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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240220BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240220BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
E02F9/22 A
E02F9/26 B
E02F9/24 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020056734
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021155997
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】奥山 実
(72)【発明者】
【氏名】松木 亮
(72)【発明者】
【氏名】牧野 正樹
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-028926(JP,A)
【文献】特開2004-346983(JP,A)
【文献】特開2008-256048(JP,A)
【文献】特開平08-177077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0300786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/26
E02F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータキャブと、
前記エレベータキャブの位置を検知する検知部と、
前記検知部により検知された前記エレベータキャブの位置が所定の高さよりも高い位置にある状態において、走行操作が行われた場合に、自機の走行モードを、自機の有する走行用油圧モータのモータ容積が強制的に低回転設定に固定される第一の走行モードと、前記走行用油圧モータのモータ容積が低回転設定と高回転設定で切り換え可能な状態とされる第二の走行モードのうち、前記第一の走行モードに固定し、前記エレベータキャブの位置が所定の高さ以下となった場合に自機の走行モードが前記第一の走行モードの固定された状態を解除する制御部と、
自機の走行モードが前記第一の走行モードに固定された場合に、走行速度が低速に固定された状態であることを示すメッセージが表示される表示装置と、を有する作業機械。
【請求項2】
前記制御部は、
モータレギュレータの走行モードを低速モードに維持する、請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
前記制御部は、
メインポンプが吐出する作動油の吐出量を低減させて、前記走行速度を低速に維持する、請求項1記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御部は、
エンジンの回転数を低下させて、前記走行速度を低速に維持する、請求項1記載の作業機械。
【請求項5】
前記制御部は、
メインポンプが吐出する作動油の流れを制御する複数の制御弁のそれぞれが有するスプールのストローク量を制限して、前記走行速度を低速に維持する、請求項1記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、昇降式のエレベータキャブを搭載した作業機械が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-176288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の作業機械では、走行時の揺れが、エレベータキャブ(操縦室)を昇降させる構造物等の疲労寿命に影響を与える可能性がある。しかしながら、上述した従来の作業機械では、走行時の揺れについて考慮されていない。
【0005】
そこで、上記事情に鑑み、走行時の揺れによる影響を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る作業機械は、エレベータキャブと、前記エレベータキャブの位置を検知する検知部と、前記検知部により検知された前記エレベータキャブの位置が所定の高さよりも高い位置にある状態において、走行操作が行われた場合に、自機の走行モードを、自機の有する走行用油圧モータのモータ容積が強制的に低回転設定に固定される第一の走行モードと、前記走行用油圧モータのモータ容積が低回転設定と高回転設定で切り換え可能な状態とされる第二の走行モードのうち、前記第一の走行モードに固定し、前記エレベータキャブの位置が所定の高さ以下となった場合に自機の走行モードが前記第一の走行モードの固定された状態を解除する制御部と、自機の走行モードが前記第一の走行モードに固定された場合に、走行速度が低速に固定された状態であることを示すメッセージが表示される表示装置と、を有する。

【発明の効果】
【0007】
走行時の揺れによる影響を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る作業機械の全体概略図である。
図2】本実施形態に係る作業機械のキャブ昇降装置を示す図である。
図3】本実施形態に係る作業機械の基本システムの構成例を示す図である。
図4図1の作業機械に搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。
図5】モータレギュレータに関連する油圧回路の構成例を示す図である。
図6】コントローラの機能構成を説明する図である。
図7】表示装置に表示される出力画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。図1は、本実施形態に係る作業機械の全体概略図である。
【0010】
作業機械100は、下部走行体1、旋回機構2、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、エンドアタッチメント6、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、エンドアタッチメントシリンダ9、キャブ(操縦室)10、操作装置26、コントローラ(制御装置)30、表示装置35等を有する。また、キャブ10内には、操作装置26、コントローラ(制御装置)30、表示装置35が設けられている。
【0011】
作業機械100の下部走行体1上には、旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載される。また、上部旋回体3の前方中央部にはブーム4が回動可能に連結される。また、ブーム4の先端部にはアーム5が回動可能に連結される。また、アーム5の先端部にはエンドアタッチメント6が回動可能に連結される。本実施形態において、エンドアタッチメント6はリフティングマグネットであるが、作業の種類によって、グラップル、解体用フォーク等の他のエンドアタッチメントが取り付けられてもよい。
【0012】
また、上部旋回体3上にはキャブ10がキャブ昇降装置60を介して昇降可能に設けられている。以下では、このように昇降可能なキャブを「エレベータキャブ」と称する場合がある。なお、図1は、キャブ昇降装置60によりキャブ10が最高位置まで上昇した状態を示す。また、キャブ10は、ブーム4の側方(通常、左側)に配置されている。
【0013】
また、上部旋回体3には、カメラ80等が取り付けられる。カメラ80は作業機械100の周辺の画像を取得する撮像装置である。本実施形態では、カメラ80は上部旋回体3に取り付けられる1又は複数台のカメラである。
【0014】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。操作装置26は、パイロットラインを通じ、パイロットポンプが吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁のパイロットポートに供給する。但し、油圧アクチュエータの制御方式は、操作装置26の操作量に対応して駆動される構成であればよく、適宜の方式を用いて構成される。例えば、油圧アクチュエータの駆動量は、操作装置26の操作量を電圧等の別情報に変換するコントローラ30によって算出されてもよい。
【0015】
コントローラ30は、作業機械100を制御するための制御装置であり、例えば、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ等を備えたコンピュータで構成される。また、コントローラ30は、各種機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、各種機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
【0016】
次に、図2を参照してキャブ昇降装置60の詳細について説明する。図2は、本実施形態に係る作業機械のキャブ昇降装置を示す図である。
【0017】
図2に示すように、キャブ昇降装置60は、キャブ10を所定の姿勢(水平状態)に保つ平行リンク機構61と、平行リンク機構61を駆動してキャブ10を昇降駆動するキャブ昇降シリンダ62とを備える。
【0018】
平行リンク機構61は、上部旋回体3に立設された支持塔体63と、キャブ10を下側から支持するL形の架台64と、支持塔体63と架台64との間に回動自在に連結された上リンク69及び下リンク70とで構成される。具体的には、架台64はキャブ10の下部に一体的に設けられる。
【0019】
また、上リンク69は上端部が上端側ピン67を介して架台64に連結され、下端部が下端側ピン65を介して支持塔体63に連結される。また、下リンク70は上端部が上端側ピン68を介して架台64に連結され、下端部が下端側ピン66を介して支持塔体63に連結される。なお、図2においては、側面図ゆえ記載されていないが、上リンク69及び下リンク70は、左右一対で構成される。
【0020】
キャブ昇降シリンダ62は、上リンク69及び下リンク70の回動を制御する。具体的には、キャブ昇降シリンダ62の基端部は、支持塔体63の下部にシリンダピン71を介して回動自在に軸支されている。また、キャブ昇降シリンダ62のロッド62aの先端部は、左右一対の上リンク69間の連結部材(不図示)にロッドピン72を介して連結されている。
【0021】
この構成により、キャブ昇降装置60は、キャブ昇降シリンダ62に油圧ポンプからの作動油が供給されることで昇降駆動される。具体的には、キャブ昇降装置60は、キャブ昇降シリンダ62を伸縮動作させることにより、下端側ピン65、66を支点として上リンク69及び下リンク70に円弧を描かせながらキャブ10を上下動させることができる。なお、キャブ10は上下方向の移動に加えて前後方向にも移動する。
【0022】
また、キャブ昇降装置60は角度センサ73を有する。具体的には、角度センサ73は下端側ピン65の回動軸の一端に設けられ、上リンク69の初期位置からの回動角度を検出する。なお、初期位置とは、キャブ10が最低位置にある場合の位置である。角度センサ73は、キャブ10とエンドアタッチメント6との干渉を防止するために設けられている。
【0023】
具体的には、角度センサ73により検出された角度に基づいてキャブ10の位置が算出され、キャブ10とエンドアタッチメント6との前後方向の相対距離が所定距離よりも近づいたと判定された場合に干渉回避制御が行われる。干渉回避制御では、例えば、操作者の操作とは無関係にブーム4、アーム5等の動きが緩慢となるように制御される。
【0024】
なお、角度センサ73は、任意の角度センサでよく、例えば、ロータリポテンショメータ等が用いられる。また、角度センサ73は、下リンク70の下端側ピン66の回動軸の一端に設けられ、下リンク70の初期位置からの回動角度を検出してもよい。
【0025】
次に、図3を参照して、本実施形態の作業機械100の基本システムについて説明する。図3は、本実施形態に係る作業機械の基本システムの構成例を示す図である。
【0026】
図3では、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン、電気制御ラインがそれぞれ二重線、実線、破線、一点鎖線で示される。図4図5についても同様である。
【0027】
作業機械100の基本システムは、主に、エンジン11、ポンプレギュレータ13、メインポンプ14、コントロールポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、電磁弁27、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30、スイッチ31、スイッチ32、モータレギュレータ50等を含む。
【0028】
エンジン11は、作業機械100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作する内燃機関としてのディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びコントロールポンプ15の入力軸に連結されている。
【0029】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給するための装置であり、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0030】
ポンプレギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御するための装置である。本実施形態では、ポンプレギュレータ13は、例えば、メインポンプ14の吐出圧、コントローラ30からの指令電流等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節してメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0031】
コントロールポンプ15は、操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する装置であり、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
【0032】
コントロールバルブ17は、作業機械100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。
【0033】
具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14が吐出する作動油の流れを制御する複数の制御弁を含む。そして、コントロールバルブ17は、それら制御弁を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給する。それら制御弁は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。
【0034】
油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、エンドアタッチメントシリンダ9、走行用油圧モータ20、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。走行用油圧モータ20は、左走行用油圧モータ20L及び右走行用油圧モータ20Rを含む。
【0035】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、油圧式であり、パイロットラインを介して、コントロールポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給する。
【0036】
パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(以下、「パイロット圧」とする。)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26を構成するレバー又はペダルの操作方向及び操作量に応じた圧力である。但し、操作装置26は電気式であってもよい。
【0037】
電磁弁27は、コントロールポンプ15とモータレギュレータ50との間の管路C0に配置される。本実施形態では、電磁弁27は、管路C0の連通・遮断を切り換える電磁切換弁であり、コントローラ30からの指令に応じて動作する。
【0038】
減圧弁33は、コントロールポンプ15と操作装置26及び電磁弁27との間の管路に配置される。本実施形態では、減圧弁33は、パイロット圧を低減するものであり、コントローラ30からの指令に応じて動作する。
【0039】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0040】
操作圧センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、例えば、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26を構成するレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出する圧力センサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0041】
操作装置26の操作内容は、操作角センサ、加速度センサ、角速度センサ、レゾルバ、電圧計、電流計等、圧力センサ以外の他の装置の出力を用いて検出されてもよい。すなわち、操作装置26の操作量は、操作圧ばかりでなく、操作角度、操作加速度の2回積分値、操作角速度の積分値、電圧値、電流値等で表されてもよい。
【0042】
コントローラ30は、作業機械100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、例えば、CPU、揮発性記憶装置、不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成される。コントローラ30は、例えば、走行モード制御部300等の各種機能要素に対応するプログラムをCPUに実行させる。
【0043】
スイッチ31は、モータレギュレータ50の動作モード(走行モード)を切り換えるためのスイッチである。本実施形態では、スイッチ31は、タッチパネル付きの車載ディスプレイに表示されるソフトウェアスイッチである。スイッチ31は、キャブ10内に設置されたハードウェアスイッチであってもよい。
【0044】
スイッチ32は、キャブ10を上昇させる動作と、下降させる動作とを切り換えるためのスイッチである。スイッチ32は、例えば、キャブ10内に設置されたハードウェアスイッチであってもよく、操作に応じてキャブ10の上昇と下降とを切り換える。また、本実施形態では、スイッチ32が操作されない状態では、キャブ10の位置は移動しない。
【0045】
モータレギュレータ50は、走行用油圧モータ20のモータ容積を制御する。本実施形態では、モータレギュレータ50は、左モータレギュレータ50Lと右モータレギュレータ50Rを含む。左モータレギュレータ50Lは、電磁弁27を通じて供給される作動油による制御圧に応じて左走行用油圧モータ20Lの斜板傾転角を調節することで左走行用油圧モータ20Lのモータ容積を制御する。右モータレギュレータ50Rについても同様である。
【0046】
具体的には、左モータレギュレータ50Lは、左走行用油圧モータ20Lの斜板傾転角を2段階で切り換えることで、左走行用油圧モータ20Lのモータ容積を高回転設定と低回転設定の2段階で切り換えることができる。
【0047】
低回転設定は、モータ容積を大きくすることで実現される。この場合、左走行用油圧モータ20Lは低回転高トルクで動作する。高回転設定は、モータ容積を小さくすることで実現される。この場合、左走行用油圧モータ20Lは高回転低トルクで動作する。右モータレギュレータ50Rについても同様である。
【0048】
コントローラ30は、例えば、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、スイッチ31等の出力に基づいて後述する各種の処理を実行する。コントローラ30の機能の詳細は後述する。
【0049】
次に図4を参照し、作業機械100に搭載される油圧システムについて説明する。図4は、図1の作業機械に搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。図4の油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rから、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。メインポンプ14L、14Rは、図3のメインポンプ14に対応する。
【0050】
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171L~175Lを通る作動油ラインである。センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171R~175Rを通る作動油ラインである。
【0051】
制御弁171Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行用油圧モータ20Lへ供給し、且つ、左走行用油圧モータ20Lが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0052】
制御弁171Rは、走行直進弁としてのスプール弁である。制御弁171Rは、下部走行体1の直進性を高めるべくメインポンプ14Lから左走行用油圧モータ20L及び右走行用油圧モータ20Rのそれぞれに作動油が供給されるように作動油の流れを切り換える。具体的には、走行用油圧モータ20と他の何れかの油圧アクチュエータとが同時に操作された場合、メインポンプ14Lが左走行用油圧モータ20L及び右走行用油圧モータ20Rの双方に作動油を供給できるように制御弁171Rは切り換えられる。他の油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合には、メインポンプ14Lが左走行用油圧モータ20Lに作動油を供給でき、且つ、メインポンプ14Rが右走行用油圧モータ20Rに作動油を供給できるように、制御弁171Rは切り換えられる。
【0053】
制御弁172Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油をオプションの油圧アクチュエータへ供給し、且つ、オプションの油圧アクチュエータが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。オプションの油圧アクチュエータは、例えば、グラップル開閉シリンダである。
【0054】
制御弁172Rは、メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行用油圧モータ20Rへ供給し、且つ、右走行用油圧モータ20Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0055】
制御弁173Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0056】
制御弁173Rは、メインポンプ14Rが吐出する作動油をエンドアタッチメントシリンダ9へ供給し、且つ、エンドアタッチメントシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
【0057】
制御弁174L、174Rは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。本実施形態では、制御弁174Lは、ブーム4の上げ操作が行われた場合にのみ作動し、ブーム4の下げ操作が行われた場合には作動しない。
【0058】
制御弁175L、175Rは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0059】
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Lは、制御弁171L~174Lの何れかによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Rは、制御弁172R~174Rの何れかによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0060】
ポンプレギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。ポンプレギュレータ13L、13Rは、図3のポンプレギュレータ13に対応する。ポンプレギュレータ13L、13Rは、例えば、メインポンプ14L、14Rの吐出圧が増大した場合にメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
【0061】
左走行操作装置26L及び右走行操作装置26Rは操作装置26の一例である。本実施形態では、走行操作レバーと走行操作ペダルの組み合わせで構成されている。
【0062】
左走行操作装置26Lは、左走行用油圧モータ20Lを操作するために用いられる。左走行操作装置26Lは、コントロールポンプ15が吐出する作動油を利用して、操作量に応じたパイロット圧を制御弁171Lのパイロットポートに作用させる。具体的には、左走行操作装置26Lは、前進方向に操作された場合に制御弁171Lの左側パイロットポートにパイロット圧を作用させ、後進方向に操作された場合に制御弁171Lの右側パイロットポートにパイロット圧を作用させる。
【0063】
右走行操作装置26Rは、右走行用油圧モータ20Rを操作するために用いられる。右走行操作装置26Rは、コントロールポンプ15が吐出する作動油を利用して、操作量に応じたパイロット圧を制御弁172Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、右走行操作装置26Rは、前進方向に操作された場合に、制御弁172Rの右側パイロットポートにパイロット圧を作用させ、後進方向に操作された場合に制御弁172Rの左側パイロットポートにパイロット圧を作用させる。
【0064】
電磁弁27は、コントローラ30からの連通指令を受けているときにコントロールポンプ15とモータレギュレータ50とを連通させる。この場合、モータレギュレータ50は強制固定モードで動作する。一方、電磁弁27は、コントローラ30からの連通指令を受けていないときにコントロールポンプ15とモータレギュレータ50との連通を遮断する。この場合、モータレギュレータ50は可変モードで動作する。
【0065】
減圧弁33は、コントローラ30からの指令に応じて、制御弁171L、172Rのそれぞれが有するスプールのストローク量(移動量)を制御する。本実施の形態において、走行用油圧モータ20、メインポンプ14、エンジン11等による流量低減処理を行う場合には、減圧弁33は必ずしも必要はない。
【0066】
吐出圧センサ28L、28Rは、図3の吐出圧センサ28の一例である。吐出圧センサ28Lは、メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rは、メインポンプ14Rの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0067】
操作圧センサ29L、29Rは、図3の操作圧センサ29の一例である。操作圧センサ29Lは、左走行操作装置26Lに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作圧センサ29Rは、右走行操作装置26Rに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、操作方向、操作量(操作角度)等である。
【0068】
ブーム操作レバー、アーム操作レバー、バケット操作レバー、及び、旋回操作レバー(何れも図示せず。)はそれぞれ、ブーム4の上下、アーム5の開閉、エンドアタッチメント6の開閉、及び、上部旋回体3の旋回を操作するための操作装置である。これらの操作装置は、左走行操作装置26Lと同様に、コントロールポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じたパイロット圧を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁の左右何れかのパイロットポートに作用させる。また、これらの操作装置のそれぞれに対する操作者の操作内容は、操作圧センサ29Lと同様に、対応する操作圧センサによって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
【0069】
ここで、図4の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御(以下、「ネガコン制御」とする。)について説明する。
【0070】
センターバイパス管路40L、40Rは、最も下流にある制御弁175L、175Rのそれぞれと作動油タンクとの間にネガティブコントロール絞り18L、18Rを備える。メインポンプ14L、14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、ポンプレギュレータ13L、13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」とする。)を発生させる。
【0071】
ネガコン圧センサ19L、19Rは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生させたネガコン圧を検出するセンサである。本実施形態では、ネガコン圧センサ19L、19Rは、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0072】
コントローラ30は、ネガコン圧に応じた指令をポンプレギュレータ13L、13Rに対して出力する。ポンプレギュレータ13L、13Rは、指令に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。具体的には、ポンプレギュレータ13L、13Rは、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させる。
【0073】
油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路40L、40Rを通ってネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、ポンプレギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンターバイパス管路40L、40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0074】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、ポンプレギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。
【0075】
上述のような構成により、図4の油圧システムは、油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合には、メインポンプ14L、14Rにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路40L、40Rで発生させるポンピングロスを含む。油圧アクチュエータが操作されている場合には、メインポンプ14L、14Rから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できるようにする。
【0076】
次に、図5を参照し、モータレギュレータ50について説明する。図5は、モータレギュレータに関連する油圧回路の構成例を示す図である。モータレギュレータ50は、左モータレギュレータ50L及び右モータレギュレータ50Rを含む。以下では、左モータレギュレータ50Lについて説明する。但し、この説明は、右モータレギュレータ50Rにも適用される。
【0077】
左モータレギュレータ50Lは、主に、第1シリンダ52L、第2シリンダ53L、斜板リンク機構54L、バネ55L等を含み、設定切換弁51Lと接続されている。
【0078】
設定切換弁51Lは、左走行用油圧モータ20Lのモータ容積を高回転設定と低回転設定の2段階で切り換えるための弁である。設定切換弁51Lの第1ポート51aLは、電磁弁27の二次側に接続され、設定切換弁51Lの第2ポート51bLは、シャトル弁56Lに接続されている。
【0079】
シャトル弁56Lは、管路C1L及び管路C2Lのうちの圧力が高いほうと設定切換弁51Lの第2ポート51bLとを接続するように構成されている。管路C1Lは、左走行用油圧モータ20Lの第1ポート20aLと制御弁171Lとを接続している。管路C2Lは、左走行用油圧モータ20Lの第2ポート20bLと制御弁171Lとを接続している。
【0080】
設定切換弁51Lは、第1弁位置と第2弁位置を有する。第1弁位置は低回転設定に対応し、第2弁位置は高回転設定に対応する。図5は、設定切換弁51Lが第1弁位置にあるときの状態を示している。
【0081】
第1弁位置では、設定切換弁51Lは、第1シリンダ52L及び第2シリンダ53Lのそれぞれと作動油タンクとを連通させる。第2弁位置では、設定切換弁51Lは、第1シリンダ52Lと管路C1Lとを連通させ、且つ、第2シリンダ53Lと管路C2Lとを連通させる。
【0082】
第1シリンダ52L及び第2シリンダ53Lは、斜板リンク機構54Lを動作させる油圧アクチュエータである。第1シリンダ52L、第2シリンダ53Lは、設定切換弁51Lを介して作動油タンクに接続されると、シリンダ内の作動油を作動油タンクに排出して収縮し、斜板傾転角が大きくなる方向に斜板リンク機構54Lを動作させる。
【0083】
その結果、本実施形態では、左走行用油圧モータ20Lのモータ容積は最大となる。一方、第1シリンダ52L、第2シリンダ53Lは、設定切換弁51Lを介して管路C1L、C2Lに接続されると、シリンダ内に作動油を受け入れて伸張し、斜板傾転角が小さくなる方向に斜板リンク機構54Lを動作させる。その結果、本実施形態では、左走行用油圧モータ20Lのモータ容積は最小となる。
【0084】
バネ55Lは、斜板傾転角が大きくなる方向に斜板リンク機構54Lを付勢する。伸張状態にある第1シリンダ52L及び第2シリンダ53Lは、設定切換弁51Lを介して作動油タンクに接続されると、バネ55Lの復元力により、シリンダ内の作動油を排出しながら収縮する。その結果、斜板リンク機構54Lは、斜板傾転角が大きくなる方向に動き、左走行用油圧モータ20Lのモータ容積は最小となる。
【0085】
次に、図6を参照して、本実施形態のコントローラ30の機能構成について説明する。図6は、コントローラの機能構成を説明する図である。
【0086】
図6に示す各部の機能は、コントローラ30の有するCPUが、ROM等の記憶装置に格納されたプログラムを読み出して実行することで実現される。
【0087】
本実施形態のコントローラ30は、位置検知部310、操作検知部320、走行モード制御部330、吐出量制御部340、回転数制御部350、ストローク量制御部360、表示制御部370を有する。
【0088】
位置検知部310は、キャブ10の位置を検知する。キャブ10の高さとは、キャブ10の下降が完了した状態におけるキャブの高さを基準としてもよい。
【0089】
具体的には、本実施形態の位置検知部310は、角度センサ73の出力に基づき、キャブ10の高さを検知してもよい。
【0090】
また、本実施形態の位置検知部310は、スイッチ32に対する操作に基づき、キャブ10に位置を検知してもよい。位置検知部310は、例えば、スイッチ32から入力されるキャブ10の上昇指示が継続する時間に応じて、キャブ10の位置(高さ)を検知してもよい。
【0091】
操作検知部320は、作業機械100に対して指示された操作を検知する。具体的には、操作検知部320は、スイッチ32に対する操作に基づき、キャブ10を上昇させる操作と、キャブ10を下降させる操作とを検知する。また、操作検知部320は、操作装置26に対する操作に基づき、作業機械100を走行させる操作を検知する。
【0092】
走行モード制御部330は、モータレギュレータ50の走行モードを制御する。本実施形態では、走行モードは強制固定モード(低速モード)及び可変モード(高速モード)を含む。強制固定モードでは、走行用油圧モータ20のモータ容積は強制的に低回転設定に固定されている。可変モードでは、モータ容積は低回転設定と高回転設定で切り換え可能な状態となっている。走行モードは手動固定モードを含んでいてもよい。手動固定モードは、例えば、スイッチ31を用いて設定される走行モードである。手動固定モードでは、モータ容積は、強制固定モードの場合と同様に低回転設定に固定されている。
【0093】
走行モード制御部330は、例えば、所定の条件が満たされた場合に電磁弁27に指令を出してコントロールポンプ15とモータレギュレータ50とを連通させる。コントロールポンプ15とモータレギュレータ50とが連通すると、モータレギュレータ50は強制固定モードで動作する。この場合、左モータレギュレータ50Lは左走行用油圧モータ20Lのモータ容積を低回転設定に固定し、右モータレギュレータ50Rは右走行用油圧モータ20Rのモータ容積を低回転設定に固定する。
【0094】
また、本実施形態の走行モード制御部330は、位置検知部310により検知されたキャブ10の位置が、所定の位置よりも高い位置である状態において、操作検知部320により、走行を指示する操作が検知された場合に、走行モード低速モードに固定する。
【0095】
なお、所定の高さを示す値は、予め、コントローラ30の有する記憶装置に格納されていてもよい。また、本実施形態では、角度センサ73により検出される角度が所定の角度以上となった場合に、キャブ10の位置が、所定の位置よりも高い位置にあると判定してもよい。
【0096】
本実施形態の走行モード制御部330は、位置検知部310により検知されたキャブ10の位置が、所定の位置の高さ以下になった場合に、走行モードを低速モードに固定した状態を解除する。つまり、作業機械100では、走行モードを、高速モードと低速モードの何れかに設定できるようになる。
【0097】
本実施形態では、このように、キャブ10が所定の高さより高い位置まで上昇した状態において、作業機械100が走行する場合には、走行モードを低速に固定(低速に維持)する。
【0098】
したがって、本実施形態によれば、キャブ10を上昇させた状態で作業機械100が走行した場合における振動を低減できる。
【0099】
このため、本実施形態によれば、走行時の揺れがキャブ昇降装置60等の構造物に与えるダメージを低減でき、構造物の疲労寿命に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0100】
また、本実施形態では、キャブ10を上昇させた状態においては低速で走行させるため、走行時のキャブ10の揺れが大きくなることを抑制できる。したがって、本実施形態によれば、揺れに起因する操作者の疲労や不快感を抑えることができ、乗り心地を向上させることができる。
【0101】
また、本実施形態の吐出量制御部340は、ポンプレギュレータ13を制御することで、メインポンプ14からの作動油の吐出量を制御してもよい。また、本実施形態の回転数制御部350は、エンジン11の回転数を制御する。本実施形態のストローク量制御部360は、減圧弁33に指令を出して、制御弁171L、172Rのそれぞれが有するスプールのストローク量を制限してもよい。
【0102】
本実施形態の吐出量制御部340、回転数制御部350、ストローク量制御部360のそれぞれは、走行モード制御部330による、走行モードを低速モードとする処理に代わって、作業機械100の走行速度を低速に固定することができる。
【0103】
例えば、吐出量制御部340は、キャブ10の位置が、所定の位置よりも高い位置である状態において走行を指示する操作が検知された場合に、作業機械100の走行速度が低速に固定されるように、メインポンプ14からの作動油の吐出量を制限してもよい。
【0104】
言い換えれば、吐出量制御部340は、キャブ10が所定の位置よりも高い位置である状態において走行を指示する操作が検知された場合に、メインポンプ14の流量を、制限を行わないときの流量に対して、所定の割合以下となるように、制限してもよい。
【0105】
吐出量制御部340による吐出量の制限は、キャブ10の位置が所定の位置の高さ以下となったとき、解除される。
【0106】
このようにすれば、走行モード制御部330により、走行モードを低速モードとしたときと同様の効果を得ることができる。
【0107】
また、回転数制御部350は、キャブ10の所定の位置よりも高い位置である状態において走行を指示する操作が検知された場合に、作業機械100の走行速度が低速に固定されるように、エンジン11の回転数を制限してもよい。
【0108】
言い換えれば、回転数制御部350は、キャブ10が所定の位置よりも高い位置である状態において走行を指示する操作が検知された場合に、エンジン11の回転数を、制限を行わないときの回転数に対して、所定の割合以下となるように、制限してもよい。
【0109】
回転数制御部350による回転数の制限は、キャブ10の位置が所定の位置の高さ以下となったとき、解除される。
【0110】
このようにすれば、走行モード制御部330により、走行モードを低速モードとしたときと同様の効果を得ることができる。
【0111】
また、ストローク量制御部360は、キャブ10が所定の位置よりも高い位置である状態において走行を指示する操作が検知された場合に、減圧弁33に指令を出して、作業機械100の走行速度が低速に固定されるように、制御弁171L、172Rのそれぞれが有するスプールのストローク量を制限する。
【0112】
言い換えれば、ストローク量制御部360は、キャブ10が所定の位置よりも高い位置である状態において走行を指示する操作が検知された場合に、制御弁171L、172Rのそれぞれが有するスプールのストローク量を、制限を行わないときのストローク量に対して、所定の割合以下となるように、制限してもよい。
【0113】
ストローク量制御部360によるストローク量の制限は、キャブ10の位置が所定の位置の高さ以下となったとき、解除される。
【0114】
このようにすれば、走行モード制御部330により、走行モードを低速モードとしたときと同様の効果を得ることができる。
【0115】
なお、本実施形態では、作業機械100の走行速度を低速に固定するための制御を、走行モード制御部330、吐出量制御部340、回転数制御部350、ストローク量制御部360の何れかで行えばよい。また、この制御に用いる制御部は、予め設定されていてもよいし、作業機械100の状態に応じてコントローラ30が決定してもよい。
【0116】
本実施形態の表示制御部370は、キャブ10内に設けられた表示装置35に対する表示を制御する。
【0117】
具体的には、本実施形態の表示制御部370は、走行モード制御部330により、走行モードが低速モードに固定された場合に、低速モードに固定された状態であることを示すメッセージを表示装置35に表示させる。
【0118】
以下に、図7を参照して、作業機械100の表示装置35の表示例について説明する。図7は、表示装置に表示される出力画像の一例を示す図である。
【0119】
図7に示すように、表示装置35に表示される表示画面Gxにおいて、時刻表示領域411、回転数モード表示領域412、走行モード表示領域413、アタッチメント表示領域414、エンジン制御状態表示領域415のそれぞれは、作業機械100の設定状態を表示する設定状態表示領域の例である。尿素水残量表示領域416、燃料残量表示領域417、冷却水温表示領域418、エンジン稼働時間表示領域419、作動油温表示領域420のそれぞれは、作業機械100の運転状態を表示する運転状態表示領域の例である。
【0120】
また、更に、表示画面Gxでは、カメラ画像表示領域430が左右2つに分割され、左側カメラ画像表示領域431に、後方監視カメラ80Bの撮像画像が表示され、右側カメラ画像表示領域432に、右側方監視カメラ80Rの撮像画像が表示されている。また、図7では、表示画面Gxの上側領域に、各種運転情報が撮像画像に重ねて表示されている。
【0121】
各部に表示される画像は、コントローラ30から送信される各種データ及びカメラ80から送信されるカメラ画像から生成される。
【0122】
なお、各カメラは、撮影される画像データに、上部旋回体3のカバー3aの一部が含まれるように設置されている。表示される画像にカバー3aの一部が含まれることで、運転者は、カメラ画像表示領域430に表示される物体と作業機械100との間の距離感を把握し易くなる。
【0123】
時刻表示領域411は、現在の時刻を表示する。図7に示す例では、デジタル表示が採用され、現在時刻(10時5分)が示されている。
【0124】
回転数モード表示領域412は、キャブ10内に設けられたエンジン回転数調整ダイヤル(図示せず)によって設定されている回転数モードを作業機械の稼働情報として画像表示する。回転数モードは、SPモード、Hモード、Aモード及びアイドリングモードの4つを含む。図7に示す例では、SPモードを表す記号「SP」が表示されている。
【0125】
エンジン回転数調整ダイヤルは、SPモード、Hモード、Aモード、及びアイドリングモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるようにする。
【0126】
SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。
【0127】
Aモードは、燃費を優先させながら低騒音で作業機械を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。
【0128】
アイドリングモードは、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。そして、エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤルで設定された回転数モードのエンジン回転数で一定に回転数制御される。
【0129】
走行モード表示領域413は走行モードを作業機械100の稼働情報として表示する。走行モードは、可変容量モータを用いた走行用油圧モータの設定状態を表す。
【0130】
例えば、走行モードは、低速モード及び高速モードを有し、低速モードでは「亀」を象ったマークが表示され、高速モードでは「兎」を象ったマークが表示される。図7に示す例では、「亀」を象ったマークが表示されており、操作者は低速モードが設定されていることを認識できる。
【0131】
アタッチメント表示領域414は、装着されているアタッチメントを表す画像を作業機械の稼働情報として表示する。
【0132】
作業機械100には、バケット、削岩機、グラップル、リフティングマグネット等の様々なエンドアタッチメント6が装着される。アタッチメント表示領域414は、例えば、これらのエンドアタッチメントを象ったマーク及びアタッチメントに対応する番号を表示する。
【0133】
図7に示す例では、エンドアタッチメント6としてバケットが装着されており、図7に示すように、アタッチメント表示領域414は空欄となっている。エンドアタッチメントとして削岩機が装着されている場合には、例えば、アタッチメント表示領域414には削岩機を象ったマークが、削岩機の出力の大きさを示す数字と共に表示される。
【0134】
エンジン制御状態表示領域415はエンジン11の制御状態を作業機械100の稼働情報として表示する。図7に示す例では、エンジン11の制御状態として「自動減速・自動停止モード」が選択されている。「自動減速・自動停止モード」は、非操作状態の継続時間に応じて、エンジン回転数を自動的に低減し、さらにはエンジン11を自動的に停止させる制御状態を意味する。その他、エンジン11の制御状態には、「自動減速モード」、「自動停止モード」、「手動減速モード」等がある。
【0135】
尿素水残量表示領域416は、尿素水タンクに貯蔵されている尿素水の残量状態を作業機械100の稼働情報として画像表示する。図7に示す例では、現在の尿素水の残量状態を表すバーゲージが表示されている。尿素水の残量は、尿素水タンクに設けられている尿素水残量センサが出力するデータに基づいて表示される。
【0136】
燃料残量表示領域417は、燃料タンクに貯蔵されている燃料の残量状態を稼働情報として表示する。図7に示す例では、現在の燃料の残量状態を表すバーゲージが表示されている。燃料の残量は、燃料タンクに設けられている燃料残量センサが出力するデータに基づいて表示される。
【0137】
冷却水温表示領域418は、エンジン冷却水の温度状態を作業機械の稼働情報として表示する。図7に示す例では、エンジン冷却水の温度状態を表すバーゲージが表示されている。エンジン冷却水の温度は、エンジン11に設けられている水温センサが出力するデータに基づいて表示される。
【0138】
エンジン稼働時間表示領域419は、エンジン11の累積稼働時間を作業機械100の稼働情報として表示する。図7に示す例では、操作者によりカウントがリスタートされてからの稼働時間の累積が、単位「hr(時間)」と共に表示されている。エンジン稼働時間表示領域419には、作業機械100の製造後の全期間の生涯稼働時間又は操作者によりカウントがリスタートされてからの区間稼働時間が表示される。作動油温表示領域420は、作動油タンク内の作動油の温度状態を表示する領域である。図7に示す例では、作動油の温度状態を表すバーグラフが表示されている。なお、作動油の温度は、油温センサが出力するデータに基づいて表示される。
【0139】
また、カメラ画像表示領域430には、表示中の撮像画像を撮像した撮像装置80の向きを表す撮像装置アイコン41nが表示されている。撮像装置アイコン41nは、作業機械100の上面視の形状を表す作業機械アイコン41naと、表示中の撮像画像を撮像した撮像装置80の向きを表す帯状の方向表示アイコン41nbとで構成されている。
【0140】
左側カメラ画像表示領域431には、撮像装置アイコン41n1が表示されており、作業機械(ショベル)アイコン41n1aの下部に方向表示アイコン41n1bが表示され、後方監視カメラ80Bによって撮像された撮像画像が表示されていることが示されている。また、右側カメラ画像表示領域432には、撮像装置アイコン41n2が表示されており、作業機械アイコン41n2aの右側に方向表示アイコン41n2bが表示され、右側方監視カメラ80Rによって撮像された撮像画像が表示されていることが示されている。
【0141】
なお、左側カメラ画像表示領域431に左側方監視カメラ80Lによって撮像された撮像画像が表示され、右側カメラ画像表示領域432に後方監視カメラ80Bによって撮像された撮像画像が表示されてもよい。また、カメラ画像表示領域430が3分割され、左側領域に左側方監視カメラ80Lの撮像画像、中央領域に後方監視カメラ80Bの撮像画像、右側領域に右側方監視カメラ80Rの撮像画像が表示されてもよい。
【0142】
さらに、カメラ画像表示領域430には、左側方監視カメラ80L、右側方監視カメラ80R、及び後方監視カメラ80Bの少なくとも2つによって撮像された複数のカメラ画像の合成画像が表示されてもよい。合成画像は、例えば、俯瞰画像であってもよい。
【0143】
操作者は、例えばキャブ10内に設けられている画像切替スイッチを押下することで、カメラ画像表示領域430に表示する画像を他のカメラにより撮影された画像等に切り替えることができる。
【0144】
作業機械100にカメラ80が設けられていない場合には、カメラ画像表示領域430の代わりに、異なる情報が表示されてもよい。
【0145】
また、表示画面Gxにおいて、メッセージ表示領域440は、作業機械100の走行速度が低速に固定された状態であることを示すメッセージを表示する。
【0146】
図7に示す例では、「低速に固定中です」というメッセージが表示される。なお、本実施形態では、低速に固定する制御が、走行モード制御部330によって行われている場合には、「低速モードに固定中です」というメッセージを表示させてもよい。
【0147】
本実施形態では、このようなメッセージを表示させることで、操作者に、作業機械100の走行速度が低速に固定された状態であることを認識させることができる。
【0148】
なお、上述した実施形態では、エレベータキャブを有する作業機械であれば、どのような作業機械にも適用することができる。
【0149】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0150】
11 エンジン
30 コントローラ
32 スイッチ
35 表示装置
100 作業機械
310 位置検知部
320 操作検知部
330 走行モード制御部
340 吐出量制御部
350 回転数制御部
360 ストローク量制御部
370 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7