(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】耐火材固定部品、仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240220BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
E04B1/94 A
E04B1/94 D
E04B2/74 551Z
(21)【出願番号】P 2020015595
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】小濱 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】牛山 歩
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 2/56 - 2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
H形鋼である梁の耐火性能を向上させるために用いられる耐火材を、前記梁に対して固定するための耐火材固定部品であって、
前記梁のフランジ部の側方から該フランジ部の側端部と係合する係合部と、
前記耐火材を保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、前壁と、該前壁の両側端部の各々に設けられた側壁と、を有し、
前記保持部は、前記前壁によって前記耐火材を前方から覆った状態で、前記側壁の間に前記耐火材を挟み込んで保持し、
前記係合部が前記梁の前記フランジ部に係合したときに、前記保持部に保持された前記耐火材は、前記梁の両フランジ部とウェブ部とで形成される空間である梁空間に配置されることを特徴とする耐火材固定部品。
【請求項2】
前記係合部は、前記梁の上側フランジ部の側端部と係合する第1係合部と、
前記梁の下側フランジ部の側端部と係合する第2係合部と、を備え
、
前記第1係合部は、前記上側フランジ部の側端部を上下方向から挟み込むように、前方から前記上側フランジ部に係合し、
前記第2係合部は、前記下側フランジ部の側端部を上下方向から挟み込むように、前方から前記下側フランジ部に係合することを特徴とする請求項1に記載の耐火材固定部品。
【請求項3】
前記係合部は、前記前壁から前記側壁が張り出している向きと同じ向きに張り出し
、
前記係合部が前記梁の前記フランジ部に係合したときに、前記保持部に保持された前記耐火材は、前記前壁と前記ウェブ部とに挟まれて配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火材固定部品。
【請求項4】
請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の耐火材固定部品と、
前記耐火材固定部品の前記係合部がフランジ部に係合したH形鋼である梁と、
前記耐火材固定部品の前記保持部に保持された耐火材と、
前記保持部の前記前壁に締結部材にて固定された面材と、を備えることを特徴とする建物の仕切壁。
【請求項5】
請求項4に記載の仕切壁の施工方法であって、
前記耐火材固定部品の前記保持部に前記耐火材を保持させることと、
前記梁の前記フランジ部に前記耐火材固定部品の前記係合部を係合することと、
前記保持部の前記前壁に前記面材を固定することと、を含むことを特徴とする仕切壁の施工方法。
【請求項6】
請求項4に記載の仕切壁を、住戸間を仕切るための界壁として備えることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火材固定部品、仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物に係り、特に、耐火性能を向上させるために用いられる耐火材を梁に対して固定するための耐火材固定部品、該耐火材固定部品を用いた仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火建築物では、H形鋼である梁にロックウールなどの耐火被覆材が巻き付けられて被覆される。集合住宅や長屋等の建物においては、耐火被覆材が巻き付けられた梁の下に、住戸間を仕切るための仕切壁(界壁)が配置されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
建物において、住居間に入り組んだ場所が生じるレイアウトでは、仕切壁の配置が直線状ではなく出隅部が生じる。この場合、梁の連結部の周囲では、耐火被覆材を梁に巻き付ける作業が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
準耐火建築物などの耐火建築物以外の建築物においては、H形鋼である梁の両フランジ部とウェブ部とで形成される空間である梁空間に、遮炎及び遮音を目的としてロックウールなどの耐火材を詰め込むようにして挿入することがあった。
【0006】
梁空間に耐火材を詰め込む際に、耐火材を適切な位置に配置することが困難であった。また、耐火材としてロックウールを用いる場合以外、例えば、耐火材として石膏ボードを用いる場合、梁空間に耐火材を配置して耐火構造を構築することは困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、梁空間にロックウールや石膏ボードなどの耐火材を適切な位置かつ容易に配置して固定することが可能な耐火材固定部品、該耐火材固定部品を用いた仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の耐火材固定部品によれば、H形鋼である梁の耐火性能を向上させるために用いられる耐火材を、前記梁に対して固定するための耐火材固定部品であって、前記梁のフランジ部の側方から該フランジ部の側端部と係合する係合部と、前記耐火材を保持する保持部と、を備え、前記保持部は、前壁と、該前壁の両側端部の各々に設けられた側壁と、を有し、前記保持部は、前記前壁によって前記耐火材を前方から覆った状態で、前記側壁の間に前記耐火材を挟み込んで保持し、前記係合部が前記梁の前記フランジ部に係合したときに、前記保持部に保持された前記耐火材は、前記梁の両フランジ部とウェブ部とで形成される空間である梁空間に配置されることにより解決される。
【0009】
上記のように構成された本発明の耐火材固定部品によれば、保持部に耐火材を保持して、係合部を梁のフランジ部に係合させることで、梁空間にロックウールや石膏ボードなどの耐火材を適切な位置かつ容易に配置して固定することが可能となる。
また、作業時に耐火材固定部品の保持部から耐火材が脱落してしまうことが抑制される。
【0010】
また、上記の耐火材固定部品に関して好適な構成を述べると、前記係合部は、前記梁の上側フランジ部の側端部と係合する第1係合部と、前記梁の下側フランジ部の側端部と係合する第2係合部と、を備え、前記第1係合部は、前方から前記上側フランジ部に係合して前記上側フランジ部の側端部を上下方向から挟み込み、前記第2係合部は、前方から前記下側フランジ部に係合して前記下側フランジ部の側端部を上下方向から挟み込むとよい。
上記の構成では、耐火材固定部品が上側と下側の2か所で梁のフランジ部と係合するため、耐火材固定部品及び耐火材の梁空間における位置が安定したものとなる。
また、異なる厚み(例えば、約6mm、約9mm、約12mmなど)のフランジ部に対して係合することが可能となる。
【0011】
また、上記の耐火材固定部品に関してより好適な構成を述べると、前記係合部は、前記前壁から前記側壁が張り出している向きと同じ向きに張り出し、前記係合部が前記梁の前記フランジ部に係合したときに、前記保持部に保持された前記耐火材は、前記前壁と前記ウェブ部とに挟まれて配置されるとよい。
上記の構成では、耐火材固定部品を梁のフランジ部に係合させる際の方向が、側壁が張り出している方向と一致するため、作業時に耐火材固定部品の保持部から耐火材が脱落してしまうことが抑制される。
【0012】
また、前記課題は、本発明の仕切壁によれば、上記の耐火材固定部品と、前記耐火材固定部品の前記係合部がフランジ部に係合したH形鋼である梁と、前記耐火材固定部品の前記保持部に保持された耐火材と、前記保持部の前記前壁に締結部材にて固定された面材と、を備えることにより解決される。
【0013】
上記のように構成された本発明の仕切壁によれば、耐火材固定部品を利用することで、適切な位置に耐火材が配置されるとともに、耐火材固定部品が面材の下地としても機能するため、施工作業の効率が向上する。
【0014】
また、前記課題は、本発明の仕切壁の施工方法によれば、上記の仕切壁の施工方法であって、前記耐火材固定部品の前記保持部に前記耐火材を保持させることと、前記梁の前記フランジ部に前記耐火材固定部品の前記係合部を係合することと、前記保持部の前記前壁に前記面材を固定することと、を含むことにより解決される。
【0015】
また、前記課題は、本発明の建物によれば、上記の仕切壁を、住戸間を仕切るための界壁として備えることにより解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の耐火材固定部品によれば、梁空間にロックウールや石膏ボードなどの耐火材を適切な位置かつ容易に配置して固定することが可能な耐火材固定部品、該耐火材固定部品を用いた仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】本発明の一実施形態に係る耐火材固定金物(耐火材固定部品)の斜視図である。
【
図9A】第2保持部に石膏ボード(耐火材)を保持した状態の後の耐火材固定金物の模式的斜視図である。
【
図9B】第1保持部にロックウール(耐火材)を保持した状態の後の耐火材固定金物の模式的斜視図である。
【
図10】第2保持部に石膏ボード(耐火材)を保持した耐火材固定金物を梁に取り付けた状態を示す模式図である。
【
図11】建物における界壁(仕切壁)の配置の例を示す説明図である。
【
図12】界壁、梁及び耐火材を保持した耐火材固定金物の位置関係を示す模式図である。
【
図13】梁に取り付けた耐火材固定金物に面材ボードを固定した状態を示す模式図である。
【
図15】変形例に係る耐火材固定金物(耐火材固定部品)の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る耐火材固定部品、仕切壁、仕切壁の施工方法及び建物について、
図1乃至
図15を参照して、その構成を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、当然ながら、本発明にはその等価物が含まれ得る。
【0019】
また、以下の説明中、「厚み方向」とは、界壁1の厚み方向であり、梁Hのウェブ部H3の厚み方向と一致する。また、厚み方向における一端側を「前側」と呼ぶこととし、他端側を「後側」と呼ぶこととする。また、以下において各部材の位置、姿勢及び状態について説明する際には、特に断る場合を除き、当該各部材が建物内の正規の設置位置に配置された状況を想定して説明することとする。
【0020】
<界壁1(仕切壁)の構成について>
本実施形態に係る耐火材固定部品について説明するにあたり、当該耐火材固定部品によって構築される界壁1及びその周辺の構成について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、界壁1及びその周辺の構成を示す図である。界壁1は、集合住宅や長屋等の建物において住戸間を仕切る仕切壁である。界壁1は、主に、梁H、スタッド2、ランナー4及び面材ボードP(例えば、石膏ボード)を有して構成されている。本実施形態の建物としては、準耐火建築物が想定される。
【0021】
スタッド2は、上下方向に長く延びた鋼材であり、ランナー4の延出方向に沿って一定間隔毎に配置されている。また、スタッド2は、厚み方向において二つのスタッド2がスタッド2間に隙間を設けた状態で並ぶように配置されている。また、厚み方向において並ぶ二つのスタッド2のうち、前側(表側)に位置するスタッド2の端面に面材ボードPが取り付けられており、同様に、後側(裏側)に位置するスタッド2の端面に面材ボードPが取り付けられている。
【0022】
各スタッド2は、ランナー4によって把持されている。ランナー4は、スタッド2を設置するために用いられるレール状の鋼材であり、具体的には断面コの字状の溝形鋼によって構成されている。より詳しく説明すると、ランナー4は、上壁と上壁の両側端から垂下した一対の垂下壁とを有し、一対の垂下壁の間にスタッド2の上端部が挟み込まれることでスタッド2を把持している。
【0023】
また、ランナー4は、厚み方向において二つのランナー4がランナー4間に隙間を設けた状態で並ぶように配置されている。なお、厚み方向におけるスタッド2間の隙間及びランナー4間の隙間は、それぞれ、遮音上必要なサイズ(約10mm)に設定されている。
【0024】
界壁1の上部位置には、
図2に示すように、H形鋼からなる梁Hが配置されている。この梁Hは、上階の床を構成する部材(具体的には、不図示の床パネル)を支持するための部材であり、水平に延出している。
【0025】
<梁Hの構成について>
図3を参照して、梁Hについて説明する。梁Hは、H形鋼であり、平行に対面して配設される矩形板状の上側フランジ部H1及び下側フランジ部H2と、上側フランジ部H1と下側フランジ部H2の中央を架橋するウェブ部H3と、を有して構成されている。そして、これらの構成により、縦断面がH字形状の鋼材の梁となっている。
【0026】
上側フランジ部H1及び下側フランジ部H2とウェブ部H3とで囲まれた略直方体形状の空間を梁空間H4とすると、この梁空間H4は、ウェブ部H3の両面にそれぞれ形成される。
【0027】
<耐火材固定金物10(耐火材固定部品)の構成について>
次に、耐火材固定金物10の構成について、
図4乃至
図9を参照しながら説明する。
図4乃至
図8は、耐火材固定金物10の外観を示す図であり、
図4が斜視図、
図5が後面図(後側から見た図)、
図6が右側面図、
図7が左側面図、
図8が上面図である。
図9は、耐火材を保持した状態の後の耐火材固定金物10及びその周辺を側方から見た図である。
【0028】
耐火材固定金物10は、H形鋼である梁Hの耐火性能を向上させるために用いられる耐火材(後述する石膏ボードPBやロックウールRW)を、梁Hに対して固定するための耐火材固定部品である。耐火材固定金物10は、鋼板(金属板に相当)を加工することで構成されており、本実施形態では、厚み約0.8mmの薄板によって構成されている。なお、耐火材固定金物10の材質は、特に限定されるものではないが、本実施形態のように薄板状の金属部材が望ましい。
【0029】
耐火材固定金物10は、耐火材固定金物10の高さ方向(上下方向)が鉛直方向に沿い、かつ、耐火材固定金物10の横幅方向が梁Hの延出方向に沿い、さらに耐火材固定金物10の前後方向が厚み方向に沿うように梁Hに対して取り付けられる。耐火材固定金物10は、
図4乃至
図8に示すように、係合部11及び保持部12を有している。
【0030】
(係合部11)
係合部11は、梁Hのフランジ部の側端部(厚み方向の端部)と係合可能な部分であり、耐火材固定金物10の上下方向において対称的に一対配置されている。具体的には、係合部11は、梁Hの上側フランジ部H1の上側フランジ側端部H11と係合する第1係合部11aと、前記梁の下側フランジ部H2の下側フランジ側端部H21と係合する第2係合部11bと、を備えている。
【0031】
第1係合部11aは、
図4乃至
図7に示すように、上壁部13、屈曲部13a、板ばね部13bを有する。上壁部13は、後述する前壁部15の上端部から略垂直に立ち上がった部分である。屈曲部13aは、上壁部13から下方に突出するように形成されており、屈曲部13aの端部には、上側フランジ部H1の上側フランジ側端部H11を挟み込むように折れ曲がった板ばね部13bが形成されている。板ばね部13bは、バネ部に相当し、斜め下方に向かって傾斜しており、その傾斜角度が変わるように弾性変形することが可能である。
【0032】
上壁部13、屈曲部13a、板ばね部13bは、一枚の鋼板を加工成形することで構成され、一部品として一体化していてもよいが、屈曲部13a及び板ばね部13bを、上壁部13とは別部品として形成して、上壁部13に対して屈曲部13a及び板ばね部13bを組み付けるようにしてもよい。
【0033】
第2係合部11bは、
図4乃至
図7に示すように、下壁部14、屈曲部14a、板ばね部14bを有する。下壁部14は、後述する前壁部15の下端部から略垂直に立ち上がった部分である。屈曲部14aは、下壁部14から上方に突出するように形成されており、屈曲部14aの端部には、下側フランジ部H2の下側フランジ側端部H21を挟み込むように折れ曲がった板ばね部14bが形成されている。板ばね部14bは、バネ部に相当し、斜め上方に向かって傾斜しており、その傾斜角度が変わるように弾性変形することが可能である。
【0034】
下壁部14、屈曲部14a、板ばね部14bは、一枚の鋼板を加工成形することで構成され、一部品として一体化していてもよいが、屈曲部14a及び板ばね部14bを、下壁部14とは別部品として形成して、下壁部14に対して屈曲部14a及び板ばね部14bを組み付けるようにしてもよい。
【0035】
(保持部12)
保持部12は、後述するロックウールRWや石膏ボードPB等の耐火材を保持する。保持部12は、上側の第1係合部11aと下側の第2係合部11bとの間に設けられた第1保持部12aと、耐火材固定金物10の横幅方向(梁Hの延出方向)において第1保持部12aとは異なる位置に設けられた第2保持部12bを有している。
【0036】
保持部12は、耐火材固定金物10を梁Hに取り付けた際、厚み方向において外側に配置される前壁部15を備えている。前壁部15は、耐火材固定金物10の横幅方向(梁Hの延出方向)に延出する延出部15aを有している。
【0037】
耐火材固定金物10の横幅方向において、前壁部15の両側端部の各々には側壁として第1側壁部16、第2側壁部17及び第3側壁部18が設けられている。より詳細には、耐火材固定金物10の横幅方向において、第1側壁部16及び第2側壁部17は係合部11の近傍の位置に配置され、第3側壁部18は、係合部11と離間した位置(具体的には延出部15aの端部)に配置されている。
【0038】
第1側壁部16は、耐火材固定金物10の上下方向に延在している。3つの第2側壁部17は、耐火材固定金物10の上下方向において互いに所定距離だけ離間して設けられている。2つの第3側壁部18は、耐火材固定金物10の上下方向において互いに所定距離だけ離間して延出部15aの端部に設けられている。
【0039】
ここで、第1保持部12aは、横幅方向に配置された第1側壁部16及び第2側壁部17を側壁としている。第1保持部12aは、横幅方向において第1側壁部16と第2側壁部17の間に耐火材を挟み込み、上下方向において第1係合部11aと第2係合部11bの間に耐火材を挟み込んで保持する。
【0040】
また、第2保持部12bは、横幅方向に配置された第2側壁部17及び第3側壁部18を側壁としており、第2側壁部17と第3側壁部18の間に耐火材を挟み込んで保持する。
図4及び
図8に示すように、第3側壁部18は、前方から後方に向かうに連れて第2側壁部17に近づき、先端部が外側に向かって屈曲した傾斜屈曲部18aを備えている。このような構成によれば、第2保持部12bに石膏ボードPBなどの耐火材を保持した際に、第2側壁部17と第3側壁部18の間に押さえつけるようにして耐火材が保持される。
【0041】
具体的には、耐火材固定金物10は、第2保持部12bに、石膏ボードPBを挟み込むように保持したり(
図9A)、第1保持部12aにロックウールRWを挟み込むように保持したり(
図9B)することが可能である。このように保持部12において耐火材が各側壁の間に挟み込まれて保持されるため、耐火材の保持状態が安定したものとなる。
【0042】
保持部12は、薄板状の金属部材によって構成されているが、後述するように、保持部12の前壁部15には界壁1を構成する面材ボードPが締結部材Bにて固定される。
【0043】
耐火材固定金物10の第1保持部12a及び第2保持部12bは補強リブによって補強されている。具体的には、延出部15aを含む前壁部15には、補強リブが形成されている。より詳細には、耐火材固定金物10の上下方向(高さ方向)及び横幅方向における、保持部12の強度を高くするために、延出部15aを含む前壁部15に補強リブ15bが形成されている。
【0044】
図4及び
図5に示すように、前壁部15及び延出部15aには、その延在方向に補強リブ15bが連続するように形成されている。耐火材固定金物10では、延出部15aを含む前壁部15に、補強リブ15bが形成されていることで、耐火材固定金物10の上下方向(高さ方向)及び横幅方向における強度が高くなっている。したがって、作業者が、耐火材を第1保持部12a及び第2保持部12bに保持させる際に、耐火材固定金物10に荷重が加わった場合であっても、前壁部15や延出部15aが湾曲して変形してしまうことを抑制することができる。
【0045】
係合部11は、前壁部15の側端部から各側壁が張り出している向きと同じ向きに張り出している(
図4)。耐火材固定金物10を梁Hのフランジ部に係合させる際の方向が、各側壁が張り出している方向と一致するため、作業時に耐火材固定金物10の保持部12から耐火材が脱落してしまうことが抑制される。
【0046】
上壁部13と前壁部15によって形成される角部には、該角部が切り欠かれて形成された上部切欠13cが形成されており、下壁部14と前壁部15によって形成される角部には、該角部が切り欠かれて形成された下部切欠14cが形成されている。そして、厚み方向(換言すると、耐火材固定金物10の前後方向)において、第1係合部11a及び第2係合部11bが、前壁部15とは離間して配置されている。つまり、厚み方向において、梁Hのフランジ部の側端部と面材ボードPの間には、例えば、厚み方向に約12mmの隙間Cが形成されることになる(後述する
図14)。本実施形態の耐火材固定金物10を利用することで、梁Hのフランジ部と面材ボードPの間に、界壁1において必要となる隙間Cを確保することが可能となる。
【0047】
なお、耐火材固定金物10では、上壁部13、下壁部14、前壁部15及び各側壁が一つの鋼板(金属板)を折り曲げることで構成されているため、これらの部分が一部品として一体化している。このため、本実施形態の耐火材固定金物10は、簡素な構造となり、また、より取り扱い易いものとなっている。ただし、これに限定されるものではなく、耐火材固定金物10を構成する各部分が、元々は互いに別パーツからなり、耐火材固定金物10を組み立てる際に各パーツを連結して一体化させてもよい。かかる場合、各パーツを構成する鋼板が十分に肉厚であればパーツ同士を溶接にて連結してもよい。
【0048】
<耐火材固定金物10(耐火材固定部品)の使用態様について>
以上のように構成された耐火材固定金物10の係合部11は、
図10に示すように、厚み方向においてフランジ部の側方からフランジ部の側端部と係合する。具体的に説明すると、第1係合部11aは、厚み方向において上側フランジ部H1の上側フランジ側端部H11と係合し、第2係合部11bは、厚み方向において下側フランジ部H2の下側フランジ側端部H21と係合する。このように、耐火材固定金物10が上側と下側の2か所で梁Hのフランジ部と係合するため、耐火材固定金物10及び耐火材の梁空間H4における位置が安定したものとなる。
【0049】
このとき、第1係合部11a及び第2係合部11bが、上下方向において広がるように付勢される。この状態では、上側の板ばね部13bが上側フランジ部H1の下面に当接することで、屈曲部13a及び板ばね部13bが下向に付勢され、下側の板ばね部14bが下側フランジ部H2の上面に当接することで、屈曲部14a及び板ばね部14bが上向に付勢される。このため、耐火材固定金物10の梁Hに対する係合状態が安定する。
【0050】
特に、耐火材が第1保持部12aに保持されている場合には、上側の屈曲部13a及び板ばね部13bが耐火材の上面に当接し、下側の屈曲部14a及び板ばね部14bが耐火材の下面に当接するため、耐火材固定金物10の梁Hに対する係合状態がより一層安定する。
【0051】
このように耐火材固定金物10では、第1係合部11aが上側フランジ部H1を、上壁部13と板ばね部13bの間に挟み込み、第2係合部11bが下側フランジ部H2を、下壁部14と板ばね部14bの間に挟み込む。このとき、フランジ部を挟み込む第1係合部11aや第2係合部11bのサイズが変化するため、耐火材固定金物10は、異なる厚み(例えば、約6mm、約9mm、約12mmなど)のフランジ部に対して係合することが可能となっている。
【0052】
図10乃至
図12に示されるように、耐火材固定金物10は、ある梁Hと隣接する梁Hとの連結部Haの周囲に配置される(
図10)。より詳細には、耐火材固定金物10は、界壁1の出隅部1a(界壁1の界壁ライン1bがL字になっている角部)に配置される(
図11及び
図12)。耐火材固定金物10を用いることで、建物において、所定方向に延在する梁H(胴差部)の途中、具体的には、出隅部1aで界壁1を適切かつ容易に止めることが可能となる。
【0053】
そして、係合部11が梁Hのフランジ部に係合したとき、具体的には、第1係合部11aが上側フランジ部H1に係合し、第2係合部11bが下側フランジ部H2に係合したとき、保持部12に保持された耐火材は、梁Hの梁空間H4に配置される(
図10)。換言すると、耐火材は、耐火材固定金物10と梁Hのウェブ部H3の間に配置される。
【0054】
このように、耐火材固定金物10によれば、保持部12に耐火材を保持して、係合部11を梁のフランジ部に係合させることで、梁空間H4にロックウールや石膏ボードなどの耐火材を適切な位置かつ容易に配置して固定することが可能となる。
【0055】
また、耐火材固定金物10によれば、ある梁Hと隣接する梁Hとの連結部Haの周囲、つまり、界壁1(仕切壁)の出隅部1aという、耐火材を巻き付けて被覆することが困難な位置において、適切に耐火材を固定することが可能となるため、界壁1が入り組んで角部を有する場合であっても適切に施工を行うことがとなる。
【0056】
<耐火材固定金物10(耐火材固定部品)を用いた界壁の施工方法について>
次に、上述した耐火材固定金物10を用いて、界壁1を施工する手順について説明する。本実施形態の界壁1(仕切壁)の施工方法は、耐火材固定金物10の保持部12に耐火材を保持させることと、梁Hのフランジ部に耐火材固定金物10の係合部11を係合することと、保持部12の前壁部15に面材ボードPを固定することと、を含む。以下、詳細に各手順を説明する。
【0057】
先ず、耐火材固定金物10を用意し、保持部12に耐火材を保持させる。具体的には、第1保持部12a又は第2保持部12bに耐火材を挟み込むようにして保持させる。例えば、
図9Aに示すように、耐火材固定金物10の第2保持部12bに、石膏ボードPBを挟み込むように保持させる。
【0058】
その後、梁Hのフランジ部に耐火材固定金物10の係合部11を係合する(
図10)。具体的には、第1係合部11aを、厚み方向において上側フランジ部H1の上側フランジ側端部H11と係合し、第2係合部11bを、厚み方向において下側フランジ部H2の下側フランジ側端部H21と係合する。この結果、耐火材固定金物10及び耐火材が梁Hに取り付けられ、耐火材は、梁空間H4に配置される(
図10及び
図12)。
【0059】
その後、耐火材固定金物10の前壁部15に対して面材ボードPを締結部材Bで固定する(
図13及び
図14)。このとき、耐火材として石膏ボードPBが保持されている場合には、石膏ボードPBが保持されている第1保持部12a又は第2保持部12bを避けて面材ボードPを締結部材Bで固定する。
【0060】
具体的には、耐火材として石膏ボードPBが保持されている場合には、石膏ボードPBが壊れてしまうことを防止するために、石膏ボードPBが保持されている第2保持部12bを避けて面材ボードPを締結部材Bで固定する(
図9A及び
図13)。このように、耐火材固定金物10が、第1保持部12aと第2保持部12bの2つの保持部12を有することで、耐火材として石膏ボードPBを保持した場合であっても、面材ボードPの下地として利用することが可能である。
【0061】
<変形例>
以上までに本発明の耐火材固定部品に関して、その構成及び利用方法についての一実施形態を例に挙げて説明してきたが、上述の実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の例も考えられる。
【0062】
上記の実施形態では、耐火材固定金物が2つの保持部を有していたが、
図15に示す変形例に係る耐火材固定金物10Xように、前壁部15Xが延出部を有することなく、1つの保持部12Xのみを有していても良い。
【0063】
具体的には、耐火材固定金物10Xは、上下方向の両端部にそれぞれ配置された上壁部13X及び下壁部14Xと、前方に配置された前壁部15Xと、横幅方向における両側部にそれぞれ配置された第1側壁部16X及び第2側壁部17Xに囲まれた保持部12Xのみを有している。このとき、前壁部15Xに両面テープを貼着して、ロックウールRWなどの耐火材を固定すると、耐火材の保持状態がより一層安定するため、好適である。
【0064】
上記の実施形態において、耐火材固定金物10の横幅方向における第1保持部12aの厚み(つまり、第1側壁部16と第2側壁部17の間隔)や、第2保持部12bの厚み(つまり、第2側壁部17と第3側壁部18の間隔)は、挟み込む耐火材の種類(材質)、枚数、厚みなどに応じて、適宜変更可能である。
【0065】
また、耐火材固定金物10の上壁部13、下壁部14、第1側壁部16、第2側壁部17、第3側壁部18について、耐火材固定金物10の前後方向における長さも同様に適宜変更可能である。さらに、前壁部15について、耐火材固定金物10の上下方向の長さ(高さ)や横幅方向の長さも同様に適宜変更可能である。
【0066】
また、耐火材固定金物10の第1側壁部16や第2側壁部17に、第3側壁部18に形成された傾斜屈曲部18aと同様に、前方から後方に向かうに連れて第1保持部12aの内側に近づき、先端部が外側に向かって屈曲した傾斜屈曲部を形成してもよい。
【0067】
また、耐火材固定金物10の前壁部15に補強リブ15bが形成されいたが、補強リブを設ける場所やその形状は特に限定されるものではなく、例えば、係合部11の周囲に補強リブを形成してもよい。
【0068】
また、耐火材固定金物10,10Xは、耐火材を保持するために用いていたが、耐火材を保持することなく、界壁1を構成する面材ボードP(例えば、石膏ボード)の下地としてのみ用いてもよい。具体的には、耐火材固定金物10,10Xの保持部12,12Xに耐火材を保持させることなく、耐火材固定金物10,10Xを梁Hに係合させ、面材ボードPの下地として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 界壁(仕切壁)
1a 出隅部
1b 界壁ライン
2 スタッド
4 ランナー
H 梁
H1 上側フランジ部(フランジ部)
H11 上側フランジ側端部(側端部)
H2 下側フランジ部(フランジ部)
H21 下側フランジ側端部(側端部)
H3 ウェブ部
H4 梁空間
Ha 連結部
10,10X 耐火材固定金物(耐火材固定部品)
11,11X 係合部
11a,11Xa 第1係合部(係合部)
11b,11Xb 第2係合部(係合部)
12,12X 保持部
12a 第1保持部(保持部)
12b 第2保持部(保持部)
13,13X 上壁部
13a 屈曲部
13b 板ばね部(バネ部)
13c 上部切欠
14,14X 下壁部
14a 屈曲部
14b 板ばね部(バネ部)
14c 下部切欠
15,15X 前壁部(前壁)
15a 延出部
15b 補強リブ
16,16X 第1側壁部(側壁)
17,17X 第2側壁部(側壁)
18 第3側壁部(側壁)
18a 傾斜屈曲部
C 隙間
P 面材ボード(面材)
B 締結部材
RW ロックウール(耐火材)
PB 石膏ボード(耐火材)