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  • 特許-粒状物搬送装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】粒状物搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/44 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
B65G47/44
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020036878
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021138486
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100215393
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 祐資
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】宮垣 博樹
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-187234(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物を搬送するための搬送路を備えた粒状物搬送装置であって、
搬送路の終端部から排出される粒状物を当てて粒状物の落下場所を分散させる分散用弾性部材が、搬送路の終端部近傍に設けられ
分散用弾性部材の上部が、搬送路の終端部近傍に固定されて、
分散用弾性部材の下部が、垂下した状態とされるとともに、
分散用弾性部材が、中空な断面しずく状を為す弾性シートによって形成され
ことを特徴とする粒状物搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物を搬送するための搬送路を備えた粒状物搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図3には、被搬送物を搬送するための搬送部14(搬送路)を備え、搬送路の終端部から被搬送物を排出するようにした搬送装置が記載されている。同文献の搬送装置は、被搬送物として、石炭又は鉄鉱石などの鉱物や、小麦又はトウモロコシなどの穀物や、木片(木チップ)や、土砂などを想定したもの(同文献の段落0009を参照。)となっている。搬送路の終端部から排出された被搬送物は、その終端部から落下して、山状に堆積する(同文献の図3における「堆積物M」を参照。)。この種の搬送装置は、しばしば、付着性を有する柔らかい粒状物を搬送する際にも用いられる。
【0003】
例えば、浄水場や下水処理場で発生した脱水ケーキのリサイクルプラントでは、その脱水ケーキにセメントや混和材を添加し、造粒ミキサーで造粒することによって、その脱水ケーキを路盤材や埋め戻し材などに改良することが行われている。また、事業所で発生する焼却灰やダストなどの廃棄物のリサイクルプラントでは、その廃棄物にセメントや水や薬剤などを添加して混練し、造粒ミキサーで造粒することによって、その破棄物を路盤材や埋め戻し材などに改良することが行われている。これらのプラントでは、造粒ミキサーで造粒された粒状物を保管ヤードまで搬送する際に、上記のような搬送装置を使用することがある。ところが、造粒ミキサーで造粒されたばかりの粒状物は、湿気を帯びていて他の物に付着しやすいし、柔らかく形態が安定していない。
【0004】
このように、付着性を有する柔らかい粒状物を上記のような搬送装置で搬送すると、搬送路の終端部から排出された粒状物が、なだらかな山状に堆積せず、急峻な山状に堆積するようになる。このため、堆積した個々の粒状物(特に、下層中央部に堆積した粒状物)に加わる圧力が大きくなりやすい。したがって、堆積している粒状物が潰れたり、他の粒状物とくっついたりして、その粒状物が製品(路盤材や埋め戻し材)として使用するのに適さなくなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-216218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
付着性を有する柔らかい粒状物を搬送路の終端部から落下させながらも、その粒状物の形態(粒の形態)が維持されるようにするためには、粒状物の落下場所を分散させることが有効であると考えられる。例えば、搬送路を水平方向に往復動させる機構を設けると、そのようなことが可能になる。しかし、その機構を実現するためには、大掛かりな装置が必要になってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、搬送路の終端部から排出される粒状物の落下場所を分散させ、堆積する粒状物で形成される山の高さを従来よりも低く抑えることで、自重による粒状物の潰れやくっつきを抑え、粒状物の形態を維持しやすくした粒状物搬送装置を提供するものである。また、この粒状物搬送装置を低コストで実現することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、粒状物を搬送するための搬送路を備えた粒状物搬送装置であって、搬送路の終端部から排出される粒状物を当てて粒状物の落下場所を分散させる分散用弾性部材が、搬送路の終端部近傍に設けられたことを特徴とする粒状物搬送装置
を提供することによって解決される。
【0009】
これにより、搬送路の終端部から排出される粒状物の落下場所を分散させ、その粒状物をなだらかな山状に堆積させることが可能になる。このため、堆積した粒状物に大きな圧力が加わらないようにして、粒状物が潰れたり、他の粒状物にくっついたりしないようにすることができる。したがって、粒状物の形態(粒の形態)を維持しやすくすることが可能になる。
【0010】
本発明の粒状物搬送装置においては、分散用弾性部材の上部を、搬送路の終端部近傍に固定して、分散用弾性部材の下部を、垂下した状態とすることが好ましい。これにより、粒状物が当たった分散用弾性部材が揺れるようになる。このため、分散用弾性部材に対する粒状物の入射角度や反射角度のバラツキを大きくして、粒状物の落下場所をさらに分散させることが可能になる。
【0011】
本発明の粒状物搬送装置において、上記のように、分散用弾性部材を垂下した状態とする場合において、分散用弾性部材は、その上端が固定端とされ、その下端が自由端となる状態で垂下された1枚の弾性シートによって形成してもよい。しかし、この場合には、多数の粒状物が継続的に分散用弾性部材に当たるなどして、粒状物から分散用弾性部材に対して分散用弾性部材の復元力を超える力が加わると、分散用弾性部材が粒状物によって押されっぱなしで傾いたままの状態となり、分散用弾性部材による落下場所の分散作用が低減するおそれがある。
【0012】
このため、分散用弾性部材は、中空な断面しずく状を為す弾性シートによって形成することが好ましい。これにより、粒状物から分散用弾性部材に対して大きな力が加えられる場合でも、分散用弾性部材を、ボクシングのトレーニングで使用されるパンチングボールのように、小刻みに振動させるだけでなく、分散用弾性部材を、粒状物が当たる方向で弾性的に変形させることも可能になる。加えて、分散用弾性部材における、粒状物が当たる面が曲面状になるため、粒状物が当たった箇所によってその粒状物が跳ね返される向きを大きく異ならせることもできるようになる。したがって、粒状物の落下場所をより確実に分散させることができるようになる。中空な断面しずく状を為す弾性シートからなる分散用弾性部材は、例えば、平板状の弾性シートを、その対向辺が重なるように湾曲させることによって得ることができるし、断面しずく状を為す型を用いて製造することもできる。分散用弾性部材は、上記のパンチングボールのような形態(球面状の外面を有する形態)とすることもできる。
【0013】
本発明の粒状物搬送装置においては、分散用弾性部材から見て搬送路が位置する側(以下「手前側」という。)とは逆側(以下「奥側」という。)から分散用弾性部材に当接することによって、粒状物が当たって奥側に変位した分散用弾性部材を手前側に跳ね返すための跳ね返し部材を、分散用弾性部材の奥側に設けることも好ましい。これにより、分散用弾性部材が奥側に傾きっぱなしの状態にさらになりにくくすることができる。この構成は、分散用弾性部材を、中空な断面しずく状を為す弾性シートで形成した場合に特に好適に採用することができる。
【0014】
本発明の粒状物搬送装置においては、分散用弾性部材の位置を調節可能とすることが好ましい。ここで、分散用弾性部材の「位置」とは、高さ(上下方向での位置)や、前後位置(上記の「手前側」と「奥側」とを結ぶ方向(前後方向)での位置)だけでなく、左右位置(上下方向及び前後方向の双方に垂直な方向(左右方向)での位置)も含む。これにより、搬送路の終端部から排出される粒状物の速度や軌跡などに応じて、粒状物の落下場所が分散されやすい適切な場所に分散用弾性部材を配置することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によって、搬送路の終端部から排出される粒状物の落下場所を分散させ、堆積する粒状物で形成される山の高さを従来よりも低く抑えることで、自重による粒状物の潰れやくっつきを抑え、粒状物の形態を維持しやすくした粒状物搬送装置を提供することが可能になる。また、この粒状物搬送装置を低コストで実現することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の粒状物搬送装置の全体を側方から見た状態を示した図である。
図2】第一実施形態の粒状物搬送装置における搬送路の終端部近傍を拡大して示した断面図である。
図3】第二実施形態の粒状物搬送装置における搬送路の終端部近傍を拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
0.本発明の粒状物搬送装置の概要
本発明の粒状物搬送装置の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の粒状物搬送装置は、各種の粒状物を搬送するのに用いることができ、搬送対象の粒状物の種類を特に限定されない。しかし、以下においては、説明の便宜上、脱水ケーキにセメントや混和材を添加して造粒ミキサーで造粒した粒状物(路盤材や埋め戻し材など)を搬送する場合を例に挙げて説明する。
【0018】
図1は、本発明の粒状物搬送装置1の全体を側方から見た状態を示した図である。本発明の粒状物搬送装置1は、図1に示すように、搬送路2を備えている。搬送路2は、搬送対象物である粒状物Gを、その始端部2aから終端部2bに搬送するためのものとなっている。同図に示した例では、始端部2aよりも終端部2bの方が高くなるように、搬送路2を傾斜した状態としている。搬送路2は、通常、ベルトコンベアによって構成されるが、スクリューコンベアなど、他の搬送手段によって構成される場合もある。
【0019】
搬送路2の始端部2aには、搬送対象の粒状物Gを投入するためのホッパー3が設けられている。このホッパー3の上側には、造粒ミキサー(図示省略)が配される場合もあるし、他の搬送装置(図示省略)の終端部が配される場合もある。一方、搬送路2の終端部2bには、シュートボックス4が設けられている。搬送路2の中途部分(ホッパー3とシュートボックス4との間の区間)は、ダクト状のカバー5によって覆われている。これにより、搬送中の粒状物Gに異物が混入したり、粒状物Gが雨に濡れたり風に飛ばされたりしないようにすることが可能となっている。搬送路2の脇には、作業用の足場(図示省略)が設けられることもある。これにより、粒状物搬送装置1のメンテナンスなどを容易に行うことができるようになる。
【0020】
搬送対象の粒状物Gは、ホッパー3に投入されて、搬送路2の始端部2aから終端部2bまで搬送された後、シュートボックス4から下側に落とされ、山状に堆積される。このとき、図1において破線で示す堆積山Mに示すように、粒状物Gが急峻な山状に堆積すると、堆積山Mの下層中央部などでは、粒状物Gに大きな重量が掛かるようになるため、その部分の粒状物Gが潰れたり、他の粒状物Gとくっついたりしやすくなる。粒状物Gに潰れやくっつきが生じると、その粒状物Gは、路盤材や埋め戻し材などの製品として使用するのに適さなくなってしまう。堆積山Mのように、急峻な山状に粒状物Gが堆積する理由は、搬送路2の終端部2bから排出された粒状物Gが同じような場所に落下するためと考えられる。
【0021】
粒状物Gの潰れやくっつきを抑えるためには、図1において実線で示す堆積山Mに示すように、粒状物Gをなだらかな山状に堆積させることが好ましい。なだらかな堆積山Mは、粒状物Gの落下場所を1箇所に集中させないように分散させることで形成することができる。この点、本発明の粒状物搬送装置1では、搬送路2の終端部2bの近傍に、分散用弾性部材6を設けている。搬送路2の終端部2bから排出された粒状物Gを、この分散用弾性部材6に当てて、その粒状物Gが様々な向きに跳ね返されるようにすることで、粒状物Gの落下場所を分散させることができるようになっている。
【0022】
分散用弾性部材6は、ゴムなどの弾性部材によって形成される。分散用弾性部材6は、ブロック状のものとしてもよいが、板状やシート状など、撓みやすい形態とすることが好ましい。また、分散用弾性部材6は、その略全体をしっかりと固定したものであってもよいが、その略全体をしっかりと固定していないもの(その一部のみを固定したもの)であることが好ましい。例えば、分散用弾性部材6の上部のみを、搬送路2の終端部2bの近傍に固定して、分散用弾性部材6の下部が、垂下した状態とするこれらの構成を採用することによって、粒状物Gが当たったときの分散用弾性部材6を変形しやすくし、粒状物Gが跳ね返る向きなどのバラツキをさらに大きくすることができる。分散用弾性部材6は、搬送路2の終端部2b近傍に位置するのであれば、それを取り付ける箇所を特に限定されない。図1に示した例では、シュートボックス4に分散用弾性部材6を取り付けている。
【0023】
ところで、上記のように、分散用弾性部材6を、ゴムなどの弾性部材で形成すると、粒状物Gの落下場所が分散するだけでなく、以下で述べるように、分散用弾性部材6の清掃が楽になるというメリットもある。すなわち、造粒ミキサーで造粒した直後の粒状物Gは、通常、ある程度の粘性を有しているため、分散用弾性部材6に当たったときにその一部が分散用弾性部材6の表面に付着して固まるおそれがある。このような場合でも、分散用弾性部材6を撓ませるなどして変形させれば、付着物の層にひび割れを生じさせ、その付着物を分散用弾性部材6から落とすことが可能になる。
【0024】
以下においては、2つの実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)を例に挙げて、本発明の粒状物搬送装置を説明する。しかし、本発明の粒状物搬送装置の技術的範囲は、これらの実施形態に限定されない。本発明の粒状物搬送装置には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0025】
1.第一実施形態の粒状物搬送装置
まず、第一実施形態の粒状物搬送装置1について説明する。図2は、第一実施形態の粒状物搬送装置1における搬送路2の終端部2b近傍を拡大して示した断面図である。第一実施形態の粒状物搬送装置1において、分散用弾性部材6は、図2に示すように、1枚の弾性シートによって形成されている。分散用弾性部材6(弾性シート)の上端は、シュートボックス4に設けられた固定部7に固定され、分散用弾性部材6(弾性シート)の下側が、垂下した状態となっている。
【0026】
この分散用弾性部材6は、その手前側(搬送路2の側)を向く面(前面)に、搬送路2の終端部2bから排出された粒状物Gが当たる位置に設けている。このため、粒状物Gが分散用弾性部材6に当たると、分散用弾性部材6における垂下した部分が揺れるようになる。したがって、分散用弾性部材6に対する粒状物Gの入射角度や反射角度のバラツキが大きくなり、粒状物Gの落下場所が分散しやすくなっている。
【0027】
ところで、搬送路2の終端部2bから排出された粒状物Gは、図2の太線矢印に示すように、放物線を描いて落下する。すなわち、粒状物Gが移動する向きは、その粒状物Gが搬送路2の終端部2bから排出された直後では、水平方向に近いものの、徐々に鉛直方向に近づいていく。この間のどのタイミングで(粒状物Gがどのような向きになったときに)分散用弾性部材6に粒状物Gが当たるようにするかは、特に限定されない。
【0028】
しかし、粒状物Gの向きが鉛直方向に近くなったとき、すなわち、粒状物Gの向きが分散用弾性部材6(弾性シート)の前面と略平行となったときに、粒状物Gが分散用弾性部材6に当たるようにすると、粒状物Gの落下場所が十分に分散しにくくなるおそれがある。このため、分散用弾性部材6に当たる直前の粒状物Gが分散用弾性部材6に対して為す角度θ(図2)は、ある程度大きくする(例えば5°以上とする)ことが好ましい。
【0029】
一方、上記の角度θを90°に近づけすぎる(分散用弾性部材6に対して略垂直に粒状物Gが当たるようにする)と、粒状物Gの落下場所が分散しすぎてしまい、落下後の粒状物Gが山状に堆積しにくくなるおそれがある。このため、角度θは、60°以下とすることが好ましい。角度θは、45°以下とすることがより好ましく、30°以下とすることがさらに好ましい。図1に示した例では、角度θは、約10°となっている。
【0030】
上記のように、粒状物Gがどのような状態で分散用弾性部材6に当たるかによって、粒状物Gの分散具合が変わってくる。このため、第一実施形態の粒状物搬送装置1では、分散用弾性部材6の位置を調節可能としている。これにより、搬送路2の終端部2bから排出される粒状物Gの速度などに応じて、上記の角度θが上述した範囲となる場所に分散用弾性部材6を移動させることが可能となっている。
【0031】
分散用弾性部材6の位置を調節する機構としては、例えば、シュートボックス4に対して固定部7を移動可能な状態で取り付けることなどが例示される。シュートボックス4に対して固定部7を上下方向に移動可能な構造とすれば、分散用弾性部材6の上下方向での位置(高さ)を調節することが可能になるし、シュートボックス4に対して固定部7を前後方向に移動可能な構造とすれば、分散用弾性部材6の前後位置を調節することが可能になるし、シュートボックス4に対して固定部7を左右方向に移動可能な構造とすれば、分散用弾性部材6の左右位置を調節することが可能になる。
【0032】
分散用弾性部材6(弾性シート)の寸法は、小さくしすぎると好ましくない。分散用弾性部材6(弾性シート)が小さすぎると、搬送路2の終端部2bから排出された粒状物Gを分散用弾性部材6(弾性シート)に当てにくくなるし、分散用弾性部材6が変形しにくくなるからである。このため、分散用弾性部材6(弾性シート)の上下方向の長さ(垂下する部分の長さ。以下同じ。)は、30cm以上とすることが好ましい。分散用弾性部材6(弾性シート)の上下方向の長さは、40cm以上とすることがより好ましく、50cm以上とすることがさらに好ましい。これと同様の理由で、分散用弾性部材6(弾性シート)の左右方向の幅は、30cm以上とすることが好ましく、40cm以上とすることがより好ましく、50cm以上とすることがさらに好ましい。
【0033】
ただし、分散用弾性部材6(弾性シート)を大きくしすぎても、あまり意味がない。このため、分散用弾性部材6(弾性シート)の上下方向の長さは、200cm以下とすることが好ましい。分散用弾性部材6(弾性シート)の上下方向の長さは、150cm以下とすることがより好ましく、100cm以上とすることがさらに好ましい。これと同様の理由で、分散用弾性部材6(弾性シート)の左右方向の幅は、200cm以下とすることが好ましく、150cm以下とすることがより好ましく、100cm以下とすることがさらに好ましい。第一実施形態の粒状物搬送装置1においては、分散用弾性部材6(弾性シート)の上下方向の長さと左右方向の幅を、いずれも、60~70cmの範囲としている。
【0034】
分散用弾性部材6(弾性シート)の厚さは、特に限定されない。しかし、分散用弾性部材6(弾性シート)を薄くしすぎると、分散用弾性部材6(弾性シート)の強度が低下してしまい、分散用弾性部材6(弾性シート)に破れなどの破損が生じやすくなるおそれがある。また、分散用弾性部材6の復元力が弱まり、粒状物Gが当たっている分散用弾性部材6が、傾きっぱなしの状態になりやすくなるおそれがある。このため、分散用弾性部材6(弾性シート)の厚さは、通常、1mm以上とされる。分散用弾性部材6(弾性シート)の厚さは、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。
【0035】
一方、分散用弾性部材6(弾性シート)を厚くしすぎると、分散用弾性部材6(弾性シート)の剛性が高くなり、粒状物Gの落下場所が十分に分散しにくくなるおそれがある。このため、分散用弾性部材6(弾性シート)の厚さは、通常、30mm以下とされる。分散用弾性部材6(弾性シート)の厚さは、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましい。
【0036】
2.第二実施形態の粒状物搬送装置
続いて、第二実施形態の粒状物搬送装置1について説明する。図3は、第二実施形態の粒状物搬送装置1における搬送路2の終端部2bの近傍を拡大して示した断面図である。第二実施形態の粒状物搬送装置1については、上述した第一実施形態の粒状物搬送装置1と異なる構成に絞って説明する。第二実施形態の粒状物搬送装置1において特に言及しない構成は、第一実施形態の粒状物搬送装置1と同様の構成を採用することができる。
【0037】
第二実施形態の粒状物搬送装置1において、分散用弾性部材6は、図3に示すように、中空な断面しずく状を為す弾性シートによって形成している。これにより、粒状物Gが当たっているときの分散用弾性部材6を、ボクシングのトレーニングで使用されるパンチングボールのように、小刻みに振動しやすくするだけでなく、分散用弾性部材6を前後方向に弾性的に変形させる(前後方向に潰れたり膨らんだりを繰り返すように変形させる)ことも可能になる。加えて、分散用弾性部材6の前面が曲面状になるため、粒状物Gが跳ね返される向きのバラツキを大きくすることができる。したがって、粒状物Gの落下場所をより確実に分散させることができるようになっている。中空な断面しずく状を為す分散用弾性部材6は、型を用いて製造することもできるが、第二実施形態の粒状物搬送装置1では、平板状の1枚の弾性シートを、その対向辺が重なるように湾曲させることによって得たものとなっている。
【0038】
第二実施形態の粒状物搬送装置1において、分散用弾性部材6が前後方向に潰れた形態となっていると、分散用弾性部材6を中空な断面しずく状にした意義が低下する。このため、分散用弾性部材6は、前後方向にある程度膨らんだ形態とすることが好ましい。具体的には、分散用弾性部材6の上下方向の長さL図3)に対する、分散用弾性部材6の前後方向の幅W(図3)の比W/Lが、0.1以上となるようにすることが好ましい。比W/Lは、0.15以上とすることがより好ましく、0.2以上とすることがさらに好ましい。
【0039】
ただし、比W/Lを大きくしすぎると、分散用弾性部材6の前面上部の角度φ(図3)が大きくなり、分散用弾性部材6の前面上部に粒状物Gが引っ掛かりやすくなる。このため、比W/Lは、1以下とすることが好ましい。比W/Lは、0.7以下とすることがより好ましく、0.5以下とすることがさらに好ましい。第二実施形態の粒状物搬送装置1においては、分散用弾性部材6の上下方向の長さLを約60cmにして、分散用弾性部材6の前後方向の幅Wを20cm弱としており、比W/Lが、0.3~0.4の範囲となるようにしている。分散用弾性部材6に用いた弾性シートの左右方向の幅や厚さは、第一実施形態の粒状物搬送装置1で用いたものと同じとしている。
【0040】
また、第二実施形態の粒状物搬送装置1においては、分散用弾性部材6の奥側(後側)に、跳ね返し部材8を設けている。この跳ね返し部材8は、粒状物Gが当たって奥側(後側)に変位した分散用弾性部材6に対して、奥側(後側)から局所的に当接することによって、その分散用弾性部材6を手前側(前側)に跳ね返すためのものとなっている。この跳ね返し部材8を設けたことによって、粒状物Gが当たっている分散用弾性部材6が奥側(後側)に傾きっぱなしの状態になりにくくすることができる。跳ね返し部材8を取り付ける部材は、特に限定されない。図3に示した例では、シュートボックス4に跳ね返し部材8を設けている。
【0041】
跳ね返し部材8は、中空な断面しずく状を為す分散用弾性部材6における、最も膨らんだ箇所(前後方向の幅Wが最大の箇所)の近くに当接できる高さに設けると好ましい。これにより、分散用弾性部材6が跳ね返し部材8によって弾性的に跳ね返されやすくなる。跳ね返し部材8による分散用弾性部材6の跳ね返り具合は、跳ね返し部材8の前端から分散用弾性部材6の後面までの距離L図3)を調節することによって、変えることができる。すなわち、距離Lが短ければ、分散用弾性部材6の跳ね返りが小さくなり、距離Lが長ければ、分散用弾性部材6の跳ね返りが大きくなる。距離Lは、通常、1~20cm程度の範囲で設定される。
【符号の説明】
【0042】
1 粒状物搬送装置
2 搬送路
2a 始端部
2b 終端部
3 ホッパー
4 シュートボックス
5 カバー
6 分散用弾性部材
7 固定部
8 跳ね返し部材
G 粒状物
急峻な堆積山
なだらかな堆積山
図1
図2
図3