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特許7440292多段引出しキャビネットおよび施錠ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】多段引出しキャビネットおよび施錠ユニット
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/919 20170101AFI20240220BHJP
   E05B 65/467 20170101ALI20240220BHJP
【FI】
A47B88/919
E05B65/467
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020030527
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134531
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 延忠
(72)【発明者】
【氏名】木曽 博紀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏巳
(72)【発明者】
【氏名】赤木 琢磨
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第01695896(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0307205(US,A1)
【文献】実公昭29-015014(JP,Y1)
【文献】特開2014-181467(JP,A)
【文献】実開平06-059158(JP,U)
【文献】実開昭61-073242(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 67/04,88/00-88/994
E05B 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
什器本体と、
前記什器本体に前後方向に引き出し可能に支持され、上下に並べて配置された複数の引出し本体と、
一以上の前記複数の引出し本体の前方に位置して前記引出し本体の前方への移動を規制する施錠位置と前記引出し本体の前方を避けた開錠位置との間で移動可能に設けられたストッパと、
前記什器本体に設けられ、前記ストッパを支持するストッパ支持部と、
前記ストッパを前記施錠位置に保持することにより前記引出し本体を施錠可能な施錠部と、
を備え、
前記ストッパは、前記複数の引出し本体のうちの任意の前記引出し本体に対応する位置に設置され
前記ストッパは、前記任意の引出し本体に対応する位置を変更しうるように、上下方向に移動可能に前記什器本体に設けられている多段引出しキャビネット。
【請求項2】
前記ストッパ支持部は、前記什器本体の前端部に設けられ、前記ストッパを軸支する軸支部を備え、
前記ストッパは、前記軸支部周りに前記ストッパ支持部に対して回動可能に支持されている
請求項1に記載の多段引出しキャビネット。
【請求項3】
多段引出しキャビネットの引出し本体の前方への移動を規制する施錠位置と前記引出し本体の前方を避けた開錠位置との間で移動可能にストッパと、
前記多段引出しキャビネットの前端部に取り付け可能であり、前記ストッパを支持するストッパ支持部と、
前記ストッパを前記施錠位置に保持することにより前記引出し本体を施錠可能な施錠部と、
を備え、
前記ストッパ支持部は、前記多段引出しキャビネットの什器本体の高さ方向の任意の位置に取り付け可能である施錠ユニット。
【請求項4】
前記ストッパ支持部および前記施錠部が前記多段引出しキャビネットの前端部に着脱可能に取り付けられる
請求項に記載の施錠ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段引出しキャビネットおよび施錠ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
上下に複数の引出しを設けた多段引出しキャビネットが用いられている。このような多段引出しキャビネットは、収納物の紛失を防止するために、施錠機構を設ける例がある。例えば、各引出しに施錠部を設け、個別に施錠可能とする構成が多く見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-181467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の引出しを個別に施錠可能な多段引出しキャビネットの場合、各引出しを個別に施錠する必要があり、複数の引出しの施錠を一括管理したい場合には不向きであった。これに対し、例えば、特許文献1等、複数の引出しを一括施錠可能な施錠機構を備えた収納キャビネットが提案されている。特許文献1の収納キャビネットは、複数の引出しの前方に施錠扉を設け、この施錠扉を施錠機構によってキャビネット本体に係留することにより、複数の引出しの一括施錠を実現している。
【0005】
この他、多段引出しキャビネットにおいて、例えば、使用頻度が高く、貴重品ではない物品を収納する引出しは常時無施錠で使用し、貴重品等を収納する引出しのみを施錠したいというニーズがある。そのため、特許文献1の収納キャビネットでは、施錠扉が複数の引出しの高さ方向の全域にわたって前方を覆う構成であるため不向きである。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、複数の引出しの一部を簡易な操作で施錠可能な多段用引出しキャビネットおよび施錠ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る多段引出しキャビネットは、什器本体と、前記什器本体に前後方向に引き出し可能に支持され、上下に並べて配置された複数の引出し本体と、一以上の前記複数の引出し本体の前方に位置して前記引出し本体の前方への移動を規制する施錠位置と前記引出し本体の前方を避けた開錠位置との間で移動可能に設けられたストッパと、前記什器本体に設けられ、前記ストッパを支持するストッパ支持部と、前記ストッパを前記施錠位置に保持することにより前記引出し本体を施錠可能な施錠部と、を備え、前記ストッパは、前記複数の引出し本体のうちの任意の前記引出し本体に対応する位置に設置される多段引出しキャビネット。
【0008】
このような多段引出しキャビネットによれば、ストッパ支持部に支持され、施錠位置と開錠位置との間で移動可能なストッパを、施錠位置に保持して施錠部により施錠すれば、引出し本体の前方への移動が規制され、引出し本体が施錠可能となる。また、複数の引出し本体のうちの任意の引出し本体を施錠可能である。したがって、複数の引出し本体の一部を簡易な操作で任意の引出し本体を施錠可能な多段引出しキャビネットおよび施錠ユニットを提供できる。
【0009】
本発明に係る多段引出しキャビネットでは、前記ストッパ支持部は、前記什器本体の前端部に設けられ、前記ストッパを軸支する軸支部を備えてもよく、前記ストッパは、前記軸支部周りに前記ストッパ支持部に対して回動可能に支持されていてもよい。
【0010】
このような多段引出しキャビネットによれば、ストッパがストッパ支持部に対して回動可能に支持されているため、ストッパを回動させる簡易な操作により、ストッパを引出し本体の前方に配置できる。
【0011】
本発明に係る多段引出しキャビネットでは、前記ストッパは、前記複数の引出し本体のうちの一以上の前記引出し本体が常時開放可能となるように配置されていてもよい。
【0012】
このような多段引出しキャビネットによれば、複数の引出し本体のうちの一以上の引出し本体が常時開放可能となるため、常時開放可能な無施錠の引出し本体と、施錠可能な引出し本体とを備える多段引出しキャビネットを提供できる。
【0013】
本発明に係る多段引出しキャビネットでは、前記ストッパの幅方向の長さは、前記引出し本体の幅方向の長さよりも短くてもよい。
【0014】
このような多段引出しキャビネットによれば、ストッパの幅が引出し本体の幅より短いため、ストッパが施錠位置に保持されるとき、ストッパが引出し本体の前方を部分的に覆い、引出し本体の一部が外部から視認可能となる。その結果、例えば、引出し本体の前板が透明な場合や、引出し本体に収納物が視認可能な窓がある場合等、施錠時も引出し本体内の収納物の収納状態を確認可能である。また、ストッパが、引出し本体の全幅を覆う場合に比べて、軽量化でき、ストッパの動作が円滑となる。また、多段引出しキャビネット全体の軽量化に寄与する。さらに、ストッパを施錠位置と開錠位置とで移動させる際に、ストッパの動線を小さく抑えられる。
【0015】
本発明に係る施錠ユニットは、多段引出しキャビネットの引出し本体の前方への移動を規制する施錠位置と前記引出しの前方を避けた開錠位置との間で移動可能にストッパと、前記多段引出しキャビネットの前端部に取り付け可能であり、前記ストッパを支持するストッパ支持部と、前記ストッパを前記施錠位置に保持することにより前記引出し本体を施錠する施錠部と、を備え、前記ストッパ支持部は、前記多段引出しキャビネットの什器本体の高さ方向の任意の位置に取り付け可能である。
【0016】
このような施錠ユニットによれば、ストッパ支持部に支持され、施錠位置と開錠位置との間で移動可能なストッパを、施錠部により施錠位置に保持すれば、引出し本体の前方への移動が規制され、引出し本体が施錠可能となる。このような施錠ユニットを多段引出しキャビネットに着脱可能に取り付けられる。このような施錠ユニットによれば、使用者が施錠したい引出し本体に対応する位置にストッパ支持部およびストッパを取り付けられる。この結果、使用者のニーズに応じて、多段引出しキャビネットを取り付けることができる。
【0017】
本発明に係る施錠ユニットでは、前記ストッパ支持部および前記施錠部が前記多段引出しキャビネットの前端部に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0018】
このような施錠ユニットによれば、ストッパ支持部および施錠部が、キャビネットに着脱可能い取り付けられるため、使用者のニーズに応じて、多段引出しキャビネットに施錠機構を取り付けることができる。したがって、施錠機構を有する多段引出しキャビネットと、施錠機構を備えない多段引出しキャビネットとを個別に作製する必要がなく、製造効率が高い。
【発明の効果】
【0019】
上記多段引出しキャビネットおよび施錠ユニットによれば、複数の引出しの一部を簡易な操作で施錠可能な多段用引出しキャビネットおよび施錠ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る多段引出しキャビネットの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る多段引出しキャビネットの斜視図である。
図3図1のIII-III線における水平断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る多段引出しキャビネットの分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態の係止部材の態様を示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態の係止部材の態様を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態のストッパの変形例を示す斜視図である。
図8】本発明の一実施形態の変形例の施錠ユニットの分解斜視図である。
図9図8に示す変形例の水平断面図である。
図10】本発明の一実施形態の他の変形例の多段引出しキャビネットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る多段用引出しおよび多段引出しキャビネット用の施錠ユニットについて、図1から図4を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る多段引出しキャビネット1の斜視図である。図2は、開錠状態の多段引出しキャビネット1の斜視図である。図3は、多段引出しキャビネットの水平断面図である。図4は、多段引出しキャビネットの分解斜視図である。
【0022】
多段引出しキャビネット1(以下、「キャビネット」と称する。)は、什器本体9内に上下に複数の引出し本体7(以下、「引出し」と称する。)を並べて収容した什器である。
【0023】
以下の説明において、縦方向Vに直交し、引出し7が什器本体9から進退する方向(前後方向)を奥行方向Dと称し、縦方向Vおよび奥行方向Dに直交する方向を幅方向Wと称する。引出し7の説明において、引出し7が什器本体9から引き出される方向を前方と称し、引き出された引出し7が什器本体9に押し込まれる方向を後方と称する。
【0024】
キャビネット1は、什器本体9と、引出し7と、施錠ユニット2とを備える。本実施形態では、一例として、引出し7が上下に4段設けられたキャビネット1を示す。
【0025】
什器本体9は、図1および図2に示すように、下枠91、一対の側壁92、後壁(不図示)、および上枠93により略直方体形状に組み立てられて構成されている。什器本体9は、平面視矩形の下枠91の幅方向Wの両端部に一対の側壁92が縦方向Vに沿って設けられ、後側に後壁が縦方向Vに沿って設けられている。一対の側壁92の上部に上枠93が取り付けられている。上枠93の上方には、さらに天板94が設けられている。什器本体9は、内側に中空部が形成されており、奥行方向Dの前方が開口している。什器本体9の内壁面には、引出し7が前後方向に移動可能となるように引出し7を支持可能な引出し用レール(不図示)が設けられている。什器本体9の下部に移動用の複数のキャスター110および把手111が設けられている。
【0026】
各側壁92の間に、複数の引出し7が縦方向Vに複数段設けられている。引出し7は、収納物を収納する箱体である。引出し7は、箱部と前板71とを有する。箱部は、立体形状を有し、内部に収納物の収容可能に構成されている。前板71は、箱部の前方を覆う部材である。前板71は、前面に縦方向Vに沿う平面形状を有し、上部に把手部が形成されている。引出し7は、例えば、樹脂製、金属製等である。
【0027】
施錠ユニット2は、ストッパ3を引出し7の前方に配置した状態で施錠部5により引出し本体を施錠可能とする機構である。施錠ユニット2は、ストッパ支持部4と、ストッパ3と、施錠部5と、を備える。
【0028】
ストッパ支持部4は、什器本体9に設けられている。ストッパ支持部4は、ストッパ3を支持可能に構成されている。ストッパ支持部4は、ストッパ3の上方および下方に一対設けられている。図4に示すように、ストッパ支持部4は、什器本体9への固定部41と、軸固定部42と、軸支部6とを有する。ストッパ支持部4は、固定部41と、軸固定部42と、軸支部6とが一体に形成されている。
【0029】
固定部41は、平板形状を有し、什器本体9の前面に沿う平面部を有する。固定部41には、奥行方向Dに貫通する固定孔43が形成されている。軸固定部42は、固定部41から前方に突出して配置されている。
【0030】
ストッパ支持部4に軸支部6を備える。軸支部6は、ストッパ3を回動可能に支持する部位である。軸支部6は、軸固定部42の平面視略中央部から突出して縦方向Vに沿って延びている。軸支部6は、円柱形状の軸部材である。
【0031】
一対のストッパ支持部4は、同一形状の部品である。ストッパ3の上方に配置されるストッパ支持部4aは、軸支部6が軸固定部42から下方に延びるように配置される。ストッパ3の下方に配置されるストッパ支持部4bは、軸支部6が軸固定部42から上方に延びるように配置される。
【0032】
各ストッパ支持部4a,4bは、什器本体9の前端95かつ幅方向Wの端部に設けられる。図3の水平断面図に示すように、什器本体9の側壁92を構成する部材の前端部96には、縦方向Vに延びる縦溝97が形成されている。縦溝97は、前方側に開口するスリット99が形成されている。スリット99の幅方向Wの長さW99は、縦溝97の幅方向Wの長さW97より短い。
【0033】
縦溝97内に支持受け部材8が配置される。図5および図6に、支持受け部材8の一例の模式図を示す。支持受け部材8は、略平板形状の部材であり、平板の中央部にネジ孔81が形成されている。図5および図6に示すように、支持受け部材8は、正面視六角形を有し、縦寸法が横寸法より長い平板状部材である。支持受け部材8の厚さは、縦溝97の奥行方向Dの寸法よりやや小さい。したがって、支持受け部材8は、縦溝97内をスライド移動可能である。
【0034】
支持受け部材8は、幅方向Wの両端の縦縁部82が平行に延びている。支持受け部材8の縦方向Vの上下端の横縁部83が平行に延びている。縦縁部82と横縁部83との間は、略直角に交差する角部85と、傾斜縁部84とが形成されている。角部85は、ネジ孔81を挟んで対称となる位置に設けられている。傾斜縁部84は、幅方向Wにおける角部85とは反対側に位置し、ネジ孔81を挟んで対称となる位置に設けられている。傾斜縁部84は互いに平行に延びている。
【0035】
支持受け部材8の各縦縁部82間の寸法L82は、スリット99の幅方向Wの長さW99よりも短い。縦方向Vにおける横縁部83間の長さL83は、スリット99の幅方向Wの長さW99よりも長い。傾斜縁部84間の長さL84は、スリット99の幅方向Wの長さW99よりも長く、縦溝97の幅方向Wの長さW97よりも短い。したがって、図5に示すように、縦縁部82が縦方向Vに沿う位置に支持受け部材8を配置すると、前方からスリット99を通して縦溝97内に挿入可能である。一方、図6に示すように、ネジ孔81を中心として支持受け部材8を回転させると、縦溝97の幅方向Wに対向する内壁に傾斜縁部84が当接する。この状態では、支持受け部材8は、スリット99よりも前方に出ることがない。したがって、支持受け部材8とストッパ支持部4の固定部41とでスリット99を挟み、ネジを各ネジ孔81に挿入して締結すると、固定部41が、什器本体9の前面に固定できる。この構成により、ストッパ支持部4は、什器本体9の縦方向Vの任意の位置に固定できる。
【0036】
ストッパ3は、引出し7を施錠する際に、引出し7の前方に配置される部材である。ストッパ3は、図1から図4に示すように、正面視長方形の板材である。ストッパ3は、例えば、什器本体9と同じ材質および同じ色を有してもよい。ストッパ3の動作の詳細は後述する。
【0037】
ストッパ3は、複数の引出し7のうち、一以上の引出し7を覆う上下寸法を有しており、残りの1以上の引出し7の前面を覆わない上下寸法を有している。ストッパ3は、複数の引出し7の上段から下段までの縦方向Vの長さよりも縦方向の寸法が短い。つまり、ストッパ3は、複数の引出し7のうちの一以上の引出し7が常時開放可能となるように配置されている。
【0038】
図1および図2に示す例では、ストッパ3は、最上段の引出し7aを含む上部の3段の引出し7a、7b、7cの前方に配置可能な高さ寸法を有する。ストッパ3は、縦方向Vにおける最上段の引出し7aの上端から3段目の引出し7cの下端までの長さと略等しい縦寸法を有する。
【0039】
図1に示すように、ストッパ3の幅方向Wの長さは、引出し7の幅方向Wの長さよりも短い。ストッパ3は、幅方向Wにおける引出し7の前方の一部を覆う。このように、引出し7の前面を全て覆わないため、施錠時、施錠された引出し7を外部から視認できる。この結果、例えば、前板が透明等の部材からなる場合や、引出し7に箱部内を視認可能な窓や僅かな隙間が設けられている場合等、収納物を外部から視認可能な引出し7である場合、施錠時でも収納物を外部から目視により確認できる。また、ストッパ3の軽量化、コストダウンを図れる。この他、ストッパ3が軸支部6周りに回動可能であるが、回動によるストッパ3の動線を小さく抑えられる。すなわち、ストッパ3の幅方向Wの長さが引出し7の長さよりも短いため、開錠時、引出し7の進退の妨げとならない位置にストッパ3を回動させた場合にも、キャビネット1の周囲にストッパ3が大きく張り出すことがなく、キャビネット1の使用者の動線の妨げとならない。
【0040】
ストッパ3は、ストッパ支持部4の軸支部6に軸支される。ストッパ3の上面および下面には、軸挿入穴31が開口している。軸挿入穴31は、軸支部6の直径よりもやや大径の円形の開口である。上下の軸挿入穴31に各軸支部6が挿入されることにより、ストッパ3は、軸支部6を中心として回動可能に支持されている。ストッパ3は、一以上の複数の引出し7の前方に位置して引出し7の前方への移動を規制する施錠位置と引出し7の前方を避けた開錠位置との間で移動可能に設けられている。
【0041】
軸支部6周りに回動可能に取り付けられたストッパ3は、引出し7の前方に位置して引出し7の前方への移動を規制する施錠位置と引出し7の前方を避けた開錠位置との間で移動可能に設けられている。
【0042】
施錠部5は、ストッパ3を施錠位置に保持することにより引出し7を施錠可能に構成されている。施錠部5は、公知の施錠部本体51と、鍵(不図示)と、被係止部52とを備える。施錠部本体51は、ロックバー53(図4参照)を備える。鍵が施錠部本体51の鍵穴に挿入されて回転されると、ロックバー53が幅方向Wに移動するように構成されている。
【0043】
施錠部本体51は、什器本体9の上枠93内に固定されている。上枠93には、鍵部挿入孔および係止孔55が形成されている。鍵部挿入孔には、施錠部本体51が挿入され、鍵を挿入する鍵穴が外部に露出して設けられている。鍵部挿入孔の近傍には、上枠93に奥行方向Dに貫通する係止孔55が形成されている。
【0044】
被係止部52は、ストッパ3に取り付けられている。図2から図4に示すように、被係止部52は、ストッパ3の裏面に設けられている。被係止部52は、施錠部5のロックバー53と係止可能に構成されている。被係止部52は、ストッパ3の裏面から後方に向かって奥行方向Dに突出する平板形状を有する。被係止部52には、被係止部52の板厚方向である幅方向Wに貫通する貫通孔54が形成されている。
【0045】
次に、施錠ユニット2を什器本体9に取り付ける態様例を説明する。
一対のストッパ支持部4a,4bを什器本体9に取り付け、ストッパ3を支持する。
【0046】
支持受け部材8は、縦溝97内を縦方向Vにスライド可能に設けられている。施錠対象となる引出し7の高さ位置に応じて支持受け部材8の高さを位置決めし、ストッパ支持部4を縦溝97内で回転させて縦方向V内に仮係止させる。この状態で、前方からネジ120をストッパ支持部4の固定部41および支持受け部材8のネジ孔81に挿入する。次に、ネジ120を締めると、固定部41と支持受け部材8とでスリット99を挟持して、ストッパ支持部4が什器本体9に固定される。この構成により、ストッパ3を設ける高さ位置に応じて、ストッパ支持部4の高さ位置を変更可能である。
【0047】
ストッパ3は、複数の引出し7のうちの任意の引出し7に対応する位置に設置できる。すなわち、複数の引出し7のうち、使用者が設定する任意の引出し7の位置にストッパを設けることができる。例えば、図1に示す例のように、最上段の引出し7aから3段目の引出し7cまでを施錠対象の引出しとした場合や、図7に示す例のように、最上段の引出し7aおよび2段目の引出し7bを施錠対象とした場合のように、任意の高さ位置にストッパ3を設けることができる。この他、例えば、3段目の引出し7cのみを施錠対象とする場合、3段目の引出し7cに対応する高さ位置のみにストッパ3を設けることができる。したがって、使用者のニーズに応じて、フレキシブルに施錠ユニット2を設けることができる。
【0048】
上記方法により、先に下方のストッパ支持部4bを什器本体9に固定する。その後、ストッパ3の下部の軸挿入穴をストッパ支持部4bの軸支部6に挿入する。次に、上方のストッパ支持部4aの軸支部6をストッパ3の上部の軸挿入穴31に挿入し、上記方法により上方のストッパ支持部4aを什器本体9に固定する。この結果、ストッパ3がストッパ支持部4および支持受け部材8を介して什器本体9に固定される。ストッパ3は、軸支部6を中心として、施錠位置と開錠位置との間を回動可能となるように、什器本体9に取り付けられる。
【0049】
次に、キャビネット1の使用態様を説明する。引出し7を施錠するとき、使用者はストッパを施錠位置に移動させる。ストッパ3が施錠位置に配置されると、ストッパ3の裏面が引出し7の前面に対向し、被係止部52が、上枠93の係止孔55内に進入する。この状態で、施錠部本体51の鍵穴に鍵が挿入されて施錠操作されると、ロックバー53が幅方向Wに移動し、被係止部52の貫通孔54に進入する。この結果、ストッパ3は、ロックバー53および被係止部52を介して上枠93に係止され、ストッパ3の回動が規制される。ストッパ3は、施錠位置に保持される。すなわち、引出し7の前方にストッパ3が配置された状態が保持され、引出し7の前方への移動が規制され、引出し7が施錠される。
【0050】
このように、一回の施錠操作で、複数の引出し7a、7b、7cを施錠できる。一方、最下段の引出し7dは、ストッパ3が前方に配置されないため、常に引出し7を開閉できる。
【0051】
ストッパ3は、引出し7の前方に配置されることにより、引出し7の前方への移動を規制すればよい。そのため、ストッパ3の縦寸法は、施錠対象の引出し7の前方への移動を妨げる範囲に配置されていればよく、施錠対象の引出し7の上端から下端まで縦方向Vの全域に設ける必要はない。ストッパ3は、引出し7の前板の前方の少なくとも一部を覆う位置に設けられれば、移動を規制する効果を奏する。
【0052】
一方、引出し7を開錠するとき、使用者は、鍵を施錠部本体51の鍵穴に挿入し開錠操作すると、ロックバー53が施錠部本体51側に幅方向Wに移動する。この結果、ロックバー53が被係止部52の貫通孔54から抜ける。この状態で、使用者がストッパ3を開錠位置に回動させる。ストッパ3は、裏面が引出し7の前方よりも外側に位置するまで回動させる。この結果、引出し7の移動規制が解除され、引出し7が前方に移動可能となる。開錠位置は、少なくとも引出し7の前方への移動が可能な位置であればよい。例えば、什器本体9の側壁92に沿って前方に延びる位置、什器本体9の前面に沿って幅方向Wに延びる位置、什器本体9の側面にストッパ3が対向する位置、等であってもよい。
【0053】
本実施形態に係るキャビネット1によれば、一つの施錠部本体51で、任意の数、任意の位置の引出し7を施錠できる。したがって、一回の開錠操作または施錠操作により、複数の引出し7を施錠または開錠できる。
【0054】
本実施形態に係るキャビネット1によれば、ストッパ支持部4に支持され、施錠位置と開錠位置との間で移動可能なストッパ3を、施錠位置に保持して施錠部5により施錠すれば、引出し7の前方への移動が規制され、引出し7が施錠可能となる。したがって、複数の引出し7の一部を簡易な操作で施錠可能なキャビネット1および施錠ユニット2を提供できる。
【0055】
本実施形態に係るキャビネット1によれば、一つの施錠部本体51により、複数の引出し7のうちの任意の引出し7を施錠可能である。
【0056】
本実施形態に係るキャビネット1によれば、ストッパ3がストッパ支持部4に対して回動可能に支持されているため、ストッパ3を回動させる簡易な操作により、ストッパ3を引出し7の前方に配置した施錠位置に移動できる。
【0057】
本実施形態に係るキャビネット1によれば、複数の引出し7のうちの一以上の引出し7が常時開放可能となるため、常時開放可能な無施錠の引出し7dと、施錠可能な引出し7a、7b、7cとを備えるキャビネット1を提供できる。
【0058】
本実施形態に係るキャビネット1によれば、ストッパ3の幅が引出し7の幅より短いため、ストッパ3が施錠位置に保持されるとき、ストッパ3が引出し7の前方を部分的に覆い、引出し7の一部が外部から視認可能に構成される。その結果、例えば、引出し7の前板が透明な場合や、引出し7に収納物が視認可能な窓や隙間がある場合等、施錠時も引出し7内の収納物の収納状態を目視により確認可能である。また、ストッパ3が、引出し7の全幅を覆う場合に比べて、軽量化でき、ストッパ3の動作が円滑となる。また、キャビネット1全体の軽量化に寄与する。さらに、ストッパ3を施錠位置と開錠位置とで移動させる際に、ストッパ3の動線を小さく抑えられる。
【0059】
本実施形態に係る施錠ユニット2によれば、ストッパ支持部4に支持され、施錠位置と開錠位置との間で移動可能なストッパ3を、施錠部5により施錠位置に保持すれば、引出し7の前方への移動が規制され、引出し7が施錠可能となる。このような施錠ユニット2をキャビネット1に着脱可能に取り付けられる。この結果、使用者のニーズに応じて、キャビネット1に施錠機構を取り付けられる。
【0060】
本実施形態に係る施錠ユニット2によれば、使用者のニーズに応じて、多段引出しキャビネットに施錠ユニットを取り付けられる。したがって、施錠機構を有するキャビネットと、施錠機構を備えないキャビネットとを個別に作製する必要がなく、製造効率を向上できる。
【0061】
本実施形態に係る施錠ユニット2によれば、什器本体9に縦溝97およびスリット99が設けられているため、使用者が施錠したい引出し7に対応する位置にストッパ支持部4およびストッパ3を取り付けられる。
【0062】
本実施形態に係るキャビネット1および施錠ユニット2によれば、縦寸法が異なるストッパ3を取り付ける場合でも、簡易な構成で対応できる。すなわち、部品としては、ストッパ3のみを交換すればよい。ストッパ支持部4は、縦溝97内でスライドさせて、ストッパ3の縦寸法に対応する位置に取付位置を調整すれば、縦寸法が異なるストッパ3を容易に交換できる。
【0063】
(変形例)
本発明に係る多段用引出しキャビネットおよび施錠ユニットは、上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0064】
図7に上記実施形態の変形例のキャビネット1Aの斜視図を示す。上記実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。図7に示す第一変形例のキャビネット1Aは、ストッパ3Aが上記実施形態と異なる。
【0065】
ストッパ3Aは、図7に示すように、縦方向Vの長さが第一実施形態と異なる。本変形例に示すストッパ3Aは、上方の2段の引出しを覆う長さである。このように、任意の縦寸法のストッパを用いることにより、任意の数の引出しを施錠可能に構成できる。
【0066】
上記実施形態の施錠ユニットの変形例について、図8および図9を参照して説明する。図8は、本変形例の施錠ユニット2Bの分解斜視図である。図9は、本変形例の施錠ユニット2Bの水平断面図である。本変形例の施錠ユニット2Bは、ストッパ支持部の構成が上記実施形態と異なる。
【0067】
ストッパ支持部4Bの軸固定部42Bは、水平部421及び縦部422を有し、正面視略L字形状を有する。水平部421に直交する方向に軸支部6が設けられている。ストッパ支持部4Bを什器本体9に取り付ける際は、上記実施形態と同様に固定部41を縦溝97内の支持受け部材8に固定する。図9に示すように、ストッパ支持部4Bを什器本体9の前端部96に取り付けた後、スリット99の前方をカバー部材113で覆う。カバー部材113でスリット99が覆われると、シンプルな外観が得られる。本変形例のストッパ支持部4Bは、軸固定部42Bに縦部422を有するため、カバー部材113と干渉することなくストッパ支持部4Bを取り付けられる。したがって、ストッパ支持部およびストッパの取付位置に関わらず、同一のカバー部材113を使用できる。
【0068】
本変形例の施錠ユニット2Bによれば、上記実施形態と同様に、什器本体9の前端の任意の位置にストッパ支持部4Bを取り付けられる。また、什器本体9に対してストッパ支持部4Bを着脱可能に取り付けられる。したがって、使用者のニーズに応じて、容易にストッパ3の選択、交換が可能である。
【0069】
上記実施形態では、板状のストッパの例を示したが、ストッパの形態はこれに限定されず、引出し7の前進を規制可能な構造であればよい。例えば、図10に示す変形例のように、長尺な棒状のストッパ3Cであってもよい。本変形例のストッパ3Cは、軸支部6に沿って延びる基部32と、基部32から曲折した規制部33とで構成されている。ストッパ3Cの上部および下部の基部32はそれぞれ軸支部6に沿って設けられ、ストッパ3Cの縦方向Vの中間部に規制部33が設けられている。基部32が軸支部6を中心として回動すると、規制部33が回動する。規制部33が引出し7の前方に配置された施錠位置で、施錠部5Bが施錠されると、ストッパ3Cの回動が規制される。この結果、ストッパ3Cが施錠位置で保持され、引出し7が施錠される。
【0070】
ストッパ3Cの上方の基部32に、被係止部52Cが固定されている。被係止部52Cは板状の連結部材521の裏面に、上記実施形態と同様の構成の被係止部52Cが設けられている。施錠部5および施錠態様は上記実施形態と同様である。この他、施錠部は、公知の構成により、基部32と軸支部6との回動を規制してもよい。例えば、ストッパ3Cの上部または下部と軸支部6との連結部分において、施錠または開錠操作により軸支部6に対する基部32の回動を規制する突起が突没して基部32の回動を規制または規制解除する。
【0071】
本変形例の施錠ユニット2Cによれば、上記実施形態と同様に、一つの施錠部本体51で、任意の数、任意の位置の引出し7を施錠できる。ストッパ3Cが棒状であるため、より軽量化を実現できる。ストッパ3Cが棒状であるため、外観上、ストッパ3Cが目立たず、意匠性に優れたキャビネット1を提供できる。
【0072】
ストッパ支持部を什器本体9に取り付ける態様は、上記実施形態及び変形例の態様に限定されない。例えば、什器本体の前端部に、ネジ孔が縦方向Vに複数形成されており、任意のネジ孔からネジで直接什器本体に固定する構成であってもよい。
【0073】
上記実施形態では、什器本体9キャスター110および把手111が設けられている例を示したが、キャスター110および把手111は必須の構成ではない。
【0074】
上記実施形態および変形例では、引出し7が前板と箱部とからなる例を示したが、引出し7の形態は公知の例が適用可能である。引出しは、例えば、樹脂製、金属製等のバスケットであってもよい。
【0075】
上記実施形態では、施錠部5に鍵を備える例を示したが、施錠方法はこれに限定されず、公知の施錠装置を使用できる。例えば、番号や記号を入力する機械的または電子的な入力部を備え、入力部にパスワードを入力することにより、ストッパ3を施錠状態および開錠状態のいずれか一方に切り替える構成であってもよい。
【0076】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B,1C 多段引出しキャビネット
2,2B,2C 施錠ユニット
3,3B,3C ストッパ
4,4B ストッパ支持部
5 施錠部
6 軸支部
7,7a,7b,7c,7d 引出し本体
9 什器本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10