記憶された前記見積データを出力する見積データ出力部と、
を備えた板金加工見積作成支援装置。
【請求項2】
前記新規図面データ入力受付部により受け付けられた入力に係る前記新規図面データと、前記選択入力受付部により受け付けられた入力により選択された前記
一つの既存図面データとを教師として、前記類似判定モデルを訓練する類似判定モデル訓練部をさらに備えた、請求項1に記載の板金加工見積作成支援装置。
【請求項3】
前記データベースには、前記既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと、前記既存図面データと、前記見積データとが関連付けられて記憶されており、
前記新規図面データによる板金加工の属性に関する前記属性データの入力を受け付ける属性データ入力受付部をさらに備え、
前記検索部は、前記属性データ入力受付部により受け付けられた入力に係る前記属性データに関連付けられて前記データベースに記憶された前記既存図面データから、前記類似判定モデルにより、前記新規図面データ入力受付部により受け付けられた入力に係る前記新規図面データに類似する前記
1以上の既存図面データを検索
し、該検索された1以上の既存図面データを前記ディスプレイに表示する、請求項1又は2に記載の板金加工見積作成支援装置。
【請求項4】
前記検索部は、
予め前記属性データごとに生成された複数の前記類似判定モデルを有し、
前記属性データ入力受付部により受け付けられた入力に係る前記属性データに関連付けられて前記データベースに記憶された前記既存図面データから、前記属性データ入力受付部により受け付けられた入力に係る前記属性データについて生成された前記類似判定モデルにより、前記新規図面データ入力受付部に受け付けられた入力に係る前記新規図面データに類似する前記
1以上の既存図面データを検索
し、該検索された1以上の既存図面データを前記ディスプレイに表示する、請求項3に記載の板金加工見積作成支援装置。
【請求項5】
板金加工見積作成支援装置の新規図面データ入力受付部が、板金加工に関する新規図面データの入力を受け付ける新規図面データ入力受付工程と、
前記板金加工見積作成支援装置の検索部が、板金加工に関する既存図面データと、前記既存図面データによる板金加工の見積に関する見積データとが関連付けられて記憶されたデータベースに記憶された前記既存図面データから、予め機械学習により生成された類似判定モデルにより、前記新規図面データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る前記新規図面データに類似する
1以上の前記既存図面データを検索
し、該検索された1以上の既存図面データをディスプレイに表示する検索工程と、
前記板金加工見積作成支援装置の選択入力受付部が、前記検索工程で検索され
前記ディスプレイに表示された前記
1以上の既存図面データ
のうち一つの前記既存図面データを選択する入力を受け付ける選択入力受付工程と、
前記板金加工見積作成支援装置の見積データ出力部が、前記選択入力受付工程で受け付けられた入力により選択された前記
一つの既存図面データに関連付けられて前記データベースに記憶された前記見積データを出力する見積データ出力工程と、
を備えた板金加工見積作成支援方法。
【請求項6】
前記板金加工見積作成支援装置の類似判定モデル訓練部が、前記新規図面データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る前記新規図面データと、前記選択入力受付工程で受け付けられた入力により選択された前記
一つの既存図面データとを教師として、前記類似判定モデルを訓練する類似判定モデル訓練工程をさらに備えた、請求項5に記載の板金加工見積作成支援方法。
【請求項7】
前記データベースには、前記既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと、前記既存図面データと、前記見積データとが関連付けられて記憶されており、
前記板金加工見積作成支援装置の属性データ入力受付部が、前記新規図面データによる板金加工の属性に関する前記属性データの入力を受け付ける属性データ入力受付工程をさらに備え、
前記検索工程では、前記検索部は、前記属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る前記属性データに関連付けられて前記データベースに記憶された前記既存図面データから、前記類似判定モデルにより、前記新規図面データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る前記新規図面データに類似する前記
1以上の既存図面データを検索
し、該検索された1以上の既存図面データを前記ディスプレイに表示する、請求項5又は6に記載の板金加工見積作成支援方法。
【請求項8】
前記検索部は、予め前記属性データごとに生成された複数の前記類似判定モデルを有し、
前記検索工程では、前記検索部は、前記属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る前記属性データに関連付けられて前記データベースに記憶された前記既存図面データから、前記属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る前記属性データについて生成された前記類似判定モデルにより、前記新規図面データ入力受付部に受け付けられた入力に係る前記新規図面データに類似する前記
1以上の既存図面データを検索
し、該検索された1以上の既存図面データを前記ディスプレイに表示する、請求項7に記載の板金加工見積作成支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金加工見積作成支援装置及び板金加工見積作成支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、板金加工を行う業者は製品の図面が渡され見積の提出を発注者から求められる。例えば、特許文献1には、板金加工の製品製造の受注を受けた時点で製品製造のシミュレーションを行うとともに見積の作成を行う技術が開示されている。特許文献1の技術では、発注者が受注者に製品製造の見積の依頼を行うと、受注者は製品の三面図から立体姿図を作成する。立体姿図は加工が適正に行えるように複数の部品に分割される。
【0003】
各部品の展開図が作成される。展開図から材料費、ブランク加工費等が算出される。各展開図より孔を開ける工程が決定される。孔を開ける工程から孔を開ける加工費が算出される。各展開図より曲げの工程が決定される。曲げの工程から曲げ加工費が算出される。部品が組み立てられ、製品が製造される。製品より溶接費、塗装費及び組立費等が算出される。以上のように算出された費用から見積が作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような技術では、孔を開ける工程、曲げの工程及び部品を組み立てる工程等ごとに図面が参照され、工程ごとに費用が算出される。そのため、見積を作成するために時間を要してしまう欠点がある。過去に行われた板金加工の見積のデータを参照して、新規の板金加工の製品製造の受注に応じた見積を作成することも考えられる。しかし、新規の板金加工の製品製造の受注に応じて、過去に行われた板金加工の膨大なデータを検索することは難しく、現状は人間の記憶及び経験に頼って見積が作成されている。そのため、板金加工の見積の作成に労力を要する欠点がある。
【0006】
そこで本発明は、板金加工の見積の作成に要する労力を低減することが可能な板金加工見積作成支援装置及び板金加工見積作成支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、板金加工に関する既存図面データと、既存図面データによる板金加工の見積に関する見積データとが関連付けられて記憶されたデータベースと、板金加工に関する新規図面データの入力を受け付ける新規図面データ入力受付部と、データベースに記憶された既存図面データから、予め機械学習により生成された類似判定モデルにより、新規図面データ入力受付部により受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する検索部と、検索部により検索された既存図面データを選択する入力を受け付ける選択入力受付部と、選択入力受付部により受け付けられた入力により選択された既存図面データに関連付けられてデータベースに記憶された見積データを出力する見積データ出力部とを備えた板金加工見積作成支援装置である。
【0008】
この構成によれば、板金加工見積作成支援装置において、データベースには、板金加工に関する既存図面データと見積データとが関連付けられて記憶されている。新規図面データ入力受付部により、板金加工に関する新規図面データの入力が受け付けられる。検索部により、データベースに記憶された既存図面データから、予め機械学習により生成された類似判定モデルによって新規図面データに類似する既存図面データが検索される。選択入力受付部により、検索部により検索された既存図面データを選択する入力が受け付けられる。見積データ出力部により、選択された既存図面データに関連付けられてデータベースに記憶された見積データが出力される。これにより、新規図面データの入力により新規図面データに類似する既存図面データが検索され、検索された既存図面データから選択された既存図面データに関連付けられた見積データが出力されるため、過去に行われた板金加工の見積データをより容易に参照することができ、板金加工の見積の作成に要する労力を低減することが可能となる。
【0009】
この場合、新規図面データ入力受付部により受け付けられた入力に係る新規図面データと、選択入力受付部により受け付けられた入力により選択された既存図面データとを教師として、類似判定モデルを訓練する類似判定モデル訓練部をさらに備えることが好適である。
【0010】
この構成によれば、類似判定モデル訓練部により、新規図面データ入力受付部により受け付けられた入力に係る新規図面データと、選択入力受付部により受け付けられた入力により選択された既存図面データとを教師として、類似判定モデルが訓練されるため、訓練された類似判定モデルにより、新規図面データに類似する既存図面データが検索される精度を向上させることができる。
【0011】
また、データベースには、既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと、既存図面データと、見積データとが関連付けられて記憶されており、新規図面データによる板金加工の属性に関する属性データの入力を受け付ける属性データ入力受付部をさらに備え、検索部は、属性データ入力受付部により受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベースに記憶された既存図面データから、類似判定モデルにより、新規図面データ入力受付部により受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索することが好適である。
【0012】
この構成によれば、データベースには、既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと既存図面データと見積データとが関連付けられて記憶されている。属性データ入力受付部により、新規図面データによる板金加工の属性に関する属性データの入力が受け付けられる。検索部は、属性データ入力受付部により受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベースに記憶された既存図面データから、類似判定モデルにより、新規図面データ入力受付部により受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する。つまり、検索部は、属性データにより限定された既存図面データから新規図面データに類似する既存図面データを検索する。このため、検索部が既存図面データから新規図面データに類似する既存図面データを検索する労力を低減することができる。
【0013】
この場合、検索部は、予め属性データごとに生成された複数の類似判定モデルを有し、属性データ入力受付部により受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベースに記憶された既存図面データから、属性データ入力受付部により受け付けられた入力に係る属性データについて生成された類似判定モデルにより、新規図面データ入力受付部に受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索することが好適である。
【0014】
この構成によれば、検索部は、予め属性データごとに生成された複数の類似判定モデルを有する。検索部により、属性データ入力受付部により受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベースに記憶された既存図面データから、属性データ入力受付部により受け付けられた入力に係る属性データについて生成された類似判定モデル、つまり属性データごとに特化した類似判定モデルによって新規図面データに類似する既存図面データが検索される。このため、多くの属性データについて一般的な類似判定モデルにより検索が行われる場合に比べて、検索部が既存図面データから新規図面データに類似する既存図面データを検索する精度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明は、板金加工見積作成支援装置の新規図面データ入力受付部が、板金加工に関する新規図面データの入力を受け付ける新規図面データ入力受付工程と、板金加工見積作成支援装置の検索部が、板金加工に関する既存図面データと、既存図面データによる板金加工の見積に関する見積データとが関連付けられて記憶されたデータベースに記憶された既存図面データから、予め機械学習により生成された類似判定モデルにより、新規図面データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する検索工程と、板金加工見積作成支援装置の選択入力受付部が、検索工程で検索された既存図面データを選択する入力を受け付ける選択入力受付工程と、板金加工見積作成支援装置の見積データ出力部が、選択入力受付工程で受け付けられた入力により選択された既存図面データに関連付けられてデータベースに記憶された見積データを出力する見積データ出力工程とを備えた板金加工見積作成支援方法である。
【0016】
この場合、板金加工見積作成支援装置の類似判定モデル訓練部が、新規図面データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る新規図面データと、選択入力受付工程で受け付けられた入力により選択された既存図面データとを教師として、類似判定モデルを訓練する類似判定モデル訓練工程とを備えることが好適である。
【0017】
また、データベースには、既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと、既存図面データと、見積データとが関連付けられて記憶されており、板金加工見積作成支援装置の属性データ入力受付部が、新規図面データによる板金加工の属性に関する属性データの入力を受け付ける属性データ入力受付工程をさらに備え、検索工程では、検索部は、属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベースに記憶された既存図面データから、類似判定モデルにより、新規図面データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索することが好適である。
【0018】
この場合、検索部は、予め属性データごとに生成された複数の類似判定モデルを有し、検索工程では、検索部は、属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベースに記憶された既存図面データから、属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る属性データについて生成された類似判定モデルにより、新規図面データ入力受付部に受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索することが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の板金加工見積作成支援装置及び板金加工見積作成支援方法によれば、板金加工の見積の作成に要する労力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態の板金加工見積作成支援装置を示すブロック図である。
【
図2】データベースに関連付けられて記憶された既存図面データ、属性データ、見積データ及び類似判定モデルの例を示す図である。
【
図4】実施形態の板金加工見積作成支援方法の工程を示すフローチャートである。
【
図5】属性データ入力受付工程の表示画面の例を示す図である。
【
図6】新規図面データ入力受付工程の表示画面の例を示す図である。
【
図8】選択入力受付工程の表示画面の例を示す図である。
【
図9】見積データ出力工程の表示画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る板金加工見積作成支援装置及び板金加工見積作成支援方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る板金加工見積作成支援装置1は、データベース11、属性データ入力受付部12、新規図面データ入力受付部13、検索部14、選択入力受付部15、見積データ出力部16及び類似判定モデル訓練部17を備える。本実施形態の板金加工見積作成支援装置1は、例えば、板金加工の見積業務において、板金加工に関する新規図面データに従って板金加工が実行された場合の見積の作成の依頼があったときに、板金加工の見積の作成に要する労力を低減するように見積の作成を支援する。
【0022】
板金加工見積作成支援装置1は、例えば、CPU(Central ProcessingUnit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク及び液晶ディスプレイ等を有するパーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置である。板金加工見積作成支援装置1では、ROMに記憶されているプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることで、上記の検索部14等の各部の動作が実行される。なお、板金加工見積作成支援装置1は、複数のコンピュータ装置及び記憶装置から構成されていてもよい。例えば、データベース11、属性データ入力受付部12、新規図面データ入力受付部13、検索部14、選択入力受付部15、見積データ出力部16及び類似判定モデル訓練部17は、それぞれ別個のハードディスク及びパーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置から構成されていてもよい。
【0023】
データベース11は、ハードディスク等の記憶装置である。
図2に示すように、データベース11には、板金加工に関する既存図面データと、既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと、既存図面データによる板金加工の見積に関する見積データとが関連付けられて記憶されている。なお、
図2の例では、既存図面データ、属性データ及び見積データに加えて、後述する類似判定モデルが関連付けられて記憶されている。
【0024】
既存図面データとは、例えば、過去に当該既存図面データに従って板金加工が実行された場合の見積の作成の依頼があり、見積が作成された図面のデータである。属性データの属性とは、例えば、既存図面データによる板金加工の担当者、板金加工の機械名称、5/6軸CAM(computer aided manufacturing:コンピュータ支援製造)の種別、ベンド機械の種別、材料、シートの板厚、材料サイズ、部品サイズ、更新日(既存図面データ、属性データ及び見積データのいずれかの更新日)、作成日(既存図面データ、属性データ及び見積データのいずれかの作成日)及び加工工程有無(抜き/曲げ/溶接のそれぞれの有無)である。見積データとは、例えば、過去に当該既存図面データに従って板金加工が実行された場合の見積の作成の依頼があり、見積が作成されたときの見積のデータである。
図2の例では、更新日及び作成日以外は同一の属性を有する既存図面データが示されている。
【0025】
属性データ入力受付部12は、新規図面データによる板金加工の属性に関する属性データの入力を受け付ける。なお、属性データ入力受付部12が受け付ける属性データは、必ずしも新規図面データによる板金加工の全部の属性に関するデータでなくてもよく、例えば、新規図面データによる板金加工の一部の属性に関するデータでもよい。
【0026】
新規図面データ入力受付部13は、板金加工に関する新規図面データの入力を受け付ける。新規図面データとは、例えば、板金加工の見積業務において、板金加工に関する新規図面データに従って板金加工が実行された場合の見積の作成の依頼があったときの図面のデータである。
【0027】
検索部14は、データベース11に記憶された既存図面データから、予め機械学習により生成された類似判定モデルM1、類似判定モデルM2、類似判定モデルM3~類似判定モデルMnにより(nは4以上の自然数)、新規図面データ入力受付部13により受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する。検索部14は、属性データ入力受付部12により受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベース11に記憶された既存図面データから、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnにより、新規図面データ入力受付部13により受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する。
【0028】
検索部14は、予め属性データごとに生成された複数の類似判定モデルM1,M2,M3~Mnを有し、属性データ入力受付部12により受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベース11に記憶された既存図面データから、属性データ入力受付部12により受け付けられた入力に係る属性データについて生成された類似判定モデルM1,M2,M3~Mnにより、新規図面データ入力受付部13に受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する。
【0029】
類似判定モデルM1,M2,M3~Mnは、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnに応じた属性データに関連付けられてデータベース11に記憶された既存図面データの画像の分類に用いられる情報である。例えば、機械名称:XXX、材料:AL-N2(窒化アルミニウム)、板厚:1.5mm、材料サイズ:1524mm×3048mm及び部品サイズ:442mm×228mmの属性に関する属性データについての類似判定モデルM2は、図面データの画像に写っている部品が、長方形の部品であるか否か、L字型の部品であるか否かといった分類(類似判定)を行う。本実施形態では、分類先(上記の例では、長方形の部品及びL字型の部品等)をカテゴリと呼ぶ。例えば、カテゴリC1は長方形の部品の分類であり、カテゴリC2はL字型の部品の分類である。
【0030】
類似判定モデルM1,M2,M3~Mnは、図面データの画像に基づく情報を入力として、当該画像が分類されるカテゴリを示す情報を出力する。例えば、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnは、カテゴリごとのスコア(類似度)を出力する。当該スコアの数値が高いほど、当該画像が当該カテゴリに分類される可能性が高いことを示している。
【0031】
類似判定モデルM1,M2,M3~Mnは、ニューラルネットワークを含んで構成される。例えば、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnは、ディープラーニングを用いたモデルである。
図3に示すように、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnは、それぞれ入力層(最初層)L1、中間層L2及び出力層L3の何れかに含まれる複数のニューロン(ノード)によって構成されている。中間層L2は、複数の階層のニューロンを含んでいる。
【0032】
入力層L1に含まれる複数のニューロンそれぞれには、図面データの画像Pに基づく入力が行われる。入力層L1のニューロンへ入力される情報は、例えば、次のように生成される。まず、画像Pを一定数の複数の領域Aに分割する。例えば、画像Pの縦及び横を等間隔に予め設定した数に区切り、当該区切りによって生成される同一の大きさの矩形の領域Aに分割する。それぞれの当該矩形の領域Aの画素の画素値から、入力層L1のニューロンへ入力される情報(ベクトル)を生成する。例えば、当該領域Aにおける画素値の平均値及び最大値等を入力層L1のニューロンへ入力される情報とする。
【0033】
入力層L1に入力された情報が、より深い階層に伝達されるうちに、各階層で特徴が抽出される。即ち、各階層のニューロンは一定の大きさのフィルターを形成し、情報がスライドされてフィルター毎に複数の特徴が抽出される。出力層L3に含まれる複数のニューロンそれぞれから出力される情報(数値)は、各カテゴリのスコアを示している。
【0034】
検索部14には、複数の学習用画像及び当該学習用画像の特徴を示す情報であるラベル情報が入力され、入力された学習用画像及びラベル情報を用いた機械学習が行われて、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnが生成される。ラベル情報は、当該学習用画像のカテゴリを示す情報である。即ち、学習用画像及び当該学習用画像のラベル情報は、機械学習の教師である。
【0035】
学習用画像及びラベル情報は、板金加工見積作成支援装置1の管理者等によって用意されて、検索部14に入力される。例えば、学習用画像として、L字型の部品が写っている画像を用意した場合、当該学習用画像のラベル情報は、L字型の部品のカテゴリC2を示す情報である。検索部14では、学習用画像及び当該学習用画像に対応するラベル情報を用いてディープラーニングが行われ、属性データごとの類似判定モデルM1,M2,M3~Mnが生成される。なお、検索部14によって生成される類似判定モデルM1,M2,M3~Mnは、検索部14による既存図面データの検索に用いられるため、検索部14による類似判定モデルM1,M2,M3~Mnの生成は、検索部14による既存図面データの検索に先立って行われる。
【0036】
検索部14は、新規図面データ入力受付部13により受け付けられた入力に係る新規図面データの画像Pについて、上記のような処理を行い、各カテゴリのスコアを出力する。検索部14は、例えば、新規図面データの画像Pの最も高いスコアのカテゴリについて、データベース11に記憶された既存図面データの当該カテゴリのスコアの高い順を類似順として出力する。
【0037】
選択入力受付部15は、検索部により検索された既存図面データを選択する入力を受け付ける。見積データ出力部16は、選択入力受付部15により受け付けられた入力により選択された既存図面データに関連付けられてデータベース11に記憶された見積データを出力する。
【0038】
類似判定モデル訓練部17は、新規図面データ入力受付部13により受け付けられた入力に係る新規図面データと、選択入力受付部15により受け付けられた入力により選択された既存図面データとを教師として、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnを訓練する。類似判定モデル訓練部17による類似判定モデルM1,M2,M3~Mnの訓練は、例えば、学習用画像としての新規図面データ入力受付部13により受け付けられた入力に係る新規図面データの画像と、選択入力受付部15により受け付けられた入力により選択された既存図面データのカテゴリを示すラベル情報とが機械学習の教師である以外は、検索部14での類似判定モデルM1,M2,M3~Mnの生成と同様に行われる。
【0039】
以下、本実施形態の板金加工見積作成支援装置による板金加工見積作成支援方法について説明する。
図4に示すように、板金加工見積作成支援装置1の属性データ入力受付部12が、新規図面データによる板金加工の属性に関する属性データの入力を受け付ける属性データ入力受付工程が実行される(S1)。
【0040】
図5に示すように、属性データ入力受付工程では、板金加工見積作成支援装置1を構成するパーソナルコンピュータ等の液晶ディスプレイの表示画面100に、属性項目入力受付枠101、属性内容入力受付枠102及び新規図面データ入力受付枠103が表示される。属性項目入力受付枠101は、上述したような材料サイズ及び材料等の板金加工の属性の項目が指定される。属性内容入力受付枠102は、属性項目入力受付枠101で指定された板金加工の属性の内容が指定される。表示画面100において、属性項目入力受付枠101及び属性内容入力受付枠102の削除及び追加が可能である。
図5の例では、属性データとして、材料サイズ:1524mm×3048mm及び材料:AL‐N2の入力が受け付けられている。新規図面データ入力受付枠103は、新規図面データ入力受付工程で新規図面データの入力に使用される枠である。
【0041】
図4に示すように、板金加工見積作成支援装置1の新規図面データ入力受付部13が、板金加工に関する新規図面データの入力を受け付ける新規図面データ入力受付工程が実行される(S2)。
図6に示すように、新規図面データ入力受付工程では、新規図面データのファイルを示す新規図面データウィンドウ104から、新規図面データ入力受付枠103へと、新規図面データのファイルがドラッグ・アンド・ドロップされることにより、新規図面データの入力が受け付けられる。なお、新規図面データの入力の受付は、新規図面データウィンドウ104に表示されたファイルを直接に開く等の新規図面データ入力受付枠103へのドラッグ・アンド・ドロップ以外の方法により実行されてもよい。
【0042】
図4に示すように、板金加工見積作成支援装置1の検索部14が、板金加工に関する既存図面データと、既存図面データによる板金加工の見積に関する見積データとが関連付けられて記憶されたデータベース11に記憶された既存図面データから、予め機械学習により生成された類似判定モデルM1,M2,M3~Mnにより、新規図面データ入力受付工程13で受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する検索工程が行われる(S3)。
【0043】
検索工程では、検索工程では、検索部14は、属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベース11に記憶された既存図面データから、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnにより、新規図面データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する。つまり、検索部14は、データベース11に記憶された全部の既存図面データを検索するのではなく、属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る属性データに対応した一部の既存図面データを検索する。
【0044】
検索工程では、検索部14は、属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベース11に記憶された既存図面データから、属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る属性データについて生成された類似判定モデルM1,M2,M3~Mnにより、新規図面データ入力受付部13に受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する。例えば、
図5の例のように、属性データとして材料サイズ:1524mm×3048mm及び材料:AL‐N2の入力が受け付けられている場合は、当該属性データについて生成された類似判定モデルM2により検索が実行される。
【0045】
検索部14は、属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る属性データについて生成された類似判定モデルM2により、新規図面データの画像Pについて上記のような処理を行い、各カテゴリのスコアを出力する。検索部14は、新規図面データの画像Pの最も高いスコアのカテゴリについて、属性データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベース11に記憶された既存図面データの当該カテゴリのスコアの高い順を類似順として出力する。
【0046】
図7に示すように、検索工程後に、表示画面100の新規図面データ表示枠105に、新規図面データの図面のサムネイルと新規図面データによる板金加工の属性に関する属性データとが表示される。また、表示画面100の検索結果表示枠106に、既存図面データの図面のサムネイルと、当該既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと、当該既存図面データに関連付けられて記憶された見積データとが類似順に表示される。
【0047】
図4に示すように、板金加工見積作成支援装置1の選択入力受付部15が、検索工程で検索された既存図面データを選択する入力を受け付ける選択入力受付工程が実行される(S4)。
図8に示すように、選択入力受付工程では、検索結果表示枠106に類似順に表示された既存図面データから、例えば、ユーザが最も類似すると考える既存図面データが選択される。
【0048】
図4に示すように、板金加工見積作成支援装置1の見積データ出力部16が、選択入力受付工程で受け付けられた入力により選択された既存図面データに関連付けられてデータベース11に記憶された見積データを出力する見積データ出力工程が実行される(S5)。
図9に示すように、見積データ出力工程では、新規図面データ表示枠105に表示された新規図面データの図面のサムネイルと新規図面データによる板金加工の属性に関する属性データと共に、見積データ出力枠107に、選択入力受付工程で受け付けられた入力により選択された既存図面データの図面のサムネイルと、当該既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと、当該既存図面データに関連付けられて記憶された見積データとが表示される。
【0049】
見積データ出力工程により出力された見積データは、例えば、板金加工見積作成支援装置1を構成するパーソナルコンピュータ等にインストールされた任意の見積作成プログラムにより、新規図面データによる板金加工の見積の作成に利用することが可能である。新規図面データによる板金加工の見積の作成後に、当該新規図面データは既存図面データとして、既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと、既存図面データと、見積データとが関連付けられてデータベース11に記憶される。
【0050】
図4に示すように、板金加工見積作成支援装置1の類似判定モデル訓練部が、新規図面データ入力受付工程で受け付けられた入力に係る新規図面データと、選択入力受付工程で受け付けられた入力により選択された既存図面データとを教師として、類似判定モデルを訓練する類似判定モデル訓練工程が実行される(S6)。
【0051】
本実施形態では、板金加工見積作成支援装置1において、データベース11には、板金加工に関する既存図面データと見積データとが関連付けられて記憶されている。新規図面データ入力受付部13により、板金加工に関する新規図面データの入力が受け付けられる。検索部14により、データベース11に記憶された既存図面データから、予め機械学習により生成された類似判定モデルM1,M2,M3~Mnによって新規図面データに類似する既存図面データが検索される。選択入力受付部15により、検索部14により検索された既存図面データを選択する入力が受け付けられる。見積データ出力部16により、選択された既存図面データに関連付けられてデータベース11に記憶された見積データが出力される。これにより、新規図面データの入力により新規図面データに類似する既存図面データが検索され、検索された既存図面データから選択された既存図面データに関連付けられた見積データが出力されるため、過去に行われた板金加工の見積データをより容易に参照することができ、板金加工の見積の作成に要する労力を低減することが可能となる。
【0052】
つまり、従来のように、新規の板金加工の製品製造の受注に応じて、過去に行われた板金加工の膨大なデータを参照しつつ、人間の記憶及び経験に頼って見積を作成するのでは、多大な労力が発生し、見積の金額にもばらつきが生じてしまう欠点がある。一方、本実施形態では、新規図面データの入力により新規図面データに類似する既存図面データが検索され、既存図面データに関連付けられた見積データが出力されるため、板金加工の見積の作成に要する労力が著しく低減される。また、ある程度の範囲の精度により、新規図面データに類似する既存図面データが検索されるため、見積の金額の精度を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、類似判定モデル訓練部17により、新規図面データ入力受付部13により受け付けられた入力に係る新規図面データと、選択入力受付部15により受け付けられた入力により選択された既存図面データとを教師として、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnが訓練されるため、訓練された類似判定モデルM1,M2,M3~Mnにより、新規図面データに類似する既存図面データが検索される精度を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、データベース11には、既存図面データによる板金加工の属性に関する属性データと既存図面データと見積データとが関連付けられて記憶されている。属性データ入力受付部12により、新規図面データによる板金加工の属性に関する属性データの入力が受け付けられる。検索部14は、属性データ入力受付部12により受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベース11に記憶された既存図面データから、類似判定モデルM1,M2,M3~Mnにより、新規図面データ入力受付部13により受け付けられた入力に係る新規図面データに類似する既存図面データを検索する。つまり、検索部14は、属性データにより限定された既存図面データから新規図面データに類似する既存図面データを検索する。このため、検索部14が既存図面データから新規図面データに類似する既存図面データを検索する労力を低減することができる。
【0055】
特に、検索部14が類似判定モデルM1,M2,M3~Mnにより新規図面データに類似する既存図面データを検索する場合には、検索部14は、物の形状に関しては類似判定が比較的に容易であるが、物のサイズ及び材料等については類似判定が難しい。そのため、属性データによりサイズ及び材料等を限定された既存図面データから新規図面データに類似する既存図面データを検索することにより、検索の精度を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、検索部14は、予め属性データごとに生成された複数の類似判定モデルM1,M2,M3~Mnを有する。検索部14により、属性データ入力受付部12により受け付けられた入力に係る属性データに関連付けられてデータベース11に記憶された既存図面データから、属性データ入力受付部12により受け付けられた入力に係る属性データについて生成された類似判定モデルM1,M2,M3~Mn、つまり属性データごとに特化した類似判定モデルM1,M2,M3~Mnによって新規図面データに類似する既存図面データが検索される。このため、多くの属性データについて一般的な類似判定モデルにより検索が行われる場合に比べて、検索部が既存図面データから新規図面データに類似する既存図面データを検索する精度を向上させることができる。
【0057】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1…板金加工見積作成支援装置、11…データベース、12…属性データ入力受付部、13…新規図面データ入力受付部、14…検索部、15…選択入力受付部、16…見積データ出力部、17…類似判定モデル訓練部、100…表示画面、101…属性項目入力受付枠、102…属性内容入力受付枠、103…新規図面データ入力受付枠、104…新規図面データウィンドウ、105…新規図面データ表示枠、106…検索結果表示枠、107…見積データ出力枠、M1,M2,M3,Mn…類似判定モデル、P…画像、A…領域、L1…入力層、L2…中間層、L3…出力層、C1,C2…カテゴリ。