(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B25J17/00 E
(21)【出願番号】P 2019192688
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-07-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】郭 巍
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-056897(JP,A)
【文献】特開2008-180319(JP,A)
【文献】国際公開第2006/104216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の回転関節を備え、
各該回転関節が、モータと、該モータの回転を減速する減速機と、該減速機によって接続され該減速機の中心軸回りに回転可能に支持された第1部材および第2部材とを備え、
少なくとも1つの前記回転関節の前記第1部材に、前記減速機の前記中心軸に対して偏心した位置に前記モータのフランジを固定するフランジ固定部が設けられ、
前記第1部材を前記減速機に固定するボルトが、前記中心軸に沿う方向から見て前記フランジが配置される領域内にも配置されて
おり、
前記ボルトが、前記フランジ固定部を前記中心軸に沿う方向に貫通する1以上の貫通孔に挿通され、
前記フランジ固定部が、前記モータのシャフトを貫通させる中央孔を有する筒状部と、該筒状部の一端に配置され前記フランジを固定する固定部とを備え、
前記貫通孔が、前記中心軸に沿う方向から見て、前記筒状部に重なる位置に配置されているロボット。
【請求項2】
前記筒状部の外周面に、前記中心軸に沿う方向に前記貫通孔の周囲の肉厚を確保する肉盛部を備える請求項
1に記載のロボット。
【請求項3】
前記筒状部の外周面に、前記中心軸に沿う方向に前記ボルトとの干渉を回避する切欠部を備える請求項
1に記載のロボット。
【請求項4】
前記筒状部に、前記中央孔に挿入された前記シャフトを回転可能に支持するニードルベアリングを備える請求項
1から請求項
3のいずれか
1項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットの関節は、第1部材に対して第2部材を所定の軸線回りに回転駆動するアクチュエータを備えている。アクチュエータは、モータと、モータの回転を減速する減速機とを備え、第1部材と第2部材とが減速機によって接続されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1のロボットにおいては、減速機の中心軸とモータの中心軸とが同軸に配置されており、第2部材を減速機に締結するボルトは、モータのフランジよりも径方向外方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
減速機の回転中心部に中空部を設け、ケーブル等の線条体を配置する場合や、減速比を稼ぐために、モータの回転を一段減速するギヤを介して減速機に入力する場合、減速機の中心軸に対してモータの中心軸を偏心させることがある。この場合には、中心軸に沿う方向から見て、減速機の周方向の一部領域が、モータのフランジが配置される領域と重なるため、第1部材または第2部材を減速機に締結するボルトの配置が困難となる。
【0005】
モータのフランジが配置される領域にボルトを締結しない場合、モータのフランジが大きいほど、第1部材または第2部材と減速機とが広い角度範囲にわたって締結されなくなるため、ロボットの剛性が大きく低下する。
したがって、減速機に対してモータを偏心して配置する場合においても剛性を十分に確保することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、1以上の回転関節を備え、各該回転関節が、モータと、該モータの回転を減速する減速機と、該減速機によって接続され該減速機の中心軸回りに回転可能に支持された第1部材および第2部材とを備え、少なくとも1つの前記回転関節の前記第1部材に、前記減速機の前記中心軸に対して偏心した位置に前記モータのフランジを固定するフランジ固定部が設けられ、前記第1部材を前記減速機に固定するボルトが、前記中心軸に沿う方向から見て前記フランジが配置される領域内にも配置されているロボットである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るロボットの一部の回転関節を示す縦断面図である。
【
図3】
図1の切断線A-Aに沿って切断した断面図である。
【
図4】
図1のロボットのフランジ固定部を示す斜視図である。
【
図5】
図2のロボットの回転関節の変形例を示す平面図である。
【
図8】
図1のロボットの回転関節の他の変形例を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係るロボットについて、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボットは、例えば、6個の回転関節1を備える垂直多関節型ロボットである。
【0009】
回転関節1の内の1つは、
図1に示されるように、モータ2と、モータ2の回転を減速する減速機3と、床面Fに設置されるベース(第2部材)4と、鉛直軸線A1回りにベース4に対して回転可能に支持された旋回胴(第1部材)5とを備えている。
【0010】
ベース4と旋回胴5とは、減速機3によって接続されている。これにより、旋回胴5は、減速機3の中心軸である鉛直軸線A1回りにベース4に対して回転可能に支持されている。ベース4、減速機3および旋回胴5には、鉛直軸線A1近傍に上下方向に貫通する中空部6が設けられている。これにより、中空部6を経由してベース4から旋回胴5まで、図示しないケーブル等の線条体を鉛直軸線A1近傍に配線することができる。
【0011】
モータ2は、中空部6を回避するために、減速機3の中心軸である鉛直軸線A1に対して偏心した位置に配置されている。すなわち、旋回胴5には、減速機3の入力ギヤ31に噛み合う駆動ギヤ32を装着したシャフト7を鉛直下向きにして、モータ2のフランジ部(フランジ)8を固定するフランジ固定部9が、中空部6を回避して、鉛直軸線A1に対して偏心した位置に設けられている。図中、符号B1は、シャフト7の回転軸線である。
【0012】
フランジ固定部9は、駆動ギヤ32を装着したモータ2のシャフト7を貫通させる中央孔10を有する筒状部11と、筒状部11の上端に外鍔状に延び、モータ2のフランジ8を固定する固定部12とを備えている。筒状部11および固定部12は、旋回胴5の上部に、旋回胴5と一体的に設けられている。
【0013】
固定部12は、
図2に示されるように、平面視でモータ2のフランジ8と略同等の形状および大きさを有する矩形状に形成されている。固定部12は、モータ2のフランジ8に備えられた取付ボルト13を貫通させる4つの取付孔(図示略)に対応する位置に、取付ボルト13を締結可能な4つのネジ孔14を備えている。
【0014】
ここで、
図1および
図2に示されるように、減速機3と旋回胴5とは、大きなトルクを伝達するために、複数本のボルト15の締結によって固定されている。中央の中空部6を回避し、ボルト15の本数を減らすために、ボルト15は減速機3の外周に近い位置に、周方向に沿って配列されている。
図1および
図2においては、図示を簡単にするために、単一の円に沿って一列に配列されているが、これに限定されるものではなく、中空部6の径方向外方のドーナツ状の領域に複数列あるいは列をなさずに配列されていてもよい。
【0015】
そして、フランジ固定部9は、上述したように、減速機3の中心軸である鉛直軸線A1に対して偏心した位置に配置されているので、
図2に示されるように、ボルト15の配列円に重なる位置に配置される。
本実施形態に係るロボットにおいては、
図2に示されるように、平面視で、フランジ固定部9の固定部12が配置されている領域内においても、旋回胴5と減速機3とがボルト15によって締結されている。
【0016】
すなわち、固定部12が配置されている領域においても、
図1および
図2に示されるように、フランジ固定部9を鉛直方向に貫通する貫通孔16が設けられている。貫通孔16の内部には、ボルト15の頭部を突き当てる座面17が形成されている。
図3に、
図1の切断線A-Aに沿って切断した断面を示す。
図3に示す例では、フランジ固定部9には、筒状部11に重なる位置に、単一の貫通孔16が設けられている。
【0017】
本実施形態においては、
図3および
図4に示されるように、筒状部11の外周面に、鉛直方向に沿って貫通孔16の周囲の肉厚を確保する肉盛部19が設けられている。また、
図1に示されるように、筒状部11の中央孔10内には、中央孔10に対してモータ2のシャフト7を回転可能に支持するニードルベアリング20が配置されている。
【0018】
このように構成された本実施形態に係るロボットによれば、旋回胴5と減速機3とを固定するボルト15が、平面視でモータ2のフランジ8が配置される領域内においても旋回胴5と減速機3とを密着させている。これにより、フランジ固定部9によって、旋回胴5と減速機3とが広い角度範囲にわたって締結されなくなることが防止され、ロボットの剛性の低下を防止することができるという利点がある。
【0019】
そして、これを可能にするために、
図3および
図4に示されるように、筒状部11の外面に肉盛部19を設け、また、
図1に示されるように、ニードルベアリング20の採用により中央孔10を小径化することにより、ボルト15を貫通させる貫通孔16の周囲の肉厚を十分に確保することができる。
【0020】
なお、本実施形態においては、フランジ固定部9に、鉛直方向に貫通してボルト15を貫通させる貫通孔16を1箇所設けた例を説明したが、これに代えて、
図5および
図6に示されるように、複数個所に設けてもよい。これにより、旋回胴5と減速機3とをさらに強固に密着させることができる。
【0021】
この場合に、固定部12の外周に近接する部分においては、
図5に示されるように、固定部12の外周縁を切り欠いてボルト15を通過させる切欠部21を設けてもよい。
また、本実施形態においては、フランジ固定部9の固定部12をモータ2のフランジ8と略同等の形状および大きさの矩形状に構成し、4箇所にネジ孔14を設けた。これに代えて、ネジ孔14の位置において固定部12の外周縁を切り欠いて、ネジ孔14の数を3箇所(あるいは2箇所)にしてもよい。
【0022】
また、フランジ固定部9の筒状部11の外周面に肉盛部19を設けることにより、貫通孔16の周囲の肉厚を確保したが、これに代えて、
図7に示されるように、筒状部11の外周面にボルト15を通過させる切欠部22を設けてもよい。
【0023】
また、本実施形態においては、垂直多関節型ロボットのベース4と旋回胴5との間の回転関節1に適用した例を示したが、これに代えて、他の回転関節あるいは1以上の回転関節に適用してもよい。また、水平多関節型ロボット等、他の任意の形式のロボットの回転関節に適用してもよい。
【0024】
また、本実施形態においては、フランジ固定部9を旋回胴5に一体的に設けたが、
図8に示されるように、旋回胴5に、ボルト15によって着脱可能に固定されていてもよい。この場合には、フランジ固定部9を旋回胴5から取り外した状態で、旋回胴5と減速機3とをボルト15によって締結すればよいので、フランジ固定部9にボルト15を貫通させる貫通孔16を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 回転関節
2 モータ
3 減速機
4 ベース(第2部材)
5 旋回胴(第1部材)
7 シャフト
8 フランジ部(フランジ)
9 フランジ固定部
10 中央孔
11 筒状部
12 固定部
15 ボルト
16 貫通孔
19 肉盛部
20 ニードルベアリング
21,22 切欠部
A1 鉛直軸線(中心軸)