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特許7440299医療用液体製剤カセット、カセットを含むキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】医療用液体製剤カセット、カセットを含むキット
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/06 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A61J1/06 E
A61J1/06 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020036221
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021137201
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 千穂
(72)【発明者】
【氏名】西下 直希
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-024106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0216531(US,A1)
【文献】登録実用新案第3149156(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に医療用液体製剤が収容されるカセットであって、
両端部の端面が開口した中空筒体から構成され、側方部に該中空筒体の内部に収容可能な体積を視認可能な目盛りを有するカセット本体と、
前記カセット本体の両端部を密栓するとともに該カセット本体から取り外し可能な蓋体と、を備え、
前記カセット本体の内部に医療用液体製剤が収容され、該カセット本体の両端部のうち一方の端部に備えられた前記蓋体を取り外し、該蓋体が取り外された開口状態の端部の側から当該カセットが注射用シリンジバレルの中空筒体内部に挿入されることにより注射用シリンジバレル内に装着される、
医療用液体製剤カセット。
【請求項2】
前記カセット本体の内壁に沿うようにプランジャーが挿入され、前記シリンジバレル内に装着された当該カセットから、該プランジャーの摺動によって前記医療用液体製剤が排出される、
請求項1に記載の医療用液体製剤カセット。
【請求項3】
前記カセット本体の両端部のうち前記プランジャーが挿入される側の端部には、当該端部を密栓するガスケットが設けられている
請求項2に記載の医療用液体製剤カセット。
【請求項4】
当該カセットは、前記カセット本体の前記シリンジバレル内への装着方向と反対側の端部が、該シリンジバレルの端部から突出するように装着される
請求項2又は3に記載の医療用液体製剤カセット。
【請求項5】
前記医療用液体製剤は、細胞含有溶液である、
請求項1乃至のいずれかに記載の医療用液体製剤カセット。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の医療用液体製剤カセットと、
前記カセットの内壁に沿うように挿入されるプランジャーと、を含む、
キット。
【請求項7】
さらに、前記医療用液体製剤カセットが装着される注射用シリンジを含む、
請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記医療用液体製剤カセットの内部には液体製剤が収容されている、
請求項6又は7に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞含有溶液等の医療用液体製剤を収容するカセット、並びにそのカセットを含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療等製品の細胞治療分野において、細胞含有溶液等の医療用液体製剤を凍結保存等するときの細胞保存容器としては、凍結保存バッグやバイアル瓶、クライオチューブ等が使用されている。
【0003】
ところが、その医療用液体製剤の多くは、投与時やその準備段階(輸液バックに移す場合等)に注射用シリンジを用いることが手順となっている。そのため、例えば細胞保存容器に収容されて凍結保存された細胞含有溶液を解凍した後には、注射用シリンジに移し替える操作が必要となり、移し替え操作による細胞ロスやコンタミネーション等が生じ得る可能性がある。また、医療従事者の作業量を増加させることによるヒューマンエラーも引き起こす原因となり得る。
【0004】
細胞保存容器から注射用シリンジへの移し替えに伴う細胞ロスやコンタミネーション等を考慮すると、注射用シリンジを保存容器として直接用いて凍結保存することができれば、移し替えの作業を無くすことができる。これにより、細胞ロスやコンタミネーション等を防ぐことができる。
【0005】
ここで、注射用シリンジは、中空筒体のシリンジバレルと、プランジャー(プランジャーロッド)とにより構成される。具体的には、シリンジバレルの一方の開口端から中空内部にプランジャーを挿入することにより、シリンジバレルの他方の開口端のルアー部に取り付けた注射針を介して、シリンジ内の内容物を排出できるようになっている。
【0006】
例えば、特許文献1、2には、注射用シリンジに予め薬液が充填されている、いわゆるプレフィルドシリンジに関する技術が開示されている。このようなプレフィルドシリンジによれば、移し替え操作が不要となり、投与に要する時間を短縮化させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】登実第3149156号公報
【文献】登実第3147073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2のように、注射用シリンジをそのまま用いたプレフィルドシリンジにおいて、一般的な使い方ではプランジャーのガスケット部が注射用シリンジバレルの中空内部に挿入されることによりその開口部が封止されるようになる。しかしながら、プランジャーは中空内部から医療用液体製剤を押し出して排出するための部材に過ぎず、保存時に収容された医療用液体製剤の漏出等を防ぐことを目的としたものではない。また、プランジャーは、シリンジバレルと同等以上の長さ(軸方向の長さ)を有するため、そのプランジャーにより開口部を封止して医療用液体製剤を保存しようとすると、そのプランジャーが物理的な障害となって効率的な保存処理を行うことができない可能性がある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、細胞含有溶液等の液体製剤を適切に保存できるとともに、液体製剤に含まれる成分のロスやコンタミネーション等を生じさせることなく、その液体製剤を効果的に投与等することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、例えば細胞含有溶液等の医療用液体製剤を、注射用シリンジバレルの中空筒体の内部にそのまま装着できるカセットに収容することで、液体製剤をカセット内部で適切に保存し、あるいは流通させることができるとともに、その液体製剤を移し替えることなくそのまま患者等に投与等するために排出することを可能にし、液体製剤に含まれる成分ロス等が生じることを効果的に防ぐことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
(1)本発明の第1の発明は、内部に医療用液体製剤が収容されるカセットであって、両端部の端面が開口した中空筒体から構成され、側方部に該中空筒体の内部に収容可能な体積を視認可能な目盛りを有するカセット本体と、前記カセット本体の両端部を密栓する蓋体と、を備え、前記カセット本体の内部に医療用液体製剤が収容され、当該カセットが注射用シリンジバレル内に装着される、医療用液体製剤カセットである。
【0012】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記カセット本体の内壁に沿うようにプランジャーが挿入され、前記シリンジバレル内に装着された当該カセットから、該プランジャーの摺動によって前記医療用液体製剤が排出される、医療用液体製剤カセットである。
【0013】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、当該カセットは、前記カセット本体の前記シリンジバレル内への装着方向と反対側の端部が、該シリンジバレルの端部から突出するように装着される、医療用液体製剤カセットである。
【0014】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記医療用液体製剤は、細胞含有溶液である、医療用液体製剤カセットである。
【0015】
(5)本発明の第5の発明は、内部に医療用液体製剤を収容した状態で、注射用シリンジバレル内に装着する、第1乃至第4のいずれかの発明に係る医療用液体製剤カセットの使用である。
【0016】
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明に係る医療用液体製剤カセットと、前記カセットの内壁に沿うように挿入されるプランジャーと、を含む、キットである。
【0017】
(7)本発明の第7の発明は、第6の発明において、さらに、前記医療用液体製剤カセットが装着される注射用シリンジを含む、キットである。
【0018】
(8)本発明の第8の発明は、第6又は第7の発明において、前記医療用液体製剤カセットの内部には液体製剤が収容されている、キットである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、細胞含有溶液等の液体製剤を適切に保存できるとともに、液体製剤に含まれる成分のロスやコンタミネーション等を生じさせることなく、その液体製剤を効果的に投与等することを可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】医療用液体製剤カセットの構成の一例を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)はカセットの軸方向の断面図である。
図2】注射用シリンジバレルの構成の一例を示す斜視図である。
図3】カセットを注射用シリンジバレルの内部に装着したときの状態を示す図であり、(A)は装着状態を示す断面図であり、(B)はカセットを装着した後にそのカセットの内部にプランジャーを挿入したときの状態を示す断面図である。
図4】カセットを用いて液体製剤を保存し、その後、注射用シリンジバレルに装着し、液体製剤を排出する第1の実施態様の操作の流れを説明するための図である。
図5】カセットを用いて液体製剤を保存し、その後、注射用シリンジバレルに装着し、液体製剤を排出する第2の実施態様の操作の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上、Y以下」であることを意味する。
【0022】
≪1.医療用液体製剤カセット≫
本発明に係る医療用液体製剤カセットは、内部に医療用液体製剤が収容され、注射用シリンジバレルの内部に装着されるカセットである。具体的に、医療用液体製剤(以下、単に「液体製剤」ともいう)としては、特に限定されず、一般的に注射用シリンジを用いて排出される液体製剤であればよく、例えば、細胞含有溶液やワクチン製剤が挙げられる。
【0023】
[カセットの構成について]
図1は、医療用液体製剤カセットの構成の一例を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)はカセットの軸方向の断面図である。図1に示すように、医療用液体製剤カセット(以下、単に「カセット」ともいう)1は、両端部11a,11bの端面が開口した中空筒体から構成されてその側方部に目盛り11sを有するカセット本体11と、カセット本体11の両端部11a,11bを密栓する蓋体12,13と、を備える。そして、このカセット1は、カセット本体11の内部に液体製剤が収容されて、その状態で注射用シリンジバレル3内に装着されることを特徴としている(図3も参照)。
【0024】
なお、本明細書において、カセット1に関し、例えば注射用シリンジバレル3内に装着されるとき等では、カセット本体11の両端の蓋体12,13が取り外されて用いられるが、このような状態のものについても「カセット1」と称することがある。
【0025】
(カセット本体)
カセット本体11は、当該カセット1の本体部を構成するものである。カセット本体11は、内部が中空である筒体から構成されている。詳しくは後述するように、当該カセット1は、注射用シリンジバレル3(図2参照)の内部に装着されるカセット体であり、したがって、カセット本体11の形状はその注射用シリンジバレル3の中空内部の形状に則する形状である。例えば、内部が中空の円筒形状である。
【0026】
カセット本体11は、その両端部11a,11bのそれぞれの端面に開口部21a,21bを有している。なお、端部11aを上端部とし、端部11bを下端部とする。カセット本体11には、例えば、その上端部11aにおける開口部21aから、液体製剤Fが内部に収容される。ここで、上端部11aの形状は、その上端部11aの開口部21aから液体製剤を効率的に収容でき、また、後述する蓋体12により効果的に密栓できる形状であれば、特に限定されない。また、下端部11bの形状についても、注射用シリンジバレル3の中空内部に装着して、カセット1内部に収容した液体製剤を効率的に排出でき、また、後述する蓋体13により効果的に密栓できる形状であれば、特に限定されない。
【0027】
また、上端部11aの端面の開口部21aと下端部11bの端面の開口部21bのそれぞれの開口面積(大きさ)についても、特に限定されない。例えば、上端部11aの開口部21aは、中空筒体の軸方向に対して垂直な断面と同程度の大きさとすることができる。また、下端部11bの開口部21bは、中空内部に収容される液体製剤が流出する程度の大きさであればよく、例えば開口部21aに対して1/2~1/5程度の大きさとすることができる。
【0028】
カセット本体11の長さ(軸方向の長さ)は、特に限定されないが、例えば当該カセット1を装着する注射用シリンジバレル3(図2参照)の内部(本体部31の内部)の軸方向の長さよりも長くすることができる。カセット本体11の長さが、注射用シリンジバレル3の軸方向の長さよりも長い場合、図3に示す一例や、後述する第1の実施態様の例にあるように、当該カセット1を装着したときに、カセット本体11の上端部11aが注射用シリンジバレル3のフランジ部32よりも突出するようになる。これにより、詳しくは後述するが、上端部11aに取り付けた蓋体12の取り外しを容易にすることができる。
【0029】
カセット本体11は、その内部を目視で確認可能な透明色等であり、その側方部に、中空筒体の内部に収容可能な体積を視認可能な目盛り11sを有する。当該カセット1は、カセット本体11から構成される中空筒体の内部に液体製剤が収容され、その状態で流通される。したがって、カセット本体11の側方部に目盛り11sを設けておくことで、内部に収容した液体製剤の容量を確認できる。
【0030】
また、詳しくは後述するが、当該カセット1は、上下方向においてルアー部33を下向きにした状態の注射用シリンジバレル3に対して、その中空内部に、上端部11aが上向きの状態(第1の実施態様)、もしくは反転させ下端部11bが上向きの状態(第2の実施態様)で装着されて用いられる。そして、注射用シリンジバレル3に装着されたカセット1の上端部11aの開口部21a、もしくは下端部11bの開口部21bにプランジャー40が挿入され、そのプランジャー40の摺動によって内部に収容した液体製剤が排出される。したがって、カセット本体11の側方部の目盛り11sを設けておくことで、プランジャー40による液体製剤の排出量を適宜確認できる。
【0031】
このように、カセット本体11の側方部に記されて設けられる目盛り11sは、注射用シリンジバレル3の中空筒体からなる本体部31内にそのまま装着されるカセット1においては、排出される液体製剤の容量確認等の点で重要な要素である。
【0032】
(蓋体)
蓋体12,13は、カセット本体11の両端部11a,11bにおける開口部21a,21bの密栓するものである。
【0033】
蓋体12は、カセット本体11の上端部11aにおける開口部21aを密栓する。蓋体12の形状は、開口部21aを密栓できれば特に限定されず、例えば図1(A)、(B)に示すように、開口部21aを覆うようにして密栓するような形状で構成できる。カセット本体11には、上端部11aの開口部21aから液体製剤が装入されるが、このとき蓋体12を取り外した状態で液体製剤が装入され、その後蓋体12を取り付けて密栓する。
【0034】
蓋体13は、カセット本体11の下端部11bにおける開口部21bを密栓する。蓋体13の形状は、開口部21bを密栓できれば特に限定されない。例えば、その開口部21bを密栓するフィルム状やシート状のものであってもよい。
【0035】
上述のような方法で蓋体12、13により密栓されたカセット1を、注射用シリンジバレル3の内部に挿入するに際しては、後述する第1の実施態様に示すように(図4も参照)、上下方向において下端部11bが上向きとなるようにカセット1を反転させた状態で、開口部21bを密栓する蓋体13が取り外される。そしてその状態で、カセット1内部からの液体製剤の流出に注意しながら、カセット1を、ルアー部33を上向きにした注射用シリンジバレル3の内部に挿入する。したがって、蓋体13は取り外し容易なものであることが好ましい。その後、カセット1を装着した注射用シリンジバレル3を、ルアー部33が下向きとなる状態で、カセット1の上端部11aにおける開口部21aを密栓する蓋体12が取り外される。
【0036】
なお、蓋体13は、例えば当該カセット1を注射用シリンジバレル3の内部に装着したときに、その注射用シリンジバレル3内の底部に配置された突起等との接触によって破けるようなフィルム状とすることができ、そのようなフィルム状の蓋体13とすることで、注射用シリンジバレル3への装着の操作において蓋体13を取り外す操作が不要となる。
【0037】
ここで、蓋体13としては、図1(A)、(B)に示すようなものや、フィルム状、シート状等のものに限られず、下端部11bにおける開口部21bを密栓できれば他の部材を代用することもできる。
【0038】
例えば、カセット本体11の内部から、下端部11bの開口部21bが封止されるようにガスケット等のシール部材を設け、そのシール部材を蓋体13の代用部材としてカセット本体11内に収容した液体製剤の流出を防ぐようにしてもよい。具体的に、シール部材としては、注射用シリンジを構成するプランジャーのガスケット部を構成する部材(ガスケット)を用いることができる。
【0039】
後で図5を用いて第2の実施態様として詳細に説明するが、このようなガスケットをカセット本体11の内部に設けて蓋体13として作用させることで、カセット1を用いて液体製剤を適切に保存できる。また、それに加えて、カセット1を注射用シリンジバレル3へ装着したのちに注射用シリンジから液体製剤を排出させる操作において、カセット本体11の内部に設置したそのガスケットを、液体製剤Fを押圧して排出させるためのプランジャーガスケットとして用いることができる。
【0040】
[カセットの流通等について]
当該カセット1は、その内部に医療用液体製剤が収容され、その状態で流通される。また、カセット1は、例えば細胞含有溶液等の医療用液体製剤が収容され、凍結保存等の保存処理が施される。
【0041】
当該カセット1を流通するに際しては、特に限定されないが、例えば真空包装が可能な二次包装容器(袋)に入れられて流通される。例えばその二次包装容器の表面にロット番号やバーコート等が印字され、ロット管理されて流通される。また、当該カセット1を保存するに際しては、複数のカセット1を収容可能な保存容器に収納して、例えば凍結保存等の保存処理がなされる。
【0042】
[カセットが装着される注射用シリンジバレルについて]
上述したように、カセット1は、カセット本体11の内部に医療用液体製剤が収容されて、その状態で注射用シリンジバレル3内に装着されることを特徴としている。
【0043】
図2は、カセット1が装着される注射用シリンジバレル3の構成の一例を示す斜視図である。図2に示すように、注射用シリンジバレル3は、中空筒体から構成される本体部31と、その本体部31の一方の端部31aの端面と水平な方向に突出するフランジ部32と、を有する。また、注射用シリンジバレル3において、フランジ部32とは反対側の端部31bはルアー部33を構成し、注射針が取り付け可能となっている。なお、ルアー部33には、注射針の取り付け前にはキャップ33cが装着可能となっている。
【0044】
注射用シリンジバレル3のフランジ部32は、例えば略長方形状であり、そのフランジ部32には本体部31の中空内部に通ずる開口部32aが形成されている。開口部32aは、例えば略円形状であり、中空筒体から構成される本体部31内に通じている。なお、開口部32aの径は、中空筒体の本体部31の内部の断面径と略同一となる。なお、フランジ部32の形状は、略長方形状に限られず、例えば楕円形状であってもよい。
【0045】
ここで、本発明に係るカセット1は、その蓋体13を取り外して下端部11bの側から(第1の実施態様)、もしくは蓋体12を取り外して上端部11aの側から(第2の実施態様)、フランジ部32に形成された開口部32aを介して注射用シリンジバレル3の本体部31の中空筒体内部に挿入されることにより装着される。上述したように、カセット1を構成するカセット本体11の形状は、注射用シリンジバレル3の中空内部の形状に則する形状であり、例えば円筒形状である。またこのとき、例えば円筒形状のカセット本体11の外径は、注射用シリンジバレル3の本体部31の中空筒体内部の内径と略同じであって、その本体部31の内壁31wに接した状態でカセット1を挿入可能な大きさとなっている。
【0046】
[カセットを注射用シリンジバレルに装着した状態について]
図3は、カセット1を、注射用シリンジバレル3の本体部31の内部に装着したときの状態を示す図であり、(A)は装着状態を示す断面図であり、(B)はカセット1を装着した後にそのカセット1の内部にプランジャー40を挿入したときの状態を示す断面図である。図3は、後述する第1の実施態様におけるカセット1の装着状態の例を示している。
【0047】
なお、詳しくは後述するが、注射用シリンジバレル3に対するカセット1の挿入方向は、図3に示すものに限定されず、例えば後述する第2の実施態様にて示すように、カセット1の上端部11aから挿入して、そのカセット1の開口部21aが注射用シリンジバレル3の中空内部の底部に接するように挿入されてもよい。
【0048】
図3に示すように、例えば円筒形状からなるカセット1は、中空内部に液体製剤Fを収容した状態で、内部が中空の円筒形状である本体部31により構成される注射用シリンジバレル3のその本体部31内に挿入されることにより装着される。カセット1の装着に際しては、蓋体13を取り外した後、カセット1の下端部11bの側から徐々に、注射用シリンジバレル3の中空円筒形状からなる本体部31内の底部にカセット1の下端部11bが接触するまで挿入される。
【0049】
ここで、図3(A)に示すように、カセット1を注射用シリンジバレル3に装着した状態においては、そのカセット1の注射用シリンジバレル3への挿入方向とは反対側の端部、すなわち上端部11aが、注射用シリンジバレル3の端部にあるフランジ部32から突出するようになっている。カセット1を注射用シリンジバレル3に装着する操作において、カセット本体11の上端部11aを密栓する蓋体12は、注射用シリンジバレル3の本体部31の底部にまでカセット1を挿入した後に、取り外される。このとき、そのカセット1の上端部11aが注射用シリンジバレル3のフランジ部32よりも突出する位置となるようにカセット1を装着することで、その突出部分から蓋体12を容易に取り外すことができる。
【0050】
カセット1が注射用シリンジバレル3の内部に装着されると、カセット1の上端部11aを密栓する蓋体12が取り外された後に、カセット1の内部(カセット本体11の内部)にその上端部11aからプランジャー40が挿入される。プランジャー40は、カセット本体11の内壁11wに沿うように挿入される。このようにしてプランジャー40がカセット本体11の内部に挿入されると、プランジャー40の摺動によって、カセット本体11に収容していた液体製剤Fが排出される。
【0051】
≪2.医療用液体製剤カセットを含むキット≫
(医療用液体製剤カセットとプランジャーのキット)
上述したような医療用液体製剤カセット1は、当該カセット1のカセット本体11の内壁11wに沿って挿入され摺動されるプランジャー40とで、キット(便宜的に「キットX」と称する)を構成することができる。キットXにおいては、カセット1の内部に、予め液体製剤Fが収容されていてもよい。
【0052】
プランジャー40は、例えば、一端にハンドル部41が設けられ、他端にガスケット部42が設けられて構成されるものが用いられる。また、後述する第2の実施態様にて用いるプランジャー40としては、ガスケット部が設けられておらず、ハンドル部41のみによって構成されるものが用いられる。なお、その場合、カセット1Aにおいてその底部に設けられて蓋体の役割を兼ねるガスケット13Gと篏合することでプランジャーとなる。
【0053】
例えば、カセット1と、プランジャー40とを二次包装容器に入れて流通させ、使用に際しては、カセット1の内部に液体製剤Fを収容し、適宜保存する。その後、一般的な注射用シリンジバレルを準備し、その注射用シリンジバレルの内部に液体製剤Fを収容したカセット1を装着する。最後に、カセット1と共にキットXを構成するプランジャー40、すなわちカセット本体11の内壁11wに沿って摺動可能な大きさでガスケット部42が構成されているプランジャー40を、そのカセット1の内部に挿入する。
【0054】
上述したように、カセット1は、内部に液体製剤Fを収容した状態で注射用シリンジバレルに装着される。そして、注射用シリンジバレルに装着したカセット1の内部にプランジャー40を挿入して摺動操作を行うことで、液体製剤Fが注射用シリンジバレルに取り付けた注射針を介して排出されることになる。このことから、プランジャー40におけるガスケット部42は、注射用シリンジバレルの内壁に接する大きさではなく、カセット1を構成する中空筒体のカセット本体11の内壁11wに接する大きさであることが必要となり、これにより液体製剤Fを効果的に排出できるようになる。この点において、カセット1と共に、カセット本体11の内壁11wに沿って摺動可能な大きさでガスケット部42が構成されているプランジャー40を含んでキットXを構成することで、カセット1から液体製剤Fを効果的に排出できるキットを提供できる。
【0055】
なお、後述する第2の実施態様にて用いるプランジャー40としては、ハンドル部41のみによって構成されるものが用いられるが、このとき、カセット1Aの内部に蓋体の役割を兼ねるガスケット13Gが設けられている。
【0056】
また、別の態様として、医療用液体製剤カセット1は、カセット本体11の内壁11wに沿って挿入され摺動されるプランジャー40と、さらに当該カセット1を装着する注射用シリンジバレル3とで、キット(便宜的に「キットY」と称する)を構成することができる。なお、注射用シリンジバレル3については、上で詳細を説明したため、同一の符号をつけてここでの説明は省略する。
【0057】
例えば、カセット1と、プランジャー40と、注射用シリンジバレル3とを二次包装容器に入れて流通させ、使用に際しては、カセット1の内部に液体製剤Fを収容し、適宜保存する。その後、カセット1と共にキットYを構成する注射用シリンジバレル3の内部に液体製剤Fを収容したカセット1を装着する。最後に、カセット1と共にキットYを構成するプランジャー40、すなわちカセット本体11の内壁11wに沿って摺動可能な大きさでガスケット部42が構成されているプランジャー40を、そのカセット1の内部に挿入する。
【0058】
上述したように、カセット1は、内部に液体製剤Fを収容した状態で注射用シリンジバレル3に装着されるが、このとき、本体部31の内壁31wに接した状態でカセット1が装着されることが必要となる。これにより、注射用シリンジバレル3に装着したカセット1が本体部31内でブレたりすることなく安定的に保持されるようになる。この点において、カセット1と共に、そのカセット1がその内壁31wと接する大きさの本体部31で構成されている注射用シリンジバレル3を含んでキットYを構成することで、カセット1から液体製剤Fを効果的に排出できるキットを提供できる。
【0059】
なお、キットYにおいて、カセット1の内部には、予め液体製剤Fが収容されていてもよい。
【0060】
(プランジャーと注射用シリンジバレルのキット)
また、医療用液体製剤カセット1を使用するためのキットとして、カセット本体11の内壁11wに沿って挿入され摺動されるプランジャー40と、当該カセット1を装着するための注射用シリンジバレル3とで、キット(便宜的に「キットZ」と称する)を構成することができる。
【0061】
例えば、プランジャー40と、注射用シリンジバレル3とを二次包装容器に入れて流通させ、使用に際しては、保存処理等が施された医療用液体製剤カセット1を入手した後、キットZを構成する注射用シリンジバレル3の内部にカセット1を装着する。次に、注射用シリンジバレル3と共にキットZを構成するプランジャー40、すなわちカセット本体11の内壁11wに沿って摺動可能な大きさでガスケット部42が構成されているプランジャー40を、そのカセット1の内部に挿入する。
【0062】
≪3.カセットの装着、並びに液体製剤の排出の操作≫
(第1の実施態様)
図4は、上述した構成を有する医療用液体製剤カセット1を用いて液体製剤Fを保存(例えば凍結保存)し、その後、そのカセット1を注射用シリンジバレル3に装着して、その液体製剤Fを排出する操作の流れを説明するための図である。
【0063】
先ず、図4(a)は、カセット1を構成するカセット本体11の内部に液体製剤Fを収容して凍結保存等するときの様子を示す図である。具体的に、カセット本体11には、その上端部11aにおける開口部21aから液体製剤Fが所定量装入されて収容され、開口部21aに蓋体12を取り付けることにより密栓する。なお、カセット本体11の下端部11bにおける開口部21bには、予め蓋体13が取り付けられている。これにより、カセット本体11の両端における開口部21a,21bが封止された状態となり、内部に収容した液体製剤Fが流出することを防ぐことができる。そして、例えばこのような状態で、内部に収容した液体製剤(例えば細胞含有溶液)Fに対する凍結保存処理が施される。
【0064】
次に、図4(b)は、カセット1にて凍結保存等した液体製剤Fを解凍した後、液体製剤Fを収容したカセット1を注射用シリンジバレル3に装着するときの様子を示す図である。注射用シリンジバレル3には、その中空筒体である本体部31の内部に、カセット1がそのまま挿入され装着される。
【0065】
この装着の操作においては、先ず、上下方向において、カセット1の下端部11bが上方に向き、上端部11aが下方に向くようにカセット1を反転させて保持して、下端部11bにおける開口部21bを密栓する蓋体13を取り外す。これにより、下端部11bが開口部21bにおいて開口した状態となる。そして、このような状態で、開口部21bからの液体製剤Fの流出に注意しながら、そのカセット1を開口部21bの側から注射用シリンジバレル3の本体部31の内壁31wに接しながら徐々に挿入していき、本体部31内の底部(中空筒体からなる本体部31の底)にカセット本体11の開口部21bが接触するまで挿入する。なお、この装着の操作においては、注射用シリンジバレル3のルアー部33にキャップ33cを取り付けた状態で、その注射用シリンジバレル3をルアー部33が上向きになる状態に保持して行う。
【0066】
続いて、注射用シリンジバレル3の本体部31内に装着したカセット1から、そのカセット本体11の上端部11aに取り付けた蓋体12を取り外す。これにより、その上端部11aにおける開口部21aが開口した状態となり、次の操作にて開口部21aを介してプランジャー40をカセット1の内部に挿入することが可能となる。なおこのとき、蓋体12を取り外すことによる液体製剤Fの流出を防ぐために、カセット1を装着した注射用シリンジバレル3のルアー部33が下向きになる状態で保持して行う。
【0067】
次に、図4(c)は、注射用シリンジバレル3に装着したカセット1において、カセット本体11の開口部21aから、そのカセット本体11の内部にプランジャー40を挿入するときの様子を示す図である。カセット本体11の内壁11wに沿ってプランジャー40が挿入されると、そのカセット本体11内におけるプランジャー40の摺動により、カセット1の内部に収容した液体製剤Fが排出されることになる。そのことから、蓋体12を取り外した開口部21aにプランジャー40のガスケット部42を挿入して、液体製剤Fを排出させる準備を行う。プランジャー40としては、ガスケット部42がカセット本体11の内壁11wに接しながら摺動可能なような大きさのものが用いられ、カセット本体11の開口部21aからカセット1の下端部11bの方向に向かって挿入されていく。
【0068】
ここで、図4(b)にて説明したように、注射用シリンジバレル3の本体部31内にカセット1を装着すると、カセット1の上端部11aに取り付けた蓋体12が取り外される。それにより、上端部11aにおける開口部21aでカセット1が開口して大気と液体製剤Fとが接する状態となる。そのため、可能な限り迅速に、その開口部21aからプランジャー40を挿入して密栓するようにする。
【0069】
なお、このとき、注射用シリンジバレル3のルアー部33では、キャップ33cが取り付けられている状態のままとなっている。
【0070】
次に、図4(d)は、カセット1の内部に収容した液体製剤Fを、プランジャー40による摺動操作により、カセット1を装着した注射用シリンジバレル3の注射針50から排出するときの様子を示す図である。液体製剤Fを排出するに際しては、先ず、注射用シリンジバレル3のルアー部33におけるキャップ33cを取り外し、そのルアー部33に注射針50を取り付ける。次に、注射用シリンジバレル3において注射針50とは反対側の端部にはカセット本体11の開口部21aを介してプランジャー40が挿入されていることから、注射用シリンジとしての一般的な操作で、プランジャー40のハンドル部41を押圧してガスケット部42をカセット本体11内の所定の位置まで押しこむ。これにより、注射針50を介して液体製剤Fを排出させることができる。
【0071】
以上のような操作により、カセット1は、例えば細胞含有溶液等の液体製剤Fを収容して、その液体製剤Fに対して凍結保存等の保存処理を行う容器として用いることができる。そして、保存処理後においては、カセット1をそのまま(ただし、蓋体12,13は取り外す)注射用シリンジバレル3の本体部31内に装着する。そして、カセット本体11の開口部21aから内壁11wに沿ってプランジャー40を挿入して摺動操作を行うことで、カセット1を介して、そのカセット1を装着した注射用シリンジバレル3から液体製剤Fを排出させることができる。
【0072】
このように、カセット1によれば、液体製剤Fを保存するための容器として使用できるとともに、そのまま注射用シリンジバレル3に装着して用いることができる。これにより、保存収容した細胞含有溶液等の液体製剤Fを排出させて患者等に投与するときに、注射用シリンジに別途移し替えるといった操作が不要となり、移し替え時に発生する細胞等の成分のロスやコンタミネーション等を効果的に防ぐことができる。
【0073】
(第2の実施態様)
また、図5は、他の実施態様を説明するための図である。先ず、図5に沿って操作の流れを説明するに先立ち、医療用液体製剤カセット1Aの構成について説明する。なお、図1図4で示す構成と同じ構成については、同一の符号を付して説明は省略する。
【0074】
カセット1Aは、上端部11a及び下端部11bの端面が開口した中空筒体から構成されるカセット本体11と、カセット本体11の上端部11aにおける開口部21aを密栓する蓋体12と、を備える。また、カセット1Aは、カセット本体11の内部における底部の位置にガスケット13Gを備え、そのガスケット13Gが下端部11bにおける開口部21bを密栓する蓋体の役割をしている。
【0075】
ここで、カセット本体11の下端部11bにおける開口部21bは、図5に示すように孔状に開口している部分であり、詳しくは後述するが、その開口部21bにはプランジャー40’のハンドル部41を構成する軸(プランジャー軸)が通される。また、カセット本体11の下端部11bにおける開口部21bを密栓するガスケット13Gは、開口部21bを介してカセット本体11の内部に挿入されるプランジャー40’のハンドル部41のプランジャー軸先端と篏合することで、プランジャーガスケットとなる。
【0076】
続いて、上述した構成を有する医療用液体製剤カセット1Aを用いて液体製剤Fを凍結保存し、その後、そのカセット1Aを注射用シリンジバレル3に装着して、その液体製剤Fを排出する操作の流れを説明する。
【0077】
図5(a)は、カセット1Aを構成するカセット本体11の内部に液体製剤Fを収容するときの様子を示す図である。具体的に、カセット本体11には、その上端部11aにおける開口部21aから液体製剤Fが所定量装入されて収容され、その開口部21aに蓋体12を取り付けることにより密栓する。一方、カセット本体11の内部には、下端部11bの開口部21bを密栓するガスケット13Gが設けられている。これにより、カセット本体11の両端における開口部21a,21bが封止された状態となり、液体製剤Fが流出することを防ぐことができる。
【0078】
図5(b)は、内部に収容した液体製剤(例えば細胞含有溶液)Fを凍結保存しているときの様子を示す図である。上述したように、カセット本体11の上端部11aにおける開口部21aは蓋体12により、また下端部11bにおける開口部21bはガスケット13Gにより封止された状態となっており、この状態で、液体製剤Fに対する凍結保存処理を施す。なお、本明細書における以降の説明では、便宜上、凍結状態にある液体製剤Fを符号「F(S)」で表し、液体状態にある液体製剤Fとは区別する。
【0079】
次に、図5(c)は、カセット1Aを注射用シリンジバレル3に装着するときの様子を示す図である。図5(c)に示すように、カセット1Aを注射用シリンジバレル3に装着するに際しては、カセット1Aに収容した液体製剤Fを解凍せず、凍結した液体製剤F(S)を収容した状態で行う。
【0080】
具体的に、この装着の操作においては、先ず、カセット本体11の上端部11aから蓋体12を取り外す。次に、上下方向において、カセット1Aの下端部11bが上方に向き、上端部11aが下方に向くようにカセット1Aを反転させて保持して、そのカセット1Aを上端部11aの側から注射用シリンジバレル3の本体部31の内壁31wに沿って徐々に挿入していく。このとき、カセット1Aの上端部11aでは蓋体12が取り外されて開口状態となっているが、内部に収容した内容物は凍結状態のままの液体製剤F(S)であるため、注射用シリンジバレル3への装着時にも液体製剤F(S)が漏出することはない。なお、この装着の操作においては、注射用シリンジバレル3のルアー部33にキャップ33cが取り付けられた状態で、その注射用シリンジバレル3をルアー部33が下向きになる状態に保持して行う。
【0081】
図5(d)は、注射用シリンジバレル3へのカセット1Aの装着完了時の状態を示す図である。上述したように、注射用シリンジバレル3へのカセット1Aの装着操作は、カセット1Aに収容した液体製剤Fを解凍せずに凍結状態(液体製剤F(S))のままにして行う。そのため、装着完了直後は、カセット1Aの内部の凍結状態にある液体製剤F(S)が注射用シリンジバレル3の上方に固体状態で位置しており、その結果、ルアー部33の近傍には空間(図5(d)にて示す「D」空間)が形成されるようになる。
【0082】
続いて、そのような状態で液体製剤F(S)の解凍処理を行うと、注射用シリンジバレル3の本体部31に装着させたカセット1A内の液体製剤F(S)が次第に溶けていき、液体状の液体製剤Fとなるのに伴って、図5(e)に示すように、注射用シリンジバレル3の本体部31内を液体製剤Fが落下していく。なお、図5(e)は、カセット1Aを装着した注射用シリンジバレル3に対して解凍処理を行った後の様子を示す図であり、液体製剤Fを投与する前の最終形態を示す図である。
【0083】
図5(f)は、カセット1Aを装着させた注射用シリンジバレル3から、液体製剤Fを排出させるために、プランジャー40’を取り付ける様子を示す図である。ここで、プランジャー40’の取り付けにおいては、プランジャーのハンドル部41のみを準備する。そして、そのハンドル部41を構成するプランジャー軸を、カセット1Aの下端部11bにおける開口部21bに通す。すると、そのカセット1Aの下端部11bには、開口部21bを密栓するガスケット13Gが設けられていることから、ガスケット13Gは、開口部21bを介してカセット本体11の内部に挿入されたハンドル部41のプランジャー軸先端と篏合して、それによりプランジャーガスケットとなる。なお、ガスケット13Gには、カセット本体11の底部と接触する面上であって下端部11bにおける孔状の開口部21bに対応する位置に、例えば凹部からなる篏合部を設けて、ハンドル部41のプランジャー軸先端と容易に篏合可能にすることができる。
【0084】
そして、ハンドル部41とガスケット13G(プランジャーガスケット)とでプランジャー40’を構成させると、そのハンドル部41を押圧してカセット1Aの内部を摺動させるようにすることで、注射用シリンジバレル3に装着したカセット1A内の液体製剤Fを排出させることができる。
【0085】
なお、図示しないが、プランジャー40’の摺動によりカセット1A内の液体製剤Fを排出させるに際しては、注射用シリンジバレル3のルアー部33に注射針を取り付け、その注射針を介して液体製剤Fを排出させる。
【0086】
以上のような操作により、カセット1Aは、例えば細胞含有溶液等の液体製剤Fを収容して、その液体製剤Fに対して凍結保存処理を行う容器として用いることができる。そして、凍結保存処理後においては、カセット1Aをそのまま(ただし、蓋体12は取り外す)注射用シリンジバレル3の本体部31内に装着する。そして、カセット本体11の開口部21aから内壁11wに沿ってプランジャー40を挿入して摺動操作を行うことで、カセット1Aを介して、そのカセット1Aを装着した注射用シリンジバレル3から液体製剤Fを排出させることができる。
【0087】
このように、カセット1Aによれば、液体製剤Fを保存するための容器として使用できるとともに、そのまま注射用シリンジバレル3に装着して用いることができる。これにより、保存収容した細胞含有溶液等の液体製剤Fを排出させて患者等に投与するときに、注射用シリンジに別途移し替えるといった操作が不要となり、移し替え時に発生する細胞ロスやコンタミネーション等を効果的に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0088】
1,1A 医療用液体製剤カセット
11 カセット本体
11a カセット本体の端部(上端部)
11b カセット本体の端部(下端部)
12 蓋体
13 蓋体
13G ガスケット
21a (上端部における)開口部
21b (下端部における)開口部
3 注射用シリンジバレル
31 本体部
32 フランジ部
32a (フランジ部における)開口部
40 プランジャー
41 ハンドル部
42 ガスケット部

図1
図2
図3
図4
図5