(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】道路変化検出システム、道路変化検出方法、道路変化検出プログラム、および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G08G1/00 A
(21)【出願番号】P 2020037287
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】山下 由美子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 渉
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-241090(JP,A)
【文献】特開2018-163438(JP,A)
【文献】特開2010-049391(JP,A)
【文献】特開2018-136890(JP,A)
【文献】特開2006-079483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の所定領域における車両の走行速度の変化と、前記所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習した学習モデルを記憶する記憶部と、
前記記憶部が前記学習モデルを記憶したのちに、道路上を走行する車両の位置に関する位置情報と、当該車両が位置情報を取得した時の時刻に関する時刻情報と、を少なくとも含む車両のプローブ情報を経時的に取得する取得部と、
前記記憶部が記憶した学習モデルを用いて、前記プローブ情報から算出した前記車両の前記所定領域における走行速度の変化に基づいて、前記所定領域における道路変化の有無を検出する検出部と、を備えて
おり、
前記所定領域とは、同じ交差点や同じ走行路に設けられた信号機の間を含む、道路区画上連続した一定の領域であり、
前記走行速度の変化は、前記所定領域を通過する車両の前記所定領域への進入速度を分類するための車速帯における、前記所定領域へ進入する車両の数に基づく各車速帯ごとの全車速帯に対する割合の変化である、
道路変化検出システム。
【請求項2】
前記検出部が検出した前記所定領域における道路変化の有無に関する検出結果情報を外部に出力する出力部を備えている
請求項1に記載の道路変化検出システム。
【請求項3】
前記学習モデルの教師データは、前記車両の走行時における前記プローブ情報から特定される前記車両の走行環境条件毎に取得された、道路上の所定領域における車両の走行速度の変化を用いて構築され、
前記検出部は、前記プローブ情報に含まれる前記走行環境条件毎に、前記所定領域における道路変化の有無を検出する
請求項1又は2に記載の道路変化検出システム。
【請求項4】
前記走行環境条件は、曜日、日付、時間帯、天候の少なくとも一つを含んでいる
請求項3に記載の道路変化検出システム。
【請求項5】
前記取得部は、前記プローブ情報を予め設定されたサンプリング期間毎に、定期的に取得し、
前記検出部は、前記サンプリング期間毎に、前記所定領域における道路変化の有無を検出する
請求項1から4のいずれか1項に記載の道路変化検出システム。
【請求項6】
前記学習モデルは、一つの車両に対する道路上の所定領域における車両の走行速度の変化を用いて構築されている
請求項1から5のいずれか1項に記載の道路変化検出システム。
【請求項7】
前記学習モデルは、複数の車両に対する道路上の所定領域における車両の走行速度の変化を用いて構築され、
前記検出部は、前記所定領域における交通状態が、所定の閾値を超えている場合に、前記所定領域における道路変化の有無を検出する
請求項1から5のいずれか1項に記載の道路変化検出システム。
【請求項8】
前記プローブ情報は、前記車両の操作に関する車両操作情報を含み、
前記走行速度の変化は、前記車両操作情報を用いて特定される
請求項1から7のいずれか1項に記載の道路変化検出システム。
【請求項9】
コンピュータが、
道路上の所定領域における車両の走行速度の変化と、前記所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習した学習モデルを記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップにより前記学習モデルを記憶したのちに、道路上を走行する車両の位置に関する位置情報と、当該車両が位置情報を取得した時の時刻に関する時刻情報と、を少なくとも含む車両のプローブ情報を経時的に取得する取得ステップと、
前記記憶ステップにより記憶した学習モデルを用いて、前記プローブ情報から算出した前記車両の前記所定領域における走行速度の変化に基づいて、前記所定領域における道路変化の有無を検出する検出ステップと、を実行
し、
前記所定領域とは、同じ交差点や同じ走行路に設けられた信号機の間を含む、道路区画上連続した一定の領域であり、
前記走行速度の変化は、前記所定領域を通過する車両の前記所定領域への進入速度を分類するための車速帯における、前記所定領域へ進入する車両の数に基づく各車速帯ごとの全車速帯に対する割合の変化である、
道路変化検出方法。
【請求項10】
コンピュータに、
道路上の所定領域における車両の走行速度の変化と、前記所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習した学習モデルを記憶する記憶機能と、
前記記憶機能により前記学習モデルを記憶したのちに、道路上を走行する車両の位置に関する位置情報と、当該車両が位置情報を取得した時の時刻に関する時刻情報と、を少なくとも含む車両のプローブ情報を経時的に取得する取得機能と、
前記記憶機能により記憶した学習モデルを用いて、前記プローブ情報から算出した前記車両の前記所定領域における走行速度の変化に基づいて、前記所定領域における道路変化
の有無を検出する検出機能と、を実現させ
、
前記所定領域とは、同じ交差点や同じ走行路に設けられた信号機の間を含む、道路区画上連続した一定の領域であり、
前記走行速度の変化は、前記所定領域を通過する車両の前記所定領域への進入速度を分類するための車速帯における、前記所定領域へ進入する車両の数に基づく各車速帯ごとの全車速帯に対する割合の変化である、
道路変化検出プログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
道路上の所定領域における車両の走行速度の変化と、前記所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習した学習モデルを記憶する記憶機能と、
前記記憶機能により前記学習モデルを記憶したのちに、道路上を走行する車両の位置に関する位置情報と、当該車両が位置情報を取得した時の時刻に関する時刻情報と、を少なくとも含む車両のプローブ情報を経時的に取得する取得機能と、
前記記憶機能により記憶した学習モデルを用いて、前記プローブ情報から算出した前記車両の前記所定領域における走行速度の変化に基づいて、前記所定領域における道路変化の有無を検出する検出機能と、を実現させ
、
前記所定領域とは、同じ交差点や同じ走行路に設けられた信号機の間を含む、道路区画上連続した一定の領域であり、
前記走行速度の変化は、前記所定領域を通過する車両の前記所定領域への進入速度を分類するための車速帯における、前記所定領域へ進入する車両の数に基づく各車速帯ごとの全車速帯に対する割合の変化である、
道路変化検出プログラムを記憶する記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路変化検出システム、道路変化検出方法、道路変化検出プログラム、および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行する道路において、区画線やレーン矢印等の路面標示が変化した情報は入手困難なことが一般的である。このため、車両が走行履歴情報を含むプローブ情報を活用し、交通状況の変化を検出することによって、現地(道路)の変化を検出するシステムが求められている。
下記特許文献1には、プローブ情報から取得した道路リンクの周辺エリアの通過車両の過去と現在との間の交通状態の変化を確認して現在の交通状態の推定値を算出し、その推定値よりも統計的誤差を超えて少ないときに、当該リンクが通行止めであると判定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムでは、通行止めであるかどうかは確認できたが、道路の変化を検出することは難しかった。道路変化を検出するには、例えば1日単位でプローブ情報を集計し、新旧の交通状況を比較しても、現地の変化を検出できる特徴が現れない場合がある。また、交通状態が多い交差点では処理負荷が大きくなるという課題があった。
【0005】
また、交通状況が類似する日時を特定し、新旧比較することができれば、現地の変化を検出しやすいが、曜日、五十日、平日/休日、大型連休、学校休業期間、天候等の条件による交通状況への影響は大きく、そういった条件を細かく分類すると、交通状態が少ない交差点では、比較対象となる日時を特定できない可能性があった。
【0006】
そこで本発明は、様々な外部要因により変動する交通状態を総合的に評価して、道路変化を精度よく検出することができる道路変化検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様の道路変化検出システムは、道路上の所定領域における車両の走行速度の変化と、所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習した学習モデルを記憶する記憶部と、記憶部が学習モデルを記憶したのちに、道路上を走行する車両の位置に関する位置情報と、当該車両が位置情報を取得した時の時刻に関する時刻情報と、を少なくとも含む車両のプローブ情報を経時的に取得する取得部と、記憶部が記憶した学習モデルを用いて、プローブ情報から算出した車両の所定領域における走行速度の変化に基づいて、所定領域における道路変化の有無を検出する検出部と、を備えている。
【0008】
一態様の道路変化検出システムは、検出部が検出した所定領域における道路変化の有無に関する検出結果情報を外部に出力する出力部を備えてもよい。
【0009】
一態様の道路変化検出システムにおける学習モデルの教師データは、車両の走行時におけるプローブ情報から特定される車両の走行環境条件毎に取得された、道路上の所定領域における車両の走行速度の変化を用いて構築され、プローブ情報には、車両の走行時におけるプローブ情報から特定される走行環境条件と対応する情報が含まれ、検出部は、プローブ情報に含まれる走行環境条件毎に、所定領域における道路変化の有無を検出してもよい。
【0010】
一態様の道路変化検出システムにおける走行環境条件は、曜日、日付、時間帯、天候の少なくとも一つを含んでもよい。
【0011】
一態様の道路変化検出システムにおける取得部は、プローブ情報を予め設定されたサンプリング期間毎に、定期的に取得し、検出部は、サンプリング期間毎に、所定領域における道路変化の有無を検出してもよい。
【0012】
一態様の道路変化検出システムにおける学習モデルは、一つの車両に対する道路上の所定領域における車両の走行速度の変化を用いて構築されてもよい。
【0013】
一態様の道路変化検出システムにおける学習モデルは、複数の車両に対する道路上の所定領域における車両の走行速度の変化を用いて構築され、検出部は、所定領域における交通状態が、所定の閾値を超えている場合に、所定領域における道路変化の有無を検出してもよい。
【0014】
一態様の道路変化検出システムにおけるプローブ情報は、車両の操作に関する車両操作情報を含み、走行速度の変化は、車両操作情報を用いて特定してもよい。
【0015】
一態様の道路変化検出方法は、コンピュータが、道路上の所定領域における車両の走行速度の変化と、所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習した学習モデルを記憶する記憶ステップと、記憶ステップにより学習モデルを記憶したのちに、道路上を走行する車両の位置に関する位置情報と、当該車両が位置情報を取得した時の時刻に関する時刻情報と、を少なくとも含む車両のプローブ情報を経時的に取得する取得ステップと、記憶ステップにより記憶した学習モデルを用いて、プローブ情報から算出した車両の所定領域における走行速度の変化に基づいて、所定領域における道路変化の有無を検出する検出ステップと、を実行する。
【0016】
一態様の道路変化検出プログラムは、コンピュータに、道路上の所定領域における車両の走行速度の変化と、所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習した学習モデルを記憶する記憶機能と、記憶機能により学習モデルを記憶したのちに、道路上を走行する車両の位置に関する位置情報と、当該車両が位置情報を取得した時の時刻に関する時刻情報と、を少なくとも含む車両のプローブ情報を経時的に取得する取得機能と、記憶機能により記憶した学習モデルを用いて、プローブ情報から算出した車両の所定領域における走行速度の変化に基づいて、所定領域における道路変化の有無を検出する検出機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の道路変化検出システムでは、記憶部が、道路上の所定領域における車両の走行速度の変化と、前記所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習した学習モデルを記憶している。そして検出部が、取得部が取得した車両の位置情報と時刻情報とを用いて、学習モデルを参照して、車両の所定領域における走行速度の変化に基づいて、所定領域における道路変化の有無を検出する。
【0018】
このように、様々な外部要因により変動する交通状態を総合的に評価して、道路変化を精度よく検出することができる。
また、一態様の道路変化検出方法、および道路変化検出プログラムは、上述した一態様の道路変化検出システムと同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る道路変化検出システムの概略図である。
【
図3】
図1に示す道路変化検出システムの構成を説明するブロック図である。
【
図4】本発明で使用する学習モデルを説明する図である。
【
図5】交差点における車両の走行速度の変化の例を説明する図である。
【
図6】
図2に示す処理部における処理を説明するフローチャートである。
【
図7】実施例における車両の走行速度の評価結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る道路変化検出システム30の概略図である。
道路変化検出システム30は、車両10およびサーバ20とともに使用される。
車両10は、自車のプローブ情報を入手してサーバ20に送信する。
図1には1台の車両10のみ記載されているが、車両10は複数台であってよい。
サーバ20は、例えば、複数のプローブ情報を記憶する。具体的には、サーバ20は、1又は複数の車両10から送信された複数のプローブ情報を記憶する交通情報収集装置である。
【0021】
道路変化検出システム30は、例えば、いわゆるビッグデータの処理に適した、多数の情報を処理することができる装置であり、主に道路の変化を検出して出力する機能を有している。ここで、道路変化の具体例について
図2を用いて説明する。
図2は、道路変化の例を説明する模式図である。
【0022】
図2に示すように、交差点への複数の進入車線において、左折レーンが新設されることがある。このようなレーンの新設により、左側の車線の混雑が解消され、交通状況が変化する。このような道路の変化としては、車線の追加のほか、区画線の変更、車線に記載されたレーン矢印の変更(車線の役割変更)、速度規制の変更、矢印信号の変更、駐禁規制の変更等がある。また、道路の変化としては、これらに限られず、例えば、カーブのRを変更したような道路形状の変化等、実際に走行する車両10の走行速度に影響を与える道路上の人為的な変更事項が含まれる。
【0023】
車両10に搭載されるナビゲーション装置(図示せず)は、目的地が設定された場合に、その目的地までの経路を案内する。道路変化検出システム30は、ナビゲーション装置と無線通信を行うことで、処理内容をナビゲーション装置に表示させる。
【0024】
次に、
図3を用いて、道路変化検出システム30について詳細に説明する。
図3は、道路変化検出システム30の構成を説明するブロック図である。
図3に示すように、道路変化検出システム30は、通信部40、記憶部50、処理部100を備えている。
【0025】
通信部40は、例えば、通信ネットワークを介して、サーバ20又は車両10と通信する。通信部40は、道路変化検出システム30の制御に基づいて、一例として、サーバ20から複数のプローブ情報を取得する。なお、通信部40は、車両10から送信されたプローブ情報を受信することとしてもよい。
【0026】
ここで、プローブ情報とは、実際に自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成された道路交通情報である。
プローブ情報は、少なくとも走行位置情報(位置情報)、および識別情報を含む。走行位置情報は、車両10の走行位置に関する情報である。識別情報は、車両10を識別するための情報(車両ID)である。また、プローブ情報は、所定の緯度経度情報を測定した時の時刻を示す測定時刻情報(時刻情報)を含んでいる。
【0027】
また、プローブ情報は、車両操作情報(CAN情報)を含んでいる。車両操作情報とは、車両10の操作に関する各種の情報であり、例えば操舵角を示す操舵角情報、車輪の回転数から推定される走行速度を含む車両を制御するための情報である。
車両操作情報には、制動操作(ブレーキ)を行ったことによる車両10の加速度の変化の情報である制動操作情報が含まれている。
【0028】
制動操作情報とは、道路上を走行する車両10において行われた制動操作を示す情報である。すなわち、道路上でブレーキ操作が行われたことを示す情報であり、当該制動操作を行った時刻と、場所に関する情報と関連付けられている。また、制動操作情報は、制動操作の態様を示す情報を含んでもよいし、制動操作が行われた際の車両操作情報と関連付けられてもよい。
また、制動操作情報としては、ブレーキの踏み込み量や、踏み込み力(踏み込み時の加速度)等の制動操作の態様を示す情報を含んでもよい。
【0029】
記憶部50は、地図情報を含む種々の情報、および各種の制御プログラム等を記憶する装置である。記憶部50は、プローブ情報と、後述する学習モデルとを記憶している。
記憶部50は、地図情報を記憶する例として、目的地として設定される地点を予め記憶する。目的地として設定される地点は、案内経路(走行経路)の終点として設定される地点であり、地図上の位置座標情報により特定される。
【0030】
道路変化検出システム30は、例えば、上記のように記憶部50に記憶された地図情報を、通信部40を介して車両10に送信し、その地図情報を車両10のナビゲーション装置で利用させるようにしてもよい。
また、道路変化検出システム30は、例えば、地図情報を外部メモリ又は光ディスク等の記録媒体に記録してもよい。この場合、車両10は、記録媒体に記録される地図情報を読み込んで、地図情報をナビゲーション装置で利用することとしてもよい。
【0031】
処理部100は、道路変化検出システム30における各種の処理を行う機能を有するプロセッサである。処理部100は、集積回路(IC(IntegratedCircuit)チップ、LSI(LargeScaleIntegration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよいし、CPU(CentralProcessingUnit)およびメモリを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0032】
処理部100は、受付部110と、学習モデル作成部120と、取得部130と、検出部140と、出力部150と、を備えている。
受付部110は、撮影装置から、車両10の前方を撮影した前方画像の入力を受け付ける。撮影装置は、例えばドライブレコーダであり、車両10の走行中、または停止中における前方の様子を経時的に録画している。撮影装置としては、運転者又は同乗者のスマートフォン等に搭載されたカメラであってもよい。また、撮影装置は、車両10の外部に設置されたカメラであってもよい。
【0033】
学習モデル作成部120は、走行速度の変化に関する学習モデルを作成する。この点について
図4を用いて詳述する。
図4に示すように、走行速度の変化に関する学習モデルとは、道路上の所定領域における車両10の走行速度の変化と、所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習したモデルである。このような学習モデルは、例えばニューラルネットワークにより構築することができる。
【0034】
ここで、所定領域とは、同じ交差点や同じ走行路に設けられた信号機の間というように、道路区画上、連続した一定の領域を指し、数m~数十m程度の一定の範囲内を指す概念である。すなわち、当該道路区画を走行する一群の走行車両10が、互いの走行速度に影響を及ぼしあう領域を指す。
【0035】
図4に示すように、学習モデルの教師データは、車両10の走行時におけるプローブ情報から特定される車両10の走行環境条件毎に取得された、道路上の所定領域における車両10の走行速度の変化を用いて構築されている。
ここで、走行環境条件とは、車両10が走行した環境を示す情報である。走行環境条件は、プローブ情報に含まれている。
【0036】
走行環境条件は、曜日、日付、日柄、運転時刻(時間帯)、天候、運転者の運転歴のうち、少なくとも1つを含んでいる。日柄とは、曜日、五十日、平日/休日、大型連休、学校休業期間等のように、交通状態に影響を与える因子であるため、日柄の情報を教師データとして学習しておくことで、正確な検出を行うことができる。
天候も、日柄と同様に、交通状態に影響を与える因子である。運転者の運転歴は、例えば交差点での右折や左折に際して、運転歴の浅い者ほど、慎重に運転する傾向があるため、この情報を教師データとして学習しておくことで、正確な検出を行うことができる。
【0037】
ここで、学習モデルは、一つの車両10に対する道路上の所定領域における車両10の走行速度の変化を用いて構築されてもよい。このような場合には、モニタリング対象となる車両10と予め特定し、当該車両10のサンプリング期間における走行履歴を取得することで、教師データを構築することができる。
【0038】
また、学習モデルは、複数の車両10に対する道路上の所定領域における車両10の走行速度の変化を用いて構築されてもよい。このような場合には、モニタリング対象となる車両10を複数台設定する。この際、車種や運転者の属性等を各種の条件に設定することで、ビッグデータに基づいた汎用性のある学習モデルを構築することができる。
【0039】
そして、走行速度の変化と、所定領域における道路変化の有無と、の関係を学習した学習モデルを用いて、車両10の走行速度を把握することで、所定領域において道路変化があったかどうかを評価することができる。ここで、走行速度の変化は、プローブ情報から取得してもよいし、車両操作情報から取得してもよい。
【0040】
ここで、
図5を用いて、走行速度の変化と道路変化との関係について説明する。
図5は、交差点における車両の走行速度の変化の例を説明する図である。
図5に示すように、例えば月ごとの交差点への進入速度の割合を確認すると、8月と9月で大きく変化していることが確認できる。この場合には、進入速度40km/h~60km/hの車両10が増え、20km/h~40km/hの車両10が減っていることが確認できる。このような場合には、例えば左折レーンが個別に設けられていない道路において、左折レーンが新設されたことにより、左折車を待つ車が少なくなり、交差点への進入速度が上がった可能性がある。
【0041】
取得部130は、車両10の操作に関する車両操作情報を経時的に取得する。取得部130は、通信ネットワークを介して、プローブ情報を取得する。
プローブ情報には、道路上を走行する車両10の位置に関する位置情報、および当該車両10が位置情報を取得した時の時刻に関する時刻情報を含んでいる。取得部130は、位置情報取得部131と、CAN情報取得部132と、を備えている。
【0042】
位置情報取得部131は、車両10の1つの走行経路について、走行中にGNSS測位システムにより測定された緯度経度情報を、緯度経度情報が測定された時刻を示す測定時刻情報とともに取得する。
なお、位置情報取得部131は、出発地から目的地に向かうプローブ情報を複数取得してもよいし、プローブ情報を予め設定されたサンプリング期間毎に、定期的に取得してもよい。サンプリング期間とは、例えば、数か月や半年、一年というように任意に設定することができる。
【0043】
車両10は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)(以下、単に測位システムという)を利用することにより、車両10の走行位置情報を記録することができる。車両10は、連続的又は間欠的に位置情報を取得することにより、車両10が走行した経路の位置情報(走行位置情報)をプローブ情報に記録することができる。
【0044】
車両10は、自車と他車とを識別するための車両ID(識別情報)をプローブ情報に記録する。
車両10は、例えば、走行位置情報を取得(又は、走行位置情報をプローブ情報として記録)した時の時刻に関する情報(測定時刻情報)をプローブ情報に記録する。
【0045】
ここで、車両10は、プローブ情報を生成する場合、ナビゲーション装置で設定される目的地をプローブ情報に記録してもよい。車両10は、例えば、ナビゲーション装置が利用される場合、走行位置情報に基づいて、道路を示すリンクから離脱した地点(座標)をプローブ情報に記録してもよい。
また、位置情報取得部131は、車両10のプローブ情報を蓄積するサーバ20(交通情報収集装置)から、特定の1つの車両10の1つの走行経路における緯度経度情報および測定時刻情報として、プローブ情報を取得する。
【0046】
CAN情報取得部132は、プローブ情報のうち、車両10の車両制御情報であるCAN情報を取得する。
検出部140は、学習モデルを用いて、プローブ情報から算出した車両10の所定領域における走行速度の変化に基づいて、所定領域における道路変化の有無を検出する。
【0047】
また、検出部140は、走行速度の変化とともに、走行環境条件を用いて、道路変化の有無を検出する。具体的には、検出部は、プローブ情報に含まれる走行環境条件毎に、所定領域における道路変化の有無を検出する。
また、検出部140は、位置情報取得部131が、プローブ情報を予め設定されたサンプリング期間毎に、定期的に取得する場合には、当該期間毎に道路変化の有無を検出してもよいし、所定領域における交通状態が、所定の閾値を超えている場合に、所定領域における道路変化の有無を検出してもよい。
【0048】
出力部150は、検出部140が検出した所定領域における道路変化の有無に関する検出結果情報を、外部に出力する。道路変化の有無に関する情報の外部への出力態様としては様々な方法が挙げられる。
【0049】
例えば、車両10のナビゲーション装置に、道路変化の有無を示す情報を出力することで、当該区間を走行前の車両10に対して、注意喚起をすることができる。具体的には、「この先の交差点で、左折レーンが追加されている」といったメッセージや、「この先の交差点で、矢印信号が新設されている」といったメッセージをナビゲーション装置の表示モニタに出力することができる。
【0050】
次に、道路変化検出システム30における処理部100の処理内容について
図6を用いて説明する。
図6は、処理部100における処理を説明するフローチャートである。
図6に示すように、処理部100における学習モデル作成部120が、学習モデルを作成する(ST10:学習モデル作成ステップ)。次に、記憶部50が、学習モデル作成部120が作成した学習モデルを記憶する(ST20:記憶ステップ)。
【0051】
次に、取得部130が、プローブ情報を取得する(ST30:取得ステップ)。この際、位置情報取得部131が、プローブ情報のうち、位置情報を取得し、CAN情報取得部132が、プローブ情報のうち、運転操作情報を取得する。
【0052】
次に、検出部140が、道路変化の有無を検出する(ST40:検出ステップ)。この際、検出部140が、プローブ情報を学習モデルに入力することにより、道路変化があったかどうか、および道路変化があった場合には、どのような内容の変化があったのかを検出する。
次に、出力部150が、道路変化の有無、およびどのような道路変化があったのかの情報である検出結果情報を出力する(ST50:出力ステップ)。
【0053】
<実施例>
ここで、実際の道路において検証した実施例を、
図7を用いて説明する。
図7は、交差点における車両の走行速度の評価結果を説明する図である。
図7に示すように、左折レーンと直進レーンとを同じ車線としていた場合と、それぞれを個別に設けて一つの走行車線に供用した場合と、における左折車と直進車の進入速度の変化を評価した。この場合、左折車においては大きな変化は確認されなかったが、直進車において、車速帯が大きく変化した。具体的には、20km/h~40km/hの車両10の割合が減り、40km/h~60km/hの車両10の割合が多くなっていることが確認された。この実施例では、左折車ではなく直進車のプローブ情報を利用することで、検出しやすいことが確認された。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る道路変化検出システム30によれば、記憶部50が、道路上の所定領域における車両10の走行速度の変化と、所定領域における道路変化の有無と、の関係を示す複数の教師データを学習した学習モデルを記憶している。
そして検出部140が、取得部130が取得した車両10の位置情報と時刻情報とを用いて、学習モデルを参照して、車両10の所定領域における走行速度の変化に基づいて、所定領域における道路変化の有無を検出する。
【0055】
このように、様々な外部要因により変動する交通状態を総合的に評価して、道路変化を精度よく検出することができる。
また、このような道路変化検出方法、および道路変化検出プログラムを利用すれば、上述した一態様の道路変化検出システムと同様の効果を奏することができる。
【0056】
また、出力部150が、検出部140が検出した所定領域における道路変化の有無に関する検出結果情報を外部に出力するので、運転者に対して出力することで、道路変化を事前に通知して、注意喚起を促すことができる。
【0057】
また、学習モデルの教師データが、プローブ情報から特定される車両10の走行環境条件毎に取得された、道路上の所定領域における車両10の走行速度の変化を用いて構築されており、検出部140が、プローブ情報に含まれる走行環境条件毎に、所定領域における道路変化の有無を検出する。このため、様々な外部要因の変化により、流動的に交通状態が変化する中で、車両10の走行速度の変化により道路変化の有無を正確に検出することができる。
また、走行環境条件が、曜日、日付、時間帯、天候の少なくとも一つを含んでいるので、様々な走行環境条件を利用して、正確な検出を行うことができる。
【0058】
また、取得部が、プローブ情報を予め設定されたサンプリング期間毎に、定期的に取得し、検出部140が、サンプリング期間毎に、所定領域における道路変化の有無を検出することにより、道路変化を長期間にわたって定常監視することができる。
【0059】
また、学習モデルが、一つの車両10に対する道路上の所定領域における車両10の走行速度の変化を用いて構築されている場合には、学習モデルを構築するための処理を円滑に行うことができる。
【0060】
また、学習モデルが、複数の車両10に対する道路上の所定領域における車両10の走行速度の変化を用いて構築されている場合には、大量のデータを用いて精度の高い検出を行うことができる。
【0061】
また、プローブ情報が、車両10の操作に関する車両操作情報を含み、走行速度の変化が、車両操作情報を用いて特定される場合には、一般に、プローブ情報よりも計測頻度の高い車両操作情報を利用して、例えばプローブ情報の取得が難しいような環境下においても、精度の高い検出を行うことができる。
【0062】
なお、前述した構成はあくまで一実施形態であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の変更や機能の集約、あるいは分離を行うことができる。
例えば、本実施形態では、道路変化検出システム30が、車両10に搭載されたナビゲーション装置とは別の装置である構成を示したが、このような態様に限られない。道路変化検出システム30の機能の一部を、ナビゲーション装置に搭載した制御部により実現してもよい。
【0063】
また、上述した道路変化検出システム30の各部は、コンピュータの演算処理装置等の機能として実現されてもよい。すなわち、道路変化検出システム30の処理部100における受付部110、学習モデル作成部120、取得部130、検出部140、出力部150は、コンピュータの演算処理装置等による、受付機能、学習モデル作成機能、取得機能、検出機能、および出力機能としてそれぞれ実現されてもよい。そして、取得機能は位置情報取得機能、およびCAN情報取得機能を備えている。
【0064】
また、道路変化検出プログラムは、上述した各機能をコンピュータに実現させることができる。道路変化検出プログラムは、外部メモリ又は光ディスク等の、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録されていてもよい。
【0065】
また、上述したように、道路変化検出システム30の各部は、コンピュータの演算処理装置等で実現されてもよい。その演算処理装置等は、例えば、集積回路等によって構成される。このため、道路変化検出システム30の各部は、演算処理装置等を構成する回路として実現されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 車両
20 サーバ
30 道路変化検出システム
40 通信部
50 記憶部
100 処理部
110 受付部
120 学習モデル作成部
130 取得部
131 位置情報取得部
132 CAN情報取得部
140 検出部
150 出力部