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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ダイアフラムバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/16 20060101AFI20240220BHJP
   F16K 7/12 20060101ALI20240220BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20240220BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F16K7/16 D
F16K7/12 A
F16K27/02
F16K27/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020011375
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021116876
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】木下 良介
(72)【発明者】
【氏名】窪井 孝幸
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-159307(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/018539(JP,A1)
【文献】特開2006-336701(JP,A)
【文献】国際公開第2019/052717(WO,A1)
【文献】特開2016-176490(JP,A)
【文献】特開2014-145381(JP,A)
【文献】特表2007-521449(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/16
F16K 7/12
F16K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を有しかつ前記流体通路の一部となる通路孔が開口する弁座を有するバルブボディと、
前記弁座に着座することにより前記通路孔を閉塞する弁体が一端部に設けられるとともに他端部にプラグが設けられたダイアフラムと、
前記ダイアフラムの前記プラグに連結され、前記弁座に対して前記弁体が接離する方向である開閉方向に前記ダイアフラムを駆動するアクチュエータと、
前記バルブボディに固定用ボルトによって固定されて前記アクチュエータを支持するボンネットとを備え、
前記バルブボディの熱膨張により前記弁座が変位する方向と、
前記ダイアフラムの熱膨張により前記弁体が変位する方向とが同一方向であることを特徴とするダイアフラムバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のダイアフラムバルブにおいて、
前記バルブボディは、前記固定用ボルトが締め込まれることにより前記ボンネットが密着する取付面を有し、
前記固定用ボルトは、前記開閉方向に延び、
前記開閉方向において、前記固定用ボルトによって前記バルブボディが前記ボンネットに向けて押される押圧位置と前記取付面との間隔は、前記弁座と前記取付面との間隔より短いことを特徴とするダイアフラムバルブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のダイアフラムバルブにおいて、
前記バルブボディの熱膨張により前記弁座が変位する際の変位量と、
前記ダイアフラムの熱膨張により前記弁体が変位する際の変位量との差が予め定めた許容範囲に入っていることを特徴とするダイアフラムバルブ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一つに記載のダイアフラムバルブにおいて、
前記バルブボディと前記ダイアフラムとは、それぞれ樹脂材料によって形成されていることを特徴とするダイアフラムバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を有するダイアフラムを備えたダイアフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイアフラムに弁体が設けられたダイアフラムバルブは、例えば特許文献1に記載されているように、流体温度および外気温の影響を受けて動作や流量が不安定になることが知られている。
また、従来のダイアフラムバルブとしては、弁座を有するバルブボディと、弁体を有するダイアフラムとが樹脂材料によって形成され、ダイアフラムにアクチュエータを接続するためのプラグが一体に成形されたものがある。プラグは、柱状に形成されており、ダイアフラムの中央部から弁体とは反対方向に向けて突出してアクチュエータに連結されている。アクチュエータは、バルブボディの一端部に固定されたボンネットに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-223318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルブボディとダイアフラムとが樹脂材料によって形成されたダイアフラムバルブにおいては、バルブボディにボンネットを固定する固定構造に問題があった。これは、弁座に対する弁体の位置がバルブボディとダイアフラムの熱膨張の影響を受けるからである。すなわち、流体温度や外気温が上昇してバルブボディとダイアフラムとが熱膨張を起こすと、バルブボディが固定構造によって拘束される部分から膨張することが原因で弁体と弁座との隙間が狭くなり、ダイアフラムが想定通りに動作しなくなるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、流体温度または外気温の上昇に伴う熱膨張の影響を低減したダイアフラムバルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係るダイアフラムバルブは、流体通路を有しかつ前記流体通路の一部となる通路孔が開口する弁座を有するバルブボディと、前記弁座に着座することにより前記通路孔を閉塞する弁体が一端部に設けられるとともに他端部にプラグが設けられたダイアフラムと、前記ダイアフラムの前記プラグに連結され、前記弁座に対して前記弁体が接離する方向である開閉方向に前記ダイアフラムを駆動するアクチュエータと、前記バルブボディに固定用ボルトによって固定されて前記アクチュエータを支持するボンネットとを備え、前記バルブボディの熱膨張により前記弁座が変位する方向と、前記ダイアフラムの熱膨張により前記弁体が変位する方向とが同一方向になっているものである。
【0007】
本発明は、前記ダイアフラムバルブにおいて、前記バルブボディは、前記固定用ボルトが締め込まれることにより前記ボンネットが密着する取付面を有し、前記固定用ボルトは、前記開閉方向に延び、前記開閉方向において、前記固定用ボルトによって前記バルブボディが前記ボンネットに向けて押される押圧位置と前記取付面との間隔は、前記弁座と前記取付面との間隔より短くてもよい。
【0008】
本発明は、前記ダイアフラムバルブにおいて、前記バルブボディの熱膨張により前記弁座が変位する際の変位量と、前記ダイアフラムの熱膨張により前記弁体が変位する際の変位量との差が予め定めた許容範囲に入っていてもよい。
【0009】
本発明は、前記ダイアフラムバルブにおいて、前記バルブボディと前記ダイアフラムとは、それぞれ樹脂材料によって形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るダイアフラムバルブにおいては、流体温度または外気温が上昇した後に弁体と弁座との間隔が狭くなる従来のダイアフラムバルブと較べると、弁体と弁座の隙間の変化が小さく抑えられる。したがって、本発明によれば、流体温度または外気温の上昇に伴う熱膨張の影響を低減したダイアフラムバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係るダイアフラムバルブの側面図である。
図2図2は、バルブボディの平面図である。
図3図3は、図2におけるIII-III線断面図である。
図4図4は、図2におけるIV-IV線断面図である。
図5図5は、バルブボディの要部を拡大して示す断面図である。
図6図6は、バルブボディとボンネットとの接続部分を拡大して示す断面図である。
図7図7は、ボルト座面位置およびキャビティ深さと弁座変位量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るダイアフラムバルブの一実施の形態を図1図7を参照して詳細に説明する。図1に示すダイアフラムバルブ1は、図1において最も下に描かれているバルブボディ2と、このバルブボディ2に複数の固定用ボルト3によって固定されたボンネット4と、このボンネット4に支持されたアクチュエータ5とを備えている。バルブボディ2は、例えばフッ素樹脂などの樹脂材料によって形成され、ボンネット4は、例えばステンレス鋼などの金属材料によって形成されている。
【0013】
バルブボディ2は、ボンネット4が取付けられる本体11と、本体11から一側方(図1においては左方)に向けて突出する上流側継手12と、本体11から他側方に向けて突出する下流側継手13とを有している。本体11におけるボンネット4が取付けられる一端部には、ボンネット4側から見て四角形の取付座14(図2参照)が形成されている。また、本体11には、図1および図4に示すように、取付座14の四隅部分が所定の厚みの板となって残るように切り欠き15が形成されている。以下においては、取付座14の四隅部分からなる板状部分を単に締結部16という。
【0014】
取付座14は、図2に示すように、中央部に円形の凹部からなるキャビティ21が開口する平坦な取付面22と、取付座14の締結部16に開口する4つの貫通孔23と、キャビティ21と4つの貫通孔23との間に開口する環状溝24とを有している。キャビティ21および貫通孔23は、それぞれ取付面22に対して直交する方向に延びている。
【0015】
貫通孔23は、固定用ボルト3を通すための孔である。固定用ボルト3は、取付面22に対して直交する方向に延びており、図1に示すように、頭部3aが本体11の切り欠き15の中に位置するように切り欠き15側から貫通孔23に挿入され、ボンネット4にねじ込まれている。このように固定用ボルト3がボンネット4にねじ込まれることにより、固定用ボルト3の頭部3aが締結部16の切り欠き側端面であるボルト座面16aをボンネット4に向けて押し、ボンネット4がバルブボディ2の取付面22に密着する。
【0016】
この実施の形態においては、締結部16のボルト座面16aが本発明でいう「固定用ボルトによってバルブボディがボンネットに向けて押される押圧位置」に相当する。ボルト座面16aは、図5に示すように、取付面22とは直交する方向において、取付面22との間隔がAとなるような位置に形成されている。
【0017】
環状溝24は、図2に示すように、キャビティ21と同一軸線上に位置するように形成されている。環状溝24の中には、バルブボディ2とボンネット4との間をシールするためのシール部材25(図6参照)が挿入される。
上流側継手12と下流側継手13は、配管(図示せず)を接続するためのものである。配管には、液体または気体からなる流体が流される。この流体としては、腐食性を有する流体を用いることができる。
【0018】
上流側継手12と下流側継手13は、それぞれ円柱状に形成されており、それぞれの外周部には、配管を取付けるために雄ねじ26,27が形成されている。上流側継手12の中心部には、上流側通路孔31が形成されている。上流側通路孔31は、上流側継手12からバルブボディ2の本体11内をキャビティ21に向かって延びており、キャビティ21の底の中心部に開口している。上流側通路孔31がキャビティ21の底で開口する方向は、キャビティ21の底から開口部に向かう方向である。
【0019】
キャビティ21の底であって、上流側通路孔31の開口の周囲には、環状の突条からなる弁座32が形成されている。すなわち、この実施の形態による弁座32の中心部には、上流側通路孔31が開口している。弁座32には、後述するダイアフラム33(図6参照)の弁体34が着座する。ダイアフラム33は、弁座32に対して弁体34が接離する方向である開閉方向(図6においては上下方向)に後述するアクチュエータ5によって駆動される。ダイアフラム33の詳細な説明は後述する。この実施の形態による弁座32は、図5に示すように、上述した開閉方向において、バルブボディ2の取付面22から所定の長さだけ離れた位置に形成されている。弁座32は、取付面22との間の間隔がBとなるような位置に形成されている。
【0020】
下流側継手13の中心部には、図3に示すように、下流側通路孔35が形成されている。下流側通路孔35は、下流側継手13からバルブボディ2の本体11内をキャビティ21に向かって延びており、キャビティ21の底であって、弁座32より径方向の外側に開口している。このため、このバルブボディ2には、上流側通路孔31と、下流側通路孔35と、キャビティ21内の空間Sとからなる流体通路36が形成されている。
【0021】
ボンネット4は、図6に示すように、バルブボディ2のキャビティ21に嵌合する円筒41を有し、バルブボディ2の取付面22に密着するように形成されている。
アクチュエータ5は、ボンネット4の円筒41の中に挿入される駆動軸42を有し、この駆動軸42がキャビティ21および円筒41と同一軸線上に位置するようにボンネット4に取付けられている。円筒41の内周部には、駆動軸42との間をシールするためにシール部材43が装着されている。
【0022】
アクチュエータ5は、駆動軸42を上述した開閉方向に駆動する電動式の駆動源(図示せず)を備えている。
駆動軸42における、キャビティ21の底に近接する先端部には、ダイアフラム33が取付けられている。
ダイアフラム33は、例えばフッ素樹脂などの樹脂材料によって所定の形状に形成されている。この実施の形態によるダイアフラム33は、円板状のダイアフラム本体44と、このダイアフラム本体44の一端部に突設された弁体34と、ダイアフラム本体44の他端部に突設されたプラグ45とを備えている。
【0023】
ダイアフラム本体44の外周部には、厚みが相対的に厚いリング44aが設けられている。このリング44aは、キャビティ21の底の外周部と、ボンネット4の円筒41とに挟まれて保持されている。図6に示すように、リング44aがキャビティ21の底と円筒41とに挟まれることにより、ダイアフラム33とキャビティ21の底との間に上述した空間Sの一部からなる流体室46が形成される。流体室46は、流体通路36の一部になる。
【0024】
弁体34は、ダイアフラム本体44より外径が小さくかつ弁座32より外径が大きい円板状に形成されており、ダイアフラム本体44の中心部に配置されている。弁体34が弁座32に着座することにより、上流側通路孔31が閉塞される。
プラグ45は、ダイアフラム本体44の中心部から弁体34とは反対方向に所定の長さだけ突出するように形成されており、駆動軸42の先端面に当接する円板部45aと、駆動軸42にねじ込まれて連結されるねじ部45bとを有している。ダイアフラム33は、ねじ部45bが駆動軸42に螺着されることによって、駆動軸42に取付けられている。
【0025】
このように構成されたダイアフラムバルブ1においては、ダイアフラム33の弁体34が弁座32から離れることにより開き、弁体34が弁座32に着座することにより閉じる。ダイアフラムバルブ1が開くことにより、流体が上流側通路孔31からキャビティ21内の流体室46に流入し、この流体室46から下流側通路孔35に流れ込む。
【0026】
流体の温度が上昇したり、このダイアフラムバルブ1が設置されている環境の温度(外気温)が上昇すると、樹脂材料からなるバルブボディ2とダイアフラム33とが他の部品と較べて大きな膨張率で熱膨張を起こす。
バルブボディ2は、ボルト座面16aがバルブボディ2の変形を拘束するように作用することから、ボルト座面16aに対してボンネット4とは反対側に熱膨張によって膨張するようになる。
【0027】
一方、ダイアフラム33は、アクチュエータ5の駆動軸42から突出する部分であるプラグ45や弁体34やダイアフラム本体44が膨張することに起因して、弁体34が駆動軸42から離間する方向(図6においては下方向)に熱膨張によって変位するようになる。
この実施の形態によるバルブボディ2は、ダイアフラム33が熱膨張を起こして弁体34が弁座32に向けて変位したときの開度変化を最小にするために、熱膨張により弁座32が弁体34と同一方向に変位するように構成されている。詳述すると、弁座32がボルト座面16aより取付面22から離れるように形成されている。すなわち、弁座32に対して弁体34が接離する方向である開閉方向において、図5に示すように、ボルト座面16a(押圧位置)と取付面22との間隔Aが、弁座32と取付面22との間隔Bより短くなっている。
【0028】
熱膨張による変形量は、変形量=線膨張係数×全長×温度差という計算式に基づいて演算により求めることができる。ダイアフラム33の変形量は、開閉方向において駆動軸42から突出する部分の長さを全長として簡易的に上記の計算式から求めることができる。バルブボディ2の取付面22と弁座32との間の部分が変形して弁座32が取付面22から離間する方向に移動するときの変位量は、上記の間隔Bから間隔Aを差し引いた値を全長として簡易的に上記の計算式から求めることができる。このため、キャビティ21の深さ(間隔B)と間隔Aとに基づいて弁座32の変位量を弁体34の変位量に設定することは簡易的に計算が可能である。
【0029】
バルブボディ2のキャビティ21の深さ(間隔B)と、ボルト座面16aの位置(取付面22とボルト座面16aとの間隔A)とを変えて熱膨張時の弁座32の変位量をシミュレーションによって求めたところ、図7に示すような結果が得られた。
図7の縦軸は弁座32の変位量を示し、横軸はキャビティ21の深さを示す。弁座32の変位量は、0より上側すなわちプラス側となると、弁座32が膨張以前よりも取付面22側に変位することを示している。また、このシミュレーションは、ボルト座面16aの位置を第1位置~第5位置からなる5つの位置においてそれぞれ実施した。第1位置~第5位置のうち、第1位置は、取付面22に最も近い(間隔Aが最も短い)位置で、第2位置~第5位置は、間隔Aが順次大きくなるように第1位置から離れた位置である。
【0030】
図7から分かるように、ボルト座面16a位置が太線で示すように第1位置にある場合は、キャビティ21の深さがB1であるときに弁座32の変位量が0になり、キャビティ21の深さがB1より大きくなることによって、弁座32が取付面22より離間するように変位する。
ボルト座面16a位置が破線で示すように第2位置にある場合は、キャビティ21の深さがB1より深いB2であるときに弁座32の変位量が0になり、キャビティ21の深さがB2より大きくなることによって、弁座32が取付面22より離間するように変位する。
ボルト座面16a位置が二点鎖線で示すように第3位置にある場合は、キャビティ21の深さがB2より深いB3であるときに弁座32の変位量が0になり、キャビティ21の深さがB3より大きくなることによって、弁座32が取付面22より離間するように変位する。
【0031】
熱膨張時に弁座32の変位量が0であると、ダイアフラム33の熱膨張により弁体34が変位することによって開度が小さくなってしまう。このため、弁座32の変位量は、0より下側、すなわちマイナス側となるように設定する必要があり、弁体34の変位量との差が予め定めた許容範囲に入ることによって、熱膨張時の開度変化を少なく抑えることが可能になる。弁座32の変位量と弁体34の変位量との差が予め定めた許容範囲に入るようにするためには、キャビティ21の深さとボルト座面16a位置とを図7中に示す範囲Cに入るように設定することによって実現可能である。
【0032】
この実施の形態によるダイアフラムバルブ1においては、バルブボディ2の熱膨張により弁座32が変位する方向と、ダイアフラム33の熱膨張により弁体34が変位する方向とが同一方向であるから、流体温度または外気温が上昇した後に弁体と弁座との間隔が狭くなる従来のダイアフラムバルブと較べると、弁体34と弁座32の隙間の変化が小さく抑えられる。このため、この実施の形態によれば、流体温度または外気温の上昇に伴う熱膨張の影響を受け難いダイアフラムバルブを提供することができる。
【0033】
この実施の形態によるダイアフラムバルブ1においては、弁座32に対して弁体34が接離する方向である開閉方向において、固定用ボルト3によってバルブボディ2がボンネット4に向けて押される押圧位置であるボルト座面16aと取付面22との間隔Aは、弁座32と取付面22との間隔Bより短い。
このため、バルブボディ2が熱膨張を起こしたときの弁座32の変位量を間隔Aと間隔Bとに基づいて高い精度で求めることができる。
【0034】
また、この実施の形態によるダイアフラムバルブ1においては、バルブボディ2の熱膨張により弁座32が変位する際の変位量と、ダイアフラム33の熱膨張により弁体34が変位する際の変位量との差が予め定めた許容範囲に入るように構成されている。このため、熱膨張時の開度変化が0となるか、0ではなくても無視できるように小さくすることができるから、温度が上昇したときに流体の流量の精度が高いダイアフラムバルブを提供することができる。
【0035】
この実施の形態によるダイアフラムバルブ1のバルブボディ2とダイアフラム33とは、それぞれ樹脂材料によって形成されている。このため、バルブボディ2とダイアフラム33を形成する材料として例えばフッ素樹脂などの耐腐食性が高い樹脂材料を使用することができるから、腐食性を有する流体が流れるダイアフラムバルブにおいて、温度上昇時の開度変化を最小に抑えることが可能になる。
【0036】
上述した実施の形態においては、ボルト座面16aがバルブボディ2の切り欠き15の中に露出する例を示した。しかし、本発明はこのような限定にとらわれることはなく、ボルト座面16aがバルブボディ2内に隠れるような構成を採ることができる。この場合は、バルブボディ2に固定用ボルト3の頭部3aが挿入されるように座繰りとなる穴を切り欠き15の代わりに形成し、この穴と貫通孔23との境界にボルト座面16aを形成する。
【0037】
また、上述した実施の形態においては、固定用ボルト3がボンネット4にねじ込まれる例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、固定用ボルト3をボンネット4側からバルブボディ2のねじ孔にねじ込んでバルブボディ2にボンネット4を固定する構成を採ることができる。この場合、「固定用ボルトによってバルブボディがボンネットに向けて押される押圧位置」は、バルブボディ2のねじ孔に螺着された固定用ボルト3の先端の位置となる。
【符号の説明】
【0038】
1…ダイアフラムバルブ、2…バルブボディ、3…固定用ボルト、4…ボンネット、5…アクチュエータ、16a…ボルト座面(押圧位置)、22…取付面、31…上流側通路孔(通路孔)、32…弁座、33…ダイアフラム、34…弁体、36…流体通路、45…プラグ、A,B…間隔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7