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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ゼータ電位測定用治具
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20240220BHJP
   G01N 27/447 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01N27/26 P
G01N27/447 331A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020073731
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169982
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長沢 広也
(72)【発明者】
【氏名】若山 育央
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06051124(US,A)
【文献】国際公開第2016/117570(WO,A1)
【文献】特開2012-073078(JP,A)
【文献】特開2000-171425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26
G01N 27/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動移動度測定装置に用いられるゼータ電位測定用治具であって、
互いに対向して配置され、それぞれ対応する位置に開口を有する第1保持壁及び第2保持壁と、前記第1保持壁及び前記第2保持壁の各下端を連結する底壁と、を有する枠体と、
前記第1保持壁及び前記第2保持壁の間において、試料を保持する保持空間の一部を構成し、前記開口の側方に配置されるセルの上方又は下方に隣接配置される中間ブロックと、
前記第1保持壁及び第2保持壁の間において、前記中間ブロックより上方に配置され、前記セル及び前記中間ブロックを前記底壁側に押圧するセル押さえと、
を有し、
前記第1保持壁及び前記第2保持壁の少なくとも一方は、前記中間ブロックを側方から支持するための、第1溝又は該第1溝に弾性的に篏合する第1突起のうち一方を有し、
前記中間ブロックは、前記第1溝又は前記第1突起のうち他方を有し、
前記第1保持壁及び前記第2保持壁は、それぞれ一体的に形成された板状部を有し、
前記中間ブロック及び前記セル押さえは、前記第1保持壁の前記板状部と前記第2保持壁の前記板状部の間に配置される、
ことを特徴とするゼータ電位測定用治具。
【請求項2】
前記第1保持壁及び前記第2保持壁の少なくとも一方は、前記セル押さえを側方から支持するための、第2溝又は該第2溝に弾性的に篏合する第2突起のうち一方を有し、
前記セル押さえは、前記第2溝又は前記第2突起のうち他方を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のゼータ電位測定用治具。
【請求項3】
前記中間ブロックは、
前記保持空間のそれぞれ一部を構成し、それぞれ底部に陽極板及び陰極板が位置する陽極穴部及び陰極穴部を有し、前記セルが内側に配置される下段ブロックと、
前記セルの周縁部と重なる平面形状を有し、前記セルの上側に配置される中段ブロックと、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載のゼータ電位測定用治具。
【請求項4】
前記セル押さえは、
前記保持空間の他の一部を構成する領域を有し、前記セルの上に配置されて前記セルの上面を前記底壁側に押圧するセル上面押さえ部と、
前記中段ブロックの上方に配置され、前記中段ブロックを前記底壁側に押圧する上段ブロックと、
有することを特徴とする請求項3に記載のゼータ電位測定用治具。
【請求項5】
前記ゼータ電位測定用治具は、さらに、長軸方向と短軸方向を有する形状であって、前記底壁の面内方向に回転し前記上段ブロックを前記底壁側に押圧する第1押圧部を有し、
前記第1保持壁及び前記第2保持壁は、前記第1押圧部の長軸方向が前記第1保持壁と前記第2保持壁とが向かい合う方向に位置した時に、前記第1押圧部の上面と接する領域を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載のゼータ電位測定用治具。
【請求項6】
前記上段ブロックは、前記セルの上方に上下方向に貫通する貫通孔を有し、
前記ゼータ電位測定用治具は、さらに、前記貫通孔に配置され、前記セル上面押さえ部を前記セルに押圧する第2押圧部を有する、
ことを特徴とする請求項4または5に記載のゼータ電位測定用治具。
【請求項7】
前記下段ブロックは、前記陽極穴部及び前記陰極穴部に前記試料を供給する供給路を有する、ことを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載のゼータ電位測定用治具。
【請求項8】
前記第1突起及びまたは前記第2突起はプランジャである、ことを特徴とする請求項2に記載のゼータ電位測定用治具。
【請求項9】
さらに、前記陽極穴部及び前記陰極穴部のそれぞれと連通する測定空間を有し、前記試料に照射される光及び該光が前記試料により散乱された散乱光を透過する材料で形成されたセルを有する、ことを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載のゼータ電位測定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼータ電位測定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電場の影響下で移動する試料セル容器内の粒子の電気泳動移動度やζ(ゼータ)電位を測定する電気泳動移動度測定装置が知られている。電気泳動移動度測定装置は、電界を付与した試料に光を照射し、試料により散乱された散乱光を受光器で検出する。検出された散乱光の周波数成分を解析することにより粒子の速度が算出され、粒子速度分布又はそれらの粒子の電気泳動移動度の分布が得られる(下記特許文献1乃至3参照)。
【0003】
電気泳動移動度測定装置には、透明壁を有するセルが用いられる(下記特許文献4参照)。セルには、測定対象となる粒子の分散体を懸濁させた試料が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-104188号公報
【文献】特開2012-229932号公報
【文献】国際公開第2016/117570号
【文献】特開平05-312757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試料が配置されたセルと電気泳動移動度測定装置との位置関係を固定するために、ゼータ電位測定用治具が用いられる。ゼータ電位測定用治具から試料が漏れだすと電気泳動移動度測定装置の汚れや破損につながる恐れがある。従来、ゼータ電位測定用治具は、ボルトとナットを用いてセルを固定しており、当該固定作業が煩雑であった。また、高精度な測定を行うためには、セルに配置された試料に対して適正な角度で光が照射される必要がある。そのため、複数のナットを適正なトルクで締め付ける必要があり、作業が煩雑であった。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な作業で試料をセルに配置することができるゼータ電位測定用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るゼータ電位測定用治具は、電気泳動移動度測定装置に用いられるゼータ電位測定用治具であって、互いに対向して配置され、それぞれ対応する位置に開口を有する第1保持壁及び第2保持壁と、前記第1保持壁及び前記第2保持壁の各下端を連結する底壁と、を有する枠体と、前記第1保持壁及び前記第2保持壁の間において、試料を保持する保持空間の一部を構成し、前記開口の側方に配置されるセルの上方又は下方に隣接配置される中間ブロックと、前記第1保持壁及び第2保持壁の間において、前記中間ブロックより上方に配置され、前記セル及び前記中間ブロックを前記底壁側に押圧するセル押さえと、を有し、前記第1保持壁及び前記第2保持壁の少なくとも一方は、前記中間ブロックを側方から支持するための、第1溝又は該第1溝に弾性的に篏合する第1突起のうち一方を有し、前記中間ブロックは、前記第1溝又は前記第1突起のうち他方を有する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本実施形態に係るゼータ電位測定用治具の斜視図である。
図2図2は電気泳動移動度測定装置に配置されたゼータ電位測定用治具を示す斜視図である。
図3図3はゼータ電位測定用治具の三面図である。
図4図4はゼータ電位測定用治具の三面図である。
図5図5はゼータ電位測定用治具の三面図である。
図6図6はゼータ電位測定用治具の三面図である。
図7図7はIIV-IIV断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示における実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0010】
図1(a)及び図1(b)は、本実施形態のゼータ電位測定用治具100を異なる方向から見た斜視図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施形態のゼータ電位測定用治具100は、枠体200、中間ブロック300、セル400、セル押さえ500、第1押圧部600及び第2押圧部700を有する。枠体200は、第1保持壁202、第2保持壁204及び底壁206を有する。中間ブロック300は、下段ブロック302、中段ブロック304及び試料供給用つまみ306を有する。セル押さえ500は、セル上面押さえ部502と上段ブロック504を有する。
【0011】
ゼータ電位測定用治具100は、電気泳動移動度測定装置800に用いられる。具体的には、ゼータ電位測定用治具100は、図2に示す電気泳動移動度測定装置800に配置され、ゼータ電位の測定が行われる。試料が配置されるセル400は、ゼータ電位測定用治具100の内部に配置されており、電気泳動移動度測定装置800は、セル400に配置された試料に対して、後述する陽極板220及び陰極板222を介して電界を印加する。第1保持壁202及び第2保持壁204には開口212が設けられており、電気泳動移動度測定装置800は、一方の開口212から測定用の光を照射する。そして、電気泳動移動度測定装置800は、他方の開口212から出射される散乱光に基づいてゼータ電位を測定する。なお、ゼータ電位の測定方法は従来技術と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0012】
以下、図3乃至図7を参照しながら、ゼータ電位測定用治具100の各構成について説明する。図3は、ゼータ電位測定用治具100に含まれる各構成のうち、枠体200のみを記載した三面図である。図4は、枠体200、下段ブロック302及び試料供給用つまみ306のみを記載した三面図である。図5は、枠体200、下段ブロック302、試料供給用つまみ306及びセル400のみを記載した三面図である。図6は、ゼータ電位測定用治具100の全ての構成を記載した三面図である。図7は、図6のIIV-IIV断面を示す図である。
【0013】
第1保持壁202及び第2保持壁204は、互いに対向して配置され、それぞれ対応する位置に開口212を有する。具体的には、図3に示すように、第1保持壁202及び第2保持壁204は、それぞれxz平面に広い面を有しy方向に薄い形状である板状部208と、上部(z方向)に把手部210とを有する。第1保持壁202及び第2保持壁204は、板状部208のxz平面が互いに対向して配置される。板状部208は、y方向に貫通する開口212をそれぞれ対応する位置に有する。当該開口212の一方は試料に照射される光が通り、開口212の他方は試料に散乱された光が通る。
【0014】
底壁206は、第1保持壁202及び第2保持壁204の各下端を連結する。具体的には、第1保持壁202及び第2保持壁204の下端に配置され、ネジによって第1保持壁202及び第2保持壁204の位置関係を固定する。底壁206は、陽極板220及び陰極板222が配置される。陽極板220及び陰極板222の一方は、x方向に向かって延びる導電板を介して、電気泳動移動度測定装置800から所定の電圧が印加される端子と電気的に接続される。他の一方は、-x方向に向かって延びる導電板を介して、電気泳動移動度測定装置800から所定の電圧が印加される端子と電気的に接続される。陽極板220には、電気泳動移動度測定装置800から陰極板222に印加されるよりも高い電圧が印加される。
【0015】
第1保持壁202及び第2保持壁204の間には中間ブロック300、セル400、セル押さえ500、第1押圧部600及び第2押圧部700が配置される。具体的には、第1保持壁202及び第2保持壁204の間には底壁206から上方(z方向)に向かって順に、下段ブロック302、セル400、中段ブロック304、上段ブロック504、第1押圧部600及び第2押圧部700が配置される。
【0016】
第1保持壁202及び第2保持壁204の少なくとも一方は、中間ブロック300を側方から支持するための、第1溝214又は該第1溝214に弾性的に篏合する第1突起312のうち一方を有する。具体的には、第1保持壁202及び第2保持壁204の各板状部208は、下段ブロック302と対応する位置及び中段ブロック304と対応する位置に、第1溝214を有する。第1溝214は、第1保持壁202及び第2保持壁204の各板状部208の向かい合う面に、x方向に沿って設けられた溝である。第1溝214には、下段ブロック302及び中段ブロック304に設けられたプランジャが嵌合する。
【0017】
なお、図3乃至6では、下段ブロック302と対応する位置及び中段ブロック304と対応する双方の位置に第1溝214が設けられているが、第1溝214は、少なくとも中段ブロック304と対応する位置に設けられていればよい。また、第1溝214及び第1突起312は、第1保持壁202及び第2保持壁204の双方に設けられることが好ましいが、一方にのみ設けられてもよい。
【0018】
また、第1保持壁202及び第2保持壁204の少なくとも一方は、セル押さえ500を側方から支持するための、第2溝216又は該第2溝216に弾性的に篏合する第2突起506のうち一方を有する。具体的には、第1保持壁202及び第2保持壁204の各板状部208は、上段段ブロックと対応する位置に、第2溝216を有する。第2溝216は、第1保持壁202及び第2保持壁204の各板状部208の向かい合う面に、x方向に沿って設けられた溝である。第2溝216には、上段ブロック504の対応する位置に設けられたプランジャが嵌合する。なお、第2溝216及び第2突起506は、第1保持壁202及び第2保持壁204の双方に設けられることが好ましいが、一方にのみ設けられてもよいし双方ともに設けられなくてもよい。
【0019】
第1保持壁202及び第2保持壁204は、第1押圧部600の長軸方向が第1保持壁202と第2保持壁204とが向かい合う方向に位置した時に、第1押圧部600の上面と接する領域を有する。具体的には、第1保持壁202及び第2保持壁204の各把手部210は、第1押圧部600と対応する位置に、凹部218を有する。凹部218は、第1保持壁202及び第2保持壁204の向かい合う面に設けられ、第1押圧部600の長軸方向の先端部が嵌合する。なお、第1保持壁202及び第2保持壁204は、第1押圧部600の上面と接する領域に、凹部218形状ではなく庇形状を有していてもよい。この場合、庇の下側の面が第1押圧部600の上面と接する領域となる。
【0020】
中間ブロック300は、第1保持壁202及び第2保持壁204の間において、試料を保持する保持空間102の一部を構成し、開口212の側方に配置されるセル400の上方又は下方に隣接配置される。具体的には、中間ブロック300は、第1保持壁202及び第2保持壁204の間に配置される下段ブロック302、中段ブロック304及び試料供給つまみ306を有する。
【0021】
下段ブロック302は、保持空間102のそれぞれ一部を構成しそれぞれ底部に陽極板220及び陰極板222が位置する陽極穴部308及び陰極穴部310を有し、セル400が内側に配置される。具体的には、下段ブロック302は、内側にセル400が配置される空間を有し、当該空間の下側に陽極穴部308及び陰極穴部310を有する。陽極穴部308及び陰極穴部310は、底壁206の陽極板220及び陰極板222と対応する位置に設けられる。陽極穴部308及び陰極穴部310は、供給路314を介して試料が配置される空間であり、試料を保持する保持空間102のそれぞれ一部を構成する。下段ブロック302は、第1保持壁202及び第2保持壁204の開口212の側方に配置されるセル400の下方に隣接配置される。
【0022】
下段ブロック302は、陽極穴部308及び陰極穴部310に試料を供給する供給路314を有する。具体的には、図7に示すように、陽極穴部308及び陰極穴部310の側面と試料供給用つまみ306が配置される箇所とをつなぐ空間(供給路314)を有する。試料供給用つまみ306はセル400下面押さえ部から分離できる構成であり、当該供給路314を介して陽極穴部308及び陰極穴部310に試料を供給できる。これにより、ゼータ電位測定用治具100からセル400を取り出さなくても容易に試料を供給することができる。
【0023】
下段ブロック302は、図4に示すように、第1保持壁202及び第2保持壁204に第1溝214が設けられる場合、第1溝214と対応する位置にプランジャを有する。図3に示すように、底壁206によって固定された状態の第1保持壁202及び第2保持壁204の間に、上側(z方向)から下段ブロック302が挿入されることにより、図4に示す状態となる。挿入過程において、第1突起312が第1溝214と対応しない位置にあるときに、第1突起312は、先端が第1保持壁202及び第2保持壁204の表面に沿うように内側に位置する。一方、第1突起312が第1溝214と対応する位置にあるときに、第1突起312は、第1溝214と弾性的に嵌合する。これにより、下段ブロック302を容易に配置することができる。
【0024】
セル400は、陽極穴部308及び陰極穴部310のそれぞれと連通する測定空間104を有し、試料に照射される光及び該光が試料により散乱された散乱光を透過する材料で形成される。具体的には、セル400は、透明なガラスで形成される。また、図4及び図7に示すように、セル400は、陽極穴部308及び陰極穴部310の双方からz方向にセル400の上面まで貫通する2個の空間と、該2個の空間を連通するxy平面に設けられた空間とを有する。測定時には、これらの空間は試料で満たされる。xy平面に設けられた空間は、第1保持壁202及び第2保持壁204の開口212の側方に位置し、測定空間104として機能する。これにより、測定空間104に配置された試料に光が照射される。
【0025】
セル400の下面は、下段ブロック302によって支持される。本実施形態では、セル400のxy平面内の位置は下段ブロック302によって支持されるが、中段ブロック304によって支持されてもよい。セル400は、第1保持壁202及び第2保持壁204の間に下段ブロック302が配置された図4の状態で、下段ブロック302で囲われる空間に配置される。これにより、図5に示す状態となる。
【0026】
中段ブロック304は、セル400の周縁部と重なる平面形状を有し、セル400の上側に配置される。具体的には、図6及び図7に示すように、中段ブロック304は、セル上面押さえ部502の側面を囲う形状である。中段ブロック304は、第1保持壁202及び第2保持壁204の開口212の側方に配置されるセル400の上方に隣接配置される。中段ブロック304は、セル400と接する領域にパッキンを有する。これにより、試料がゼータ電位測定用治具100の外側に漏れることを防止できる。
【0027】
中段ブロック304は、図4に示すように、第1保持壁202及び第2保持壁204に第1溝214が設けられる場合、第1溝214と対応する位置にプランジャを有する。図5に示すように、下段ブロック302及びセル400が配置された状態の第1保持壁202及び第2保持壁204の間に、上側(z方向)から中段ブロック304が挿入されることにより、図5に示す状態となる。挿入過程において、第1突起312が第1溝214と対応しない位置にあるときに、第1突起312は、先端が第1保持壁202及び第2保持壁204の表面に沿うように内側に位置する。一方、第1突起312が第1溝214と対応する位置にあるときに、第1突起312は、第1溝214と弾性的に嵌合する。これにより、中段ブロック304を容易に配置することができる。
【0028】
セル押さえ500は、第1保持壁202及び第2保持壁204の間において、中間ブロック300より上方に配置され、セル400及び中間ブロック300を底壁206側に押圧する。具体的には、セル押さえ500は、保持空間102の他の一部を構成する領域を有し、セル400の上に配置されてセル400の上面を底壁206側に押圧するセル上面押さえ部502と、中段ブロック304の上方に配置され、中段ブロック304を底壁206側に押圧する上段ブロック504と、有する。
【0029】
セル上面押さえ部502は、図7に示すように、セル400の上面に接して配置され、セル400と接する面は平坦に形成される。セル400と接する面のうち測定空間104と接する領域は、セル400とともに保持空間102の一部を構成する。保持空間102の一部を構成する領域は、試料が漏れないようパッキンが配置されることが好ましい。セル上面押さえ部502は、上側に第2押圧部700と嵌合する穴を有し、当該穴の壁面はねじ切りされている。第2押圧部700が回転することにより、セル上面押さえ部502は、該穴に嵌合された第2押圧部700によって下側に押圧される。これにより、試料が保持空間102から漏れることを防止できる。
【0030】
上段ブロック504は、セル上面押さえ部502及び中段ブロック304の上側に配置される。上段ブロック504の上側は、第1押圧部600と接する。後述するように第1押圧部600が回転することにより、上段ブロック504は、底壁206側に押圧される。また、上段ブロック504は、セル400の上方に上下方向に貫通する貫通孔を有する。当該貫通孔には、第2押圧部700が配置される。当該貫通孔の側壁はねじ切りされていないため、第1押圧部600がセル上面押さえ部502にかける押圧とは別に、第1押圧部600によって底壁206側に押圧することができる。
【0031】
セル押さえ500は、第2溝216又は第2突起506のうち一方を有する。具体的には、図6に示すように、第1保持壁202及び第2保持壁204に第2溝216が設けられる場合、上段ブロック504は、それぞれ第2溝216と対応する位置にプランジャを有する。セル上面押さえ部502は、中段ブロック304が配置された状態で、セル400の上に配置される。さらに、第1保持壁202及び第2保持壁204の間に、上側(z方向)から上段ブロック504が挿入されることにより、図6に示す状態となる。この時、上段ブロック504に第2溝216と弾性的に嵌合する第2突起506が設けられていることから、上段ブロック504を容易に配置することができる。
【0032】
第1押圧部600は、長軸方向と短軸方向を有する形状であって、底壁206の面内方向に回転し上段ブロック504を底壁206側に押圧する。具体的には、第1押圧部600は、長軸方向と短軸方向を有する略楕円形状であり、上側の表面に先端に向かってz方向の高さが低くなるように傾斜が設けられる。第1押圧部600は、上段ブロック504の上に配置される。第1押圧部600は、xy平面内で回転可能であり、長軸方向がy軸方向に位置するように配置されたときに、把手部210に設けられた凹部218に嵌合する。第1押圧部600が凹部218に嵌合するときに、上側の表面に設けられた傾斜によって、第1押圧部600の下側に配置された上段ブロック504は、底壁206側に押圧される。なお、把手部210に凹部218ではなく庇形状が設けられる場合、庇の下側の面が第1押圧部600の上面と接する。
【0033】
第2押圧部700は、貫通孔に配置され、セル上面押さえ部502をセル400に押圧する。具体的には、第2押圧部700は、つまみ部702と軸部704とを有する。つまみ部702は、第1押圧部600の上に配置され、軸部704と固定される。軸部704は、第1押圧部600及び上段ブロック504に設けられた貫通孔に配置され、下端部はセル上面押さえ部502に設けられた穴と嵌合する。軸部704の下端部は表面がねじ切りされており、つまみ部702が回転することにより、セル上面押さえ部502を下側に押圧する。セル上面押さえ部502が押圧されることにより、試料が保持空間102から漏れることを防止できる。
【0034】
なお、上記によいて、中間ブロック300が第1突起312を有し、セル押さえ500が第2突起506を有する場合について説明したが、中間ブロック300は、第1溝214を有してもよいし、セル押さえ500は、第2溝216を有していてもよい。
【0035】
また、セル400下面押さえ部、中段ブロック304及び上段ブロック504は、第1保持壁202及び第2保持壁204から挿抜可能である。第1突起312及び第2突起506が第1溝214または第2溝216に弾性的に嵌合するため、容易に挿抜することができる。これにより、試料を簡単に交換することができる。
【0036】
また、第1突起312及び第2突起506がプランジャである場合について説明したが、第1溝214及び第2溝216に弾性的に篏合する構成であれば第1突起312及び第2突起506はプランジャでなくてもよい。
【0037】
また、第2押圧部700がxy平面の中心に1か所設けられる場合について説明したが、第2押圧部700は、xy平面の四隅に4か所設けられてもよい。さらに、第1押圧部600が上段ブロック504を押圧し、第2押圧部700がセル上面押さえ部502を押圧する場合について説明したが、第2押圧部700が下段ブロック302、中段ブロック304及び上段ブロック504の全てを押圧する構成としてもよい。例えば、第2押圧部700がxy平面の四隅に4か所設けられる場合、下段ブロック302、中段ブロック304及び上段ブロック504は、それぞれ第2押圧部700と対応する位置に貫通孔を有していてもよい。この場合、当該貫通孔の内壁及び第2押圧部700の軸部704はねじ切りされており、第2押圧部700が回転するによって、下段ブロック302、中段ブロック304及び上段ブロック504がともに底壁206側に押圧されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
100 ゼータ電位測定用治具、102 保持空間、104 測定空間、200 枠体、202 第1保持壁、204 第2保持壁、206 底壁、208 板状部、210 把手部、212 開口、214 第1溝、216 第2溝、218 凹部、220 陽極板、222 陰極板、300 中間ブロック、302 下段ブロック、304 中段ブロック、306 試料供給用つまみ、308 陽極穴部、310 陰極穴部、312 第1突起、314 供給路、400 セル、500 セル押さえ、502 セル上面押さえ部、504 上段ブロック、506 第2突起、600 第1押圧部、700 第2押圧部、702 つまみ部、704 軸部、800 電気泳動移動度測定装置。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7