IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三井ハイテックの特許一覧

特許7440286積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置
<>
  • 特許-積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置 図1
  • 特許-積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置 図2
  • 特許-積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置 図3
  • 特許-積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置 図4
  • 特許-積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置 図5
  • 特許-積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置 図6
  • 特許-積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置 図7
  • 特許-積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240220BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H02K15/02 E
B21D28/02 Z
B21D28/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020017259
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021125953
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】泉 智大
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-159342(JP,A)
【文献】特開昭62-138035(JP,A)
【文献】特公昭46-023718(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B21D 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属板をその長手方向に沿って間欠的に搬送しつつプレス加工装置で打ち抜いて得られた複数の打抜部材を積層して積層鉄心を製造する方法であって、
少なくとも前記プレス加工装置による前記帯状の金属板への打抜加工の後に、当該打抜加工で前記打抜部材が打ち抜かれた後の前記帯状の金属板に形成される片持ち状部分を上方に吸引することと、
前記吸引することの後に、前記帯状の金属板を前記長手方向に沿って搬送することとを含む、積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
前記片持ち状部分は、前記帯状の金属板の搬送方向の上流側から下流側に向けて突出している、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記積層鉄心は固定子積層鉄心であり、
前記片持ち状部分は、前記固定子積層鉄心のティースに対応する部分である、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記吸引することは、吸引装置により吸引気流を前記帯状の金属板の吸引対象の部分の周囲に発生させることを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸引することは、前記帯状の金属板が塑性変形しない程度の力を前記帯状の金属板に作用させることを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記吸引することは、少なくとも前記プレス加工装置のストリッパが下死点から上死点まで上昇するまでの間、前記帯状の金属板を継続して吸引することを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
帯状の金属板をその長手方向に沿って間欠的に搬送するように構成された送出装置と、
前記帯状の金属板から複数の打抜部材を打ち抜いて積層することにより積層鉄心を製造するように構成されたプレス加工装置と、
少なくとも前記プレス加工装置による前記帯状の金属板への打抜加工の後に、当該打抜加工で前記打抜部材が打ち抜かれた後の前記帯状の金属板に形成される片持ち状部分を上方に吸引するように構成された吸引装置と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記吸引装置が前記帯状の金属板を吸引した後に、前記送出装置によって前記帯状の金属板を前記長手方向に沿って搬送させる処理を実行するように構成されている、積層鉄心の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、帯状の金属板を間欠的に送り出しながら、パンチ及びダイを用いて当該金属板を所定形状に打ち抜いて複数の打抜部材を形成することと、複数の打抜部材を積層して積層鉄心を得ることとを含む積層鉄心の製造方法を開示している。当該方法において、金属板が間欠的に送り出される際には、ダイプレートから突出する複数のリフタによって金属板が持ち上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-200296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、磁気特性の向上を目的として、積層鉄心の製造のためにより薄い金属板を用いる傾向にある。しかしながら、金属板が薄くなるほど、プレス加工の途中において金属板の一部が撓みやすくなる。そのため、金属板の搬送中に金属板の撓んだ部分がダイに衝突しないよう、リフタによる金属板の上昇量が大きくなる傾向にある。この場合、金属板が所定高さになるまで金属板を搬送できず、金属板の加工速度が低下する懸念がある。
【0005】
そこで、本開示は、金属板の加工速度をより高速化することが可能な積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
積層鉄心の製造方法の一例は、帯状の金属板をその長手方向に沿って間欠的に搬送しつつプレス加工装置で打ち抜いて得られた複数の打抜部材を積層して積層鉄心を製造する方法であってもよい。積層鉄心の製造方法の一例は、少なくともプレス加工装置による帯状の金属板への打抜加工の後に、当該打抜加工で打抜部材が打ち抜かれた後の帯状の金属板に形成される片持ち状部分を上方に吸引することと、帯状の金属板に形成される片持ち状部分を吸引することの後に、帯状の金属板を長手方向に沿って搬送することとを含んでいてもよい。
【0007】
積層鉄心の製造装置の一例は、帯状の金属板をその長手方向に沿って間欠的に搬送するように構成された送出装置と、帯状の金属板から複数の打抜部材を打ち抜いて積層することにより積層鉄心を製造するように構成されたプレス加工装置とを備えていてもよい。積層鉄心の製造装置の一例は、少なくともプレス加工装置による帯状の金属板への打抜加工の後に、当該打抜加工で打抜部材が打ち抜かれた後の帯状の金属板に形成される片持ち状部分を上方に吸引するように構成された吸引装置と、制御部とをさらに備えていてもよい。制御部は、吸引装置が帯状の金属板に形成される片持ち状部分を吸引した後に、送出装置によって帯状の金属板を長手方向に沿って搬送させる処理を実行するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る積層鉄心の製造方法及び積層鉄心の製造装置によれば、金属板の加工速度をより高速化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、固定子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
図2図2は、固定子積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、プレス加工装置の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、ダイプレート及びストリッパの一例を示す分解斜視図である。
図5図5は、ダイプレート及びストリッパの一例を部分的に示す断面図である。
図6図6は、金属板がプレス加工される工程を説明するための図である。
図7図7は、回転子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
図8図8は、金属板におけるレイアウトの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0011】
[固定子積層鉄心の構成]
まず、図1を参照して、固定子積層鉄心10(積層鉄心)の構成について説明する。固定子積層鉄心10は、固定子(ステータ)の一部である。固定子は、固定子積層鉄心10に、図示しない巻線が取り付けられることにより構成される。固定子が回転子(ロータ)と組み合わされることにより、電動機(モータ)が構成される。
【0012】
固定子積層鉄心10は、円筒形状を呈している。固定子積層鉄心10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように固定子積層鉄心10を貫通する貫通孔10a(中心孔)が設けられている。貫通孔10aは、固定子積層鉄心10の高さ方向(上下方向)に延びている。貫通孔10a内には、回転子が配置可能である。
【0013】
固定子積層鉄心10は、ヨーク11と、複数のティース12とを含む。ヨーク11は、円環状を呈しており、中心軸Axを囲むように延びている。複数のティース12はそれぞれ、ヨーク11の内縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク11の径方向に沿って延びている。複数のティース12はそれぞれ、ヨーク11の内縁から中心軸Ax側に向けて突出している。各ティース12は、ヨーク11の周方向において、略等間隔で並んでいてもよい。隣り合うティース12の間には、巻線(図示せず)を配置するための空間であるスロット13が画定されている。
【0014】
固定子積層鉄心10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられた積層体である。打抜部材Wは、後述する帯状の金属板MS(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、固定子積層鉄心10に対応する形状を呈している。打抜部材Wは、貫通孔10aに対応する貫通孔Waと、ヨーク11に対応するヨーク部W1と、各ティース12に対応する複数のティース部W2(片持ち状部分)とを含む。隣り合うティース部W2の間には、スロット13に対応する空間W3が画定されている。高さ方向において隣り合う打抜部材W同士は、カシメによって締結されていてもよいし、接着剤によって接合されていてもよいし、溶接によって結合されていてもよい。
【0015】
固定子積層鉄心10は、いわゆる転積又はスキューによって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺して、固定子積層鉄心10の平面度、平行度及び直角度を高めることを目的に実施される。「スキュー」とは、中心軸Axに対して捩れ角を有するように複数の打抜部材Wを積層することをいう。スキューは、コギングトルク、トルクリップル等の低減を目的に実施される。転積又はスキューの角度は、任意の大きさに設定されてもよい。
【0016】
[固定子積層鉄心の製造装置]
続いて、図2を参照して、固定子積層鉄心10の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板MSから固定子積層鉄心10を製造するように構成されている。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、プレス加工装置130と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0017】
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成されている。コイル材111は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置120は、金属板MSを上下から挟み込む一対のローラ121,122を含む。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板MSをプレス加工装置130に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。
【0018】
プレス加工装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成されている。プレス加工装置130は、例えば、送出装置120によって送り出される金属板MSを、後述するパンチP1~P3により順次打ち抜き加工するように構成されていてもよい。
【0019】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及びプレス加工装置130を動作させるための指示信号を生成するように構成されている。コントローラCtrは、送出装置120及びプレス加工装置130に当該指示信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0020】
[プレス加工装置の詳細]
続いて、図3図5を参照して、プレス加工装置130の詳細について説明する。プレス加工装置130は、図3に示されるように、下型140と、上型150と、プレス機160と、吸引装置170とを含む。下型140は、ベース141と、ダイホルダ142と、ダイプレート143と、複数のダイD1~D3と、複数のガイドポスト144と、複数のリフタ145と、搬送装置146とを含む。
【0021】
ベース141は、例えばプレスボルスタ(図示せず)上に固定されている。ダイホルダ142は、ベース141上に支持されている。ダイホルダ142には、複数の排出孔C1~C3が形成されている。複数の排出孔C1~C3は、ダイホルダ142の内部を鉛直方向に沿って延びていてもよい。複数の排出孔C1~C3には、金属板MSから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材、廃材等)が排出される。
【0022】
ダイプレート143は、ダイホルダ142上に支持されている。ダイプレート143は、図3図5に示されるように、複数のダイD1~D3をそれぞれ保持するように構成されている。ダイD1~D3はそれぞれ、ダイプレート143に設けられた保持孔内に配置されている。複数のダイD1~D3は、金属板MSの搬送方向において、上流側から下流側に向けてこの順に並んでいる。複数のダイD1~D3にはそれぞれ、上下方向に貫通するダイ孔D1a~D3aが設けられている。
【0023】
ダイ孔D1aは、図3に示されるように、排出孔C1と連通しており、後述するパンチP1と共に、金属板MSを打抜加工するための第1の加工ユニットを構成している。ダイ孔D1a内にパンチP1が挿抜されることにより、ダイ孔D1aの輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。これにより、図4に示されるように、打抜部材Wの複数の空間W3が金属板MSに形成される。当該複数の空間W3は、金属板MSにおいて、上方から見て円環状に並んでいる。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C1を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0024】
ダイ孔D2aは、図3に示されるように、排出孔C2と連通しており、後述するパンチP2と共に、金属板MSを打抜加工するための第2の加工ユニットを構成している。ダイ孔D2a内にパンチP2が挿抜されることにより、ダイ孔D2aの輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。これにより、図4に示されるように、打抜部材Wの貫通孔Waが金属板MSに形成される。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C2を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0025】
この際、貫通孔Waは、当該複数の空間W3の内周側において、当該複数の空間W3と連通する。そのため、金属板MSには、打抜部材Wの複数のティース部W2が形成される。当該複数のティース部W2は、金属板MSに対する片持ち状の板片として構成される。当該複数のティース部W2は、金属板MSにおいて、上方から見て円環状に並んでいる。すなわち、当該複数のティース部W2は、金属板MSの搬送方向の上流側から下流側に向けて突出するティース部W2と、金属板MSの搬送方向の下流側から上流側に向けて突出するティース部W2と、金属板MSの幅方向において突出するティース部W2とを含む。
【0026】
ダイ孔D3aは、図3に示されるように、排出孔C3と連通しており、後述するパンチP3と共に、金属板MSを打抜加工するための第3の加工ユニットを構成している。ダイ孔D3a内にパンチP3が挿抜されることにより、ダイ孔D3aの輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。これにより、図4に示されるように、打抜部材Wの外形に対応する形状の貫通孔Rが金属板MSに形成される。金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wは、ダイ孔D3a内において相互に結合されつつ所定数が積層される。その結果、固定子積層鉄心10が製造される。固定子積層鉄心10は、排出孔C3を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0027】
複数のガイドポスト144は、ダイホルダ142から上方に向けて直線状に延びている。複数のガイドポスト144は、後述するガイドブッシュ151aと共に、上型150を上下方向に案内するように構成されている。なお、複数のガイドポスト144は、上型150から下方に向けて延びるように上型150に取り付けられていてもよい。
【0028】
複数のリフタ145は、図3図5に示されるように、ダイプレート143に設けられている。複数のリフタ145は、ダイD1~D3の周囲に位置するように配置されている。各リフタ145は、図5に示されるように、リフトピン145aと、付勢部材145bとを含む。
【0029】
リフトピン145aは、ダイプレート143の挿通孔143a内をスライド可能に構成されている。挿通孔143aの開口は、ダイプレート143の上面に露出している。付勢部材145bは、挿通孔143a内に配置されており、リフトピン145aを上方に付勢するように構成されている。そのため、付勢部材145bによる付勢力に抗してリフトピン145aが上方から下方に向けて押し下げられた場合には、リフトピン145aの略全体が挿通孔143a内に収容される(図6(a)参照)。一方、そのような付勢力がリフトピン145aに作用していない場合には、リフトピン145aの上部が挿通孔143aから上方に向けて突出する(図5及び図6(b)参照)。
【0030】
搬送装置146は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、金属板MSからプレス加工によって得られた固定子積層鉄心10を後続の装置に送り出すように構成されている。図3に示されるように、搬送装置146の一端は排出孔C3内に位置しており、搬送装置146の他端はプレス加工装置130の外部に位置していてもよい。搬送装置146は、例えばベルトコンベアであってもよい。
【0031】
上型150は、パンチホルダ151と、ストリッパ152と、複数のパンチP1~P3とを含む。パンチホルダ151は、ダイプレート143と対面するようにダイプレート143の上方に配置されている。パンチホルダ151は、その下面側において複数のパンチP1~P3を保持するように構成されている。
【0032】
パンチホルダ151には、複数のガイドブッシュ151aが設けられている。複数のガイドブッシュ151aはそれぞれ、複数のガイドポスト144に対応するように位置している。ガイドブッシュ151aは、円筒状を呈しており、ガイドポスト144がガイドブッシュ151aの内部空間をスライド可能に構成されている。なお、ガイドポスト144が上型150に取り付けられている場合には、ガイドブッシュ151aが下型140に設けられていてもよい。
【0033】
パンチホルダ151には、複数の貫通孔151bが設けられている。貫通孔151bの内周面には、階段状の段差が形成されている。そのため、貫通孔151bの上部の径は、貫通孔151bの下部の径よりも小さく設定されている。
【0034】
ストリッパ152は、パンチP1~P3で金属板MSを打ち抜く際に、金属板MSをダイプレート143との間で挟持すると共に、パンチP1~P3に食いついた金属板MSをパンチP1~P3から取り除くように構成されている。金属板MSは、ストリッパ152とダイプレート143との間で挟持されることにより、プレス加工等の際の搬送方向における移動(位置ずれ)が規制される。ストリッパ152は、ダイプレート143とパンチホルダ151との間に配置されている。
【0035】
ストリッパ152は、接続部材153を介してパンチホルダ151と接続されている。接続部材153は、長尺状の本体部と、本体部の上端に設けられた頭部とを含む。接続部材153の本体部は、貫通孔151bの下部に挿通されており、貫通孔151b内を上下動可能である。接続部材153の本体部の下端は、ストリッパ152に固定されている。接続部材153の本体部の周囲には、パンチホルダ151とストリッパ152との間に位置するように、例えば圧縮コイルばね等の付勢部材154が取り付けられていてもよい。この場合、ストリッパ152は、付勢部材154によって、パンチホルダ151から離間する方向に付勢される。
【0036】
接続部材153の頭部は、貫通孔151bの上部に配置されている。接続部材153の頭部の外形は、上方から見たときに、接続部材153の本体部の外形よりも大きく設定されている。そのため、接続部材153の頭部は、貫通孔151bの上部を上下動可能であるが、貫通孔151bの段差がストッパとして機能して、貫通孔151bの下部を通過できないようになっている。そのため、ストリッパ152は、パンチホルダ151に対して相対的に上下移動可能となるように、接続部材153によってパンチホルダ151に対して吊り下げ保持されている。
【0037】
ストリッパ152には、パンチP1~P3に対応する位置にそれぞれ、貫通孔E1~E3が設けられている。各貫通孔E1~E3は、鉛直方向に沿って延びている。各貫通孔E1~E3は、上方から見たときに、対応するダイ孔D1a~D3aと連通する。パンチP1~P3の下部はそれぞれ、対応する貫通孔E1~E3内をスライド可能である。
【0038】
ストリッパ152には、図3図5に示されるように、複数の貫通孔152aが設けられている。複数の貫通孔152aは、ストリッパ152を上下方向に貫通している。複数の貫通孔152aは、図4に示されるように、貫通孔E2の周囲を取り囲むように配置されている。複数の貫通孔152aのうち下面(ダイプレート143との対向面)に設けられている出口はそれぞれ、上方から見たときに、金属板MSに形成されている複数のティース部W2と重なり合うように位置している。
【0039】
パンチP1~P3は、図3に示されるように、プレス加工装置130の上流側から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。パンチP1の下端部は、ダイ孔D1aに対応する形状を呈している。パンチP2の下端部は、ダイ孔D2aに対応する形状を呈している。パンチP3の下端部は、ダイ孔D3aに対応する形状を呈している。
【0040】
プレス機160は、上型150を上下動させるように構成されている。プレス機160は、クランクシャフト161と、固定部材162と、連結部材163と、駆動機構164とを含む。クランクシャフト161は、主軸(クランクジャーナル)と、主軸から偏心して位置する偏心軸(クランクピン)と、これらを接続する接続部材(クランクアーム)とを含む。
【0041】
固定部材162は、固定壁等に固定されており、クランクシャフト161の主軸を回転可能に保持するように構成されている。連結部材163は、クランクシャフト161とパンチホルダ151とを連結している。連結部材163の上端部には、クランクシャフト161の偏心軸が回転可能に接続されている。連結部材163の下端部には、回転軸(図示せず)を介して、パンチホルダ151が接続されている。
【0042】
駆動機構164は、例えば、フライホイールやギアボックスなど(図示せず)を介して、クランクシャフト161の主軸に接続されている。駆動機構164は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作し、クランクシャフト161の主軸を回転させる。クランクシャフト161の主軸が回転すると、偏心軸が主軸周りを円運動する。これに伴い、パンチホルダ151が上死点と下死点との間を上下に往復運動する。
【0043】
吸引装置170は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成されている。吸引装置170は、図5に示されるように、貫通孔152aを通じて、貫通孔152aの出口の周囲に吸引気流(負圧)を発生させて、ティース部W2を上方に吸引するように構成されている。吸引装置170は、ティース部W2が塑性変形しない程度の吸引力をティース部W2に生じさせるように設定されていてもよい。吸引装置170によってティース部W2に生ずる吸引力の大きさは、金属板MSの板厚、金属板MSの材質、ティース部W2の形状などに応じて適宜設定されてもよい。吸引装置170は、例えば、吸気ポンプであってもよい。
【0044】
[固定子積層鉄心の製造方法]
続いて、図6を参照して、固定子積層鉄心10の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、固定子積層鉄心10の製造中において、吸引装置170が常に動作するように、コントローラCtrが吸引装置170を制御している。
【0045】
金属板MSが送出装置120によって間欠的にプレス加工装置130に送り出され、金属板MSの所定部位がダイD1に到達すると、プレス機160が動作して、上型150を下型140に向けて下方に押し出す。ストリッパ152が金属板MSに到達して、ストリッパ152とダイプレート143とで金属板MSが挟持されると、一対のローラ121,122による金属板MSの挟持が解除される。このとき、リフトピン145aがストリッパ152によって押し下げられるので、リフトピン145aの略全体が挿通孔143a内に収容される。
【0046】
その後も引き続き、プレス機160が上型150を下方に向けて押し出す。このとき、ストリッパ152は移動しないが、パンチホルダ151及びパンチP1~P3は引き続き降下する。そのため、パンチP1の先端部は、ストリッパ152の貫通孔E1内を下方に移動し、さらにダイ孔D1aに到達する。この工程で、パンチP1が金属板MSをダイ孔D1aに沿って打ち抜く。これにより、複数の空間W3が金属板MSに形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C1から排出される。その後、一対のローラ121,122が再び金属板MSを挟持すると共に、プレス機160の動作に伴い、ストリッパ152が金属板MSから離間するようにパンチホルダ151が上死点まで上昇する。
【0047】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位がダイD2に到達すると、プレス機160が動作して、上型150を下型140に向けて下方に押し出す。ストリッパ152が金属板MSに到達して、ストリッパ152とダイプレート143とで金属板MSが挟持されると、一対のローラ121,122による金属板MSの挟持が解除される。このとき、図6(a)に示されるように、リフトピン145aがストリッパ152によって押し下げられるので、リフトピン145aの略全体が挿通孔143a内に収容される。
【0048】
その後も引き続き、プレス機160が上型150を下方に向けて押し出す。このとき、ストリッパ152は移動しないが、パンチホルダ151及びパンチP1~P3は引き続き降下する。そのため、パンチP2の先端部は、ストリッパ152の貫通孔E2内を下方に移動し、さらにダイ孔D2aに到達する。この過程で、パンチP2が金属板MSをダイ孔D2aに沿って打ち抜く。これにより、前の工程で形成された複数の空間W3と連通する貫通孔Waが金属板MSに形成される。その結果、貫通孔Waの周方向において隣り合う空間W3の間に、片持ち状の板片であるティース部W2が形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C2から排出される。
【0049】
図6(a)に示されるように、ストリッパ152とダイプレート143とで金属板MSが挟持されている状態において、複数の貫通孔152aの出口はそれぞれ、対応するティース部W2と当接又は近接する。吸引装置170によって貫通孔152aの出口の周囲に吸引気流(負圧)が形成されているので、貫通孔152aの出口に当接又は近接しているティース部W2の周囲にも吸引気流(負圧)が形成される。そのため、各ティース部W2は、対応する貫通孔152aによって上方に吸引される。
【0050】
その後、一対のローラ121,122が再び金属板MSを挟持すると共に、プレス機160の動作に伴い、ストリッパ152が金属板MSから離間するようにパンチホルダ151が上死点まで上昇する。このとき、図6(b)に示されるように、付勢部材145bの付勢力によってリフトピン145aが金属板MSの全体を上昇させると共に、各ティース部W2が、対応する貫通孔152aに引き寄せられる。
【0051】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出されると、貫通孔152aから離れるにつれてティース部W2に作用する吸引力が小さくなる。そのため、各ティース部W2の先端部は、上方に向けて湾曲していた状態から徐々に降下する。送出装置120は、各ティース部W2の垂れ下がりが大きくなる前にティース部W2がダイ孔D2aを通過するように、金属板MSを下流側に送出する。なお、上型150の上昇開始から、送出装置による金属板MSの間欠的な送出が完了するまでの時間は、例えば、0.1秒~0.5秒程度であってもよいし、0.1秒よりも短くてもよい。
【0052】
次に、金属板MSの所定部位がダイD2に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP3による金属板MSの打抜加工が行われる。これにより、図4に示されるように、金属板MSから打抜部材Wが打ち抜かれる。打抜部材Wが打ち抜かれた後の金属板MSには、打抜部材Wの外形に対応する形状の貫通孔Rが形成される。
【0053】
打ち抜かれた打抜部材Wは、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対してダイ孔D3a内において積層されつつ結合される。ダイ孔D3a内において、所定枚数の打抜部材Wが積層されると、固定子積層鉄心10が完成する。固定子積層鉄心10は、排出孔C3及び搬送装置146を通じて、プレス加工装置130の後続の装置に送り出される。
【0054】
[作用]
以上の例によれば、金属板MSへの打抜加工の後に、金属板MSの片持ち状部分であるティース部W2が上方に吸引されることにより、ティース部W2の下方への垂れ下がりが抑制された状態で、金属板MSが搬送される。そのため、リフタ145による金属板MSの上昇量が大きくなくても、ティース部W2のダイD2への衝突を避けつつ、金属板MSの搬送開始のタイミングを早めることができる。したがって、金属板MSの加工速度をより高速化することが可能となる。その結果、固定子積層鉄心10の生産性の向上を図ることが可能となる。
【0055】
以上の例によれば、ティース部W2は、吸引装置170がティース部W2の周囲に形成した吸引気流によって、上方に吸引される。そのため、比較的安価且つ簡易な構成により、ティース部W2の吸引を実現することが可能となる。
【0056】
ところで、ティース部W2は、金属板MSの搬送方向の上流側から下流側に向けて突出しうる。当該ティース部W2が垂れ下がると、金属板MSの搬送時において当該ティース部W2がダイD2(ダイ孔D2aの内周面)に衝突して変形しやすい傾向にある。しかしながら、以上の例によれば、ティース部W2が上方に吸引されるので、ティース部W2のダイD2への衝突を避けつつ、金属板MSの搬送開始のタイミングを早めることができる。
【0057】
以上の例によれば、ティース部W2には、ティース部W2が塑性変形しない程度の吸引力が作用しうる。この場合、弾性変形の範囲内でティース部W2が上方に吸引されるので、打抜部材Wの過度な変形が抑制される。そのため、良好な特性の固定子積層鉄心10を得ることが可能となる。
【0058】
以上の例によれば、ティース部W2は、少なくともストリッパ152が下死点から上死点まで上昇するまでの間、貫通孔152aによって継続して吸引されうる。この場合、吸引開始及び吸引停止の細かな制御を要しないので、固定子積層鉄心10をより効率的に製造することが可能となる。
【0059】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対し種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0060】
(1)固定子積層鉄心10の製造中において、吸引装置170によって、貫通孔152aを通じた吸気が常に行われていてもよいし、少なくともストリッパ152が下死点から上死点まで上昇するまでの間、貫通孔152aを通じた吸気が行われてもよい。金属板MSは、少なくとも金属板MS下方への垂れ下がりが生じやすい形状が形成される打抜加工の後に、当該形状となった部分を上方に吸引することで、垂れ下がりを抑制することができる。
【0061】
(2)吸引装置170によって、金属板MSのうちティース部W2以外の部分も吸引されてもよい。この場合、金属板MSに作用する吸引力を、金属板MSが空中に浮遊することができる程度の大きさに設定することで、プレス加工装置130からリフタ145を省略することができる。
【0062】
(3)貫通孔152aの形状は変更することができる。一例として、貫通孔152aの入口(吸引装置170側の端部)の孔径に対して出口(ダイプレート143との対向面に設けられる端部)の孔径が大きく(または小さく)なっていてもよい。また、貫通孔152aの出口には、吸引面積を大きくするための溝が形成されていてもよい。また、複数の貫通孔152aをそれぞれ個別に設けるのではなく、複数の貫通孔152aの出口(ダイプレート143との対向面に設けられる端部)が設けられるように貫通孔152aの形状を変更してもよい。貫通孔152aの形状を変更する一例として、隣接する貫通孔152a同士を連通させる横穴を設けてもよい。複数の貫通孔152aを連通させる横穴等に対応する構成を有する場合、吸引装置170と接続される入口の数に対して貫通孔152aの出口の数を多くすることができる。また、このような場合でも、吸引装置170によって複数の貫通孔152aの出口の周囲に吸引気流(負圧)を発生させることが可能となる。そのため、吸引装置170と貫通孔152aとを接続する配管の数が減少し、プレス加工装置の構成の簡略化及びコスト低減を実現することができる。なお、貫通孔152aを設けるために、ストリッパ152本体に対して別の部材を組み合わせる構成としてもよい。
【0063】
(4)吸引装置170は、吸気以外の手段によってティース部W2を吸引してもよい。吸引装置170は、例えば、磁石(例えば、永久磁石、電磁石)であってもよい。この場合、金属板MSに磁力が作用するように、吸引装置170がストリッパ152内に埋設されていてもよい。吸引装置170は、例えば、吸盤であってもよい。
【0064】
(5)製造過程で片持ち状部分が生ずるのであれば、固定子積層鉄心10以外の他の積層鉄心(例えば、回転子積層鉄心)や、積層鉄心以外の金属製品(例えば、リードフレーム)を製造する際に、上述した製造装置100を用いてもよい。
【0065】
図7に、片持ち状部分を含む回転子積層鉄心の例を示す。図7に例示される回転子積層鉄心20は、円筒形状を呈している。すなわち、回転子積層鉄心20の中央部分には、中心軸Axに沿って回転子積層鉄心20を貫通して延びる中心孔20a(貫通孔)が設けられている。中心孔20a内には、シャフトが配置可能である。
【0066】
回転子積層鉄心20のうち中心孔20aの周囲には、中心軸Axに沿って回転子積層鉄心20を貫通して延びる複数の磁石挿入孔21が設けられている。磁石挿入孔21は、第1の部分21aと、第2の部分21bと、第3の部分21cとを含む。第1の部分21aは、中心孔20a近傍を延びている。第2の部分21bは、第1の部分21aの一端から連続して回転子積層鉄心20の外周面に向けて、回転子積層鉄心20の径方向に沿って延びている。第3の部分21cは、第1の部分21aの他端から連続して回転子積層鉄心20の外周面に向けて、回転子積層鉄心20の径方向に沿って延びている。したがって、磁石挿入孔21は、上方から見て、略C字形状を呈している。回転子積層鉄心20は、各磁石挿入孔21と回転子積層鉄心20の外周面とで囲まれた島状部Tを含む。
【0067】
磁石挿入孔21のうち第1の部分21a内には、少なくとも一つの永久磁石22が配置されている。永久磁石22が挿入された後の磁石挿入孔21内には、固化樹脂23が設けられている。固化樹脂23は、永久磁石22を磁石挿入孔21内に固定するように構成されている。固化樹脂23は、上下方向で隣り合う打抜部材W同士を接合するように構成されている。
【0068】
回転子積層鉄心20は、複数の打抜部材W(打抜部材)が積み重ねられた積層体である。複数の打抜部材Wの積層方向は、中心軸Axの延在方向でもある。上方から見た打抜部材Wの形状は、上方から見た回転子積層鉄心20の形状と略同一である。そのため、打抜部材Wは、島状部Tに対応する島状部Wt(片持ち状部分)を含む。島状部Wtは、打抜部材Wの外周縁から中心軸Axに向けて突出する片持ち状の板片である。
【0069】
(6)製造装置100は、金属板MSの片持ち状部分とは異なる部分を上方に吸引してもよい。また、製造過程で片持ち状部分が形成されない場合であっても、金属製品を製造する際に、上述した製造装置100を用いてもよい。
【0070】
図8に、金属板MSにおけるレイアウトの一例を示す。図8に例示される金属板MSでは、打抜形状R1及び打抜形状R2に対応した形状の打抜部材Wが形成される。複数の打抜部材Wが積層されて積層体は、図示しない加工機によって折り曲げ加工されることで、固定子積層鉄心となる。そのため、打抜形状R1は、ヨーク部W1に対応するヨーク対応領域R1aと、複数のティース部W2に対応する複数のティース対応領域R1bとを有する。ヨーク対応領域R1aは、金属板MSの幅方向に延在している。複数のティース対応領域R1bは、ヨーク対応領域R1aよりも下流側に位置している。また、打抜形状R2は、ヨーク部W1に対応するヨーク対応領域R2aと、複数のティース部W2に対応する複数のティース対応領域R2bとを有する。ヨーク対応領域R2aは、金属板MSの幅方向に延在している。複数のティース対応領域R2bは、ヨーク対応領域R2aよりも上流側に位置している。金属板MSに打抜形状R1,R2の双方が形成される位置S17において、複数のティース対応領域R2bは、金属板MSの幅方向において複数のティース対応領域R1bの間に一つずつ位置している。
【0071】
図8における位置S1及び位置S2は、金属板MSから打抜部材が打ち抜かれる位置を示している。例えば、位置S1では、打抜形状R1に対応した形状の打抜部材が打ち抜かれる。また、位置S2では、打抜形状R2に対応した形状の打抜部材が打ち抜かれる。ここで、搬送方向に沿って位置S1及び位置S1よりと位置S2との間の金属板MSでは、打抜形状R1に対応した形状の打抜部材が打ち抜かれた結果、幅広の片持ち状である突出部M1が形成され得る。また、搬送方向に沿って位置S2及び位置S2よりも下流側では、打抜形状R2に対応した形状の打抜部材が打ち抜かれた結果、突出部M1よりも幅が細く、金属板MSの幅方向に沿って略S字状を繰り返すように延びる蛇行部M2が形成される。金属板MSの突出部M1及び蛇行部M2は、下方へ垂れ下がっているとティース部W2と同様に搬送時にダイ等と干渉する可能性がある。これに対して、吸引装置170によって、突出部M1または蛇行部M2が形成された後にこれらを上方に吸引する構成とすることで、突出部M1または蛇行部M2の下方への垂れ下がりを抑制することができる。
【0072】
このように、打抜加工によって金属板MS下方への垂れ下がりが生じやすい形状が形成される場合、打抜加工よりも後に吸引装置170によって当該形状となった部分が上方に吸引されることで、下方への垂れ下がりを抑制することができる。また、吸引装置170による金属板MSの吸引対象の位置は、打抜部材となる部分に限定されない。したがって、打抜部材とは異なる領域を吸引する構成としてもよい。
【0073】
[他の例]
例1.積層鉄心の製造方法の一例は、帯状の金属板をその長手方向に沿って間欠的に搬送しつつプレス加工装置で打ち抜いて得られた複数の打抜部材を積層して積層鉄心を製造する方法であってもよい。積層鉄心の製造方法の一例は、少なくともプレス加工装置による金属板への打抜加工の後に、金属板を上方に吸引することと、片持ち状部分を吸引することの後に、金属板を長手方向に沿って搬送することとを含んでいてもよい。この場合、金属板が上方に吸引されることにより、金属板の下方への垂れ下がりが抑制された状態で、金属板が搬送される。そのため、リフタ等による金属板の上昇量が大きくなくても、金属板のダイへの衝突を避けつつ、金属板の搬送開始のタイミングを早めることができる。したがって、金属板の加工速度をより高速化することが可能となる。その結果、積層鉄心の生産性の向上を図ることが可能となる。
【0074】
例2.例1の方法において、吸引することは、金属板に形成される片持ち状部分を上方に吸引することを含んでいてもよい。片持ち状部分は、下方へ垂れ下がりやすい形状となっている。これに対して、片持ち状部分が上方に吸引されることにより、片持ち状部分の下方への垂れ下がりが抑制された状態で、金属板が搬送される。そのため、リフタ等による金属板の上昇量が大きくなくても、片持ち状部分のダイへの衝突を避けつつ、金属板の搬送開始のタイミングを早めることができる。したがって、金属板の加工速度をより高速化することが可能となる。
【0075】
例3.例1又は例2の方法において、片持ち状部分は、金属板の搬送方向の上流側から下流側に向けて突出していてもよい。例3のような片持ち状部分が垂れ下がっていると、片持ち状部分が金属板の搬送時にダイに衝突して変形しやすい傾向にある。しかしながら、片持ち状部分が上方に吸引されるので、例2のような片持ち状部分であっても、片持ち状部分のダイへの衝突を避けつつ、金属板の搬送開始のタイミングを早めることができる。
【0076】
例4.例2又は例3の方法において、積層鉄心は固定子積層鉄心であり、片持ち状部分は、固定子積層鉄心のティースに対応する部分であってもよい。
【0077】
例5.例1の方法において、吸引することは、打抜部材が打ち抜かれた後の金属板を上方に吸引することを含んでいてもよい。打抜部材が打ち抜かれた後の金属板は、打抜部材の形状によっては下方へ垂れ下がりやすい形状となっている。これに対して、打ち抜かれた後の金属板が上方に吸引されることにより、金属板の下方への垂れ下がりが抑制された状態で、金属板が搬送される。そのため、リフタ等による金属板の上昇量が大きくなくても、金属板のダイへの衝突を避けつつ、金属板の搬送開始のタイミングを早めることができる。
【0078】
例6.例1~例5のいずれかの方法において、金属板を吸引することは、吸引装置により吸引気流を金属板の吸引対象の部分の周囲に発生させることを含んでいてもよい。この場合、比較的安価且つ簡易な構成により、金属板の吸引対象の部分の吸引を実現することが可能となる。
【0079】
例7.例1~例6のいずれかの方法において、金属板を吸引することは、金属板が塑性変形しない程度の力を金属板に作用させることを含んでいてもよい。この場合、弾性変形の範囲内で金属板が上方に吸引されるので、積層鉄心を構成する打抜部材の過度な変形が抑制される。そのため、良好な特性の積層鉄心を得ることが可能となる。
【0080】
例8.例1~例7のいずれかの方法において、金属板を吸引することは、少なくともプレス加工装置のストリッパが下死点から上死点まで上昇するまでの間、金属板を継続して吸引することを含んでいてもよい。この場合、吸引開始及び吸引停止の細かな制御を要しないので、積層鉄心をより効率的に製造することが可能となる。
【0081】
例9.積層鉄心の製造装置の一例は、帯状の金属板をその長手方向に沿って間欠的に搬送するように構成された送出装置と、金属板から複数の打抜部材を打ち抜いて積層することにより積層鉄心を製造するように構成されたプレス加工装置とを備えていてもよい。積層鉄心の製造装置の一例は、少なくともプレス加工装置による金属板への打抜加工の後に、金属板を上方に吸引するように構成された吸引装置と、制御部とをさらに備えていてもよい。制御部は、吸引装置が金属板を吸引した後に、送出装置によって金属板を長手方向に沿って搬送させる処理を実行するように構成されていてもよい。この場合、例1の方法と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0082】
10…固定子積層鉄心(積層鉄心)、12…ティース、100…製造装置、120…送出装置、130…プレス加工装置、143…ダイプレート、152…ストリッパ、170…吸引装置、Ctr…コントローラ(制御部)、MS…金属板、W…打抜部材、W2…ティース部(片持ち状部分)、Wt…島状部(片持ち状部分)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8