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特許7440298情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240220BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240220BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/16 D
G08G1/13
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020035201
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021140263
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 大路
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200603(JP,A)
【文献】特開2019-095939(JP,A)
【文献】特開2008-140118(JP,A)
【文献】特開2009-217692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定領域を走行した車両で生成される車両走行情報を取得する取得部と、
車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態と、特定領域における車両の走行を規制する交通規制情報として交通規制の把握のし難さとを学習した学習モデルと、前記取得部によって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する推定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記学習モデルとして、教師データとなる通常時のラベル付けが行われた車両の走行状態と非通常時のラベル付けが行われた車両の走行状態と、特定領域における車両の走行を規制する前記交通規制情報とを学習した学習モデルを取得し、当該学習モデルと、前記取得部によって取得された車両走行情報とに基づいて、非通常時の走行状態に応じてドライバが危険を感じる可能性としての、特定領域の危険度を推定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記学習モデルとして、車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態と、特定領域における車両の走行を規制する前記交通規制情報との関係を学習した学習モデルを取得し、当該学習モデルと、前記取得部によって取得された車両走行情報とに基づいて、交通規制の把握のし難さに応じて車両の走行が危険になる可能性としての、特定領域の危険度を推定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記学習モデルとして、車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態と、前記交通規制情報の交通規制の把握のし難さとして、同一の位置において複数の規制を行う際の多重度、所定の区間内に複数の規制が行われる際の近接度、関連する複数の規制が行われる際の関連度、及び、規制の珍しさを示す希少度のうち少なくとも1つを学習した学習モデルを取得し、当該学習モデルと、前記取得部によって取得された車両走行情報とに基づいて、交通規制の把握のし難さに応じて車両の走行が危険になる可能性としての、特定領域の危険度を推定する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記学習モデルとして、車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態と、車両が走行する際の時間帯に関する時間情報、及び、車両が走行する際の天候に関する天候情報のうち少なとも一方を学習した学習モデルを取得し、当該学習モデルと、前記取得部によって取得された車両走行情報とに基づいて、時間帯又は天候に応じて車両の走行が危険になる可能性としての、特定領域の危険度を推定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
道路地図に関する地図情報を記憶する記憶部と、
前記推定部によって推定された特定領域の危険度を、地図情報に記録される当該特定領域に関連付ける関連付け部と、
を備える請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
特定領域を走行した車両で生成される車両走行情報を取得する取得ステップと、
車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態と、特定領域における車両の走行を規制する交通規制情報として交通規制の把握のし難さとを学習した学習モデルと、前記取得ステップによって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する推定ステップと、
を実行する情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
特定領域を走行した車両で生成される車両走行情報を取得する取得機能と、
車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態と、特定領域における車両の走行を規制する交通規制情報として交通規制の把握のし難さとを学習した学習モデルと、前記取得機能によって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する推定機能と、
を実現させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から道路には交通標識が設置されている。しかし、道路の状況によっては同一箇所又は相対的に短い区間内において複数の交通標識が設置されることがある。この場合、ドライバは、複数の交通標識を短時間に理解することが困難な場合がある。
【0003】
ところで、特許文献1に記載された技術は、走行する車両の前方に設置されている交通標識が示す標識情報を検出し、その標識情報を表示部に表示するようになっている。この場合、特許文献1に記載された技術は、有効区間が重なる複数の標識情報を検出すると、その標識情報を簡易化した簡易情報を表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-117041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術は、検出される標識情報に基づいて表示を行う。しかしながら、ドライバが車両を走行させる際に注意が必要となるのは複数の交通標識が設置されている場合に限らず、例えば、交差点の状況(一例として交差点のすぐ先に鉄道の踏切がある場合等)、及び、道路の状況(一例として、一般道路の本線の横に側道がある場合等)によってもドライバの注意が必要になる。このため、ドライバの注意が必要になる状況について予めドライバに伝えることができれば、事故の発生を抑制し、スムーズな車両の流れを実現することが可能になると考えられる。
【0006】
本発明は、ドライバに対して危険な状況が生じるおそれのある特定領域を通知することができる情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様の情報処理装置は、特定領域を走行した車両で生成される車両走行情報を取得する取得部と、車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態を学習した学習モデルと、取得部によって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する推定部と、を備える。
【0008】
一態様の情報処理装置では、推定部は、教師データとなる通常時の走行状態と非通常時の走行状態とのラベル付けが行われた車両の走行状態を学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
【0009】
一態様の情報処理装置では、推定部は、車両の走行状態と、特定領域における車両の走行を規制する交通規制情報との関係を学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
【0010】
一態様の情報処理装置では、推定部は、交通規制情報として、同一の位置において複数の規制を行う際の多重度、所定の区間内に複数の規制が行われる際の近接度、関連する複数の規制が行われる際の関連度、及び、規制の珍しさを示す希少度のうち少なくとも1つを学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
【0011】
一態様の情報処理装置では、推定部は、車両が走行する際の時間帯に関する時間情報、及び、車両が走行する際の天候に関する天候情報のうち少なとも一方をさらに学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
【0012】
一態様の情報処理装置は、道路地図に関する地図情報を記憶する記憶部と、推定部によって推定された特定領域の危険度を、地図情報に記録される当該特定領域に関連付ける関連付け部と、を備えることとしてもよい。
【0013】
一態様の情報処理方法では、コンピュータが、特定領域を走行した車両で生成される車両走行情報を取得する取得ステップと、車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態を学習した学習モデルと、取得ステップによって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する推定ステップと、を実行する。
【0014】
一態様の情報処理プログラムは、コンピュータに、特定領域を走行した車両で生成される車両走行情報を取得する取得機能と、車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態を学習した学習モデルと、取得機能によって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する推定機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0015】
一態様の情報処理装置は、特定領域を走行した車両で生成される車両走行情報を取得し、車両の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両の走行状態とは異なる非通常時の走行状態を学習した学習モデルと、取得した車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定するので、ドライバに対して危険な状況を生じる恐れのある特定領域を通知することができる。
一態様の情報処理方法及び情報処理プログラムは、上述した一態様の情報処理装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】危険度の高い特定領域の一例について説明するための図である。
図2】一実施形態に係る情報処理システムについて説明するための図である。
図3】一実施形態に係る情報処理装置について説明するためのブロック図である。
図4】複数の交通標識の一例について説明するための図である。
図5】危険度の高い交差点の一例について説明するための第1図である。
図6】危険度の高い交差点の一例について説明するための第2図である。
図7】危険度の高い交差点の一例について説明するための第3図である。
図8】危険度の高い道路の一例について説明するための図である。
図9】一実施形態に係る情報処理方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本明細書では、「情報」の文言を使用しているが、「情報」の文言は「データ」と言い換えることができ、「データ」の文言は「情報」と言い換えることができる。
図1は、危険度の高い特定領域の一例について説明するための図である。
【0018】
図1に例示する特定領域は交差点(十字路)であり、図1の上方へ向かう道路(退出路B)の先には鉄道の踏切101がある。交差点の信号102は踏切101の警報機とは連動していない。図1の右側から交差点に向かう道路(進入路A)から進入した車両10Aが踏切101の方へ右折する場合、進入路Aの信号102Aが青であってもドライバからは踏切101の警報機が見えづらく、踏切101の遮断機が降りていると車両10Aは交差点内に滞留する可能性がある。この場合、滞留する車両10Aが他の車両の通行の障害になる可能性が高く、図1に例示する特定領域(交差点)は危険度が高く、ドライバにとっては危険回避のための運転操作が必要になりやすい。
【0019】
そこで、情報処理装置30は、車両10によって生成される車両走行情報(例えば、プローブ情報及びCAN(Controller Area Network)情報)に基づいて車両10の走行状況を取得し、特定領域において危険回避のための運転操作が必要と推定される場合には、道路地図に特定領域が車両10の走行に関して危険度が高い旨の情報を付加する。その情報が付加された道路地図を用いて、車両10のナビゲーション装置が経路検索を行う場合、自車が特定領域に近づくと走行に関して危険がある旨の事前通知を行うことができ、又は、その特定領域を回避するような経路検索を行うことができる。
【0020】
以下、情報処理装置30について詳細に説明する。
図2は、一実施形態に係る情報処理システム1について説明するための図である。
図3は、一実施形態に係る情報処理装置30について説明するためのブロック図である。
【0021】
図2に示すように、情報処理システム1は、車両10、外部サーバ20及び情報処理装置30を備える。車両10は、自車の走行に関する情報(車両走行情報)を生成して、外部サーバ20に送信する。外部サーバ20は、車両10から送信された車両走行情報を受信して記憶する。
【0022】
図3に示すように、情報処理装置30は、通信部36、記憶部35、取得部32、推定部33及び関連付け部34を備える。取得部32、推定部33及び関連付け部34は、情報処理装置30の制御部31(例えば、演算処理装置等)の一機能として実現されてもよい。
【0023】
通信部36は、外部の装置(例えば、車両10及び外部サーバ20等)との間で情報の送受信を行うことが可能な装置である。
【0024】
記憶部35は、種々の情報及びプログラム等を記憶する装置である。例えば、記憶部35は、道路地図に関する地図情報を記憶する。地図情報には、車両10の通行等を規制する交通標識に関する情報が記録されていてもよい。
【0025】
取得部32は、特定領域を走行した車両10で生成される車両走行情報を取得する。
特定領域は、一例として、交差点であってもよく、交差点への進入路と退出路とを含む交差点を含む領域であってもよい。進入路及び退出路は、交差点(例えば、ノード)から所定の距離内(例えば、10m、20m、30m、50m、100m又は200m等)の道路であってもよい。特定領域は、上述した交差点に限定されることはなく、交差点を除く道路等の他の領域であってもよい。
【0026】
車両走行情報は、上述したように、プローブ情報及びCAN情報等である。例えば、プローブ情報には、車両10に搭載されるナビゲーション装置を利用して取得される車両10の位置情報が記録される。取得部32は、例えば、特定領域の位置情報を指定することにより、その特定領域を走行した車両10の車両走行情報を外部サーバ20から取得する。この場合、取得部32は、例えば、車両10の一連の走行の状況(例えば、エンジンの始動から停止まで)を記録した車両走行情報を取得してもよく、特定領域(指定された位置情報)から所定範囲(例えば、車両の走行に関する所定の時間的範囲、又は、所定の距離的範囲)内の車両走行情報を取得することとしてもよい。車両走行情報には、上述した位置情報の他に、例えば、走行速度情報、時刻情報、操舵角情報、方向指示器(ウインカ)の点灯情報及びハザードランプの点灯情報等を始めとする種々の車両10の走行に関する情報が記録される。
なお、取得部32は、外部サーバ20から車両走行情報を取得するばかりでなく、車両10から送信される車両走行情報を取得することとしてもよい。
【0027】
推定部33は、車両10の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両10の走行状態とは異なる非通常時の走行状態を学習した学習モデルと、取得部32によって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する。
通常時の車両10の走行状態とは、ドライバが車両10を走行させる際の走行状態であり、例えば、道路に沿った走行、並びに、信号の点灯状態及び交通標識に従った走行等、ドライバが通常の注意をもって車両10を走行させる状態である。
非通常時の走行状態とは、ドライバが通常の注意をもってしても車両10を走行させることが困難な状態であり、例えば、相対的に多数の交通標識が同一位置に有るためにドライバが全ての交通標識を理解するのに時間がかかる場合、及び、交通標識が不明確な場合等の車両10の走行が不安定(一例として、交差点内での停止、道路での一般的な走行速度よりも遅い走行若しくは停止、急停止、又は、他車と接触する可能性)になる走行状態である。すなわち、非通常時の走行状態とは、ドライバにとって危険な走行状態と言うことができる。
【0028】
例えば、制御部31は、少なくとも非通常時の車両10の走行状態を予め学習して学習モデルを生成する。制御部31で生成された学習モデルは、例えば、記憶部35に記憶されていてもよい。
また、学習モデルは、例えば、情報処理装置30の外部にある外部装置(例えば、外部サーバ20等)によって生成され、その外部装置又は他の外部装置に記憶されていてもよい。又は、外部装置で生成された学習モデルは、通信部36を介して情報処理装置30(制御部31)によって取得され、記憶部35に記憶されてもよい。
【0029】
推定部33は、取得部32によって車両走行情報を取得した場合、記憶部35から学習モデルを取得し、又は、外部から学習モデルを取得し、車両走行情報及び学習モデルに基づいて、特定領域の危険度を推定する。推定部33は、一例として、車両走行情報に、交差点内に所定時間以上停止した状態が記録されている場合、通常時の走行状態とは異なる左右方向への不自然な操舵角が記録される場合、ハザードランプの点灯が記録される場合、車両の急減速が記録される場合、及び、車両の加速と減速とが短時間に繰り返される場合において、その車両走行情報に基づく車両の走行状態が学習モデルの非通常時の走行状態に対応すると、特定領域が危険であると推定する。すなわち、推定部33は、特定領域がドライバにとって危険と感じる可能性があるか否かを推定する。
【0030】
又は、推定部33は、教師データとなる通常時の走行状態と非通常時の走行状態とのラベル付けが行われた車両10の走行状態を学習した学習モデルを取得することとしてもよい。上述した場合には、学習モデルは、非通常時の車両10の走行状態を学習することにより生成されたモデルである。推定部33は、一例として、記憶部35等から学習モデルを取得する。しかし、制御部31は、相対的に多数の車両10の走行状態を取得し、それぞれの走行状態に対して通常時の走行状態又は非通常時の走行状態のラベル付けを行った結果に基づいて学習を行い、学習モデルを生成してもよい。その学習モデルは、制御部31が生成する代わりに、外部装置(例えば、外部サーバ20等)が生成してもよい。
推定部33は、取得部32によって車両走行情報を取得した場合、その車両走行情報と、教師データに基づいた学習モデルとに基づいて、特定領域の危険度を推定することとしてもよい。
【0031】
推定部33は、車両10の走行状態と、特定領域における車両10の走行を規制する交通規制情報との関係を学習した学習モデルを取得することとしてもよい。この場合、推定部33は、交通規制情報として、同一の位置において複数の規制を行う際の多重度、所定の区間内に複数の規制が行われる際の近接度、関連する複数の規制が行われる際の関連度、及び、規制の珍しさを示す希少度のうち少なくとも1つを学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
【0032】
図4は、複数の交通標識の一例について説明するための図である。
上述した「多重度」とは、交通標識111の多重度であり、図4に例示するように、同一の位置に相対的に多数の交通標識111がある場合である。交通標識111は、例えば、警戒標識、規制標識、指示標識及び補助標識等である。このように、同一の位置に交通規制が多重にある場合(例えば、閾値以上の数の交通標識111がある場合)、ドライバは、全ての交通規制をすぐに(短時間)で把握するのは困難であり、そのような交通規制が配される位置(特定領域)の危険度が高いと考えられる。
【0033】
上述した「近接度」とは、所定の区間内に複数の交通規制がある場合の交通規制の近接度である。相対的に短い区間(一例として、20m、30m、50m、100m、又は200m等)内における複数の位置(距離的な間隔をあけて)に複数の交通標識が配されている場合にも、ドライバは、相対的に短い間隔で出現する交通標識全てを把握するのは困難であり、その所定の区間(相対的に短い区間)(特定領域)の危険度が高いと考えられる。
【0034】
上述した「関連度」とは、一例として、「一方通行」の交通標識と、「進入禁止」の交通標識とのような、互いに関連する交通標識に関する関連度である。関連度の高い交通標識が同一箇所又は相対的に短い区間内にある場合にも、ドライバは、交通標識の把握に時間がかかり、その位置又は区間(特定領域)の危険度が高いと考えられる。
【0035】
上述した「希少度」とは、例えば、全国で数か所(一例として、所定数以下)しか設置されていない交通標識である。そのような交通標識の一例として、時間帯によって道路の車線の進行方向が異なるように規制する交通標識である。より具体的な一例としては、複数の車線のうちの1車線が、午前には郊外から都市部に車両10が向かうように規制し、午後には都市部から郊外に車両10が向かうように規制するような交通標識である。この場合、ドライバは、車両10を走行させる際に交通標識を間違えて把握する可能性があり、その位置(区間)(特定領域)の危険度が高いと考えられる。
多重度、近接度、関連度及び希少度は、上述した状況(一例)に限定されることはなく、他の状況であってもよい。
【0036】
制御部31は、上述した多重度、近接度、関連度及び希少度のうちの少なくとも1つと、そのような交通規制が行われる際の車両10の走行状態(例えば、通常の走行状態か非通常時の走行状態か)とを学習して、学習モデルを生成する。上述した学習モデルは、制御部31の代わりに、外部装置(例えば、外部サーバ20等)が生成してもよい。
推定部33は、道路地図に記録される交通標識に関する情報と、車両走行情報と、学習モデルとに基づいて、特定領域の車両の走行に関する危険度を推定する。また、推定部33は、車載カメラ(図示せず)によって撮像された画像に関する情報が車両走行情報に記録される場合には、車両走行情報(画像に記録される交通標識、及び、画像を除く車両の走行に関する他の情報)と、学習モデルとに基づいて、特定領域の車両の走行に関する危険度を推定する。
【0037】
推定部33は、車両10が走行する際の時間帯に関する時間情報、及び、車両10が走行する際の天候に関する天候情報のうち少なとも一方をさらに学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
車両10が走行する時間帯によっては相対的に多数の車両10が走行するために、車両10が通常の走行を行うことができない(非通常時の車両10の走行状態)可能性があり、又は、車両10が通常通りに走行することができる(通常時の車両10の走行状態)可能性がある。
また、車両10が走行する際の天候(例えば、降雨、降雪及び強風の時)には、車両10が通常の走行を行うことができない(非通常時の車両10の走行状態)可能性があり、又は、車両10が走行する際の天候(例えば、晴天の時)には、車両10が通常通りに走行することができる(通常時の車両10の走行状態)可能性がある。
制御部31は、上述した時間情報及び天候情報のうちの少なくとも1つと、そのような交通規制が行われる際の車両10の走行状態(例えば、通常の走行状態か非通常時の走行状態か)とを学習して、学習モデルを生成する。上述した学習モデルは、制御部31の代わりに、外部装置(例えば、外部サーバ20等)が生成してもよい。
推定部33は、例えば、車両走行情報(例えば、ワイパがオンになっていることを示す情報又は前照灯がオンになっていることを示す情報と、これらの情報を除く車両の走行に関する他の情報)と、学習モデルとに基づいて、特定領域の車両の走行に関する危険度を推定することとしてもよい。
【0038】
なお、制御部31は、上述した一例のように学習モデルを生成してもよく、車両10の他の走行状況を学習することに基づいて学習モデルを生成してもよい。例えば、以下のような状況を学習することに基づいて、学習モデルを生成することとしてもよい。
【0039】
図5は、危険度の高い交差点の一例について説明するための第1図である。
図5に例示するように、高架121の奥に信号122が有り、その高架121の手前に予告信号123がある。予告信号123は、信号122に連動し、その信号122よりも手前のドライバから視認しやすい位置に配される。また、高架121の手前にはT字路124が有る。図5に例示する場合、ドライバは、予告信号123がT字路124の信号であると誤認識をする可能性がある。例えば、予告信号123が赤信号であると、ドライバは、T字路124の手前で一旦停止し、予告信号123であると理解した後に前進する可能性がある。また、例えば、予告信号123が黄信号であると、直進道路126を直進する車両は減速した後、ドライバは停止線がない事に気づいて再加速する可能性がある。この場合には、直進道路126を進行する車両は、T字路124の左側(図5の左側から直進道路126)からしてきた他の車両と接触する恐れがあり、また、後続車両が追突する恐れもある。すなわち、図5に例示するような交差点(信号)は、危険度が高いと考えられる。この場合には、車両10がスムーズに走行できず、及び、不自然な運転操作が行われる可能性が高い。
【0040】
図6は、危険度の高い交差点の一例について説明するための第2図である。
図6に例示するように、直進道路131には2つの車線があり、図6に示す左側の車線131aは直進及び左折の交通規制が行われている。また、直進道路131に沿って側道132があり、側道132は直進道路131の先にある交差点133に接続している。この場合、直進道路131から交差点133を左折する車両は、側道を進行してきた他の車両と接触する恐れがある。このような、図6に例示する交差点は、危険度が高いと考えられる。この場合には、車両10がスムーズに走行できず、及び、不自然な運転操作が行われる可能性が高い。
【0041】
図7は、危険度の高い交差点の一例について説明するための第3図である。
図7に例示するように、直進道路141には3つの車線がある。図7の左側の車線141aでは、交差点142よりも遠い位置では左折のみの路面標示143が付されているが、その交差点142の手前では左折及び直進の路面標示144が付されている。この場合、中央の車線141bを走行する車両10では、その車両10のドライバが交差点142から遠い位置の左折の路面標示143を認識し、交差点142を通過した後に左車線に車線変更をする際、左車線141aは左折専用車線と理解しているので、直進車両が存在するとは想定できない可能性がある。しかし、左車線141aの交差点142の手前では直進が可能な路面標示144が付されているため、左車線141aを直進する他の車両も存在する。そのような場合、交差点142を通過後に、中央車線141bから左車線141aに車線変更する車両と、左車線141aを直進する他の車両とが接触する恐れがある。このような、図7に例示する交差点142は、危険度が高いと考えられる。この場合には、車両10がスムーズに走行できず、及び、不自然な運転操作が行われる可能性が高い。
【0042】
図8は、危険度の高い道路の一例について説明するための図である。
道路151(図8では上下方向に延びる道路)の入口付近151aは、道路151への進入車両と、対向車とがすれ違うことが可能な道路幅が有るが、その道路151を進むに従って道路幅が狭くなり、さらに、道路151に電柱152が配される場合がある。このような場合、電柱152が邪魔で、進入車両と対向車とがすれ違うことができない恐れがある。このような、図8に例示する道路151は、危険度が高いと考えられる。この場合には、車両10がスムーズに走行できず、及び、不自然な運転操作が行われる可能性が高い。
【0043】
制御部31は、上述した図1図5~8に例示するような交差点及び道路が非通常時の車両10の走行状態となるとして学習し、学習モデルを生成してもよい。また、制御部31は、上述したいずれの例示の他にも、相対的に多数の交通状況を取得し、交通状況に応じて非通常時の車両10の走行状態としてもよい。また、上述した場合と同様に、学習モデルは、外部装置(例えば、外部サーバ20等)によって生成されてもよい。
推定部33は、特定領域(一例として、交差点の進入路から退出路までの区間)を走行する車両の車両走行情報に基づいて、学習モデルを利用してスムーズでない車両の走行及び不自然な運転操作を抽出し、そのような抽出がされた場合に特定領域は走行に関する危険度が高いと推定する。
【0044】
関連付け部34は、推定部33によって推定された特定領域の危険度を、地図情報に記録されるその特定領域に関連付ける。関連付け部34は、例えば、推定部33によって特定領域が危険と推定された場合、道路地図上のその特定領域に対して走行に関する危険がある旨の情報を付加する。付加される情報は、走行に関する危険があることを示す文字又は記号等であってもよく、その他の情報であってもよい。また、関連付け部34は、推定部33によって学習モデルに基づいて危険度を推定しているため、特定領域が危険と推定される際にはどの学習モデル(一例として、交通規制の多重度、近接度、関連度及び希少度等)に該当するのかに応じて、危険の内容を道路地図の特定領域に関連付けてもよい。
【0045】
制御部31は、推定部33によって推定された危険度の高い特定領域の位置を、通信部36によって外部サーバ20に送信してもよく、外部サーバ20を介して又は直接的に車両10に送信してもよい。
また、制御部31は、関連付け部34によって関連付けられた後の地図情報(新たな地図情報)を、通信部36によって外部サーバ20に送信してもよく、外部サーバ20を介して又は直接的に車両10に送信してもよい。
これにより、車両10に搭載されるナビゲーション装置(図示せず)は、新たな地図情報に基づいて経路検索を行うことができ、自車が特定領域を走行する場合にはドライバに対して走行に関する危険が有る旨を通知することができる。また、ナビゲーション装置は、危険と推定された特定領域を回避するような経路検索を行うこととしてもよい。
【0046】
次に、一実施形態に係る情報処理方法について説明する。
図9は、一実施形態に係る情報処理方法について説明するためのフローチャートである。
【0047】
ステップST101において、制御部31は、車両10の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両10の走行状態とは異なる非通常時の走行状態を学習した学習モデルを生成する。この場合、制御部31は、車両10の複数の走行状態に対して、教師データとなる通常時の走行状態と非通常時の走行状態とのラベル付けを行うことに基づいて学習を行い、学習モデルを生成してもよい。また、制御部31は、車両10の走行状態と、特定領域における車両10の走行を規制する交通規制情報との関係を学習した学習モデルを生成してもよい。ステップST101の処理は、初回だけ行われてもよく、所定のタイミングで行われてもよい。すなわち、ステップST101の処理と、後述するステップST102~ステップST105の処理とは一連の処理として行われてもよく、異なる処理として別々に行われてもよい。
【0048】
ステップST102において、取得部32は、特定領域を走行した車両10で生成される車両走行情報を取得する。特定領域の一例は、交差点等である。取得部32は、危険か否かを調査したい領域を特定し(特定領域)し、その特定領域を通過した車両10の車両走行情報を取得する。取得部32は、特定領域を通過した車両10の一連の車両走行情報を取得してもよく、特定領域(又は特定領域から所定範囲内)の車両走行情報を取得してもよい。
【0049】
ステップST103において、推定部33は、ステップST102で取得した特定領域の車両走行情報と、ステップST101で生成した学習モデルとに基づいて、特定領域の危険度を推定する。推定部33は、例えば、危険度の推定として、特定領域が危険であるか否かを推定することとしてもよい。又は、推定部33は、例えば、危険度の推定として、危険度を段階的に推定することとしてもよい。
【0050】
ステップST104において、推定部33は、ステップ103で行われた推定の結果が危険だったか否かを判断する。なお、推定部33は、同一の特定領域において危険度が高いと推定された回数が閾値以上であれば、その特定領域は危険であると判定してもよい。推定の結果が危険だった場合(Yes)、処理は、ステップST105に進む。推定の結果が危険でなかった場合(No)、特定領域は車両10の走行に危険な状態はないとして、処理を終了する。
【0051】
ステップST105において、関連付け部34は、道路地図に関する地図情報上の特定領域に対して危険度を関連付ける。すなわち、関連付け部34は、地図情報上の特定領域に対して、車両10の走行に関して危険が有る旨の情報を付加する。
【0052】
次に、本実施形態の効果について説明する。
情報処理装置30は、特定領域を走行した車両10で生成される車両走行情報を取得する取得部32と、車両10の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両10の走行状態とは異なる非通常時の走行状態を学習した学習モデルと、取得部32によって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する推定部33と、を備える。
これにより、情報処理装置30は、推定部33による推定の結果に基づいて、車両10の走行に関して危険な特定領域をドライバに通知することができる。
【0053】
情報処理装置30では、推定部33は、教師データとなる通常時の走行状態と非通常時の走行状態とのラベル付けが行われた車両10の走行状態を学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
これにより、情報処理装置30は、走行が危険と推定されることとなる非通常時の走行状態を学習するので、学習モデルに従って特定領域の危険度を推定することができる。
【0054】
情報処理装置30では、推定部33は、車両10の走行状態と、特定領域における車両10の走行を規制する交通規制情報との関係を学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
交通規制の内容によって、車両10の走行が危険になる可能性がある。このような場合でも、情報処理装置30は、危険度を推定することができる。
【0055】
情報処理装置30では、推定部33は、交通規制情報として、同一の位置において複数の規制を行う際の多重度、所定の区間内に複数の規制が行われる際の近接度、関連する複数の規制が行われる際の関連度、及び、規制の珍しさを示す希少度のうち少なくとも1つを学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
これにより、情報処理装置30は、危険度を推定することができる。
【0056】
情報処理装置30では、推定部33は、車両10が走行する際の時間帯に関する時間情報、及び、車両10が走行する際の天候に関する天候情報のうち少なとも一方をさらに学習した学習モデルを取得することとしてもよい。
車両10が走行する時間帯及び車両10が走行する際の天候によっても、車両10の走行が危険な状態になる可能性がある。この場合にも、情報処理装置30は、車両10の走行に関する危険な状態を推定することができる。
【0057】
情報処理装置30は、道路地図に関する地図情報を記憶する記憶部35と、推定部33によって推定された特定領域の危険度を、地図情報に記録されるその特定領域に関連付ける関連付け部34と、を備えることとしてもよい。
これにより、情報処理装置30は、地図情報上の、危険と推定された特定領域に対して、車両10の走行に関して危険が有る旨の情報を関連付けるので、車両10の走行に関して危険な特定領域をドライバに提供することができる。
【0058】
情報処理方法では、コンピュータが、特定領域を走行した車両10で生成される車両走行情報を取得する取得ステップと、車両10の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両10の走行状態とは異なる非通常時の走行状態を学習した学習モデルと、取得部32によって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する推定ステップと、を実行する。
これにより、情報処理方法は、推定ステップによる推定の結果に基づいて、車両10の走行に関して危険な特定領域をドライバに通知することができる。
【0059】
情報処理プログラムは、コンピュータに、特定領域を走行した車両10で生成される車両走行情報を取得する取得機能と、車両10の走行に関する走行状態として、少なくとも通常時の車両10の走行状態とは異なる非通常時の走行状態を学習した学習モデルと、取得部32によって取得された車両走行情報とに基づいて、特定領域の危険度を推定する推定機能と、を実現させる。
これにより、情報処理プログラムは、推定機能による推定の結果に基づいて、車両10の走行に関して危険な特定領域をドライバに通知することができる。
【0060】
上述した情報処理装置30の各部は、コンピュータの演算処理装置等の機能として実現されてもよい。すなわち、情報処理装置30の取得部32、推定部33及び関連付け部34は、コンピュータの演算処理装置等による取得機能、推定機能及び関連付け機能としてそれぞれ実現されてもよい。
情報処理プログラムは、上述した各機能をコンピュータに実現させることができる。情報処理プログラムは、外部メモリ又は光ディスク等の、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録されていてもよい。
また、上述したように、情報処理装置30の各部は、コンピュータの演算処理装置等で実現されてもよい。その演算処理装置等は、例えば、集積回路等によって構成される。このため、情報処理装置30の各部は、演算処理装置等を構成する回路として実現されてもよい。すなわち、情報処理装置30の取得部32、推定部33及び関連付け部34は、コンピュータの演算処理装置等を構成する取得回路、推定回路及び関連付け回路として実現されてもよい。
また、情報処理装置30の通信部36及び記憶部35は、例えば、演算処理装置等の機能を含む通信機能及び記憶機能として実現されもよい。また、情報処理装置30の通信部36及び記憶部35は、例えば、集積回路等によって構成されることにより通信回路及び記憶回路として実現されてもよい。また、情報処理装置30の通信部36及び記憶部35は、例えば、複数のデバイスによって構成されることにより通信装置及び記憶装置として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 情報処理システム
10 車両
20 外部サーバ
30 情報処理装置
32 取得部
33 推定部
34 関連付け部
35 記憶部
36 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9