(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】グラウト型枠及び柱脚
(51)【国際特許分類】
E04G 11/06 20060101AFI20240220BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240220BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20240220BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
E04G11/06 A
E04B1/58 510Z
E04B1/24 R
E02D27/00 D
(21)【出願番号】P 2020015597
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 南夏子
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
(72)【発明者】
【氏名】水口 浩士
(72)【発明者】
【氏名】朱 華佳
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-034246(JP,U)
【文献】実開平02-107660(JP,U)
【文献】実開昭57-029631(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 11/06
E04B 1/58
E04B 1/24
E02D 27/00
E04G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の柱脚においてベースプレートと基礎の隙間にグラウト材を充填する際に用いられ、該グラウト材の流出を防止するためのグラウト型枠であって、
前記ベースプレートの周囲において互いに対向するように設けられ、前記ベースプレートを囲むように連結される第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材が対向する方向において、前記第1部材に設けられた取り付け部が、前記第2部材に設けられた被取り付け部に対し着脱可能に取り付けられ、
前記第1部材及び前記第2部材が連結されたときに、前記第1部材が前記第2部材と一部重なり合って配置され
、
前記第1部材及び前記第2部材は、枠状となるように連結され、
前記第1部材及び前記第2部材それぞれの内側面には、前記グラウト材の漏れを防止するためのシール材が取り付けられ、
該シール材は、前記ベースプレートを囲むように配置され、かつ、前記第1部材及び前記第2部材によって枠が形成されたときの角部を避けて配置されることを特徴とするグラウト型枠。
【請求項2】
建物の柱脚においてベースプレートと基礎の隙間にグラウト材を充填する際に用いられ、該グラウト材の流出を防止するためのグラウト型枠であって、
前記ベースプレートの周囲において互いに対向するように設けられ、前記ベースプレートを囲むように連結される第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材と前記第2部材が対向する
対向方向において、前記第1部材に設けられた取り付け部が、前記第2部材に設けられた被取り付け部に対し着脱可能に取り付けられ、
前記第1部材及び前記第2部材が連結されたときに、前記第1部材が前記第2部材と一部重なり合って配置され
、
前記第1部材及び前記第2部材は、
前記ベースプレートに対向するように配置される第1側壁部と、
該第1側壁部の長さ方向の両端部からそれぞれ屈曲し、前記ベースプレートを挟むように延びている一対の第2側壁部と、
前記第1側壁部の下端部から外側に向かって突出し、前記基礎によって支持される第1底壁部と、
前記一対の第2側壁部の下端部からそれぞれ外側に向かって突出し、前記基礎によって支持される一対の第2底壁部と、をそれぞれ有しており、
前記第1部材における前記第2側壁部が、前記第2部材における前記第2側壁部と前記対向方向とは交差する方向で一部重なり合って連結され、かつ、
前記第1部材における前記第2底壁部が、前記第2部材における前記第2底壁部と上下方向で一部重なり合って連結されることを特徴とするグラウト型枠。
【請求項3】
前記第1底壁部の長さ方向の端部には、前記第1底壁部に対し折り返し可能な折り返し壁部が形成され、
該折り返し壁部が折り返されることで前記第1底壁部と前記第2底壁部を連結するように角部が形成され、
折り返された前記折り返し壁部が、前記第2底壁部と一部重なり合って配置されていることを特徴とする請求項
2に記載のグラウト型枠。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材は、
一対となるように設けられ、前記ベースプレートの全周を囲むようにして連結され、
それぞれ前記取り付け部と、該取り付け部に取り付け可能な前記被取り付け部と、を有していることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載のグラウト型枠。
【請求項5】
前記第1部材及び前記第2部材は、枠状となるように連結され、
前記第1部材及び前記第2部材それぞれの底面には、前記グラウト材の漏れを防止するための第2シール材が取り付けられ、
該第2シール材は、前記ベースプレートを囲むように全周にわたって配置されていることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のグラウト型枠。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載
のグラウト型枠と、
前記建物を支持する柱と、
該柱を支持する前記基礎と、
前記柱の下端部に取り付けられ、前記基礎に連結される前記ベースプレートと、
前記基礎上に取り付けられ、前記柱の下端部、前記ベースプレート、及び前記グラウト型枠を覆うように設けられた、多孔性材料からなる柱脚カバー部材と、を備えていることを特徴とする柱脚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウト型枠及び柱脚に係り、特に、建物の柱脚においてベースプレートと基礎の隙間にグラウト材を充填する際に用いられるグラウト型枠及びグラウト型枠を備えた柱脚に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の上部構造物を支持する柱脚の種類として露出型の柱脚がある。
露出型の柱脚は、上部構造物を支持する柱と、柱を支持する基礎(柱脚基礎)と、柱の下端部に取り付けられ、基礎にアンカーボルトによって連結されるベースプレートと、ベースプレート及び基礎の隙間にグラウト材を充填する際に用いられるグラウト型枠と、から主に構成されている。
そして、一般にベースプレート、アンカーボルト及びグラウト型枠の周囲はコンクリート又はモルタルによって埋設されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、グラウト型枠については、上記コンクリート(モルタル)中に埋設されるほか、当該コンクリートに埋設される前に取り外すこととしても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-158818号公報
【文献】特開2008-196121号公報
【文献】特開平10-331170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ベースプレートと基礎の隙間にグラウト材を充填するにあたっては、グラウト材の流出を防止し易くするために種々のグラウト型枠が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
そうしたなかで、グラウト材の流出をより防止し易くすることで柱脚の意匠性を確保し、また、組み立てを容易にすることで施工性向上を図ったグラウト型枠が求められていた。
特に、狭小地における建物の施工であっても容易に組み立てることができ、特別な工具を使用する必要のないグラウト型枠が求められていた。
【0005】
また、従来の露出型柱脚の施工手順を説明すると、まず柱脚基礎や布基礎を施工する「基礎工事」を行った後に、柱脚基礎に柱及びベースプレートを設置し、ベースプレートと基礎の隙間にグラウト材を注入する「建方工事(グラウト施工を含む)」を行う。そして、柱を耐火被覆材で被覆し、ベースプレート及びアンカーボルトをコンクリート又はモルタルによって埋設する「第2基礎工事」を実施した後、1階外壁等を組み立てるため「第2建方工事」を行う。そして、柱脚本体に換気見切り等を設置する「外装工事」を行った後、モルタルや下塗材・上塗材を塗布する「左官工事」を行っている(主に6ステップとなっている)。
そうすると、「基礎工事」、「建方工事」を行った後に、柱脚のベースプレート等をコンクリート(モルタル)によって埋設すべく、再度基礎工の作業者によって「第2基礎工事」を実施する必要があった。その結果、施工手順が複雑となって各施工業者の手配が煩雑となってしまい、コストアップや施工業者の手待ちによる工期遅れにつながっていた。
そのため、施工手順を簡略化することが可能な柱脚が求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、施工性向上を図ったグラウト型枠及び柱脚を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、柱脚の意匠性を向上させたグラウト型枠及び柱脚を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、施工手順を簡略化させたグラウト型枠及び柱脚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明のグラウト型枠によれば、建物の柱脚においてベースプレートと基礎の隙間にグラウト材を充填する際に用いられ、該グラウト材の流出を防止するためのグラウト型枠であって、前記ベースプレートの周囲において互いに対向するように設けられ、前記ベースプレートを囲むように連結される第1部材及び第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材が対向する方向において、前記第1部材に設けられた取り付け部が、前記第2部材に設けられた被取り付け部に対し着脱可能に取り付けられ、前記第1部材及び前記第2部材が連結されたときに、前記第1部材が前記第2部材と一部重なり合って配置され、前記第1部材及び前記第2部材は、枠状となるように連結され、前記第1部材及び前記第2部材それぞれの内側面には、前記グラウト材の漏れを防止するためのシール材が取り付けられ、該シール材は、前記ベースプレートを囲むように配置され、かつ、前記第1部材及び前記第2部材によって枠が形成されたときの角部を避けて配置されること、により解決される。
上記構成により、施工性向上を図ることができ、柱脚の意匠性を向上させたグラウト型枠を実現することができる。
詳しく述べると、第1部材と第2部材が対向する方向において、第1部材の取り付け部が、第2部材の被取り付け部に対し着脱可能に取り付けられるため、グラウト型枠を容易に組み立てることができ、施工性を向上させることができる。
また、第1部材及び第2部材がベースプレートの周囲において互いに対向するように設けられ、第1部材が第2部材と一部重なり合って連結されているため、グラウト材の流出を防止し易くすることができ、柱脚の意匠性を向上させることができる。
また、第1部材及び第2部材それぞれの内側面にシール材が取り付けられており、シール材がベースプレートを囲むように配置されているため、グラウト材を充填するときに当該グラウト材の漏れを防止し易くなる。
また、シール材は、第1部材及び第2部材によって枠が形成されたときの角部を避けて配置されているため、グラウト型枠内で最も入り込み難い部位となる角部にグラウト材が充填されているか否かを上方から目視確認することができる(目視確認し易くなる)。
また、グラウト材を充填するときに、グラウト型枠内で角部に溜まりやすい空気を効率良く逃がすことができる。そのため、グラウト施工の仕上がりが良くなる。
【0008】
また前記課題は、本発明のグラウト型枠によれば、建物の柱脚においてベースプレートと基礎の隙間にグラウト材を充填する際に用いられ、該グラウト材の流出を防止するためのグラウト型枠であって、前記ベースプレートの周囲において互いに対向するように設けられ、前記ベースプレートを囲むように連結される第1部材及び第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材が対向する対向方向において、前記第1部材に設けられた取り付け部が、前記第2部材に設けられた被取り付け部に対し着脱可能に取り付けられ、前記第1部材及び前記第2部材が連結されたときに、前記第1部材が前記第2部材と一部重なり合って配置され、前記第1部材及び前記第2部材は、前記ベースプレートに対向するように配置される第1側壁部と、該第1側壁部の長さ方向の両端部からそれぞれ屈曲し、前記ベースプレートを挟むように延びている一対の第2側壁部と、前記第1側壁部の下端部から外側に向かって突出し、前記基礎によって支持される第1底壁部と、前記一対の第2側壁部の下端部からそれぞれ外側に向かって突出し、前記基礎によって支持される一対の第2底壁部と、をそれぞれ有しており、前記第1部材における前記第2側壁部部が、前記第2部材における前記第2側壁部と前記対向方向とは交差する方向で一部重なり合って連結され、かつ、前記第1部材における前記第2底壁部が、前記第2部材における前記第2底壁部と上下方向で一部重なり合って連結されること、により解決される。
上記のように、第1部材における第2側壁部及び第2底壁部が、それぞれ第2部材における第2側壁部及び第2底壁部と一部重なり合って連結されているため、グラウト材の流出を一層防止し易くすることができ、柱脚の意匠性を向上させることができる。
【0009】
このとき、前記第1底壁部の長さ方向の端部には、前記第1底壁部に対し折り返し可能な折り返し壁部が形成され、該折り返し壁部が折り返されることで前記第1底壁部と前記第2底壁部を連結するように角部が形成され、折り返された前記折り返し壁部が、前記第2底壁部と一部重なり合って配置されていると良い。
上記のように、折り返し壁部が折り返されることで第1底壁部と前記第2底壁部を連結するように角部が形成されるため、グラウト型枠内にグラウト材を充填するときに、グラウト材が比較的漏れ易い部位となる第1底壁部と第2底壁部の間の部分(角部分)を折り返し壁部で補強できる。その結果、当該グラウト材の漏れを一層防止し易くなる。
また、折り返された折り返し壁部が、第2底壁部と一部重なり合って配置されているため、グラウト材の流出をより一層防止し易くすることができ、柱脚の意匠性を向上させることができる。
特に、第1部材及び第2部材が、例えば鋼板を折り曲げて形成される場合には、1枚の鋼板から第1部材、第2部材を比較的容易に製造することができる。そのため、グラウト型枠の製造にあたってコストを抑えることができる。
【0010】
このとき、前記第1部材及び前記第2部材は、一対となるように設けられ、前記ベースプレートの全周を囲むようにして連結され、それぞれ前記取り付け部と、該取り付け部に取り付け可能な前記被取り付け部と、を有していると良い。
上記のように、第1部材及び第2部材は、一対となるように設けられ、ベースプレートの全周を囲むようにして連結されているため、グラウト型枠の構成部品のコスト(材料費)を抑制することができる。
また上記のように、第1部材及び第2部材は、一対となるように設けられ、それぞれ取り付け部と、被取り付け部とを有しているため、例えば第1部材及び第2部材を同じ形状からなる部材とすることで、構成部品のコストを一層抑制することができ、構成部品の管理も容易になる。また、グラウト型枠を一層容易に組み立てることができる。
【0012】
このとき、前記第1部材及び前記第2部材は、枠状となるように連結され、前記第1部材及び前記第2部材それぞれの底面には、前記グラウト材の漏れを防止するための第2シール材が取り付けられ、該第2シール材は、前記ベースプレートを囲むように全周にわたって配置されていると良い。
上記構成により、グラウト材を充填するときに当該グラウト材の漏れを一層防止し易くすることができ、柱脚の意匠性を向上させることができる。
【0013】
また前記課題は、前記グラウト型枠と、前記建物を支持する柱と、該柱を支持する前記基礎と、前記柱の下端部に取り付けられ、前記基礎に連結される前記ベースプレートと、前記基礎上に取り付けられ、前記柱の下端部、前記ベースプレート、及び前記グラウト型枠を覆うように設けられた、多孔性材料からなる柱脚カバー部材と、を備えている柱脚によっても解決される。
上記のように、従来ベースプレート等を覆うように設けられていたコンクリート(モルタル)を、多孔性材料からなる柱脚カバー部材に代用することで、ベースプレート等をコンクリート(モルタル)で埋設する「第2基礎工事」を再度実施する必要がなくなる。当該柱脚カバー部材は、例えば、柱脚本体に耐火被覆材や換気見切りを設置する「外装工事」のときに一緒に取り付けることができる。
そのため、施工手順を簡略化させた柱脚を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグラウト型枠及び柱脚によれば、施工性の向上を図ることができる。
また、グラウト材の流出を防止し易くし、柱脚の意匠性を向上させることができる。
また、施工手順を簡略化することで、コストアップを抑制し、また各施工業者の手待ちによる工期遅れを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本実施形態の柱脚を示す斜視図であって、建物の出隅部において基礎に柱を取り付けた状態を示す図である。
【
図1B】柱脚を示す斜視図であって、建物の中間部において基礎に柱を取り付けた状態を示す図である。
【
図2A】
図1Aの柱脚においてグラウト型枠を取り付けた状態を示す図である。
【
図2B】
図1Bの柱脚においてグラウト型枠を取り付けた状態を示す図である。
【
図3A】
図2Aの柱脚において被覆材を取り付けた状態を示す図である。
【
図3B】
図2Bの柱脚において被覆材を取り付けた状態を示す図である。
【
図4A】
図3Aの柱脚において柱脚カバー部材を取り付けた状態を示す図である。
【
図4B】
図3Bの柱脚において柱脚カバー部材を取り付けた状態を示す図である。
【
図7】本実施形態のグラウト型枠を示す分解斜視図である。
【
図8】グラウト型枠の要部拡大図であって、取り付け爪、取り付け穴を示す斜視図である。
【
図9A】グラウト型枠の要部拡大図であって、折り返し壁部を示す斜視図である。
【
図9B】折り返し壁部が折り返された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について
図1-
図9A,Bを参照して説明する。
本実施形態は、建物を支持する柱と、柱を支持する基礎(柱脚基礎)と、柱の下端部に取り付けられ、基礎に連結されるベースプレートと、ベースプレート及び基礎の隙間にグラウト材を充填する際に用いられるグラウト型枠と、基礎上に取り付けられ、柱の下端部、ベースプレート及びグラウト型枠を覆うように設けられた柱脚カバー部材と、を備えた柱脚であって、上記グラウト型枠が、ベースプレートの周囲において互いに対向するように設けられ、ベースプレートを囲むように連結される第1部材及び第2部材を有しており、第1部材と第2部材が対向する方向において第1部材に設けられた取り付け部が、第2部材に設けられた被取り付け部に対し着脱可能に取り付けられ、第1部材が第2部材と一部重なり合って連結されていることを特徴とする「柱脚」の発明に関するものである。
【0017】
本実施形態の柱脚1は、
図1A,B-
図5に示すように、露出型の柱脚であって、建物Bにおいて鉄筋コンクリート製の布基礎B1間の出隅部に設置されるほか、建物Bにおいて布基礎B1の中間部に設置されるものである。
柱脚1(柱脚基礎3)は、布基礎B1よりも厚さ方向の幅を大きくして設けられ、かつ、高さ方向の長さを布基礎B1よりも低くして形成されている。
【0018】
柱脚1は、
図1A,B-
図5に示すように、建物Bの上部構造物を支持する鋼製の柱2と、柱2を下方から支持する鉄筋コンクリート製の基礎3(柱脚基礎3)と、柱2の下端部に取り付けられ、基礎3にアンカーボルト5によって連結されるベースプレート4と、基礎3及びベースプレート4の隙間にグラウト材6を充填する際に用いられるグラウト型枠10と、柱2の下端部を囲むように被覆される被覆材20と、基礎3上に取り付けられ、柱2の下端部、ベースプレート4、グラウト型枠10及び被覆材20を覆うように取り付けられる柱脚カバー部材30と、柱脚カバー部材30の外面に塗布される塗布材40と、から主に構成されている。
なお、基礎3は、布基礎B1の上端部よりも低くなるように形成されている。そのため、基礎3の上面にベースプレート4、アンカーボルト5、グラウト型枠10、被覆材20、柱脚カバー部材30等が設置されるスペースを形成することができる。
【0019】
柱2、基礎3は、それぞれ横断面正方形状に形成されており、柱2が、建物Bの上部構造物を支持する不図示の鉄骨柱に連結されており、基礎3の上面にベースプレート4及びアンカーボルト5を介して固定されている。
ベースプレート4は、正方形状の板部材からなり、当該ベースプレート4の中央部には、柱2が貫通して取り付けられており、ベースプレート4の四隅には、アンカーボルト5が貫通して取り付けられている。またベースプレート4の上面において四隅の間の所定位置には、グラウト材6を注入するための注入穴4aと、グラウト材6を注入する際に通気するための通気穴4bとが形成されている。注入穴4aと通気穴4bは、柱2を挟むように1つずつ配置されており、詳しく述べると、
図2A,Bに示すように、グラウト型枠10(第1部材11及び第2部材12)の連結部分に対応する位置を避けて配置されている。
アンカーボルト5は、基礎3に固定されており、当該基礎3の上面から一部突出するように配置されている。詳しく述べると、アンカーボルト5の突出部をベースプレート4に貫通させた状態でナット締めすることで、基礎3に対しベースプレート4が締結される。
【0020】
グラウト材6は、例えば、流動性を有する無収縮のモルタルであって、ベースプレート4に形成された注入穴4aから注入され、グラウト型枠10によって囲まれた領域内に充填されることで、基礎3とベースプレート4の隙間を埋めるものである。
グラウト型枠10は、
図2A,Bに示すように、鋼板を折り曲げて形成されており、ベースプレート4の周囲において互いに対向するように設けられ、ベースプレート4を囲むように連結される第1部材11と第2部材12から主に構成されている。
グラウト型枠10の詳細については後述する。
【0021】
被覆材20は、
図3A,Bに示すように、柱2の周囲に巻き付けられるロックウールからなる耐火被覆材であって、ベースプレート4上に載置された状態で柱2の全周を囲むように取り付けられている。
なお、被覆材20は、ロックウールに限定されることなく、石膏ボードやケイ酸カルシウム板等の不燃材料から構成されていても良い。
【0022】
柱脚カバー部材30は、
図4A,Bに示すように、多孔性材料(例えば、発泡スチロール)からなる柱脚用のカバーであって、従来の「第2基礎工事」にて行われていたコンクリート(モルタル)埋設の代わりとして用いられるものである。
柱脚カバー部材30は、横断面略L字形状からなり、複数の柱脚カバー部材30が組み合わされて基礎3上に取り付けられている。
具体的には、建物Bの出隅部において計3つの柱脚カバー部材30が連結されており、建物Bの中間部においては計2つの柱脚カバー部材30が連結されている。
柱脚カバー部材30は、ベースプレート4を被覆するカバー側壁部31と、被覆材20を被覆するカバー上壁部32と、カバー側壁部31及びカバー上壁部32を連結するカバー傾斜壁部33と、から主に構成されている。
【0023】
塗布材40は、
図5に示すように、柱脚カバー部材30の耐衝撃性を確保すべく、柱脚カバー部材30の外面に塗布される流動性を有するモルタルである。
柱脚カバー部材30に塗布材40が塗布されたときに、塗布材40付きの柱脚カバー部材30の外面と、基礎3の外面とが略面一となって段差が無くなるように構成されている。
【0024】
<柱脚の施工方法>
次に、柱脚1の施工方法について
図6に基づいて説明する。
まずは、
図1A,Bに示すように、基礎工の作業者が、柱脚基礎3及び布基礎B1を施工する「基礎工事」の工程(ステップS1)から始まる。
【0025】
その後、
図1A,B-
図2A,Bに示すように、建方工の作業者が、基礎3に対し柱2及びベースプレート4をアンカーボルト5によって固定し、基礎3上にベースプレート4を囲むようにグラウト型枠10を取り付けた上で、基礎3とベースプレート4の隙間にグラウト材6を注入する「建方工事(グラウト施工を含む)」を行う(ステップS2)。
そして、そのまま建方工の作業者が、1階の外壁パネルB2を組み立てる(ステップS3)。
【0026】
その後、
図3A,B-
図4A,Bに示すように、外装大工が、柱2の下端部に被覆材20を被覆した上で、柱2の下端部、ベースプレート4、グラウト型枠10及び被覆材20を覆うように柱脚カバー部材30を取り付ける「外装工事」を行う(ステップS4)。
なお、柱脚カバー部材30を取り付けた後に、そのまま大工が、布基礎B1及び柱脚カバー部材30と、外壁パネルB2の間に換気見切りB3を取り付けると良い。
【0027】
その後、
図5に示すように、左官工の業者が、柱脚カバー部材30の外面に塗布材40を塗布した上で、柱脚基礎3、柱脚カバー部材30及び布基礎B1に不図示の下塗材及び上塗材を塗布する「左官工事」を行い(ステップS5)、本作業工程を終了する。
なお、塗布された塗布材40が乾燥した後に、柱脚基礎3、柱脚カバー部材30及び布基礎B1の外面に下塗材(例えば、シーラーレスカラー材)をローラー等で塗布する。下塗材が乾燥した後に、さらに上塗材をローラー等で塗布すると良い。
【0028】
上記方法であれば、施工手順を簡略化させた施工方法を実現することができる。
具体的には、
図6に示すように、「基礎工事」、「建方工事」、「外装工事」及び「左官工事」のステップで柱脚1の施工作業を終了することができるため、施工手順が簡略化され、施工業者の手配もよりシンプルになる。
詳しく述べると、従来では、「基礎工事」、「建方工事」を行った後に、再度基礎工、建方工の各作業者によって「第2基礎工事」、「第2建方工事」を行う必要があったところ、上記施工方法であれば、上記「第2基礎工事」及び「第2建方工事」が不要となり、施工手順を格段に簡略化することができる。
【0029】
<グラウト型枠>
次に、グラウト型枠10の詳細について、
図7-
図9A,Bに基づいて説明する。
グラウト型枠10は、
図7に示すように、グラウト材6の流出を防止するための枠状の鋼板として形成されており、ベースプレート4の全周を囲むように連結される第1部材11と、第2部材12から主に構成されている。
第1部材11、第2部材12は、同じ形状を有しており、ベースプレート4を挟むようにして一対に設けられている。
なお、グラウト型枠10は、鋼板(ステンレス鋼板)のほか、アクリル板等の素材から形成されていても良い。
【0030】
第1部材11は、略U字形状の鋼板からなり、ベースプレート4に対向するように配置される第1側壁部11aと、第1側壁部11aの長さ方向の両端部からそれぞれ屈曲し、ベースプレート4を挟むように延びている一対の第2側壁部11bと、第1側壁部11aの下端部から外側に向かって突出し、基礎3によって支持される第1底壁部11cと、一対の第2側壁部11bの下端部からそれぞれ外側に向かって突出し、基礎3によって支持される一対の第2底壁部11dと、を有している。
第2部材12も同様にして、第1側壁部12aと、一対の第2側壁部12bと、第1底壁部12cと、一対の第2底壁部12dと、を有している。
【0031】
第1部材11の第2側壁部11bの延出端部には、
図8に示すように、当該延出端部が一部切り欠かれることで取り付け爪13が形成されている。
また、第2側壁部11bの延出端部において取り付け爪13と同じ高さ位置に設けられ、取り付け爪13よりもやや中央側に位置する部分には、当該延出端部の内側面が一部切り起こされることで取り付け穴14が形成されている。
第2部材12にも同様にして、取り付け爪13、取り付け穴14が形成されている。
【0032】
上記構成において、第1部材11の取り付け爪13が、第2部材12の取り付け穴14に対し着脱可能に取り付けられる。そして、第1部材11及び第2部材12が連結されたときに、第1部材11が第2部材12と一部重なり合って配置される。
詳しく述べると、第1部材11の第2側壁部11b、第2底壁部11dが、それぞれ第2部材12の第2側壁部12b、第2底壁部12dと一部重なり合って配置されることになる。
なお、第1部材11(取り付け爪13)及び第2部材12(取り付け穴14)が連結されたときに、
図8に示すように、第2部材12の取り付け爪13と、第1部材の取り付け穴14については、特段機能しない状態で設けられている。
【0033】
また、
図9A,Bに示すように、第1部材11の第1底壁部11cの長さ方向の両端部には、第1底壁部11cに対し折り返し可能な折り返し壁部15が形成されている。
折り返し壁部15は、略長方形状の鋼板片であって、第1底壁部11cから幅方向の外側へ突出するように形成されている。
なお、第2部材12にも同様にして、折り返し壁部15が形成されている。
【0034】
折り返し壁部15が折り返されることで、第1底壁部11cと第2底壁部11dを連結するように角部15aが形成される。
詳しく述べると、折り返された折り返し壁部15の一片15bが、第2底壁部11dと重なり合って配置されることになる。
上記構成により、第1部材11及び第2部材12によって枠(グラウト型枠10)が形成されたときに、当該グラウト型枠10の底壁部において四隅全てに角部15aが形成されることになる。
【0035】
また、
図7に示すように、第1部材11(第2部材12)の内側面には、グラウト材6の漏れを防止するためのシール材16が取り付けられており、第1部材11(第2部材12)の底面においても第2シール材17が取り付けられている。
シール材16は、ベースプレート4の外側面に当接するように配置され、第2シール材17は、基礎3の上面に当接するように配置されている。
これらシール材16,17は、エプトシーラーからなる発泡シール材(止水材)であって、それぞれベースプレート4を囲むように配置されている。
なお、シール材16,17は、エプトシーラーに限定されることなく変更可能であって、公知なグラウト止水材を採用しても良い。
【0036】
シール材16は、第1側壁部11a(12a)の内側面において上方部分に取り付けられ、第1側壁部11aの長尺方向に沿って延びている第1延出部16aと、一対の第2側壁部11b(12b)の内側面において上方部分に取り付けられ、第2側壁部11bの長尺方向に沿って延びている一対の第2延出部16bと、を有している。
第1延出部16aと、一対の第2延出部16bとは、第1部材11(第2部材12)の内側面において互いに連続しておらず、間隔を空けて配置されている。
すなわち、シール材16は、第1部材11及び第2部材12によって枠(グラウト型枠10)が形成されたときの角部10aを避けて配置されている。
【0037】
上記構成により、グラウト型枠10内で最も入り込み難い部位となる角部10aにグラウト材6が充填されているか否かを上方から目視確認することができる。また、グラウト型枠10内で角部10aに溜まりやすい空気を効率良く逃がすことができる。そのため、グラウト施工の仕上がりが向上する。
【0038】
第2シール材17は、第1底壁部11c(12c)の底面において内側部分に取り付けられ、第1底壁部11cの長尺方向に沿って延びている第1延出部17aと、一対の第2底壁部11d(12d)の底面において内側部分に取り付けられ、第2底壁部11dの長尺方向に沿って延びている一対の第2延出部17bと、を有している。
第1延出部17aと、一対の第2延出部17bとは、第1部材11(第2部材12)の底面において互いに連続しており、間隔を空けることなく配置されている。
すなわち、第2シール材17は、第1部材11及び第2部材12によって枠(グラウト型枠10)が形成されたときに全周にわたるように配置されている。
【0039】
上記構成により、グラウト材6を充填するときに、グラウト型枠10の底面において当該グラウト材6の漏れを一層防止し易くすることができる。そのため、グラウト施工の仕上がりが向上し、柱脚1の意匠性を向上させることができる。
【0040】
<その他の実施形態>
【0041】
上記実施形態では、
図7に示すように、グラウト型枠10において第1部材11、第2部材12が、同じ形状を有しており、ベースプレート4を挟むようにして一対に設けられているが、特に限定されることなく、必ずしも同じ形状を有してなくても良いし、一対となって設けられていなくても良い。
例えば、第1部材11及び第2部材12のうち、いずれか一方のみに取り付け爪13が形成され、他方のみに取り付け穴14が形成されている構成であっても良い。
【0042】
上記実施形態では、
図8に示すように、第1部材11の取り付け爪13が、第2部材12の取り付け穴14に取り付けられているが、特に限定されることなく変更可能である。
すなわち、「取り付け爪」と「取り付け穴」の係合関係に特に限定されなくても良く、第1部材11に設けられた「取り付け部」が、第2部材12に設けられた「被取り付け部」に対し着脱可能に取り付け可能となっていれば良い。
【0043】
上記実施形態では、
図7、8に示すように、第1部材11の取り付け爪13が、第2部材12の取り付け穴14に取り付けられることで第1部材11及び第2部材12が連結されているところ、より強固に連結させるために粘着テープをさらに用いても良い。
例えば、グラウト型枠10の外側面全周にわたって粘着テープを巻き付けて補強しておくと好ましい。
また、基礎3に対しグラウト型枠10を強固に固定させるために粘着テープをさらに用いても良い。例えば、基礎3の上面に対し、グラウト型枠10の底壁部を全周にわたって粘着テープで連結して補強しておくと好ましい。
【0044】
上記実施形態では、
図2A,Bに示すように、注入穴4aと通気穴4bが、ベースプレート4の上面において1つずつ形成されており、第1部材11及び第2部材12の連結部分に対応する位置を避けて配置されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、一対の注入穴4aと一対の通気穴4bが、ベースプレート4の上面において四隅の間にそれぞれ形成されていても良い。
その場合には、注入穴4a又は通気穴4bが、第1部材11及び第2部材12の連結部分に対応する位置に配置されるため、グラウト材注入の際に当該連結部分に対し空気圧が余計に加わってしまう虞がある。そうなると、グラウト型枠10の連結部分が孕んでしまう(外側に出っ張ってしまう)ため、粘着テープを巻き付けて補強することが好ましい。
より好ましくは、
図2A,Bに示すように、注入穴4aと通気穴4bが、第1部材11及び第2部材12の連結部分に対応する位置を避けて1つずつ配置されていると良い。
【0045】
上記実施形態では、主として本発明に係るグラウト型枠及び柱脚に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 柱脚
1A 出隅部柱脚
1B 中間部柱脚
2 柱
3 基礎(柱脚基礎)
4 ベースプレート
4a 注入穴
4b 通気穴
5 アンカーボルト
6 グラウト材
10 グラウト型枠
10a 角部
11 第1部材
11a,12a 第1側壁部
11b,12b 第2側壁部
11c,12c 第1底壁部
11d,12d 第2底壁部
12 第2部材
13 取り付け爪(取り付け部)
14 取り付け穴(被取り付け部)
15 折り返し壁部
15a 角部
15b 一片
16 シール材
16a 第1延出部
16b 第2延出部
17 第2シール材
17a 第1延出部
17b 第2延出部
20 被覆材
30 柱脚カバー部材
31 カバー側壁部
32 カバー上壁部
33 カバー傾斜壁部
40 塗布剤
B 建物
B1 布基礎
B2 外壁パネル
B3 換気見切り