(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】センサー装置及びセンサー装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
G01D 18/00 20060101AFI20240220BHJP
H03K 7/08 20060101ALI20240220BHJP
H03M 1/82 20060101ALI20240220BHJP
H03F 3/217 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01D18/00
H03K7/08 B
H03M1/82
H03F3/217 150
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020001969
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-09-05
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035104
【氏名又は名称】エー・ウント・エー・エレクトロニック・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】アルビン・ハイダー
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06074089(US,A)
【文献】特開平06-229777(JP,A)
【文献】特開2014-153232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 18/00-21/02
G01D 3/00-3/10
G01K 1/00-19/00
H03K 7/08
H03M 1/82
H03F 3/217
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー装置
であって、
変化する物理的な測定量(T,rH)を検出して、出力側にセンサー原信号(T_RAW,rH_RAW)を提供する少なくとも一つのセンサー(11,12)と、
このセンサー(11,12)から提供されるセンサー原信号(T_RAW,rH_RAW)をセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)に前処理し、測定量(T,rH)に応じたデューティー比(p)によりこのセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)をパルス幅変調された出力信号(PWM)として更に処理するためのデジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)であって、そのために、デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)がセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)をパルス幅変調された出力信号(PWM)に変換するために用いる複数の装置特有の補正パラメータ(PWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAX)がメモリユニット(14)に保存されているデジタル信号処理ユニットと、
このパルス幅変調された出力信号(PWM)をアナログ電圧信号又はアナログ電流信号(U
OUT)に変換する増幅ユニット(20)と、
を有する
当該センサー装置
において、
装置特有の補正パラメータ(PWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAX)として、少なくともデューティー比パラメータ最小限界値とデューティー比パラメータ最大限界値がメモリユニット(14)に保存されている当該センサー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサー装置において、
センサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)の測定値(MV_NOW)とパルス幅変調された出力信号(PWM)のデューティー比パラメータ(PWM_OUT_NOW)の間の線形的な関係を記述する、装置特有の変換規則がデジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)に保存されているセンサー装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサー装置において、
更に、センサーの測定範囲の境界を画定する、センサー測定最小限界値(MV_OUT_MIN)とセンサー測定最大限界値(MV_OUT_MAX)がメモリユニット(14)に保存されているセンサー装置。
【請求項4】
請求項1から
3までのいずれか1つに記載のセンサー装置において、
装置特有の変換規則として、次の関係式が、
PWM_OUT_NOW=MV_NOW・k
PWM+d
PWM
ここで、
PWM_OUT_NOW:PWM信号のデューティー比パラメータ
MV_NOW:センサーの測定値
k
PWM:(PWM_OUT_MAX-PWM_OUT_MIN)/(MV_OUT_MAX-MV_OUT_MIN)
d
PWM:PWM_OUT_MIN-MV_OUT_MIN・k
PWM
PWM_OUT_MAX:デューティー比パラメータ最大限界値
PWM_OUT_MIN:デューティー比パラメータ最小限界値
MV_OUT_MAX:センサー測定最大限界値
MV_OUT_MIN:センサー測定最小限界値
デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)に保存されているセンサー装置。
【請求項5】
請求項1から
4までのいずれか一つに記載のセンサー装置において、
前記の少なくとも一つのセンサー(11,12)、デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)及びメモリユニット(14)が一緒に一つのASIC(10)内に配置されるとともに、前記の増幅ユニット(20)が、このASIC(10)と別個に構成されているセンサー装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のセンサー装置において、
前記のメモリユニット(14)が不揮発性メモリユニットとして構成されているセンサー装置。
【請求項7】
請求項1から
6までのいずれか一つに記載のセンサー装置において、
前記の増幅ユニット(20)がローパスフィルターを備えた増幅回路として構成されているセンサー装置。
【請求項8】
請求項1から
7までのいずれか一つに記載のセンサー装置において、
二つのセンサー(11,12)を備え、その中の第一のセンサー(11)が温度センサーとして構成され、第二のセンサー(12)が湿度センサーとして構成されているセンサー装置。
【請求項9】
センサー装置を測定動作と校正動作により動作させる方法
であって、
測定動作では、
少なくとも一つのセンサー(11,12)によって、変化する物理的な測定量(T,rH)を検出して、出力側にセンサー原信号(T_RAW,rH_RAW)を提供し、
デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)によって、センサー(11,12)から提供されるセンサー原信号(T_RAW,rH_RAW)をセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)に前処理して、このセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)を測定量(T,rH)に応じたデューティー比によりパルス幅変調された出力信号(PWM)に変換し、
増幅ユニット(20)によって、このパルス幅変調された出力信号(PWM)をアナログ電圧信号又はアナログ電流信号(U
OUT)に変換し、
測定動作に先行する校正動作では、
測定動作において信号処理ユニット(13;13.1,13.2)によりセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)をパルス幅変調された出力信号(PWM)に変換するために用いられる複数の装置特有の補正パラメータ(PWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAX)がメモリユニット(14)に保存される
当該方法において、
校正動作では、装置特有の補正パラメータ(PWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAX)として、少なくともデューティー比パラメータ最小限界値とデューティー比パラメータ最大限界値がメモリユニット(14)に保存される当該方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の方法において、
校正動作では、センサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)の測定値(MV_NOW)とパルス幅変調された出力信号(PWM)のデューティー比パラメータ(PWM_OUT_NOW)の間の線形的な関係を記述する、装置特有の変換規則がデジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)に保存される方法。
【請求項11】
請求項
9に記載の方法において、
更に、センサーの測定範囲の境界を画定する、センサー測定最小限界値(MV_OUT_MIN)とセンサー測定最大限界値(MV_OUT_MAX)がメモリユニット(14)に保存される方法。
【請求項12】
請求項
9から
11までのいずれか一つに記載の方法において、
装置特有の変換規則として、次の関係式が、
PWM_OUT_NOW=MV_NOW・k
PWM+d
PWM
ここで、
PWM_OUT_NOW:PWM信号のデューティー比パラメータ
MV_NOW:センサーの測定値
k
PWM:(PWM_OUT_MAX-PWM_OUT_MIN)/(MV_OUT_MAX-MV_OUT_MIN)
d
PWM:PWM_OUT_MIN-MV_OUT_MIN・k
PWM
PWM_OUT_MAX:デューティー比パラメータ最大限界値
PWM_OUT_MIN:デューティー比パラメータ最小限界値
MV_OUT_MAX:センサー測定最大限界値
MV_OUT_MIN:センサー測定最小限界値
デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)に保存される方法。
【請求項13】
請求項
9から
12までのいずれか一つに記載の方法において、
前記の校正動作が、センサー装置の温度を変化させること無く実行される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変化する物理的な測定量を検出するセンサー装置及びそのようなセンサー装置を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、温度や湿度などの変化する物理的な測定量を検出するために、当該の測定量を信号処理ユニットによる好適な前処理及び後処理の後にパルス幅変調信号又はPWM信号として出力するセンサー装置が知られている。生成されたPWM信号には、検出した測定量が、PWM信号のデューティー比pにより符号化された形で含まれる。その場合、デューティー比pとは、方形状のPWM信号における信号サイクルタイムtp=tH+tLに対するハイレベルの時間長tHの比率であると理解される、即ち、p=tH/tpであり、ここで、tLは、PWM信号におけるローレベルの時間長を表す。PWM信号を更に処理するためには、通常、増幅ユニットによって、測定量に応じたデューティー比pを用いてPWM信号を復調して、増幅し、そのようにして、所定の電流範囲又は電圧範囲内のアナログ電流信号又はアナログ電圧信号に変換すると規定され、例えば、アナログ出力信号に関して、電流信号の場合には、4mA~20mAの電流範囲が一般的であり、或いは電圧信号の場合には、0V~10Vの電圧範囲が一般的である。しかし、実際には、信号処理ユニットにも、増幅ユニットにも用いられる電子部品は、例えば、PWM信号の変化する電圧、演算増幅器の変動するオフセット電圧又は増幅段の変化する抵抗公差として出現する可能性が有る偏差に晒されている。それは、測定量が同じにも関わらず、アナログ電流信号又はアナログ電圧信号の形でセンサー装置から出力される測定値がセンサー装置毎に許容できない形で変動し、それにより、所望の測定精度を妨げるとの結果を生じさせる。
【0003】
特許文献1により、温度測定の場合において、そのような問題を解決するために、測定動作に先行する設定モードにおいて、既知の基準温度で温度測定を実施することが知られている。その場合、複数の補正量を決定して、それらをメモリに保存している。そして、測定動作では、PWM信号のパルス幅を温度に応じて補正するために、それらの補正量を用いている。そこで提案されている解決策では、PWM信号の生成は、メモリから補正量を供給されるアナログ信号処理コンポーネントにより行われている。それには、保存されたデジタル補正量を好適なアナログ信号に変換するための負担のかかるD/A変換器が必要である。PWM信号の精度に対する要求が高くなるほど、その結果として、D/A変換器の分解能に対する要求が高くなり、そのため、より高い分解能が所望された場合、回路技術的な負担が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、検出した物理的な測定量に関するアナログ電流信号又はアナログ電圧信号の高精度で確実な出力を出来る限り小さい回路技術的な負担により実現可能とする、変化する物理的な測定量を検出するセンサー装置を実現することである。
【0006】
本発明の別の課題は、検出した物理的な測定量に関するアナログ電流信号又はアナログ電圧信号の高精度な出力を実現可能とする、変化する物理的な測定量を検出するセンサー装置を動作させる方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明による請求項1の特徴を有するセンサー装置により解決される。
【0008】
この別の課題は、本発明による請求項10の特徴を有する方法により解決される。
【0009】
本発明によるセンサー装置及び本発明による方法の有利な実施形態は、それぞれ従属請求項に記載された措置から明らかになる。
【0010】
本発明によるセンサー装置は、
変化する物理的な測定量を検出して、出力側にセンサー原信号を提供する少なくとも一つのセンサーと、
センサーから提供されるセンサー原信号をセンサー信号として前処理するためのデジタル信号処理ユニットであって、センサー信号を更に処理して、それにより、測定量に応じたデューティー比によりパルス幅変調された出力信号に変換し、そのために、センサー信号をパルス幅変調された出力信号に変換するために用いられる複数の装置特有の補正パラメータがメモリユニットに保存されているデジタル信号処理ユニットと、
このパルス幅変調された出力信号をアナログ電圧信号又はアナログ電流信号に変換する増幅ユニットと、
を有する。
【0011】
有利には、デジタル信号処理ユニットには、センサー信号の測定値とパルス幅変調された出力信号のデューティー比パラメータの間の線形的な関係を記述する、装置特有の変換規則が保存されている。
【0012】
この場合、装置特有の補正パラメータとして、少なくともデューティー比パラメータ最小限界値とデューティー比パラメータ最大限界値をメモリユニットに保存することができる。
【0013】
更に、センサー測定範囲の境界を画定するセンサー測定最小限界値とセンサー測定最大限界値をメモリユニットに追加して保存することが可能である。
【0014】
装置特有の変換規則として、次の関係式をデジタル信号処理ユニットに保存することができる。
PWM_OUT_NOW=MV_NOW・kPWM+dPWM
ここで、
PWM_OUT_NOW:PWM信号のデューティー比パラメータ
MV_NOW:センサーの測定値
kPWM:(PWM_OUT_MAX-PWM_OUT_MIN)/(MV_OUT_MAX-MV_OUT_MIN)
dPWM:PWM_OUT_MIN-MV_OUT_MIN・kPWM
PWM_OUT_MAX:デューティー比パラメータ最大限界値
PWM_OUT_MIN:デューティー比パラメータ最小限界値
MV_OUT_MAX:センサー測定最大限界値
MV_OUT_MIN:センサー測定最小限界値
【0015】
これらの少なくとも一つのセンサー、デジタル信号処理ユニット及びメモリユニットを一緒に一つのASICに配置するとともに、このASICと別個に増幅ユニットを構成すると規定することができる。
【0016】
この場合、メモリユニットは、不揮発性メモリユニットとして構成することができる。
【0017】
一つの実現可能な実施構成において、ローパスフィルターを備えた増幅回路として、増幅ユニットを構成することができる。
【0018】
有利には、二つのセンサーが配備されて、その中の第一のセンサーが温度センサーとして構成され、第二のセンサーが湿度センサーとして構成される。
【0019】
本発明による方法は、センサー装置を測定動作及び校正動作により動作させるとの役割を果たす。
【0020】
この場合、測定動作では、
少なくとも一つのセンサーによって、変化する物理的な測定量を検出して、出力側にセンサー原信号を提供し、
デジタル信号処理ユニットによって、センサーから提供されるセンサー原信号をセンサー信号として前処理して、センサー信号を測定量に応じたデューティー比によりパルス幅変調された出力信号に変換し、
増幅ユニットによって、パルス幅変調された出力信号をアナログ電圧信号又はアナログ電流信号に変換する。
【0021】
測定動作に先行する校正動作では、測定動作において信号処理ユニットによりセンサー信号をパルス幅変調された出力信号に変換するために用いられる複数の装置特有の補正パラメータがメモリユニットに保存される。
【0022】
有利には、校正動作では、センサー信号の測定値とパルス幅変調された出力信号のデューティー比パラメータの間の線形的な関係を記述する、装置特有の変換規則がデジタル信号処理ユニットに保存される。
【0023】
この場合、校正動作では、装置特有の補正パラメータとして、少なくともデューティー比パラメータ最小限界値とデューティー比パラメータ最大限界値をメモリユニットに保存することができる。
【0024】
更に、それに追加して、センサー測定範囲の境界を画定するセンサー測定最小限界値とセンサー測定最大限界値をメモリユニットに保存することが可能である。
【0025】
一つの実現可能な実施構成では、装置特有の変換規則として、次の関係式がデジタル信号処理ユニットに保存される。
PWM_OUT_NOW=MV_NOW・kPWM+dPWM
ここで、
PWM_OUT_NOW:PWM信号のデューティー比パラメータ
MV_NOW:センサー信号の測定値
kPWM:(PWM_OUT_MAX-PWM_OUT_MIN)/(MV_OUT_MAX-MV_OUT_MIN)
dPWM:PWM_OUT_MIN-MV_OUT_MIN・kPWM
PWM_OUT_MAX:デューティー比パラメータ最大限界値
PWM_OUT_MIN:デューティー比パラメータ最小限界値
MV_OUT_MAX:センサー測定最大限界値
MV_OUT_MIN:センサー測定最小限界値
【0026】
更に、センサー装置の温度を変更せずに校正動作を実施することが可能である。
【0027】
ここで、本発明による措置によって、アナログ電圧信号又はアナログ電流信号を出力する場合に、その時々の測定値の高精度な検出を保証することができる。それは、当該のセンサー装置の個々のコンポーネントが製造に起因する部品偏差を有する場合にも保証される。
【0028】
更に、本発明による措置は、出力側で高精度なアナログ電流信号又はアナログ電圧信号を提供するために必要な回路負担を大幅に軽減できることを可能にする。ここで規定されたPWM信号を生成するためのデジタル信号処理により、特に、例えば、D/A変換器などの負担のかかるコンポーネントが不要となる。
【0029】
更に、ここで規定されたデジタル信号処理は、その時々の測定量とPWM信号のデューティー比の間の関係を極めて柔軟に設定することを可能にする。
【0030】
以下における本発明によるセンサー装置及び本発明による方法の図面と関連した記述により本発明の更なる詳細及び利点を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明によるセンサー装置の一つの実施例の極めて模式的なブロック接続図
【
図2a】アナログ電圧信号へのPWM信号の変換を例示して説明するための
図1のブロック接続図の一部の模式的な詳細図
【
図2b】直線補間によるアナログ電圧信号へのPWM信号の変換に関する別の模式図
【
図3】アナログ電圧信号へのPWM信号の変換に関する模式図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明による変化する物理的な測定量を検出するセンサー装置の一つの実施例が、
図1に極めて模式的なブロック接続図で図示されている。
【0033】
この場合、センサー装置は、一方において様々なアナログ信号処理コンポーネント及びデジタル信号処理コンポーネントを備えたASIC10の形の集積回路を有し、それらの機能は、以下において更に詳しく記述する。ASIC10は、混合信号ASICとして構成されており、アナログ信号及びデジタル信号の処理に適している。
【0034】
他方において、本発明によるセンサー装置は、ASIC10から供給される、測定量に応じたPWM信号PWMをアナログ出力信号に変換する増幅ユニット20を有する。この実施例では、
図3にも更に詳しく図示されている通りのアナログ電圧信号U
OUTへの変換形態を規定している。更に、
図3からは、PWM信号が、ローレベル(0V)とハイレベル(VDD)の間のほぼ方形状の推移を有することが明らかであり、ここで、ハイレベルは、ASIC10の供給電圧VDDと一致する。そのように生成されたアナログ電圧信号U
OUTは、次に、更なる処理のために図面に図示されていない後続の電子機器に出力される。一つの実現可能な実施構成では、増幅ユニット20は、ローパスフィルターを備えた増幅回路として構成され、この場合、ローパスフィルターは、一次以上のローパスフィルターとして構成することができる。即ち、PWM信号PWMのフィルタリングと変換以外に、増幅ユニット20によって、その結果得られたアナログ信号U
OUTの好適な増幅が更に行われる。この場合、例えば、アナログ電圧信号U
OUTにおけるVDD=3.3Vから10VへのASIC10の供給電圧VDDの増幅を行なうことができる。
【0035】
図面では、符号15によって、ASIC10の電圧供給を行なうためのLDO(Low Drop Out)電圧コントローラーが表されている。この場合、LDO電圧コントローラー15は、外部供給電圧をASICに適した電圧値に、例えば、1.8Vに低減している。この例では、本発明によるセンサー装置によって、0V~10Vの範囲内のアナログ電圧信号が後続の電子機器に出力される。
【0036】
図示された例では、変化する物理的な測定量としての温度Tと湿度rHの検出形態が規定されている。測定量T,rHを検出するために、ASIC10のアナログ部分には、温度測定のための第一のセンサー11と湿度測定のための第二のセンサー12が構成されている。温度測定のためのセンサー11は、AD変換器を用いて温度に依存するベース・エミッター電圧を測定して、デジタル信号に変換するためのトランジスタを備えることができる。湿度測定のためのセンサー12としては、容量測定段を用いて湿度に依存する容量を検出して、デジタル信号に変換するための平板コンデンサを使用することができる。そのため、ASIC10に集積されたセンサー11,12は、出力側にその時々の測定量T,rHに関するセンサー原信号T_RAW,rH_RAWを提供する。
【0037】
センサー原信号T_RAW,rH_RAWは、センサー11,12からそれぞれASIC10内の後置のデジタル信号処理ユニット13に供給される、例えば、16ビットデータワードの形のデジタルデータワードである。デジタル信号処理ユニット13は、ASIC10内のデジタル信号プロセッサとして構成され、特に、センサー原信号T_RAW,rH_RAWをセンサー信号T_ASIC,rH_ASICとして前処理及び更に処理するとの役割を果たす。
図1の図面によると、デジタル信号処理ユニット13は、少なくとも二つの別個の機能ブロック13.1,13.2を有し、この図面は、デジタル信号処理ユニット13における信号処理の動作形態を以下で分かり易く説明するためだけに選定されており、デジタル信号処理ユニット13の構成に関して制限を加えるものであると解釈してはならないことを指摘しておきたい。
【0038】
信号処理ユニット13又はそのユニットの第一の機能ブロック13.1において、センサー原信号T_RAW,rH_RAWは、先ずは前処理を受ける。この場合、大凡線形化を行なって、それにより、センサー11,12の場合によっては存在する非線形性を修正することができる。更に、前処理の範囲内において、センサー11,12の製造時の偏差により生じる誤差を補正することができる。同様に、湿度センサーの温度に対する感受性及びASIC10の自己加熱を修正することなどが可能である。センサー原信号T_RAW,rH_RAWの前処理と関連して、この前処理が、基本的に様々な形態で実施でき、それが本発明に関して重要な措置でないことを指摘しておきたい。
【0039】
デジタル信号処理ユニット13の第一の機能ブロック13.1での前処理の範囲内においてセンサー原信号T_RAW,rH_RAWから生成された信号は、以下において、センサー信号T_ASIC,rH_ASICと称する。次に、デジタル信号処理ユニット13の第二の機能ブロック13.2において、センサー信号T_ASIC,rH_ASICは、更に処理されて、その時々の測定量T,rHに応じたデューティー比pを有する、パルス幅変調された出力信号PWMに変換される。既に上述した通り、デューティー比pとは、方形状のPWM信号における信号サイクルタイムtp=tH+tLに対するハイレベル(例えば、3.3V)の時間長tHの比率であると理解される、即ち、p=tH/tpが成り立ち、ここで、tLは、PWM信号におけるローレベル(例えば、0V)の時間長を表す。信号サイクルタイムtpが固定のクロック周波数により与えられる場合、時間長tHは、測定量T又はrHの値に比例する。そのため、16ビットのPWM分解能の場合、信号サイクルタイムtpは、216=65,536個の区間又はステップに分割することができる。従って、測定量T,rHの値は、PWM信号PWMのデューティー比pにより(PWM信号がローレベルとして連続する)0~(PWM信号がハイレベルとして固定的に連続する)65,535の範囲内で符号化されて出力することができる。以下において、ハイレベルの時間長tHをデューティー比パラメータ又はPWM値と称する。そして、このデューティー比パラメータによって、その時々のデューティー比pが一義的に特徴付けられ、分解能が16ビット値の場合、デューティー比パラメータを0~65,535の範囲内で仮定することができる。
【0040】
冒頭で考察した部品偏差に関する問題を最小化するために、本発明によるセンサー装置では、本装置が二つの異なるモードにより、即ち、測定動作と校正動作により動作可能であると規定される。測定動作では、その時々の物理的な測定量T,rHの検出、パルス幅変調された出力信号PWMへの測定量の変換及びそれに続く更なる処理に適したアナログ電圧信号UOUTへのPWM信号PWMの変換が行われる。測定動作に先行する校正動作は、センサー装置の複数の装置特有の補正パラメータを決定して、それらを同じくASIC10に集積されたメモリユニット14に保存するとの役割を果たす。メモリユニット14は、有利には、不揮発性メモリユニットとして、例えば、EEPROMとして構成される。この校正を実行するために、基本的に異なる手法が存在する。即ち、この校正は、大凡センサー装置の製造時に事前に工場側で実行されるか、さもなければその後初めてその時々の使用者により実施することができる。校正動作において個々のセンサー装置毎に確定された特定の補正パラメータは、装置特有のデューティー比pにより測定量を符号化したPWM信号PWMを生成するために、測定動作におけるデジタル信号処理ユニット13での信号処理時に用いられる。それによって、場合によっては、異なるセンサー装置において部品偏差を考慮し、そのようにして、測定量に応じた出力信号UOUTの正しい提供を保証することができる。
【0041】
以下において、本発明によるセンサー装置又はその装置の動作のために規定された測定モード及び校正モードを更に説明するために、温度Tを測定量とした例により、装置特有の校正パラメータの決定とその校正パラメータの測定動作での利用を説明する。基本的に、湿度rH又は場合によっては、別の測定量を測定量とした場合にも、それと全く同様に実施することができる。
【0042】
校正動作の実行又は校正動作における装置特有の校正パラメータの決定のために、本発明によるセンサー装置のASIC10は、例えば、周知のI2Cインタフェースとして構成されたインタフェース16を有する。このインタフェース16とそれに対応する信号伝送配線SCL,SCAを介して、センサー装置又はASIC10は、後置の(
図1に図示されていない)制御ユニットと、例えば、I2C-USB変換器を介してPCと接続されている。インタフェース16を介して、固定的に、或いは定義によって与えられたデューティー比p、或いは固定的に与えられたデューティー比パラメータ又はPWM値を有するPWM信号PWMをASIC10から増幅ユニット20に出力することが許容可能である。この場合、本発明による方法の一つの実現可能な実施構成での校正動作の範囲内において、デューティー比パラメータ又はPWM値PWM_FIXLによる第一のPWM信号とデューティー比パラメータ又はPWM値PWM_FIXHによる第二のPWM信号の出力形態を具体的に規定している。デジタル信号処理ユニット13の第二の機能ブロック13.2を図示する
図2aでは、下方のスイッチを介した測定動作と校正動作の切換手法が示されている。この場合、校正動作では、コンポーネント13,2a~13.2cに対して、当該のPWM信号PWMを生成するためのデューティー比パラメータPWM_FIXL,PWM_FIXHが供給され、それに対して、測定動作では、実際の測定値に関するデューティー比パラメータPWM_OUT_NOWが供給される。
【0043】
以下において、PWM_MAXによって、デューティー比パラメータの最大限に出力可能な値を表す。更に、当該のセンサー装置において、16ビットのPWM分解能を前提とする、即ち、実現可能なデューティー比パラメータ又はPWM値は、0~65,535の範囲内に有り、ASIC10に関する供給電圧VDDは、VDD=3.3Vである。
【0044】
図3に模式的に示されている通り、増幅ユニット20によって、その時々のPWM信号PWMは、以下の関係式に基づき、所定のPWM値PWM_OUTを用いてアナログ電圧信号U
OUTに変換される。
U
OUT=k・PWM_OUT+d (式1a)
又は
PWM_OUT=(U
OUT-d)/d (式1b)
ここで、
U
OUT:アナログ電圧信号の値
PWM_OUT:PWM信号のデューティー比パラメータ又はPWM値
k:増幅ユニットの増幅率
d:増幅ユニットのオフセット
【0045】
この例では、実現可能な温度測定を-40℃~+60℃の範囲内のステップに分けるものとしている。即ち、最小出力温度T_OUT_MINは、T_OUT_MIN=-40℃であり、最大出力温度T_OUT_MAXは、T_OUT_MAX=+60℃である。最小出力温度T_OUT_MINは、最小アナログ電圧信号UOUTの値OUT_MIN(OUT_MIN=0V)に対応し、最大出力温度T_OUT_MAXは、最大アナログ電圧信号UOUT(OUT_MAX=10V)に対応する。
【0046】
先ずは、校正動作において、インタフェース16を介して、ASIC10が、低い方の固定的なデューティー比パラメータ値PWM_FIXL=10,000により第一のPWM信号を出力するように指示される。そして、この固定的に設定されたPWM値に対して、増幅ユニット20の後に得られるアナログ出力信号UOUTの値OUT_LOWが測定され、それは、例えば、OUT_LOW=0.573Vとして生じる。
【0047】
次に、高い方の固定的なデューティー比パラメータ値PWM_FIXH=50,000による別の第二のPWM信号PWMの出力が行われ、それに関して測定されたアナログ出力信号UOUTは、例えば、OUT_HIGH=9.573Vの値となる。
【0048】
次に、特定の校正すべきセンサー装置に関して、それらから、パラメータkとdを式1により決定し、それにより、デューティー比p又はそれに対応するPWM値PWM_OUTとアナログ信号UOUTの出力値UOUTの間の実際の関係を以下における一般的な式2a,2b又はここで説明した例に関する特定の式により決定することができる。
k=(OUT_HIGH-OUT_LOW)/(PWM_FIXH-PWM_FIXL) (式2a)
=(9.573V-0.573V)/(50,000-10,000)=0.000225V/LSB
d=OUT_LOW-PWM_FIXL・k (式2b)
=0.573-10,000・0.000225=-1.677V
ここで、
k:増幅ユニットの増幅率
d:増幅ユニットのオフセット
PWM_FIXL:低い方のデューティー比パラメータ値
PWM_FIXH:高い方のデューティー比パラメータ値
OUT_MIN:最小温度でのアナログ出力信号UOUTの値
OUT_HIGH:高い方のデューティー比パラメータ値PWM_FIXHでのアナログ出力信号UOUTの測定値
OUT_LOW:低い方のデューティー比パラメータ値PWM_FIXLでのアナログ出力信号UOUTの測定値
【0049】
増幅ユニット20は、基本的に、如何なる許容範囲の場合でも、それに対応するPWM値が存在するように設計しなければならない。それは、ASIC10から出力されるPWM値が常にPWM_OUT=0とPWM_OUT=PWM_MAXの間に存在しなければならないことを意味する。
【0050】
従って、ここで、ちょうど校正したセンサー装置に対して個別に、増幅ユニット20を介してアナログ電圧信号UOUTに対する値OUT_MIN=0VとOUT_MAX=10Vを精確に出力できるために必要なPWM値PWM_OUT_MINとPWM_OUT_MAXを決定することができる。当該のPWM値PWM_OUT_MINとPWM_OUT_MAXは、一般的には式1bから得られ、ここで説明した特定の例に対しては、以下の通り得られる。
PWM_OUT_MIN=(OUT_MIN-d)/k (式3a)
=(0V+1.667V)/0.000225=7,453
PWM_OUT_MAX=(OUT_MAX-d)/k (式3b)
=(10.000V+1.667V)/0.000225=51,898
ここで、
PWM_OUT_MIN:アナログ電圧信号UOUTにおいてOUT_MIN=0Vを出力するのに必要なPWM値
PWM_OUT_MAX:アナログ電圧信号UOUTにおいてOUT_MAX=10Vを出力するのに必要なPWM値
k:増幅ユニットの増幅率
d:増幅ユニットのオフセット
OUT_MIN:最小温度でのアナログ出力信号UOUTの値
OUT_MAX:最大温度でのアナログ出力信号UOUTの値
【0051】
PWM信号の所定のデューティー比、或いはそれに対応するデューティー比パラメータ又はPWM値を測定量Tの所定の測定値に割り当てるために、装置特有の割当規則がデジタル信号処理ユニット13に保存されている。それは、センサー信号T_ASICのその時々の実際の測定値MV_NOWとそれに対応するデューティー比パラメータPWM_OUT_NOWの間の線形的な関係を線形補間の形で記述する。当該の関係は、
図2aと2bに極めて模式的に図示されており、
図2aは、デジタル信号処理ユニット13の第二の機能ブロック13.2を図示し、
図2bは、実施する線形補間に関する詳細図を図示している。
【0052】
以下において、温度測定に関する具体的な説明例に基づき、
図2bを用いて線形補間を説明する。
【0053】
y軸に沿ってプロットされた値MV_OUT_MINとMV_OUT_MAXは、1/100℃のステップで出力される温度Tの下限値と上限値を表す。そのため、この例では、次の式が成り立つ。
MV_OUT_MIN=-4,000(=T_OUT_MIN・100)
MV_OUT_MAX=6,000(=T_OUT_MAX・100)
【0054】
従って、アナログ電圧信号UOUTに関する最小温度T_OUT_MIN=-40℃では、最小電圧OUT_MIN=0Vが出力され、最大温度T_OUT_MAX=60℃では、最大電圧OUT_MAX=10.000Vが出力される。
【0055】
そのため、変数PWM_OUT_MINとPWM_OUT_MAX、即ち、デューティー比パラメータの最小限界値及び最大限界値は、工場側又は顧客側でのその時々のセンサー装置に関する校正動作の実施後にASIC10のメモリユニット14に保存される、装置特有の補正パラメータを表す。それらは、測定動作において、場合によっては生じる部品偏差を補正するために用いられ、有利には、不揮発性メモリユニット14に、センサー装置の使用期間に渡って持続的に保存されたままである。
【0056】
装置特有の補正パラメータPWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAX以外に、更に、変数MV_OUT_MIN,MV_OUT_MAX、即ち、所望の測定範囲の境界を画定する、出力される温度Tのセンサー測定下限値及びセンサー測定上限値をメモリユニット14に保存することもできる。これらは、必要な場合に、当該のセンサー測定限界値を変更することによって、後で更に好適に変更して、その時々の測定要件に適合させることもできる。
【0057】
そして、その時々のセンサーの実際に検出された測定値MV_NOWに関して、
図2bの実線に沿った二つの限界値PWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAXの間の線形補間によって、それに対応するPWM信号の相応のデューティー比パラメータ又はPWM値PWM_OUT_NOWが得られる。この線形補間は、装置特有の変換規則としてデジタル信号処理ユニット13に保存されている。この場合、次の式が成り立つ。
PWM_OUT_NOW=k
PWM・MV_NOW+d
PWM (式4)
ここで、
PWM_OUT_NOW:PWM信号のデューティー比パラメータ
MV_NOW:センサーの測定値
k
PWM:(PWM_OUT_MAX-PWM_OUT_MIN)/(MV_OUT_MAX-MV_OUT_MIN)
d
PWM:PWM_OUT_MIN-MV_OUT_MIN・k
PWM
この具体的な例では、これらの二つの変数k
PWM及びd
PWMに関して、上述した値に対して、以下の結果が得られる。
k
PWM=(51,898-7,453)/(6,000+4,000)=4.4444
d
PWM=7,453+4,000・4.444444=25,230.78≒25,231
【0058】
例えば、25.00℃の実際の温度測定値が生じた場合、以下の通り、機能ブロック13.2で生成されるPWM信号PWMのそれに対応するPWM値PWM_OUT_NOWを決定することができる。
MV_NOW=T_AKT・100=25.00・100=2,500
PWM_OUT_NOW=MV_NOW・kPWM+dPWM=2,500・4,4444+25,231=36,342.25≒36,342
【0059】
このように選定されたPWM値PWM_OUT_NOW=36,342の場合、式1aにより、アナログ電圧信号UOUTが出力側で精確に6.49995Vの値を有することが保証される。6.5000Vに対する差分は、実際の数から16ビットの数へのPWM_OUT_NOWに関する値の離散化から生じる。
【0060】
デジタル信号処理ユニット13の第二の機能ブロック13.2における線形補間の実施によって、所要のPWM値PWM_OUT_NOWを決定した後、それに続いて、この値を用いて、PWM比較段13.2c、PWMクロック発生ユニット13.2a及びPWMカウンタユニット13.2bによって、方形状の信号PWMを生成して、増幅ユニット20に引き渡すことができる。この場合、PWMカウンタユニット13.2bは、PWMクロック発生ユニット13.2aのクロック信号を供給されて、例えば、クロック信号の立ち上がりエッジ毎にカウントアップする。カウントアップされている間、PWM比較段13.2aは、その出力にHIGH信号(VDD)を出力する。この場合、値PWM_OUTに到達したら、PWM比較段13.2aは、出力信号をHIGH(VDD)からLOW(0V)に切り換える。カウンタがオーバーフローした場合、即ち、カウンタ値が65,535から0に移行した場合、PWM比較段13.2aの出力にHIGH信号(VDD)が出力される。
【0061】
従って、このようにして、存在する部品偏差に応じて、所定の測定値MV_NOWに対する装置特有のPWM値PWM_OUT_NOWが設定される。それは、所定の校正されたセンサー装置に関して、測定動作においてアナログ出力信号UOUTを生成するために用いられる、出力する測定値とPWM値の間の装置特有の関係を規定することを意味する。このことは、メモリユニット14に持続的に保存された装置特有の補正パラメータPWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAXに基づき、その時々のセンサー装置の耐用期間全体に渡って考慮することができる。そのため、本発明による措置によって、ASIC10と増幅ユニット20から成るセンサー装置全体を確実に校正する、或いはASIC10と増幅ユニット20の両方の場合によっては存在する部品偏差を修正することができる。この場合、校正のために、センサー装置を変化する温度に晒す必要は無い、即ち、センサー装置の温度を変化させること無く、校正動作を実行することができる。
【0062】
当然のことながら、前述した実施例以外に、更に別の実施形態も本発明の範囲内に存在する。
【0063】
即ち、本発明に基づき、例えば、増幅ユニットによって、PWM信号からアナログ電流信号を出力側に生成するなどのセンサー装置を構築することもできる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る。
1.
センサー装置において、
変化する物理的な測定量(T,rH)を検出して、出力側にセンサー原信号(T_RAW,rH_RAW)を提供する少なくとも一つのセンサー(11,12)と、
このセンサー(11,12)から提供されるセンサー原信号(T_RAW,rH_RAW)をセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)に前処理し、測定量(T,rH)に応じたデューティー比(p)によりこのセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)をパルス幅変調された出力信号(PWM)として更に処理するためのデジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)であって、そのために、デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)がセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)をパルス幅変調された出力信号(PWM)に変換するために用いる複数の装置特有の補正パラメータ(PWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAX)がメモリユニット(14)に保存されているデジタル信号処理ユニットと、
このパルス幅変調された出力信号(PWM)をアナログ電圧信号又はアナログ電流信号(U
OUT
)に変換する増幅ユニット(20)と、
を有するセンサー装置。
2.
上記1に記載のセンサー装置において、
センサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)の測定値(MV_NOW)とパルス幅変調された出力信号(PWM)のデューティー比パラメータ(PWM_OUT_NOW)の間の線形的な関係を記述する、装置特有の変換規則がデジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)に保存されているセンサー装置。
3.
上記1に記載のセンサー装置において、
装置特有の補正パラメータ(PWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAX)として、少なくともデューティー比パラメータ最小限界値とデューティー比パラメータ最大限界値がメモリユニット(14)に保存されているセンサー装置。
4.
上記1に記載のセンサー装置において、
更に、センサーの測定範囲の境界を画定する、センサー測定最小限界値(MV_OUT_MIN)とセンサー測定最大限界値(MV_OUT_MAX)がメモリユニット(14)に保存されているセンサー装置。
5.
上記1から4までのいずれか一つに記載のセンサー装置において、
装置特有の変換規則として、次の関係式が、
PWM_OUT_NOW=MV_NOW・k
PWM
+d
PWM
ここで、
PWM_OUT_NOW:PWM信号のデューティー比パラメータ
MV_NOW:センサーの測定値
k
PWM
:(PWM_OUT_MAX-PWM_OUT_MIN)/(MV_OUT_MAX-MV_OUT_MIN)
d
PWM
:PWM_OUT_MIN-MV_OUT_MIN・k
PWM
PWM_OUT_MAX:デューティー比パラメータ最大限界値
PWM_OUT_MIN:デューティー比パラメータ最小限界値
MV_OUT_MAX:センサー測定最大限界値
MV_OUT_MIN:センサー測定最小限界値
デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)に保存されているセンサー装置。
6.
上記1から5までのいずれか一つに記載のセンサー装置において、
前記の少なくとも一つのセンサー(11,12)、デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)及びメモリユニット(14)が一緒に一つのASIC(10)内に配置されるとともに、前記の増幅ユニット(20)が、このASIC(10)と別個に構成されているセンサー装置。
7.
上記6に記載のセンサー装置において、
前記のメモリユニット(14)が不揮発性メモリユニットとして構成されているセンサー装置。
8.
上記1から7までのいずれか一つに記載のセンサー装置において、
前記の増幅ユニット(20)がローパスフィルターを備えた増幅回路として構成されているセンサー装置。
9.
上記1から8までのいずれか一つに記載のセンサー装置において、
二つのセンサー(11,12)を備え、その中の第一のセンサー(11)が温度センサーとして構成され、第二のセンサー(12)が湿度センサーとして構成されているセンサー装置。
10.
センサー装置を測定動作と校正動作により動作させる方法において、
測定動作では、
少なくとも一つのセンサー(11,12)によって、変化する物理的な測定量(T,rH)を検出して、出力側にセンサー原信号(T_RAW,rH_RAW)を提供し、
デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)によって、センサー(11,12)から提供されるセンサー原信号(T_RAW,rH_RAW)をセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)に前処理して、このセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)を測定量(T,rH)に応じたデューティー比によりパルス幅変調された出力信号(PWM)に変換し、
増幅ユニット(20)によって、このパルス幅変調された出力信号(PWM)をアナログ電圧信号又はアナログ電流信号(U
OUT
)に変換し、
測定動作に先行する校正動作では、
測定動作において信号処理ユニット(13;13.1,13.2)によりセンサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)をパルス幅変調された出力信号(PWM)に変換するために用いられる複数の装置特有の補正パラメータ(PWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAX)がメモリユニット(14)に保存される、
方法。
11.
上記10に記載の方法において、
校正動作では、センサー信号(T_ASIC,rH_ASIC)の測定値(MV_NOW)とパルス幅変調された出力信号(PWM)のデューティー比パラメータ(PWM_OUT_NOW)の間の線形的な関係を記述する、装置特有の変換規則がデジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)に保存される方法。
12.
上記10に記載の方法において、
校正動作では、装置特有の補正パラメータ(PWM_OUT_MIN,PWM_OUT_MAX)として、少なくともデューティー比パラメータ最小限界値とデューティー比パラメータ最大限界値がメモリユニット(14)に保存される方法。
13.
上記10に記載の方法において、
更に、センサーの測定範囲の境界を画定する、センサー測定最小限界値(MV_OUT_MIN)とセンサー測定最大限界値(MV_OUT_MAX)がメモリユニット(14)に保存される方法。
14.
上記10から13までのいずれか一つに記載の方法において、
装置特有の変換規則として、次の関係式が、
PWM_OUT_NOW=MV_NOW・k
PWM
+d
PWM
ここで、
PWM_OUT_NOW:PWM信号のデューティー比パラメータ
MV_NOW:センサーの測定値
k
PWM
:(PWM_OUT_MAX-PWM_OUT_MIN)/(MV_OUT_MAX-MV_OUT_MIN)
d
PWM
:PWM_OUT_MIN-MV_OUT_MIN・k
PWM
PWM_OUT_MAX:デューティー比パラメータ最大限界値
PWM_OUT_MIN:デューティー比パラメータ最小限界値
MV_OUT_MAX:センサー測定最大限界値
MV_OUT_MIN:センサー測定最小限界値
デジタル信号処理ユニット(13;13.1,13.2)に保存される方法。
15.
上記10から14までのいずれか一つに記載の方法において、
前記の校正動作が、センサー装置の温度を変化させること無く実行される方法。
【符号の説明】
【0064】
10 ASIC
11 第一のセンサー(温度センサー)
12 第二のセンサー(湿度センサー)
13 デジタル信号処理ユニット
13.1 デジタル信号処理ユニット13の第一の機能ブロック
13.2 デジタル信号処理ユニット13の第二の機能ブロック
13.2a PWMクロック発生ユニット
13.2b PWMカウンタユニット
13.2c PWM比較段
14 メモリユニット
15 LDO電圧コントローラー
16 インタフェース
20 増幅ユニット
k 増幅ユニットの増幅率
d 増幅ユニットのオフセット
tp PWM信号の信号サイクルタイム
tH ハイレベルの時間長
GND 地気
MV_NOW センサーの測定値
MV_OUT_MAX センサー測定最大限界値
MV_OUT_MIN センサー測定最小限界値
PWM_FIXL 低い方のデューティー比パラメータ値
PWM_FIXH 高い方のデューティー比パラメータ値
PWM_OUT_MAX デューティー比パラメータ最大限界値
PWM_OUT_MIN デューティー比パラメータ最小限界値
PWM パルス幅変調された出力信号
PWM_OUT PWM信号のデューティー比パラメータ又はPWM値
PWM_OUT_NOW 実際の測定値に関するPWM信号のデューティー比パラメータ
rH_ASIC 測定量rH(湿度)に関するセンサー信号
rH_RAW 測定量rH(湿度)に関するセンサー原信号
SCL,SCA 信号伝送配線
T_ASIC 測定量T(温度)に関するセンサー信号
T_RAW 測定量T(温度)に関するセンサー原信号
UOUT 測定量に応じた出力信号(アナログ電圧信号又はアナログ電流信号)の値
VDD 供給電圧