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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】薄膜抵抗ネットワークの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20240220BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240220BHJP
   H01C 17/242 20060101ALI20240220BHJP
   H01C 1/034 20060101ALI20240220BHJP
   H01C 13/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L27/04 P
H01C17/242
H01C1/034
H01C13/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221862
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021093409
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100092406
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒木 育朋
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-278479(JP,A)
【文献】特開平11-026204(JP,A)
【文献】特開2000-269012(JP,A)
【文献】特開2004-343011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0013474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
H01C 17/242
H01C 1/034
H01C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上に抵抗体パターンを形成し、
抵抗体パターンの両端部に電極パターンを形成し、
抵抗体パターンに粗調トリミングを施し、抵抗体を目標抵抗値以下の抵抗値とし、
シリコン基板上の全面に、窒化シリコンからなる薄膜である保護膜を着膜して電極パターンの部分のみを露出させ、
抵抗体パターンの部分に保護膜上から微調トリミングを施し、抵抗体を目標抵抗値とする、薄膜抵抗ネットワークの製造方法。
【請求項2】
粗調トリミングは、抵抗体を目標抵抗値以下の抵抗値に段階的に調整するトリミングであり、ラダー状パターンの段部を切断するトリミングである、請求項1に記載の薄膜抵抗ネットワークの製造方法。
【請求項3】
微調トリミングは、抵抗体を目標抵抗値とするトリミングであり、ベタ(板状)パターンに切れ込みを入れるトリミングである、請求項1に記載の薄膜抵抗ネットワークの製造方法。
【請求項4】
抵抗体は、ニクロム系の材料である、請求項1に記載の薄膜抵抗ネットワークの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の薄膜抵抗を基板上に集積し、モールド樹脂で封止した薄膜抵抗ネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
図7および図8は薄膜抵抗ネットワークの一例を示す。複数の薄膜抵抗12がシリコン基板11の上面に形成され、当該シリコン基板がリードフレームのアイランド15に固定されている。そして、アイランド15の周辺を囲み外方に伸びる多数のリード端子16が配置され、基板11上の対応する薄膜抵抗の電極13との間をボンディングワイヤ14により接続し、モールド樹脂17で封止されている。図示の例では、端子数が16の場合、8個の薄膜抵抗12が搭載可能であり、端子数が24の場合、12個の薄膜抵抗12が搭載可能である。
【0003】
係る薄膜抵抗ネットワークにおいて、薄膜抵抗12は高精度のものが製作可能であり、例えば、500Ω-100kΩの抵抗値範囲で、±0.1%の許容差のものが製作可能である。そして、抵抗値がユーザーから指定される場合、短納期で、ユーザー指定の抵抗値および抵抗値許容差の薄膜抵抗を集積した薄膜抵抗ネットワークを、ユーザーに提供せねばならない。近年、薄膜抵抗ネットワークは、例えば自動車にも搭載され、過酷な環境下で高い信頼性が要求されることは当然のことである。
【0004】
係る用途の抵抗値および抵抗値許容差の薄膜抵抗の製造には、レーザトリミングが用いられることが一般的である。レーザトリミングは抵抗体の両端に設けた電極にプローブを接触させ、抵抗値を測定しつつ、レーザビームを移動させて抵抗体に切れ込みを形成し、抵抗値を調整する。そして、従来から、レーザトリミングは、抵抗体を被覆する保護膜を形成した後に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-6376号公報
【文献】特許3282424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、保護膜形成後にレーザトリミングを行うと、保護膜側面にレーザトリミングで飛ばした抵抗体が付着し、薄膜抵抗に過負荷を印加すると保護膜側面に付着した抵抗体に電気が伝わってショートしてしまい、静電気放電耐性が低くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、静電気放電耐性を高めることにより信頼性を高めた薄膜抵抗ネットワークの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の薄膜抵抗ネットワークの製造方法は、シリコン基板上に抵抗体パターンを形成し、抵抗体パターンの両端部に電極パターンを形成し、抵抗体パターンに粗調トリミングを施し、抵抗体を目標抵抗値以下の抵抗値とし、シリコン基板上の全面に保護膜を着膜して電極パターンの部分のみを露出させ、抵抗体パターンの部分に保護膜上から微調トリミングを施し、抵抗体を目標抵抗値とする、ことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、保護膜形成前に、抵抗体パターンの粗調トリミングを施すので、微調トリミングの時点で、抵抗体パターンの大部分は保護膜に被覆されている。よって、微調レーザトリミングで飛ばした抵抗体が保護膜の開口に付着し、薄膜抵抗に過負荷を印加すると保護膜側面に付着した抵抗体に電気が伝わってショートしてしまい、静電気放電耐性が低くなってしまうという問題が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】シリコン基板上に抵抗体パターンおよび電極パターンを形成した段階のパターン図である。
図2】抵抗体パターンに施した粗調および微調のレーザトリミング例を説明するパターン図である。
図3】抵抗体および電極パターンの抵抗体パターンに粗調トリミングT1,T2,T3を施した段階のパターン図である。
図4】上記の全面に保護膜を着膜した段階のパターン図である。
図5】上記の電極パターン部分に開口を形成した段階のパターン図である。
図6】上記の抵抗体パターンに微調トリミングを施した段階のパターン図である。
図7】薄膜抵抗ネットワークの全体を示す、モールド樹脂封止前の平面図である。
図8】薄膜抵抗ネットワークの全体を示す、モールド樹脂封止後の部分透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図8を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
【0012】
本発明の薄膜抵抗ネットワークの製造方法の一実施例について、以下に説明する。図1は、シリコン基板11上に、抵抗体パターン21とその両端に電極パターン22を形成した段階を示す。まず、シリコンウェハーを準備する。図示しないシリコンウェハーに多数の区画が格子状に形成され、シリコン基板11はその一区画であり、後に例えば12個あるいは8個等の複数の薄膜抵抗12が一区画上に形成されたチップとなる(図7図8、参照)。
【0013】
次ぎに、シリコン基板11上に抵抗体パターン21および電極パターン22を形成する。この処理はウェハー単位で一括して行われる。まず、シリコンウェハーの全面に抵抗膜を着膜する。抵抗膜としては、厚さ15-20μm程度のニクロム系の材料が好ましい。この抵抗膜にフォトリソおよびエッチングの処理を施すことで、図示する抵抗体パターン21が形成される。
【0014】
抵抗体パターン21は、粗調トリミングパターン部21a,21b,21cと、微調トリミングパターン部21dと、蛇行状固定パターン部21eとを備える。粗調トリミングパターン部21aは、図示するように、蛇行状パターンとラダー状パターンを並列接続したものである。粗調トリミングパターン部21b,21cは、図示するように、ラダー状パターンである。
【0015】
微調トリミングパターン部21dは、図示するようにベタ(板状)パターンである。蛇行状固定パターン部21eは、細く長い抵抗体とすることで、大きな固定抵抗値を形成する部分である。例えば、70kΩ-100kΩの抵抗値範囲の薄膜抵抗を製作する場合、70kΩを蛇行状固定パターン部21eで形成し、70kΩを超える部分を主として粗調トリミングパターン部21aの蛇行状・ラダー状パターントリミングで形成することで、レーザトリミング時間を短縮し、生産性を高めることができる。
【0016】
次ぎに、シリコンウェハーの全面に電極膜を着膜する。電極膜の材料としては、アルミ系の材料が好ましい。この電極膜にフォトリソおよびエッチングの処理で、図1に示す電極パターン22が抵抗体パターン21の両端部に形成される。なお、抵抗体パターン21および電極パターン22からなる薄膜抵抗パターンは、シリコン基板11に搭載される複数の薄膜抵抗の一例を示すもので、他の薄膜抵抗については記載を省略している。
【0017】
図2は、抵抗体パターンのトリミングによる抵抗値調整例を示す。抵抗体パターン21は、蛇行状パターンとラダー状パターンの並列接続部21aと、第1ラダー状パターン部21bと、第2ラダー状パターン部21cと、ベタ(板状)パターン部21dと、蛇行状固定パターン部21eとが直列に接続されている。
【0018】
目標抵抗値および許容差はユーザー等により指定される。抵抗値トリミングは、第1に、蛇行状パターンとラダー状パターンの並列接続部21aに対して粗調トリミングT1を行う。この並列接続部21aは、蛇行パターンS1,S2,S3,S4とラダーパターンの段部D1,D2,D3,D4が直列接続され、ラダーパターンの柱部L1により並列接続されたものである。
【0019】
したがって、トリミング前の並列接続部21aの抵抗値は略ゼロであるが、段部D1をレーザトリミングで切断することで、蛇行部S1の抵抗値上昇が得られる。同様に、段部D2迄切断することで、蛇行部S1+S2の抵抗値上昇が得られ、段部D4迄切断することで、蛇行部S1+S2+S3+S4の抵抗値上昇が得られる。すなわち、段部4ヶ所の切断有無で4段階の抵抗値の粗調整が可能である。
【0020】
次ぎに、第1ラダーパターン部21bに対して、粗調トリミングT2を行う。第1ラダーパターン部21bにおいても、段部D1-D5の段部5ヶ所の切断有無で5段階の抵抗値の粗調整が可能である。同様に、第2ラダーパターン部21cに対して、粗調トリミングT3を行う。第2ラダーパターン部21cにおいても、段部D1-D5の段部5ヶ所の切断有無で5段階の抵抗値の粗調整が可能である。
【0021】
以上のように、ラダーパターンの複数の段部D1-D4等のレーザトリミングにより、当該ラダーパターンの抵抗値の粗調整が可能となるので、これを複数のラダーパターン部21a,21b,21cに対して適用することで、短時間で抵抗体パターン21の抵抗値の粗調整が可能となる。例えば、粗調トリミングT1では抵抗値目標値-7%、粗調トリミングT2では抵抗値目標値-5%、粗調トリミングT3では抵抗値目標値-3%程度に設定することができる。
【0022】
次ぎに、微調トリミングT4,T5について説明する。微調トリミングT4,T5は、レーザビームをベタ(板状)パターン部21dに照射しつつ連続的に移動して切れ込みを入れるトリミングであり、抵抗体21の抵抗値を抵抗値目標値の許容差(例えば±0.1%)内に切削する。
【0023】
これにより、短時間の僅かな切削量の微調トリミングで、抵抗値目標値±0.1%程度の高精度薄膜抵抗パターン21が得られる。よって、粗調トリミングT1,T2,T3と微調トリミングT4,T5を組み合わせることで、ユーザー等の任意の指定値に基づく高精度の薄膜抵抗12を搭載したシリコン基板11が短時間のレーザトリミングで得られる。
【0024】
図3は、粗調トリミングを終えた段階を示す。この例では、粗調トリミングT1では3段の段部が切断され、粗調トリミングT2では4段の段部が切断され、粗調トリミングT3では2段の段部が切断されている。粗調トリミングはラダーパターンの段部を何カ所か切削するのみであるので、切削量は僅かであり、トリミングに要する時間も僅かである。
【0025】
粗調トリミングT1,T2,T3により切削した抵抗体の切りカスは僅かであり、トリミング雰囲気のガスによって排出されるので、抵抗体パターン21に付着することは殆どない。そして、粗調トリミングを終了したウェハーは洗浄され、トリミング工程で付着した汚染物質が除去され、乾燥される。
【0026】
図4は、上記粗調トリミングを一ウェハーのすべての薄膜抵抗に対して終え、当該ウェハーの洗浄・乾燥後、全体に保護膜23を着膜した段階を示す。保護膜23は、窒化シリコン膜が好ましい。図5は、一ウェハーのすべての薄膜抵抗に対して、フォトリソおよびエッチングで、電極22の部分を露出する開口24を設けた段階を示す。そして、アルゴンガスによるドライエッチングで開口24の内部を清浄化する。
【0027】
図6は、電極22の部分を露出する開口24にプローブを接触させ、抵抗値を測定しつつベタ(板状)パターン部21dに対してレーザトリミング装置にて微調トリミングT4,T5を施した段階を示す。上述したように、微調トリミングT4,T5は、レーザビームをベタ(板状)パターン部21dに照射しつつ連続的に移動して切れ込みを入れるトリミングであり、抵抗体21の抵抗値を抵抗値目標値の許容差(例えば±0.1%)内に切削する。微調トリミングT4,T5で飛散する抵抗体の切りカスが抵抗体パターンに付着することは、抵抗体パターンが保護膜24により被覆されているので有り得ない。
【0028】
微調トリミングT4,T5を一ウェハーのすべての薄膜抵抗に対して行うことで、ウェハー段階の処理が終了する。この時点では、一ウェハーに多数のシリコン基板11が格子状に配列されているので、これを分割して、チップとしてのシリコン基板11を得る。
【0029】
図7は、チップとしてのシリコン基板11をリードフレームのアイランド15に固定し、薄膜抵抗12の電極13とリードフレームの端子16とをボンディングワイヤ14で接続し、モールド樹脂17で封止した段階を示す。
【0030】
これを、リードフレームの端子16の部分で切断し、シリコン基板11上の薄膜抵抗12の両端の電極13がボンディングワイヤ14で端子16に接続され、モールド樹脂17で封止された薄膜抵抗ネットワーク10が得られる。そして、端子16に折り曲げ加工を施すことで、図8に示す表面実装が可能な薄膜抵抗ネットワーク10が得られる。
【0031】
本発明では、抵抗体パターンに粗調トリミングを施し、抵抗体を目標抵抗値以下の抵抗値とし、シリコン基板上の全面に保護膜を着膜して電極パターンの部分のみを露出させ、抵抗体パターンのベタ(板状)部分に保護膜上から微調トリミングを施し、抵抗体を目標抵抗値とする。よって、微調トリミングの段階で抵抗体が保護膜に被覆されている。
【0032】
これにより、従来技術で見られた保護膜で被覆された抵抗体のトリミング部分に、レーザビーム照射で飛ばした抵抗体が付着し、薄膜抵抗に過負荷を印加すると保護膜側面に付着した抵抗体に電気が伝わってショートしてしまい、静電気放電耐性が低くなってしまうという問題が解決される。よって、高い信頼性の薄膜抵抗ネットワークを提供できる。
【0033】
そして、レーザトリミングは、粗調トリミングと微調トリミングを組合せたものであるので、1回のレーザビーム照射時間を短くでき、全体として短時間のトリミングで、目標とする高精度の任意の抵抗値が得られる。ところで、ユーザー指定の抵抗値および抵抗値範囲は千差万別である。よって、ユーザー指定の高精度の抵抗値の薄膜抵抗を集積した薄膜抵抗ネットワークを高い生産性で、且つ短時間で製造できる。
【0034】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、シリコン基板上に複数の薄膜抵抗を集積した薄膜抵抗ネットワークの製造に好適に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8