(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】ハイドレート成型装置
(51)【国際特許分類】
C01B 13/10 20060101AFI20240220BHJP
C10L 3/06 20060101ALN20240220BHJP
C01B 32/50 20170101ALN20240220BHJP
【FI】
C01B13/10 Z
C10L3/06
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2020077060
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 亮
(72)【発明者】
【氏名】西塚 史郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮
(72)【発明者】
【氏名】戸村 重男
(72)【発明者】
【氏名】矢島 智美
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-342473(JP,A)
【文献】特開2009-242727(JP,A)
【文献】特開2012-097053(JP,A)
【文献】特開平07-010235(JP,A)
【文献】特開2012-192388(JP,A)
【文献】特開2016-065009(JP,A)
【文献】特開2006-104258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/00 - 13/36
B65G 1/00 - 1/133
B65G 1/14 - 1/20
B65G 11/00 - 11/20
B65G 49/00 - 49/08
C01B 32/50
C07B 63/02
C10L 3/00 - 3/12
F17C 1/00 - 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドレートおよび水を含むスラリーを収容する収容部を有する収容ユニットと、
前記収容部の外表面を冷却
し、前記収容部に前記スラリーを収容した状態で前記スラリーを凍結して固化させる冷却部と、
を備えるハイドレート成型装置。
【請求項2】
前記冷却部は、
前記収容部の外表面と所定の間隔離隔し、前記外表面を囲繞する囲繞部と、
前記囲繞部内に冷却媒体を供給する冷却媒体供給部と、
を備える請求項1に記載のハイドレート成型装置。
【請求項3】
前記収容部の外表面を加熱する加熱部を備える請求項1または2に記載のハイドレート成型装置。
【請求項4】
前記加熱部は、
前記収容部の外表面と所定の間隔離隔し、前記外表面を囲繞する囲繞部と、
前記囲繞部内に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部と、
を備える請求項3に記載のハイドレート成型装置。
【請求項5】
前記収容部を複数備え、
複数の前記収容部に前記スラリーを供給するスラリー供給部を備え、
前記スラリー供給部は、複数の前記収容部のうち、少なくともいずれか1の前記収容部と、他の前記収容部とに排他的に前記スラリーを供給する請求項1から4のいずれか1項に記載のハイドレート成型装置。
【請求項6】
前記収容部内にガスを供給するガス供給部を備える請求項1から5のいずれか1項に記載のハイドレート成型装置。
【請求項7】
前記収容部内からガスを排出し、前記収容部内を脱圧する脱圧部を備える請求項1から6のいずれか1項に記載のハイドレート成型装置。
【請求項8】
前記収容部は、筒形状であり、一端側に前記スラリーが通過する入口が設けられ、他端側に前記スラリーが固化された固形物が通過する出口が設けられ、
前記収容ユニットは、
前記入口を開閉する入口開閉弁と、
前記出口を開閉する出口開閉弁と、
を備える請求項1から7のいずれか1項に記載のハイドレート成型装置。
【請求項9】
前記出口開閉弁は、前記収容部の軸の直交断面形状と略等しい形状を有する弁体を備える請求項8に記載のハイドレート成型装置。
【請求項10】
前記入口は、前記出口の上方に配される請求項8または9に記載のハイドレート成型装置。
【請求項11】
前記収容部は、前記一端側から前記他端側に向かって鉛直下方に傾斜して配される請求項10に記載のハイドレート成型装置。
【請求項12】
前記出口を通過した前記固形物を貯蔵する貯蔵槽と、
前記貯蔵槽内に設けられ、上端部から下端部に向かうに従って鉛直下方に傾斜した傾斜面を有するトレイと、
を備え、
前記出口は、前記固形物が前記傾斜面に落下する位置に配される請求項8から11のいずれか1項に記載のハイドレート成型装置。
【請求項13】
前記ハイドレートは、オゾンハイドレートである請求項1から12のいずれか1項に記載のハイドレート成型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドレート成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガスハイドレート、メタンハイドレート、二酸化炭素ハイドレート、オゾンハイドレート等のハイドレートを燃料、原料、殺菌等に利用する技術が検討されている。このようなハイドレートの取り扱いを容易にするために、ハイドレートをペレット化する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の技術は、天然ガスハイドレートおよび水を含むスラリーを圧搾して含水率が5%以上10%以下の粉体とし、さらに、粉体をピストンで圧縮して固形物に成型する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の技術では、ハイドレートを高圧で圧搾したり、圧縮したりするため、ハイドレートが破壊されてしまうおそれがある。また、圧搾や圧縮によって、ハイドレートのゲスト分子が減衰してしまう場合もある。
【0006】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、ハイドレートの破壊およびゲスト分子の減衰を低減することが可能なハイドレート成型装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のハイドレート成型装置は、ハイドレートおよび水を含むスラリーを収容する収容部を有する収容ユニットと、収容部の外表面を冷却し、収容部にスラリーを収容した状態でスラリーを凍結して固化させる冷却部と、を備える。
【0008】
また、冷却部は、収容部の外表面と所定の間隔離隔し、外表面を囲繞する囲繞部と、囲繞部内に冷却媒体を供給する冷却媒体供給部と、を備えてもよい。
【0009】
また、収容部の外表面を加熱する加熱部を備えてもよい。
【0010】
また、加熱部は、収容部の外表面と所定の間隔離隔し、外表面を囲繞する囲繞部と、囲繞部内に加熱媒体を供給する加熱媒体供給部と、を備えてもよい。
【0011】
また、収容部を複数備え、複数の収容部にスラリーを供給するスラリー供給部を備え、
スラリー供給部は、複数の収容部のうち、少なくともいずれか1の収容部と、他の収容部とに排他的にスラリーを供給してもよい。
【0012】
また、収容部内にガスを供給するガス供給部を備えてもよい。
【0013】
また、収容部内からガスを排出し、収容部内を脱圧する脱圧部を備えてもよい。
【0014】
また、収容部は、筒形状であり、一端側にスラリーが通過する入口が設けられ、他端側にスラリーが固化された固形物が通過する出口が設けられ、収容ユニットは、入口を開閉する入口開閉弁と、出口を開閉する出口開閉弁と、を備えてもよい。
【0015】
また、出口開閉弁は、収容部の軸の直交断面形状と略等しい形状を有する弁体を備えてもよい。
【0016】
また、入口は、出口の上方に配されてもよい。
【0017】
また、収容部は、一端側から他端側に向かって鉛直下方に傾斜して配されてもよい。
【0018】
また、出口を通過した固形物を貯蔵する貯蔵槽と、貯蔵槽内に設けられ、上端部から下端部に向かうに従って鉛直下方に傾斜した傾斜面を有するトレイと、を備え、出口は、固形物が傾斜面に落下する位置に配されてもよい。
【0019】
また、ハイドレートは、オゾンハイドレートであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ハイドレートの破壊およびゲスト分子の減衰を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ハイドレート製造システムの概略的な構成を説明する図である。
【
図2】ハイドレート成型装置を説明する第1の図である。
【
図3】ハイドレート成型装置を説明する第2の図である。
【
図4】中央制御部による固形物製造処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】均圧工程における中央制御部の処理を説明する図である。
【
図6】収容工程における中央制御部の処理を説明する図である。
【
図7】固化工程における中央制御部の処理を説明する図である。
【
図8】脱圧工程における中央制御部の処理を説明する図である。
【
図9】取出工程における中央制御部の処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
[ハイドレート製造システム100]
図1は、ハイドレート製造システム100の概略的な構成を説明する図である。
図1に示すように、ハイドレート製造システム100は、ハイドレート生成装置110と、脱水装置120と、ハイドレート成型装置130とを含む。なお、
図1中、実線の矢印は、スラリー(ハイドレート)、および、水の流れを示す。
【0024】
ハイドレート生成装置110は、オゾンおよび二酸化炭素を含む原料ガスと、冷却水とを高圧状態(加圧状態)で混合して、オゾンハイドレートを生成する。ハイドレート生成装置110は、既存の様々な技術を利用できるため、ここでは、詳細な説明を省略する。ハイドレート生成装置110によって生成されたオゾンハイドレートおよび水(遊離水)を含むスラリーは、配管112を通じて、脱水装置120に送出される。
【0025】
脱水装置120は、スラリーに含まれる水の一部を脱水する。脱水装置120は、例えば、スクリュープレス式脱水機、または、二重円筒型慣性?過器である。脱水装置120によって、濃縮(脱水)されたスラリーは、供給ヘッダ管122を通じて、ハイドレート成型装置130に送出される。一方、脱水装置120によってスラリーから分離された水(詳細には、水および少量のオゾンハイドレート)は、ポンプ126によって、配管124、配管128を通じて、ハイドレート生成装置110に返送される。
【0026】
ハイドレート成型装置130は、スラリーを高圧状態で凍結して固化し、固形物に成型する。そして、ハイドレート成型装置130は、固形物を大気圧に脱圧して、貯蔵する。以下、ハイドレート成型装置130の具体的な構成について説明する。
【0027】
[ハイドレート成型装置130]
図2は、ハイドレート成型装置130を説明する第1の図である。
図3は、ハイドレート成型装置130を説明する第2の図である。
図2中、破線は、脱圧部230、ガス供給部240、冷却部250、および、加熱部260と、収容ユニット210との接続関係を示す。
図2中、一点鎖線の矢印は、信号の流れを示す。なお、
図2中、理解を容易にするために、中央制御部290から入口開閉弁214への信号の流れ、および、中央制御部290から出口開閉弁216への信号の流れを省略する。また、
図3中、圧力センサ280、レベルセンサ282、および、温度センサ284を示し、
図2では、理解を容易にするために、これらを省略する。
図2、
図3中、固形物Sをクロスハッチングで示す。
図3中、実線の矢印は、熱媒体およびガスの流れを示す。また、本実施形態の
図2、
図3では、垂直に交わるX軸(水平方向)、Y軸(水平方向)、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。
【0028】
図2、
図3に示すように、ハイドレート成型装置130は、複数の収容ユニット210と、脱圧部230と、ガス供給部240と、冷却部250と、加熱部260と、貯蔵槽270と、圧力センサ280と、レベルセンサ282と、温度センサ284と、中央制御部290とを含む。
【0029】
複数の収容ユニット210は、供給ヘッダ管122に接続される。脱水装置120によって脱水されたスラリーは、供給ヘッダ管122を通じて、複数の収容ユニット210に供給される。
【0030】
収容ユニット210は、ハイドレートおよび水を含むスラリーを収容する。収容ユニット210は、収容部220と、分配管212と、入口開閉弁214と、出口開閉弁216とを含む。
【0031】
収容部220は、供給ヘッダ管122の下方に設けられる。収容部220は、円筒の直管である。収容部220の内径は、例えば、10mm以上100mm以下である。収容部220の長さは、例えば、50mm以上1000mm以下である。
【0032】
収容部220の一端側には、入口222が設けられる。収容部220の他端側には、出口224が設けられる。本実施形態において、入口222は、出口224の上方に配される。収容部220は、一端側から他端側に向かって鉛直下方に傾斜して配される。
【0033】
分配管212は、供給ヘッダ管122と収容部220の入口222とを接続する。入口開閉弁214は、分配管212に設けられる。入口開閉弁214は、分配管212に形成される流路を開閉することで、入口222を開閉する。
【0034】
出口開閉弁216は、出口224を開閉する。出口開閉弁216は、収容部220の軸の直交断面形状と略等しい形状を有する弁体216aを備える。本実施形態において、出口開閉弁216は、円形状を有する(例えば、球形状の)弁体216aを備える。出口開閉弁216は、例えば、収容部220の内径と同径の貫通孔が形成されたボール弁である。
【0035】
脱圧部230は、収容ユニット210内からガスを排出し、収容ユニット210内を脱圧する。本実施形態において、脱圧部230は、脱圧管232と、脱圧弁234とを含む。脱圧管232は、一端が、分配管212における入口開閉弁214と収容部220(入口222)との間に接続される。脱圧管232は、他端がデオゾナイザ236に接続される。脱圧弁234は、脱圧管232に設けられる。脱圧弁234は、脱圧管232に形成される流路を開閉する。
【0036】
ガス供給部240は、収容ユニット210内に均圧押出ガスを供給する。ガス供給部240は、ハイドレート生成装置110において用いられる原料ガスに含まれるガスを均圧押出ガスとして、収容ユニット210内に供給する。本実施形態において、ガス供給部240は、オゾンおよび二酸化炭素のいずれか一方または両方を収容ユニット210内に供給する。
【0037】
本実施形態において、ガス供給部240は、ガス供給管242と、ブロワ244と、ガス供給弁246とを含む。ガス供給管242は、ブロワ244の吐出側と、分配管212における入口開閉弁214と収容部220(入口222)との間とを接続する。ブロワ244は、吸入側が均圧押出ガスの供給源に接続される。ブロワ244は、吐出側がガス供給管242に接続される。ガス供給弁246は、ガス供給管242に設けられる。ガス供給弁246は、ガス供給管242に形成される流路を開閉する。
【0038】
冷却部250は、収容部220の外表面を冷却する。本実施形態において、冷却部250は、囲繞部252と、冷却媒体供給部254とを含む。囲繞部252は、収容部220の外表面と所定の間隔離隔し、外表面を囲繞する。つまり、収容部220と囲繞部252とは、二重管を構成する。本実施形態において、囲繞部252は、収容部220の外径よりも大径の円筒の直管である。
【0039】
冷却媒体供給部254は、囲繞部252内、つまり、囲繞部252と収容部220との間に形成される間隙に熱媒体(冷却媒体)を供給する。熱媒体は、例えば、エチレングリコール、または、エタノールである。
【0040】
冷却媒体供給部254は、冷却機構310と、冷媒循環管312と、ポンプ314と、冷媒供給管316と、開閉弁318と、冷媒排出管320と、開閉弁322とを含む。冷却機構310は、オゾンハイドレートのスラリーを凍結可能な温度に熱媒体を冷却する。冷却機構310は、ハイドレートの物性および固化させるスラリーの量(収容部220の容積)に基づいて決定される温度に熱媒体を冷却する。冷却機構310は、例えば、-50℃以上-5℃以下の所定の温度に熱媒体を冷却する。
【0041】
冷媒循環管312は、冷却機構310とポンプ314の吸入側とを接続する。冷媒供給管316は、ポンプ314の吐出側と囲繞部252とを接続する。本実施形態において、冷媒供給管316は、囲繞部252のうち、収容部220の出口224近傍に接続される。ポンプ314は、冷却機構310によって冷却された熱媒体を囲繞部252に送出する。開閉弁318は、冷媒供給管316に設けられる。開閉弁318は、冷媒供給管316内に形成される流路を開閉する。
【0042】
冷媒排出管320は、囲繞部252と冷却機構310とを接続する。本実施形態において、冷媒排出管320は、囲繞部252のうち、収容部220の入口222近傍に接続される。開閉弁322は、冷媒排出管320に設けられる。開閉弁322は、冷媒排出管320に形成される流路を開閉する。
【0043】
加熱部260は、収容部220の外表面を加熱する。本実施形態において、加熱部260は、冷却部250とタイミングを異にして、収容部220の外表面を加熱する。加熱部260は、囲繞部252と、加熱媒体供給部264とを含む。加熱媒体供給部264は、囲繞部252内、つまり、囲繞部252と収容部220との間に形成される間隙に熱媒体(加熱媒体)を供給する。
【0044】
加熱媒体供給部264は、加熱機構330と、熱媒循環管332と、ポンプ334と、熱媒供給管336と、開閉弁338と、熱媒排出管340と、開閉弁342とを含む。加熱機構330は、固形物Sの表面を溶解可能な温度に熱媒体を加熱する。加熱機構330は、例えば、10℃以上60℃以下の所定の温度に熱媒体を加熱する。
【0045】
熱媒循環管332は、加熱機構330とポンプ334の吸入側とを接続する。熱媒供給管336は、ポンプ334の吐出側と囲繞部252とを接続する。本実施形態において、熱媒供給管336は、囲繞部252のうち、収容部220の出口224近傍に接続される。ポンプ334は、加熱機構330によって加熱された熱媒体を囲繞部252に送出する。開閉弁338は、熱媒供給管336に設けられる。開閉弁338は、熱媒供給管336内に形成される流路を開閉する。
【0046】
熱媒排出管340は、囲繞部252と加熱機構330とを接続する。本実施形態において、熱媒排出管340は、囲繞部252のうち、収容部220の入口222近傍に接続される。開閉弁342は、熱媒排出管340に設けられる。開閉弁342は、熱媒排出管340に形成される流路を開閉する。
【0047】
貯蔵槽270は、収容ユニット210内において成型された固形物Sを貯蔵する。貯蔵槽270は、密閉された容器である。貯蔵槽270は、大気圧に維持される。貯蔵槽270は、固形物Sが分解しない温度に維持される。
【0048】
貯蔵槽270内には、トレイ272および貯蔵箱274が設けられる。トレイ272は、上端部から下端部に向かうに従って鉛直下方に傾斜した傾斜面272aを有する。本実施形態において、収容部220の出口224は、貯蔵槽270内に開口する。また、出口224は、固形物Sが傾斜面272aに落下する位置に配される。
【0049】
貯蔵箱274は、トレイ272の下端部から落下した固形物Sを貯蔵する。貯蔵箱274の底面には、緩衝材が敷設される。
【0050】
圧力センサ280は、分配管212における入口開閉弁214と入口222との間の圧力を検出する。レベルセンサ282は、収容部220内のスラリーの収容量を検出する。温度センサ284は、囲繞部252から排出された熱媒体の温度を検出する。
【0051】
中央制御部290は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部290は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。中央制御部290は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働してハイドレート成型装置130全体を管理および制御する。
【0052】
本実施形態において、中央制御部290は、収容ユニット210、脱圧部230、ガス供給部240、冷却部250、加熱部260を制御する。
【0053】
[固形物製造方法]
続いて、中央制御部290による制御について詳述する。
図4は、中央制御部290による固形物製造処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示すように、固形物製造処理(固形物製造方法)は、均圧工程S110、収容工程S120、固化工程S130、脱圧工程S140、取出工程S150を含む。なお、初期状態において、入口開閉弁214、出口開閉弁216、脱圧弁234、ガス供給弁246、開閉弁318、開閉弁322、開閉弁338、および、開閉弁342は閉弁されている。また、ハイドレート成型装置130は、収容ユニット210を複数備えるため、ポンプ314、ポンプ334、冷却機構310、加熱機構330は、固形物製造処理の開始時に駆動される。また、ハイドレート生成装置110は、オゾンハイドレートを連続して生成し、脱水装置120は、スラリーを連続してハイドレート成型装置130に供給するものとする。
【0054】
[均圧工程S110]
均圧工程S110は、中央制御部290が、ガス供給部240を制御して、スラリーの圧力(ハイドレート生成装置110におけるオゾンハイドレートの生成圧力)と実質的に等しい圧力まで収容部220内を加圧する工程である。
【0055】
図5は、均圧工程S110における中央制御部290の処理を説明する図である。なお、
図5中、閉弁状態を黒い塗りつぶしで示す。
【0056】
図5に示すように、中央制御部290は、冷却部250を駆動する。具体的に説明すると、中央制御部290は、開閉弁318、開閉弁322を開弁する。これにより、収容部220内がオゾンハイドレートの分解温度未満に冷却される。
【0057】
また、中央制御部290は、ガス供給弁246を開弁し、ブロワ244を駆動する。これにより、収容部220内に均圧押出ガスが供給され、収容部220内がオゾンハイドレートの分解圧力未満まで加圧される。
【0058】
そして、圧力センサ280による検出値に基づき、収容部220内がスラリーと均圧になり、かつ、温度センサ284による検出値に基づき、収容部220内がオゾンハイドレートの分解温度未満に冷却されたと判定したら、中央制御部290は、収容工程S120に処理を移す。
【0059】
[収容工程S120]
収容工程S120は、中央制御部290(スラリー供給部)が、入口開閉弁214を制御して、脱水装置120から供給されたスラリーを収容ユニット210(収容部220)に収容する工程である。
【0060】
図6は、収容工程S120における中央制御部290の処理を説明する図である。なお、
図6中、閉弁状態を黒い塗りつぶしで示す。
【0061】
図6に示すように、中央制御部290は、ガス供給弁246を閉弁して、入口開閉弁214を開弁する。上記したように、収容ユニット210は、供給ヘッダ管122の下方に設けられる。したがって、入口開閉弁214が開弁されるだけで、供給ヘッダ管122から収容部220にスラリーを自重で落下させることができる。また、収容工程S120において、中央制御部290がガス供給弁246を閉弁するため、スラリーがブロワ244に逆流してしまう事態を回避することが可能となる。
【0062】
そして、レベルセンサ282による検出値に基づき、収容部220内がスラリーで充填されたと判定したら、中央制御部290は、入口開閉弁214を閉弁し、ブロワ244を停止して、固化工程S130に処理を移す。
【0063】
[固化工程S130]
固化工程S130は、中央制御部290が、冷却部250を制御して、収容部220内のスラリーを凍結して固化させ、固形物Sを生成する工程である。
【0064】
図7は、固化工程S130における中央制御部290の処理を説明する図である。なお、
図7中、閉弁状態を黒い塗りつぶしで示す。
【0065】
図7に示すように、中央制御部290は、開閉弁318および開閉弁322の開弁状態を維持する。これにより、収容部220内のスラリーが、高圧状態で凍結(冷却)され、固化される。
【0066】
そして、温度センサ284による検出値に基づき、収容部220内のスラリーが固化されたと判定したら、中央制御部290は、開閉弁318、開閉弁322を閉弁する。
【0067】
[脱圧工程S140]
脱圧工程S140は、中央制御部290が、脱圧部230を制御し、収容部220内の固形物Sを大気圧に脱圧する工程である。
【0068】
図8は、脱圧工程S140における中央制御部290の処理を説明する図である。なお、
図8中、閉弁状態を黒い塗りつぶしで示す。
【0069】
図8に示すように、中央制御部290は、脱圧弁234を開弁する。これにより、収容部220内の固形物Sが、脱圧される。
【0070】
そして、圧力センサ280による検出値に基づき、収容部220内の固形物Sが大気圧まで脱圧されたと判定したら、中央制御部290は、脱圧弁234を閉弁する。
【0071】
[取出工程S150]
取出工程S150は、中央制御部290が、ガス供給部240、加熱部260、および、出口開閉弁216を制御して、収容部220内から固形物Sを取り出す工程である。
【0072】
図9は、取出工程S150における中央制御部290の処理を説明する図である。なお、
図9中、閉弁状態を黒い塗りつぶしで示す。
【0073】
図9に示すように、中央制御部290は、開閉弁338、開閉弁342を開弁する。これにより、収容部220内の固形物Sの外表面が加熱され、外表面が溶解される。したがって、収容部220の内壁と固形物Sとの固着を解消することができる。
【0074】
また、中央制御部290は、ガス供給弁246を開弁し、ブロワ244を駆動させる。これにより、収容部220内の固形物Sから出口224を通じて、貯蔵槽270に落下する。
【0075】
そして、圧力センサ280による検出値に基づき、固形物Sが収容部220内から排出されたと判定したら、中央制御部290は、出口開閉弁216、開閉弁338、開閉弁342を閉弁して、均圧工程S110からの処理を繰り返す。
【0076】
また、中央制御部290は、複数の収容ユニット210のうち、いずれか1の収容ユニット210に対し、収容工程S120を行っている間、他の収容ユニット210に対し、均圧工程S110、固化工程S130、脱圧工程S140、取出工程S150のいずれか1または複数の工程を行う。つまり、中央制御部290は、複数の収容ユニット210のうち、少なくともいずれか1の収容ユニット210と、他の収容ユニット210とに排他的に(異なるタイミングで)スラリーを供給する。これにより、ハイドレート成型装置130は、脱水装置120から連続して供給されるスラリーを順次固形物Sに成型することが可能となる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態にかかるハイドレート成型装置130は、収容ユニット210(収容部220)にスラリーを収容した状態で、スラリーを凍結して固化させる。これにより、スラリーを高圧で圧搾したり、高圧で圧縮したりしてハイドレートを固化させる従来技術と比較して、ハイドレート成型装置130は、余分な圧力を付与せずにスラリーを固化させることができる。したがって、ハイドレート成型装置130は、オゾンハイドレートの破壊およびオゾンの減衰を低減して、オゾンハイドレートを固形物Sに成型することが可能となる。
【0078】
また、ハイドレート成型装置130は、収容部220にスラリーを収容した状態で、スラリーを凍結して固化させる。このため、ハイドレート成型装置130は、収容部220内の形状に固形物Sを成型することができる。したがって、ハイドレート成型装置130は、収容部220を所望する形状に設計することで、所望する形状の固形物Sを容易に製造することが可能となる。
【0079】
また、従来のハイドレート成型装置は、スラリーを圧搾する圧搾装置、圧搾したスラリーを圧縮成型してペレットを製造するペレタイザ、ペレットを凍結して固化させる冷凍機、固化したペレットを脱圧する脱圧装置、脱圧されたペレットを貯蔵庫に運搬するコンベアを備えていた。したがって、従来のハイドレート成型装置は、圧搾装置、ペレタイザ、冷凍機、脱圧装置、コンベア、貯蔵庫がそれぞれ必要となり、設備費およびランニングコストが高額になっていた。
【0080】
これに対し、本実施形態のハイドレート成型装置130は、スラリーの成型およびスラリーの凍結を並行して行うことができる。また、ハイドレート成型装置130は、スラリーの成型、スラリーの凍結、および、固形物Sの脱圧を同一の収容ユニット210内で行うことができる。したがって、ハイドレート成型装置130は、従来のハイドレート成型装置と比較して、設備費およびランニングコストを低減することが可能となる。
【0081】
また、上記したように、ハイドレート成型装置130は、収容部220の下方に貯蔵槽270が設けられる。これにより、ハイドレート成型装置130は、収容部220の出口224から排出される固形物Sを自重で貯蔵槽270に落下させることができる。したがって、従来のハイドレート成型装置と比較して、固形物Sの運搬コストを削減することが可能となる。
【0082】
また、上記したように、貯蔵槽270内にトレイ272が設けられ、収容部220の出口224は、固形物Sが傾斜面272aに落下する位置に配される。これにより、収容部220の出口224から排出された固形物Sは、傾斜面272aを摺動または転動して貯蔵箱274に導かれる。したがって、固形物Sは、自由落下する場合と比較して、傾斜面272aの通過過程で減速されて、貯蔵箱274に導かれる。このため、ハイドレート成型装置130は、固形物Sの破損を防止して、固形物Sを貯蔵箱274に移動させることが可能となる。
【0083】
また、上記したように、貯蔵箱274の底面には、緩衝材が敷設される。これにより、貯蔵箱274に導かれた固形物Sの破損をさらに防止することが可能となる。
【0084】
また、上記したように、ハイドレート成型装置130は、収容部220において高圧状態を維持したままスラリーを凍結して固化させる。これにより、ハイドレート成型装置130は、オゾンハイドレートの破壊およびオゾンの減衰を低減しつつ、オゾンハイドレートの固形物Sを製造することが可能となる。
【0085】
また、ハイドレート成型装置130の冷却部250は、囲繞部252および冷却媒体供給部254を備える。これにより、冷却部250は、収容部220の外表面を効率よく冷却することができる。
【0086】
同様に、ハイドレート成型装置130の加熱部260は、囲繞部252および加熱媒体供給部264を備える。これにより、加熱部260は、収容部220の外表面を効率よく加熱することができる。
【0087】
また、本実施形態の冷却部250および加熱部260は、囲繞部252を共用する。これにより、ハイドレート成型装置130は、収容部220の冷却および加熱に要する機構を簡素化することが可能となる。また、ハイドレート成型装置130は、収容部220の冷却および加熱に要するコストを低減することができる。
【0088】
また、本実施形態の冷却部250および加熱部260は、同一の熱媒体を囲繞部252に循環させる。これにより、ハイドレート成型装置130は、収容部220の冷却および加熱に要するコストを低減することができる。
【0089】
また、上記したように、ハイドレート成型装置130は、ガス供給部240および加熱部260を備える。これにより、ハイドレート成型装置130は、収容部220内から固形物Sをスムーズに排出することが可能となる。
【0090】
また、上記したように、収容部220は、入口222が、出口224の上方になるように配される。これにより、ハイドレート成型装置130は、供給ヘッダ管122から収容部220へスラリーを自重で落下させることが可能となる。
【0091】
また、収容部220は、入口222から出口224に向かって鉛直下方に傾斜して配される。これにより、ハイドレート成型装置130は、供給ヘッダ管122から収容部220へスラリーをスムーズに落下させることができる。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0093】
例えば、上記実施形態において、ハイドレートがオゾンハイドレートである場合を例に挙げた。しかし、ハイドレート成型装置130が成型するスラリーに含まれるハイドレートに限定はない。ハイドレートは、例えば、天然ガスハイドレート、メタンハイドレート、二酸化炭素ハイドレートであってもよい。
【0094】
また、上記実施形態において、収容部220が円筒形状である場合を例に挙げた。しかし、収容部220は、筒形状であれば形状に限定はない。収容部220は、例えば、矩形の筒形状であってもよい。この場合、出口開閉弁216の弁体216aは、矩形形状を有するとよい。また、収容部220は、筒形状でなくてもよい。収容部220は、少なくとも中空形状であれば形状に限定はない。
【0095】
また、上記実施形態において、冷却部250が囲繞部252を備える構成を例に挙げた。しかし、冷却部250は、収容部220の外周面に巻き回されたトレース管を備えてもよい。この場合、冷却媒体供給部254は、トレース管に熱媒体を供給する。
【0096】
同様に、上記実施形態において、加熱部260が囲繞部252を備える構成を例に挙げた。しかし、加熱部260は、収容部220の外周面に巻き回されたトレース管を備えてもよい。この場合、加熱媒体供給部264は、トレース管に熱媒体を供給する。また、加熱部260は、収容部220の外表面を加熱する電気ヒータであってもよい。
【0097】
また、上記実施形態において、冷却部250が循環させる冷却媒体と、加熱部260が循環させる加熱媒体とが同一である場合を例に挙げた。しかし、冷却部250が循環させる冷却媒体と、加熱部260が循環させる加熱媒体とは異なっていてもよい。
【0098】
また、上記実施形態において、ガス供給部240が、均圧押出ガスとして、ハイドレート生成装置110において用いられる原料ガスに含まれるガスを供給する場合を例に挙げた。しかし、均圧押出ガスの種類に限定はない。
【0099】
また、上記実施形態において、中央制御部290は、圧力センサ280、レベルセンサ282、温度センサ284の検出値に基づいて、均圧工程S110、収容工程S120、固化工程S130、脱圧工程S140、取出工程S150を実行する場合を例に挙げた。しかし、中央制御部290は、タイマによって計時される時間に基づき、均圧工程S110、収容工程S120、固化工程S130、脱圧工程S140、取出工程S150を実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、ハイドレート成型装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
130 ハイドレート成型装置
210 収容ユニット
214 入口開閉弁
216 出口開閉弁
216a 弁体
220 収容部
222 入口
224 出口
230 脱圧部
240 ガス供給部
250 冷却部
252 囲繞部
254 冷却媒体供給部
260 加熱部
264 加熱媒体供給部
270 貯蔵槽
272 トレイ
272a 傾斜面
274 貯蔵箱
290 中央制御部(スラリー供給部)