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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】組電池用断熱シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20240220BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240220BHJP
   H01M 10/623 20140101ALI20240220BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/625
H01M10/623
F16L59/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019170437
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021048069
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直己
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159838(WO,A1)
【文献】特開2018-204708(JP,A)
【文献】特開平03-033073(JP,A)
【文献】特開2019-083150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/658
H01M 10/625
H01M 10/623
H01M 50/20
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池における、前記電池セル間に介在される組電池用断熱シートであって、
シリカナノ粒子からなる第1断熱材と、シリカ成分を含み、湾曲面を有する板形状粒子(ただし、前記板形状粒子は、多孔質板状フィラーを除く。)からなる第2断熱材と、を含む組電池用断熱シート。
【請求項2】
前記第2断熱材は、面方向に配向している、請求項1に記載の組電池用断熱シート。
【請求項3】
前記第1断熱材の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して、10質量%以上60質量%以下である、請求項1又は2に記載の組電池用断熱シート。
【請求項4】
前記第1断熱材は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項5】
前記板形状粒子は、無機バルーンの破片である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項6】
前記無機バルーンは、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、パーライトバルーン及びガラスバルーンから選択された少なくとも1種の無機バルーンである、請求項5に記載の組電池用断熱シート。
【請求項7】
前記第2断熱材は、平均粒子長が0.1μm以上100μm以下である板形状粒子である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項8】
前記第2断熱材の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して、10質量%以上60質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項9】
金属酸化物からなる第3断熱材をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項10】
前記金属酸化物は、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子である、請求項9に記載の組電池用断熱シート。
【請求項11】
前記金属酸化物は、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下である、請求項9又は10に記載の組電池用断熱シート。
【請求項12】
前記第3断熱材の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して、5質量%以上40質量%以下である、請求項9~11のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項13】
無機繊維、バインダ及び耐熱樹脂から選択された少なくとも1種からなる結合材を含み、
前記結合材の含有量は断熱シート全質量に対して10質量%以上60質量%以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【請求項14】
複数の電池セルが、請求項1~13のいずれか1項に記載の組電池用断熱シートを介して配置され、該複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池の電池セル間に介在させる組電池用断熱シート、及び組電池用断熱シートを電池セル間に介在させた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱体から他の物体への熱伝達を抑制するために、発熱体に近接させ、又は少なくとも一部を発熱体に接触させて用いる組電池用断熱シートが用いられている。
【0003】
また、近年では、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池の需要が増加しており、携帯電話、パソコン、小型電子機器の小容量の二次電池だけでなく、自動車、バックアップ電源等の大容量の二次電池にも用いられている。特に、自動車の分野においては、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0004】
しかし、リチウムイオン二次電池は、充放電時に化学反応を起因とする熱が発生することがあり、これにより、電池の不具合等が発生する。例えば、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合、熱暴走を起こした電池セルからの熱が、隣接する他の電池セルに伝播することで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0005】
上記のような組電池の分野において、熱暴走を起こした電池セルから隣接する電池セルへの熱の伝播を抑制し、熱暴走の連鎖による電池の類焼及び爆発等の不具合を防ぐために、電池セル間に介在させる種々の断熱材が提案されている。例えば、特許文献1では、熱伝導率が低く(0.02W/mK)、優れた素材であるシリカエアロゲルを用いた断熱材の発明が提案されている。シリカエアロゲルのみを用いた断熱材では、2次粒子同士の結合力が小さく、極めて脆弱であるため、外部から応力が加わると、シリカエアロゲルが破壊され、特性が劣化する。このようなシリカエアロゲルの欠点を補うため、特許文献1には、繊維シートとシリカエアロゲルを含む複合層を有し、前記繊維シートは、折り返しされ、積層されている断熱材が記載されている。上記断熱材を用いた電池ユニットは、電池セルの膨張、収縮が繰り返され、断熱材に対して圧縮応力が加わった場合でも、繊維シートが応力を吸収できる。その結果、シリカエアロゲルの破壊を抑制することができ、シリカエアロゲルが有する断熱特性の低下を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-204708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記記載された断熱材を用いた場合であっても、外部から力が加わると、多孔体である脆弱なシリカエアロゲルの層が破壊し、断熱性が低下することがある。特に細かな振動の加わる自動車などの用途では、共振などが発生し、脆弱なシリカエアロゲルが少しずつ微細化して落下し、上部の断熱性が不十分になることがある。さらに、シリカエアロゲルの落下により、長期間における断熱シートとしての形状を保持できない。
【0008】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、形状保持性が良好であるとともに、振動や圧力が加えられた場合であっても優れた断熱性を維持することができる組電池用断熱シート、及び組電池用断熱シートを電池セル間に介在させた組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、本発明に係る下記(1)の組電池用断熱シートにより達成される。
(1)複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池における、前記電池セル間に介在される組電池用断熱シートであって、
シリカナノ粒子からなる第1断熱材と、シリカ成分を含み、湾曲面を有する板形状粒子からなる第2断熱材と、を含む組電池用断熱シート。
【0010】
また、本発明の組電池用断熱シートは、下記(2)~(13)であることが好ましい。
(2)前記第2断熱材は、面方向に配向している、(1)に記載の組電池用断熱シート。
【0011】
(3)前記第1断熱材の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して、10質量%以上60質量%以下である、(1)又は(2)に記載の組電池用断熱シート。
【0012】
(4)前前記第1断熱材は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である、(1)~(3)に記載の組電池用断熱シート。
【0013】
(5)前記板形状粒子は、無機バルーンの破片である、(1)~(4)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【0014】
(6)前記無機バルーンは、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、パーライトバルーン及びガラスバルーンから選択された少なくとも1種の無機バルーンである、(5)に記載の組電池用断熱シート。
【0015】
(7)前記第2断熱材は、平均粒子長が0.1μm以上100μm以下である板形状粒子である、(1)~(6)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【0016】
(8)前記第2断熱材の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して、10質量%以上60質量%以下である、(1)~(7)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【0017】
(9)金属酸化物からなる第3断熱材をさらに含む、(1)~(8)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【0018】
(10)前記金属酸化物は、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子である、(9)に記載の組電池用断熱シート。
【0019】
(11)前記金属酸化物は、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下である、(9)又は(10)に記載の組電池用断熱シート。
【0020】
(12)前記第3断熱材の含有量は、組電池用断熱シート全質量に対して、5質量%以上40質量%以下である、(9)~(11)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【0021】
(13) 無機繊維、バインダ及び耐熱樹脂から選択された少なくとも1種からなる結合材を含み、
前記結合材の含有量は組電池用断熱シート全質量に対して10質量%以上60質量%以下である、(1)~(12)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シート。
【0022】
上記の目的は、本発明に係る下記(14)の組電池により達成される。
(14) 複数の電池セルが、(1)~(13)のいずれか1項に記載の組電池用断熱シートを介して配置され、該複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池。
【発明の効果】
【0023】
本発明の組電池用断熱シートによれば、シリカナノ粒子からなる第1断熱材と、シリカ成分を含み、湾曲面を有する板形状粒子からなる第2断熱材と、を含んでいる。シリカナノ粒子は粒子が細かいため、かさ密度が低く、熱伝導率が低いという特徴を有している。また、本発明の組電池用断熱シートは、シリカ成分を含み、湾曲面を有する板形状粒子からなる第2断熱材が外圧を受け止め補強する構成となっている。このため、形状保持性が良好であるとともに、電池の膨れ等により圧縮されても、優れた断熱性を維持することができる組電池用断熱シート、及び組電池用断熱シートを電池セル間に介在させた組電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る組電池用断熱シートにおいて、熱の伝導状態を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る組電池用断熱シートの一部を拡大して模式的に示した斜視図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係る組電池用断熱シートのSEM観察結果を示す図面代用写真である。
図4図4は、図3における第2断熱材をより明確に示した模式図である
図5図5は、図1図4に示す組電池用断熱シートを用いた組電池の実施形態を模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の第2の実施形態に係る組電池用断熱シートの構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願発明者らは、組電池用断熱シートの形状保持性が良好であるとともに、圧力が加えられた場合であっても優れた断熱性を維持することができる組電池用断熱シート(以後「断熱シート」とも記載する)を提供するため、鋭意検討を行った。その結果、断熱シート中に、シリカナノ粒子からなる第1断熱材と、シリカ成分を含み、湾曲面を有する板形状粒子からなる第2断熱材と、を含むことにより、優れた断熱シートの形状保持性及び断熱性を得ることができることを見出した。
【0026】
断熱シート中に第1断熱材として含まれるシリカナノ粒子は、微粒子であり接点の数が多くなるため、広い温度領域において伝導伝熱を抑制する優れた断熱性を有する成分である。
【0027】
また、本願発明者らは、断熱シートに平均粒子径の小さなシリカナノ粒子を使用すると、この電池の膨れなどによって断熱シートが圧縮され、密度が上がった場合であっても、断熱シートの伝導伝熱の上昇を抑制することができることを見出した。
これは、シリカナノ粒子は絶縁体であるため、静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低くクッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。すなわち、断熱シートに、平均粒子径が1nm以上100nm以下であるシリカナノ粒子が含まれていると、圧縮応力が印加されても、シリカナノ粒子間の空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、断熱シートの断熱性を維持することができる。
【0028】
さらに、本願発明者らは、断熱シートに含まれる空隙部の大きさが、断熱シートの断熱性に影響を及ぼすことを見出した。すなわち、粒子間に形成される空隙部が、例えば数100nm以上であると、空隙部で対流、空気の流通が生じやすく、断熱シートの断熱性が低下するおそれがある。
しかし、第1断熱材として、粒子径の小さなシリカナノ粒子を用いた断熱シートは、粒子間の空隙部が、例えば数10nmと小さくなり、空隙部の空気の移動は起こりにくく、対流伝熱の発生を抑制することができ、断熱性をより一層高めることができると考えられる。
なお、本発明においては、シリカナノ粒子により、細かな空隙を多く形成すること、粒子間の接点の数を増やすことが重要であるため、シリカナノ粒子は、一次粒子でも、凝集した二次粒子で含有していてもよい。
第1断熱材(シリカナノ粒子)のみからなる断熱材を用いた断熱シートは、粒子間の接点が弱いため、シートとしての形状保持性が十分に得られないことがあるが、本発明においては、断熱シートが湾曲面を有する板形状粒子からなる第2断熱材を含んでいるため、優れた断熱シートの形状保持性を得ることができる。
【0029】
また、本発明においては、第2断熱材として湾曲面を有する板形状粒子を用いるため、複数の板形状粒子が重なった場合であっても、板形状粒子同士は、適度なドーム状の空隙部を形成しながら、点接触又は互いに近接しあって断熱材シート内部に分散している。このため、板形状粒子が、シリカナノ粒子を上記ドーム状の空隙部に保持し、振動などで落下しないよう、断熱シート全体の形状を保持する効果を有している。
さらに上記空隙部に、シリカナノ粒子が充填され、空気の流れを遮断し、対流伝熱を抑制し、優れた断熱性を得ることができる。
なお仮に、第2断熱材が、単なる平面状の板形状粒子である場合には、断熱シート中で密着し合って熱を伝えやすくなるうえに、シリカナノ粒子を保持する空隙が形成されにくいため保持力が低下し、振動などでシリカナノ粒子が脱落しやすくなる。本発明の断熱シートでは、第2断熱材が湾曲面を有しているため、形状が保持されるとともに、断熱性能も得られる。
【0030】
さらにまた、本発明においては、電池セルが熱膨張し、断熱シートに対して圧力が加えられた場合であっても、第1断熱材(シリカナノ粒子)が充填された上記ドーム状の空隙部を有する第2断熱材が撓みながら圧力に対抗するため、断熱効果を維持する第1断熱材(シリカナノ粒子)の脱落を防止することができる。
【0031】
また、第2断熱材はシリカ成分を有している。シリカを構成するシリコンは4価であり、2価の酸素と結びついて不規則な網目構造をとることができると考えられている。このため、熔融すると粘性流体となり、媒体流動層などの方法で容易に無機中空粒子(無機バルーン)が得られやすく、これを原料にして、シリカ成分を含み、湾曲した板形状粒子を容易に得ることができる。
【0032】
<組電池用断熱シートの基本構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る組電池用断熱シートにおいて、熱の伝導状態を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る組電池用断熱シートの一部を拡大して模式的に示した斜視図である。また、図3は、第1の実施形態に係る組電池用断熱シートのSEM観察結果を示す図面代用写真である。図4は、図3における第2断熱材をより明確に示した模式図である。さらに、図5は、図1図4に示す組電池用断熱シートを用いた組電池の実施形態を模式的に示す断面図である。
【0033】
図1図4に示すように、断熱シート10には、シリカナノ粒子からなる第1断熱材21と、シリカ成分を含み、湾曲面を有する板形状粒子からなる第2断熱材22と、が含まれている。図3においては、第2断熱材22を太枠で示している。なお、第1断熱材21としては、平均粒子径が1nm以上100nm以下であるシリカナノ粒子を用いている。また、第2断熱材22は、平均粒子径が1~100μmである無機バルーンに圧力をかけて潰した破片であり、平均粒子長が0.1~100μmの湾曲面を有する板形状粒子である。なお、第2断熱材の外側の湾曲面の曲率半径は、使用した無機バルーンの平均粒子径の1/2に相当すると考えられる。曲率半径の測定方法については後述する。
【0034】
この組電池用断熱シート10の具体的な使用形態としては、図5に示すように、複数の電池セル20が、組電池用断熱シート10を介して配置され、複数の電池セル20同士が直列又は並列に接続された状態(接続された状態は図示を省略)で、電池ケース30に格納されて組電池100が構成される。なお、電池セル20は、例えば、リチウムイオン二次電池が好適に用いられるが、特にこれに限定されず、その他の二次電池にも適用され得る。
【0035】
以下に示す説明では、断熱シート10の一方の面10a側に発熱した電池セル20が存在している場合を想定している。このように構成された断熱シートにおいて、電池セル20が発熱すると、断熱シート10の一方の面10a側から入射した熱の一部は、矢印15aで示すように、互いに接触しているか、又は結合剤等を介して隣り合う第1断熱材21を媒介して、断熱シート10の他方の面10bに向かって伝導(固体伝導)される。このとき、第1断熱材21として、断熱性を有するシリカナノ粒子を用いており、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。したがって、断熱シート10の他方の面10bに近づくにつれて、伝熱量が低減される。
【0036】
また、電池セル20の発熱により発生した熱の一部は、矢印15cに示すように、第1断熱材21及び第2断熱材22を媒介して伝導されることがある。本実施形態においては、第2断熱材22として、シリカ成分を含んだ無機バルーンの破片を用いており、面方向の強度をより強くし、形状保持性を高めるとともに、第1断熱材21と同様に断熱性を有しているため、厚み方向には熱を伝えにくくなる。したがって、断熱シート10の他方の面10bに近づくに従って、伝熱量が低減される。また、第2断熱材22は湾曲面を有する板形状粒子からなるため、第2断熱材22同士が重なった場合でも、適度な空隙部が形成され、断熱性の高い第1断熱材を空隙部に保持し、熱の伝導を抑制することができる。
【0037】
さらにまた、本実施形態においては、断熱シート10の両側に配置された電池セル20が熱膨張し、断熱シート10に対して大きな圧縮応力が加わった場合に、第1断熱材(シリカナノ粒子)が充填された上記ドーム状の空隙部を有する第2断熱材が撓みながら圧力に対抗するとともに、断熱効果が大きい第1断熱材には大きな力が加わりにくいため、シリカナノ粒子の脱落を防止することができる。
【0038】
以上より、本発明によれば、ある電池セル20に熱暴走が生じた場合であっても、隣接する他の電池セル20へ熱の伝播を効果的に抑制することができるため、他の電池セル20の熱暴走が引き起こされるのを抑制することができる。
【0039】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る組電池用断熱シートの構成を模式的に示す平面図である。図6に示す第2の実施形態において、図1図5に示す第1の実施形態と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。断熱シート40には、シリカナノ粒子からなる第1断熱材21、及びシリカ成分を含み、かつ、湾曲面を有する板形状粒子からなる第2断熱材22の他に、金属酸化物からなる第3断熱材23が含まれている。
【0040】
このように構成された第2の実施形態においては、金属酸化物からなる第3断熱材23として、チタニアを用いている。金属酸化物は、屈折率が高く、光を乱反射する成分である。電池セル20が発熱し、断熱シート40の一方の面40a側から熱の一部が放射により第3断熱材23に到達すると、矢印15dに示すように、第3断熱材23(チタニア)により反射される。したがって、チタニアの存在により、特に輻射の影響が大きくなる500℃以上の高温度領域においても、断熱シート10の他方の面40bに熱が伝播されることを抑制することができる。
【0041】
<組電池用断熱シートの詳細>
次に、組電池用断熱シート10を構成する第1断熱材21及び第2断熱材22について詳細に説明する。
【0042】
(第1断熱材の種類)
本発明において、第1断熱材21としてはシリカナノ粒子を用いる。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等を使用することができる。
また、本発明においてシリカナノ粒子とは、球形あるいは球形に近い平均粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーのシリカの粒子である。
【0043】
(第1断熱材の平均粒子径:1nm以上100nm以下)
上述の通り、第1断熱材21の粒子径は、断熱シート10の断熱性に影響を与えることがあるため、第1断熱材21の平均粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。すなわち、第1断熱材21の平均粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、断熱シート10内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。
第1断熱材21の平均粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることがさらに好ましい。また、第1断熱材21の平均粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
【0044】
なお、本発明において平均粒子径は、断熱シート10を顕微鏡で撮影し、任意の10個の粒子の長径を標準スケールと比較し平均をとることで求められる。また、どのような顕微鏡を使用してもよく、SEM、偏光顕微鏡などが利用できる。
【0045】
(第2断熱材の種類)
本発明において、第2断熱材22としては、シリカ成分を含み、湾曲面を有する板形状粒子を用いる。上述の通り、第2断熱材22がこのような形状を有していることにより、面方向の強度を強くし、形状保持性を高めるとともに、厚み方向には熱を伝えにくい。また、断熱シート10に対して大きな圧縮応力が加わった場合に、第1断熱材21(シリカナノ粒子)が充填された上記ドーム状の空隙部を有する第2断熱材22が撓みながら圧力に対抗するため、断熱効果が大きい第1断熱材21(シリカナノ粒子)の脱落を防止することができる。第2断熱材22としては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、パーライトバルーン及びガラスバルーンから選択された少なくとも1種のバルーンの破片を用いることができる。
【0046】
(第2断熱材の配向)
図5の断熱シート10に示すように、第2断熱材22は、断熱シート10の面方向に配向していることが好ましい。第2断熱材22は、湾曲面を有する板形状粒子であるため、第2断熱材22が配向すると、熱伝導、強度に異方性が形成される。第2断熱材22が面方向に配向することによって、断熱シート10が厚み方向に熱伝導を抑制し、面方向に強度が高くなるようなる。なお、本願明細書において、第2断熱材22が断熱シート10の面方向に配向しているとは、全ての第2断熱材22が完全に同一方向に配列されている必要はなく、大部分の第2断熱材22が略同一方向で配列されていることを表す。
【0047】
第2断熱材22のシリカ成分の含有量は、特に限定されないが、第2断熱材全質量に対して、例えば40重量%以上であることが好ましい。シリカは、不規則な網目構造をとっているため、熔融したときに粘性流体となり、第2断熱材22のシリカ成分の含有量が、40重量%以上であると、良好な形状の湾曲面を得ることができる。また第2断熱材22のシリカ成分の含有量は、90重量%以下であることが好ましい。第2断熱材22のシリカ成分の含有量が90重量%以下であると、天然鉱物を原材料にして容易に得られる。
【0048】
なお、第2断熱材22として、上記無機バルーンの破片を用いる場合には、あらかじめ所望の大きさに割砕された無機バルーンの破片を用いてもよいし、断熱シート10の製造時に、無機バルーンを所望の大きさに割砕することもできる。このように、本発明においては、安価な無機バルーンを用いることができるとともに、従来の製造装置を変更することなく使用することができるため、断熱性が優れた断熱シート10を容易に低コストで製造することができる。
【0049】
(第2断熱材の平均粒子長:0.1μm以上100μm以下)
第2断熱材22が適切な大きさであると、第2断熱材22による上記効果を十分に得ることができ、適度な大きさの空隙部が形成される。すなわち、第2断熱材22の平均粒子長が0.1μm以上であると、空隙に多くの第1断熱材21を充填し、外部から圧縮応力が加わった時に、湾曲面が変形することにより圧力に対抗し、第1断熱材21の脱落を防止することができるため、好ましい。
一方、第2断熱材22の平均粒子長が100μm以下であると、一粒の第2断熱材22の粒子が熱を伝える距離を短くできるため、厚さ方向に配向した粒子が存在しても伝導伝熱のパスが形成されず、断熱性が低下することを防止することができるため、好ましい。
なお、本発明において平均粒子長は、断熱シート10を顕微鏡で撮影し、任意の10個の粒子の長径を標準スケールと比較し平均をとることで求められる。なお、どのような顕微鏡を使用してもよく、SEM、偏光顕微鏡などが利用できる。
【0050】
また、第2断熱材22の曲率半径は、0.5~50μmであることが好ましい。第2断熱材22として無機バルーンを用いた場合、無機バルーンの半径が相当すると考えられ、所望のサイズの第2断熱材22を得ることができる。
第2断熱材22の曲率半径の測定は、断熱シート10の断面が確認できるように樹脂埋めし、顕微鏡の拡大画像から曲面の中心を特定し、標準スケールと比較して得ることができる。顕微鏡の種類は、対象物によって適宜選定することができ、偏光顕微鏡、SEMなどが利用できる。
【0051】
(第1断熱材の含有量:断熱シート全質量に対して10質量%以上60質量%以下)
本発明においては、適度な断熱性を確保するように、第1断熱材21の比率を適切に調整することが好ましい。第1断熱材21の含有量が、断熱シート全質量に対して、10質量%以上であると、もともと第1断熱材21は伝導伝熱、対流伝熱に対して高い断熱性を有している素材であるため、断熱性の高い断熱シート10を得ることができるため、好ましい。したがって、第1断熱材21の含有量は、断熱シート全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。
【0052】
一方、第1断熱材21の含有量が、断熱シート全質量に対して、60質量%以下であると、シリカナノ粒子は他の材料で支持されるようになるため、好ましい。このため、振動、圧力、変形などが加わっても、シリカナノ粒子の落下をより一層防止することができる。したがって、第1断熱材21の含有量は、断熱シート全質量に対して、60質量%以下とすることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
(第2断熱材の含有量:断熱シート全質量に対して10質量%以上60質量%以下)
本発明においては、適度な断熱性と形状保持性を確保するように、第2断熱材22の比率を適切に調整することが好ましい。第2断熱材22の含有量が、断熱シート全質量に対して、10質量%以上であると、第2断熱材22の湾曲面を有する板形状粒子が、第1断熱材21を包み込み、振動、応力、変形が加わっても落下しないよう保持することができるため、好ましい。したがって、第2断熱材22の含有量は、断熱シート全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。
【0054】
一方、第2断熱材22の含有量が、断熱シート全質量に対して、60質量%以下であると、空隙部分に保持する他の断熱成分を十分確保でき、空気の流通を遮り、対流伝熱による熱の伝達を遮ることができるため、好ましい。したがって、第1断熱材21の含有量は、断熱シート全質量に対して、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0055】
なお、組電池用断熱シート10は、上記第1断熱材21及び第2断熱材22の他に、500℃以上の高温度領域における断熱効果をより一層高める成分として、金属酸化物からなる第3断熱材23を含んでいてもよく、さらに結合材、及び着色剤等のように、断熱材に成形するために必要な成分を含んでいてもよい。以下、その他の成分についても詳細に説明する。
【0056】
(第3断熱材の種類)
本発明に係る断熱シート10は、金属酸化物からなる第3断熱材23を含むことが好ましい。金属酸化物としては、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナ等を使用することができる。特に、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射する効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0057】
(第3断熱材の平均粒子径:0.1μm以上50μm以下)
第3断熱材23の粒子径は、熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、第3断熱材23の平均粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、第3断熱材23の平均粒子径が0.1μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きくなるため、光を効率よく乱反射させることができる。したがって、本発明において第3断熱材23が好ましい存在範囲(質量比)であるとき、500℃以上の高温度領域において断熱シート10内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。一方、第3断熱材23の平均粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくく、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
なお、第3断熱材23の平均粒子径は、1μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、第3断熱材23の平均粒子径は、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【0058】
(第3断熱材の含有量:断熱シートの全質量に対して5質量%以上40質量%以下)
本発明においては、500℃以上の高温度領域における断熱性を向上させるために、断熱シート10が第3断熱材23を含むことが好ましいとしているが、第3断熱材23の添加量は少量であっても、熱の放射伝導を抑制する効果を得ることができる。また、第1断熱材21及び第2断熱材22によって、熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制する効果を得るためには、第1断熱材21及び第2断熱材22の添加量を増加させた方が好ましい。このように、第3断熱材23の質量比は、通常温度から500℃以上の高温度までの領域における断熱性に影響するため、本発明において、断熱シート10に第3断熱材23として金属酸化物を含む場合には、第3断熱材23の質量比を適切に調整することが好ましい。
【0059】
本発明の断熱シート10において、望ましい第3断熱材23の質量比は、断熱シート全質量に対して5質量%以上である。第3断熱材23の含有量が、断熱シート全質量に対して、5質量%以上であると、特に500℃以上の輻射の影響が大きくなる温度領域で輻射伝熱を抑制でき、高い断熱性が得られると考えられる。
一方、本発明の断熱シート10の望ましい第3断熱材23の質量比は、断熱シート全質量に対し、40質量%以下である。第3断熱材23の含有量が、断熱シート全質量に対して、40質量%を超えると、第1断熱材21及び第2断熱材22による十分な効果が得られないことがあり、500℃未満の温度領域において、断熱シート10内における熱の対流伝導又は固体伝導を抑制することが困難となり、断熱性が低下することがある。
【0060】
なお、組電池用断熱シート10は、上記第1断熱材21、第2断熱材22、好ましくは第3断熱材23を含む以外に、さらに結合材、及び着色剤等のように、断熱材に成形するために必要な成分を含んでいてもよい。以下、その他の成分についても詳細に説明する。
【0061】
(結合材:断熱シート全質量に対して10質量%以上60質量%以下)
本発明に係る組電池用断熱シート10は、結合材を含まないものであっても、焼結等により形成されることができるが、特に組電池用断熱シート10が第1断熱材21としてシリカナノ粒子を含む場合には、断熱シート10としての形状を保持するために、適切な含有量で結合材を添加することが好ましい。本発明において結合材とは、第1の断熱材21、第2の断熱材22を保持するために繋ぎ止めておくものであればよく、接着を伴うバインダ、粒子を物理的に絡める繊維、粘着力で付着する耐熱樹脂などその形態は問わない。
【0062】
なお、バインダとしては、有機バインダ、無機バインダ等を用いることができる。本発明はこれらの種類について特に制限しないが、有機バインダとしては、高分子凝集材及びアクリルエマルジョン等を使用することができ、無機バインダとしては、例えばシリカゾル、アルミナゾル、硫酸バンド等を使用することができる。これらは、水などの溶媒が除去されると接着剤として機能する。
【0063】
繊維としては、有機繊維、無機繊維などが利用できる。有機繊維としては、特に限定されないが、合成繊維、天然繊維、パルプなどが利用できる。無機繊維としては特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカーアルミナ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、グラスウール、及びロックウール等を使用することが好ましい。
【0064】
一方、結合材は第1断熱材21及び第2断熱材22等と比較して、熱伝導性が高い成分からなるため、断熱シート10内に対流伝熱が発生しない程度に形成された空隙部に結合材が存在すると、第1断熱材21による対流伝熱及び伝導伝熱の抑制に影響が出るようになる。したがって、本発明の組電池用断熱シート10において、結合材の含有量は、断熱シート全質量に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。また、本発明の組電池用断熱シート10において、結合材の含有量は、断熱シート全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0065】
(無機繊維の平均繊維径:0.1μm以上20μm以下)
無機繊維は、線状又は針状の繊維であり、断熱シート10の電池セル20からの圧縮応力に対する機械的強度及び形状保持性の向上に寄与する。
このような効果を得るために、結合材として無機繊維を用いる場合には、その平均繊維径が0.1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。但し、無機繊維が太すぎると、断熱シート10への成形性、加工性が低下するおそれがあるため、20μm以下とすることが好ましく、15μm以下とすることがより好ましい。
【0066】
(無機繊維の平均繊維長:0.1mm以上20mm以下)
結合材として無機繊維を用いると、断熱シート10として成形したときに繊維同士が好適に絡み合い、充分な面圧を得ることができる。
このような効果を得るために、無機繊維を用いる場合には、その平均繊維長が0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。但し、無機繊維の平均繊維長が長すぎると、抄造工程において水に無機繊維を分散したスラリー溶液の調製時に、無機繊維同士の絡み合いが強くなりすぎることがあり、シート状に成形した後に無機繊維が不均一に集積しやすくなることがある。
したがって、無機繊維の平均繊維長は20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
なお、無機繊維の繊維径及び繊維長は、ピンセットを使用して、成形後のシートから無機繊維を破断しないように抜き取り、顕微鏡で観察し標準スケールと比較することにより測定することができる。無機繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、任意の繊維10本の平均値から得られる。
【0067】
(断熱シートの厚さ:0.1mm以上30mm以下)
本発明に係る組電池用断熱シート10の厚さは特に限定されないが、0.1mm以上30mm以下の範囲にあることが好ましい。断熱シート10の厚さが上記範囲内であると、充分な機械的強度を得ることができるとともに、容易に成形することができる。
【0068】
(組電池用断熱シートの製造方法)
続いて、本発明に係る組電池用断熱シートの製造方法について詳細に説明する。
本実施形態に係る断熱シート10は、第1断熱材21と第2断熱材22とを含む断熱シート用材料を、湿式抄造法、乾式成形法、又は湿式成形法により型成形して製造しても、押出成形法により製造してもよい。以下に、断熱シート10をそれぞれの成形法により得る場合の製造方法について説明する。
【0069】
[湿式抄造法による断熱シートの製造方法]
湿式抄造法では、まず、第1断熱材21及び第2断熱材22、ならびに必要に応じて結合材である無機繊維、有機繊維、又は有機バインダを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。その後、得られた混合液を、底面に濾過用のメッシュが形成された成形器に流し込み、メッシュを介して混合液を脱水することにより、湿潤シートを作製する。その後、得られた湿潤シートを加熱するとともに加圧することにより、断熱シート10を得ることができる。また、濾過、加圧の段階で第2断熱材22が面方向に配向する。なお、加熱及び加圧工程の前に、湿潤シートに熱風を通気させて、シートを乾燥する通気乾燥処理を実施してもよいが、この通気乾燥処理を実施せず、湿潤した状態で加熱及び加圧してもよい。
【0070】
[乾式成形法による断熱シートの製造方法]
乾式成形法では、まず、第1断熱材21及び第2粒断熱材22、ならびに必要に応じて結合材である無機繊維、有機繊維、又は有機バインダを所定の割合でV型混合機などの混合機に投入する。そして、混合機に投入された材料を充分に混合した後、所定の型内に混合物を投入し、プレスすることにより、断熱シート10を得ることができる。プレス時には、必要に応じて加熱してもよい。また、プレスの段階で第2断熱材22が面方向に配向する。
【0071】
上記プレス圧は、0.98~9.80MPaの範囲であることが好ましい。プレス圧が0.98MPa未満であると、得られる断熱シートにおいて、強度を保つことができずに崩れてしまうおそれがある。一方、プレス圧が9.80MPaを超えると、過度の圧縮によって加工性が低下したり、更に、かさ密度が高くなるため固体伝熱が増加し、断熱性が低下するおそれがある。
【0072】
[押出成形法による断熱シートの製造方法]
押出成形法では、まず、第1断熱材21及び第2断熱材22、ならびに必要に応じて結合材である無機繊維、有機繊維、又は有機バインダに水を加え、混練機で混練することにより、ペーストを調製する。その後、得られたペーストを、押出成形機を用いてスリット状のノズルから押出し、さらに乾燥させることにより、断熱シート10を得ることができる。有機バインダとしては、メチルセルロース及び水溶性セルロースエーテル等を使用することが好ましいが、押出成形法を用いる場合に一般的に使用される有機バインダであれば、特に限定されずに使用することができる。なお、押出成形法では、押出方向に第2断熱材22が配向する。
【0073】
なお、上記の通り、いずれの製造方法においても、第2断熱材22として無機バルーンを用いる場合には、あらかじめ所望の大きさに割砕されたバルーンの破片を用いてもよいし、上記材料をバルーンとともに混合撹拌するときに、撹拌の強度及び時間等を調整することにより、バルーンを所望の大きさに割砕してもよい。
【0074】
<組電池>
本発明に係る組電池100は、図5に例示したように、複数の電池セル20が、上記の組電池用断熱シート10を介して配置され、複数の電池セル20が直列又は並列に接続されたものである。
【符号の説明】
【0075】
10、40 (組電池用)断熱シート
10a、10b、40a、40b 面
20 電池セル
21 第1断熱材
22 第2断熱材
23 第3断熱材
30 電池ケース
100 組電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6