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特許7440339硫化検出センサおよび硫化検出センサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-19
(45)【発行日】2024-02-28
(54)【発明の名称】硫化検出センサおよび硫化検出センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20240220BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20240220BHJP
   H01C 17/00 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20240220BHJP
   G01N 17/04 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
G01N27/04 E
H01C7/00 110
H01C17/00 100
G01N27/00 L
G01N27/12 B
G01N17/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020087484
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181931
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 康人
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 泰
(72)【発明者】
【氏名】阪本 一樹
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250611(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061182(WO,A1)
【文献】特開2018-200248(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042179(WO,A1)
【文献】特開2019-090743(JP,A)
【文献】特開平10-300699(JP,A)
【文献】特開2019-101342(JP,A)
【文献】特開平11-204301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0174720(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0261455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
H01C 7/00-7/22
H01C 17/00-17/30
G01N 17/00-17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面における両端部に形成された一対の表電極と、一対の前記表電極に導通するように形成された硫化検出導体と、前記硫化検出導体を覆う硫化ガス非透過性の保護膜と、を備え、
前記硫化検出導体は前記保護膜で覆われた内部に硫化ガスと反応可能な硫化検出部を有しており、前記保護膜と前記硫化検出部との間に空間部が確保されていると共に、前記保護膜の電流方向と直交する方向の両側部に前記空間部と連通する開口が形成されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の硫化検出センサにおいて、
前記硫化検出導体の中央部に電流方向と直交する方向に延びる絶縁性の支持突起が設けられており、前記空間部が前記支持突起を挟んだ2位置に画成されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の硫化検出センサにおいて、
前記硫化検出導体の両端部がそれぞれ抵抗体を介して一対の前記表電極に接続されており、これら両抵抗体が絶縁性のプリコート層によって覆われていると共に、前記プリコート層と前記支持突起の上面が同一高さに設定されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の硫化検出センサにおいて、
前記プリコート層と前記支持突起が全てガラス材料からなることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項5】
絶縁材料からなる大判基板の主面に所定間隔を存して一対の表電極を形成する工程と、 前記一対の表電極に導通する矩形状の硫化検出導体を形成する工程と、
前記硫化検出導体の一部を所定幅で覆って外方へ突出するマスキング層を形成する工程と、
前記マスキング層の両端部を除く領域と前記硫化検出導体の全体を覆うように硫化ガス非透過性の保護膜を形成する工程と、
前記保護膜を形成した後に、前記マスキング層を洗浄して除去する工程と、
を含み、
前記マスキング層を除去することにより、前記保護膜と前記硫化検出導体との間に外部に連通する空間部が形成され、この空間部に臨む前記硫化検出導体の一部が硫化ガスと反応可能な硫化検出部となることを特徴とする硫化検出センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食環境の累積的な硫化量を検出するための硫化検出センサと、そのような硫化検出センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器等の電子部品の内部電極としては、比抵抗の低いAg(銀)系の電極材料が使用されているが、銀は硫化ガスに曝されると硫化銀となり、硫化銀は絶縁物であることから、電子部品が断線してしまうという不具合が発生してしまう。そこで近年では、AgにPd(パラジウム)やAu(金)を添加して硫化しにくい電極を形成したり、電極を硫化ガスが到達しにくい構造にする等の硫化対策が講じられている。
【0003】
しかし、このような硫化対策を電子部品に講じたとしても、当該電子部品が硫化ガス中に長期間曝された場合や高濃度の硫化ガスに曝された場合は、断線を完全に防ぐことが難しくなるため、未然に断線を検知して予期せぬタイミングでの故障発生を防止することが必要となる。
【0004】
そこで従来より、特許文献1に記載されているように、電子部品の累積的な硫化の度合いを検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出可能とした硫化検出センサが提案されている。特許文献1に記載された硫化検出センサは、絶縁基板上にAgを主体とした硫化検出体を形成し、この硫化検出体を覆うように透明で硫化ガス透過性のある保護膜を形成すると共に、絶縁基板の両側端部に硫化検出体に接続する端面電極を形成した構成となっている。
【0005】
このように構成された硫化検出センサを他の電子部品と共に回路基板上に実装した後、該回路基板を硫化ガスを含む雰囲気で使用すると、硫化ガスが硫化検出センサの保護膜を透過して硫化検出体に接するため、硫化ガスの濃度と経過時間に応じて硫化検出体を構成する銀が硫化銀に変化し、それに伴って硫化検出センサの抵抗値が次第に上昇していき、最終的には硫化検出体の断線に至る。したがって、硫化検出体の抵抗値変化や断線を検出することにより、硫化の度合いを検出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-250611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、この種の硫化検出センサは半田を用いて回路基板上に実装されるが、硫化検出センサの外部電極と回路基板のランドとを半田付けする際に、半田ペーストに含まれるフラックスが外部電極を伝わって保護膜上に流れ出てしまったり、フラックスが飛散して保護膜上に堆積してしまうことがある。その場合、特許文献1に記載された硫化検出センサのように、硫化ガス透過性のある保護膜で硫化検出体を覆うように構成されたものにおいては、硫化ガスが保護膜上に付着したフラックスに遮られて硫化検出体と接触しにくくなるため、正確に硫化の度合いを検出することができなくなる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、硫化の度合いを正確に検出することができる硫化検出センサを提供することにあり、第2の目的は、そのような硫化検出センサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するために、本発明の硫化検出センサは、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面における両端部に形成された一対の表電極と、一対の前記表電極に導通するように形成された硫化検出導体と、前記硫化検出導体を覆う硫化ガス非透過性の保護膜と、を備え、前記硫化検出導体は前記保護膜で覆われた内部に硫化ガスと反応可能な硫化検出部を有しており、前記保護膜と前記硫化検出部との間に空間部が確保されていると共に、前記保護膜の電流方向と直交する方向の両側部に前記空間部と連通する開口が形成されていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された硫化検出センサでは、半田を用いて回路基板上に実装する際に、半田ペーストに含まれるフラックスが保護膜上に流れ出たり、半田溶融時に飛散したフラックスが保護膜上に堆積した場合でも、硫化ガスが保護膜の両側部に形成された開口から空間部内に入って硫化検出部と接触するようになっているため、硫化の度合いを正確に検出することができる。
【0011】
上記構成の硫化検出センサにおいて、硫化検出導体の中央部に電流方向と直交する方向に延びる絶縁性の支持突起が設けられており、空間部が支持突起を挟んだ2位置に画成されていると、空間部が2位置に画成されているため、より確実に硫化の度合いを検出することができる。しかも、支持突起によって保護膜の中央部の強度が高められるため、硫化検出センサの上面をチップマウンターのノズルで吸着して回路基板上に自動供給する際に、保護膜が変形してしまうことを防止できる。
【0012】
また、上記構成の硫化検出センサにおいて、硫化検出導体の両端部がそれぞれ抵抗体を介して一対の表電極に接続されており、これら両抵抗体が絶縁性のプリコート層によって覆われていると共に、プリコート層と支持突起の上面が同一高さに設定されていると、一対の表電極間に2つの抵抗体を介して硫化検出導体が直列接続されるため、硫化の度合いをより正確に検出することができる。
【0013】
この場合において、プリコート層と支持突起を樹脂材料で形成しても良いが、これらプリコート層と支持突起が全てガラス材料で形成されていると、抵抗体に抵抗値調整用のトリミング溝を形成する場合に必要とされるガラスコート層(プリコート層)の形成時に、ガラスコート層と支持突起を同一工程で一括して形成することができる。
【0014】
上記第2の目的を達成するために、本発明による硫化検出センサの製造方法は、絶縁材料からなる大判基板の主面に所定間隔を存して一対の表電極を形成する工程と、前記一対の表電極に導通する矩形状の硫化検出導体を形成する工程と、前記硫化検出導体の一部を所定幅で覆って外方へ突出するマスキング層を形成する工程と、前記マスキング層の両端部を除く領域と前記硫化検出導体の全体を覆うように硫化ガス非透過性の保護膜を形成する工程と、前記保護膜を形成した後に、前記マスキング層を洗浄して除去する工程と、を含み、前記マスキング層を除去することにより、前記保護膜と前記硫化検出導体との間に外部に連通する空間部が形成され、この空間部に臨む前記硫化検出導体の一部が硫化ガスと反応可能な硫化検出部となることを特徴としている。
【0015】
このような工程を経て製造された硫化検出センサは、硫化ガスが保護膜の両側部に形成された開口から空間部内に入って硫化検出部と接触するようになっているため、半田を用いて回路基板上に実装する際に、半田ペーストに含まれるフラックスが保護膜上に流れ出たり、半田溶融時に飛散したフラックスが保護膜上に堆積したとしても、保護膜上のフラックスに邪魔されることなく硫化ガスを硫化検出部に接触させて硫化の度合いを正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半田実装時にフラックスが保護膜上に流れ出たり堆積した場合でも、外部雰囲気中の硫化ガスが開口から空間部内に入って硫化検出部と接触するため、硫化の度合いを正確に検出することができる硫化検出センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る硫化検出センサの平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】該硫化検出センサの製造工程を示す平面図である。
図5】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
図6】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る硫化検出センサの平面図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9図7のIX-IX線に沿う断面図である。
図10】該硫化検出センサの製造工程を示す平面図である。
図11】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
図12】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、図1は本発明の第1の実施形態に係る硫化検出センサの平面図、図2図1のII-II線に沿う断面図、図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
【0019】
図1図3に示すように、第1の実施形態に係る硫化検出センサ10は、直方体形状の絶縁基板1と、絶縁基板1の表面における長手方向両端部に形成された一対の表電極2と、これら一対の表電極2間に形成された硫化検出導体3と、硫化検出導体3の全体と表電極2の一部を覆う硫化ガス非透過性の保護膜4と、絶縁基板1の裏面の長手方向両端部に形成された一対の裏電極5と、絶縁基板1の長手方向両端部に形成された一対の端面電極6と、表電極2と裏電極5および端面電極6の表面に形成された一対の外部電極7と、によって主として構成されている。
【0020】
絶縁基板1は、後述する大判基板を縦横の分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板の主成分はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。
【0021】
一対の表電極2は、銀(Ag)にパラジウム(Pd)を含有するAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら両表電極2は所定間隔を存して対向するように絶縁基板1の長手方向両端部に形成されている。
【0022】
硫化検出導体3は、銀を主成分とするAgペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、この硫化検出導体3の両端部は一対の表電極2に重なるように接続されている。
【0023】
保護膜4は、エポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものであり、硫化検出導体3の両端部に重なる表電極2の一部と、硫化検出導体3の全体は保護膜4によって覆われている。ここで、保護膜4は硫化検出導体3の中央部を除く部分の表面に密着しているが、保護膜4は硫化検出導体3の上面中央部に接触しておらず、両者の間に空間部Sが確保されている。空間部Sに臨む硫化検出導体3の上面中央部は硫化ガスと反応可能な硫化検出部3aとなっており、保護膜4における電流方向と直交する方向(図1の上下方向)の両側部には、空間部Sと連通する開口Saが形成されている(図3参照)。
【0024】
一対の裏電極5は、銀にパラジウムを含有するAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら両裏電極5は絶縁基板1の表面側の表電極2と対応する位置に形成されている。
【0025】
一対の端面電極6は、絶縁基板1の端面にNi/Crをスパッタしたものであり、これら端面電極6は対応する表電極2と裏電極5間を導通するように形成されている。
【0026】
一対の外部電極7はバリヤー層と外部接続層の2層構造からなり、そのうちバリヤー層は電解メッキによって形成されたNiメッキ層であり、外部接続層は電解メッキによって形成されたSnメッキ層である。これら外部電極7により、表電極2と裏電極5および端面電極6の表面が被覆されている。
【0027】
次に、このように構成された硫化検出センサ10の製造工程について、図4図6に基づいて説明する。なお、図4(a)~(h)はこの製造工程で用いられる大判基板を表面側から見た平面図、図5(a)~(h)は図4(a)~(h)の長手方向中央部に沿った1チップ相当分の断面図、図6(a)~(h)は図4(a)~(h)の短手方向中央部に沿った1チップ相当分の断面図をそれぞれ示している。
【0028】
まず、図4(a)と図5(a)および図6(a)に示すように、絶縁基板1が多数個取りされる大判基板10Aを準備する。この大判基板10Aには予め1次分割溝と2次分割溝が格子状に設けられており、両分割溝によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ領域となる。図4図6には、1個分のチップ領域に相当する大判基板10Aが代表して示されているが、実際は多数個分のチップ領域に相当する大判基板に対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0029】
すなわち、図4(b)と図5(b)および図6(b)に示すように、この大判基板10Aの表面にAg系(Ag-Pd)ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥して約850℃で焼成することにより、大判基板10Aの表面に所定間隔を存して対向する一対の表電極2を形成する。また、これと同時あるいは前後して、大判基板10Aの裏面にAg系(Ag-Pd)ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥して約850℃で焼成することにより、大判基板10Aの裏面に所定間隔を存して対向する一対の裏電極5を形成する。
【0030】
次に、大判基板10Aの表面にAgペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥して約850℃で焼成することにより、図4(c)と図5(c)および図6(c)に示すように、両端部が一対の表電極2に接続する硫化検出導体3を形成する。
【0031】
次に、硫化検出導体3の中央部を幅方向に縦断するようにマスキング用ペーストをスクリーン印刷した後、これを約150℃で乾燥することにより、図4(d)と図5(d)および図6(d)に示すように、硫化検出導体3の中央部を所定幅で覆うマスキング層11を形成する。このマスキング層11は、フェノール樹脂系ペースト等の耐酸性を有するマスキング剤からなり、後ほど行われる工程で洗浄・除去される。
【0032】
次に、硫化検出導体3から突出するマスキング層11の両端部を除く領域と、硫化検出導体3の全体を覆うようにエポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷した後、これを200℃で加熱硬化することにより、図4(e)と図5(e)および図6(e)に示すように、マスキング層11の大部分と硫化検出導体3の全体を覆う保護膜4を形成する。
【0033】
次に、大判基板10Aを一次分割溝に沿って短冊状基板10Bに1次分割した後、短冊状基板10Bの分割面にNi/Crをスパッタすることにより、図4(f)と図5(f)および図6(f)に示すように、短冊状基板10Bの両端部に表電極2と裏電極5間を接続する端面電極6を形成する。
【0034】
次に、短冊状基板10Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板10Cに2次分割した後、これらチップ状基板10Cに対して電解メッキを施してNi-Snメッキ層を形成することにより、図4(g)と図5(g)および図6(g)に示すように、チップ状基板10Cの両端部に表電極2と裏電極5および端面電極6の表面を覆う外部電極7を形成する。
【0035】
次に、チップ状基板10Cをアルカリ溶剤に浸漬してマスキング層11を洗浄・除去することにより、図4(h)と図5(h)および図6(h)に示すように、硫化検出導体3の中央部と保護膜4との間に外部に連通する空間部Sが形成され、図1図3に示す硫化検出センサ10が完成する。なお、この空間部Sに臨む部分の硫化検出導体3が硫化ガスと反応可能な硫化検出部3aとなる。
【0036】
このように構成された硫化検出センサ10を他の電子部品と共に図示せぬ回路基板上に実装し、該回路基板が硫化ガスを含む外部雰囲気に曝されると、硫化ガスが保護膜4の両側部に形成された開口Saから空間部S内に入って硫化検出部3aと接触する。そして、時間経過に伴って硫化検出部3aを構成するAgの体積が減少していくと、一対の表電極2間の抵抗値が上昇していくため、その変化量に基づいて硫化の度合いを検出することができる。
【0037】
以上説明したように、第1の実施形態に係る硫化検出センサ10では、半田を用いて回路基板上に実装する際に、半田ペーストに含まれるフラックスが保護膜4上に流れ出たり、半田溶融時に飛散したフラックスが保護膜4上に堆積した場合でも、硫化ガスが保護膜4の両側部に形成された開口Saから空間部S内に入って硫化検出部3aと接触するようになっているため、硫化の度合いを正確に検出することができる。
【0038】
また、第1の実施形態に係る硫化検出センサ10の製造方法では、硫化検出導体3の一部を所定幅で覆って外方へ突出するマスキング層11を形成し、該マスキング層11の両端部を除く領域と硫化検出導体3の全体を覆うように硫化ガス非透過性の保護膜4を形成した後、端面電極6や外部電極7を形成してからマスキング層11を洗浄・除去することにより、空間部Sを有する上記構成の硫化検出センサ10を得ることができる。
【0039】
図7は本発明の第2の実施形態に係る硫化検出センサの平面図、図8図7のVIII-VIII線に沿う断面図、図9図7のIX-IX線に沿う断面図であり、図1図3に対応する部分には同一符号を付してある。
【0040】
図7図9に示すように、第2の実施形態に係る硫化検出センサ20は、直方体形状の絶縁基板1と、絶縁基板1の表面における長手方向両端部に形成された一対の表電極2と、これら表電極2に接続する一対の抵抗体21と、これら抵抗体21を覆う一対のプリコート層22と、両抵抗体21に直列に接続する硫化検出導体3と、硫化検出導体3の中央部に形成されて電流方向と直交する方向(図7の上下方向)に延びる支持突起23と、両抵抗体21および硫化検出導体3の全体を覆う硫化ガス非透過性の保護膜4と、絶縁基板1の裏面の長手方向両端部に形成された一対の裏電極5と、絶縁基板1の長手方向両端部に形成された一対の端面電極6と、表電極2と裏電極5および端面電極6の表面に形成された一対の外部電極7と、によって主として構成されている。
【0041】
一対の抵抗体21は、酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら抵抗体21の一端部は対応する表電極2に接続され、他端部は硫化検出導体3に接続されている。すなわち、一対の表電極2の間に、硫化検出導体3を介して2つの抵抗体21が直列に接続されている。両抵抗体21には不図示のトリミング溝が形成されており、このトリミング溝によって両抵抗体21の抵抗値が調整されている。
【0042】
一対のプリコート層22は、ガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、上記トリミング溝は、これらプリコート層22の上からレーザ光を照射して形成される。また、支持突起23もガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、一対のプリコート層22と支持突起23の上面は同一高さに設定されている。
【0043】
保護膜4は、同一高さに設定された両プリコート層22と支持突起23の上面に密着しており、一対のプリコート層22と支持突起23との間にそれぞれ空間部Sが画成されている。これら空間部Sに臨む部分は硫化ガスと反応可能な硫化検出部3aとなっており、保護膜4における電流方向と直交する方向の両側部には、一対の空間部Sと連通する開口Saがそれぞれ形成されている(図9参照)。
【0044】
次に、このように構成された硫化検出センサ20の製造工程について、図10図12に基づいて説明する。なお、図10(a)~(h)はこの製造工程で用いられる大判基板を表面側から見た平面図、図11(a)~(h)は図10(a)~(h)の長手方向中央部に沿った1チップ相当分の断面図、図12(a)~(h)は図10(a)~(h)の短手方向中央部に沿った1チップ相当分の断面図をそれぞれ示している。
【0045】
まず、絶縁基板1が多数個取りされる大判基板20Aを準備する。この大判基板20Aには予め1次分割溝と2次分割溝が格子状に設けられており、両分割溝によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ領域となる。図4図6には、1個分のチップ領域に相当する大判基板20Aが代表して示されているが、実際は多数個分のチップ領域に相当する大判基板に対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0046】
すなわち、図10(a)と図11(a)および図12(a)に示すように、この大判基板20Aの表面にAg系(Ag-Pd)ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、大判基板20Aの表面に所定間隔を存して対向する一対の表電極2を形成する。また、これと同時あるいは前後して、大判基板20Aの裏面にAg系(Ag-Pd)ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、大判基板20Aの裏面に所定間隔を存して対向する一対の裏電極5を形成する。
【0047】
次に、大判基板20Aの表面にAgペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、図10(b)と図11(b)および図12(b)に示すように、一対の表電極2の間に硫化検出導体3を形成する。
【0048】
次に、図10(c)と図11(c)および図12(c)に示すように、酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、両端部が硫化検出導体3と各表電極2に接続する2つの抵抗体21を形成する。しかる後、ガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、各抵抗体21を覆うプリコート層22を形成すると共に、硫化検出導体3の中央部を覆う帯状の支持突起23を形成する。なお、図示省略されているが、プリコート層22と支持突起23を形成した後、プリコート層22の上からレーザ光を照射して抵抗体21にトリミング溝を形成することにより、抵抗体21の抵抗値を所望の値に調整する。
【0049】
次に、マスキング用ペーストをスクリーン印刷して乾燥することにより、図10(d)と図11(d)および図12(d)に示すように、硫化検出導体3の両側に露出する硫化検出導体3を所定幅で覆うマスキング層11を形成する。
【0050】
次に、エポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、図10(e)と図11(e)および図12(e)に示すように、マスキング層11の両端部を除く大部分と硫化検出導体3および両抵抗体21の全体を覆う保護膜4を形成する。
【0051】
次に、大判基板20Aを一次分割溝に沿って短冊状基板20Bに1次分割した後、短冊状基板20Bの分割面にNi/Crをスパッタすることにより、図10(f)と図11(f)および図12(f)に示すように、短冊状基板20Bの両端部に表電極2と裏電極5間を接続する端面電極6を形成する。
【0052】
次に、短冊状基板20Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板20Cに2次分割した後、これらチップ状基板20Cに対して電解メッキを施してNi-Snメッキ層を形成することにより、図10(g)と図11(g)および図12(g)に示すように、チップ状基板20Cの両端部に表電極2と裏電極5および端面電極6の表面を覆う外部電極7を形成する。
【0053】
次に、チップ状基板20Cをアルカリ溶剤に浸漬してマスキング層11を洗浄・除去することにより、図10(h)と図11(h)および図12(h)に示すように、支持突起23の両側に露出する硫化検出導体3の2位置と保護膜4との間に外部に連通する空間部Sが形成され、図7図9に示す硫化検出センサ20が完成する。
【0054】
以上説明したように、第2の実施形態に係る硫化検出センサ20では、硫化検出導体3に設けられた支持突起23を挟んだ2位置に空間部Sが画成され、これら空間部Sがそれぞれ開口Saを介して外部に連通しているため、半田を用いて回路基板上に実装する際に、半田ペーストに含まれるフラックスが保護膜4上に流れ出たり、半田溶融時に飛散したフラックスが保護膜4上に堆積した場合でも、硫化ガスが開口Saから各空間部S内に入って硫化検出部3aと接触可能となり、硫化の度合いをより確実に検出することができる。しかも、支持突起23によって保護膜4の中央部の強度が高められるため、硫化検出センサ20の上面をチップマウンターのノズルで吸着して回路基板上に自動供給する際に、保護膜44が変形してしまうことを防止できる。
【0055】
また、第2の実施形態に係る硫化検出センサ20では、硫化検出導体3の両端部がそれぞれ抵抗体21を介して一対の表電極2に接続されており、これら抵抗体21がプリコート層22によって覆われていると共に、各プリコート層22と支持突起23の上面が同一高さに設定されているため、一対の表電極2間に2つの抵抗体21を介して硫化検出導体3が直列接続された構成となり、硫化の度合いをより正確に検出することができる。しかも、各プリコート層22と支持突起23が全てガラス材料で形成されているため、抵抗体21に抵抗値調整用のトリミング溝を形成する場合に必要とされるプリコート層22と支持突起23とを同一工程で一括して形成することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 絶縁基板
2 表電極
3 硫化検出導体
3a 硫化検出部
4 保護膜
5 裏電極
6 端面電極
7 外部電極
10,20 硫化検出センサ
10A,20AA 大判基板
11 マスキング層
21 抵抗体
22 プリコート層
23 支持突起
S 空間部
Sa 開口
図1
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図12