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特許7440330平型導体用のクランプ、ワイヤハーネス、及び、組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】平型導体用のクランプ、ワイヤハーネス、及び、組立体
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20240220BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20240220BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240220BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240220BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20240220BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H02G3/30
F16B19/00 E
F16B19/00 R
B60R16/02 623B
H01B7/00 301
H01B7/40 307Z
H01B7/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020073042
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021170874
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-06-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】長西 幸成
(72)【発明者】
【氏名】若林 五男
(72)【発明者】
【氏名】高田 和昇
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-85396(JP,A)
【文献】特開2018-93570(JP,A)
【文献】実開平7-11831(JP,U)
【文献】実開平4-106585(JP,U)
【文献】特開2013-41700(JP,A)
【文献】特開2005-287276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
F16B 19/00
B60R 16/02
H01B 7/00
H01B 7/40
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の導体を有する平型導体に装着されて前記平型導体を所定の取付対象に取り付ける際に用いられる、平型導体用のクランプであって、
前記取付対象に係合することになるクリップ部と、
前記平型導体を保持することになる本体部と、を備え、
前記クリップ部及び前記本体部は、
互いに向かい合う向きに突出する複数の第1突部及び複数の第2突部を有し、前記複数の第1突部及び前記複数の第2突部同士が噛み合うことによって当該クリップ部と当該本体部との前記平型導体の軸方向の一方向き及び他方向きの双方における相対移動が規制されるロック状態と、前記軸方向の一方向き及び他方向きの双方における前記相対移動が許容されるアンロック状態と、のうちの前記アンロック状態から前記ロック状態への切り替えが可能に構成され、
前記クリップ部及び前記本体部は、
前記ロック状態から前記アンロック状態への切り替えを規制するように構成され、
前記複数の第1突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、前記複数の第2突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、
前記アンロック状態では、前記複数の第1突部の前記先端部と、前記複数の第2突部の前記先端部とが、前記平型導体の前記軸方向に直交する方向において、所定間隔だけオーバラップする、
平型導体用のクランプ。
【請求項2】
平板状の導体を有する平型導体に装着されて前記平型導体を所定の取付対象に取り付ける際に用いられる、平型導体用のクランプであって、
前記取付対象に係合することになるクリップ部と、
前記平型導体を保持することになる本体部と、を備え、
前記クリップ部及び前記本体部は、
互いに向かい合う向きに突出する複数の第1突部及び複数の第2突部を有し、前記複数の第1突部及び前記複数の第2突部同士が噛み合うことによって当該クリップ部と当該本体部との前記平型導体の軸方向の一方向き及び他方向きの双方における相対移動が規制されるロック状態と、前記軸方向の一方向き及び他方向きの双方における前記相対移動が許容されるアンロック状態と、のうちの前記アンロック状態から前記ロック状態への切り替えが可能に構成され、
前記クリップ部及び前記本体部は、
前記アンロック状態において、前記第1突部及び前記第2突部の先端同士が干渉することによって当該本体部に対して当該クリップ部が位置決めされ、
前記複数の第1突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、前記複数の第2突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、
前記アンロック状態では、前記複数の第1突部の前記先端部と、前記複数の第2突部の前記先端部とが、前記平型導体の前記軸方向に直交する方向において、所定間隔だけオーバラップする、
平型導体用のクランプ。
【請求項3】
平板状の導体を有する平型導体と、前記平型導体に装着されるクランプと、前記平型導体を所定の取付対象に対して取り付ける際に前記平型導体の基準位置を定める位置決め構造と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記クランプは、
前記取付対象に係合することになるクリップ部と、
前記平型導体を保持することになる本体部と、を備え、
前記クリップ部及び前記本体部は、
互いに向かい合う向きに突出する複数の第1突部及び複数の第2突部を有し、前記複数の第1突部及び前記複数の第2突部同士が噛み合うことによって当該クリップ部と当該本体部との前記平型導体の軸方向の一方向き及び他方向きの双方における相対移動が規制されるロック状態と、前記軸方向の一方向き及び他方向きの双方における前記相対移動が許容されるアンロック状態と、のうちの前記アンロック状態から前記ロック状態への切り替えが可能に構成され、
前記複数の第1突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、前記複数の第2突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、
前記アンロック状態では、前記複数の第1突部の前記先端部と、前記複数の第2突部の前記先端部とが、前記平型導体の前記軸方向に直交する方向において、所定間隔だけオーバラップする、
ワイヤハーネス。
【請求項4】
平板状の導体を有する平型導体と、前記平型導体に装着される請求項1又は請求項2に記載のクランプと、前記クランプを用いて前記平型導体が取り付けられる取付対象と、を備える組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平型導体を所定の取付対象(例えば、自動車の車体など)に取り付ける際に用いられる平型導体用のクランプ、そのクランプを用いたワイヤハーネス、及び、そのクランプを用いた組立体、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の電線が束ねられた電線束を自動車の車体などに固定する際に用いられるクランプが提案されている。例えば、従来のクランプの一つは、車体などに設けられる係止孔に係止されることになるクリップ部材と、クリップ部材が取り付けられる帯状の支持バンドと、を備えている。この従来のクランプは、電線束の軸方向に支持バンドを沿わせるように配置された後、粘着テープ等を用いて支持バンドを電線束に固定することで、電線束に固定されるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-085396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のクランプが固定される電線束は、一般に、複数の電線が束ねられることから、容易には湾曲が困難な程度の剛性を有する。そのため、例えば、複数の従来のクランプを電線束に固定した上で電線束を車体などに固定すれば、通常、クランプ同士の間(即ち、車体などに対する電線束の固定点同士の間)では電線束がほぼ直線状に延びることになり、電線束に大きな撓み等の変形が生じることはない。
【0005】
これに対し、平板状の導体を絶縁被覆で覆った平型導体が上述した電線束に代えて用いられる場合、平型導体の剛性は一般に上述した電線束の剛性よりも低いため、従来のクランプをそのまま用いると、平型導体を車体などに固定した後、クランプ同士の間において平型導体に撓み等の変形が生じる可能性がある。このような変形が生じると、平型導体が配索経路から外れて周辺の機器に干渉することや、車両の走行時に平型導体が車体などに接触して異音が生じること等が生じる場合がある。このような周辺の機器との干渉や異音の発生は、出来る限り抑制されることが望ましい。
【0006】
本発明の目的の一つは、平型導体を所定の取付対象に適正に取り付け可能なクランプ、そのようなクランプを用いたワイヤハーネス、及び、そのようなクランプを用いて平型導体が取付対象に固定された組立体、の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る平型導体用のクランプ、ワイヤハーネス、及び、組立体は、下記[1]~[4]を特徴としている。
[1]
平板状の導体を有する平型導体に装着されて前記平型導体を所定の取付対象に取り付ける際に用いられる、平型導体用のクランプであって、
前記取付対象に係合することになるクリップ部と、
前記平型導体を保持することになる本体部と、を備え、
前記クリップ部及び前記本体部は、
互いに向かい合う向きに突出する複数の第1突部及び複数の第2突部を有し、前記複数の第1突部及び前記複数の第2突部同士が噛み合うことによって当該クリップ部と当該本体部との前記平型導体の軸方向の一方向き及び他方向きの双方における相対移動が規制されるロック状態と、前記軸方向の一方向き及び他方向きの双方における前記相対移動が許容されるアンロック状態と、のうちの前記アンロック状態から前記ロック状態への切り替えが可能に構成され、
前記クリップ部及び前記本体部は、
前記ロック状態から前記アンロック状態への切り替えを規制するように構成され、
前記複数の第1突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、前記複数の第2突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、
前記アンロック状態では、前記複数の第1突部の前記先端部と、前記複数の第2突部の前記先端部とが、前記平型導体の前記軸方向に直交する方向において、所定間隔だけオーバラップする、
平型導体用のクランプであること。
[2]
平板状の導体を有する平型導体に装着されて前記平型導体を所定の取付対象に取り付ける際に用いられる、平型導体用のクランプであって、
前記取付対象に係合することになるクリップ部と、
前記平型導体を保持することになる本体部と、を備え、
前記クリップ部及び前記本体部は、
互いに向かい合う向きに突出する複数の第1突部及び複数の第2突部を有し、前記複数の第1突部及び前記複数の第2突部同士が噛み合うことによって当該クリップ部と当該本体部との前記平型導体の軸方向の一方向き及び他方向きの双方における相対移動が規制されるロック状態と、前記軸方向の一方向き及び他方向きの双方における前記相対移動が許容されるアンロック状態と、のうちの前記アンロック状態から前記ロック状態への切り替えが可能に構成され、
前記クリップ部及び前記本体部は、
前記アンロック状態において、前記第1突部及び前記第2突部の先端同士が干渉することによって当該本体部に対して当該クリップ部が位置決めされ、
前記複数の第1突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、前記複数の第2突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、
前記アンロック状態では、前記複数の第1突部の前記先端部と、前記複数の第2突部の前記先端部とが、前記平型導体の前記軸方向に直交する方向において、所定間隔だけオーバラップする、
平型導体用のクランプであること。
[3]
平板状の導体を有する平型導体と、前記平型導体に装着されるクランプと、前記平型導体を所定の取付対象に対して取り付ける際に前記平型導体の基準位置を定める位置決め構造と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記クランプは、
前記取付対象に係合することになるクリップ部と、
前記平型導体を保持することになる本体部と、を備え、
前記クリップ部及び前記本体部は、
互いに向かい合う向きに突出する複数の第1突部及び複数の第2突部を有し、前記複数の第1突部及び前記複数の第2突部同士が噛み合うことによって当該クリップ部と当該本体部との前記平型導体の軸方向の一方向き及び他方向きの双方における相対移動が規制されるロック状態と、前記軸方向の一方向き及び他方向きの双方における前記相対移動が許容されるアンロック状態と、のうちの前記アンロック状態から前記ロック状態への切り替えが可能に構成され、
前記複数の第1突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、前記複数の第2突部の各々の先端部は、一対の傾斜したテーパ面を有するテーパ形状を有し、
前記アンロック状態では、前記複数の第1突部の前記先端部と、前記複数の第2突部の前記先端部とが、前記平型導体の前記軸方向に直交する方向において、所定間隔だけオーバラップする、
ワイヤハーネスであること。
[4]
平板状の導体を有する平型導体と、前記平型導体に装着される上記[1]又は上記[2]に記載のクランプと、前記クランプを用いて前記平型導体が取り付けられる取付対象と、を備える組立体であること。
【0008】
上記[1]の構成の平型導体用のクランプによれば、車体などの取付対象に係合することになるクリップ部と、平型導体を保持することになる本体部とが、互いの相対移動が許容されるアンロック状態から互いの相対移動が規制されるロック状態への切り替えが可能に構成される。即ち、いわゆるラチェット状の構造をクランプが有することになる。これにより、平型導体にクランプの本体部を固定した後であっても、クランプがアンロック状態にあれば、平型導体に対するクリップ部の位置を変更できることになる。逆にいえば、取付対象にクリップ部を係止させた後(即ち、平型導体を取付対象に取り付けた後)、本体部をクリップ部に対して移動させることができる。
【0009】
したがって、例えば、平型導体に装着したクランプをアンロック状態のまま取付対象に取り付けた後、平型導体の撓み等が矯正されるようにクランプの本体部を移動させて平型導体を直線状に延ばした上で、クランプをロック状態に切り替えることができる。このように、本構成のクランプは、平型導体を所定の取付対象に適正に取り付け可能である。
【0010】
更に、上記[]の構成の平型導体用のクランプによれば、ロック状態にあるクランプがアンロック状態に戻ることが規制される。これにより、例えば、平型導体を直線状に延ばした上でロック状態にされたクランプが、意図せずアンロック状態に戻ることを抑制できる。よって、本構成のクランプは、平型導体が取付対象に適正に取り付けられた状態を良好に維持できる。
【0011】
上記[]の構成の平型導体用のクランプによれば、アンロック状態にあるクリップ部の位置決めを容易に行うことができる。よって、取付対象の所定位置(例えば、車体に設けられた係止孔)にクリップ部を係止させる作業の作業性を向上できる。
【0012】
上記[]の構成のワイヤハーネスによれば、平型導体に装着されるクランプが、車体などの取付対象に係合することになるクリップ部と、平型導体を保持することになる本体部と、が互いの相対移動が許容されるアンロック状態から互いの相対移動が規制されるロック状態への切り替えが可能に構成される。即ち、いわゆるラチェット状の構造をクランプが有することになる。これにより、平型導体にクランプの本体部を固定した後であっても、クランプがアンロック状態にあれば、平型導体に対するクリップ部の位置を変更できることになる。逆にいえば、取付対象にクリップ部を係止させた後(即ち、平型導体を取付対象に取り付けた後)、本体部をクリップ部に対して移動させることができる。したがって、例えば、平型導体に装着したクランプをアンロック状態のまま取付対象に取り付けた後、平型導体の撓み等が矯正されるようにクランプの本体部を移動させて平型導体を直線状に延ばした上で、クランプをロック状態に切り替えることができる。このように、本構成のワイヤハーネスは、所定の取付対象に適正に取り付け可能である。
【0013】
上記[]の構成の組立体によれば、例えば、平型導体に装着したクランプをアンロック状態のまま取付対象に取り付けた後に平型導体の撓み等が矯正されるように本体部を移動させ、平型導体をほぼ直線状に延ばした上でクランプをロック状態に切り替えることで、平型導体を設計上の配索経路に沿って配置できる。したがって、本構成の組立体は、クランプの働きによって平型導体を適正に配索することで、平型導体と周辺の機器との干渉や異音の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、平型導体を所定の取付対象に適正に取り付け可能なクランプ、そのようなクランプを用いたワイヤハーネス、及び、そのようなクランプを用いて平型導体が取付対象に固定された組立体を提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係るクランプを用いたワイヤハーネスと、ワイヤハーネスの取付対象である自動車の車体の一部品と、が分離した状態を示す斜視図である。
図2図2(a)は、アンロック状態にあるクランプにおける図1のA-A断面図であり、図2(b)は、アンロック状態にあるクランプにおける図1のB-B断面図であり、図2(c)は、図2(b)のC部の拡大図である。
図3図3(a)は、ロック状態にあるクランプにおける図1のA-A断面図であり、図3(b)は、ロック状態にあるクランプにおける図1のB-B断面図であり、図3(c)は、図3(b)のD部の拡大図である。
図4図4(a)~図4(c)は、クランプ単体を組み付ける際の手順について時系列に説明するための図である。
図5図5(a)~図5(d)は、ワイヤハーネスを自動車の車体の一部品に組み付ける際の手順について時系列に説明するための図である。
図6図6(a)は、変形例に係るクランプの図2(c)に対応する図であり、図6(c)は、他の変形例に係るクランプの図2(c)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る平型導体用のクランプ1について説明する。図1に示すように、クランプ1を平型導体2に装着することで、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス3が得られる。ワイヤハーネス3を、ワイヤハーネス3の取付対象である自動車の車体の一部品4に取り付けることで、図5(d)に示すように、本発明の実施形態に係る組立体5が得られる。一部品4としては、例えば、車体のドアトリム等が想定される。
【0018】
平型導体2は、本例では、図1図3(c)に示すように、軸方向に延びる平板状の導体41と、導体41の外周を覆う樹脂被覆42と、で構成されている。自動車の車体の一部品4は、本例では、金属板であり、一部品4には、クランプ1を係止するための複数の係止孔4a(図1及び図5参照)と、平型導体2(ワイヤハーネス3)に装着されている後述する位置決め用クランプ6を係止するための単一の係止孔4b(図5参照)とが、ワイヤハーネス3の設計上の配索経路に沿って所定の間隔を空けて形成されている。
【0019】
以下、説明の便宜上、図1に示すように、「軸方向」、「幅方向」、「上下方向」、「上」、及び「下」を定義する。「軸方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。軸方向は、平型導体2(ワイヤハーネス3)の軸方向と一致している。
【0020】
クランプ1は、樹脂製であり、図1に示すように、自動車の車体の一部品4の係止孔4a(図1参照)に係合することになるクリップ部10と、平型導体2を保持することになる本体部20と、を備える。クリップ部10は、後述するように、本体部20に対して軸方向の一側及び他側の双方に相対移動可能に本体部20に取り付けられることになる。以下、クランプ1が備えるクリップ部10及び本体部20について順に説明する。
【0021】
まず、クリップ部10について説明する。クリップ部10は、図2(a)~図2(c)に示すように、軸方向に延びる一対の側縁を有する矩形平板状の基板部11と、基板部11の軸方向中央部から上方に突出する突出部12と、を一体に備える。基板部11の軸方向寸法は、基板部11の幅方向寸法より大きい。
【0022】
基板部11の下面には、下方に突出し且つ一対の側縁を除く幅方向中央領域にて幅方向に延びる突部13が、軸方向に所定のピッチを空けて軸方向に並ぶように設けられている(図2(b)参照)。図2(c)に示すように、各突部13の先端部(下端部)は、軸方向に直交する面に対して下方に向けて傾斜する一対のテーパ面を有する先細りの形状を有している。突部13は、本体部20の後述する突部26と噛み合うことによって、クランプ1を、後述するアンロック状態又はロック状態に維持する機能を果たす。
【0023】
突出部12の先端部(上端部)には、当該先端部の軸方向両端部から下方に延びる一対の係止アーム14(図2(b)参照)が形成されている。一対の係止アーム14の先端部(下端部)より下側に位置する突出部12には、突出部12の径方向外側に向けて突出部12の周方向の全周に亘って広がる鍔部15が形成されている。クリップ部10を自動車の車体の一部品4の係止孔4aに係合する際には、突出部12を係止孔4aに挿入して、係止孔4aの周縁を一対の係止アーム14の先端部と鍔部15とで挟むことで、クリップ部10が一部品4に係止されることになる(図5(b)参照)。
【0024】
次いで、本体部20について説明する。本体部20は、樹脂製であり、図4(a)~図4(c)に示すように、下側本体部21と、上側本体部22と、下側本体部21及び上側本体部22が相対的に回動可能に両者の軸方向一側の端部同士を連結するヒンジ23と、を備える。
【0025】
下側本体部21は、図4(a)~図4(c)に示すように、軸方向に延びる一対の側縁を有する矩形平板状の基板部24と、基板部24の軸方向他側の端部の上面から突出する直方体状のストッパ部25と、を備える。基板部24は、平型導体2に保持される部分である。ストッパ部25は、本体部20に対するクリップ部10の軸方向の相対移動可能領域の他側の端を規定する機能を果たす。
【0026】
基板部24の軸方向の中央領域(図2(c)において、ストッパ部25及び後述するストッパ部27の間の領域)の上面には、上方に突出し且つ一対の側縁を除く幅方向中央領域にて幅方向に延びる突部26が、軸方向に突部13のピッチと同じ長さのピッチを空けて軸方向に並ぶように設けられている(図4(a)~図4(c)及び図2(b)参照)。図2(c)に示すように、各突部26の先端部(上端部)は、軸方向に直交する面に対して上方に向けて傾斜する一対のテーパ面を有する先細りの形状を有している。
【0027】
上側本体部22は、図4(a)~図4(c)に示すように、その軸方向一側の端部に位置する直方体状のストッパ部27と、ストッパ部27の軸方向他側の端面の幅方向両端部から軸方向他側に向けて延びる一対の矩形状の側板部28と、を備える。ストッパ部27は、本体部20に対するクリップ部10の軸方向の相対移動可能領域の一側の端を規定する機能を果たす。
【0028】
各側板部28には、図2(a)及び図3(a)に示すように、側板部28の上縁部から幅方向内側に突出し且つ軸方向の全域に亘って延びる上側レール部29と、上側レール部29から所定距離だけ下側の位置にて側板部28の幅方向内側端面から幅方向内側に突出し且つ軸方向の全域に亘って延びる下側レール部31と、が形成されている。
【0029】
この結果、一対の上側レール部29と一対の下側レール部31との間に、幅方向外側に窪み且つ幅方向内側に開口する一対のレール溝32が形成されている。一対のレール溝32の軸方向他側の端は開放されており、一対のレール溝32の軸方向他側の端から、クリップ部10の基板部11の一対の側縁が挿入されることになる。即ち、一対の側板部28は、クリップ部10を軸方向に相対移動可能にガイドする機能を果たす。
【0030】
ヒンジ23は、図4(c)に示すように、ストッパ部27の下面が基板部24の上面に接触し且つ一対の側板部28の下面が基板部24の上面の一対の側縁に接触する「閉状態」(図2(a)及び図3(a)も参照)と、図4(a)及び図4(b)に示すように、「閉状態」から上側本体部22が下側本体部21から離れる方向に回動した「開状態」とを、本体部20が実現可能に、下側本体部21及び上側本体部22の軸方向一側の端部同士を連結している。一対の側板部28(即ち、一対のレール溝32)の軸方向他側の端は、「閉状態」ではストッパ部25に塞がれており、「開状態」ではストッパ部25に塞がれていない。以上、クランプ1が備えるクリップ部10及び本体部20について説明した。
【0031】
次いで、図4を参照しながら、クランプ1単体を組み付ける際の手順について説明する。まず、図4(a)に示すように、本体部20を「開状態」に維持した状態で、一対のレール溝32の軸方向他側の端から、クリップ部10の基板部11の一対の側縁を挿入する。これにより、クリップ部10が、軸方向の一側及び他側の双方に相対移動可能に一対のレール溝32に支持される。
【0032】
次いで、図4(b)に白矢印で示すように、上側本体部22を下側本体部21に近づける方向に回動させて、図4(c)に示すように、本体部20を「閉状態」とする。「閉状態」では、図示しない係止機構により、一対の側板部28とストッパ部25とが互いに分離不能に係止されることが好適である。これにより、クランプ1単体の組み付けが完了し、図2に示すクランプ1が得られる。
【0033】
次いで、組み付けが完了したクランプ1(クリップ部10及び本体部20)の「アンロック状態」及び「ロック状態」について説明する。図2(a)~図2(c)に示すように、クランプ1において、クリップ部10が一対のレール溝32に軸方向に相対移動可能に支持された状態では、図2(b)及び図2(c)に示すように、クリップ部10側の複数の突部13の先端部と、下側本体部21側の複数の突部26の先端部とが、上下方向において間隔L(図2(c)参照)だけオーバラップすることで、互いに干渉する。この状態(図2に示す状態)を、クランプ1の「アンロック状態」と呼ぶ。
【0034】
アンロック状態では、複数の突部13及び複数の突部26の先端部同士が互いに干渉することで、本体部20に対してクリップ部10の軸方向の位置決めがなされる。他方、アンロック状態では、本体部20を固定した状態で、クリップ部10に対して軸方向に所定の大きさ以上の外力を付与することで、突部13及び突部26の一時的な弾性変形や、レール溝32の中で基板部11が上下方向に移動する(即ち、レール溝32が許容する範囲内でクリップ部10の全体が上下方向に移動する)ことにより、突部13の先端部が突部26の先端部を乗り越えることが可能である。このため、図2(b)の白矢印に示すように、本体部20に対するクリップ部10の軸方向の一側及び他側の双方への相対移動が許容されている。クリップ部10は、ストッパ部25とストッパ部27との間の軸方向領域内にて移動可能である。
【0035】
図2(a)~図2(c)に示すアンロック状態にて、図3(a)及び図3(b)の白矢印で示すように、本体部20を固定した状態で、クリップ部10に対して下方(本体部20に近づける方向)に所定の大きさ以上の外力を付与すると、一対の下側レール部31の下方への一時的な弾性変形を経て基板部11の一対の側縁が一対の下側レール部31を乗り越えることで、図3(a)及び図3(b)に示すように、基板部11の一対の側縁が一対の下側レール部31の下側に位置する状態が得られる。この状態(図3に示す状態)を、クランプ1の「ロック状態」と呼ぶ。なお、逆に、クリップ部10を固定した状態で本体部20に対して上方(クリップ部10に近づける方向)に所定の大きさ以上の外力を付与しても、上記同様にクランプ1を「アンロック状態」から「ロック状態」に切り替えることが可能である。
【0036】
ロック状態では、図3(c)に示すように、複数の突部13及び複数の突部26の先端部のみならず根元部同士が互いに干渉することで、複数の突部13及び複数の突部26同士が強固に噛み合う。この結果、本体部20に対するクリップ部10の軸方向への相対移動が規制される。具体的には、複数の突部13及び複数の突部26の製造上の公差(即ち、不可避的に生じ得る寸法上のバラツキ)等によって生じ得る僅かな相対移動を除き、本体部20に対するクリップ部10の軸方向への相対移動が実質的に不能となる。
【0037】
図3(a)に示すように、一対の下側レール部31の幅方向内側の先端面は、上方から下方に向かうにつれて幅方向内側に向かうように傾斜している。これにより、図3(a)~図3(c)に示すロック状態にあるクランプ1が、図2(a)~図2(c)に示すアンロック状態に意図せず戻ることが抑制されている。
【0038】
このような機構を有するクランプ1は、図1に示すように、平型導体2の上面に下側本体部21の下面が対面接触するように、平型導体2に装着(固定)される。図1に示す例では、平型導体2の上面に下側本体部21の下面が対面接触した状態で、本体部20の軸方向両端部(より具体的にはストッパ部25及びストッパ部27)の外周と平型導体2の外周とを一括して覆うように、一対のテープ43を巻き付けることで、クランプ1が平型導体2に装着されている。このように、クランプ1が平型導体2に装着されることで、図1に示す本実施形態に係るワイヤハーネス3が得られる。
【0039】
以下、図5(a)~図5(d)を参照しながら、ワイヤハーネス3を自動車の車体の一部品4に組み付ける際の手順について説明する。本例では、図5(a)に示すように、ワイヤハーネス3に対して、ラチェット状の機構を有する複数のクランプ1が、各クリップ部10が上向きになるように、軸方向に所定の間隔を空けて装着されている。この段階では、各クランプ1はアンロック状態に維持されている。ワイヤハーネス3における複数のクランプ1の軸方向の配置に対応して、一部品4には、クランプ1を係止するための複数の係止孔4aが、ワイヤハーネス3の設計上の配索経路に沿って所定の間隔を空けて形成されている。
【0040】
更に、ワイヤハーネス3に対して、位置決め用の単一のクランプ6が、クリップ部52が上向きになるように、軸方向の1箇所に装着されている。クランプ6は、ワイヤハーネス3の軸方向の前記1箇所に装着(固定)された本体部51と、本体部51に相対移動不能に設けられたクリップ部52と、を備える、いわゆるラチェット状の機構を有さないクランプである。クランプ6は、一部品4に対するワイヤハーネス3の軸方向(配索経路に沿う方向)の基準位置を定める機能を果たす。図5(a)に示すように、ワイヤハーネス3における単一のクランプ6の軸方向の配置に対応して、一部品4には、クランプ6を係止するための単一の係止孔4bが、ワイヤハーネス3の設計上の配索経路上に形成されている。
【0041】
ワイヤハーネス3を自動車の車体の一部品4に組み付けるため、まず、図5(a)に黒矢印で示すように、ワイヤハーネス3を一部品4に下側から近づけていき、図5(b)に示すように、複数のクランプ1のクリップ部10及び単一のクランプ6のクリップ部52を、一部品4の対応する係止孔4a又は係止孔4bに下側からそれぞれ挿入する。これにより、複数のクランプ1及び単一のクランプ6が、一部品4の対応する係止孔4a又は係止孔4bにそれぞれ係止されて、ワイヤハーネス3(平型導体2)が一部品4に取り付けられる。
【0042】
この状態では、クランプ6が係止孔4bに係止されることで、一部品4に対するワイヤハーネス3の軸方向(配索経路に沿う方向)の基準位置が定められている。即ち、クランプ6は、本発明の「位置決め構造」を構成している。
【0043】
ワイヤハーネス3は、平型導体2で構成されている。平型導体2の剛性は一般に、複数の電線が束ねられた電線束に比べて低い。そのため、図5(a)及び図5(b)に示す例では、ワイヤハーネス3を一部品4に取り付ける前(図5(a)参照)のみならず、ワイヤハーネス3を一部品4に取り付けた後(図5(b)参照)後においても、隣接するクランプ1同士の間、並びに、隣接するクランプ1,6の間において、平型導体2に撓み等の変形が生じている。このような変形が生じると、平型導体2が設計上の配索経路から外れて周辺の機器に干渉することや、車両の走行時に平型導体2が振動して車体などに接触して異音が生じること等が生じる場合がある。このような周辺の機器との干渉や異音は、出来る限り抑制されることが望ましい。
【0044】
そこで、クランプ1の上述したラチェット状の機構が活用される。即ち、図5(b)に示す例では、アンロック状態にある各クランプ1の本体部20を、クリップ部10に対して黒矢印の方向に移動させる。これにより、ワイヤハーネス3を一部品4に取り付けた後であっても、図5(c)に示すように、平型導体2に生じていた撓み等が矯正されて、ワイヤハーネス3をほぼ直線状に延ばすことができる。
【0045】
次いで、図5(c)に白矢印で示すように、アンロック状態にある各クランプ1の本体部20を、対応するクリップ部10に向けて(上向きに)それぞれ押し付ける。これにより、各クランプ1がアンロック状態からロック状態に移行されて、各クランプ1において本体部20に対するクリップ部10の軸方向の相対移動が不能になる。このため、図5(d)に示すように、ワイヤハーネス3がほぼ直線状に延びた状態が維持される。以上により、ワイヤハーネス3の自動車の車体の一部品4に対する組み付けが完了し、本実施形態に係る組立体5が得られる。
【0046】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るクランプ1によれば、自動車の車体の一部品4に係合することになるクリップ部10と、平型導体2を保持することになる本体部20と、が互いの相対移動が許容されるアンロック状態から互いの相対移動が規制されるロック状態への切り替えが可能に構成される。即ち、いわゆるラチェット状の構造をクランプ1が有することになる。これにより、平型導体2にクランプ1の本体部20を固定した後であっても、平型導体2に対するクリップ部10の位置を変更できることになる。逆にいえば、一部品4にクリップ部10を係止させた後(即ち、平型導体2を一部品4に取り付けた後)、本体部20をクリップ部10に対して移動させることができる。したがって、平型導体2に装着したクランプ1をアンロック状態のまま一部品4に取り付けた後、平型導体2の撓み等が矯正されるように本体部20を移動させて平型導体2をほぼ直線状に延ばした上で、クランプ1をアンロック状態に切り替えることができる。したがって、本実施形態に係るクランプ1は、平型導体2を自動車の車体の一部品4に適正に取り付け可能である。
【0047】
更に、本実施形態に係るクランプ1によれば、ロック状態にあるクランプ1がアンロック状態に戻ることが規制されている。これにより、ロック状態にされたクランプ1が意図せずアンロック状態に戻ることを抑制できる。よって、クランプ1は、平型導体2が一部品4に適正に取り付けられた状態を良好に維持できる。
【0048】
更に、本実施形態に係るクランプ1によれば、アンロック状態においてクリップ部10側の複数の突部13及び本体部20側の複数の突部26の先端部同士が互いに干渉することで、アンロック状態にあるクリップ部10の位置決めを容易に行うことができる。よって、自動車の車体の一部品4の係止孔4aにクリップ部10を係止させる作業の作業性を向上できる。
【0049】
更に、本実施形態に係るワイヤハーネス3は、クランプ1の働きにより、上述したように自動車の車体の一部品4に適正に取り付け可能な機能を有する。加えて、本実施形態に組立体5は、クランプ1の働きによって平型導体2が適正に配索された状態の車両用のモジュールとして用いることができる。組立体5の一例として、車両のドアトリムに対して平型導体2をクランプ1で固定したドアモジュールが挙げられる。
【0050】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0051】
上記実施形態では、アンロック状態において、クリップ部10側の複数の突部13の先端部(一対のテーパ面を有する先細り形状の部分)と、下側本体部21側の複数の突部26の先端部(一対のテーパ面を有する先細り形状の部分)とが、上下方向において間隔Lだけオーバラップすることで、互いに干渉している(図2(c)参照)。
【0052】
これに対し、図6(a)に示すように、クリップ部10側の各突部13の先端部(一対のテーパ面を有する先細り形状の部分)に、当該先端部から更に下方に突出し且つ幅方向に延びる突条部13aを設けてもよい。これにより、アンロック状態において、クリップ部10側の複数の突部13の突条部13aと、下側本体部21側の複数の突部26の先端部(一対のテーパ面を有する先細り形状の部分)とが、上下方向において間隔Lだけオーバラップすることで、互いに干渉することになる。
【0053】
更には、図6(b)に示すように、下側本体部21側の各突部26の先端部(一対のテーパ面を有する先細り形状の部分)にも、当該先端部から更に上方に突出し且つ幅方向に延びる突条部26aを設けてもよい。これにより、アンロック状態において、クリップ部10側の複数の突部13の突条部13aと、下側本体部21側の複数の突部26の突条部26aとが、上下方向において間隔Lだけオーバラップすることで、互いに干渉することになる。
【0054】
更に、上記実施形態では、ワイヤハーネス3において、複数のクランプ1に加えて、位置決め用のクランプ6が設けられている。これに対し、ワイヤハーネス3において、位置決め用のクランプ6に代えて、ロック状態に常時維持されたクランプ1が設けられていてもよい。更に、クランプ6がそもそも設けられなくてもよい。この場合、自動車の車体の一部品4において、クランプ6用の係止孔4bを省略できる。このように、平型導体2の基準位置を定める機能を発揮できる限り、クランプ6に換えて他の部材や構造が設けられてもよい。
【0055】
更に、上記実施形態では、アンロック状態にあるクランプ1を一部品4に取り付けた後、クランプ1を適正な位置に移動させてロック状態に切り替えている。これに対し、例えば、自動車のメンテンス等のためにクランプ1をアンロック状態に戻すことが必要になった際、クリップ部10に対して上方(本体部20から遠ざかる方向)に十分に大きな外力を付与すれば、一対の下側レール部31の上方への一時的な弾性変形を経て基板部11の一対の側縁が一対の下側レール部31を乗り越えることで、強制的にクランプ1をアンロック状態に戻すことも可能である。
【0056】
ここで、上述した本発明に係るクランプ1、ワイヤハーネス3、及び組立体5の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
平板状の導体(41)を有する平型導体(2)に装着されて前記平型導体(2)を所定の取付対象(4)に取り付ける際に用いられる、平型導体用のクランプ(1)であって、
前記取付対象(4)に係合することになるクリップ部(10)と、
前記平型導体(2)を保持することになる本体部(20)と、を備え、
前記クリップ部(10)及び前記本体部(20)は、
互いに向かい合う向きに突出する突部(13,26)を有し、前記突部(13,26)同士が噛み合うことによって当該クリップ部(10)と当該本体部(20)との前記平型導体(2)の軸方向における相対移動が規制されるロック状態と、前記軸方向の一方向き及び他方向きの双方における前記相対移動が許容されるアンロック状態と、のうちの前記アンロック状態から前記ロック状態への切り替えが可能に構成される、
平型導体用のクランプ(1)。
[2]
上記[1]に記載のクランプ(1)において、
前記クリップ部(10)及び前記本体部(20)は、
前記ロック状態から前記アンロック状態への切り替えを規制するように構成される、
平型導体用のクランプ(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のクランプ(1)において、
前記クリップ部(10)及び前記本体部(20)は、
前記アンロック状態において、前記突部(13,26)の先端同士が干渉することによって当該本体部(20)に対して当該クリップ部(10)が位置決めされる、
平型導体用のクランプ(1)。
[4]
平板状の導体(41)を有する平型導体(2)と、前記平型導体(2)に装着される上記[1]~上記[3]の何れか1つに記載のクランプ(1)と、前記平型導体(2)を所定の取付対象(4)に対して取り付ける際に前記平型導体(2)の基準位置を定める位置決め構造(6,4b)と、を備えるワイヤハーネス(3)。
[5]
平板状の導体(41)を有する平型導体(2)と、前記平型導体(2)に装着される上記[1]~上記[3]の何れか1つに記載のクランプ(1)と、前記クランプ(1)を用いて前記平型導体(2)が取り付けられる取付対象(4)と、を備える組立体(5)。
【符号の説明】
【0057】
1 クランプ
2 平型導体
3 ワイヤハーネス
4 自動車の車体の一部品(取付対象)
4b 係止孔(位置決め構造)
5 組立体
6 クランプ6(位置決め構造)
10 クリップ部
13 突部
20 本体部
26 突部
41 導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6