(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】弁、流体制御弁、流体システムおよび建設機械
(51)【国際特許分類】
F16K 11/10 20060101AFI20240220BHJP
F16K 15/06 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F16K11/10 Z
F16K15/06
(21)【出願番号】P 2019141347
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】市橋 洋二
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-054881(JP,A)
【文献】特開2011-236937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0033313(US,A1)
【文献】特開昭47-003938(JP,A)
【文献】中国実用新案第207893177(CN,U)
【文献】特開平09-229011(JP,A)
【文献】実開平02-050574(JP,U)
【文献】特開2011-163459(JP,A)
【文献】特開平11-257303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00 - 11/22
F15B 21/14
F16K 1/00 - 1/54
F16K 11/00 - 11/24
F16K 15/00 - 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央孔および前記中央孔の軸線を中心線とする第1円錐面を有する第1弁体と、
前記中央孔の軸線を中心線とする第2円錐面を有し、前記中央孔に挿入され、前記中央孔の軸線に沿って移動する第2弁体と、
前記第1弁体を前記中央孔の軸線の一方向に弾性的に押し付ける第1弾性部材と、
前記第2弁体を前記中央孔の軸線の一方向に弾性的に押し付ける第2弾性部材と、を備え、
前記第1弁体の前記中央孔の内周面と前記第2弁体の外周面との間に、軸線方向に流体を通過可能とする流体通路が形成され、
前記第2弁体の外周面に、切欠きが形成され、
前記流体通路は、前記第2弁体の外周面において前記切欠きが形成された面と前記第1弁体の前記中央孔の内周面とによって区画されて
おり、
前記第1弁体は、前記中央孔を前記軸線方向の一方側の第1領域と前記軸線方向の他方側の第2領域とに区画する仕切りを備え、
前記第2弁体の軸体は、前記第2領域に配置されている弁。
【請求項2】
前記第1弁体は、前記第1円錐面よりも小さい外形の筒体を備える請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記中央孔は、第1入口部と、前記軸線方向において前記第1入口部に整列して位置し前記第1入口部よりも大きい第2入口部と、を有し、
前記第2弁体は、前記第2弁体よりも径が大きく前記第1入口部と略同じ外形の鍔を備える請求項1または2に記載の弁。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の弁及びバルブボディを備える流体制御弁。
【請求項5】
前記バルブボディは、第1通路、第2通路及び供給通路を有し、
前記第1弁体は、前記第1通路と前記供給通路とを遮断または接続し、
前記第2弁体は、前記第2通路と前記供給通路とを遮断または接続する請求項4に記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記弁は、前記軸線方向において前記供給通路を挟んで前記第1通路および前記第2通路が対向する位置に配置されている請求項5に記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記第1通路から流体が供給されたとき、前記第1弁体は前記供給通路から離れる方向に移動し、
前記第2通路から前記流体が供給されたとき、前記第2弁体は前記供給通路の内部に移動する請求項6に記載の流体制御弁。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか一項に記載の流体制御弁と、
複数の通路に連通し流体を供給する流体供給源と、
前記流体によって駆動される駆動体と、を備える流体システム。
【請求項9】
請求項8に記載の流体システムを備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁、流体制御弁、流体システムおよび建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械の一種として油圧ショベルが知られている。油圧ショベルは、油圧シリンダで動作するブーム、アームおよびバケット等のアタッチメントを備える。油圧ショベルは、アタッチメントを駆動させる油圧システムを備える。油圧システムは、油圧シリンダに対する作動油の供給・排出を制御する油圧制御弁を備える。油圧制御弁としては、複数の通路を有するバルブボディと、バルブボディに供給された作動油の逆流を防止するための弁体と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1では、バルブボディのメンテナンス性を向上させるために、複数の弁体をバルブボディの接続面上に個々に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の弁体が同一面上(バルブボディの接続面上)に個々に配置された場合、バルブボディの接続領域を広く確保する必要がある。そのため、バルブボディを小型化する上で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、バルブボディを小型化することができる弁、流体制御弁、流体システムおよび建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る弁は、中央孔および前記中央孔の軸線を中心線とする第1円錐面を有する第1弁体と、前記中央孔の軸線を中心線とする第2円錐面を有し、前記中央孔に挿入され、前記中央孔の軸線に沿って移動する第2弁体と、前記第1弁体を前記中央孔の軸線の一方向に弾性的に押し付ける第1弾性部材と、前記第2弁体を前記中央孔の軸線の一方向に弾性的に押し付ける第2弾性部材と、を備え、前記第1弁体の前記中央孔の内周面と前記第2弁体の外周面との間に、軸線方向に流体を通過可能とする流体通路が形成され、前記第2弁体の外周面に、切欠きが形成され、前記流体通路は、前記第2弁体の外周面において前記切欠きが形成された面と前記第1弁体の前記中央孔の内周面とによって区画されており、前記第1弁体は、前記中央孔を前記軸線方向の一方側の第1領域と前記軸線方向の他方側の第2領域とに区画する仕切りを備え、前記第2弁体の軸体は、前記第2領域に配置されている。
【0007】
この構成によれば、第1弁体と第2弁体とが同一軸上に配置されるため、複数の弁体が同一面上に個々に配置された場合と比較して、弁を小型化することができる。すなわち、バルブボディの接続領域を広く確保する必要がない。したがって、バルブボディを小型化することができる。加えて、第1弁体および第2弁体が別々に支持されるため、第1弁体および第2弁体のそれぞれを高精度で管理することができる。加えて、流体を通過可能とするためのギザギザ面を有する場合と比較して、複雑な加工が不要となり、低コスト化を図ることができる。
【0010】
(2)上記(1)に記載の弁では、前記第1弁体は、前記第1円錐面よりも小さい外形の筒体を備えてもよい。
【0011】
(3)上記(1)または(2)に記載の弁では、前記中央孔は、第1入口部と、前記軸線方向において前記第1入口部に整列して位置し前記第1入口部よりも大きい第2入口部と、を有し、前記第2弁体は、前記第2弁体よりも径が大きく前記第1入口部と略同じ外形の鍔を備えてもよい。
【0014】
(4)本発明の態様に係る流体制御弁は、上記(1)から(3)のいずれかに記載の弁及びバルブボディを備える。
【0015】
(5)上記(4)に記載の流体制御弁では、前記バルブボディは、第1通路、第2通路及び供給通路を有し、前記第1弁体は、前記第1通路と前記供給通路とを遮断または接続し、前記第2弁体は、前記第2通路と前記供給通路とを遮断または接続してもよい。
【0016】
(6)上記(5)に記載の流体制御弁では、前記弁は、前記軸線方向において前記供給通路を挟んで前記第1通路および前記第2通路が対向する位置に配置されていてもよい。
【0017】
(7)上記(6)に記載の流体制御弁では、前記第1通路から流体が供給されたとき、前記第1弁体は前記供給通路から離れる方向に移動し、前記第2通路から前記流体が供給されたとき、前記第2弁体は前記供給通路の内部に移動してもよい。
【0018】
(8)本発明の態様に係る流体システムは、上記(4)から(7)のいずれかに記載の流体制御弁と、複数の通路に連通し流体を供給する流体供給源と、前記流体によって駆動される駆動体と、を備える。
【0019】
(9)本発明の態様に係る建設機械は、上記(8)に記載の流体システムを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バルブボディを小型化することができる弁、流体制御弁、流体システムおよび建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】
図2のIII-III断面を含む、流体システムの模式図である。
【
図4】
図3の要部拡大図を含む、弁の模式図である。
【
図8】第1実施形態の弁の動作の一例の説明図である。
【
図9】第1実施形態の弁の動作の他の例の説明図である。
【
図10】第1実施形態の変形例の第2弁体の模式図である。
【
図12】第3実施形態の流体制御弁の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、建設機械として油圧システム(流体システム)を備えた油圧ショベルを例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0023】
[第1実施形態]
[建設機械]
図1は、第1実施形態の建設機械1の模式図である。
例えば、建設機械1は油圧ショベルである。建設機械1は、旋回体2および走行体3を備える。旋回体2は、走行体3の上に旋回可能に設けられている。旋回体2は、作動油(流体)を供給する油圧ポンプ12(流体供給源)を備える。
【0024】
旋回体2は、操作者が搭乗可能なキャブ5と、キャブ5に一端が揺動自在に連結されたブーム6と、ブーム6のキャブ5とは反対側の他端(先端)に揺動自在に一端が連結されたアーム7と、アーム7のブーム6とは反対側の他端(先端)に揺動自在に連結されたバケット8と、を備える。油圧ポンプ12は、キャブ5内に配置されている。油圧ポンプ12から供給される作動油によって、キャブ5、ブーム6、アーム7およびバケット8が駆動される。
【0025】
[流体システム]
図2は、第1実施形態の流体制御弁11の平面図である。
図3は、
図2のIII-III断面を含む、流体システム10の模式図である。
図3に示すように、流体システム10は、流体制御弁11と、油圧ポンプ12と、作動油によって駆動される油圧アクチュエータ13(駆動体)と、を備える。例えば、油圧アクチュエータ13は、油圧モータ、油圧シリンダ等である。
図3においては、油圧アクチュエータ13である油圧シリンダを示す。図中符号14は作動油を貯留するタンクを示す。
【0026】
[流体制御弁]
流体制御弁11は、油圧シリンダ13に対する作動油の供給・排出を制御する。流体制御弁11は、複数(例えば本実施形態では2つ)の弁20と、複数の通路31~37を有するバルブボディ30と、スプール40と、を備える。流体制御弁11は、スプール式の方向切換弁である。
【0027】
複数の通路31~37は、作動油が流れる流路(油路)である。複数の通路31~37は、スプール孔31、第1アクチュエータ通路32、第2アクチュエータ通路33、タンク通路34、第1通路35、第2通路36および供給通路37を含む。
【0028】
スプール孔31は、スプール40を挿し込み可能な孔である。スプール孔31は、弁20の軸線C1と実質的に直交する方向(
図3の左右方向、スプール孔31の開口方向)にバルブボディ30を貫通している。スプール40は、スプール孔31に着脱可能に挿入されている。スプール40は、スプール孔31の開口方向に延びている。スプール40は、スプール孔31の内周面に接触可能な複数のランド41を備える。スプール40は、スプール孔31の開口方向に移動することによって流路の開閉、絞り動作を行う。油圧シリンダに供給される作動油の流量は、スプール40の位置によって制御される。
【0029】
図中において、符号42はスプール40を所定位置で保持するためのコイルバネ(例えばスプール40を中立位置へ戻すためのリターンスプリング)、符号43はスプール40の一端側に設けられた第1パイロットポート、符号44はスプール40の他端側に設けられた第2パイロットポートをそれぞれ示す。
【0030】
第1アクチュエータ通路32は、弁20の一側方に配置されている。第1アクチュエータ通路32は、軸線C1と実質的に平行な方向(
図3の上下方向、スプール孔31の開口方向と直交する方向)に延びている。第1アクチュエータ通路32の一端(
図3の上端)は、油圧シリンダ13の第1ポート(例えばロッド側油室)に接続されている。第1アクチュエータ通路32の他端(
図3の下端)は、スプール孔31に接続されている。
【0031】
第2アクチュエータ通路33は、弁20の他側方に配置されている。すなわち、第2アクチュエータ通路33は、弁20を挟んで第1アクチュエータ通路32とは反対側に配置されている。第2アクチュエータ通路33は、第1アクチュエータ通路32と実質的に平行な方向(
図3の上下方向)に延びている。第2アクチュエータ通路33の一端(
図3の上端)は、油圧シリンダ13の第2ポート(例えばヘッド側油室)に接続されている。第2アクチュエータ通路33の他端(
図3の下端)は、スプール孔31に接続されている。
【0032】
タンク通路34は、スプール孔31から分岐している。タンク通路34は、第1アクチュエータ通路32の側方に位置し第1アクチュエータ通路32と実質的に平行な方向(
図3の上下方向)に延びる第1タンク路34aと、第2アクチュエータ通路33の側方に位置し第1タンク路34aと実質的に平行な方向(
図3の上下方向)に延びる第2タンク路34bと、スプール孔31の開口方向と実質的に平行な方向に延び第1タンク路34aの一端(
図3の下端)と第2タンク路34bの一端(
図3の下端)とを接続する第3タンク路34cと、を備える。第3タンク路34cは、スプール孔31を挟んで弁20とは反対側に配置されている。
【0033】
第1通路35は、弁20と重なる位置に配置されている。第1通路35は、スプール孔31を挟んで第3タンク路34cとは反対側に配置されている。第1通路35は、複数の流路をパラレル方式で接続するためのパラレル通路である。すなわち、第1通路35を通過した作動油は、不図示の複数のセクションに並列(同時)に供給される。
【0034】
第2通路36は、スプール孔31の近傍に配置されている。第2通路36は、第1通路35とスプール孔31との間に配置されている。第2通路36は、複数の流路をタンデム方式で接続するためのタンデム流路である。すなわち、第2通路36を通過した作動油は、不図示の複数のセクションに順に(作動流の流れ方向上流側から下流側に向かって)供給される。
【0035】
供給通路37は、第1通路35と第2通路36との間に配置されている。供給通路37は、断面視で逆U字状を有する。供給通路37の中途部は、第1通路35および第2通路36に接続されている。供給通路37の両端は、スプール孔31に接続されている。供給通路37は、第1通路35および第2通路36を橋渡すためのブリッジ流路である。
【0036】
[弁]
弁20は、スプール40の開口方向(
図3の左右方向)に並んで一対配置されている。一対の弁20は、バルブボディ30の壁部30aを挟んで隣り合う位置に配置されている。一対の弁20は、第1アクチュエータ通路32寄りに位置する第1弁20Aと、第2アクチュエータ通路33寄りに位置する第2弁20Bと、である。
【0037】
図中において、符号18は弁20の端部を覆うプラグ、符号19はプラグ18の溝内に設けられたOリングをそれぞれ示す。以下、一対の弁20のうち第1弁20Aについて説明する。第2弁20Bについては第1弁20Aと同様の構成を有するため詳細説明を省略する。以下、第1弁20Aを単に「弁20」ともいう。
【0038】
図4に示すように、弁20は、第1弁体21、第2弁体22、流体通路23および弾性部材24,25を備える。第1弁体21および第2弁体22は、共通の軸線C1を有する。すなわち、第1弁体21および第2弁体22は、互いに同軸に配置されている。以下、軸線C1と平行な方向を「軸線方向」、軸線方向と直交する方向を「径方向」ともいう。弁20は、軸線方向において供給通路37を挟んで第1通路35および第2通路36が対向する位置に配置されている。
【0039】
[第1弁体]
第1弁体21は、第1通路35と供給通路37とを遮断または接続する。
図4においては、第1弁体21は第1通路35と供給通路37とを遮断している。第1弁体21は、中央孔50および中央孔50の軸線C1を中心線とする第1円錐面52を有する。第1弁体21は、中央孔50を有する弁本体51を備える。第1円錐面52は、弁本体51の外周に位置する。弁本体51は、第1円錐面52に対し軸線方向でずれた位置に筒体53を有する。
【0040】
中央孔50は、軸線方向において弁本体51の全体にわたって開口している。中央孔50は、第2弁体22の軸体60が入る第1入口部50aと、軸線方向において第1入口部50aに整列して位置し第1入口部50aよりも大きい第2入口部50bと、軸線方向において第2入口部50bに整列して位置し第2入口部50bよりも大きい第3入口部50cと、を有する。第2弁体22の軸体60は、第1入口部50a、第2入口部50b、第3入口部50cの順に入り込む。第3入口部50cは、弾性部材24,25(コイルバネ)が配置されるバネ収容部としても機能する。
【0041】
第1円錐面52は、弁本体51における第2入口部50bの外周に配置されている。第1円錐面52は、弁本体51の外周全体にわたって設けられている。第1円錐面52は、軸線方向からみて環状を有する。第1円錐面52は、第1通路35側から供給通路37側に向かうに従って徐々に径方向内側に小さくなる傾斜面を有する。
【0042】
筒体53は、弁本体51の第1入口部50aを有する。筒体53は、第1円錐面52よりも供給通路37の近くに配置されている。筒体53は、第1円錐面52よりも小さい外形の筒状である。筒体53は、第1円錐面52の最小外径(供給通路37側の端部の外径)よりも小さい外径を有する。
【0043】
[第2弁体]
第2弁体22は、第2通路36と供給通路37とを遮断または接続する。
図4においては、第2弁体22は第2通路36と供給通路37とを遮断している。第2弁体22は、中央孔50の軸線Cを中心線とする第2円錐面61を有する。第2弁体22は、中央孔50に挿入され、中央孔50の軸線Cに沿って移動する。第2弁体22は、中央孔50の軸線Cに沿って移動する軸体60を備える。軸体60は、軸体60よりも径が大きい鍔62を有する。
【0044】
第2円錐面61は、軸体60において第2通路36側の端部の外周に配置されている。第2円錐面61は、軸体60の外周全体にわたって設けられている。第2円錐面61は、軸線方向からみて環状を有する。第2円錐面61は、第2通路36側から供給通路37側に向かうに従って徐々に径方向外側に大きくなる傾斜面を有する。
【0045】
鍔62は、軸体60において第2円錐面61とは反対側の端部に設けられている。鍔62は、軸体60の外周全体にわたって設けられている。鍔62は、軸線方向から見て環状を有する。鍔62は、軸線方向から見て第1入口部50aと略同じ外形を有する。ここで、「略同じ」とは、弁20の設計誤差(寸法誤差)の許容範囲内において、鍔62の外形が第1入口部50aと実質的に同じであることを意味する。なお、「略同じ」には、鍔62の外形が第1入口部50aと完全に同じである場合が含まれる。
【0046】
実施形態において、鍔62の外径D1(
図7参照)は第1入口部50aの内径D2(
図6参照)と略同じである(D1≒D2)。ここで、鍔62の外径D1は、鍔62において第2円錐面61側の端部の外径を意味する。第1入口部50aの内径D2は、第1入口部50aにおいて第2入口部50bと隣接する部分の内径を意味する。
【0047】
[流体通路]
図5に示すように、流体通路23は、中央孔50の内周と軸体60の外周との間に設けられている。流体通路23は、軸線方向に作動油を通過可能とする流路である。軸体60は、軸体60の外周の一部が切り欠かれた切欠き60aを有する。流体通路23は、軸体60の切欠き60a(Dカット面)と中央孔50の内周(切欠き60aと対向する部分)とによって区画されている。
【0048】
[弾性部材]
図4に示すように、弾性部材24,25は、複数設けられている。例えば、弾性部材24,25は、コイルバネである。複数の弾性部材24,25は、第1弁体21を弾性的に支持する第1弾性部材24と、第2弁体22を弾性的に支持する第2弾性部材25と、である。第1弾性部材24および第2弾性部材25は、第3入口部50cに配置されている。第1弾性部材24および第2弾性部材25は、軸線方向に弾性変形可能である。第1弾性部材24および第2弾性部材25は、軸線方向の一方のみから押される位置に配置されている。
【0049】
第1弾性部材24は、第1弁体21の弁本体51とプラグ18との間に配置されている。第1弾性部材24は、第1弁体21が第1通路35と供給通路37とを遮断するように第1弁体21を供給通路37へ向けて常時押している。以下、第1弾性部材24が第1弁体21を供給通路37へ向けて押す力を「第1バネ力」ともいう。
【0050】
第2弾性部材25は、第2弁体22の鍔62とプラグ18との間に配置されている。第2弾性部材25は、軸線方向から見て第1弾性部材24よりも小さい外形を有する。第2弾性部材25は、第1弾性部材24よりも径方向内側に配置されている。第2弾性部材25は、第2弁体22が第2通路36と供給通路37とを遮断するように第2弁体22を第2通路36に向けて常時押している。以下、第2弾性部材25が第2弁体22を第2通路36に向けて押す力を「第2バネ力」ともいう。
【0051】
[弁の動作]
図8は、第1実施形態の弁20の動作の一例の説明図である。
図8は、第2通路36から作動油が供給されたときを示す。
図8においては、第2弁体22が第2通路36と供給通路37と接続している状態を実線で示し、第2弁体22が第2通路36と供給通路37とを遮断している状態を二点鎖線で示している。
【0052】
図8に示すように、第2通路36から作動油が供給されると、第2弁体22は軸線方向において第2円錐面61の側(
図8の下方側)から押される。このとき、第2弁体22が軸線方向において第1弁体21とは反対側から第2バネ力よりも強く押されると、第2弁体22は第2弾性部材25に抗して
図8の上方側に変位する。すなわち、第2通路36から作動油が供給されたとき、第2弁体22は供給通路37の内部に移動する。これにより、第2通路36から供給通路37に向けて作動油が流れる(
図8の矢印K1方向)。
【0053】
図9は、第1実施形態の弁20の動作の他の例の説明図である。
図9は、第1通路35から作動油が供給されたときを示す。
図9においては、第1弁体21が第1通路35と供給通路37とを接続している状態を実線で示し、第1弁体21が第1通路35と供給通路37とを遮断している状態を二点鎖線で示している。
【0054】
図9に示すように、第1通路35から作動油が供給されると、第1弁体21は軸線方向において第1円錐面52の側(
図9の下方側)から押される。このとき、供給通路37を流れる作動油の一部は、流体通路23(
図5参照)を通り第1弁体21の裏側(弁本体51の上端)に作用し(
図9の矢印K2方向)、第1弁体21を所定の圧力(以下「ブリッジ圧」ともいう。)で
図9の下方へ押す。第1弁体21が軸線方向において第1円錐面52の側からブリッジ圧よりも強く押されると、第1弁体21は第1弾性部材24に抗して
図9の上方側に変位する。すなわち、第1通路35から作動油が供給されたとき、第1弁体21は供給通路37から離れる方向に移動する。これにより、第1通路35から供給通路37に向けて作動油が流れる(
図9の矢印K3方向)。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る弁20は、中央孔50および中央孔50の軸線C1を中心線とする第1円錐面52を有する第1弁体21と、中央孔50の軸線C1を中心線とする第2円錐面61を有し、中央孔50に挿入され、中央孔50の軸線C1に沿って移動し、中央孔50の内周面との間で作動油を通過させる第2弁体22と、第1弁体21を中央孔50の軸線C1の一方向に弾性的に押し付ける第1弾性部材24と、第2弁体22を中央孔50の軸線C1の一方向に弾性的に押し付ける第2弾性部材25と、を備える。
【0056】
この構成によれば、第1弁体21と第2弁体22とが同一軸上に配置されるため、複数の弁体が同一面上に個々に配置された場合と比較して、弁20を小型化することができる。すなわち、バルブボディ30の接続領域を広く確保する必要がない。したがって、バルブボディ30を小型化することができる。加えて、第1弁体21および第2弁体22が別々に支持されるため、第1弁体21および第2弁体22のそれぞれを高精度で管理することができる。加えて、作動油を通過可能とするためのギザギザ面を有する場合と比較して、複雑な加工が不要となり、低コスト化を図ることができる。具体的に、第1円錐面52と筒体53とが軸線方向でずれた位置に配置されていることで、第1円錐面52が筒体53を兼ねる場合(例えば、作動油を通過可能とするために第1円錐面52にギザギザ面を設けた場合)と比較して、複雑な加工が不要となり、低コスト化を図ることができる。
【0057】
本実施形態では、第2弁体22の外周面に切欠き60aを有する。
【0058】
この構成によれば、切欠き60aを通じて作動油を通過可能となるため、複雑な流路を設ける場合と比較して簡素化することができる。
【0059】
本実施形態では、第1弁体21は、第1円錐面52よりも小さい外形の筒体53を備える。
【0060】
この構成によれば、筒体53の外周に沿って作動油をスムーズに通過可能とすることができる。
【0061】
本実施形態では、中央孔50は、第1入口部50aと、軸線方向において第1入口部50aに整列して位置し第1入口部50aよりも大きい第2入口部50bと、を有する。第2弁体22は、第2弁体22よりも径が大きく第1入口部50aと略同じ外形の鍔62を備える。
【0062】
この構成によれば、第1入口部50aを通じて鍔62を第2入口部50bに配置した場合、鍔62の外形が第1入口部50aと合わない限り鍔62は第2入口部50b内に留まる。すなわち、鍔62は、第2入口部50bに挿入しやすく第2入口部50bから抜けにくくなる。そのため、第1弁体21と第2弁体22とは抜けにくい状態で保持される。したがって、バルブボディ30に対する弁20の組付け・取り外しが容易となり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態に係る流体制御弁11は、上記の弁20及びバルブボディ30と、を備える。
【0064】
この構成によれば、バルブボディ30を小型化することができる流体制御弁11を提供することができる。
【0065】
本実施形態では、バルブボディ30は、第1通路35、第2通路36および供給通路37を含む。第1弁体21は、第1通路35と供給通路37とを遮断または接続する。第2弁体22は、第2通路36と供給通路37とを遮断または接続する。
【0066】
この構成によれば、第1通路35、第2通路36および供給通路37を含むバルブボディ30を小型化することができる。
【0067】
本実施形態では、弁20は、軸線方向において供給通路37を挟んで第1通路35および第2通路36が対向する位置に配置されている。
【0068】
この構成によれば、供給通路37を挟んだ第1通路35および第2通路36の対向配置と相俟ってバルブボディ30の大型化をより一層抑制することができる。
【0069】
本実施形態では、第1通路35から作動油が供給されたとき、第1弁体21は供給通路37から離れる方向に移動する。第2通路36から作動油が供給されたとき、第2弁体22は供給通路37の内部に移動する。
【0070】
この構成によれば、供給通路37を挟んだ第1通路35および第2通路36の対向配置において第1弁体21および第2弁体22のそれぞれの動作をスムーズに行うことができる。
【0071】
本実施形態に係る流体システム10は、上記の流体制御弁11と、複数の通路31~37に連通し作動油を供給する流体供給源12と、作動油によって駆動される駆動体13と、を備える。
【0072】
この構成によれば、バルブボディ30を小型化することができる流体システム10を提供することができる。
【0073】
本実施形態に係る建設機械1は、上記の流体システム10を備える。
【0074】
この構成によれば、バルブボディ30を小型化することができる建設機械1を提供することができる。
【0075】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0076】
例えば、上述した実施形態では、建設機械1は油圧ショベルである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、油圧ショベル以外の建設機械に本発明を適用してもよい。
【0077】
上述した実施形態では、鍔62が軸線方向に一様に延びている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図10に示すように、鍔162は、テーパ形状を有してもよい。鍔162は、第2円錐面61とは反対側に向かうに従って徐々に径方向内側に小さくなる傾斜面を有する。
図10において、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0078】
この構成によれば、鍔が軸線方向に一様に延びている場合と比較して、第1入口部50aを通じて鍔162を第2入口部50bに配置しやすい。そのため、第1弁体21と第2弁体22とを取り付け易くかつ抜けにくくすることができる。したがって、バルブボディ30に対する弁20の組付け・取り外しがより一層容易となり、メンテナンス性をより一層向上させることができる。
【0079】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態の弁の模式図である。
上述した実施形態では、中央孔50が軸線方向において弁本体51の全体にわたって開口している例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図11に示すように、第1弁体221は、中央孔50を軸線方向の一方側の第1領域255と軸線方向の他方側の第2領域256とに区画する仕切り257を備えてもよい。軸体60は、第2領域256に配置されている。
図11において、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0080】
仕切り257は、第2入口部50bと第3入口部50cとの間に配置されている。仕切り257は、軸線方向から見て環状を有する。第1領域255は、軸線方向において仕切り257を挟んで第2弁体22とは反対側(
図11の上側)に位置する。第2領域256は、軸線方向において仕切り257を挟んで第1領域255とは反対側(
図11の下側)に位置する。
【0081】
第1弾性部材24および第2弾性部材25は、軸線方向において異なる位置に配置されている。第1弾性部材24は、第1弁体221の仕切り257とプラグ18との間に配置されている。第2弾性部材25は、第2弁体22の鍔62と第1弁体221の仕切り257との間に配置されている。
【0082】
本実施形態では、第1弁体221は、中央孔50を軸線方向の一方側の第1領域255と軸線方向の他方側の第2領域256とに区画する仕切り257を備える。軸体60は、第2領域256に配置されている。
【0083】
この構成によれば、中央孔50に対する軸体60の軸線方向への移動を仕切り257によって規制することができる。
【0084】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態の流体制御弁311の平面図である。
図13は、
図12のXIII-XIII断面図である。
上述した実施形態では、流体制御弁11が複数の弁20と、複数の通路31~37を有するバルブボディ30と、スプール40と、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図13に示すように、流体制御弁311は、単一の弁20と、複数の通路335~337を有するバルブボディ330と、を備えてもよい。本実施形態の流体制御弁311は、スプール40を有しない。
図12、
図13において、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0085】
複数の通路335~337は、第1通路335、第2通路336および供給通路337を含む。
第1通路335は、弁20の一側方(
図13の右方)に配置されている。第1通路335は、弁20の軸線C1と実質的に直交する方向(
図13の左右方向)に延びている。
第2通路336は、弁20の一側方に配置されている。第2通路336は、第1通路335と実質的に平行な方向に延びている。第2通路336は、軸線方向において第1通路335とは反対側(
図13の下側)に配置されている。
供給通路337は、弁20の他側方(
図13の左方)に配置されている。供給通路337は、第1通路335と実質的に平行な方向に延びている。
【0086】
弁20は、軸線方向において供給通路337を挟んで第1通路335および第2通路336が対向する位置に配置されている。
第1弁体21は、第1通路335と供給通路337とを遮断または接続する。
図13においては、第1弁体21は第1通路335と供給通路337とを遮断している。第1弁体21は、第1通路335から作動油が供給されたとき、供給通路337から離れる方向に移動する。
第2弁体22は、第2通路336と供給通路337とを遮断または接続する。
図13においては、第2弁体22は第2通路336と供給通路337とを遮断している。第2弁体22は、第2通路336から作動油が供給されたとき、供給通路337の内部に移動する。
【0087】
本実施形態では、弁20は1つのみ設けられている。バルブボディ330はスプール孔を有しない。
【0088】
この構成によれば、弁が複数設けられ、バルブボディがスプール孔を有する場合と比較して、部品点数を削減しつつバルブボディ330を簡素化できるため、低コスト化を図ることができる。
【0089】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0090】
1…建設機械
10…流体システム
11…流体制御弁
12…油圧ポンプ(流体供給源)
13…油圧アクチュエータ(駆動体)
20…弁
20A…第1弁(弁)
20B…第2弁(弁)
21…第1弁体
22…第2弁体
24…第1弾性部材
25…第2弾性部材
30…バルブボディ
35…第1通路
36…第2通路
37…供給通路
50…中央孔
50a…第1入口部
50b…第2入口部
51…弁本体
52…第1円錐面
53…筒体
60…軸体
60a…切欠き
61…第2円錐面
62…鍔
162…鍔
221…第1弁体
255…第1領域
256…第2領域
257…仕切り
311…流体制御弁
330…バルブボディ
335…第1通路
336…第2通路
337…供給通路
C1…軸線